(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
家庭用の浄水器は、水道の水栓(蛇口)に直結し、水道水である原水をろ材によって浄水にするものが広く用いられている。ろ材は、原水に含まれる無機粒子、バクテリアなどの不純物を捕捉することによって浄水を生成する。
【0003】
浄水器は、従来より、さまざまなものが提案されている。本願発明者においても、特許文献1において、原水を逆方向から流すことによってろ材を洗浄(逆洗)することができる浄水器を開示している。なお、以下、原水をろ材によって浄水にするときを浄水モード、浄水モード時と逆方向に水を通過させてろ材を洗浄する、いわゆる逆洗するときを逆洗モード、とそれぞれ称する。
【0004】
図19に、特許文献1に記載されたものと基本構成が同様な浄水器101を示す。この浄水器101は、水道の水栓Fに取り付けられる取付本体110と、取付本体110に回動可能に装着され、水道からの原水をろ過によって浄水にすることができる浄水本体120と、を備えてなる。取付本体110は、上方側に水栓Fが連結されて原水が流入する流入口111と、浄水を流出させる浄水流出口112と、逆洗したときの排水を流出させる排水流出口(図示せず)と、原水をそのまま流出させる原水流出口114と、が設けられ、更に、流入口111に連通する流入路P111と、浄水流出口112に連通する浄水流出路P112と、排水流出口に連通する排水流出路(図示せず)と、原水流出口114に連通する原水流出路P114と、が設けられている。浄水本体120は、第1ろ材125(及び逆洗用の第2ろ材126)が詰め込まれた仕切り壁部材127が配設される浄水部120Aと、取付本体110に設けられた弁部挿入用孔部115に挿入されて回動可能に装着される弁部120Bと、から成り、第1流路P121と第2流路P122と第3流路P123と第4流路P124が設けられている。
【0005】
この浄水器101は、取付本体110に対して浄水本体120を回動させることで水が流れる経路を切り換えることによって、浄水モードと逆洗モードと原水モードを切り換えている。浄水モードのとき(
図19に示す状態のとき)、取付本体110の流入路P111が浄水本体120の第1流路P121に連通して原水を第1ろ材125に通して浄水にし、第2流路P122と浄水流出路P112を通過して、浄水流出口112から浄水を流出させる。また、逆洗モードのとき、取付本体110の流入路P111が浄水本体120の第3流路P123に連通して、原水を第2ろ材126に通して浄水にし、その浄水を第1ろ材125に通して逆洗し、第1流路P121とそれに連通する排水流出路(図示せず)を通過して排水流出口(図示せず)から排水を流出させる。また、原水モードのとき、取付本体110の流入路P111が浄水本体120の第4流路P124を介して取付本体110の原水流出路P114に連通して原水流出口114から原水を流出させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような浄水器101は、逆洗モードのとき、第2ろ材126に通して得られる浄水によって第1ろ材125の逆洗を行うため、原水の中に不純物が多い場合でも、第1ろ材125の逆洗を極めて効果的に行うことができ、その結果、浄水器101の浄水能力を長く維持することができる。
【0008】
本願発明者は、浄水器101が更に改良できないかどうか鋭意研究し、第2ろ材126を他の機能にも利用できるようにすれば、浄水器101の浄水能力を更に長く維持することができることを見出し、本願発明を案出するに至った。
【0009】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付本体に対して浄水本体を回動させることで浄水モードと逆洗モードを切り換える浄水器において、浄水能力を更に長く維持できる浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る浄水器は、流入口と1個又は
