(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607452
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】サポートブラケット
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20191111BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20191111BHJP
【FI】
F01N13/08 D
F01N13/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-257899(P2016-257899)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-96360(P2018-96360A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(72)【発明者】
【氏名】五十川 康博
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−198316(JP,U)
【文献】
実開昭54−053218(JP,U)
【文献】
特開2002−240578(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0170316(US,A1)
【文献】
実開昭50−18818(JP,U)
【文献】
中国実用新案第205990954(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−1/24,5/00−5/04,
13/00−99/00,
B60K 11/00−15/10,
F16L 3/00−3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系部品に固定され、該排気系部品を車体に支持するサポートブラケットにおいて、
天壁と、該天壁の両側に直交し連続する一対の側壁とからなる一対の部材を備え、前記一対の側壁にサポートロッドが挿通される挿通孔が穿設され、前記一対の部材の前記側壁同士の一部を当接させるとともに前記挿通孔の軸芯同士を一致させてなることを特徴とするサポートブラケット。
【請求項2】
前記一対の部材を、前記挿通孔の軸心を中心として相対的に回動させて、前記一対の部材における天壁の相対角度を調整可能とすることを特徴とする請求項1記載のサポートブラケット。
【請求項3】
前記一対の部材は、略同一形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のサポートブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関に接続される排気系部品を、車体に支持するサポートブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気管等の排気系部品を車体に支持する構造として、排気系部品に固定されたサポートブラケット(別称:ハンガーブラケット、支持部材)が、サポートロッド(別称:ハンガーロッド、支持棒)及び弾性部材(別称:サポートゴム)を介在して車体のクロスメンバ等に懸垂支持されたものが知られている。本構造によれば、排気管からの振動が、弾性部材によって吸収されて車体へ伝達されることを抑制している(特許文献1参照)。
【0003】
サポートブラケットとして、平板状のベース板と、ベース板と一体的に形成された箱型形状の張り出し部とを備えるものが提案されており、サポートロッドの一端部が、ベース板に溶接によって固定されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、他のサポートブラケットとして、天壁と、この天壁の両側縁部から延出する一対の側壁とを備えるとともに、天壁に取付溝を設けたものが提案されており、サポートロッドの外周面が、取付溝に沿って溶接によって固定されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−138784号公報
【特許文献2】実開平4−54931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されるサポートブラケットでは、サポートロッドの一端部が、サポートブラケットのベース板に溶接によって固定されており、サポートロッドが片持ち支持構造となっている。そのため、排気系部品の振動によって発生する応力が、サポートロッドの一端部とベース板との溶接部に集中し易くなり、強度を維持できず割れが発生するおそれがある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載されるサポートブラケットでは、サポートロッドの外周面が、サポートブラケットの取付溝に沿って直線状に溶接されて固定されている。そのため、排気系部品の振動によって発生する応力が、サポートロッドと取付溝との溶接ビードの終始端部に集中し易くなり、強度を維持できず割れが発生するおそれがある。
【0008】
また、上記特許文献1及び2に共通する課題として、排気管の直径が車種によって複数種類におよぶ場合、排気管の直径に応じたサポートブラケットが個別に必要となり、サポートブラケットを構成する部材の種類が増加して、製造コストの上昇を招くおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、強度的に優れるとともに、排気管の直径が複数種類におよぶ場合でも、サポートブラケットを構成する部材を共通化(共通使用)することができ、製造コストを抑えることができるサポートブラケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、排気系部品に固定され、排気系部品を車体に支持するサポートブラケットにおいて、天壁と、天壁の両側に直交し連続する一対の側壁とからなる一対の部材を備え、一対の側壁にサポートロッドが挿通される挿通孔が穿設され、一対の部材の側壁同士の一部を当接させるとともに挿通孔同士の軸芯を一致させてなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、一対の部材を、挿通孔の軸芯を中心として相対的に回動させて、一対の部材における天壁の相対角度を調整可能とすることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、一対の部材は、略同一形状であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサポートブラケットによれば、一対の部材の側壁同士の一部を当接させることにより、側壁の肉厚が倍増して側壁及び挿通孔の剛性が向上する。また、側壁に穿設された挿通孔同士の軸芯を一致させることにより、側壁同士を当接して形成された2か所の挿通孔にサポートロッドを貫通挿入して、サポートロッドの外周面と2か所の挿通孔とを、それぞれ全周溶接することが可能となる。閉断面のサポートブラケットをサポートロッドが貫通して2か所で固定されることにより、振動によって発生する応力に十分耐えうる強度が得られる。
