(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記認証が完了した際に、前記認証者である送金人からの送金情報を取得し、前記送金情報に含まれた送金額を自動取引装置に出力指示する認証サーバを、さらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の認証システム。
前記送金情報は、前記送金人からのメッセージ情報を含み、前記認証サーバは、前記被認証者である受取人を認証した際に、前記メッセージ情報を前記自動取引装置に出力指示することを特徴とする請求項3に記載の認証システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と言う)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0017】
図1は、本実施形態に係る「3D認証システム」(又は「3D送金電報システム」とも呼ぶ)のイメージ図である。以下では上記のシステムを「本システム」と呼ぶことにする。ここで、「3D送金電報」とは、3Dフィギュアによる認証機能及び送金機能をもったメッセージ送信(電報)を意味する。
【0018】
本システムは、祝電や弔電のいわゆる「電報サービス」に、受取人に対する認証機能と送金機能を持たせたものである。送金には受取人を認証する必要があるが、本システムでは、この認証を受取人へ送る贈答品の3D造形物(立体造形物)を使って行う。以下、この3D造形物を、その典型例として「3Dフィギュア」又は単に「フィギュア」と呼ぶことにする。送金人は、自身が所有するPCやスマートフォン等の端末からフィギュアを作成するサービス事業者のWebページにアクセスし、フィギュアの選択を行い、さらに送金情報として、送金額、受取人へのメッセージ、受取人情報(氏名、住所、電話番号等)、及び送金人情報(氏名、金融機関の自らの口座番号等)等を入力する。
【0019】
ここで選択する贈答品のフィギュアは、サービス事業者が予め用意した既成品のフィギュアであってもよいし、送金人が独自に作成するオリジナルのフィギュアであってもよい。既成品のフィギュアとして、例えば、動物、植物、乗り物、建物、彫刻、ロボット、恐竜やモンスター、お菓子、アニメやアイドルのキャラクタ等、様々なジャンルのものが用意されている。オリジナルのフィギュアは、いくつかの方法で作成が可能である。例えば、対象物の写真等の画像データをサービス事業者に送り、サービス事業者がその画像データをフィギュア作成用の3Dデータに変換して3Dプリンタで作成する。あるいは、送金人がフィギュアの実物をサービス事業者の店舗等に持ち込みサービス事業者で作成する。あるいは、自分自身で実物を3Dスキャナでスキャンし、そのデータをサービス事業者に送信し作成してもらってもよい。あるいは人間をスキャンしてフィギュアを作成してもよい。既製品、オリジナルフィギュアいずれの場合も必要であれば、出来上がったフィギュアを加工することもできる。既製品を加工して出来上がったフィギュアはオリジナルフィギュアとして扱う。
【0020】
サービス事業者は、上記で作成したフィギュアの3Dデータを作成し、3Dプリンタで「印刷」する。このとき、元々のフィギュアの形状に、受取人の認証情報として「付加図形」を合成し、付加図形の形状及び合成位置をその都度変化させることにより、受取人に送付するフィギュアの外形を、送金人ごと受取人ごとに(すなわち、3D送金電報ごとに)一つ一つ異なったユニークな形状に加工する。そして、その認証情報と送金人が作成した送金情報(送金額、受取人の情報、メッセージ等)とを紐付ける。この認証情報及び付加図形の詳細については後述する。
【0021】
サービス事業者は、フィギュア作成後、送金人から取得した送金情報と、フィギュアに埋め込まれた認証情報を、認証者の側からの認証登録情報として金融機関に送り、作成したフィギュアを受取人に配送する。受取人が3Dプリンタを所有している場合は、完成した3Dデータを受取人に送信し、受取人が自身の3Dプリンタで「印刷」してもよい。
【0022】
受取人は、配送されたフィギュアまたは自身で作成したフィギュアを持参して金融機関へ出向き、持参したフィギュアの形状を金融機関に設置された3Dスキャナに読み込ませる。金融機関では、3Dスキャナによって読み取られたフィギュアの形状データから認証情報を抽出(識別)し、受取人を認証し、認証がOKであれば、受取人に対する送金情報を取得する。そして、その送金情報に基づいて、受取人に対して、自動取引装置(現金自動預け払い装置又はATM:Automated Teller Machine)から、送金額、及び受取人へのメッセージを出力させる。この出金は、送金人の口座から引き落とされるので、受取人がその金融機関に口座を持っている必要はない。
