(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゴムタイヤを備えてクレーン構造体の下面に設置される走行装置と、地面と直接または間接的に接触して前記クレーン構造体を支持する荷重支持機構とを備える岸壁クレーンにおいて、
車輪を有する前記荷重支持機構と、前記地面に敷設されるレールと、前記ゴムタイヤと前記車輪とを相対的に上下移動させる昇降機構とを備えていて、
前記ゴムタイヤを前記地面に接地させた状態で、前記昇降機構により前記車輪を前記ゴムタイヤに対して相対的に下方移動させて前記レールの上に転動可能に配置する構成を有するとともに、
前記走行装置に発生する輪重を測定する測定部と、この測定部で測定された輪重と予め定められた許容輪重とを比較して前記測定された輪重が前記許容輪重を超えた場合に前記昇降機構を動作させて前記車輪を前記レール上に転動可能に配置する制御部とを備えることを特徴とする岸壁クレーン。
前記測定部が、前記ゴムタイヤの空気圧、前記ゴムタイヤの車軸に発生する応力、前記走行装置に設置される主イコライザピンに発生する応力、前記走行装置に設置される中間イコライザピンに発生する応力、前記走行装置に設置されるボギーピンに発生する応力の少なくとも一つを測定するセンサである請求項1に記載の岸壁クレーン。
前記走行装置が走行方向に対して横断する方向に間隔をあけて配置される一対の前記ゴムタイヤを備え、この一対のゴムタイヤの間を通って走行方向に延びる延長線上に前記車輪が配置される請求項1〜4のいずれかに記載の岸壁クレーン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は荷重支持機構を接地してゴムタイヤにかかる輪重を低減するとともに、荷重支持機構を接地させた状態で走行方向に走行可能とする岸壁クレーンおよび物流ターミナルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の岸壁クレーンは、ゴムタイヤを備えてクレーン構造体の下面に設置される走行装置と、地面と直接または間接的に接触して前記クレーン構造体を支持する荷重支持機構とを備える岸壁クレーンにおいて、
車輪を有する前記荷重支持機構
と、前記地面に敷設されるレールと、前記ゴムタイヤと前記車輪とを相対的に上下移動させる昇降機構とを備え
ていて、前記ゴムタイヤを前記地面に接地させた状態で、前記昇降機構により前記車輪を前記ゴムタイヤに対して相対的に下方移動させて前記レールの上に転動可能に配置する構成
を有するとともに、前記走行装置に発生する輪重を測定する測定部と、この測定部で測定された輪重と予め定められた許容輪重とを比較して前記測定された輪重が前記許容輪重を超えた場合に前記昇降機構を動作させて前記車輪を前記レール上に転動可能に配置する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車輪をレールと接触させることにより走行装置のゴムタイヤにかかる輪重を低減するとともに、車輪を転動させることにより荷重支持機構を接地させた状態で岸壁クレーンを走行させることができる。また昇降機構により荷重支持機構がレールに接触しない状態とすることができるので、岸壁クレーンをレールの敷設位置に関わらず自由に走行させることができる。
【0008】
ゴムタイヤは許容できる輪重が比較的小さいが、荷重支持機構により走行装置にかかる輪重を低減できるので、ゴムタイヤ式の走行装置を備える岸壁クレーンを大型化するには有利である。
【0010】
この構成によれば、走行装置に発生する輪重が許容輪重を超えたときに、荷重支持機構の車輪をレールに自動的に接触させることができるので、走行装置に発生する輪重を許容輪重以下に抑制するには有利である。また荷重支持機構により岸壁クレーンが支持された状態であっても、岸壁クレーンの走行を妨げることがないので荷役作業を円滑に継続することができる。
【0011】
測定部を、ゴムタイヤの空気圧、ゴムタイヤの車軸に発生する応力、走行装置に設置される主イコライザピンに発生する応力、走行装置に設置される中間イコライザピンに発生する応力、走行装置に設置されるボギーピンに発生する応力の少なくとも一つを測定するセンサで構成することができる。
【0012】
ゴムタイヤを、レールの延設方向に対して横断する方向に回動可能に構成することができる。レールを横断する方向に岸壁クレーンを移動させることができるので、岸壁クレーンを退避させて岸壁をあけることができる。
