特許第6607615号(P6607615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607615
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】金属錯体触媒及びそれを用いた重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/54 20060101AFI20191111BHJP
   C08F 4/605 20060101ALI20191111BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20191111BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20191111BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20191111BHJP
   C07F 7/10 20060101ALN20191111BHJP
   C07F 17/00 20060101ALN20191111BHJP
【FI】
   C08F4/54
   C08F4/605
   C07F19/00
   B01J31/22 Z
   !C07F5/00 D
   !C07F7/10 F
   !C07F17/00
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-514994(P2017-514994)
(86)(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公表番号】特表2017-528573(P2017-528573A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】US2015032342
(87)【国際公開番号】WO2015183770
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】62/005,917
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】アベル ジョシュア ピー
(72)【発明者】
【氏名】チン ヅァンチュアン
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−534538(JP,A)
【文献】 特表2007−505174(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016210(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/014463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00 − 4/82
C08F 210/00 − 210/18
C08F 236/00 − 236/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムに分布したポリエン及びα−オレフィンmerを含むポリマーを提供するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a)少なくとも1つのポリエン及び少なくとも1つのα−オレフィンを含むエチレン性不飽和炭化水素を、触媒活性剤、及び以下の一般式によって定義される錯体を含む触媒組成物と接触させること、
【化1】

式中、
Mが、第3族の金属原子を表し、
Lが、中性ルイス塩基を表し、
zが、0〜3(境界値を含む)の整数であり、
mが、1〜5(境界値を含む)の整数であり、
nが、1又は2であり、
各Rが、ハロゲン原子及びハロアルキル基から選択される電子求引基若しくは原子、又は、−Cのアルキル基から選択される電子供与基であり、
が、X型のモノアニオン性リガンドであるが、
但し、R含有フェニル基が、インデニルリガンドの2位又は3位のいずれかにて結合していることを条件とする、
b)前記ポリマーが、前記エチレン性不飽和炭化水素から形成されること、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリエン及び少なくとも1つのα−オレフィンを含むエチレン性不飽和炭化水素が、少なくとも1つの共役ジエン化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのα−オレフィンが、エチレンを含む、または、エチレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリマーが、0超から最大40%のモル・パーセントのエチレンmerを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリマーが、ビニル立体配置で組み込まれたポリエンmerを2%未満含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記一般式のnが2である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記一般式のRがトリフルオロメチル基である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記一般式のmが2である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記一般式のRがtert−ブチル基である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記一般式のmが1である、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年5月30日出願の米国特許仮出願第62/005,917号の利益を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドなどのゴム製品は、多くの場合、例えば微粒子カーボンブラック及びシリカなどの1つ又は2つ以上の補強材を含有するエラストマー組成物から作製される。例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook,13th ed.(1990),pp.603〜04を参照されたい。
【0003】
良好なトラクション及び耐摩耗性が、タイヤトレッドについて第一に考慮すべき事項である。しかしながら、自動車の燃料効率についての懸念により、タイヤの動作中のヒステリシス及び発熱性の低減と相関するそれらの転がり抵抗の最小化が主張されている。低減したヒステリシス及びトラクションは、大部分において、競合する考慮事項である。良好な路面トラクションを提供するように設計された組成物から作製されたトレッドは、通常、増加した転がり抵抗を呈し、逆もまた同様である。
【0004】
典型的には、充填剤(複数可)、ポリマー(複数可)、及び添加剤が、これらの特性の許容可能な妥協点又はバランスを提供するように選択される。補強充填剤(複数可)がエラストマー材料(複数可)全体に十分に分散していることを確実にすることは、加工性を向上させると同時に物理的特性も改善する。充填剤の分散は、それらのエラストマー(複数可)との相互作用を増加させることによって改善され得、これは一般にヒステリシスの低減をもたらす(上記参照)。この種の試みの例としては、選択的反応性プロモーターの存在下での高温混合、配合材料の表面酸化、表面グラフト化、及び典型的には末端におけるポリマーの化学修飾が挙げられる。
【0005】
様々な天然及び合成のエラストマー材料は、多くの場合、例えば、タイヤ構成要素などの加硫物の製造に使用される。最も一般的に用いられる合成材料の一部としては、触媒を用いるプロセスによって作製されることが多い高シスポリブタジエン、及び、フリーラジカル又はアニオン性開始剤を用いるプロセスによって作製されることが多い実質的にランダムなスチレン/ブタジエンインターポリマーが挙げられる。
【0006】
合成が特に困難なものは、オレフィン及びポリエンのインターポリマー、特に共役ジエンであり、これは、これら2種類のエチレン性不飽和モノマーの非常に異なる反応性に主に起因する。これらのそれぞれが重合触媒の金属原子と配位結合する感受性は、大きく異なる。
【0007】
合成の困難さにも関わらず、かかるインターポリマーは、大きな商業的関心を集めている。ポリエン及びオレフィンモノマーは、通常、異なる原材料に由来し、異なる技法によって提供されるため、エラストマー材料の製造者らは、インターポリマーを各々からの様々な量及び/又は調整可能な量のmerで合成することによって、いずれのモノマーの供給及び価格破壊に対しても防御することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
加えて、空気式タイヤのある特定の部分、特に側壁が、大気中分解、特にオゾン分解に対して良好な抵抗性を呈することが好ましい。かかる構成要素は、実質的に飽和したエラストマー(複数可)を含めることから利益を享受し得る。従来、典型的な選択肢には、エチレン/ポリエチレン/非共役ジエン(EPDM)インターポリマー、又はイソブチレン及びパラメチルスチレンの臭素化コポリマーが含まれてきた。これらの材料に対する代替物も依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
インデニル−金属錯体のいずれのクラスも触媒系の成分として使用することができる。触媒系は、ポリエン及びオレフィンの混合物又はブレンドを含むエチレン性不飽和炭化水素モノマーの重合に使用することができる。
【0010】
金属錯体のクラスは、以下の一般式によって表すことができ、
【0011】
【化1】

式中、
Mは、第3族の金属原子を表し、
Lは、中性ルイス塩基を表し、
zは、0〜3(境界値を含む)の整数であり、
mは、1〜5(境界値を含む)の整数であり、
nは、1又は2であり、
各Rは、電子求引(R’)又は電子豊富な(R”)基又は原子であり、
は、X型のモノアニオン性リガンドである。
【0012】
置換フェニル基は、インデニルリガンドの2位又は3位のいずれかにて結合される。
【0013】
式(I)では、L基及びR基は、任意選択で、各々が結合するM原子と一緒になって、環状部分を提供するように連結し得る。
【0014】
他の態様では、触媒活性剤との式(I)錯体を含む触媒組成物が提供される。式(I)の錯体及び触媒組成物を作製する方法も提供される。
【0015】
また更なる態様では、エチレン性不飽和炭化水素モノマーを重合するプロセスが提供される。本方法は、モノマーを前述の触媒組成物と接触させることを伴う。エチレン性不飽和炭化水素モノマーは、有利にも、1種又は2種以上のポリエン、及び任意選択で、1種又は2種以上のオレフィンを含み得る。
【0016】
ある特定の実施形態では、重合プロセスは、少量のビニルポリエンmerをもたらし得、これは即ち、ポリエンmerが1,4−立体配置で優先的に組み込むということである。
【0017】
前述の重合プロセスはまた、任意選択で、ポリマーが、例えばカーボンブラック及び/又はシリカなどの様々な種類の微粒子充填剤と相互作用する能力を向上させるように、1個又は2個以上のヘテロ原子を含む末端部分を持つ、結果として得られるポリマーを提供することを含み得る。
