特許第6607573号(P6607573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607573
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/14 20060101AFI20191111BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01H13/14 Z
   H01H13/52 F
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-157578(P2016-157578)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-26270(P2018-26270A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山本 真裕
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−167260(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1909158(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/88
H01H 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作されるボタンと、
前記ボタンの押圧操作に応じてスライド動作するスライダと、
前記ボタンおよび前記スライダを摺動可能に内側に保持する筒状のホルダと、
前記ホルダの前記ボタンと反対側に取り付けられるケースと、
前記ケース内に収納される固定接点と、
前記ケース内に収納され、前記スライダのスライド動作に応じて可動して前記固定接点に接触する可動接点と、
前記ケース内に収納され、前記スライダおよび前記可動接点を前記ボタン側へ付勢する弾性部材と、を備えたスイッチ装置において、
前記スライダは、
該スライダの外周面に周方向へ所定の間隔をおいて設けられた、複数の第1ガイド部を有し、
前記ホルダは、
前記ボタンを保持する第1保持部と、
前記第1保持部に対して前記ホルダの中心軸側に設けられ、前記スライダを保持する第2保持部と、
前記第2保持部の内周面に周方向へ所定の間隔をおいて設けられ、複数の前記第1ガイド部がそれぞれ係合する複数の第2ガイド部と、を有し、
前記第1ガイド部は、前記スライダの径方向へ突出したガイド凸部であり、前記第2ガイド部は、前記スライダの径方向へ窪んだガイド溝であり、
前記ボタンは、
前記第2保持部の内周面と前記スライダとの間に介在する突壁と、
前記突壁に前記ボタンの周方向へ所定の間隔をおいて設けられ、複数の前記ガイド凸部がそれぞれ係合する複数の係合部と、を有し、
前記ガイド凸部の少なくとも1つは、前記スライダのスライド方向へ延設され、該延設されたガイド凸部の側面に、前記突壁の端部が嵌入する嵌入部を設けた、ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
隣り合う複数の前記ガイド凸部が、前記スライダのスライド方向へ延設され、該ガイド凸部の互いに対向しない前記側面に前記嵌入部が設けられている、ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置において、
前記係合部は、前記ホルダの軸方向へ窪んだ凹部である、ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスイッチ装置において、
前記嵌入部は、前記ガイド凸部を貫通しない凹部である、ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスイッチ装置において、
電波を送信するコイルアンテナと、
前記コイルアンテナが接続され、前記固定接点が設けられた基板と、をさらに備え、
前記コイルアンテナおよび前記基板は、前記ケース内に収納され、
前記スライダは、前記コイルアンテナおよび前記基板に対して前記ホルダ側でスライド動作する、ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のスイッチ装置において、