【0023】
このような仕組みにより、贈答品を3Dフィギュアで作成するとともに、その3Dフィギュアに付加された(隠された)認証情報に基づいて受取人の認証を行ない、受取人は、お祝金等をその場で現金で受け取ることができる。すなわち、3Dフィギュアを贈答品として送り、同時に送金もでき、かつ電報のようにメッセージも送れる、いわば「3D送金電報サービス」を提供することが可能になる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る3D認証システム又は3D送金電報システム(本システム)の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように本システムは、送金人が操作する送金者端末10と、送金者端末10とネットワーク経由で接続され、送金者端末10からの要求に基づき、受取人を認証するための認証情報を含む3Dフィギュアを作成する3D造形物作成装置20と、金融機関のシステム30と、から構成される。
【0025】
金融機関のシステム30は、受取人により持ち込まれたフィギュアの形状から認証情報を抽出(識別)する3D認証識別装置35と、抽出された認証情報により受取人を認証し、認証が完了した際に、送金人の送金者端末10から受信した送金情報を取得し、送金情報に含まれた送金額を自動取引装置(以降、ATM38と呼ぶ)に出力指示する認証サーバ32と、から構成される。この送金サービスの場合は、受取人が認証システムにおける被認証者であり、送金人が認証者となる。以下、送金サービスにおいて、3D認証を行う金融機関のシステム30を、単に認証システムと呼ぶことがあるが、認証システム自体は、他のサービスにも適用可能である。
【0026】
3D造形物作成装置20は、送金者端末10から3D送金電報作成の注文内容を受信して3Dフィギュアの認証情報を生成する3D認証生成装置21と、3Dデータから3Dフィギュアを作成する(印刷する)3Dプリンタ26とから構成される。
【0027】
3D認証生成装置21は、通信手段22と、操作受付手段23と、記憶手段24と、制御手段25とから構成される。3D認証生成装置21は、フィギュアの3Dデータに被認証者(受取人)に関連付けた認証情報を付加し、認証システムに送信して照合するための認証登録情報を生成する認証登録情報生成手段として機能する。認証情報の付加の詳細については後述する。ただし、フィギュア自体が固有であれば、その形状の3Dデータだけで被認証者を識別する認証情報となる。
【0028】
通信手段22は、送金者端末10及び金融機関のシステム30と通信を行う際の通信インタフェースである。
【0029】
操作受付手段23は、送金人からの3Dフィギュアの作成に伴う操作入力を受け付ける。例えば、3Dフィギュア作成のためのWebページを提供し、送金者端末10のディスプレイに表示させ、送金人によって入力された内容を制御手段25に受け渡す。ここで送金人は贈答品として送るフィギュアを選択するか、オリジナルフィギュアの作成を依頼する。ここで選択又は作成されるフィギュアは、受取人と何らかの関連付けられた物であるとよい。例えば、受取人がネコ好きであれば、ネコのフィギュアを選択する。あるいは、祖父母に送金する場合、現在の孫の状態をフィギュアにして送ると喜ばれる。
【0030】
記憶手段24には、その一部記憶領域に、送金情報データベース100(以降、送金情報DB100と呼ぶ)と、認証情報データベース200(以降、認証情報DB200と呼ぶ)と、ユーザ情報データベース300(以降、ユーザ情報DB300と呼ぶ)とが割り当てられており、3D認証生成装置21に実装された半導体メモリ、磁気あるいは光ディスクに記憶される。
【0031】
送金情報DB100は、
図4にそのデータ構造の一例が示されているように、例えば、「3D送金電報」の識別IDと、送金人情報として、送金人氏名、口座番号が、受取人情報として、受取人氏名、受取人の住所及び電話番号が、そして、送金内容として、フィギュアのID、受取人に送る送金額、受取人へのメッセージ等が登録されている。その他、図示していないが、送金情報には受取人が送金額を受取可能な日時又は期間、場所(ATMの設置場所)を含めてもよい。これらを指定すると、フィギュアが万一盗まれた場合でも安全性が高まる。犯人が現金を出金する日時と場所を限定できるからである。また、受取人へのメッセージは、テキスト(文字情報)の他、音声、静止画、動画を含んでもよい。なお、受取人が送金額を受取可能な日時又は期間、場所の指定、及び受取人へのメッセージは必須の項目ではない。
