特許第6607602号(P6607602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607602
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】装飾方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20191111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191111BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20191111BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20191111BHJP
【FI】
   B44C1/17 A
   B41J2/01 501
   B41J2/01 127
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   C09D11/101
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-217655(P2015-217655)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-87484(P2017-87484A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−170684(JP,A)
【文献】 特開2014−124941(JP,A)
【文献】 特表2005−501761(JP,A)
【文献】 特開2009−292078(JP,A)
【文献】 特開2015−100992(JP,A)
【文献】 特開2014−104592(JP,A)
【文献】 特開2014−177023(JP,A)
【文献】 特開2014−104593(JP,A)
【文献】 特開2010−167747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/165 − 1/175
B41M 5/00 − 5/52
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを装飾物に塗布するインク塗布工程と、
前記インク塗布工程で前記装飾物に塗布された前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記インク塗布工程で前記装飾物に塗布された前記紫外線硬化型インクの前記有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、
前記紫外線照射工程および前記溶剤除去工程の後に、前記紫外線硬化型インクの表面を被装飾体に密着させて前記被装飾体に前記装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程とを備えることを特徴とする装飾方法。
【請求項2】
紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを被装飾体に塗布するインク塗布工程と、
前記インク塗布工程で前記被装飾体に塗布された前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記インク塗布工程で前記被装飾体に塗布された前記紫外線硬化型インクの前記有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、
前記紫外線照射工程および前記溶剤除去工程の後に、前記紫外線硬化型インクの表面に装飾物を密着させて前記被装飾体に前記装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程とを備え
前記紫外線照射工程において前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射器と、前記溶剤除去工程において前記有機溶剤を蒸発させて除去するヒータとは、別々に設けられるとともに互いに異なる位置に配置され、
前記ヒータは、前記被装飾体の、前記紫外線硬化型インクが塗布される面の反対面側に配置されていることを特徴とする装飾方法。
【請求項3】
紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを被装飾体に塗布するインク塗布工程と、
前記インク塗布工程で前記被装飾体に塗布された前記紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記インク塗布工程で前記被装飾体に塗布された前記紫外線硬化型インクの前記有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、
前記紫外線照射工程および前記溶剤除去工程の後に、前記紫外線硬化型インクの表面に装飾物を密着させて前記被装飾体の一部分に前記装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程と、