2個の流出口を有し、前記流入口からの原水が流入する流入路と前記流出口に向けて水を流すための
2個の流出路を有して、水道の水栓に取付けられ得る取付本体と、第1流路、第2流路、第3流路
及び互いに同じ大きさで同種の第1ろ材、第2ろ材を有し、前記第1流路と前記第2流路の間に
前記第1ろ材、前記第3流路と前記第2流路の間に
前記第2ろ材が配設されて、前記取付本体に対して回動可能な状態で装着される浄水本体と、を備えてなり、
前記浄水本体の前記取付本体に対する回動位置に応じて、前記第1ろ材と前記第2ろ材に水が並列に流れる並列ろ材モードと、前記第1ろ材と前記第2ろ材に水が直列に流れる直列ろ材モードと、に少なくとも切り換えることができる浄水器であって、前記浄水本体が前記取付本体に対して
前記並列ろ材モードの回動位置にあるとき、前記第1流路と前記第3流路が前記流入路に連通し、かつ、前記第2流路が前記
2個の流出路
のうちの一方に連通し、前記浄水本体が前記取付本体に対して
前記直列ろ材モードの回動位置にあるとき、前記第3流路又は前記第1流路
のうち一方が前記流入路に連通し、かつ、
第3流路又は前記第1流路のうち他方が前記
2個の流出路
のうちの他方に連通する。
【0011】
好ましくは、前記並列ろ材モードは浄水モードであり、前記直列ろ材モードは、
前記浄水本体の前記取付本体に対する回動位置に応じて切り換えることができる第1逆洗モードと第2逆洗モードがあり、前記浄水本体が前記取付本体に対して第1逆洗モードの回動位置にあるとき、前記第3流路が前記流入路に連通し、かつ、前記第1流路が前記
2個の流出路のうちの前記他方に連通し、前記浄水本体が前記取付本体に対して第2逆洗モードの回動位置にあるとき、前記第1流路が前記流入路に連通し、かつ、前記第3流路が前記
2個の流出路のうちの前記他方に連通する。
【0012】
好ましくは、前記流出口は、浄水流出口と排水流出口があり、前記流出路は、前記浄水流出口に向けて水を流すための浄水流出路と前記排水流出口に向けて水を流すための排水流出路があり、前記浄水本体が前記取付本体に対して浄水モードの回動位置にあるとき、前記第2流路が前記浄水流出路に連通し、前記浄水本体が前記取付本体に対して第1逆洗モードの回動位置にあるとき、前記第1流路が前記排水流出路に連通し、前記浄水本体が前記取付本体に対して第2逆洗モードの回動位置にあるとき、前記第3流路が前記排水流出路に連通する。
【0013】
好ましくは、前記浄水本体が前記取付本体に対して第1逆洗モード又は第2逆洗モードの回動位置にあるとき、浄水モードでの回動位置を基準にして互いに逆回りの位置であり、前記浄水本体において前記第1ろ材と第2ろ材が収容される浄水部の軸方向が前記流入口への原水の流入方向に対し平行な方向になる。
【0014】
好ましくは、前記取付本体には、弁部挿入用孔部が形成されており、前記浄水本体には、弁部が設けられており、この弁部が前記弁部挿入用孔部に挿入されて回動可能に装着されており、前記弁部の外周面に、前記第1流路の2個の開口部である第1流路第1開口及び第1流路第2開口、前記第2流路の開口部である第2流路開口、前記第3流路の2個の開口部である第3流路第1開口及び第3流路第2開口が設けられており、前記第1流路第1開口、前記第1流路第2開口、前記第3流路第1開口、前記第3流路第2開口は、前記外周面の同円周上に形成されており、前記第1流路第1開口と第3流路第1開口は
、浄水モードのとき
にともに原水が流入するように
隣に有る。
【0015】