【0018】
また、加硫物を含む、微粒子充填剤及び結果として得られるポリマーを含む組成物も提供され、これらのある特定の実施形態はまた、末端官能性を含んでもよく、かかる組成物を提供し使用する方法も提供される。
【0019】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなる。この説明の理解を支援するために、ある特定の定義を直下に提供し、これらは、前後の文章が反対の意図を明示的に示さない限り、全体にわたって適用されることが意図される。
「ポリマー」は、1つ又は2つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「mer」及び「mer単位」は両方とも、単一の反応物分子に由来するポリマーの部分を意味する(例えば、エチレンmerは一般式−CHCH−を有する)。
「コポリマー」は、2つの反応物、典型的にはモノマーに由来するmer単位を含むポリマーを意味し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーなどを含む。
「インターポリマー」は、少なくとも2つの反応物、典型的にはモノマーに由来するmer単位を含むポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「置換された」は、対象となる基の意図する目的に干渉しないヘテロ原子又は官能基(例えば、ヒドロカルビル基)を含有することを意味する。
「ポリエン」は、少なくとも2つの二重結合が最長部分又は鎖に位置する分子、典型的にはモノマーを意味し、具体的には、ジエン、トリエンなどを含む。
「ポリジエン」は、1つ又は2つ以上のジエンに由来するmer単位を含むポリマーを意味する。
「ランタニド金属」は、57〜71(境界値を含む)の原子番号を有する任意の元素を意味する。
「第3族の金属」は、Sc、Y、又はランタニド金属を意味する。
「phr」は、100pbwのゴム当たりの重量部(pbw)を意味する。
「ラジカル」は、別の分子との反応後に、反応の結果として何らかの原子が得られたか失われたかに関わらず、残留している分子の部分を意味する。
「中性ルイス塩基」は、電子の利用可能な対を含む非イオン性化合物(又はラジカル)を意味する。
「アリール」は、フェニル又は多環式芳香族ラジカルを意味する。
「アラルキル」は、アリール置換基、例えばベンジル基を含む、アルキルラジカルを意味する。
「非配位性アニオン」は、立体障害があるために、例えば、触媒系の活性中心と配位結合を形成することがない、立体的に嵩高のアニオンを意味する。
「非配位性アニオン前駆体」は、反応条件下で非配位性アニオンを形成することができる化合物を意味する。
「末端」は、ポリマー鎖の終端を意味する。
「末端活性」は、生きた(living)末端又は疑似的に生きた末端を持つポリマーを意味する。
「末端部分」は、末端に位置する基又は官能基を意味する。
【0020】
本文書全体にわたって、百分率の形態で与えられる全ての値は、前後の文章が反対の意図を明示的に示さない限り、重量パーセントである。いずれの具体的に参照される特許及び/又は公開特許出願の関連する部分(複数可)も、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上文から明らかなように、触媒組成物を使用して、1種又は2種以上のポリエンを、任意選択であるがある点では好ましくは、1種又は2種以上のオレフィンと組み合わせて、重合することができる。
【0022】
結果として得られるポリマーは、エラストマー性であり得、mer単位を含み、このmer単位はそれ自体がエチレン不飽和を含む。エチレン不飽和を含むmer単位は、ポリエン、特にジエン及びトリエン(例えば、ミルセン)に由来し得る。例示的なポリエンとしては、C〜C30ジエンが挙げられ、好ましくはC〜C12ジエンである。これらの中でも好ましいものは共役ジエンであり、共役ジエンとは、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどであるがこれらに限定されない。
【0023】
全ポリエン含有量を基準として、50%以下、好ましくは約35%以下の全体的な1,2−微細構造を有するポリマーを「実質的に線状である」と見なす。しかしながら、ある特定の最終使用用途については、1,2−リンケージの含有量を更に低く、例えば、20%未満、15%未満、10%未満、7%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満に保つことが望ましくあり得る。
【0024】
1,2−微細構造でポリマー鎖に組み込まれないポリエンmerは、シス又はトランス異性体立体配置のいずれかを有し得る。ある特定の最終使用用途に望ましい高いシス−1,4−リンケージ含有量を有するポリマーは、フリーラジカル又はアニオン(リビング)重合によって達成することが困難であるか又は非効率的であり得るため、一般には、リビング重合において開始剤が用いられるのとは対照的に、触媒を使用するプロセスによって調製される。
【0025】
本プロセスは、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、及び更には少なくとも約95%のシス−1,4−リンケージ含有量を有するポリジエンを持つポリマーを提供することができ、前述の各々は、全ポリエン含有量に対する数量パーセンテージを表している。
【0026】
重合プロセスにおいて用いることができるオレフィンの例としては、C〜C30、好ましくはC〜C20、より好ましくはC〜C12、直鎖又は分枝鎖α−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなど、並びにC〜C30シクロ−オレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、及びテトラシクロドデセンなどが挙げられる。
【0027】
本重合プロセスは、オレフィン/ポリエンインターポリマー、典型的には、優勢な量のポリエンmerを持つもの、例えば、オレフィンmerよりも多い共役ジエンmerを含むオレフィン/共役ジエンコポリマーを提供し得る。結果として得られるインターポリマーは、最大で10、20、30、40、又は更にはことによると45%のオレフィンmerを含み得、多くの場合、少なくとも60、70、80、又は更には90%のポリエンmerを含み得る。範囲に関しては、インターポリマーは、1〜45%のオレフィンmer及び55〜99%の共役ジエンmer、約3〜40%のオレフィンmer及び60〜97%の共役ジエンmer、5〜35%のオレフィンmer及び65〜95%の共役ジエンmer、又は約7〜30%のオレフィンmer及び70〜93%の共役ジエンmerを含み得る。(この段落中の全てのパーセンテージはモル・パーセントである。)
【0028】
開示の方法に従って生成されたポリマーの数平均分子量(M)は、典型的には、急冷した試料が、約2〜約150、より一般的には約2.5〜約125、更により一般的には約5〜約100、最も一般的には約10〜約75のゴムムーニー粘度(ML1+4/100℃)を呈するようなものであり、前述のものは、約5,000〜約250,000ダルトン、一般的には約10,000〜約150,000ダルトン、より一般的には約50,000〜約120,000ダルトン、最も一般的には約10,000〜約100,000ダルトン、又は更には約10,000〜約80,000ダルトンのMに概して対応する結果として得られるインターポリマーは、典型的には、1〜20、一般的には2〜15、より一般的には3〜10の分子量分布(M/M)を有する。(M及びMの両方は、較正のためのポリスチレン基準を使用してGPCによって決定することができる。)
【0029】
前述の種類のポリマーは、溶液重合によって作製することができ、この溶液重合は、ランダム性、微細構造などのような特性の並外れた制御をもたらす。溶液重合は20世紀半ば頃から行われているため、その一般的態様は当業者に既知であるが、本明細書では、参照の便宜性のためにある特定の態様を提供する。
【0030】
好適な溶媒としては、重合又は生長するポリマー鎖への組み込みを受けず(即ち、触媒組成に対して不活性であり、その影響を受けず)、好ましくは周囲温度及び周囲圧力にて液体である、有機化合物が挙げられる。好適な有機溶媒の例としては、芳香族炭化水素及び(シクロ)脂肪族炭化水素などの、沸点が比較的低い炭化水素が挙げられる。例示的な重合溶媒としては、様々なC〜C12環状及び非環状アルカン(例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロ−ヘキサンなど)、及びそれらのアルキル化誘導体、ある特定の液体芳香族化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレン)、石油エーテル、ケロシン、石油スピリット、並びにこれらの混合物が挙げられる。溶媒として使用され得る、好適である可能性のある他の有機化合物としては、パラフィン系油、芳香族油、又は一般に油展ポリマーに使用される他の炭化水素油などの、高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。当業者であれば、他の有用な溶媒の選択肢及び組み合わせを認識する。
【0031】
重合プロセスには、第3族の金属錯体を含む触媒組成物が用いられる。「触媒組成物」という用語は、成分の単純混合物、物理的又は化学的な引力によって生じる様々な成分の錯体、成分のうちのいくつか若しくは全ての化学反応生成物、又は前述の組み合わせを包含する。
【0032】
例示的な物としては、(a)式(I)の錯体、アルキル化剤、及び任意選択でハロゲン含有化合物(式(I)の錯体又はアルキル化剤のいずれもハロゲン原子を含まない);(b)式(I)の錯体及びアルミノキサン;あるいは(c)式(I)の錯体、アルキル化剤、及び非配位性アニオン又はその前駆体が挙げられる。これらの例示的な組成物の各構成要素は、以下で別途考察する。
【0033】
本重合プロセスは、第3族の金属の特定の属、具体的には、上で示した式(I)によって定義されるものを用いる。錯体は、重合容器に導入する前に形成してもよく、あるいは構成要素(反応物)を別途添加して反応させて、インサイツで錯体(触媒)を形成してもよい。
【0034】
式(I)中、Mは第3族の金属原子を表す。式中、Mは、ランタニド系金属であり、これは、好ましくは、Nd又はGdである。Mは、ある数の酸化状態のうちのいずれであってもよく、+2〜+5が一般的であり、恐らく+3が最も一般的である。
【0035】
式(I)を再度参照して、Lは中性ルイス塩基を表し、その例としては、環状又は非環状(チオ)エーテル、アミン、及びホスフィンが挙げられるが、これらに限定されない。L基の具体的かつ非限定的な例としては、THF、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリ−メチルホスフィン、中性オレフィン、中性ジオレフィンなどが挙げられる。エーテル及び環状エーテルを式(I)錯体におけるLとして使用することが好ましくあり得る。
【0036】