前記装飾物貼付工程後に行われる未接着部分除去工程とを備え、
前記インク塗布工程では、前記装飾物貼付工程において前記装飾物が貼り付けられる前記被装飾体の一部分のみに前記紫外線硬化型インクを塗布し、
前記装飾物貼付工程では、前記被装飾体の、前記装飾物が貼り付けられない部分も前記装飾物が覆うように前記装飾物を配置し、
前記未接着部分除去工程では、前記装飾物の、前記被装飾体に貼り付らけれていない部分を除去することを特徴とする装飾方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化型インクの25℃における粘度は、3mPa・sec以上18mPa・sec以下であり、
前記有機溶剤を除去したときの前記紫外線硬化型インクの25℃における粘度は、20mPa・sec以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の装飾方法。
【請求項5】
前記装飾物は、箔であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の装飾方法。
【請求項6】
前記紫外線照射工程は、前記溶剤除去工程の後に行われることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の装飾方法。
【請求項7】
前記紫外線照射工程と前記溶剤除去工程とは同時に行われることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の装飾方法。
【請求項8】
前記紫外線硬化型インクには、紫外線硬化型エポキシ系樹脂が含まれていないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の装飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被装飾体に装飾物を貼り付けて被装飾体を装飾するための装飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箔で装飾された基材製品の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の製造方法では、紫外線硬化型カチオン系樹脂接着剤を用いて紙やプラスチックシート等の基材に箔を接着している。紫外線硬化型カチオン系樹脂接着剤は、紫外線が照射されてから完全硬化するまでの時間が長い。そのため、この製造方法では、まず、紫外線硬化型カチオン系樹脂接着剤を基材に印刷し、接着剤の層(接着層)に紫外線を照射する。紫外線が照射されると、接着層の粘性が増すため、接着層に箔を重ねると、接着層の粘着力で箔が基材に貼り付く。その後、時間の経過とともに接着層の接着力が増すため、接着層が完全硬化すると、接着層によって箔が基材に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−216013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法の場合、接着層に紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)において、接着層を所定時間経過後に完全硬化させるのに必要な量の紫外線を接着層に照射する必要がある。また、この製造方法の場合、紫外線照射工程において、紫外線が照射された直後の接着層に箔を基材に貼り付けられるだけの粘着力が残るように(すなわち、紫外線が照射された直後の接着層が箔を基材に貼り付けられない程度まで硬化しないように)、紫外線の照射量を設定する必要がある。さらに、この製造方法において、たとえば、インクジェットプリンターを用いて紫外線硬化型カチオン系樹脂接着剤を基材に印刷する場合には、紫外線照射工程において、基材に印刷された接着層がにじまない程度まで接着層の粘性が増すように、紫外線の照射量を設定する必要がある。そのため、特許文献1に記載の製造方法では、紫外線照射工程における紫外線の照射量の設定が煩雑になる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂が含まれている紫外線硬化型インクを用いて被装飾体に装飾物を接着して被装飾体を装飾する装飾方法において、被装飾体または装飾物に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程での紫外線の照射量を比較的容易に設定することが可能な装飾方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の装飾方法は、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを装飾物に塗布するインク塗布工程と、インク塗布工程で装飾物に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、インク塗布工程で装飾物