【0013】
レールの上面が地面よりも低い高さまたは同じ高さに構成することができる。ゴムタイヤがレールを滑らかに横断できるので、岸壁クレーンに振動や傾き等が発生することを抑制するには有利である。
【0014】
走行装置が走行方向に対して横断する方向に間隔をあけて配置される一対のゴムタイヤを備え、この一対のゴムタイヤの間を通って走行方向に延びる延長線上に車輪が配置される構成にすることができる。車輪が走行方向において走行装置と同一直線状に配置されるので、岸壁クレーンの外形を大きくすることなく荷重支持機構を設置することができる。
【0015】
上記の目的を達成する本発明の物流ターミナルは、上述のいずれかの岸壁クレーンを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の岸壁クレーンおよび物流ターミナルを図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図中では岸壁クレーン1の荷役中の走行方向を矢印y、走行方向yに対して直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0018】
図1および
図2に例示するように本発明の岸壁クレーン1は、コンテナターミナル等の物流ターミナル2に配置されコンテナ船で運搬されるコンテナ3等の荷役に使用される。この岸壁クレーン1は、脚等の柱状部材で構成されるクレーン構造体4と、クレーン構造体4の下面に配置される走行装置5と、クレーン構造体4に支持され横行方向xに延設されるブーム6およびガーダ7とを備えている。
【0019】
走行装置5は、海側に配置される海側走行装置5aと、この海側走行装置5aよりも陸側に配置される陸側走行装置5bで構成されている。この実施形態では二台の海側走行装置5aと二台の陸側走行装置5bとが岸壁クレーン1に設置されている。
【0020】
図3に例示するように一つの海側走行装置5aは、横行方向xに延びる主イコライザピン8を介してクレーン構造体4の下方に傾動可能に連結される主イコライザ9と、横行方向xに延びる中間イコライザピン10を介して主イコライザ9の下方に傾動可能に連結される二つの中間イコライザ11と、横行方向xに延びるボギーピン12を介して中間イコライザ11の下方に傾動可能にそれぞれ二つずつ連結されるボギー13とを備えている。走行装置5の構成は、陸側走行装置5bも上記と同様である。
【0021】
図4および
図5に例示するように、それぞれのボギー13には横行方向xに対置される一対のゴムタイヤ14が二組ずつ設置されている。つまり一つの走行装置5には八組のゴムタイヤ14が設置されている。この走行装置5は、
図3に例示するように中間イコライザ11以下を水平面内で旋回させて、ゴムタイヤ14が転動して進む方向を横行方向xから走行方向yに旋回させる旋回機構15を備えている。岸壁クレーン1は、ゴムタイヤ14と旋回機構15との組み合わせにより、任意の位置に向かって自由に走行することができる。
【0022】
走行装置5の構成は上記に限定されず、中間イコライザ11、ボギー13、ゴムタイヤ14の数や、旋回機構15を設置する位置は、岸壁クレーン1の大きさや用途に応じて適宜変更することができる。
【0023】
図3〜5に例示するように、クレーン構造体4の下面であって海側走行装置5aの主イコライザ9の下方には荷重支持機構16が設置されている。荷重支持機構16は、主イコライザ9の下面に設置される油圧シリンダ等の昇降機構17と、昇降機構17の下端に設置され回転可能に軸支される車輪18とを備えている。昇降機構17は車輪18を上下方向zに上下移動させる機能を備えている。車輪18は、岸壁クレーン1の荷重を支持しても変形したり破損したりしない車輪で構成されていて、例えば内部に空洞を有さない中実な車輪で構成される。
【0024】
荷重支持機構16を設置する位置は上記に限らず、地面2aと直接または間接に接触して岸壁クレーン1の荷重を支持できればいずれの位置であってもよい。荷重支持機構16は、例えば中間イコライザ11やボギー13に設置してもよく、クレーン構造体4に直接設置してもよい。
【0025】
また荷重支持機構16は少なくとも一つ設置されていればよく、それぞれの海側走行装置5aに一つずつ設置したり、複数の荷重支持機構16を設置してもよい。
【0026】
図4および
図5に例示するように車輪18は、物流ターミナル2の地面2aに敷設され走行方向yに延びるレール19に接触および離間可能に構成されている。尚、