当該スイッチ装置は、車両の走行駆動源を始動・停止させるためのスイッチである、ことを特徴とするスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば車両のエンジンなどを駆動させるために押圧操作されるボタンを備えたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を駆動させるために押圧操作されるボタンを備えたスイッチ装置がある。たとえば特許文献1〜4に開示されているスイッチ装置は、車両の盗難防止などのため、車載機と利用者が携帯する携帯機との無線通信に基づいて、車両の走行駆動源(エンジンなど)を始動・停止させる車両用セキュリティシステムに組み込まれる。この車両用セキュリティシステムにおいて、車載機と携帯機との無線通信により、携帯機の認証が成功すると、車室内に設けられたスイッチ装置のボタンの押圧操作によって、走行駆動源が始動または停止される。
【0003】
特許文献1〜4のスイッチ装置は、ボタンの他に、スライダ、可動接点、固定接点が設けられた基板、弾性部材、コイルアンテナ、およびこれらを収納する筒状のホルダやケースなどを備えている。ボタンとスライダは、ボタンの押圧方向やこの反対方向へ摺動可能にホルダやケースに保持されている。スライダは、ボタンの押圧操作に応じてスライド動作する。弾性部材は、スライダと可動接点をボタン側へ付勢する。
【0004】
スイッチ装置のボタンが押圧操作されることで、スライダがスライド動作して、可動接点を固定接点に接触させる。ボタンの押圧操作が解除されることで、弾性部材の弾性力により、スライダがボタン側へスライド動作して、ボタンを通常位置に復帰させ、可動接点が固定接点から離間する。
【0005】
携帯機の電池が消耗して、通信不能となった場合の補助通信手段として、携帯機を作動させる起動電波がコイルアンテナから送信される。携帯機は、コイルアンテナから送信された起動電波を受信すると、内部のコイルで発生した起電力により、車載機との通信を行う。
【0006】
特許文献1では、ボタンの周囲にコイルアンテナを配置しているが、この構造では、ボタンの径方向にスイッチ装置が大型化してしまう。特許文献2〜4では、ボタンの内側にコイルアンテナを配置して、スイッチ装置を小型化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−314806号公報
【特許文献2】特開2011−169180号公報
【特許文献3】特開2011−60626号公報
【特許文献4】特開2011−27085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のように、筒状のホルダなどの内側にボタンとスライダを摺動可能に保持しようとすると、ホルダとボタンとスライダの摺動部分に隙間を設ける必要がある。このため、その摺動部分の寸法公差が最悪の場合、隙間が大きくなって、ホルダ内でボタンがガタつき、ボタンが正規の押圧方向に対して傾いた状態で押し込まれて、操作性が悪くなるおそれがある。さらに、傾いたボタンやスライダが所定の位置まで移動せず、可動接点が固定接点に接触しなくなるおそれもある。
【0009】
また、ボタンやスライダの操作性を向上するには、ホルダやボタンやスライダの摺動部分の形状を工夫して、該摺動部分の面積を小さくすることが効果的である。しかし、そうすると、その摺動部分の強度が低下し、破損し易くなってしまう。
【0010】
本発明の課題は、ボタンのガタつきを抑制し、かつボタンやスライダの強度を確保することができるスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるスイッチ装置は、押圧操作されるボタンと、このボタンの押圧操作に応じてスライド動作するスライダと、ボタンおよびスライダを摺動可能に内側に保持する筒状のホルダと、このホルダのボタンと反対側に取り付けられるケースと、このケース内に収納される固定接点と、ケース内に収納され、スライダのスライド動作に応じて可動して固定接点に接触する可動接点と、ケース内に収納され、スライダおよび可動接点をボタン側へ付勢する弾性部材とを備える。この構成において、スライダは、該スライダの外周面に周方向へ所定の間隔をおいて設けられた、複数の第1ガイド部を有する。ホルダは、ボタンを保持する第1保持部と、この第1保持部に対してホルダの中心軸側に設けられ、スライダを保持する第2保持部と、この第2保持部の内周面に周方向へ所定の間隔をおいて設けられ、複数の第1ガイド部がそれぞれ係合する複数の第2ガイド部とを有する。第1ガイド部は、スライダの径方向へ突出したガイド凸部であり、第2ガイド部は、スライダの径方向へ窪んだガイド溝である。ボタンは、第2保持部の内周面とスライダとの間に介在する突壁と、この突壁にボタンの周方向へ所定の間隔をおいて設けられ、複数のガイド凸部がそれぞれ係合する複数の係合部とを有する。そして、ガイド凸部の少なくとも1つは、スライダのスライド方向へ延設され、該延設されたガイド凸部の側面に、突壁の端部が嵌入する嵌入部を設ける。
【0012】