に塗布された紫外線硬化型インクの有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、紫外線照射工程および溶剤除去工程の後に、紫外線硬化型インクの表面を被装飾体に密着させて被装飾体に装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記の課題を解決するため、本発明の装飾方法は、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを被装飾体に塗布するインク塗布工程と、インク塗布工程で被装飾体に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、インク塗布工程で被装飾体に塗布された紫外線硬化型インクの有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、紫外線照射工程および溶剤除去工程の後に、紫外線硬化型インクの表面に装飾物を密着させて被装飾体に装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程とを備え、紫外線照射工程において紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射器と、溶剤除去工程において有機溶剤を蒸発させて除去するヒータとは、別々に設けられるとともに互いに異なる位置に配置され、ヒータは、被装飾体の、紫外線硬化型インクが塗布される面の反対面側に配置されていることを特徴とする。さらに、上記の課題を解決するため、本発明の装飾方法は、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インクを被装飾体に塗布するインク塗布工程と、インク塗布工程で被装飾体に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程と、インク塗布工程で被装飾体に塗布された紫外線硬化型インクの有機溶剤を蒸発させて除去する溶剤除去工程と、紫外線照射工程および溶剤除去工程の後に、紫外線硬化型インクの表面に装飾物を密着させて被装飾体の一部分に装飾物を貼り付ける装飾物貼付工程と、装飾物貼付工程後に行われる未接着部分除去工程とを備え、インク塗布工程では、装飾物貼付工程において装飾物が貼り付けられる被装飾体の一部分のみに紫外線硬化型インクを塗布し、装飾物貼付工程では、被装飾体の、装飾物が貼り付けられない部分も装飾物が覆うように装飾物を配置し、未接着部分除去工程では、装飾物の、被装飾体に貼り付らけれていない部分を除去することを特徴とする。
【0008】
本発明の装飾方法では、インク塗布工程で被装飾体または装飾物に塗布される紫外線硬化型インクに有機溶剤が含まれている。そのため、本発明では、溶剤除去工程において有機溶剤を蒸発させて除去することで、被装飾体や装飾物に塗布された紫外線硬化型インクの粘度を高めて、被装飾体や装飾物に塗布された紫外線硬化型インクのにじみを防止することが可能になる。したがって、本発明では、紫外線照射工程において、紫外線硬化型インクが装飾物貼付工程の後に完全硬化するのに必要な量の紫外線が照射されるように、かつ、被装飾体に装飾物を貼り付けられるだけの粘着力が、紫外線が照射された直後の紫外線硬化型インクに残るように紫外線の照射量を設定すれば良く、被装飾体や装飾物に塗布された紫外線硬化型インクのにじみが防止されるように紫外線の照射量を設定する必要がない。その結果、本発明では、紫外線照射工程における紫外線の照射量を比較的容易に設定することが可能になる。
【0009】
本発明において、紫外線硬化型インクの25℃における粘度は、3mPa・sec以上18mPa・sec以下であり、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インクの25℃における粘度は、20mPa・sec以上であることが好ましい。このように構成すると、紫外線硬化型インクの25℃における粘度が18mPa・sec以下であるため、インク塗布工程において、インクジェットヘッドから紫外線硬化型インクを吐出させて被装飾体や装飾物に紫外線硬化型インクを塗布することが可能になる。また、このように構成すると、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インクの25℃における粘度が20mPa・sec以上であるため、溶剤除去工程において有機溶剤を蒸発させて除去することで被装飾体や装飾物に塗布された紫外線硬化型インクのにじみを確実に防止することが可能になる。
【0010】
本発明において、装飾物は、たとえば、箔である。本発明では、インク塗布工程で被装飾体または装飾物に塗布される紫外線硬化型インクに有機溶剤が含まれているため、インク塗布工程で塗布される紫外線硬化型インクの厚さを薄くすることが可能になる。したがって、装飾物が箔であって、かつ、装飾物貼付工程後に箔の不要な部分を除去する場合には、不要な部分を除去することで形成される箔の端面をシャープな端面にすることが可能になる。