図4では海側走行装置5aと陸側走行装置5bとの間に位置してクレーン構造体4を構成する水平部材の一部を省略している。以下
図6および
図7においても水平部材の一部を省略している。
【0027】
図5に例示するように車輪18は、車輪18の周方向に形成されレール19と接触する踏面20と、車輪18の車軸方向の両側であって踏面20を両側から挟み込む位置に形成されるフランジ21とを備えている。フランジ21は、レール19の上面22を両側から挟み込むことで、車輪18をレール19に沿って転動させることができる。
【0028】
車輪18は例えば鉄などで形成した金属製車輪で構成することができる。この場合は、踏面20およびフランジ21が金属で構成される。車輪18の構成はこれに限らず、例えば樹脂製車輪で構成することができる。樹脂製車輪は、例えばエンジニアリングプラスチックや炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなど耐荷重性能が高く、岸壁クレーン1の荷重を支持しても割れたり変形したりしない程度の強度を有する樹脂で形成される。また踏面20を樹脂で形成して、フランジ21を金属で形成するなど、異種材料を組み合わせて構成される車輪18を採用してもよい。
【0029】
レール19は地面2aを刳り貫いて溝を形成してこの溝内に敷設されるレールに限らず、地面2aに貼り付ける金属板で構成してもよい。金属板で構成したレール19を採用することにより、レール19を製造する際のコストを低減することができる。また車輪18を介して伝達される岸壁クレーン1の荷重をレール19で支持することにより、地面2aが割れたりして破損することを防止できる。
【0030】
レール19を金属板で構成する場合は、横行方向xにおけるレール19の幅を車輪18の幅よりも大きくなる状態に構成して、フランジ21を有さない車輪18をレール19に接触させる構成にしてもよい。この構成によれば昇降機構17により車輪18を降下させる際に、車輪18とレール19とが横行方向xの位置が相対的にずれている場合であっても、車輪18をレール19に接触させ易くなる。
【0031】
図4に例示するように走行方向yに延設されるレール19は、海側走行装置5aに設置されて横行方向xに対置される一対のゴムタイヤ14の間を通る位置に敷設されている。レール19は、岸壁クレーン1の荷役中の走行方向yと平行な海岸線(以下、岸壁法線2bということがある)と平行に敷設され、例えば岸壁クレーン1が荷役作業の際に走行方向yにおいて走行する全範囲を網羅する長さに構成される。
【0032】
また
図5に例示するようにレール19の上面22が地面2aよりも低い高さ、望ましくは同じ高さとなる状態で物流ターミナル2の地面2aにレール19を敷設する。これによりゴムタイヤ14はレール19を滑らかに横断することができ、レール19を横断する際に岸壁クレーン1に振動等が発生することを抑制するには有利である。
【0033】
本発明の岸壁クレーン1を使用した荷役作業について説明する。コンテナ船が物流ターミナル2の岸壁に接岸した後に、岸壁法線2bから離れた位置に退避していた岸壁クレーン1をコンテナ船に向かって走行させる。このとき走行装置5のゴムタイヤ14は、横行方向xに走行する向きになっている。荷重支持機構16の車輪18は、ゴムタイヤ14の下端面よりも上方に位置して、地面2aに直接および間接に接触しない位置としている。
【0034】
ゴムタイヤ式の走行装置5を備える岸壁クレーン1は、不要なときは岸壁法線2bから離れる方向に退避できる。そのため穀物や鉱石などのばら荷を荷役するときには、岸壁法線2bに配置するクレーンを岸壁クレーン1からバケットアンローダ等に入れ替えて、荷役作業を行なうことができる。使用しないクレーンを岸壁法線2bから離れた位置に移動させることができるので、狭い岸壁であっても異なる種類のクレーンに入れ替えることにより、多種の積荷の荷役作業に対応することができる。
【0035】
岸壁クレーン1がコンテナ船の近傍に移動した後に、クレーンオペレータの操作により旋回機構15を旋回させ、ゴムタイヤ14を走行方向yに走行する向きに旋回させる。その後、荷役対象のコンテナの中心にブーム6の中心が位置するように、岸壁クレーン1を走行方向yに走行させながら位置合わせを行なう。この位置合わせが完了した後に、クレーンオペレータのボタン操作等により昇降機構17を作動させて車輪18を下方移動させてレール19に接触させる。これにより荷重支持機構16はレール19を介して間接的に地面2aに接触した状態となる。このときゴムタイヤ14は地面2aと接地した状態を維持している。即ち、岸壁クレーン1の荷重は、ゴムタイヤ14および車輪18により支持される状態となる。
