(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6607476
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】丁張装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/02 20060101AFI20191111BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20191111BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
G01C15/02
G01C15/00 102Z
E04G21/18 B
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-97174(P2019-97174)
(22)【出願日】2019年5月7日
【審査請求日】2019年6月4日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016929
【氏名又は名称】田中 秋男
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋男
【審査官】
仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−14823(JP,U)
【文献】
実開昭63−54014(JP,U)
【文献】
米国特許第7669342(US,B1)
【文献】
米国特許第4972591(US,A)
【文献】
実開昭59−140337(JP,U)
【文献】
実開平1−158898(JP,U)
【文献】
特開平11−117536(JP,A)
【文献】
特開2001−272230(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/044541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 5/00−15/14
E04G 21/18
E02D 27/00−27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に設けられてなる水準器と、他方の端部に設けられてなる尖端部と、中間部に設けられてなる拡径部と、略円柱の形状で高さ方向に貫通孔が設けられてなり、前記一方の端部と前記拡径部との間を摺動可能なハンマー部材を有する棒状部材と、前記棒状部材への接合部材が設けられてなり、板状部材を保持可能な挟持部材を有することを特徴とする丁張用装置。
【請求項2】
前記水準器は、前記棒状部材の前記一方の端部に着脱可能であることを特徴とする、請求項1に記載の丁張装置。
【請求項3】
前記棒状部材の前記一方の端部側と前記他方の端部の少なくともいずれかは、前記拡径部に着脱可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の丁張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事の際に、建物の水平方向の高さ、建物の配置、柱や壁の位置などを規定するための、丁張に用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
丁張は、前記のように、建築工事に際して、現場に設置する立体的な基準となる構造物である。一般的には、尖端部を設けた木材の杭を地面に突き立て、貫板と称される木製の薄板を、水平に配した状態で、杭に接合することにより構築する。
【0003】
丁張は建築工事の進捗に伴い撤去され、用いた木材は廃棄されることになるので、森林資源の保護や環境への負荷という観点で問題となるが、これは、杭を打ち込む作業に、掛矢などを用いるので、杭の頭頂が破損したり、貫板を杭に釘など接合したりすることで、再利用が困難であることが原因の一つになっていると考えられる。
【0004】
また、杭は鉛直方向に固定した状態で打ち込む必要があるので、一人の作業者が杭を保持し、もう一人の作業者が掛矢を操作することになり、昨今の人出不足を考慮すると、一人での作業を可能とすることも、重要な課題である。
【0005】
特許文献1には、材料の使い捨てを避けるために、材料の使い捨てを避けるための技術として、金属製の杭を、基準体の両端に設けられたガイド筒に挿入する構成の丁張器具が開示されている。しかし、この器具は、金属製の杭を地面に打ち込む作業の観点で、前記の課題に必ずしも十分に対応できないという課題がある。
【0006】
また、特許文献2にも、繰り返しの使用が可能な、鋼製の丁張セットが開示されている。しかし、ここに開示されている丁張セットも、前記の課題の観点から、改善の余地があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−094084号公報
【特許文献2】特開2001−182326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、繰り返しの使用が可能で、一人作業で設置が可能な丁張装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題解決のため、新規構造の杭の開発により、杭の設置作業と貫板の配置作業の効率化を検討した結果なされたものである。
【0010】
本発明は、一方の端部に設けられてなる水準器と、他方の端部に設けられてなる尖端部と、中間部に設けられてなる拡径部と、略円柱の形状で高さ方向に貫通孔が設けられてなり、前記一方の端部と前記拡径部との間を摺動可能なハンマー部材を
有する
棒状部材と、前記棒状部材への接合部材が設けられてなり、板状部材を保持可能な挟持部材を有することを
特徴とする丁張用装置である。
【0011】
また、本発明は、前記水準器が、前記棒状部材の前記一方の端部に着脱可能であることを特徴とする、前記の丁張装置である。
【0012】
また本発明は、前記棒状部材の前記一方の端部側と前記他方の端部の少なくとも