好ましくは、前記取付本体は、原水流出口と、この原水流出口に向けて水を流すための原水流出路を有しており、前記浄水本体は、第4流路を有し、この第4流路の開口部である第4流路第1開口と第4流路第2開口がそれぞれ、前記弁部の外周面と先端面に設けられており、前記浄水本体が前記取付本体に対して原水モードの回動位置にあるとき、前記流入路は、前記第4流路第1開口、前記第4流路、第4流路第2開口を介して前記原水流出路に連通する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浄水器によれば、取付本体に対して浄水本体を回動させることで並列ろ材モードと直列ろ材モードを切り換える。並列ろ材モード(浄水モード)では原水を第1ろ材とともに第2ろ材に通して浄水にするので、第1ろ材及び第2ろ材に捕捉される不純物の量が相対的に減り、浄水能力を更に長く維持できる。また、直列ろ材モードを第1逆洗モードと第2逆洗モードとすると、第1ろ材と第2ろ材を互いの逆洗の浄水に用いることで相乗的に逆洗能力を高く保つので、浄水能力を更に長く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る浄水器の浄水モードの状態の外観を示す斜視図である。
【
図2】同上の浄水器の第1逆洗モードの状態の外観を示す斜視図である。
【
図3】同上の浄水器の第2逆洗モードの状態の外観を示す斜視図である。
【
図4】同上の浄水器の原水モードの状態の外観を示す斜視図である。
【
図5】同上の浄水器の浄水モードの状態を示す正面視断面図である。
【
図6】同上の浄水器の浄水モードの状態を示す平面視断面図である。
【
図7】同上の浄水器の浄水モードの状態を示す断面図であって、(a)がX−Xの位置で切断したもの、(b)がX’−X’の位置で切断したものである。
【
図8】同上の浄水器の流出口が設けられた下端面の底面図である。
【
図9】同上の浄水器の形態の変形例を示すX−Xの位置で切断した断面図である。
【
図10】同上の浄水器の第1逆洗モードの状態を示す正面視断面図である。
【
図11】同上の浄水器の第1逆洗モードの状態を示す平面視断面図である。
【
図12】同上の浄水器の第1逆洗モードの状態を示す断面図であって、(a)がX−Xの位置で切断したもの、(b)がX’−X’の位置で切断したものである。
【
図13】同上の浄水器の第2逆洗モードの状態を示す正面視断面図である。
【
図14】同上の浄水器の第2逆洗モードの状態を示す平面視断面図である。
【
図15】同上の浄水器の第2逆洗モードの状態を示す断面図であって、(a)がX−Xの位置で切断したもの、(b)がX’−X’の位置で切断したものである。
【
図16】同上の浄水器の原水モードの状態を示す正面視断面図である。
【
図17】同上の浄水器の原水モードの状態を示す平面視断面図である。
【
図18】同上の浄水器の原水モードの状態を示す断面図であって、(a)がX−Xの位置で切断したもの、(b)がX’−X’の位置で切断したものである。
【
図19】従来の浄水器101を示す正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る浄水器1は、
図1〜
図4に示すように、水道の水栓(蛇口)Fに取付け可能な取付本体10と、水栓Fからの原水をろ過によって浄水にすることができる浄水本体20と、を備えてなる。浄水器1は、浄水本体20が取付本体10に回動可能な状態で装着され、浄水本体20の取付本体10に対する回動位置に応じて、後述の第1ろ材25と第2ろ材26に水が並列に流れる並列ろ材モードと、第1ろ材25と第2ろ材26に水が直列に流れる直列ろ材モードと、に少なくとも切り換えることができる。より詳細には、並列ろ材モードは、第1ろ材25と第2ろ材26を用いて浄水を流出させる浄水モードであり、直列ろ材モードは、第1ろ材25を逆洗する第1逆洗モードと、第2ろ材26を逆洗する第2逆洗モード、である。また、本実施形態では、原水をそのまま流出させる原水モードを有している。なお、
図1、
図2、
図3、
図4はそれぞれ、浄水モード、第1逆洗モード、第2逆洗モード、原水モードの状態の外観を示している。また、これらの図において浄水本体20の側面には、第1ろ材25側に「1」を第2ろ材26側に「2」を表示しているが、各モードの区別のために様々な表示が可能である。
【0019】
取付本体10は、本実施形態では、