【0032】
認証情報DB200には、作成される3Dフィギュア作成用データ、フィギュアのID,フィギュアIDごとに複数(少なくとも数10種類以上)の付加図形(後述)のID、及び付加図形の形状データ等が登録されている。
【0033】
ユーザ情報DB300は、ユーザがサービス事業者のサービスを利用する際に登録される情報であり、例えば、ユーザ(送金人)のログインID及びパスワード等が登録されている。送金を受けた受取人もこのサービスのユーザであれば、お祝金等のお返し等も同じサービスを利用して行うことができる。
【0034】
制御手段25は、送金者端末10からの要求に基づき、受取人を認証するための認証情報を含む3Dフィギュアを作成するため、記憶手段から必要なデータを読出し、符号23,24で示される各手段の制御を行う。
【0035】
また、制御手段25は、オリジナルフィギュア生成のために送金者端末10から入力された複数の写真から3Dフィギュアを作成する形状データを生成し、その形状データを3Dプリンタ26に送信し、3Dフィギュアを作成させる。
【0036】
また、制御手段25は、送金額のうちから受取人が一度に受取可能な金額を送金人が指定する場合に、受取可能な金額に応じて3Dフィギュアのサイズを変更する指示を3Dプリンタ26に送ってもよい。例えば、
図3(a),(b)に示すように、フィギュア50のサイズを変更する。このようにすることで、例えば、送金額が10万円の場合、
図3(a)に示す通常サイズであれば、受取人は、全額の10万円を一度に出金できるのに対して、
図3(b)に示す小型サイズ(例えば、標準サイズの20%)の大きさのフィギュアでは、一度に2万円しか受け取れないようにする。したがって、10万円の送金額を受け取るには、小型サイズのフィギュアでは5回に分けて受け取らなければならなくなる。すなわち、受取人が送金額を一度に全部出金できないように送金人が指定することができる。そのため、例えば、親から子への仕送り等で送金する場合、月ごとの出金額を指定しておけば、子が一度に全部出金し、無駄遣いすることを防止できる。また、送金情報は、受取人が送金額を受取可能な日時、期間、場所の指定を含むようにすることもできる。このようにすることで、指定された日時、期間、場所(その場所に設置されたATM)でしか出金できなくなるのでさらに安全性が高まる。また、万一、認証情報を含んだフィギュアが盗まれても、犯罪捜査がやり易くなる。
【0037】
また、制御手段25は、複数のフィギュアを作成し、1体を正規品として作成し、他のすべてを疑似品(ダミー)として作成する出力指示を3Dプリンタ26に送出してもよい。この場合、受取人には、1体の正規品と1又は複数のダミーのフィギュアが届けられる。しかし、正規品には認証情報が付加されているが、ダミーには認証情報が付加されていないので出金はできない。ここで作成される正規品及びダミーのフィギュアは、例えば、色若しくはサイズ等を変えて作成する。そして、複数のフィギュアのどれが正規品かは、別の手段で受取人に知らされる。受取人は、正規品とダミーのフィギュアを別々の場所に保管したり、フィギュアを持ちだす際には、別々の鞄や財布(小型フィギュアの場合)に入れたりすることで、たとえダミーが盗難や紛失しても被害にあうことがなく、安全性をより高めることができる。
【0038】
3Dプリンタ26は、造形物の3Dデータを受信し、受取人に送る3Dフィギュアを作成(印刷)する。3Dプリンタ26は、例えば、3DのCAD(Computer Aided Design)データに基づき、樹脂(例えば、ABS樹脂)等を利用して立体物を造形する装置である。造形方法として、例えば、積層造形法を用いて3Dデータを断面化し、断面化した層を樹脂によって重ねることで、目的の形状に形成し、出力する。
【0039】
(金融機関のシステムの構成)
上記では3D認証情報を生成する側である3D認証生成装置21について説明したが、以下では3D認証情報を認証する側の認証システムである金融機関のシステムについて説明する。金融機関のシステム30は、インターネットを介して顧客からのリクエストを受信するWEBサーバ31と、受取人によって持ち込まれたフィギュアから認証情報を識別する3D認証識別装置35と、識別された認証情報が登録された認証登録情報に一致するかを判定する認証サーバ32と、フィギュアに紐づいた送金情報に含まれる送金額及び受取人へのメッセージを出力するATM38とから構成される。
【0040】
