(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面で合成反応を生じさせるための樹脂が投入され得るとともに複数種の薬液が選択的に供給され得る反応容器と、前記反応容器内へ複数種の薬液を選択的に供給する薬液供給機構と、を備え、
前記薬液供給機構は複数のユニットを備え、
前記各ユニットは、
薬液を収容する収容容器と、
前記収容容器に接続され、該収容容器内の前記薬液を容器外へ送給するための薬液送給ラインと、
前記収容容器に接続され、該収容容器内へ不活性ガスを供給するガス供給ラインと、
を備え、
前記ガス供給ラインは、
前記薬液送給ラインからの薬液送給時に弁開放される薬液送給用ガス供給ラインと、
前記収容容器内を陽圧にするときに弁開放される収容容器陽圧用ガス供給ラインと、を備え、
更に、
前記収容容器陽圧用ガス供給ラインからの不活性ガスを各収容容器内に供給して、前記収容容器内を陽圧にする制御を行う制御部
を備えたことを特徴とする固相合成装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0028】
(全体構成)
図1は、本実施形態の固相合成装置で全体を説明する模式的な平面図である。
図2は、本実施形態の固相合成装置で、複数種の薬液が反応容器に供給されることを説明する模式的な側面図である。
図3は、本実施形態の固相合成装置で、三方弁を説明する模式的な側面図である。
図4は、本実施形態の固相合成装置で、回動軸に取付けられた羽根を示す斜視図である。
図5は、本実施形態の固相合成装置で、樹脂表面に合成物質が形成されたことを説明する模式的な断面図である。
【0029】
また、
図2では、弁記号のうち黒い三角形は、ノーマルクローズ(通常では閉)であって、弁開放したときには、通常、黒い三角形の指す方向に流れることを意味する。また、M(M1〜M3)はモータを意味し、P1はポンプを意味する。そして、LSはリミットスイッチを意味し、LCはロードセルを意味し、Ptは白金センサを意味し、Cはチラーを意味し、FSはファイバーセンサを意味し、Sは安全弁を意味し、Vは排気されることを意味する。
【0030】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る固相合成装置10は、複数種の薬液が選択的に供給され得る反応容器12と、反応容器12に薬液を供給する薬液供給機構14と、反応容器12内を撹拌する撹拌機構20とを備える
。
【0031】
(薬液供給機構の配管構成)
薬液供給機構14は、第1供給機構14Aと第2供給機構14Bとを備える。第1供給機構14Aは、ユニットA1〜A7の7つのユニットを有する容器ユニットAを備える。第2供給機構14Bは、ユニットB1〜B5の5つのユニットを有する容器ユニットBを備える。なお、容器ユニットA、Bは上下に二段重ねになっており、
図1では、容器ユニットBは容器ユニットAの下方に隠れている。
【0032】
ユニットA1は、薬液を収容する収容容器30を備える。また、ユニットA1には、収容容器上部から不活性ガスを供給するガス供給ライン32と、収容容器内を排気する収容容器排気ライン34と、収容容器底部から薬液を容器外へ送給するために収容容器内に挿入された薬液送給ライン36と、が接続されている。ガス供給ライン32および収容容器排気ライン34は容器内の上部で開口し、薬液送給ライン36は容器内の下部で開口している。
【0033】
なお、本明細書で不活性ガスとは、窒素ガスのように反応に寄与しないガスも含む概念である。
【0034】
ガス供給ライン32には、三方弁38(
図2、
図3参照)が設けられている。そして、三方弁38の第1ポート32aには、収容容器30から薬液送給時に弁開放する薬液送給用ガス供給ライン32sが接続されている。三方弁38の第2ポート32bには、収容容器30内を陽圧にするための収容容器陽圧用ガス供給ライン32pが接続されている。そして三方弁38の第3ポート32cには、薬液送給用ガス供給ライン32sまたは収容容器陽圧用ガス供給ライン32pからの不活性ガスを収容容器30にガス導入するガス導入管39が接続されている。また、本実施形態では、固相合成装置10は三方弁38の切換えを制御する制御部37(
図2参照)を備える。
【0035】
ユニットA2〜A7は、収容容器30の容積が異なること以外はユニットA1と同じ基本構成であるので、その説明を省略する。また、第2供給機構14Bは、第1供給機構14Aに比べ、収容容器の寸法が大きくて収容容器数が少ないこと、および、第1供給機構14Aと同様に第2供給機構14Bが各収容容器40に接続されていること、以外の基本構成は第1供給機構14Aと同じである。このため、第2供給機構14Bの説明も省略する。
【0036】
(薬液供給機構の計量器)