【0036】
本発明の岸壁クレーン1はレール19上を転動して移動可能な車輪18を含む荷重支持機構16を備えていて、車輪18はレール19を介して間接的に地面2aに接地される。そのため荷重支持機構16を接地させた状態のまま岸壁クレーン1を走行方向yに走行させることができる。つまり荷重支持機構16により岸壁クレーン1等の荷重を支持させた状態を維持しつつ、荷役対象のコンテナの列(ベイ)を変更したり岸壁クレーン1の走行方向yにおける位置を微調整するために、岸壁クレーン1を走行方向yに走行させることができる。
【0037】
岸壁クレーン1が荷役対象のコンテナの列(ベイ)を変更したり位置を微調整する際には、
図1に例示するようにブーム6が海側に張り出した状態となっているので、岸壁クレーン1の重心は海側に偏る。そのため陸側走行装置5bに比べて海側走行装置5aに発生する輪重が大きくなるが、荷重支持機構16が岸壁クレーン1の荷重の一部を支持するので海側走行装置5aのゴムタイヤ14にかかる輪重を小さくすることができる。輪重を小さくすることによりゴムタイヤ14の変形を抑制できるので、ゴムタイヤ14の変形により岸壁クレーン1が振動したり傾いたりする不具合を抑制するには有利である。
【0038】
ゴムタイヤ14は耐えられる輪重が比較的小さいので、従来はゴムタイヤ14を備える岸壁クレーンを大型化することは困難であった。例えば走行装置にかかる最大荷重が500トンであり、ゴムタイヤの制限荷重が25トンと仮定すると、走行装置ごとにゴムタイヤを20輪設置する必要があり、この設置場所を確保することは難しかった。
【0039】
しかし本発明の岸壁クレーン1は、ゴムタイヤ14に比べて耐えられる輪重が十分に大きい車輪18で荷重を支持できるので、ゴムタイヤ14に発生する輪重が小さくなる。そのため設置するゴムタイヤの数を大幅に増加させることなく岸壁クレーン1を大型化するには有利である。
【0040】
また岸壁クレーン1は、コンテナ3を吊り上げるトロリがブーム6に沿って移動するので、コンテナ3の重さとトロリの位置により各走行装置5に発生する荷重は大きな変動を繰り返す。しかし走行装置5に発生する荷重の一部をゴムタイヤ14に比べてほとんど変形しない荷重支持機構16が支持するので、荷重が集中して一部のゴムタイヤ14が大きく変形することを抑制するには有利である。
【0041】
重量が大きなコンテナ3に対する荷役作業や、風が強いときの荷役作業の場合は、走行装置5に発生する荷重が相対的に大きくなる。しかしこの荷重を荷重支持機構16が支持するので、岸壁クレーン1の安定性を向上するには有利である。
【0042】
岸壁クレーン1による荷役作業が終了した後であって岸壁をあける必要がある場合は、クレーンオペレータの操作により、荷重支持機構16を上方移動させて車輪18とレール19との接触を解除して、旋回機構15の旋回によりゴムタイヤ14を横行方向xに走行する向きに旋回させる。その後、岸壁クレーン1を岸壁法線2bから離れる横行方向xに
走行させる。
【0043】
岸壁クレーン1を横行方向xに走行させて岸壁法線2bから退避させる場合には、コンテナ3を吊り上げたりトロリを移動させたりすることがないので、各走行装置5に発生する荷重はそれほど変動しない。そのため走行装置5に発生する荷重をゴムタイヤ14のみで支持することができる。また岸壁クレーン1に若干の振動が発生したとしても、コンテナ3と吊下げた状態ではないのでこの振動は許容できる。
【0044】
レール19を敷設する位置は上記に限定されない。海側走行装置5aの下方に加えて、
図4に破線で例示するように陸側走行装置5bの下方に陸側のレール19bを敷設してもよい。このとき、陸側のレール19bは、陸側走行装置5bに設置されて横行方向xに対置される一対のゴムタイヤ14の間を通る位置に敷設されている。またクレーン構造体4の下面であって、陸側のレール19bに対応する位置に陸側の荷重支持機構16bが設置される。陸側走行装置5bに発生する荷重を陸側の荷重支持機構16bで支持できるので、陸側走行装置5bのゴムタイヤ14に発生する輪重を低減して、岸壁クレーン1の振動や傾きを抑制するにはさらに有利である。
【0045】