【0011】
本発明において、紫外線照射工程は、溶剤除去工程の後に行われることが好ましい。このように構成すると、紫外線照射工程の後に溶剤除去工程が行われる場合と比較して、被装飾体または装飾物に塗布された紫外線硬化型インクのにじみを効果的に防止することが可能になるとともに、紫外線硬化型インクに含まれる有機溶剤を確実に蒸発させて除去することが可能になる。
【0012】
本発明において、紫外線照射工程と溶剤除去工程とは同時に行われても良い。紫外線硬化型インクに紫外線が照射されると重合反応が始まって重合反応熱が発生するため、この場合には、紫外線硬化型インクに含まれている有機溶剤を蒸発させるのに重合反応熱を利用することが可能になる。したがって、溶剤除去工程において、短時間で有機溶剤を蒸発させて除去することが可能になる。また、本発明において、たとえば、紫外線硬化型インクには、紫外線硬化型エポキシ系樹脂が含まれていない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明では、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂が含まれている紫外線硬化型インクを用いて被装飾体に装飾物を接着して被装飾体を装飾する装飾方法において、被装飾体または装飾物に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する紫外線照射工程での紫外線の照射量を比較的容易に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。
図2】本発明の他の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。
図3】本発明の他の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(装飾方法)
図1は、本発明の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。
【0017】
本形態の装飾方法は、被装飾体1に装飾物2を貼り付けて被装飾体1を装飾するための方法である。被装飾体1は、たとえば、プラスチック、ガラス、金属あるいは紙等によって形成されている。装飾物2は、紫外線を透過しない材料で形成されている。本形態の装飾物2は、箔である。具体的には、装飾物2は、金箔またはアルミニウム箔等の金属箔である。したがって、以下では、本形態の装飾物2を「箔2」とする。本形態では、被装飾体1に貼り付けられる前の箔2は、図1(A)に示すように、離型層3を介して基材(ベースフィルム)4に蒸着されている。なお、箔2は、ホログラム箔であっても良い。
【0018】
また、本形態では、紫外線硬化型カチオン重合性樹脂と光重合開始剤と有機溶剤とが含まれている紫外線硬化型インク(ソルベントUVインク)5を用いて、被装飾体1に箔2が貼り付けられる。紫外線硬化型カチオン重合性樹脂は、上述の特許文献1にも記載されているように、紫外線が照射されてから完全硬化するまでの時間が長く、紫外線が照射されてから完全硬化するまでの時間を制御することが可能であるといった特性を有している。本形態の紫外線硬化型インク5は、透明なクリアインクである。なお、紫外線硬化型インク5は、白色、黒色あるいはその他の色の色材を含んでいても良い。すなわち、紫外線硬化型インク5は、カラーインクであっても良い。
【0019】
紫外線硬化型インク5の25℃における粘度(すなわち、紫外線硬化型インク5の常温における粘度)は、3mPa・sec以上18mPa・sec以下となっている。また、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インク5の25℃における粘度(すなわち、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インク5の常温における粘度)は、20mPa・sec以上となっている。すなわち、紫外線硬化型インク5の粘度は、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インク5がにじまないように設定されている。
【0020】
被装飾体1に箔2を貼り付けるときには、まず、図1(B)に示すように、紫外線硬化型インク5を箔2に塗布する(インク塗布工程)。本形態のインク塗布工程では、インクジェットプリンターのインクジェットヘッド11から、離型層3を介して基材4に蒸着された箔2に向かって紫外線硬化型インク5を吐出させて、箔2に紫外線硬化型インク5を塗布する。インクジェットヘッド11は、箔2の上方に配置されている。また、インクジェットヘッド11は、インクジェットプリンターのキャリッジ(図示省略)に搭載されており、箔2の上方を移動する。
【0021】