図5に示すように、水栓Fへの浄水器1の取付けのために、取付カバー10aaとパッキン10Aを有し、それにより水栓Fの端部を挟み込む(挟着する)ことができる。取付カバー10aaは取付本体10の外郭となる取付本体基部10a(例えば、プラスチック製)における分離可能な上部分である。パッキン10Aは、漏水を防ぐための弾力性のある例えば、合成ゴム製のリング状部材であって、取付本体基部10aの上側中央部に嵌め込まれ、その中央の貫通孔部分が後述する流入口11になっている。水栓Fからの原水は、流入口11に流入する。流入口11への原水の流入方向は、図におけるA方向となる。
図5において符号10AAで示しているのは、ゴミ等が入り込まないようにするゴミ取り網である。なお、
図5及び後述するその他の正面視断面図は、
図6等に示すV−Vの位置で切断したものであり、後述する
図6などの平面視断面図は、
図5等に示すH−Hの位置で切断したものである。
【0020】
取付本体10は、
図5〜
図7に示すように、上方から原水が流入する流入口11が設けられている。また、取付本体10は、流出口として、浄水を流出させる浄水流出口12、後述の第1ろ材25又は第2ろ材26を逆洗したときの排水を流出させる排水流出口13、原水をそのまま流出させる原水流出口14、が設けられている。本実施形態では、
図8に示すように、下端面の中央に単一孔の浄水流出口12、その外方に単一孔の排水流出口13、その周囲に原水をシャワー状態で流出するよう多数の小孔からなる原水流出口14、をそれぞれ設けている。なお、
図7等のX−Xの位置で切断した断面図又はX’−X’の位置で切断した断面図では、背景の後述する浄水部20Aは省略している。
【0021】
取付本体10の内部には、
図5及び
図7に示すように、流入口11からの原水が流入する流入路P11が設けられており、また、流出路として、浄水流出口12に通ずる浄水流出路P12、排水流出口13に通ずる排水流出路P13、原水流出口14に通ずる原水流出路P14が、互いに隔絶されて設けられている。なお、
図5等においては、原水流出路P14は、分離して示されているが、全て連通している。
【0022】
取付本体10には、浄水本体20の後述する弁部20Bが挿入されて回動可能に装着されるように弁部挿入用孔部15が形成されている。弁部挿入用孔部15の内周面には、
図7に示すように、流入路P11における流入口11と反対側の端部である流入路開口11A(
図7(a)参照)、浄水流出路P12における浄水流出口12と反対側の端部である浄水流出路開口12A(
図7(b)参照)、排水流出路P13における排水流出口13と反対側の端部である排水流出路開口13A(
図7(a)参照)、が設けられている。流入路開口11Aと排水流出路開口13Aは、弁部挿入用孔部15の内周面の同円周上に、対向するように形成されている(
図7(a)参照)。これら同円周上に有る開口は、相互間の漏水を防ぐために、弁部挿入用孔部15の内周面に取り付けられた環状のパッキン10Bの貫通孔部分に設けられている。浄水流出路開口12Aは、弁部挿入用孔部15の内周面において流入路開口11Aと排水流出路開口13Aよりも弁部挿入用孔部15の入口側に形成されている(
図5及び
図6参照)。浄水流出路開口12Aは、漏水を防ぐために、弁部挿入用孔部15の内周面に取り付けられたパッキン10Cの貫通孔部分に設けられている。また、弁部挿入用孔部15の底面(奥の面)には、原水流出路P14の一部が露出している(
図5及び
図6参照)。
【0023】
なお、本実施形態では、弁部挿入用孔部15の内周面には突起16Aと凸部16Bが形成され、また、浄水本体20の後述する弁部20Bの外周面には円環状の溝28Aと凹部28Bが形成されている(
図5参照)。突起16Aは溝28Aに差し込まれており、それらは弁部挿入用孔部15に対する弁部20Bの軸方向(図におけるC方向)の位置を固定する。凸部16Bは凹部28Bに嵌り込み、それらは、各モード(浄水モード、第1逆洗モード、第2逆洗モード、又は原水モード)時の弁部挿入用孔部15に対する弁部20Bの周方向(回動の方向)の位置を安定させる。