上記によると、スライダに設けられた複数の第1ガイド部と、ホルダに設けられた複数の第2ガイド部とが、スライダの径方向にそれぞれ係合する。また、第1ガイド部を構成する複数のガイド凸部と、ボタンの突壁に設けられた複数の係合部とがそれぞれ係合する。このため、ボタンが押圧操作されたときに、スライダの各第1ガイド部がホルダの各第2ガイド部にガイドされて摺動し、スライダがスライド方向へ移動し易くなり、可動接点を可動させて固定接点に接触させることができる。加えて、ボタンおよびスライダの周方向への回転移動とガタつきを抑制することができる。また、ガイド凸部の少なくとも1つが、スライダのスライド方向へ延設されているので、該ガイド凸部の強度を確保することができる。加えて、該ガイド凸部とホルダのガイド溝との係合面積がスライド方向に拡がるので、スライダおよびボタンがスライド方向に対して傾斜するガタつきを抑制することができる。さらに、スライド方向に延設されたガイド凸部の側面に嵌入部が設けられ、該嵌入部にボタンの突壁の端部が嵌入される。このため、その嵌入量の分だけボタンの突壁の幅や厚みを大きくして、ボタンの強度を確保することができる。加えて、ボタンの周方向へのガタつきとスライド方向に対して傾斜するガタつきとを一層抑制することができる。
【0013】
本発明では、上記スイッチ装置において、隣り合う複数のガイド凸部が、スライダのスライド方向へ延設され、該ガイド凸部の互いに対向しない側面に嵌入部が設けられてもよい。
【0014】
また、本発明では、上記スイッチ装置において、ボタンに設けられる係合部は、ホルダの軸方向へ窪んだ凹部であってもよい。
【0015】
また、本発明では、上記スイッチ装置において、ガイド凸部に設けられる嵌入部は、ガイド凸部を貫通しない凹部であってもよい。
【0016】
また、本発明では、上記スイッチ装置において、電波を送信するコイルアンテナと、このコイルアンテナが接続され、前記固定接点が設けられた基板とをさらに備え、コイルアンテナおよび基板は、ケース内に収納され、スライダは、コイルアンテナおよび基板に対してホルダ側でスライド動作してもよい。
【0017】
さらに、本発明では、上記スイッチ装置を、車両の走行駆動源を始動・停止させるスイッチに適用してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボタンのガタつきを抑制し、かつボタンやスライダの強度を確保することができるスイッチ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるスイッチ装置の組立斜視図である。
図2図1のスイッチ装置の分解斜視図である。
図3図1のスイッチ装置の断面図である。
図4図2のホルダの上面図である。
図5A図2のスライダの上面図である。
図5B図2のスライダの側面図である。
図5C図2のスライダの斜視図である。
図6図2のボタンを裏側から見たときの斜視図である。
図7図2のホルダとスライダの組立図である。
図8図2のホルダとスライダとボタンの組立図である。
図9図1のスイッチ装置におけるボタンのガタつき状態の一例を示した断面図である。
図10】比較例のスイッチ装置におけるボタンのガタつき状態の一例を示した断面図である。
図11】比較例のスイッチ装置のスライダの上面図である。
図12】比較例のスイッチ装置のボタンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
まず、実施形態のスイッチ装置100の構造を説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態によるスイッチ装置100の組立斜視図である。図2は、スイッチ装置100の分解斜視図である。図3は、スイッチ装置100の断面図である。
【0023】
スイッチ装置100は、車両の盗難防止などのため、図示しない車載機と利用者が携帯する携帯機との無線通信に基づいて、車両の走行駆動源(エンジンなど)を始動・停止させる車両用セキュリティシステムに組み込まれる。
【0024】
スイッチ装置100は、たとえば車両の運転席の近傍に設置される。上記車両用セキュリティシステムにおいて、車載機と携帯機との無線通信により、携帯機の認証が成功すると、スイッチ装置100に備わるボタン4の押圧操作によって、走行駆動源が始動または停止される。
【0025】
図2に示すように、スイッチ装置100は、ケース1、ホルダ2、カバー3、ボタン4、スライダ5、レンズ6、コイルアンテナ7、ラバーコンタクト8、基板9、およびコネクタ10を備えている。
【0026】