【0014】
また、一対の部材を、挿通孔の軸芯を中心として相対的に回動させて、一対の部材における天壁の相対角度(すなわち、部材同士の挟み角)を調整可能とすることにより、排気管の直径が複数種類におよぶ場合でもサポートブラケットを構成する部材を共通化することができ、製造コストを抑えることができる
【0015】
また、一対の部材が略同一形状であることにより、一対の部材同士も共通化することができ、よりいっそう製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るサポートブラケットが、排気管の外周面に固定された状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るサポートブラケットが、直径の異なる2つの排気管に固定された状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係るサポートブラケットが、排気管の外周面に固定された状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の更に他の実施形態に係るサポートブラケットが、排気管の外周面に固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい第1の実施形態について
図1乃至2を参照して説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、サポートブラケット1は、一対の部材2,3からなる。
【0019】
一対の部材2,3は、それぞれ天壁2a,3aと、天壁2a,3aの両側に連続して直交する一対の側壁2b,2bと3b,3bとを備え、これらは金属板をプレス加工によりコ字状に折り曲げて形成される。また、一対の部材2,3は、それぞれ排気管4の外周面に溶接等により固定されるフランジ部2c,3cを備える。これらもプレス加工により折り曲げて形成される。また、側壁2b,2bと側壁3b,3bのそれぞれには、排気管側サポートロッド5が挿通される挿通孔2d,2dと挿通孔3d,3dが穿設されている。
【0020】
一対の部材2,3は同一形状であり、一対の側壁2b,2bと一対の側壁3b,3bとを、側壁に直交する方向に板厚分オフセットして当接させるとともに、挿通孔2dと挿通孔3dの軸芯P同士を一致させた後、側壁2bの縁部2eと側壁3bとを溶接W1により接合するとともに、側壁3bの縁部(不図示)と側壁2bとを溶接(不図示)により接合して、サポートブラケット1が形成される。
【0021】
尚、一対の部材2,3を当接させる際に、一対の部材2,3を、挿通孔2d及び3dの軸芯Pを中心として相対的に回動させることによって、一対の部材2,3における天壁2a,3aの相対角度(
図2に示す相対角度A,a)を調整することができる。
【0022】
そして、一方の挿通孔2d,3dと他方の挿通孔2d,3dに排気管側サポートロッド5を貫通挿入して、排気管側サポートロッド5の2か所の外周面と、2ヶ所の挿通孔2d,3dとを、それぞれ全周溶接W2を行う。
【0023】
尚、全周溶接W2を行う前に、排気管側サポートロッド5を、挿通孔2d及び3d内にて回動させることによって、サポートブラケット1に対する排気側サポートロッド5の角度(
図2に示す角度C,c)を調整することができる。
【0024】
次に、直径の異なる2種類の排気管に固定されるサポートブラケットと、排気管への固定位置について、
図2を参照して説明する。
【0025】
説明の便宜上、
図2(a)と
図2(b)を横に並べて記載したが、車体に固定される車体側サポートロッド6及び排気管4,41の中心軸Oは、両図ともに同一位置に存在する。また、排気管4,41の中心軸Oを通り、図の上下方向に延びる線をYとし、図の左右方向に延びる線をXとする。
【0026】
図2(a)は、例えば直径Dが54mmである排気管4にサポートブラケット1を固定した状態を示し、
図2(b)は、例えば直径dが48.6mmである排気管41にサポートブラケット11を固定した状態を示す。
【0027】
図2(a)に示すサポートブラケット1を構成する一対の部材2,3は、
図2(b)に示すサポートブラケット11を構成する一対の部材2,3と同一形状であるが、一対の部材2,3における天壁2aと天壁3aとの相対角度a,Aは、a<Aの関係式となる。
【0028】
また、線Yと、中心軸Oと挿通孔2d,3dの軸芯Pを結ぶ線Lとの角度b,Bは、b<Bの関係式となる。
【0029】
また、線Lと、排気管側サポ−トロッド5の軸5aとの角度c,Cは、c<Cの関係式となる。
【0030】
上記の相対角度a,Aと、角度b,Bと、角度c,Cを調整することにより、排気管4の直径が複数種類におよぶ場合でも、線Xと排気管側サポートロッド5の軸5aとの平行距離Eを一定に保つことができる。換言すると、排気管側サポートロッド5の軸5aと、車体側サポートロッド6の軸6aとの平行距離を一定に保つことができる。
【0031】
線Yと、排気管側サポートロッド5の係止部5bとの距離f,Fは、f<Fの関係式となり、線X方向における係止部5bの位置が異なる。しかしながら、排気管側サポートロッド5を、その係止部5bを弾性部材7に形成された一方の貫通孔7aに貫通させる際に、線X方向に位置が調整可能であるため、排気管側サポートロッド5は、弾性部材7に問題なく支持される。
【0032】
そして、車体側サポートロッド6を、その係止部6bを弾性部材7に形成された他方の貫通孔7bに貫通させることにより、排気管側サポートロッド5は、弾性部材7を介在して車体側サポートロッド6に支持される。
【0033】
次に、
図3は、本発明の他の実施形態に係るサポートブラケット21を示すものであり、一対の部材21と31が別形状となっている。
【0034】
サポートブラケット21は、部材22の一対の側壁22b,22bを、部材23の一対の側壁23b,23bの内側に当接してなる。
【0035】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0036】
次に、
図4は、本発明の更に他の実施形態に係るサポ−トブラケット31を示すものであり、
図1に示す第1の実施形態のフランジ2c,3cを廃止したものである。
【0037】
サポートブラケット31は、一対の部材32,33とからなり、その縁部32f,33fを排気管4に溶接等により固定する。
【0038】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱し範囲の変更があって本発明に包含される。排気系部材は消音器や触媒コンバータ等も含む。排気管の断面形状は真円に限定されず、楕円等であっても構わない。挿通孔の大きさは異なっていても構わない。サポートロッドは中実ロッドや中空パイプのどちらでも構わない。
【符号の説明】
【0040】
1,11,21,31 サポートブラケット
2,3,12,13,22,23,32,33 部材
2a,3a 天壁
2b,3b,12b,13b,23a,23b 側壁
4,41 排気管(排気系部材)
5 サポートロッド