【0024】
浄水本体20は、
図5〜
図7に示すように、浄水本体基部20a(例えば、プラスチック製)の内部に、互いに隔絶された第1流路P21(
図6及び
図7参照)、第2流路P22(
図5〜
図7参照)、第3流路P23(
図6及び
図7参照)を有している。また、第1流路P21と第2流路P22の間に第1ろ材25、第2流路P22と第3流路P23の間に第2ろ材26が配設されている(
図6参照)。浄水本体20の、第1ろ材25と第2ろ材26が配設される部分が浄水部20Aである。また、浄水本体20の、取付本体10の弁部挿入用孔部15に挿入されて回動可能な状態で装着される部分が弁部20Bである。よって、浄水本体20のうち外部に主に現れるのは、浄水部20Aである。
【0025】
浄水本体20は、浄水部20Aが略円柱状であり、弁部20Bが浄水部20Aよりも小さな略円柱状を成して、浄水部20Aの側面の中央部から浄水部20Aの軸方向(図におけるB方向)に対し直交方向(図におけるC方向)に設けられた外郭形状となっている。
【0026】
浄水部20Aにおける浄水本体基部20aは、内部に中空部が形成されており、
図6において中央部よりも少し上部の辺りから上方部分が分離可能な蓋部分20aaとなっている。蓋部分20aaの接合部分には、漏水を防ぐために、パッキン(Oリング)20Cが嵌め込まれている。
【0027】
浄水部20Aの中空部には、ろ材収容体27(例えば、プラスチック製)が収容されて浄水本体基部20aに取り付けられている。ろ材収容体27の内部には、第1ろ材25と第2ろ材26が収容されている。ろ材収容体27は、第1ろ材25と第2ろ材26とともに新しいものへの交換などのために、蓋部分20aaを分離させて浄水本体基部20aから取り外すことが可能である。
【0028】
ろ材収容体27は、具体的には、第1ろ材収容部27aと中央仕切り部27bと第2ろ材収容部27cを有するようにすることができる。中央仕切り部27bは、第1ろ材収容部27aと第2ろ材収容部27cの間に設けられている。第1ろ材25は第1ろ材収容部27aと中央仕切り部27bとで囲まれ、第2ろ材26は第2ろ材収容部27cと中央仕切り部27bとで囲まれて収容されている。
【0029】
第1ろ材収容部27aと浄水本体基部20a(主に、蓋部分20aa)との間の隙間は、第1流路P21の一部となっている。第1ろ材収容部27aには、この第1流路P21の一部と第1ろ材25を連通する連通孔27aaが形成されている。第2ろ材収容部27cと浄水本体基部20aとの間の隙間は、第3流路P23の一部となっている。第2ろ材収容部27cには、この第3流路P23の一部と第2ろ材26を連通する連通孔27caが形成されている。中央仕切り部27bには、第2流路P22の一部が形成されており、また、この第2流路P22の一部を第1ろ材25及び第2ろ材26にそれぞれ連通する連通孔27ba、27bbが形成されている。中央仕切り部27bには、第1流路P21と第2流路P22の間の漏水を防ぐために、パッキン(Oリング)20Dが嵌め込まれており、また、第2流路P22と第3流路P23の間の漏水を防ぐために、パッキン(Oリング)20Eが嵌め込まれている(
図6参照)。
【0030】
第1ろ材25と第2ろ材26は、特に材料は限定されないが、中空糸膜、平膜、セラミック膜、活性炭成形フィルター、積層フィルター、糸巻フィルター、金属フィルターなどのものが可能である。
【0031】
第1ろ材25と第2ろ材26は、互いに同じ大きさで同種のものであるのが好ましい。そうすると、浄水モードのとき、第1ろ材25と第2ろ材26に捕捉される不純物の量が互いに同程度となる。その結果、逆洗が必要になるまでの期間が同程度となるので、浄水器1の性能維持のために第1逆洗モードのときの第1ろ材25の逆洗と第2逆洗モードのときの第2ろ材26の逆洗を続けて行えばよいことになり、浄水器1のメンテナンスが容易になる。また、第1ろ材25と第2ろ材26について浄水能力の維持可能な期間(寿命)が同程度となるので、第1ろ材25と第2ろ材26をろ材収容体27とを一体の浄水カートリッジにして新しいものへの交換を浄水カートリッジ単位で行っても、第1ろ材25と第2ろ材26がともにその浄水能力の維持可能な期間(寿命)を使い切ることが可能となる。