図3に示すように、コイルアンテナ7、ラバーコンタクト8、基板9、およびコネクタ10は、ケース1内に収納される。コネクタ10は、基板9の下面側にはんだ付けされている。コネクタ10の嵌合ピン10pは、ケース1の下部に形成された嵌合部1kに突出する。この嵌合部1kに、図示しないハーネスのソケットを下方から嵌合することで、スイッチ装置100と車載機とが電気的に接続される。
【0027】
基板9は、図示しないねじなどで、ケース1内に固定される。図2に示すように、基板9の上面には、発光素子(LEDなど)9aと2個1対の固定接点9cとが実装されている。図3に示すように、基板9の上面側には、コイルアンテナ7とラバーコンタクト8が配置される。
【0028】
コイルアンテナ7のボビン部7bには、図2に示すように、導線7aが巻回されている(図3も参照)。また、ボビン部7bには、下方へ突出するようにリード部7cが設けられている。導線7aとリード部7cとは電気的に接続されている。リード部7cが基板9に実装されることで、コイルアンテナ7と基板9とが電気的に接続される。導線7aに電流を流すことで、外部の携帯機を作動させる起動電波がコイルアンテナ7から送信される。
【0029】
ラバーコンタクト8には、上方へ突出するように、導光部8aと2個1対の押圧部8bが形成されている。図3に示すように、導光部8aは筒状に形成されている。各押圧部8bの下方には、カップ部8dが形成されている。カップ部8dは、下方へ開口していて、内底面に可動接点8cが設けられている。図3には、一方の押圧部8bおよびカップ部8dを図示しているが、他方の押圧部8bおよびカップ部8dも同様の構造である。
【0030】
導光部8aの内側に発光素子9aが位置し、各押圧部8bの可動接点8cと基板9の固定接点9cとが対向するように、ラバーコンタクト8は、ボビン部7bと基板9により挟持される。導光部8aと各押圧部8bは、ボビン部7bの内側を貫通する。導光部8aの上端部と各押圧部8bの上端部とは、それぞれケース1から上方へ突出する。導光部8aは、発光素子9aが発した光を上方へ導く。各カップ部8dは、各押圧部8bおよび各可動接点8cを上方へ付勢する。ラバーコンタクト8は、本発明の「弾性部材」の一例である。
【0031】
図4は、ホルダ2の上面図である。図5Aは、スライダ5の上面図である。図5Bは、スライダ5の側面図である。図5Cは、スライダ5の斜視図である。図6は、ボタン4を裏側から見たときの斜視図である。図7は、ホルダ2とスライダ5の組立図である。図8は、ホルダ2とスライダ5とボタン4の組立図である。
【0032】
図2などに示すように、ホルダ2は筒状に形成されている。ホルダ2は、図1および図3に示すように、ケース1の上部に取り付けられる。
【0033】
図2図8に示すように、ホルダ2の上部(ケース1と反対側)の内側には、ボタン4を上下に摺動可能に保持する第1保持部2aと、スライダ5を上下に摺動可能に保持する第2保持部2bとが形成されている。第2保持部2bは、第1保持部2aに対して、ホルダ2の中心軸側に形成されている。
【0034】
このため、図3に示すように、スライダ5は、上方からボタン4で覆われるように、ボタン4の内側に配置される。また、ボタン4とスライダ5は、ホルダ2によりケース1と反対側に保持される。さらに、ボタン4とスライダ5は、コイルアンテナ7および基板9に対して、ホルダ2側で上下に摺動する。
【0035】
図2および図3などに示すように、スライダ5には、レンズ6を保持するレンズ保持部5Lが形成されている。ボタン4には、レンズ6の上部を露出させる開口部4Lが形成されている。図3に示すように、ラバーコンタクト8の導光部8aの上端部は、ホルダ2の内側に突出して、レンズ6に下方から対向する。このため、導光部8aにより導かれた発光素子9aの光は、レンズ6に下方から入射し、ボタン4の上方へ出射する。
【0036】
図2に示すように、カバー3は円環状に形成されている。カバー3を上方からホルダ2に取り付けることで、図3に示すように、ホルダ2の第1保持部2aに嵌入されたボタン4の上方への移動が制限される。ボタン4の上面4uは、カバー3から露出する(図1)。ボタン4は、車両の走行駆動源を始動・停止させるために、上方から押圧操作される。
【0037】
図3に示すように、ホルダ2の第2保持部2bに嵌入されたスライダ5の上方への移動は、ボタン4により制限される。ラバーコンタクト8の各押圧部8bの上端部は、ホルダ2の内側に突出して、スライダ5に下方から係合する。各押圧部8bは、スライダ5を上方(ボタン4側)へ付勢する。スライダ5は、ボタン4の押圧操作に応じて上下方向へスライド動作する。
【0038】