図6に例示するようにレール19は、横行方向xに対置される一対のゴムタイヤ14の間を通る位置に限らず、その外側にレール19を配置する構成にしてもよい。例えば走行装置5よりも海側または陸側にレール19を配置することができる。このとき、荷重支持機構16は、例えば海側走行装置5aの横行方向xに面する側面であって海側に対向する面に設置される。この実施形態では二つの中間イコライザ11の側面にそれぞれ荷重支持機構16を設置している。
【0046】
図6に例示するように海側走行装置5aよりも海側にレール19を敷設した場合は、クレーン構造体4から海側に張り出した位置に荷重支持機構16は設置される。これにより岸壁クレーン全体の外形は大きくなるが、岸壁クレーン1が横行方向xに転倒する際の転倒モーメント、即ち走行方向yを軸として岸壁クレーン1が海側または陸側に転倒する方向のモーメントを荷重支持機構16で支持できるので、岸壁クレーン1の安定性を向上するには有利である。
【0047】
破線で例示するように海側走行装置5aよりも陸側にレール19を敷設する構成にしてもよい。このとき荷重支持機構16は、海側走行装置5aの横行方向xに面する側面であって陸側に対向する面に設置される。また海側走行装置5aの海側と陸側の両方にレール19を敷設する構成にしてもよい。さらに海側走行装置5aの近傍に配置されるレール19に加えて、陸側走行装置5bの近傍であって海側および陸側の少なくとも一方にレールを敷設する構成にしてもよい。
【0048】
図7に例示するように、走行装置5が走行方向yに一列に並べて配置されるゴムタイヤ14を備える場合は、ゴムタイヤ14を整列させた直線上にレール19および荷重支持機構16を配置する構成にしてもよい。この実施形態では荷重支持機構16は、主イコライザ9の下面であって二つの中間イコライザ11の間に配置されている。
【0049】
レール19は、上面22が地面2aよりも低い高さ、望ましくは同じ高さとなる状態で物流ターミナル2の地面2aに敷設される。これによりゴムタイヤ14は、レール19が敷設された同一線上を滑らかに転動することができ、岸壁クレーン1に振動等が発生することを抑制するには有利である。
【0050】
図7に破線で例示するように陸側走行装置5bに一列に並べて配置されるゴムタイヤ14と同一直線状に陸側のレール19および荷重支持機構16bを配置する構成にしてもよい。陸側走行装置5bに発生する荷重を陸側の荷重支持機構16bで支持できるので、陸側走行装置5bのゴムタイヤ14に発生する輪重を低減して、岸壁クレーン1の振動や傾きを抑制するにはさらに有利である。
【0051】
ゴムタイヤ14が一列に並べて配置される場合も、
図6に例示する実施形態のようにゴムタイヤ14が一列に並べて配置される直線上よりも、海側または陸側にレール19を配置する構成にすることができる。
【0052】
図8に例示するように走行装置5に発生する輪重を測定する測定部23と、この測定部23で測定された輪重に応じて昇降機構17を制御する制御部24とを走行装置5に設置する構成にしてもよい。制御部24は昇降機構17に併設され、測定部23と一点鎖線で示す信号線で接続されている。制御部24と測定部23との接続は信号線に限らず、無線で行ってもよい。
【0053】
測定部23は、走行装置5に発生する輪重の測定または輪重を算出するためのデータを取得できる構成を有していればよい。例えばゴムタイヤ14の空気圧やゴムタイヤ14の車軸25に発生する応力を逐次測定するセンサで構成することができる。また測定部23は、主イコライザピン8、中間イコライザピン10、ボギーピン12のいずれかに発生する応力を測定するセンサで構成してもよく、上記のセンサを組み合わせて使用する構成にしてもよい。
【0054】
測定部23は、ゴムタイヤ14の空気圧や車軸25に発生する応力等を逐次測定する。ゴムタイヤ14の空気圧が上昇したり車軸25等に発生する応力が増加した場合は、走行装置5に発生する輪重も増加するので、測定部23により逐次取得した値から直接的または間接的に走行装置5に発生する輪重を測定することができる。
【0055】
制御部24は、測定部23により直接または間接に測定された輪重と、予め定められた許容輪重とを逐次比較する。測定部23により測定された輪重が許容輪重を超えたときに、制御部24は昇降機構17を作動させて車輪18を下方移動させる。降下した車輪18はレール19と接触して、走行装置5に発生する荷重の一部を支持する。
【0056】