【0032】
弁部20Bは、浄水本体基部20aの内部に、第1流路P21、第2流路P22、第3流路P23が浄水部20Aから延長されて形成されている。弁部20Bの外周面には、
図7に示すように、第1流路P21の2個の開口部である第1流路第1開口21Aa及び第1流路第2開口21Ab(
図7(a)参照)、第2流路P22の開口部である第2流路開口22A(
図7(b)参照)、第3流路P23の2個の開口部である第3流路第1開口23Aa及び第3流路第2開口23Ab(
図7(a)参照)、が設けられている。第1流路第1開口21Aa、第1流路第2開口21Ab、第3流路第1開口23Aa、第3流路第2開口23Abは、弁部20Bの外周面の同円周上に形成されている(
図7(a)参照)。第1流路第1開口21Aaと第3流路第1開口23Aaは、隣接しており、後述するように、浄水モードのときに、ともに原水が流入する。なお、第2流路開口22Aは、本実施形態では、弁部20Bの外周面においてこれら同円周状に有る開口よりも弁部20Bの根元側(浄水部20A側)に形成されている。
【0033】
また、弁部20Bには、原水モード時に取付本体10の流入路P11と原水流出路P14を連通させるバイパスとなる第4流路P24が形成されている。第4流路P24の一方の開口部である第4流路第1開口24Aaは、弁部20Bの外周面に形成されており、第1流路第1開口21Aa等と同円周上に形成されている(
図7(a)参照)。第4流路P24のもう一方の開口部である第4流路第2開口24Abは、弁部20Bの先端面に形成されている(
図5及び
図6参照)。
【0034】
同円周上に形成される第1流路第1開口21Aa等は、
図7(a)に示したのよりも他の形態も可能であり、例えば、
図9に示すように、弁部挿入用孔部15の内周面のパッキン10Bが90度ずつ回転しても同じ形状になるように、第1流路第2開口21Ab、第3流路第2開口23Ab、第4流路第1開口24Aaがそれぞれ2個に分岐した形態とすることも可能である。なお、
図9においては、弁部挿入用孔部15の内周面の流入路開口11Aと排水流出路開口13Aもそれぞれ、2個に分岐した形態としている。
【0035】
また、詳細には、弁部20Bにおける第2流路P22は、弁部20Bの軸方向(図におけるC方向)の中心線に沿って、弁部20Bの根元から先端側に伸びて第2流路開口22Aに通じている(
図5参照)。弁部20Bにおける第1流路P21は、第2流路P22よりも片方の外周面側に有って弁部20Bの根元から先端側に第2流路P22よりも長く伸びて第1流路第1開口21Aa及び第1流路第2開口21Abに通じている(
図6参照)。第1流路P21は、第1流路第1開口21Aa及び第1流路第2開口21Abの近くでは周方向に広がっている(
図7(a)参照)。弁部20Bにおける第3流路P23は、第1流路P21の反対側の外周面側に有って弁部20Bの根元から先端側に第1流路P21と同じ長さに伸びて第3流路第1開口23Aa及び第3流路第2開口23Abに通じている(
図6参照)。第3流路P23は、第3流路第1開口23Aa及び第3流路第2開口23Abの近くでは周方向に広がっている(
図7(a)参照)。
【0036】
以上説明した構成の浄水器1は、浄水本体20の取付本体10に対する回動位置に応じて、浄水本体20の第1流路P21、第2流路P22、第3流路P23と流入路P11、浄水流出路P12、排水流出路P13、原水流出路P14の連通関係が変わり、それによって、浄水モード、第1逆洗モード、第2逆洗モード、原水モードに切り換えることができる。これまで説明に用いてきた
図5〜
図7は、取付本体10と浄水本体20が浄水モードの回動位置にあるものである。
【0037】