図2図5A図5C図7、および図8に示すように、スライダ5の外周面には、径方向へ突出する複数のガイド凸部5a〜5iが、周方向へ所定の間隔をおいて設けられている。このうち、隣り合う複数のガイド凸部5a〜5gは、スライダ5のスライド方向(上下方向)へ延設されている。つまり、図2図5B図5Cに示すように、ガイド凸部5a〜5gの高さは、スライダ5の高さとほぼ同等になっている。他のガイド凸部5h、5iの高さは、スライダ5の高さの半分以下になっている。ガイド凸部5a〜5iは、本発明の「第1ガイド部」の一例である。
【0039】
図5A図5Cに示すように、ガイド凸部5a、5bの互いに対向しない側面には、嵌入部5x、5yが設けられている。嵌入部5x、5yは、ガイド凸部5a、5bを貫通しない所定の深さの凹部から成る。
【0040】
図4図7、および図8に示すように、ホルダ2の第2保持部2bの内周面には、周方向へ所定の間隔をおいて複数のガイド溝2m、2nが設けられている。各ガイド溝2mには、スライダ5のガイド凸部5a〜5gがそれぞれ係合する。各ガイド溝2nには、スライダ5のガイド凸部5h、5iがそれぞれ係合する。ガイド溝2m、2nは、本発明の「第2ガイド部」の一例である。
【0041】
図6に示すように、ボタン4の裏側には、突壁4aと係合部4bとがボタン4の周方向に沿って設けられている。図8に示すように、突壁4aは、ホルダ2の第2保持部2bの内周面とスライダ5との間に介在する。係合部4bは、ホルダ2の軸方向へ窪んだ凹部からなり、ボタン4の周方向へ所定の間隔をおいて突壁4aに複数設けられている。各係合部4bには、スライダ5のガイド凸部5a〜5gがそれぞれ係合する。ガイド凸部5a、5bの側面に設けられた嵌入部5x、5yには、対向する突壁4aの端部が嵌入される。
【0042】
次に、スイッチ装置100の動作を説明する。
【0043】
図1および図3に示す通常状態から、ボタン4の上面4uを下方へ押圧操作する。すると、ボタン4の下降に応じて、スライダ5が下方へスライド動作して、ラバーコンタクト8の各押圧部8bを下方へ押圧する。これにより、各カップ部8dが座屈して、各可動接点8cが基板9上の各固定接点9cに接触し、スイッチ装置100からコネクタ10とハーネスを介して外部の車載機へオン信号が送信される。
【0044】
その後、上記ボタン4の押圧操作を解除する。すると、ラバーコンタクト8の各カップ部8dの弾性力(復帰力)により、各可動接点8cが各固定接点9cから離間して、スイッチ装置100からコネクタ10とハーネスを介して外部の車載機へオン信号が送信されなくなる(オフ状態)。また、各カップ部8dの弾性力により、各押圧部8bが上昇して、スライダ5を上方(ボタン4側)へスライド動作させる。これにより、スライダ5がボタン4を持ち上げて、ボタン4が通常位置に復帰する。
【0045】
上記実施形態によると、スライダ5の複数のガイド凸部5a〜5gと、ホルダ2の複数のガイド溝2mとが、スライダ5の径方向にそれぞれ係合している(図8)。また、スライダ5のガイド凸部5a〜5gと、ボタン4の突壁4aに設けられた複数の係合部4bとがそれぞれ係合している。このため、ボタン4が押圧操作されたときに、スライダ5の各ガイド凸部5a〜5gがホルダ2の各ガイド溝2mにガイドされて摺動し、スライダ5がスライド方向へ移動し易くなり、可動接点8cを可動させて固定接点9cに接触させることができる。加えて、ボタン4およびスライダ5の周方向への回転移動とガタつきを抑制することができる。
【0046】
また、スライダ5のガイド凸部5a〜5gが、スライダ5のスライド方向へ延設されているので、該ガイド凸部5a〜5gの強度を確保することができる。加えて、ガイド凸部5a〜5gとホルダ2のガイド溝2mとの係合面積がスライド方向に拡がるので、スライダ5およびボタン4がスライド方向に対して傾斜するガタつきを抑制することができる。
【0047】
さらに、スライダ5のガイド凸部5a、5bの側面に嵌入部5x、5yが設けられ、該嵌入部5x、5yにボタン4の突壁4aの端部が嵌入されている(図8)。このため、その嵌入量の分だけボタン4の突壁4aの幅や厚みを大きくして、ボタン4の強度を確保することができる。加えて、ボタン4の周方向へのガタつきと、スライド方向に対して傾斜するガタつきとを一層抑制することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、隣り合う複数のガイド凸部5a〜5gが、スライダ5のスライド方向へ延設されている。そして、隣り合うガイド凸部5a、5bの互いに対向しない側面に嵌入部5x、5yが設けられている(図5A)。このため、隣り合う複数のガイド凸部5a〜5gの設置角度に相当する範囲で、スライダ5およびボタン4のスライド方向に対して傾斜するガタつきやボタン4の周方向へのガタつきを一層抑制することができる。然も、嵌入部5x、5yがガイド凸部5a、5bを貫通していないので、ガイド凸部5a、5bの強度を損なわないようにすることができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、ホルダ2とボタン4とスライダ5の摺動部分を、コイルアンテナ7と接点8c、9cに対してホルダ2側に配置している。このため、コイルアンテナ7と接点8c、9cの寸法的制約を受けずに、ホルダ2とボタン4とスライダ5の寸法や摺動長を設計することができる。