認証サーバ32は、記憶手段33と、判定手段34とから構成される。記憶手段33には、その一部記憶領域に、送金情報DB100と、認証登録情報データベース400(以降、認証登録情報DB400と呼ぶ)と、顧客情報データベース500(以降、顧客情報DB500と呼ぶ)とが割り当てられており、実装された半導体メモリ、磁気あるいは光ディスクに記憶される。なお、送金情報DB100には、送金者が入力した送金情報が登録されている。
【0041】
認証登録情報DB400には、3D認証生成装置21から送られてくる3Dフィギュアの形状データとその3Dフィギュアごとの付加図形の情報が登録されている。
【0042】
顧客情報DB500には、送金人(金融機関の顧客)の氏名、口座番号、口座番号に紐づけられた口座残高が格納されている。
【0043】
判定手段34は、認証情報識別手段37で識別された3Dフィギュアの認証情報が、記憶手段33の認証登録情報DB400に格納されているか判定し、認証情報と認証登録情報が一致した場合、ATM38に送金指示及び受取人へのメッセージの出力指示を行う。
【0044】
3D認証識別装置35は、3Dスキャナ36と、認証情報識別手段37と、から構成される。3Dスキャナ36は、フィギュア50からフィギュアの形状データを読み取る装置である(3Dデータ取得手段)。3Dスキャナは、フロア据え置き型、デスクトップ型、ハンディ型等、いくつかのタイプがあるが、ここでは、デスクトップ型の3Dスキャナを例示している。
図3(a)に示すように、3Dスキャナ36は、例えば、L字型の台座を有しており、台座の上面中央には、対象物を設置し、360°回転する回転体63を備えている。また、台座の側面には、撮像装置61(カメラ)が備えられており、上下にスライド可能なスライドバー62によって撮像装置61がスライドする。上記2つの機構により対象物の360°のデータを読み取ることが可能となる。なお、3Dスキャナの撮像装置は、上記のようなカメラにより撮像するタイプでなく、レーザー光によって対象物をスキャンし、3次元の点群データを取得するタイプであってもよい。
【0045】
認証情報識別手段37は、3Dスキャナ36で読み取られた形状データから認証情報を識別する。具体的には、予め3D造形物作成装置20から受信した認証登録情報に格納されている付加図形を元にして、読み取ったフィギュアにその付加図形が正規の位置に存在するか否かを判別する。
【0046】
ATM38は、判定手段34によって、出力指示の判定がなされると、指定された送金額に相当する現金を出力し、受取人へのメッセージをタッチパネル等の画面に出力する。なお、小型の3Dスキャナを備えた3D認証識別装置35の場合は、3D認証識別装置35をATM38に内蔵してもよい。
【0047】
上記の本システムの機能、及び構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インタフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベースは、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0048】
図5は、本システムの送金者端末10の処理動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、必ずしもこのフローチャートで示した順で処理される必要はなく、各処理ブロックの入力データと出力データの関係が損なわれない限り、処理順序を変更してもよい。
【0049】
図5に示すように、送金人は、本システムの3D送金電報の作成を依頼する場合、送金者端末10からサービス事業者の3D認証生成装置21のWebページにアクセスするためにログインする(ステップS11)。ここで送金人は、ログインIDとパスワードの入力画面に移り、自身のログインIDとパスワードを入力する。
【0050】
3D認証生成装置21の制御手段25は、ユーザ情報DB300から、送金人のログインIDとパスワードを照合し、一致した場合、Webページの閲覧を許可する。
【0051】
次に、送金人は、3D送金電報作成画面から3Dフィギュアをオリジナルフィギュアか既成品の3Dフィギュアにするか選択する(ステップS12)。そして、既製品の3Dフィギュアを選択した場合(ステップS12“NO”)、さらに、3D送金電報作成画面から対象となるフィギュアを選択する(ステップS13)。
【0052】