浄水本体20が取付本体10に対して浄水モードの回動位置にあるとき、第1流路第1開口21Aaと第3流路第1開口23Aaが流入路開口11Aに、第2流路開口22Aが浄水流出路開口12Aに、それぞれ相対することにより、流入路P11が第1流路P21と第3流路P23に連通し(
図7(a)参照)、第2流路P22が浄水流出路P12に連通する(
図7(b)参照)。この浄水モードでは、原水は、流入口11から流入路P11を通過した後、第1流路P21、第1ろ材収容部27aの連通孔27aaを通過して、第1ろ材25でろ過されて浄水となり、かつ、第3流路P23、第2ろ材収容部27cの連通孔27caを通過して、第2ろ材26でろ過されて浄水となる。第1ろ材25と第2ろ材26でろ過された浄水は、中央仕切り部27bの連通孔27ba又は連通孔27bbを通過し、それから第2流路P22、浄水流出路P12を通過して、浄水流出口12から流出する。このとき、原水に含まれる不純物は、第1ろ材25の第1流路P21側と第2ろ材26の第3流路P23側に捕捉されて蓄積される。なお、第4流路P24は排水流出路P13と原水流出路P14に連通しているがその他には連通せず、従って、それらは水が通過しない(流れない)状態になっている。
【0038】
図10〜
図12は、浄水本体20が取付本体10に対して第1逆洗モードの回動位置にあるときのものである。第1逆洗モードでは、第3流路第2開口23Abが流入路開口11Aに、第1流路第2開口21Abが排水流出路開口13Aに、それぞれ相対することにより、流入路P11が第3流路P23に連通し、第1流路P21が排水流出路P13に連通する(
図12(a)参照)。この第1逆洗モードでは、原水は、流入口11から、流入路P11、第3流路P23、第2ろ材収容部27cの連通孔27caを通過して、第2ろ材26でろ過され浄水となる。第2ろ材26でろ過された浄水は、中央仕切り部27bの連通孔27bb及び連通孔27baを通って中央仕切り部27bを横断し、第1ろ材25を浄水モード時と逆方向に通過して第1ろ材25に蓄積された不純物を含む水、すなわち排水となる。第1ろ材25からの排水は、第1ろ材収容部27aの連通孔27aa、第1流路P21、排水流出路P13を通過して、排水流出口13から流出する。従って、第1ろ材25には浄水が流れるので、原水に含まれる不純物が第1ろ材25と第2ろ材26の間に設けられている第2流路P22の一部に付着したり第1ろ材25の第2流路P22側に捕捉されたりすることはない。従って、原水の中に不純物が多く含まれていても、第1ろ材25の逆洗を極めて効果的に行うことができる。なお、第2流路P22は他に連通せず、浄水流出路P12は他に連通せず、第4流路P24と原水流出路P14は連通しているがその他には連通せず、従って、それらは水が通過しない(流れない)状態になっている。
【0039】
図13〜
図15は、浄水本体20が取付本体10に対して第2逆洗モードの回動位置にあるときのものである。第2逆洗モードでは、第1流路第2開口21Abが流入路開口11Aに、第3流路第2開口23Abが排水流出路開口13Aに、それぞれ相対することにより、流入路P11が第1流路P21に連通し、第3流路P23が排水流出路P13に連通する(
図15(a)参照)。この第2逆洗モードでは、原水は、流入口11から、流入路P11、第1流路P21、第1ろ材収容部27aの連通孔27aaを通過して、第1ろ材25でろ過され浄水となる。第1ろ材25でろ過された浄水は、中央仕切り部27bの連通孔27ba及び連通孔27bbを通って中央仕切り部27bを横断し、第2ろ材26を浄水モード時と逆方向に通過して第2ろ材26に蓄積された不純物を含む水、すなわち排水となる。第2ろ材26からの排水は、第2ろ材収容部27cの連通孔27ca、第3流路P23、排水流出路P13を通過して、排水流出口13から流出する。従って、第2ろ材26には浄水が流れるので、原水に含まれる不純物が第1ろ材25と第2ろ材26の間に設けられている第2流路P22の一部に付着したり第2ろ材26の第2流路P22側に捕捉されたりすることはない。従って、原水の中に不純物が多く含まれていても、第2ろ材26の逆洗を極めて効果的に行うことができる。なお、第2流路P22は他に連通せず、浄水流出路P12は他に連通せず、第4流路P24と原水流出路P14は連通しているがその他には連通せず、従って、それらは水が通過しない(流れない)状態になっている。