式(I)を再度参照して、zは、0〜3の整数であり得るため(Mの利用可能な配位数(複数可)によって決定される)、錯体は、L基を含まなくてもよく、1つのL基を含んでもよく、又は複数のL基を含んでもよい。一部の実施形態では、zが0である錯体が選好され得、かかる実施形態の例は、実施例の節において以下で与えられる。zが2又は3である場合、各Lは同じでも異なってもよいが、各Lが同じである錯体が選好され得る。
【0037】
式(I)を再度参照して、各Rは、独立して、X型のモノアニオン性リガンドである(CBC法のもの、Green,M.L.H.,「A new approach to the formal classification of covalent compounds of the elements,」J.Organomet.Chem.,500(1〜2),pp.127〜48(1995)を参照されたい)。Rの非限定的な例としては、H;ハロゲン原子、特にCl又はBr;シリル基;シロキシ基;ニトロ基;スルホネート基;アミド基;シリルアルキル基;アルコキシ、特にC〜Cアルコキシ基;及びC〜C20、特にC〜C12の置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖(ペルフルオロ)アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、及びオクチルが挙げられるが、これらに限定されない)、アラルキル基、アリル基、アミノ基、又は置換若しくは非置換アリール基(フェニル、トリル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、アントラセニル、及びテルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない)。AlR及びBRによってそれぞれ表されるAl及びB含有基も、R基として働き得、式中、Rは、H、ハロゲン原子、置換又は非置換アリール基などである。RがC原子を介してMと結合するか又はMと会合する実施形態は、より単純な触媒系の使用を可能にし得、この点に関しては以下でより詳細に考察する。様々なビス(シリル)アミノ基のいずれも、ある特定の実施形態において好ましいR基を構成する。
【0038】
置換R基について、例示的な置換基としては、ハロゲン原子、ハロ置換基(例えば、ハロゲン化されたC〜C30、特にC〜Cヒドロカルビル基、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、及びクロロフェニル)、他のC〜C30、特にC〜Cヒドロカルビル基(例えば、アリール置換アルキル基、例えば、ベンジル及びクミル)、ヘテロ原子含有基(例えば、アルコキシ、アリールオキシ、例えば、2,6−ジメチルフェノキシ又は2,4,6−トリメチルフェノキシ、アシル、例えば、p−クロロベンゾイル又はp−メトキシベンゾイル、(チオ)カルボキシル、カルボナート、ヒドロキシ、ペルオキシ、(チオ)エステル、例えば、アセチルオキシ又はベンゾイルオキシ、(チオ)エーテル、無水物、アミノ、イミノ、アミド、例えば、アセトアミド又はN−メチルアセトアミド、イミド、例えば、アセトイミド及びベンズイミド、ヒドラジノ、ヒドラ−ゾノ、ニトロ、ニトロソ、シアノ、イソシアノ、(チオ)シアン酸エステル、アミジノ、ジアゾ、ボランジイル(borandiyl)、ボラントリイル(borantriyl)、ジボラニル、メルカプト、ジチオエステル、アルキルチオ、アリールチオ、例えば(メチル)−フェニルチオ、又はナフチルチオ、チオアシル、イソチオ−シアン酸エステル、スルホンエステル、スルホンアミド、ジチオカルボキシル、スルホ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、スルホネート、ホスフィド、(チオ)ホスホリル、ホスファト、シリル、シロキシ、ヒドロカルビル置換シリル、例えば、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、ジメチル(ペンタ−フルオロフェニル)シリル、ビストリメチル−シリルメチル、及びトリメチルシロキシなどのヒドロカルビル置換シロキシ基)などが挙げられるが、これらに限定されない。(Si含有基中のケイ素原子をGe又はSnで置換することで、有用なGe又はSn含有基を提供することができる。)
【0039】
あるいは、1つのR及び1つのLは、M原子と一緒になって、連結して環状部分、典型的には、M原子に加えて1個又は2個以上のヘテロ原子を任意選択で含有する5員又は6員環を形成し得る。任意選択で、環状部分は、1つ又は2つ以上のペンダント置換基、例えば、限定されないが、置換又は非置換C〜C20(特にC〜C)アルキル基を含み得る。
【0040】
式(I)を再度参照して、各Rは、電子求引性(R’)又は電子豊富(R”)である、即ち、それぞれ、電子をそれ自体に向けて引き寄せることができる、又は電子をフェニル環に向けて押すことができる、原子又は官能基である。興味のある読者は、電子求引基及び電子豊富な基の説明について、様々なテキストのうちのいずれか、例えば、F.Carey,Organic Chemistry,6th ed.,McGraw−Hill College(2006;New York,New York)を参照されたい。R’原子及び基の非限定的な例としては、ハロゲン、ハロアルキル(ペルフルオロアルキルを含む)基、ニトロ基、ニトリル基、スルホネート基などが挙げられる。R”基の非限定的な例としては、C〜C12、典型的にはC〜C、及び好ましくはC〜C置換及び非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基(及び硫黄類似体)、アミノ基などが挙げられる。
【0041】
式(I)型の錯体における可変のmは、1〜5(境界値を含む)の整数である。mが2以上である場合、各Rは、好ましくは、R’又はR”のいずれかであり、これは即ち、各Rが同一である必要はないが、あるR’基及びR”基両方が同じフェニル環に存在することは好ましくないということである。R基が比較的嵩高である場合、mは3以下に限定され得る。RがR”である場合、2つ又は3つ以上のR”基は、連結して置換又は非置換ヒドロカルビレン基を提供することができ、これは、2個のフェニル環C原子によって非芳香族炭素環部分を提供する。
【0042】
式(I)を再度参照して、可変のnは、1又は2のいずれかであり得、結果として得られる錯体は、以下でそれぞれ式(Ia)及び式(Ib)によって表される。
【0043】
【化2】
【0044】
zの値に応じて、式(Ia)の錯体におけるMは、3〜6個の他の原子と結合し得る。有機金属錯体中の第3族の金属原子、特にランタニド金属原子の配位数は、3〜12の範囲であり得、リガンドの嵩高性が、上限を決定する主要な決定要因である。かかる金属原子は、典型的には、少なくとも6の配位数を有するが、嵩高のリガンドは、より低い配位数をもたらし得る。したがって、特にRが比較的嵩高のリガンドである場合には、zは、0〜2(境界値を含む)、又は更には0若しくは1に限定され得る。
【0045】
式(I)を再度参照して、置換フェニル部分(又はn=2の場合は複数の部分)は、インデニル基(複数可)の2位又は3位のいずれかにて結合し得る。例示目的で上記の式(Ia)錯体を使用して、2及び3置換種を、以下でそれぞれ式(Ia−1)及び式(Ia−2)によって表す。
【0046】
【化3】
【0047】
(当業者であれば、容易にこの説明を発展させて、一般式(Ib)型のビス錯体に対する置換を想定することができる。)
【0048】
式(I)型の錯体は、以下の実施例の節に記載するものと同様の手順に従って調製することができ、その教示は、当業者によって容易に発展又は改変され得る。
【0049】
本明細書では共触媒又は触媒活性剤と称する触媒組成物の構成要素(b)は、アルキル化剤、及び/又は非配位性アニオン若しくは非配位性アニオン前駆体を含有する化合物を含む。
【0050】
アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を別の金属に転移させることができる有機金属化合物であると見なし得る。これらの薬剤は、典型的には、第1、第2、及び第3族の金属などの、陽性金属の有機金属化合物である。例示的なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物、例えば、一般式AlR3−oを有するものが挙げられ、式中、oは、1〜3(境界値を含む)の整数であり、各Rは、独立して、一価の有機基であり、これは、C原子を介してAl原子に接続するヘテロ原子、例えば、N、O、B、Si、S、Pなどを含有してもよく、各Xは、独立して、H、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基である。1つ又は2つ以上の実施形態では、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基、例えば、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基であり得、各基は、単一のC原子、又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から最大で約20個のC原子を含有している。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含有してもよく、このヘテロ原子としては、N、O、B、Si、S、及びP原子が挙げられるが、これらに限定されない。この一般式内の有機アルミニウム化合物の非限定的な種類としては、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチル−アルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロ−ペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリル−アルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、及びエチルジ−ベンジル−アルミニウムなどのトリヒドロカルビルアルミニウム化合物;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−プロピル−アルミナムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチル−アルミナムヒドリド(DIBAH)、ジ−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ−p−トリル−アルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−プロピルアルミナムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−ブチル−アルミニウムヒドリド、フェニル−イソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、p−トリルエチル−アルミニウムヒドリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソプロピル−アルミニウムヒドリド、p−トリル−n−−ブチルアルミナムヒドリド、p−トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−エチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−プロピル−アルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピル−アルミニウムヒドリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピル−アルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn−オクチルアルミニウムジヒドリドなどのヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド;
ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート;
ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート);
ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド;
ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド;
ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、ジ−n−プロピル−アルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチル−アルミニウムクロリド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ−p−トリル−アルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−プロピル−アルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル−n−ブチル−アルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロリド、p−トリルエチル−アルミニウムクロリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロリド、p−トリルイソプロピル−アルミニウムクロリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロリド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−プロピル−アルミニウムクロリド、ベンジルイソ−プロピル−アルミナムクロリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムハロゲン化物;
エチルアルミニウムジクロリド、n−プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn−オクチルアルミニウムジクロリドなどのヒドロカルビルアルミニウムジハロゲン化物;
ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド;並びに
ヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシドが挙げられる。
【0051】
ある特定の実施形態では、アルキル化剤としては、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロ−カルビルアルミニウムヒドリド、及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドを挙げることができる。
【0052】
アルキル化剤として働き得る他の有機アルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチル−アルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチル−アルミナムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチル−アルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチル−アルミニウムビス−(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
アルミノキサンは、アルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機アルミニウム化合物を構成する。(これらの化合物は、アルキル化活性が完了した後に活性剤としても働き得る。)このクラスとしては、オリゴマー線状アルミノキサン及びオリゴマー環状アルミノキサンが挙げられ、これら両方についての式は、例えば、米国特許第8,017,695号を含む様々な参考文献中で提供されている。(オリゴマー種の化合物がアルキル化剤として使用される場合、モルの数は、オリゴマー分子のモルの数ではなくAl原子の数を指し、これは、アルミノキサンを利用する触媒系分野において一般に用いられている慣習である。)
【0054】
アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって調製することができる。この反応は、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させること、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば、金属塩に含まれる結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させること、あるいは(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー(複数可)の存在下で水と反応させること、などの既知の方法に従って行うことができる。
【0055】
好適なアルミノキサン化合物としては、メチル−アルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン(MAOのメチル基の約20〜80%を、既知の技法を使用して、C〜C12ヒドロカルビル基、好ましくはイソブチル基で置換することによって形成された、MMAO)、エチルアルミノキサン、n−プロピル−アルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチル−アルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシル−アルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチル−ヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチル−シクロペンチルアルミノキサン、フェニル−アルミノキサン、及び2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
アルミノキサンは、単独で又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、MAOとDIBAHなどの少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物とを組み合わせて用いることができる。興味のある読者は、組み合わせて用いられるアルミノキサン及び有機アルミニウム化合物の他の例について、米国特許第8,017,695号を参照されたい。
【0057】
またアルキル化剤として好適なものは、有機亜鉛(特にジアルキル亜鉛)化合物、及び一般式RMgX2−gを有するものなどの有機マグネシウム化合物であり、式中、Xが上記のように定義され、gが、1又は2であり、Rが、各一価有機基がC原子を介してMg原子に接続することを除いて、Rと同じである。有用である可能性のある有機マグネシウム化合物としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド(例えば、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、及びベンジルマグネシウムヒドリド)、ヒドロカルビルマグネシウムハロゲン化物(例えば、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、及びベンジルマグネシウムブロミド)、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート(例えば、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサ−ノエート、及びベンジルマグネシウムヘキサノエート)、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド(例えば、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、及びベンジルマグネシウムエトキシド)、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシド(例えば、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
触媒組成物は、非配位性アニオン又は非配位性アニオン前駆体もまた含有するか、あるいは非配位性アニオン又は非配位性アニオン前駆体を代替的に含有することができる。例示的な非配位性アニオンとしては、ホウ酸アニオン、特にフッ素化テトラアリールホウ酸アニオンが挙げられる。非配位性アニオンの具体例としては、テトラフェニルホウ酸塩、テトラキス−(モノフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス−(ジフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス(トリフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラキス(テトラフルオロ−メチルフェニル)ホウ酸塩、テトラ(トリル)ホウ酸塩、テトラ(キシリル)ホウ酸塩、[トリス(フェニル),ペンタフルオロフェニル]ホウ酸塩、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ホウ酸塩、トリデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカホウ酸塩などが挙げられる。テトラキス(ペンタ−フルオロフェニル)ホウ酸塩が、中でも好ましい非配位性アニオンである。
【0059】
非配位性アニオンを含む化合物はまた、対カチオン、例えば、カルボニウム(例えば、トリフェニルカルボニウムカチオン、三(置換フェニル)カルボニウムカチオン(例えば、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン)、オキソニウム、アンモニウム(例えば、トリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジアルキルアンモニウムカチオン、などといった三置換カルボニウムカチオン)、ホスホニウム(例えば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)−ホスホニウムカチオン、などといったトリアリールホスホニウムカチオン)、シクロヘプタトリエンイル、又はフェロセニウムカチオン(又は同様のもの)を含む。これらの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウム又はカルボニウムカチオンが好ましく、前者が特に好ましい。