また、インク塗布工程で箔2に塗布された紫外線硬化型インク5に紫外線を照射するとともに(紫外線照射工程)、インク塗布工程で箔2に塗布された紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する(溶剤除去工程)。すなわち、本形態では、紫外線照射工程と溶剤除去工程とが同時に行われている。紫外線照射工程では、UV照射器12によって、紫外線硬化型インク5に紫外線を照射する。溶剤除去工程では、ヒータ13によって紫外線硬化型インク5を加熱することで、紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する。
【0022】
なお、溶剤除去工程において、紫外線硬化型インク5の有機溶剤が完全に除去されなくても良い。この場合には、後述の放置工程において、被装飾体1を加熱することで、紫外線硬化型インク5の有機溶剤が完全に除去される。また、溶剤除去工程におけるヒータ13の温度を制御することで、紫外線硬化型インク5が完全硬化するまでの時間を短くしたり長くしたりすることが可能である。
【0023】
UV照射器12は、たとえば、紫外線LEDであり、250nm〜400nmの波長の紫外線を照射する。このUV照射器12は、たとえば、インクジェットプリンターのキャリッジに搭載されてインクジェットヘッド11と一緒に箔2の上方を移動するようになっており、UV照射器12は、箔2に塗布された直後の紫外線硬化型インク5に紫外線を照射する。ヒータ13は、たとえば、基材4の下側に配置されており、ヒータ13には、基材4が載置されている。ヒータ13は、箔2に紫外線硬化型インク5が塗布された直後に基材4、離型層3および箔2を介して紫外線硬化型インク5を加熱し、紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する。
【0024】
なお、UV照射器12は、箔2に紫外線硬化型インク5が塗布されてから一定時間経過後に紫外線硬化型インク5に紫外線を照射しても良い。また、ヒータ13は、箔2に紫外線硬化型インク5が塗布されてから一定時間経過後に紫外線硬化型インク5を加熱しても良い。また、この場合には、UV照射器12による紫外線の照射とヒータ13による紫外線硬化型インク5の加熱とが同時に行われても良いし、UV照射器12による紫外線の照射の後にヒータ13による紫外線硬化型インク5の加熱が行われても良いし、ヒータ13による紫外線硬化型インク5の加熱の後にUV照射器12による紫外線の照射が行われても良い。すなわち、紫外線照射工程と溶剤除去工程とが同時に行われても良いし、紫外線照射工程の後に溶剤除去工程が行われても良いし、溶剤除去工程の後に紫外線照射工程が行われても良い。
【0025】
ただし、上述のように、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インク5の常温における粘度は、20mPa・sec以上となっており、紫外線硬化型インク5の粘度は、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5の有機溶剤を除去すれば、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5がにじまないように設定されている。そのため、ヒータ13は、箔2に紫外線硬化型インク5が塗布された直後に紫外線硬化型インク5を加熱して、紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去することが好ましい。
【0026】
紫外線照射工程および溶剤除去工程が終わると、図1(C)に示すように、紫外線硬化型インク5の表面を被装飾体1に密着させて被装飾体1に箔2を貼り付ける(装飾物貼付工程)。装飾物貼付工程は、紫外線照射工程および溶剤除去工程の終了後、箔2が被装飾体1に貼り付くだけの粘着力が紫外線硬化型インク5に残っている間に行われる。すなわち、装飾物貼付工程は、紫外線照射工程および溶剤除去工程の終了後、箔2が被装飾体1に貼り付かなくなるまで紫外線硬化型インク5が硬化する前に行われる。紫外線照射工程および溶剤除去工程が終了してから装飾物貼付工程が開始されるまでの時間は、紫外線硬化型インク5に含まれる成分や紫外線照射工程での紫外線の照射量等によって変動するが、この時間は、たとえば、30秒であったり、3分であったりする。装飾物貼付工程では、たとえば、図1(C)に示すように、ゴム製のスキージ14等によって、被装飾体1に向かって基材4を加圧して紫外線硬化型インク5の表面を被装飾体1に密着させる。
【0027】
その後、図1(D)に示すように、基材4を取り除いて箔2を被装飾体1に転写するとともに(転写工程)、紫外線硬化型インク5が完全硬化するまで被装飾体1を放置する(放置工程)。放置工程では、被装飾体1を加熱しても良い。紫外線硬化型インク5の接着力は時間とともに増していき(すなわち、紫外線硬化型インク5の硬化が進むにしたがって増していき)、紫外線硬化型インク5が完全硬化すると、紫外線硬化型インク5によって箔2が被装飾体1に接着固定される。紫外線硬化型インク5が完全硬化して箔2が被装飾体1に接着固定されると、箔2の、被装飾体1に接着されていない部分を除去する(未接着部分除去工程)。箔2の未接着部分の除去が終わると、被装飾体1の装飾が終了する。