薬液供給機構14は、送給されてきた各薬液を計量して合成する計量器50A、50Bを備える。そして、計量器50A、50Bでそれぞれ合成された液が計量器50A、50Bから反応容器12に合成反応用液として送給される構成にされている。
【0037】
ユニットA1〜A7からの薬液は計量器50Aに送給され、ユニットB1〜B5からの薬液は計量器50Bに送給されるように配管接続されている。計量器50Aには、掻混ぜ羽根54(掻き混ぜ用の羽根)が挿通している。そして、計量器50Aの下流側に接続された反応容器12に送給される構成にされている。計量器50Bも同様の構成である。
【0038】
掻混ぜ羽根54は、モータによって、一方向に回転する構成でもよいし、回転方向が適宜に切り換えられる構成でもよい。
【0039】
また、本実施形態では、計量器排気ライン35A、35Bが計量器排気用開閉弁51A、51Bを介してそれぞれ計量器50A、50Bに接続されている。また、計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53Bが計量器送給用開閉弁52A、52Bを介してそれぞれ計量器50A、50Bにそれぞれ接続されている。そして、計量器排気ライン35A、35Bでそれぞれ計量器50A、50B内を排気しつつ計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53Bで計量器50A、50Bに不活性ガスが供給可能になっている。
【0040】
なお、計量器50A、50Bの両方を使用して反応容器12に液を送給する場合には、計量器50A、50Bの少なくとも一方では1種類の薬液を計量して反応容器12に送給し(すなわち、計量器内で薬液を混ぜることなく1種類の薬液を送給し)、反応容器12で合成反応を生じさせることも可能である。
【0041】
(合成ユニット)
反応容器12は、表面で合成反応を生じさせるための粒子状の樹脂R(ビーズ、レジン。
図5参照)が投入され得る構成になっている。そして反応容器12は、計量器50A、50Bから送給された液が流入する構成にされている。また、反応容器12では、側壁内面が円筒内周面状にされている。また、反応容器上部に反応容器排気ライン33が接続され、反応容器底部には排液ラインが接続されている。
【0042】
撹拌機構20は、
図2、
図4に示すように、上下方向に延び、正転、反転(往復回転)が設定角度毎に交互に切り換えられる回動軸60と、回動軸60に取り付けられた羽根62とを備える。
【0043】
反応容器12には、回動軸60が反応容器12と同一中心軸上に反応容器上部から上下方向に挿通している。回動軸60は、撹拌機構20に備えらえた回動モータ66によって正転、反転が設定角度毎に交互に切り換えられる。
【0044】
回動軸60には、棒状に水平に延びる羽根62が回動軸60の所定高さ位置に取り付けられている。羽根62がこの所定高さ位置に配置されていて、所定量の樹脂および合成反応用液が反応容器12に入れられた場合に、反応容器12内で効果的に撹拌できるように、所定高さ位置が予め設定されている。
【0045】
本実施形態では、羽根62は、中央部62m(羽根中央部)で回動軸60に取付けられた三角柱状部材で構成されている。なお、本明細書で「三角柱状部材」とは外見が三角柱状であることを意味しており、内部が中空になっているものも含む概念である。
【0046】
薬液供給機構14、計量器50A、50B、反応容器12、および、撹拌機構20は、固相合成反応を生じさせる合成ユニットE(
図2参照)を構成している。また、計量器50A、50B、反応容器12内、および洗浄が必要なラインでは、固相合成装置10に設けられた洗浄ユニットW(
図1参照)からの洗浄液が供給されることで洗浄可能にされている。洗浄液を供給する際には、ガス供給ライン32から不活性ガス(例えば窒素ガスで洗浄液が送給されるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、上述した反応容器排気ライン33が反応容器排気用開閉弁13を介して反応容器12に接続されており、反応容器陽圧用ガス供給ライン16が反応容器送給用開閉弁15を介して反応容器12に接続されている。そして、反応容器排気ライン33で反応容器12内を排気しつつ反応容器陽圧用ガス供給ライン16で反応容器12に不活性ガスが供給可能になっている。
【0048】
(作用、効果)
本実施形態では、装置電源(固相合成装置10の電源)がONにされたときには、制御部37は、収容容器排気ラインで全ての収容容器30、40内を排気させつつ、収容容器陽圧用ガス供給ライン32pで全ての収容容器30内に不活性ガスを供給して不活性ガスに置換させるように制御する。
【0049】
これにより、装置電源がONにされる毎に、全ての収容容器30、40内の気体を新しい不活性ガスで置換して陽圧にすることで外気の進入を防止でき、各収容容器に収容されている薬液を良好に保管することができる。