【0060】
非配位性アニオン及び対カチオンを含む化合物の例としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]ホウ酸塩、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩が挙げられる。
【0061】
例示的な非配位性アニオン前駆体としては、強力な電子求引基を含むホウ素化合物が挙げられる。具体的な例としては、各アリール基が強力に電子求引性であるトリアリールホウ素化合物、例えば、ペンタフルオロフェニル又は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられる。
【0062】
直上で記載した種類の触媒組成物は、ポリエン、例えば、共役ジエン(及び任意選択で、オレフィン、特にα−オレフィン)を立体特異的ポリマーに重合するための幅広い濃度及び割合にわたる非常に高い触媒活性を有するが、最も望ましい特性を有するポリマーは、典型的には、成分の比較的狭い範囲の濃度及び割合を用いる系から得られる。更に、触媒組成物成分は、相互作用して活性触媒種を形成すると考えられているため、各成分について最適な濃度は他の成分の濃度に依存し得る。以下のモル比は、前述の成分に基づいて、様々な異なる系について比較的例示的であると見なされる。
アルキル化剤対式(I)錯体:約1:1〜約1000:1、一般には約2:1〜約500:1、典型的には約5:1〜約200:1;
アルミノキサン対式(I)錯体、具体的には、アルミノキサン中のアルミニウム原子の等価物対錯体中の第3族原子の等価化物:約5:1〜約1000:1、一般には約10:1〜約700:1、典型的には約20:1〜約500:1;
有機アルミニウム化合物対式(I)錯体:約1:1〜約200:1、一般には約2:1〜約150:1、典型的には約5:1〜約100:1;及び
非配位性アニオン又は前駆体対式(I)錯体:約1:2〜約20:1、一般には約3:4〜約10:1、典型的には約1:1〜約6:1。
【0063】
式(I)の錯体を含有する触媒組成物を用いて生成されたポリマーの分子量は、触媒組成物内の使用する金属錯体の量及び/又は共触媒化合物濃度の量を調整することによって制御することができ、広範囲の分子量を有するポリマーがこの様式で生成され得る。概して、金属錯体及び共触媒濃度を増加させることで、結果として得られるポリマーの分子量が低減するが、非常に低い分子量のポリマー(例えば、液体ポリジエン)は、極めて高い触媒濃度を必要とする。典型的には、これは、硫黄硬化速度の遅延などの悪影響を回避するために触媒残渣のポリマーからの除去を必要とする。
【0064】
式(I)の錯体を含有する触媒組成物は、以下の方法のうちのいずれかを使用して形成することができる。
(1)インサイツ触媒成分を、モノマー及び触媒(又は単純にバルクモノマー)を含有する溶液に添加する。添加は、段階的に行っても同時に行ってもよい。後者の場合、最初にアルキル化剤を添加した後、式(I)の錯体を添加することが好ましい。
(2)予混合成分を、モノマー(複数可)に導入する前に、概して約−20℃〜約80℃の温度で重合系の外で混合する。
(3)モノマー(複数可)の存在下での予形成触媒成分は、少量のモノマー(複数可)の存在下で、約−20℃〜約80℃の温度で混合する。モノマー(複数可)の量は、式(I)の錯体1モル当たり、約1〜約500モル、一般的には約5〜約250モル、典型的には約10〜約100モルの範囲であり得る。結果として得られる触媒組成物をモノマー(複数可)の残りに添加して重合する。
(4)2段階手順
(a)アルキル化剤を、モノマーの不在下又は少量のモノマー(複数可)の存在下で、約−20℃〜約80℃の温度で式(I)の錯体と組み合わせる。
(b)前述の混合物及び残りの構成要素を段階的に又は同時にモノマー(複数可)の残りに充填して重合する。
【0065】
触媒成分のうちの1つ又は2つ以上の溶液を前述の方法で重合系の外で調製するとき、有機溶媒又は担体を用いることが好ましく、有用な有機溶媒としては、以前に述べたものが挙げられる。他の実施形態では、1つ又は2つ以上のモノマーを担体又は触媒成分として使用することができ、未希釈で、即ち、他の担体のいずれの触媒も含まずに、用いることができる。
【0066】
1つ又は2つ以上の実施形態では、触媒組成物の一部又は全ては、不活性担体上で支持され得る。支持体は、タルク、層状ケイ酸塩、無機オキシド、又は微細に分割されたポリマー粉末などの多孔質固体であり得る。好適な無機オキシドは、第2〜5族及び第13〜16族のうちのいずれかからの元素のオキシドである。例示的な支持体としては、SiO、アルミニウムオキシド、並びに元素Ca、Al、Si、Mg、若しくはTiの混合オキシド及び対応するオキシド混合物、Mgハロゲン化物、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、ポリエチレン、又はポリプロピレンが挙げられる。
【0067】
シス−1,4−ポリジエン(又はシス−1,4−ジエンmerを含むインターポリマー)などのポリマーの生成は、共役ジエンモノマー(複数可)を、上記の触媒活性量の触媒組成物の存在下で重合することによって達成される。重合質量中で用いられる全触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び変換、並びに所望の分子量などの複数の因子の相互作用に依存する。したがって、具体的な全触媒濃度は、触媒的に有効な量のそれぞれの触媒成分を使用するべきであるという以外、断定的に示すことはできない。使用される式(I)の錯体の量は、概して、100gのモノマー当たり、約0.005〜約2mmol、一般的には約0.01〜約1mmol、典型的には約0.02〜約0.5mmolの範囲である。全ての他の成分は、概して、式(I)の錯体の量を基準とする量で添加することができる。上に示した様々な割合を参照されたい。
【0068】
オレフィンインターポリマーが望ましい場合、反応容器に導入されるポリエン(例えば、共役ジエン)対オレフィンのモル比は、広範囲にわたって変動し得る。例えば、ポリエン(例えば、共役ジエン)対オレフィンのモル比は、約100:1〜1:100、一般には約20:1〜1:20、典型的には約5:1〜1:5の範囲であり得る。
【0069】
重合は、好ましくは、上に示した種類(複数可)の1つ又は2つ以上の有機溶媒中で実行し、これは即ち、溶液重合(形成されたモノマー(複数可)とポリマーとの両方が溶媒中で可溶性である)又は沈殿重合(モノマーは凝縮相であるが、ポリマー生成物が不溶性である)である。触媒成分は、好ましくは、有機液体中に可溶化又は懸濁され、更なる溶媒(触媒組成物の調製に使用したものの他に)は、通常、重合系に添加される。更なる溶媒(複数可)は、触媒組成物を調製するときに使用する溶媒(複数可)と同じであってもよく又は異なっていてもよい。1つ又は2つ以上の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量の20%超、50%超、又は更には80%超(重量による)であってもよい。重合の開始時に存在するモノマーの濃度は、概して、約3〜約80%、一般的には約5〜約50%、典型的には約10%〜約30%(重量による)の範囲である。
【0070】
ある特定の実施形態では、最低量のみの溶媒を含むバルク重合系、即ち、モノマーのうちの1つ又は2つ以上が溶媒として作用するバルク重合プロセスを使用し得、有用である可能性のあるバルク重合プロセスの例は、米国特許第7,351,776号に開示されている。バルク重合では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量の20%未満、10%未満、又は更には5%未満(重量による)であってもよい。重合混合物は、更に、溶媒を実質的に欠き得、これは即ち、さもなければ重合プロセスに相当の影響を与え得る量未満の溶媒を含有するということである。
【0071】
重合は、様々な反応容器のうちのいずれかにおいて実施することができる。例えば、溶液重合は、従来の撹拌槽型反応器内で実施することができる。バルク重合も、モノマー変換が約60%未満である場合には、撹拌槽型反応器内で実施することができる。モノマー変換が約60%より高く、それにより典型的には極めて粘稠なポリマーセメント(即ち、溶媒、ポリマー、及び任意の残りのモノマー(複数可)の混合物)がもたらされる場合には、バルク重合を細長い反応器内で実施することができ、この反応器中では、粘稠なセメントは、例えば、ピストン又は自浄式1軸若しくは2軸攪拌器によって動かされる。
【0072】
重合において又は重合中に使用される全ての構成要素は、単一の容器(例えば、撹拌槽型反応器)中で組み合わせることができ、重合プロセスの全体をこの容器中で実施することができる。あるいは、成分のうちの2つ以上を重合容器外で組み合わせて、モノマー(複数可)の重合又は少なくともその大部分を実施し得る別の容器に移すことができる。
【0073】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして実行し得る。重合混合物の温度を−10℃〜200℃、一般的には約0℃〜約150℃、典型的には約20℃〜約100℃の範囲に維持するように、重合が進行する条件を制御し得る。重合によって生成される熱は、熱制御された反応器ジャケットによる外部冷却、及び/又は内部冷却(反応器に接続した還流冷却器の使用を通したモノマーの蒸発及び凝縮による)によって除去し得る。また、約0.01〜約5MPa、一般的には約0.05〜約3MPa、典型的には約0.1〜約2MPaの圧力下で重合を実施するように条件を制御してもよく、重合を実行する圧力は、モノマーの大部分が液相であるような圧力であり得る。これらの又は他の実施形態では、重合混合物は、典型的には、不活性保護ガス、例えば、N、Ar、又はHeによって提供される、嫌気性条件下に維持してもよい。
【0074】
バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスが用いられるかに関わらず、重合は、穏やかな撹拌から激しい撹拌によって実施することが好ましい。
【0075】
記載の重合プロセスは、有利にも、反応性(疑似的に生きた)末端を保有するポリマー鎖をもたらし、これを1つ又は2つ以上の官能化剤と更に反応させて、末端官能性を持つポリマーを提供することができる。これらの種類のポリマーは、官能化と称され得、同様に反応させていない生長している鎖とは区別される。1つ又は2つ以上の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、添加反応又は置換反応を介して進行し得る。
【0076】