オリジナルフィギュアを選択した場合(ステップS12“YES”)、オリジナルフィギュア作成のためのデータを送信する(ステップS14)。具体的に、例えば、人物や動物等をオリジナルフィギュアとしたい場合、その対象物を撮った複数の写真(前後左右上下等)を添付ファイルとしてサービス事業者に送信する。なお、写真を送信する以外にも、例えば、サービス事業者の店舗に出向き、オリジナルフィギュアの対象物(人形、プラモデル、ペット、若しくは自分自身等)を持ち込み、その対象物を店舗の専用機器(3Dスキャナ等)で読み込み、3Dフィギュア作成用データを生成してもよい。
【0053】
次に、送金人に対して、受取人に送る送金額、及び受取人へのメッセージを入力し(ステップS15)、受取人情報(受取人氏名、住所、電話番号等)を入力させる(ステップS16)。
【0054】
そして、送金人が、送金人情報(送金人の氏名、口座番号等)を入力し(ステップS17)、実行ボタンを押下(ステップS18)することで、3D送金電報作成の依頼が完了する。
【0055】
図6は、本システムの3D造形物作成装置の処理動作を示すフローチャートである。
【0056】
図6に示すように、3D認証生成装置21の操作受付手段23は、送金者端末10から3D送金電報作成の注文を受信すると(ステップS21)、制御手段25に、注文情報(送金情報、フィギュア情報(フィギュアの選別、写真画像等))を送る。これを受けて制御手段25は、オリジナルフィギュアの作成依頼の場合(ステップS2“YES”)、送金者端末10から添付送信された写真画像等からオリジナルフィギュアの元となるデータを取得する(ステップS24)。制御手段25は、そのデータから専用機器(3Dスキャナ等)によって、3Dフィギュア作成用データに変換する(ステップS25)
【0057】
なお、既成品の3Dフィギュアの作成依頼の場合(ステップS22“NO”)、制御手段25は、フィギュア作成用データを記憶手段24に格納されているデータベース(図示せず)から選択されたフィギュアの作成用データを取得する(ステップS23)。
【0058】
次に、制御手段25は、フィギュア作成用データに認証情報として付加図形を合成したデータを生成する。
【0059】
そして、制御手段25は、3Dプリンタ26に付加図形を合成したフィギュア作成用データを3Dプリンタ26へ送り、対象のフィギュアを作成する(ステップS26)。
図7は、認証情報を3D造形物に付加する方法の一例である。ここでは、説明を簡略化するために、フィギュアがペットボトルのような単純な形状であり、フィギュアに付加する認証情報となる付加図形も単純な幾何学的図形である場合を説明する。既成品のフィギュアを使用する場合、登録されている3Dフィギュア作成用データを元に、この付加図形をフィギュア上に「合成」する位置を決定する。ここでいう「合成」とは、付加図形の形状を元の図形に貼り付けること、又は付加図形の形状で元の図形を切り抜くことを意味する。
【0060】
ここで付加図形は、単純な例としては、
図7(a)に示すような、正面に直方体の凸部形状を有するもの、
図7(b)に示すような、正面に複数の斜線の凸部形状を有するもの、
図7(c)に示すような、正面に複数の円形の凸部又は凹部の形状を有するものをあげている。特に、
図7(c)の符号70aで示す付加図形は、付加図形の形状で元の図形を「切り抜いた」場合(凹部)の例を示している。
図7(c)の例では、70aの付加図形のみが凹部で他は凸部であるが、複数の付加図形で凹部と凸部をランダムに組み合わせてもよい。ただし、実際の付加図形の大きさは、このように目立つものではなく、3Dスキャナが読み取れる範囲の微小なサイズである。なお、既成品のフィギュアの場合、予め、既成品のフィギュアに付加図形を合成した状態のフィギュアごとにIDを持たせて登録しておいてもよい。このようにすれば、毎回、付加図形を合成する作業が必要なくなる。ここで、どの付加図形を合成したフィギュアを実際に使用するかはランダムに決定してよい。
【0061】
例えば、
図7(a),(b),(c)に示す付加図形70を採用した場合、登録されている3Dフィギュア作成用データを元に、付加図形70を合成する箇所を断面化する。そして、断面化した層ごとに付加図形70を合成し(断面A〜C)、最終的な付加図形を合成した(すなわち認証情報を含んだ)フィギュアの3Dデータを作成する。そして、積層造形法を用いて、3Dプリンタ26によって、断面化した層を樹脂等で重ねることで、一つ一つユニークな形状を持ったフィギュアが完成する。オリジナルフィギュアの場合は、3Dフィギュアの元となる画像等から作成した3Dフィギュア作成用データを元データとする。以降は、上記と同様の手順である。なお、フィギュアに付加図形を合成することは、フィギュアを識別する「ほくろ」を付けるイメージである。人間の場合、ほくろの形状と位置によって、双子や三つ子を識別できることに例えられる。もちろん、世界で唯一のオリジナルフィギュアを所持していれば、付加図形を合成しなくとも、そのフィギュアの形状自体が認証情報となる。