【0050】
このことは、合成反応の反応性の向上(反応精度の向上)に大きな効果をもたらし、また、主に核酸合成で嫌われる水分(水蒸気)が薬液に吸収されることを防止する上で、大きな効果が奏される。更に、この置換を、短時間で効率的に、しかも確実に行うことができる。
【0051】
ここで、収容容器30内を排気しつつ陽圧にする際、薬液送給用ガス供給ライン32sから不活性ガスを供給するのではなく収容容器陽圧用ガス供給ライン32pから不活性ガスを供給している。従って、薬液送給用ガス供給ライン32sからの流量とは異なる流量で充填させることができる。よって、陽圧にする際の流量設定の自由度が十分に高い。例えば、薬液を送給するときには薬液送給用ガス供給ライン32sで不活性ガスを高圧で供給して薬液を高速で送給し、収容容器30内を排気しつつ陽圧にするときには収容容器陽圧用ガス供給ライン32pから不活性ガスを低圧で供給して不活性ガスを効率良く利用することが可能になる。
【0052】
また、この制御と併行して、あるいは前後して、制御部37は、反応容器排気ライン33で反応容器12内を、計量器排気ライン35A、35Bで計量器50A、50B内を、それぞれ排気させつつ、反応容器陽圧用ガス供給ライン16で反応容器12内に、計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53Bで計量器50A、50B内に、それぞれ不活性ガスを供給させるように制御する。これにより、装置電源がONにされる毎に、反応容器12内および計量器50A、50B内の気体を新しい不活性ガスで置換することを、短時間で確実に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る固相合成装置10で固相合成(例えばペプチド合成や核酸合成)を行うには、表面で合成反応を生じさせるための粒子状の樹脂R(
図5参照。未使用のものが好ましい)を反応容器12に予め投入しておく。
【0054】
また、固相合成で用いる薬液の必要量を予め算出しておく。そして、各ユニット(A1〜A7、B1〜B5)のうち必要な薬液が収容されている1つ或いは複数のユニットを選定する。そして、算出した必要量に相当する薬液を収容容器30から送給し、計量器50Aや計量器50Bで計量し、反応容器12に合成反応用液として入れる。反応容器12では、樹脂Rおよび合成反応用液からなる被撹拌物が入っており、羽根62の高さ位置が、この被撹拌物J内で適度な高さ位置となっている。
【0055】
この状態で、撹拌機構20により羽根62を反応容器12内で回動させる(往復回転(正転と反転との繰り返し)をさせる)。この結果、樹脂Rの表面で固相合成反応(例えばペプチド合成反応)が生じ、樹脂表面に合成物質Gが形成される(
図5参照)。なお、回動ではなく一方向に回転させて固相合成反応を生じさせることも可能である。
【0056】
合成反応の終了後には、反応容器12に接続された排液ライン68の排液弁70を開放し、排液ライン68からポンプ吸引などを行うことによって短時間で排液させることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、各収容容器30に不活性ガスを送給するガス供給ライン32は、薬液送給用ガス供給ライン32sと収容容器陽圧用ガス供給ライン32pとを有する。従って、陽圧にする際の流量設定の自由度が十分に高いので、陽圧にするのにかかる時間を大きく短縮することができる。このことは、収容容器30内の気体を短時間の作業で不活性ガスに置換することを可能にしており、薬液を良好に保管する観点で大きな効果が奏される。
【0058】
また、不活性ガスとして窒素ガスを選定することにより、簡単に入手できるガスを使用できるとともにガスコストを十分に抑えることができる。
【0059】
また、ガス供給ライン32に三方弁38が設けられ、三方弁38の第1ポート32aに薬液送給用ガス供給ライン32sが接続され、三方弁38の第2ポート32bに収容容器陽圧用ガス供給ライン32pが接続され、三方弁38の第3ポート32cにガス導入管39が接続されている。従って、収容容器30に接続するガス配管を1本のガス導入管39にすることができるので、収容容器30の設置位置の自由度が増大しており、また、固相合成装置10を設置する際に薬液供給機構14の設置作業にかかる時間が短縮されている。
【0060】
また、固相合成装置10は、収容容器30内を排気する収容容器排気ライン34を備え、この収容容器排気ライン34で排気しつつ、収容容器陽圧用ガス供給ライン32pからの不活性ガスが三方弁38を経由して収容容器30内に供給され得る構成になっている。これにより、収容容器30内を不活性ガスで置換することができる。
【0061】