【0050】
図9は、本実施形態のスイッチ装置100におけるボタン4のガタ付き状態の一例を示した断面図である。図10は、比較例のスイッチ装置200におけるボタン4’のガタ付き状態の一例を示した断面図である。図11は、比較例のスイッチ装置200のスライダ5’の上面図である、図12は、比較例のスイッチ装置200のボタン4’の斜視図である。
【0051】
比較例のスイッチ装置200では、図11のように、スライダ5’を左右対称に形成して、高さの高いガイド凸部5a、5b(図5A)に代えて、高さの低いガイド凸部5h、5iが設けられている。一方、図12のように、ボタン4’の突壁4aには、図6との比較で明らかなように、ガイド凸部5h、5iを係合させる係合部が設けられていない。このため、ホルダ2とボタン4’とスライダ5’の摺動部分の寸法公差が最悪の場合、該摺動部分の隙間が大きくなって、たとえば図10に示すように、ボタン4’の押圧方向(上下方向)に対して傾斜するガタつきが大きくなってしまう。そして、ボタン4’が傾いた状態で押し込まれて、操作性が悪くなり、さらに、傾いたボタン4’やスライダ5’が所定の位置まで移動せず、可動接点が固定接点に接触しなくなるおそれもある。
【0052】
これに対して、本実施形態のスイッチ装置100では、スライダ5のガイド凸部5a、5b、嵌入部5x、5y、ボタン4の係合部4b、およびホルダ2のガイド溝2mの係合により、図9に示すように、ボタン4の押圧方向に対して傾斜するガタつきを小さく抑えることができる。具体的には、ホルダ2とボタン4とスライダ5の摺動部分の寸法公差が最悪の場合を想定しても、図9のボタン4のガタつき傾斜角度θ1は、図10のボタン4’のガタつき傾斜角度θ2の半分以下に抑えることができる。
【0053】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、スライダ5の外周面に設けた複数のガイド凸部5a〜5iのうち、一部のガイド凸部5a〜5gを高さ方向に延設した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、スライダの外周面に設けた複数のガイド凸部5a〜5iの全てを、高さ方向にできる限り高くしてもよい。また、隣り合わない2つ以上のガイド凸部を高さ方向に延設してもよい。また、延設するガイド凸部は複数である必要はなく、ガイド凸部5a〜5iの少なくとも1つを高さ方向に延設すればよい。さらに、高さ方向に延設するガイド凸部や嵌入部の設置位置は、隣り合わなくてもよく、適宜選択すればよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、ボタン4に設けられた係合部4bを凹部としたが、係合部は凸部であってもよい。この場合は、凸部に係合する凹部をスライダ5のガイド凸部5a〜5gに設ければよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、2つのガイド凸部5a、5bに、それぞれ嵌入部5x、5yを設けた例を示したが、ガイド凸部5a(または5b)のみに、嵌入部5x(または5y)を設けてもよい。すなわち、嵌入部は、少なくとも1つのガイド凸部に設ければよい。
【0057】
また、以上の実施形態では、ホルダ2とボタン4とスライダ5の摺動部分より下方に、コイルアンテナ7を配置した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、ホルダ2、ボタン4、またはスライダ5の内側に、コイルアンテナ7を配置してもよい。
【0058】
さらに、以上の実施形態では、車両の走行駆動源を始動・停止させるスイッチ装置100に本発明を適用した例を挙げたが、本発明は、その他の対象物を駆動させるスイッチ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ケース
2 ホルダ
2a 第1保持部
2b 第2保持部
2m、2n ガイド溝(第2ガイド部)
4 ボタン
4a 突壁
4b 係合部
5 スライダ
5a〜5i ガイド凸部(第1ガイド部)
5x、5y 嵌入部
7 コイルアンテナ
8 ラバーコンタクト(弾性部材)
8c 可動接点
9 基板
9c 固定接点
100 スイッチ装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12