【0040】
図16〜
図18は、浄水本体20が取付本体10に対して原水モードの回動位置にあるときのものである。原水モードでは、第4流路第1開口24Aaが流入路開口11Aに相対する(
図18(a)参照)。また、第4流路P24と原水流出路P14は連通している。よって、流入路P11は、第4流路P24を介して原水流出路P14に直接連通する。原水モード時には、原水は、流入口11から第4流路P24、原水流出路P14を通過して、原水流出口14から流出する。なお、第1流路P21と排水流出路P13及び第3流路P23と排水流出路P13は連通しているが他に連通せず、第2流路P22は他に連通せず、浄水流出路P12は他に連通せず、従って、それらは水が通過しない(流れない)状態になっている。
【0041】
このようにして、浄水本体20を取付本体10に対して回動させることによって、浄水モード、第1逆洗モード、第2逆洗モード、原水モードを切り換え、浄水モードでは原水を第1ろ材25とともに第2ろ材26に通して浄水にするので、第1ろ材25(及び第2ろ材26)に捕捉される不純物の量が相対的に減る。また、第1逆洗モードと第2逆洗モードで、第1ろ材25と第2ろ材26を互いの逆洗の浄水に用いることで相乗的に逆洗能力を高く保つ。その結果、浄水器1の浄水能力を更に長く維持することができる。
【0042】
本実施形態では、第1逆洗モードの回動位置を、浄水モードの回動位置を基準にして左回り90度(左側面視において)の位置とし、第2逆洗モードの回動位置を、浄水モードの回動位置を基準にして右回り90度(左側面視において)の位置としている。この具体的な角度間隔は、90度に限らず、180度よりも小さい範囲で仕様に合わせて決めることができ、左回り右回りも仕様に合わせて決めることができる。また、本実施形態では、原水モードの回動位置は、浄水モードの回動位置を基準にして180度の位置としている。
【0043】
浄水本体20のうち外部に現れる浄水部20Aは、浄水部20Aの軸方向(図におけるB方向)に2個のろ材(第1ろ材25と第2ろ材26)が直列に設けられるので、浄水部20Aの軸方向の長さが比較的長くなる。従って、本実施形態のように、排水しか流出せず容器等に通常は水を供給しないモードである第1逆洗モードと第2逆洗モードでの取付本体10に対する浄水本体20の回動位置は、
図2及び
図3示すように、浄水モードでの回動位置を基準にして互いに逆回りの位置であり、浄水部20Aの軸方向(
図10及び
図13におけるB方向)が流入口11への原水の流入方向(
図10及び
図13におけるA方向)に対し平行な方向になるようにするのが好ましい。換言すれば、浄水モードと原水モードのときには、
図1及び
図4に示すように、浄水部20Aの軸方向が流入口11への原水の流入方向に対し直交する方向になるようにするのが好ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係る浄水器1について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、原水モードにおいてシャワー状態で流出しないように原水流出口14を単一孔としてもよい。また、浄水器の仕様によっては、原水モードを設けず、原水流出口14、原水流出路P14、第4流路P24を省略することも可能である。また、直列ろ材モードは、第1逆洗モード及び第2逆洗モードとは別の機能の、或いはそれらと兼用の別の機能のモードとすることも可能である。また、浄水流出口12、排水流出口13、原水流出口14をまとめて1〜2個の流出口とすることも可能である。この場合、流出路は、流出口に応じて設計変更される。