【0028】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、紫外線硬化型インク5に有機溶剤が含まれている。そのため、本形態では、溶剤除去工程において有機溶剤を蒸発させて除去することで、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5の粘度を高めて、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5のにじみを防止することが可能になる。したがって、本形態では、紫外線照射工程において、紫外線硬化型インク5が装飾物貼付工程の後に完全硬化するのに必要な量の紫外線が照射されるように、かつ、被装飾体1に箔2を貼り付けられるだけの粘着力が、紫外線が照射された後の紫外線硬化型インク5に残るように紫外線の照射量を設定すれば良く、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5のにじみが防止されるように紫外線の照射量を設定する必要がない。その結果、本形態では、紫外線照射工程における紫外線の照射量を比較的容易に設定することが可能になる。
【0029】
なお、たとえば、紫外線硬化型インク5に有機溶剤が含まれていない場合であって、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5のにじみを防止することができる紫外線の照射量の下限値が、紫外線硬化型インク5が装飾物貼付工程の後に完全硬化するのに必要な紫外線の照射量の下限値よりも高い場合には、紫外線照射工程における紫外線の照射量の許容範囲が、本形態の紫外線照射工程における紫外線の照射量の許容範囲よりも狭くなるおそれがある。すなわち、本形態では、このような場合の紫外線照射工程における紫外線の照射量の許容範囲よりも、紫外線照射工程における紫外線の照射量の許容範囲を広げることが可能になる。
【0030】
また、本形態では、紫外線硬化型インク5に有機溶剤が含まれているため、インク塗布工程で箔2に塗布される紫外線硬化型インク5の厚さを薄くすることが可能になる。したがって、本形態では、未接着部分除去工程において箔2の未接着部分を除去した後に形成される箔2の端面をシャープな端面にすることが可能になる。
【0031】
本形態では、紫外線硬化型インク5の常温における粘度は、3mPa・sec以上18mPa・sec以下となっている。そのため、本形態では、インク塗布工程において、インクジェットヘッド11から紫外線硬化型インク5を吐出させて箔2に紫外線硬化型インク5を塗布することが可能になる。また、本形態では、有機溶剤を除去したときの紫外線硬化型インクの常温における粘度が20mPa・sec以上となっているため、溶剤除去工程において有機溶剤を蒸発させて除去することで箔2に塗布された紫外線硬化型インク5のにじみを確実に防止することが可能になる。
【0032】
本形態では、紫外線照射工程と溶剤除去工程とが同時に行われている。紫外線硬化型インク5に紫外線が照射されると重合反応が始まって重合反応熱が発生するため、本形態では、紫外線硬化型インク5に含まれている有機溶剤を蒸発させるのにこの重合反応熱を利用することが可能になる。したがって、本形態では、溶剤除去工程において、短時間で有機溶剤を蒸発させて除去することが可能になる。
【0033】
なお、本形態において、溶剤除去工程の後に紫外線照射工程が行われる場合には、紫外線照射工程の後に溶剤除去工程が行われる場合と比較して、箔2に塗布された紫外線硬化型インク5のにじみを効果的に防止することが可能になるとともに、紫外線硬化型インク5に含まれる有機溶剤を確実に除去することが可能になる。
【0034】
(装飾方法の変形例1)
図2は、本発明の他の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。図2では、上述した形態と同一の構成には同一の符号を付している。
【0035】
上述した形態では、インク塗布工程において、箔2に紫外線硬化型インク5を塗布しているが、図2(A)に示すように、インク塗布工程において、被装飾体1に紫外線硬化型インク5を塗布しても良い。この場合には、上述した形態と同様に、インク塗布工程において、インクジェットヘッド11から被装飾体1に向かって紫外線硬化型インク5を吐出させて、被装飾体1に紫外線硬化型インク5を塗布する。
【0036】
また、この場合には、紫外線照射工程において、インク塗布工程で被装飾体1に塗布された紫外線硬化型インク5に紫外線を照射するとともに、溶剤除去工程において、インク塗布工程で被装飾体1に塗布された紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する。紫外線照射工程では、上述した形態と同様に、UV照射器12によって、紫外線硬化型インク5に紫外線を照射する。また、溶剤除去工程では、被装飾体1が載置されているヒータ13によって、被装飾体1を介して紫外線硬化型インク5を加熱し、紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する。