いずれかが、前記拡径部に着脱可能であることを特徴とする、前記の丁張装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の丁張装置における杭は、前記のように、中間に拡径部を備えた棒状の部材であり、棒状の部材に遊嵌し、棒状の部材の長さ方向に摺動可能なハンマー部材を備えているので、尖端形状が設けられている側を、地面の所要の位置に当接させた状態で、ハンマー部材を拡径部に衝突させることで、尖端部を地面に進入させることが可能である。
【0014】
しかも、杭を設置する際の上端には、水準器が設けられているので、杭を鉛直方向に保持しながら、設置作業が行え、従来のように掛矢などを用いる必要がないので、一人での作業が可能となる。さらに、杭を鋼などで構成することで、繰り返しの使用が可能となる。
【0015】
本発明の丁張装置においては、貫板を設置するための挟持部材を、杭の任意の位置に取り付けることが可能であり、従来よりも貫板の設置と着脱が容易に行え、貫板の繰り返しの使用も可能である。
【0016】
また、本発明に用いる杭は、例えば水準器と拡径部に設けた雌ネジに、棒状部材の所要の端部に設けた雄ネジを螺合させた構造とすることで、抗を設置した後に、拡径部と水準器を分離することが可能である。丁張に必要不可欠なのは、杭と貫板であり、水準器、拡径部、ハンマー部材は、杭の設置作業のみで用いられるので、先端形状を備えた棒状部材を所要量準備すればよいことになる。つまり、それぞれの部材の繰り返しの使用が可能であることを勘案すると、本発明に係る丁張装置は、従来よりもコストが大幅に増加することがないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】 本発明の丁張装置に用いられる杭の一例を示す図、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は内部の構造の一例を示すための断面図。
【
図2】 本発明の丁張装置を用いた丁張の設置状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明に係る丁張装置の実施の形態について、具体的な図を参照しながら説明すする。
【0019】
図1は、本発明の丁張装置に用いられる杭1の一例を示す図で、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は内部の構造の一例を示すための断面図である。ここに示した例は、棒状部材4が、第一の棒状部材4aと第二の棒状部材4bが、拡径部6を介して接合された構造である。第一の棒状部材4aの図における上端には、雄ネジが設けられ、水準器3が収納されている水準器収納部材2に設けれられた雌ネジと併せて第一の接合部を構成している。
【0020】
円柱形状を有する拡径部6の両端面のそれぞれには、雌ネジが設けられ、第一の棒状部材4aの図における下端に設けられた雄ネジと併せて、第二の接合部7bを構成し、第二の棒状部材4bの図における上端に設けられた雄ネジと併せて、第三のの接合部7cを構成している。
【0021】
ハンマー部材5は、略円柱形状で、中心軸の部分に形成された貫通孔5aに、第一の棒状部材4aが挿通され、第二の棒状部材4aに沿った状態で、水準器収納部材2と拡径部6との間を摺動可能となっている。杭1をこのような構造とすることで、第二の棒状部材4bの先端部を建築現場の所要の位置に当接させ、ハンマー部材5を水準器収納部2の近傍まで持ち上げて落下させると、拡径部6にハンマー部材5が衝突して、尖端部が地面に進入する。その際にハンマー部材5を、作業者が手で、拡径部材に叩きつけることも可能である。
【0022】
図2は、本発明の丁張装置を用いた丁張の設置状態の一例を示す図である。
【0023】
前記のように本発明の丁張装置に係る杭1は、棒状部材4、水準器収納部材2、拡径部6が分離する構造とすることも可能なので、杭1の設置作業が終了した後は、
図2に示したように、第二の棒状部材4bのみを残し、貫板を配置することができる。
【0024】
図2に示した例では、貫板挟持部材8a、8bを、パイプ形状の貫板接合部材9a、9bを介して、第二の棒状部材4bに取り付け、貫板11a、11bを配置する。貫板接合部材9a、9bと貫板挟持部材8a、8bは、金属製の部材を溶接などで相互に接合固定したものとすることで、繰り返しの使用が可能となる。
【0025】
貫板接合部材9a、9bには、適当な位置に雌ネジを設けることで、予め設置された棒状部材4bの任意の位置に固定ネジ10a、10bで固定できるので、貫板11a、11bを水平に保持した状態で取り付けることが可能である。ここでは図示しないが、貫板挟持部材8a、8bに雌ネジを設けることにより、固定ネジを用いて、貫板11a、11bを確実に保持できる。
【0026】
また、
図2示したように、貫板挟持部材8aは貫板を挟持する部分がストレートであり、直線状に貫板を配するのに用いられ、貫板挟持部材8bは、略中央で直角に折り曲げられた形状を有し、貫板を直行させる部位に用いられる。必要により、貫板挟持部材を交叉形状や三叉形状とすることも可能である。
【0027】
以上に説明したように、本発明によれば、繰り返しの使用が可能で、作業効率が大幅に向上した丁張装置を提供することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・杭 2・・・水準器収納部材2 3・・・水準器
4・・・棒状部材 4a・・・第一の棒状部材
4b・・・第二の棒状部材 5・・・ハンマー部材
5a・・・貫通孔 6・・・拡径部 7a・・・第一の接合部
7b・・・第二の接合部 7c・・・第三の接合部
8a,8b・・・貫板挟持部材 9a,9b・・・貫板接合部材
10a,10b・・・固定ネジ 11a,11b・・・貫板
【要約】 (修正有)
【課題】繰り返しの使用が可能で、一人作業で設置が可能な丁張装置の提供。
【解決手段】一方の端部に水準器3を設け、他方の端部に尖端部を設け、中間部に拡径部6を設けた金属製の棒状部材からなる杭1の、水準器3と拡径部6との間に、略円柱の形状で中心部に貫通孔を設けたハンマー部材5を遊嵌させ、尖端部を建築現場の所要に位置に当接させた状態で、ハンマー部材5を拡径部6に衝突させることで尖端部を打ち込む。打ち込まれた杭1に、着脱可能で、杭1の任意の位置に固定可能な貫板挟持部材を取り付け、貫板挟持部材の間に貫板を配し、丁張を構成する。付属する水準器3を利用して、杭1を鉛直に設置することが可能で、杭1を構成する棒状部材4、水準器3、拡径部6、ハンマー部材5を分離可能に金属で構成する。
【選択図】
図1