また、反応容器排気ライン33が反応容器排気用開閉弁13を介して反応容器12に分岐接続され、反応容器陽圧用ガス供給ライン16が反応容器送給用開閉弁15を介して反応容器12に分岐接続されている。従って、反応容器排気ライン33で排気しつつ反応容器陽圧用ガス供給ライン16で反応容器12に不活性ガスが供給可能になっている。これにより、反応容器12も不活性ガスで置換することができ、反応容器12の性能を維持し易く、長寿命化が実現される。
【0062】
また、薬液供給機構14は、送給されてきた各薬液を計量して合成する計量器50A、50Bを備え、計量器50A、50Bで計量された薬液が反応容器12に送給される構成にされている。そして、計量器排気ライン35A、35Bがそれぞれ計量器排気用開閉弁51A、51Bを介して計量器50A、50Bに分岐接続されており、計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53Bが計量器送給用開閉弁52A、52Bをそれぞれ介して計量器50A、50Bに分岐接続されている。そして、計量器排気ライン35A、35Bで計量器50A、50B内を排気しつつ計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53Bで計量器50A、50Bに不活性ガスが供給可能になっている。これにより、計量器50A、50Bも不活性ガスで置換することができ、計量器50A、50Bの性能を維持し易く、長寿命化が実現される。
【0063】
また、固相合成装置10は、三方弁38の切換えを制御する制御部37を備える。この制御部37は、装置電源がONにされたときには、収容容器排気ライン34で全ての収容容器30内を排気させつつ、収容容器陽圧用ガス供給ライン32pで全ての収容容器30内に不活性ガスを供給させるように制御する。これにより、装置電源がONにされる毎に、全ての収容容器30内の気体を新しい不活性ガスで置換することを、良好な作業性で短時間で確実に行うことができ、暫く使用していない薬液が収容されている収容容器内であっても新しい不活性ガスに確実に置換される。
【0064】
また、制御部37は、装置電源がONにされたときには、排気ライン(反応容器排気ライン33、計量器排気ライン35A、35B)で反応容器12内および計量器50A、50B内を排気させつつ、陽圧用ガス供給ライン(反応容器陽圧用ガス供給ライン16、計量器陽圧用ガス供給ライン53A、53B)で反応容器12内および計量器50A、50B内に不活性ガスを供給させるように制御する。これにより、装置電源がONにされる毎に、反応容器12内および計量器50A、50B内の気体を新しい不活性ガスで置換することを、短時間で確実に行うことができる。
【0065】
なお、固相合成装置10の電源OFF時に、反応容器12や計量器50A、50Bに、不活性ガスを常時流しておく構成にしてもよい。例えば
図2で二点鎖線で示すように、計量器50Bに、不活性ガス(窒素ガスなど)を微量な流量で送給する微量送給ライン76と、微量送給ライン76からのガスを逃がすための微量排気ライン78とを接続しておき、装置電源OFF時には、微量送給ライン76から不活性ガスが流れ、微量排気ライン78から計量器50B内Bの気体が排気されるようにしてもよい。
【0066】
これにより、電源OFF時に大気中から計量器50Bに水分や異物が混入することを防止でき、しかも、計量器50Bの側面に飛び散った液を乾燥させることができる。この液は、主に洗浄液であることが多いが、薬液成分が残っていた場合には乾燥時に固形物が容器に付着するので、洗浄が不十分であること(すなわち、追加の洗浄が必要であること)が判かる。
【0067】
また、計量器50Bだけでなく計量器50Aにも同様に接続してもよいし、反応容器12にも同様に接続してもよい。これにより、計量器50Aや反応容器12に対しても同様の効果が奏される。
【0068】
以上、実施形態を例に挙げて説明したが、これらの実施形態は本発明の技術的思想を具体化するための例示であって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を上記実施形態に特定するものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【解決手段】固相合成装置は、樹脂が投入され得るとともに複数種の薬液が選択的に供給され得る反応容器12と、反応容器12内へ複数種の薬液を選択的に供給する薬液供給機構14とを備える。薬液供給機構14は複数のユニットを備える。各ユニットA1〜A7は、薬液を収容する収容容器30と、収容容器30に挿入され、容器内の薬液を容器外へ送給するための薬液送給ライン36と、収容容器30に挿入され、容器内へ不活性ガスを供給するガス供給ライン32と、を備える。ガス供給ライン32は、薬液送給ライン36からの薬液送給時に弁開放される薬液送給用ガス供給ライン32sと、収容容器30内を陽圧にするときに弁開放される収容容器陽圧用ガス供給ライン32pとを備える。