岸壁クレーンの荷役作業の開始にともない例えばコンテナ3がブーム6の先端で吊り下げられていて走行装置5に大きな荷重が発生したり、岸壁クレーンが風等に押されて走行装置5に過大な荷重が発生したりする場合に、荷重支持機構16が自動的に直接または間接に地面2aと接触して走行装置5の荷重の一部を支持するので、岸壁クレーン1が傾いたり振動したりする不具合を防止するには有利である。
【0057】
また荷重支持機構16は必要に応じて自動的にレール19と接触するので、クレーンオペレータが荷重支持機構16を接地させ忘れてしまう不具合を防止するには有利である。
【0058】
車輪18をレール19上に接地させる方法は、荷重支持機構16を構成する昇降機構17に限らず、走行装置5に対して車輪18を相対的に上下移動できればよい。例えばクレーン構造体4と走行装置5との間に走行装置5を上下動させる昇降機構を設置する構成にしてもよい。この場合は、上下位置が固定された状態でクレーン構造体4に設置される荷重支持機構16に対して、走行装置5が上下動することにより車輪18をレール19に対して接近離間させる。
【0059】
図9および
図10に例示するように、荷重支持機構16を横行方向xに受動的に移動させる位置合わせ機構26を介して、荷重支持機構16を走行装置5またはクレーン構造体4等に設置する構成にしてもよい。この実施形態では昇降機構17が位置合わせ機構26
に連結されている。尚、
図9および
図10では説明のために、ゴムタイヤ14等を省略している。
【0060】
位置合わせ機構26は、例えば荷重支持機構16に横行方向xの外力が発生したときに、この外力により荷重支持機構16を横行方向xに受動的に移動させる流体シリンダで構成することができる。また車輪18のフランジ21は、フランジ21の車軸方向(横行方向x)において踏面20からそれぞれ外側に向かって拡開するテーパー形状に形成されている。
【0061】
図9に例示するように車輪18の中心位置がレール19の中心に対して横行方向xにずれている場合は、荷重支持機構16を下方移動させるとテーパー状のフランジ21がレール19と接触する。荷重支持機構16をさらに下方移動させると、テーパー状のフランジ21はレール19を踏面20に導く方向の外力を受ける。
図9において荷重支持機構16は、テーパー状のフランジ21を介して右方向の外力を受ける。
図10に例示するように、この外力により位置合わせ機構26に設置される荷重支持機構16は横行方向xに受動的に移動して、踏面20がレール19の上面22と接触する状態となる。
【0062】
この構成により荷重支持機構16を下方移動させる際に、レール19と車輪18との位置が横行方向xにある程度ずれていたとしても、車輪18の踏面20をレール19の上面22に接触させ易くなる。そのため荷重支持機構16を下方移動させたにも関わらず、車輪18がレール19上に配置されず、荷重を十分に支持できない不具合を回避するには有利である。
【0063】
位置合わせ機構26の構成は上記に限らず、受動的に荷重支持機構16を横行方向xに移動させる機能を有していればよく、例えば走行装置5に固定され横行方向xに延設されるラックと、昇降機構17に設置されラックに対応するピニオンギアとで構成してもよい。
【0064】
また位置合わせ機構26は、能動的に荷重支持機構16を横行方向xに移動させる構成にしてもよい。この場合は、例えば上記流体シリンダに流体を循環させるポンプを併設したり、上記ピニオンギアを駆動させるモータを併設して、ポンプやモータの動力により荷重支持機構16を任意の方向に移動させる構成にしてもよい。
【0065】
位置合わせ機構26が荷重支持機構16を能動的に横行方向xに移動させる構成の場合は、レーザセンサ等のセンサにより横行方向xにおけるレール19の位置を測定して、この位置に合わせて荷重支持機構16を能動的に横行方向xに移動させる構成にしてもよい。
【0066】
この位置合わせ機構26は、前述の測定部23および制御部24と組み合わせて岸壁クレーン1に設置する構成にしてもよい。
【0067】
本発明の岸壁クレーン1は、コンテナターミナルにおいてコンテナを荷役する岸壁クレーンに限定されない。物流ターミナル2で走行しつつ荷役を行なう岸壁クレーンであればよく、例えば穀物や鉱石等のバラ荷を荷役する岸壁クレーンなども含む。
【0068】
また本発明の物流ターミナル2は、コンテナターミナルに限らず、船舶と陸上との間で荷役を行なうターミナルであればよく、例えばバラ荷を荷役するターミナルや、製鉄所等において鉱石の搬入を行なうターミナルを含む。