【0062】
上記のように、フィギュアの認証情報は、通常、付加図形の形状とその合成位置の組合せによって決定されるが、フィギュア全体のサイズ(高さ、幅)自体を認証情報としてもよい。フィギュアごとに「標準サイズ」を定め、例えば、標準サイズのフィギュアの高さが100.0mmであったとすると、認証用のフィギュアは、標準サイズの高さから、毎回、所定の範囲(例えば99.0mm〜101.0mm等)で高さを微小変更する。そして、標準サイズから所定の範囲内で微小変更した情報を認証情報とする。このようにすることで、サイズが微妙に異なるフィギュアは、それぞれが「ユニークな形状」になるため、仮に、デザインだけを模倣したフィギュアを金融機関に持参したとしても、持参したフィギュアのサイズが、認証用のフィギュアのサイズに完全に一致しない限り、認証エラーとなり出金処理が行われることはない。もちろん、フィギュアの標準サイズ及び認証用のフィギュアのサイズはランダムに変化するものとする。なお、このようなフィギュアのサイズを検出することによる認証方法は、先に述べた付加図形を合成する方法と併用してもよいし、それを代えるものであってもよい。
【0063】
なお、3D認証生成装置21は、認証情報の付加図形を凸部形状とした場合に、認証登録情報と対応する付加図形を凹部形状の3Dデータを認証サーバ32へ送信し、両者の凹凸がデータ上で完全に一致した場合に認証が成立したものとするようにしてもよい。
【0064】
図6に戻り、制御手段25は、作成したフィギュアと受取人情報とを紐付け(ステップS27)、金融機関のシステム30の認証サーバ32に通信手段22を介して、受取人情報と認証情報を認証登録情報として送信する(ステップS28)。
【0065】
図8は、本発明の実施形態に係る金融機関のシステムの処理動作を示すフローチャートである。
【0066】
図8に示すように、3D認証識別装置35の3Dスキャナ36は、受取人により持ち込まれた3Dフィギュアをスキャンし(ステップS31)、フィギュア作成用データに変換する。
【0067】
なお、3Dスキャナでスキャンする際の3Dフィギュアの置き方を認証情報として付加してもよい。例えば、送金人は、3Dフィギュアを横に倒した状態で、又は可能であれば上下逆さまにした状態で、3Dフィギュア作成することをサービス事業者に依頼し、受取人にも受け取った3Dフィギュアを横に倒した状態又は上下逆さまにした状態で認証を受けるように伝えておく。あるいは、送金人は、3Dフィギュアに関連付けた暗証番号等を決めておき、3Dフィギュア作成時に、その暗証番号等を別途付与するようにサービス事業者に依頼する。そして、受取人にもその暗証番号等を伝えておく。このようにすることで、正規の受取人以外の人間が3Dフィギュアを3Dスキャナで読み取らせても、フィギュアの認証時の正しい置き方又は暗証番号等を知らない限り、認証エラーとなる。したがって、フィギュアの紛失又は盗難の場合にも備えることができる。
【0068】
次に、認証情報識別手段37は、フィギュア作成用データを受信し、予め登録された認証登録情報DB400から一致するフィギュア作成用データを判定する(ステップS32)。
【0069】
判定手段34は、認証が成立した場合(ステップS33“YES”)、別途送信された送金情報から送金額と受取人情報とを送金情報DB100から読み込む(ステップS34)。次に、判定手段34は、送金人の口座残高を送金情報DB100によって紐づけた顧客情報DB500から割り出し、口座残高が送金額より多いか否かを判定する(ステップS35)。口座残高が送金額より多い場合(ステップS35“YES”)、判定手段34は、送金額及び送金情報にメッセージ情報が入力されていた場合は、そのメッセージ情報をATM38の表示画面に表示すると共に、現金取出し口から送金額相当の紙幣を出力する(ステップS36)。
【0070】
また、3Dスキャナ36は、一般的にはスキャンに時間を要し、また設置場所を取るため、3D認証識別装置35とATM38は、別の場所に設置されることが多いと考えられる。そのような場合は、3D認証識別装置35でのフィギュアの認証が成立すると、3D認証識別装置35から、いったん「認証済カード」が発行されるようにする。そして、この認証済カードを受け取った受取人がATM38の設置場所に移動し、認証済カードをATM38に挿入することで出金を受けるようにすることが望ましい。