末端官能性は、他のポリマー鎖(生長及び/又は非成長)、又は微粒子補強充填剤(例えば、カーボンブラック)などのゴム化合物中の他の物質と、反応性又は相互作用性であり得る。上記のように、ゴム化合物におけるポリマーと微粒子充填剤との間の向上した相互作用性は、結果として得られる加硫物の機械的及び動的特性を改善する。例えば、ある特定の官能化剤は、ヘテロ原子を含む末端官能性をポリマー鎖に授けることができ、かかる官能化ポリマーは、ゴム化合物中で使用することができ、このゴム化合物から加硫物が提供され得、これらの加硫物は、かかる官能化ポリマーを含まない同様のゴム化合物から調製された加硫物が保有する高温ヒステリシス損失よりも少ない、高温(例えば、50℃)ヒステリシス損失(高温でのtan δ値の低減によって示される)を保有し得る。高温ヒステリシス損失の低減は、少なくとも5%、少なくとも10%、又は更には少なくとも15%であり得る。
【0077】
官能化剤(複数可)は、所望のモノマー変換が達成された後であるが、急冷剤(プロトン性H原子を持つ化合物)の導入の前、又は重合混合物が部分的に急冷された後に、導入し得る。官能化剤は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、又は少なくとも80%のモノマー変換の後に重合混合物に添加し得る。ある特定の実施形態では、官能化剤は、完全な又は実質的に完全はモノマー変換の後に添加する。特定の実施形態では、官能化剤は、米国特許第8,324,329号に開示されているように、ルイス塩基の導入の直前に、導入と同時に、又は導入の後で、重合混合物に導入してもよい。
【0078】
有用な官能化剤としては、反応の際に、官能基をポリマー鎖の末端に提供することを2つ以上のポリマー鎖を共に連結することなく行う化合物、並びに2つ以上のポリマー鎖を共に結合又は連結することを機能的リンケージを介して行って単一の巨大分子を形成し得る化合物が挙げられる。当業者であれば、停止試薬(terminating reagent)、カップリング剤、及び/又は連結剤によるこの種の重合後の官能化を通して提供され得る末端官能性の多数の例を熟知している。関心のある読者は、更なる詳細について、米国特許第4,015,061号、同第4,616,069号、同第4,906,706号、同第4,935,471号、同第4,990,573号、同第5,064,910号、同第5,153,159号、同第5,149,457号、同第5,196,138号、同第5,329,005号、同第5,496,940号、同第5,502,131号、同第5,567,815号、同第5,610,227号、同第5,663,398号、同第5,567,784号、同第5,786,441号、同第5,844,050号、同第6,812,295号、同第6,838,526号、同第6,992,147号、同第7,153,919号、同第7,294,680号、同第7,642,322号、同第7,671,136号、同第7,671,138号、同第7,732,534号、同第7,750,087号、同第7,816,483号、同第7,879,952号、同第8,063,153号、同第8,088,868号、同第8,183,324号、同第8,642,706号など、並びにこれらの特許中で引用されている参照文献及びこれらの特許を引用している後の公報を参照されたい。具体的な例示的官能化化合物としては、金属ハロゲン化物(例えば、SnCl)、R10SnCl、R10SnCl、R10SnCl、メタロイドハロゲン化物(例えば、SiCl)、カルボジイミド、ケトン、アルデヒド、エステル、キノン、N−環状アミド、N,N’−二置換環状尿素、環状アミド、環状尿素、シッフ塩基、イソ(チオ)シアネート、金属エステルカルボキシレート錯体(例えば、ジオキチル錫(dioxtyltin)ビス(オクチルマレエート)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アルキルチオチアゾリン、アルコキシシラン(例えば、Si(OR10、R10Si(OR10、R10Si(OR10など)、環状シロキサン、アルコキシスタネート、及びこれらの混合物が挙げられる。(前述において、各R10は、独立して、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アリール基、又はC〜C20アラルキル基である。)一般に使用されている例示的な官能化化合物としては、SnCl、塩化トリブチル錫、二塩化ジブチル錫、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)が挙げられる。
【0079】
重合混合物に添加する官能化剤の量は、使用する式(I)錯体の量、官能化剤の種類、官能性の所望のレベルなどを含む、様々な因子に依存し得る。1つ又は2つ以上の実施形態では、官能化剤の量は、式(I)の錯体1モル当たり1〜約200モル、一般的には約5〜約150モル、典型的には約10〜約100モルの範囲であってもよい。
【0080】
反応性ポリマー鎖は高温でゆっくりと自己終結するため、官能化剤は、ピーク重合温度が観察されるとき又はその直後に、あるいは少なくとも一部の実施形態ではその後30±10分以内に、重合混合物に添加し得る。これらの種類の化合物の末端活性ポリマーとの反応は、比較的素早く(数分から数時間)中温(例えば、0℃〜75℃)で行うことができる。
【0081】
官能化剤は、重合又は少なくともその一部を実施した場所(例えば、容器内)あるいはそことは別の場所にて重合混合物に導入し得る。例えば、官能化剤は、下流容器、例えば、下流反応器若しくはタンク、インライン反応器若しくはミキサ、押出機、又は液化器内で重合混合物に導入してもよい。
【0082】
必須ではないが所望の場合、急冷を行って、任意の残留反応性コポリマー鎖及び触媒組成物を不活性化してもよい。急冷は、ポリマーと、活性水素含有化合物、例えば、アルコール又は酸とを、最大で約120分間25℃〜約150℃の温度で撹拌することによって実施し得る。一部の実施形態では、急冷剤は、米国特許第7,879,958号に開示されているように、ポリヒドロキシ化合物を含み得る。酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)の添加は、急冷剤の添加と一緒に、添加前に、又は添加後に行ってもよく、用いる酸化防止剤の量は、ポリマー生成物の約0.2〜1%(重量による)であり得る。急冷剤は、未希釈で添加するか、あるいは必要に応じて、重合混合物に添加する前に炭化水素溶媒又は液体モノマーに溶解させることができる。
【0083】
重合官能化(行う場合)及び急冷(行う場合)が完了すると、重合混合物の様々な構成成分を回収することができる。未反応のモノマーは、例えば、蒸留又は液化剤の使用によって、重合混合物から回収し得る。回収したモノマーは、精製、保管、及び/又は重合プロセスに再利用し得る。
【0084】
ポリマー生成物は、既知の技法を使用して重合混合物から回収することができる。例えば、重合混合物を、加熱した軸装置、例えば脱溶媒押出機に通してもよく、ここでは、揮発性物質(例えば、低沸騰溶媒及び未反応モノマー)が、大気圧又は低大気圧下で適切な温度(例えば、約100℃〜約170℃)にて蒸発することによって除去される。別の選択肢は、蒸気脱溶媒の後で、結果として得られるポリマーくずを熱気トンネル中で乾燥させることを伴う。更に別の選択肢は、重合混合物をドラム乾燥機で乾燥させることによって直接ポリマーを回復することを伴う。前述のうちのいずれも、水、アルコール、又は蒸気による凝固と組み合わせることができ、凝固を行う場合は、オーブン乾燥が望ましくあり得る。
【0085】
回収したポリマーは、他のモノマーを用いてグラフト化し、かつ/又は他のポリマー(例えば、ポリオレフィン)及び添加材とブレンドして、様々な用途に有用な樹脂組成物を形成し得る。ポリマーは、更に反応させるか否かに関わらず、様々なタイヤ構成要素の製造における使用に特に好適であり、これらのタイヤ構成要素としては、タイヤトレッド、側壁、サブトレッド、及びビーズ充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。これはまた、エラストマーブレンドのための相溶化剤として使用することができ、かつ/あるいはホース、ベルト、靴底、窓用封止、その他の封止、振動減衰ゴム、及び他の工業又は消費者製品の製造に使用することができる。
【0086】
結果として得られるポリマーをトレッドストック化合物中で利用する場合、このポリマーは、単独で使用するか又は任意の従来用いられているトレッドストックゴムとブレンドして使用することができ、トレッドストックゴムとしては、天然ゴム及び/又は非官能化合成ゴム、例えば、単にポリエン由来のmer単位を含むホモ及びインターポリマー(例えば、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及びブタジエン、イソプレンなどを組み込むコポリマー)、SBR、ブチルゴム、ネオプレン、EPR、EPDM、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレン/アクリルゴム、EVA、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロ−エチレン/プロピレンゴムなどのうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。官能化ポリマー(複数可)を従来のゴム(複数可)とブレンドするとき、その量は全ゴムの約5〜約99%で変動し得、従来のゴム(複数可)が全ゴムの残りを構成する。
【0087】
非晶質シリカ(SiO)を充填剤として利用し得る。シリカは、概して、湿潤プロセスの含水シリカとして分類され、これは、それらが水中の化学反応によって生成されるためであり、この化学反応から、それらが超微細球形粒子として沈殿する。これらの一次粒子は、強力に結びついて凝集体となり、この凝集体が今度は粒塊へと前者よりは弱く結合する。「高度に分散性のシリカ」は、脱凝集し、エラストマーマトリックス中に分散する非常に強い能力を有する任意のシリカであり、これは、薄片顕微鏡法によって観察することができる。
【0088】
表面積は、異なるシリカの補強特徴の信頼性のある測定を付与し、Brunauer,Emmet and Teller(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309 et seq.に記載されている)は、表面積を決定するための広く認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して、450m/g未満であり、表面の有用な範囲は、約32〜約400m/g、約100〜約250m/g、及び約150〜約220m/gを含む。
【0089】
シリカ充填剤のpHは、概して、約5〜約7又はそれをわずかに超える数、好ましくは約5.5〜約6.8である。
【0090】
使用してもよい市販のシリカの一部としては、Hi−Sil(商標)215、Hi−Sil(商標)233、及びHi−Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pa.)が挙げられる。市販シリカの他の供給源としては、Grace Davison(Baltimore,Maryland)、Degussa Corp.(Parsippany,New Jersey)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,New Jersey)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,New Jersey)が挙げられる。
【0091】