【0037】
その後、装飾物貼付工程において、図2(B)に示すように、紫外線硬化型インク5の表面に箔2を密着させて被装飾体1に箔2を貼り付ける。上述した形態と同様に、装飾物貼付工程は、紫外線照射工程および溶剤除去工程の終了後、箔2が被装飾体1に貼り付くだけの粘着力が紫外線硬化型インク5に残っている間に行われる。装飾物貼付工程では、たとえば、ローラ15等によって、箔2を加圧して紫外線硬化型インク5の表面に箔2を密着させる。
【0038】
その後、放置工程において、紫外線硬化型インク5が完全硬化するまで被装飾体1を放置する。また、紫外線硬化型インク5が完全硬化して箔2が被装飾体1に接着固定されると、未接着部分除去工程において、箔2の、被装飾体1に接着されていない部分を、たとえば、粘着テープ等を用いて除去する(図2(C)参照)。箔2の未接着部分の除去が終わると、被装飾体1の装飾が終了する。この変形例においても上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(装飾方法の変形例2)
図3は、本発明の他の実施の形態にかかる装飾方法を説明するための模式図である。図3では、上述した形態および変形例1と同一の構成には同一の符号を付している。
【0040】
上述した装飾方法の変形例1では、被装飾体1の、紫外線硬化型インク5が塗布される面である被塗布面1aは、2次元の平面となっているが、被装飾体1の被塗布面1aは、3次元の曲面となっていても良いし、3次元的に組み合わされた複数の平面や曲面によって構成されていても良い。たとえば、図3に示すように、被装飾体1の被塗布面1aは、3次元の凸曲面となっていても良い。
【0041】
この場合には、たとえば、図3(A)に示すように、有機溶剤を含まない紫外線硬化型インクをインクジェッドヘッド16から吐出させて基材7に塗布する工程と、UV照射器17からこの紫外線硬化型インクに紫外線を照射してこの紫外線硬化型インクを硬化させる工程とを順次行うことで、立体的な被装飾体1を形成する。その後、変形例1と同様に、インク塗布工程において、被装飾体1の被塗布面1aに紫外線硬化型インク5を塗布し、紫外線照射工程において、被塗布面1aに塗布された紫外線硬化型インク5に紫外線を照射するとともに、溶剤除去工程において、被塗布面1aに塗布された紫外線硬化型インク5の有機溶剤を蒸発させて除去する(図3(B)参照)。
【0042】
その後、装飾物貼付工程において、図3(C)に示すように、紫外線硬化型インク5の表面に、離型層3を介して基材4に蒸着された箔2を密着させて被装飾体1に箔2を貼り付ける。装飾物貼付工程では、たとえば、スキージ14やローラ15(図3(C)では図示省略)等によって、基材4、7を加圧して紫外線硬化型インク5の表面に箔2を密着させる。その後、基材4を取り除いて箔2を被装飾体1に転写するとともに、紫外線硬化型インク5が完全硬化するまで被装飾体1を放置する。また、紫外線硬化型インク5が完全硬化して箔2が被装飾体1に接着固定されると、箔2の、被装飾体1に接着されていない部分を除去する(図3(D)参照)。箔2の未接着部分の除去が終わると、被装飾体1の装飾が終了する。この変形例においても上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、図3に示す変形例では、立体的な被装飾体1を形成する際に使用されるインクジェッドヘッド16とインク塗布工程で使用されるインクジェットヘッド11とが別個に設けられているが、インクジェットヘッド11とインクジェットヘッド16とが共通のインクジェットヘッドであっても良い。また、この変形例では、立体的な被装飾体1を形成する際に使用されるUV照射器17とインク塗布工程で使用されるUV照射器12とが別個に設けられているが、UV照射器12とUV照射器17とが共通のUV照射器であっても良い。
【0044】
(他の実施の形態)
上述した形態では、被装飾体1に貼り付けられる装飾物2は箔であるが、装飾物2は、金属粉、セラミック粉、プラスチック粉、無機顔料粉またはフロッキー粉等の粉体であっても良いし、ブロック状に形成されたブロック体であっても良い。また、上述した形態では、インク塗布工程において、インクジェットヘッド11から紫外線硬化型インク5を吐出させているが、インク塗布工程において、ディスペンサから紫外線硬化型インク5を吐出させても良い。なお、インク塗布工程において、インクジェットヘッド方式およびディスペンサ方式以外の方式で、紫外線硬化型インク5を被装飾体1や箔2に塗布することも可能である。また、装飾物2を保護するために、あるいは、装飾物2を着色するために、クリアインク、カラーインクまたは白色インク等のいわゆる特色インクを用いて、インクジェット方式、スプレー方式またはそれ以外の方式によって、オーバーコート層あるいは着色層等の最上位層を装飾物2の上に形成しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 被装飾体
2 箔(装飾物)
5 紫外線硬化型インク
図1
図2
図3