【0071】
例えば、
図9に示すように、ATM38の表示画面上に「3D認証ボタン」が割り当てられており、そのボタンを押下すると、認証済カードの挿入指示画面が表示される。そして、認証済カードをATM38のカード挿入口に挿入することで、送金情報に含まれた送金額及び受取人へのメッセージが表示され、現金取出し口から送金額が出金される。また、認証済カードは、キャッシュカードと同一の形状を有しており、一回限り使用が可能であり、一度使用するとATMからは排出されないようにする。なお、認証済カードを挿入後にも、受取人が所有するキャッシュカードや指紋認証を利用するようにしてもよい。このように受取人本人を別の手段でも認証することで、さらなるセキュリティ強化につながる。
【0072】
図8に戻り、認証の結果が不成立の場合は(ステップS33“NO”)、ATM38の表示画面に認証エラー表示が出力される(ステップS37)。なお、口座残高が送金額より少ない場合は(ステップS35“NO”)、ATM38のディスプレイに残高不足のメッセージが表示される(ステップS38)。この場合もATMに挿入された認証済カードは排出されないので、受取人は、送金人に入金を要請し、その入金後、再度ステップS31の処理からやり直す必要がある。
【0073】
(変形例)
なお、今までの実施形態の説明によれば、送金人の口座から直接引き出すこととしたが、送金人が専用口座に予め送金しておき、受取人にその専用口座から引き出させるようにしてもよい。また、予め、送金額をサービス事業者又は金融機関に支払っておき、その業者又は金融機関の口座から受取人が送金額を受け取るようにしてもよい。
【0074】
また、受取人へのメッセージとして、音声データや動画データを含ませてもよい。その場合は、周囲への漏洩を避けるため、判定手段34による認証が成立した場合、ATM38と、受取人が所持している携帯端末等の間で近距離無線通信を利用して、音声や動画データを携帯端末にダウンロードするようにしてもよい。
【0075】
(実施形態の効果)
本システムによれば、金融機関のシステムは、3Dフィギュアに含まれる認証情報に基づき受取人の認証を行ない、認証が成立した場合に、自動取引装置に送金者端末からの出金指示を行う新規なサービスを提供することができる。ここでは認証情報が付加されたフィギュアの作成をサービス事業者が受け持ち、フィギュアの認証と出金及びメッセージ出力の処理を銀行等の金融機関が受け持つ。このようにすることで、サービス提供事業者は、魅力のあるフィギュアを作成して贈答品と送金を同時に送ることができるサービスを提供できる。また、金融機関は、新規サービスにより他機関との差別化が可能になり、顧客である送金者に利便性を提供できる。
【0076】
また、3D造形物作成装置は、認証用フィギュアとして、付加図形を合成したフィギュアを作成する。あるいは認証用フィギュアとして、標準サイズから微小範囲でサイズを変更したフィギュアを作成する。そのため、作成されたフィギュアは、送金人ごと受取人ごと(送金電報ごと)にユニークな形状となるため、仮に模倣したフィギュアを金融機関に持ち込んだとしても、認証されず出金処理は行われない。また、フィギュア自体のスキャン時の置き方や暗証番号等を送金人と受取人の間で決めておけば、さらなるセキュリティ強化になる。
【0077】
また、3D造形物作成装置は、送金額のうちから受取人が一度に受取可能な金額を送金人が指定する場合に、受取可能な金額に応じてフィギュアのサイズを変更することで、指定された日時、期間、場所(その場所に設置されたATM)でしか出金できなくなるのでさらに安全性が高まる。また、万一、認証情報を含んだフィギュアが盗まれても、犯罪捜査がやり易くなる。
【0078】
また、3D造形物作成装置は、複数のフィギュアを作成し、一方を正規品として作成し、他方を疑似品として作成する。このようにすることで、例えば、不正利用者が金融機関へフィギュアを持参した場合の防犯対策につながる。
【0079】
なお、本システムは、3D造形物を贈答品として送ると共に、金融機関への送金を伴ったメッセージ(「電報」)を送るサービスに適用したものであるが、送金は伴わないが、受取人の認証が必要なメッセージを送るようなシステムにも応用ができる。例えば、遺言を本システムの電報と考えれば、本人の死後、フィギュアが送られて認証された人間だけが、指定された日時又は期間だけ、その遺言を聞くことができるようなシステムにも応用することができる。
【0080】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。