シリカは、1〜100phrの量、一般的には約5〜約80phrの量で用いることができる。有用な上限範囲は、かかる充填剤が授ける高粘度によって限定される。
【0092】
他の有用な充填剤としては、全形態のカーボンブラック、例えば、限定的ではなく、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。より具体的には、カーボンブラックの例としては、超摩耗ファーネスブラック、高摩耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、導電性チャネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられ、これらのうちの2つ以上の混合物を使用することができる。少なくとも20m/g、好ましくは少なくとも約35m/gの表面積(EMSA)を有するカーボンブラックが好ましく、表面積値は、ASTM D−1765によって、CTAB技法を使用して決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化形態又はペレット化されていない綿状塊であってもよいが、ある特定のミキサ中での使用には、ペレット化されていないカーボンブラックが好ましくあり得る。
【0093】
カーボンブラックの量は、最大で約50phrであり得、5〜40phrが典型的である。カーボンブラックをシリカと共に使用するとき、シリカの量は、約1phrまで減少させることができ、シリカの量が減少するにつれ、より少ない量の加工助剤及び使用する場合にはシランを用いることができる。
【0094】
エラストマー化合物は、典型的には、添加する充填剤(複数可)の総体積をエラストマーストックの総体積で割ったものの約25%である体積分率まで充填される。したがって、補強充填剤、即ち、シリカ及びカーボンブラックの典型的な(合計)量は、約30〜100phrである。
【0095】
シリカを補強充填剤として用いる場合、良好なエラストマー(複数可)への混合及びエラストマーとの相互作用を確実にするために、シランなどのカップリング剤を添加することが慣習である。概して、添加するシランの量は、エラストマー化合物中に存在するシリカ充填剤の重量を基準として、約4〜20%の範囲である。
【0096】
カップリング剤は、概して、シリカ充填剤の表面上にある基(例えば、表面シラノール基)と物理的及び/又は化学的に結合することができる官能基、並びにエラストマーと、例えば硫黄含有リンケージを介して結合することができる官能基を含む。かかるカップリング剤としては、オルガノシラン、特に多硫化アルコキシシラン(例えば、米国特許第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号などを参照)又はポリオルガノシロキサンが挙げられる。例示的なカップリング剤は、ビス[3−(トリ−エトキシシリル)プロピル]−テトラスルフィドである。
【0097】
加工助剤の添加を使用することで、用いるシランの量を低減することができる。例えば、加工助剤として使用される糖の脂肪酸エステルの説明については、米国特許第6,525,118号を参照されたい。加工助剤として有用な更なる充填剤としては、鉱物充填剤、例えば、粘土(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、及び雲母、並びに非鉱物充填剤、例えば、尿素及び硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい雲母は、主としてアルミナ、シリカ、及びカリを含有するが、他の異形も有用であり得る。更なる充填剤は、最大で約40phr、典型的には最大で20phrの量で利用し得る。
【0098】
他の従来のゴム添加剤を添加することもできる。これらとしては、例えば、プロセス油、可塑剤、劣化防止剤、例えば、酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤、硬化剤などが挙げられる。
【0099】
成分の全ては、例えば、Banbury又はBrabenderミキサなどの標準的な機器を使用して混合することができる。典型的には、混合は、2つ以上の段階において行う。第1の段階(マスターバッチ段階と称される場合が多い)の間、混合は、典型的には120℃〜130℃の温度で始まり、いわゆる落下温度、典型的には163℃±3℃に達するまで上昇する。
【0100】
配合がシリカを含む場合、別の再粉砕段階を、シラン構成要素(複数可)の別の添加のために用いる場合が多い。この段階は、多くの場合、マスターバッチ段階で用いた温度(即ち、約90℃から約150℃の落下温度までの上昇)と同様であるがそれよりわずかに低いことが多い温度にて行う。
【0101】
補強ゴム化合物は、約0.2〜約5phrの1つ又は2つ以上の既知の加硫剤、例えば、硫黄又はペルオキシド系の硬化系などによって硬化させるのが慣例である。興味のある読者は、好適な加硫剤の一般的開示について、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chem.Tech.,3d ed.,(Wiley Interscience,New York,1982),vol.20,pp.365〜468に提供されているものなどの概説を参照されたい。加硫剤、促進剤などは、最終混合段階で添加する。加硫化が時期尚早に開始しないことを確実にするために、この混合段階は、より低い温度で、例えば、約60℃〜約65℃から始まり約105℃〜約110℃より高くならない温度で行うことが多い。
【0102】
以下の非限定的な例示的実施例は、本発明の実施において有用であり得る詳細な条件及び物質を読者に提供する。これらの実施例において示す化学構造では、「Me」はメチル基を表し、「t−Bu」はtert−ブチル基を表す。
【実施例】
【0103】
実施例1a:2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]インデン
500mLの三つ口フラスコに、磁気撹拌棒、還流冷却器、及び滴下漏斗を備え付け、これを少なくとも12時間オーブンで乾燥させ、乾燥Arをパージした。
【0104】
このフラスコに、1.01g(42.1mmol)のMgダライ粉及び200mLの乾燥ジエチルエーテルを添加した。0.2mLの1,2−ジブロモエタンを添加し、更なる熱の入力なしにエーテルが還流するまで撹拌しながら穏やかに加熱することによって、Mgの活性化を達成した。その後、50mLのジエチルエーテル中の7.25mL(42.1mmol)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)−5−ブロモベンゼンを撹拌しながら滴下漏斗に添加した後、穏やかな還流を維持する速度、即ち、約2時間かけてフラスコに添加した。
【0105】
前述の添加の後、フラスコを油浴中に配置し、約12時間加熱還流した後、混合物を冷却し、以前に使用したものと同じように準備した別の乾燥させてパージした三ツ口の500mLフラスコに濾過した(あらゆる残留マグネシウムを除去するため)。
【0106】
50mLの乾燥ジエチルエーテル中の5.00g(37.9mmol)の2−インダノンを漏斗に添加した後、それを約1時間かけて室温で撹拌しながら、新たに調製したグリニャール試薬に滴加した。添加後、結果として得られる混合物を更に室温で約12時間撹拌した後、混合物を0℃に冷却し、100mLのNHClの飽和溶液を用いて急冷した。
【0107】
混合物を、150mLに分割した酢酸エチル2つによって抽出した。有機層を収集し、NaSO上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮した。粗混合物を高真空(100Pa未満、約1トル)下に配置して、あらゆる揮発物を更に除去した。
【0108】
結果として得られる粗混合物を、150mLのトルエン、0.60g(3.15mmol)のp−トルエンスルホン酸一水和物中に再溶解させた。その後、フラスコにディーン・スターク装置及び冷却器を備え付けた後、撹拌し、加熱還流した。反応の進行は、TLCで確認しながら水の収集によって監視した。
【0109】
出発物質が消費された後、反応混合物を室温で冷却させ、その後、100mLの飽和NaHCOを添加した。有機層を、50mL分割したジエチルエーテル2つによって抽出した。
【0110】
有機層の全てを収集し、NaSO上で乾燥させ、回転蒸発器で濃縮した。粗混合物を高真空(100Pa未満、約1トル)下に配置して、あらゆる揮発物を更に除去した。
【0111】
カラムクロマトグラフィー(100%ヘキサン)を使用して、5.4g(2−インダノンを基準として収率43.5%)のオフホワイト固体の2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフェニル)]−インデンを単離した。
【0112】
【化4】
【0113】
実施例1b:3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]インデン
実施例1aのプロセスを、50mLの乾燥ジエチルエーテル中の5.00g(37.9mmol)の1−インダノンをグリニャール試薬に滴加したことを除いて繰り返した。
【0114】
回収した生成物は、7.3g(1−インダノンを基準として収率58.9%)の黄色がかった油状の3−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフェニル)]−インデンであった。
【0115】
【化5】
【0116】
実施例1c:3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)インデン
実施例1bのプロセスを、5.24mL(42.1mmol)の1−ブロモ−2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゼンを1,3−ビス(トリフルオロメチル)−5−ブロモベンゼンの代わりに使用したことを除いて繰り返した。
【0117】
回収した生成物は、2.0g(1−インダノンを基準として収率18.7%)の白色結晶性固体の3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)インデンであった。
【0118】
【化6】
【0119】
実施例2a:2−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデン
実施例1aのプロセスを、以下のことを除いて繰り返した:(1)11.3g(42.1mmol)の1−ブロモ−3,5−ジ−tert−ブチルベンゼンを1,3−ビス(トリフルオロメチル)−5−ブロモベンゼンの代わりに使用した、(2)回転蒸発器での濃縮後、高真空下に配置する前に、反応混合物をシリカゲルのパッドに通し(100%のヘキサンによる)、非極性物質を除去し、酢酸エチルを使用して第3級アルコール生成物を収集した。
【0120】
回収した生成物は、1.4g(2−インダノンを基準として収率12.1%)の白色蝋状固体の2−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデンであった。
【0121】
【化7】
【0122】
実施例2b:3−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデン
実施例2aのプロセスを、50mLの乾燥ジエチルエーテル中の5.00g(37.9mmol)の1−インダノンをグリニャール試薬に滴加したことを除いて繰り返した。
【0123】
回収した生成物は、10.1g(1−インダノンを基準として収率87.0%)の粘稠な黄味を帯びた油状の3−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデンであった。
【0124】
【化8】
【0125】
実施例2c:3−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデン
実施例2bのプロセスを、7.3mL(42.1mmol)の1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼンを1−ブロモ−3,5−ジ−tert−ブチルベンゼンの代わりに使用したことを除いて繰り返した。
【0126】
回収した生成物は、2.8g(1−インダノンを基準として収率29.8%)のオフホワイト蝋状固体の3−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデンであった。
【0127】
【化9】
【0128】
実施例2d:2−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデン
実施例2cのプロセスを、50mLの乾燥ジエチルエーテル中の5.00g(37.9mmol)の2−インダノンをグリニャール試薬に滴加したことを除いて繰り返した。
【0129】
回収した生成物は、3.5g(2−インダノンを基準として収率37.2%)の黄味を帯びた油状の2−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデンであった。
【0130】
【化10】
【0131】
要約すると、実施例1a〜1c及び2a〜2dは、フェニル置換基を含むインデン化合物に関する。実施例1a〜1cは、フェニル置換基上に電子求引原子又は基を含み、一方で実施例2a〜2dは、フェニル置換基上に電子供与基を含む。
【0132】
これらの化合物の各々を一般式(I)型の第3族の金属錯体の調製に使用した。例えば合成収率及び触媒活性の観点からより優れた錯体間比較を可能にするために、これらの一般式(I)型の錯体の各々は、M=Gd、z=0、n=2、及びR=N[SiH(CHを伴った。この類似性は、限定的ではなく、代わりに、異なるインデニルリガンドの影響のより優れた比較を可能にするものとして見なすべきである。
【0133】
実施例3a:2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
Ar下で、2.78mL(15.7mmol)の1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを、30mLのヘキサン中の2.50g(3.9mmol)のGd{N[Si(CH(以降は「Gd[N(TMS)」)及び実施例1aからの2.52g(7.7mmol)の式(IIIa)の化合物の茶色がかった混合物にゆっくりと添加した。この混合物を一晩(12時間超)70℃で撹拌すると、その間に、いくらかの緑色がかった沈殿物を伴う黄色の溶液が形成された。
【0134】
反応容器を室温に冷却した後、溶液をAr下のフラスコに移した。全ての揮発物を真空下で除去し、生成物を30mLのヘキサン中に再溶解させた。
【0135】
この溶液を−30℃に設定した冷凍庫に移した。結果として得られた黄色の溶液をデカントした。
【0136】
回収した生成物は、真空下での乾燥後、以下の構造を有する2.5g(収率約69%)の明るい黄色固体であった。
【0137】
【化11】
【0138】
実施例3b:3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
実施例3aのプロセスを、2.52g(7.7mmol)の実施例1bからの式(IIIb)の化合物を最初の茶色がかった混合物中の式(IIIa)の化合物の代わりに使用したことを除いて繰り返した。一晩置いた反応混合物は、少量ではあるが目に見える量の沈殿物を伴う緑色の溶液であった。
【0139】
反応容器を室温に冷却した後、溶液をAr下のフラスコに移した。全ての揮発物を真空下で除去した。
【0140】
回収した生成物は、真空下での乾燥後、以下の構造を有する3.3g(収率約91%)の緑色がかった固体であった。
【0141】
【化12】
【0142】
実施例3c:3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)インデニルリガンドとの錯体
実施例3bのプロセスを、Gd[N(TMS)の量を1.38g(2.16mmol)に減少させ、1.20g(4.25mmol)の実施例1cからの式(IIIc)の化合物を、最初の透明な黄色の溶液をもたらした式(IIIb)の化合物の代わりに使用したことを除いて繰り返した。一晩置いた反応混合物は、少量ではあるが目に見える量の沈殿物を伴う黄色がかった溶液であった。
【0143】
反応容器を室温に冷却した後、溶液をAr下のフラスコに移した。全ての揮発物を真空下で除去した。
【0144】
回収した生成物は、真空下での溶媒除去後、以下の構造を有する1.8g(収率約97%)の粘稠な黄色がかった赤色の油であった。
【0145】
【化13】
【0146】
実施例4a:2−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
Ar下で、1.68mL(9.50mmol)の1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを、30mLのヘキサン中の1.51g(2.40mmol)のGd[N(TMS)及び1.41g(4.60mmol)の実施例2aからの式(IVa)の化合物の混合物にゆっくりと添加した。この混合物を一晩(12時間超)80℃で撹拌すると、その間に、黄色の溶液が形成された。
【0147】
反応容器を室温に冷却した後、溶液をAr下のフラスコに移した。全ての揮発物を真空下で除去し、黄色の油状残渣を5mLのヘキサン中に再溶解させた。
【0148】
この溶液を−30℃に設定した冷凍庫に移したが、沈殿物は形成されなかった。その後、溶媒を真空下で除去した。
【0149】
回収した生成物は、以下の構造(「t−Bu」は−C(CH基を表す)を有する2.04g(収率約98%)の蝋状の黄色固体であった。
【0150】
【化14】
【0151】
実施例4b:3−[3,5−ビス(tert−ブチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
Ar下で、2.22mL(12.5mmol)の1,1,3,3−テトラメチルジシラザンを、30mLのヘキサン中の2.00g(3.10mmol)のGd[N(TMS)及び1.87g(6.10mmol)の実施例2bからの式(IVb)の化合物の混合物にゆっくりと添加した。この混合物を一晩(12時間超)80℃で撹拌すると、その間に、赤色の溶液が形成された。
【0152】
反応容器を室温に冷却した後、揮発物を真空下で除去した。赤色油状残渣を10mLのヘキサン中に再溶解させた。
【0153】
この溶液を−30℃に設定した冷凍庫に移したが、沈殿物は形成されなかった。その後、溶媒を真空下で除去した。
【0154】
回収した生成物は、以下の構造を有する2.76g(収率約100%)の赤色の粘稠な油であった。
【0155】
【化15】
【0156】
実施例4c:3−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
実施例4bのプロセスを、1.52g(6.10mmol)の実施例2cからの式(IVc)の化合物を最初の混合物中の式(IVb)の化合物の代わりに使用したことを除いて繰り返した。この混合物を一晩(12時間超)70℃で撹拌すると、その間に、いくらかの沈殿物を伴う黄色の溶液が形成された。
【0157】
反応容器を室温に冷却した後、溶液をAr下のフラスコに移した。全ての揮発物を真空下で除去し、生成物を6mLのヘキサン中に再溶解させた。
【0158】
この溶液を−30℃に設定した冷凍庫に移した。その後、液体部分を除去した。
【0159】
回収した生成物は、真空下での乾燥後、以下の構造を有する2.1g(収率約87%)の橙色固体であった。
【0160】
【化16】
【0161】
実施例4d:2−[4−(tert−ブチル)フェニル]インデニルリガンドとの錯体
実施例4cのプロセスを、実施例2dからの式(IVd)の化合物を最初の混合物中の式(IVc)の化合物の代わりに使用したことを除いて繰り返した。
【0162】
回収した生成物は、真空下での乾燥後、以下の構造を有する1.91g(収率約79%)の明るい黄色の結晶性固体であった。
【0163】
【化17】
【0164】
実施例5〜11:共重合
実施例3a〜3c及び4a〜4dからの錯体の各々を使用して、ブタジエンとエチレンとを重合した。(触媒構成要素としての錯体の影響の比較を助けるために、可能な限り多くの可能性のある他の変数を一定に保ったが、これは限定的であると見なされるべきではない。エチレン以外のモノエチレン性不飽和モノマー(例えば、α−オレフィン)及びブタジエン以外のポリエンを、本明細書で使用するものの代わりに、又はそれに加えて、確かに使用することができる。加えて、確かに重合の他のパラメータを変化させることができる。)
【0165】
以下の手順を重合の各々において使用した。
【0166】
乾燥したNでパージしたステンレス鋼製の5L容器に、1.80kgの乾燥トルエン及び0.20kgの精製した乾燥ブタジエンを添加した後、反応器をエチレンによって0.2MPaに加圧した。反応器の攪拌器を始動し、ジャケットを50℃に加熱し、反応器の内容物をその温度に平衡化させた。
【0167】
平衡化の間、アルゴングローブボックス中で、50mLの乾燥トルエン、続いて3.53mLのジイソブチルアルミニウムヒドリドの1.02M溶液、ガドリニウム触媒の溶液(以下の表1を参照)、及び最後に38.0mg(47.3mmol)の固体N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を、事前に乾燥させN2でパージした200mLボトルに添加した。混合物を密封し、グローブボックスから取り出した。
【0168】
小さいボトルの内容物を反応器に注射し、ガス状乾燥エチレンを反応器に充填させて最終圧力を1.72MPaにした。反応器のジャケット温度を約80℃に上昇させた。
【0169】
約120分後、各ポリマーセメントを、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する2−プロパノールのバットに落とした。
【0170】
回収したポリマーを120℃でドラム乾燥させた。
【0171】
ポリマーの量、mer含有量、及び他の特性も、以下で表1に要約する。モル・パーセントはH NMR分光分析データから計算し、一方で分子量情報はGPCによって決定した。
【0172】
【表1】
【0173】
錯体の全てが、配位触媒系において使用することができ、全てが、少量のビニル立体配置を有するエチレン/ブタジエンコポリマーを提供した。
【0174】
R’基を持つアリール(フェニル)置換基を有する錯体は、概して、R”基を持つものよりも低いエチレン(オレフィン)含有量をもたらした。