特許第6607660号(P6607660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607660
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】毛髪の染色又は脱色方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20191111BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20191111BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20191111BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20191111BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61K8/41
   A61K8/44
   A61K8/92
   A61Q5/08
   A61Q5/10
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-222514(P2013-222514)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83553(P2015-83553A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年10月21日
【審判番号】不服2018-13494(P2018-13494/J1)
【審判請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 宗男
(72)【発明者】
【氏名】上高原 正一郎
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 大久保 元浩
【審判官】 冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/103796(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/059410(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/117858(WO,A1)
【文献】 特開2015−083552(JP,A)
【文献】 特開2015−083554(JP,A)
【文献】 特開2015−083555(JP,A)
【文献】 プリティアふんわり泡カラー(lot:2600)(花王株式会社)のパッケージ及び使用説明書
【文献】 Soft Colouring Foam、ID1349716、MINTEL GNPD[online]、2010年2月、[検索日2017年11月1日]、インターネット<URL:http://www.portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(4)を有する、毛髪の染色又は脱色方法。
(1)アルカリ剤を含有する第1剤及び過酸化水素を含有する第2剤であって、下記一般式(2)で表される化合物を含むアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び油剤のそれぞれをいずれか一方又は両方の剤に含有する第1剤及び第2剤を、ノンエアゾールフォーマー容器の容器本体内で混合して、0.5〜20質量%のアニオン界面活性剤及び0.01〜3質量%の油剤を含有し、カチオン界面活性剤に対するアニオン界面活性剤の質量比(アニオン界面活性剤/カチオン界面活性剤)が1.36/0.54以上2.96/0.54以下である混合液を調製する工程;
5-O-(CH2CH2O)n1-(CH2CH(CH3)O)m1-SO31 (2)
〔式中、R5は炭素数10〜24個の炭化水素基であり、n1は平均付加モル数0〜50であり、m1は平均付加モル数0〜50であり、X1はアルカリ金属又はNH4である。〕
(2)該容器本体にノンエアゾールフォーマーを取り付けた後、ノンエアゾールフォーマー容器から、工程(1)で調製した混合液を泡状物として吐出する工程;
(3)該泡状物を、手を用いて毛髪に塗布する工程;
(4)毛髪上の泡状物を手で2〜10分間揉み、レオメーターを用いて下記条件で測定される該泡状物の複素弾性率G*工程(2)で吐出された際の3倍以上4.5倍以下とする工程
レオメーターの設定:
ジオメトリーは直径50mm、ステンレス製パラレルプレートを使用。
測定部温度は30℃に保持。
測定手順:
1.スパチュラーで泡をレオメーターの台座部分に4.5〜5.5cm3取る。
2.ギャップを2mmに調整し、台座の間から溢れた泡は丁寧に取り除く。
3.30秒間保持して泡を測定部温度になじませた後、下記条件にて動的ひずみ掃引評価を開始する。
周波数:2Hzに固定、ひずみ:1×10-3〜1×103
4.得られたデータから、G*として、ひずみに対して線形領域となる値を採用する。
【請求項2】
工程(2)において吐出された泡状物の複素弾性率G*が250Pa以上2000Pa以下である、請求項1に記載の染色又は脱色方法。
【請求項3】
工程(4)において手で揉んだ後の泡状物の複素弾性率G*が750Pa以上3000Pa以下である、請求項1又は2に記載の染色又は脱色方法。
【請求項4】
工程(4)において手で揉んだ後の泡状物の容量が200mL以上800mL以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【請求項5】
工程(4)の後に工程(5)として、毛髪上に存在する泡状物を毛髪の生え際の部分に寄せる工程を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【請求項6】
混合液中にカチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を合計質量%以上25質量%以下含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【請求項7】
カチオン界面活性剤が下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【化1】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は、独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは炭素数8〜36であって、かつ残余が炭素数1〜7である。X-はアニオンを示す。〕
【請求項8】
カチオン界面活性剤が塩化ステアリルトリメチルアンモニウムである、請求項7に記載の染毛又は脱色方法。
【請求項9】
一般式(2)で表される化合物がポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、請求項1〜8のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の染色又は脱色方法に用いるための2剤式染毛剤又は脱色剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の染色又は脱色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤、毛髪脱色剤としては、液状又はクリーム状のものが普及しているが、これらを毛髪にムラなく塗布するのは慣れない人にとって難しい。これは、髪に適用する混合物が、放置時にタレ落ちず、また髪に十分に粘着して保持されるように、高い粘度に調整されていることから、均一に剤を広げにくく、また毛髪の根元まで十分に剤を行き渡らせにくいためである。特に、消費者自身が、自己の毛髪の根元部分や後頭部の塗布にはブロッキング、合わせ鏡等のスキルの習熟が必要であるとともに、ムラなく塗布するために慎重な操作が必要であり、多くの時間も要する。
【0003】
そこで、剤を泡状に吐出して染毛操作を簡便化することが提案されており、例えば、2剤式エアゾール型のものや1剤式ノンエアゾール型のものが知られている。これらのものは剤が泡状であるため毛髪上の広い表面積に剤を広げやすいことが認められている。毛髪脱色剤、染毛剤は、ヘアケアインバス商品(シャンプーなど)と違い、乾いた髪に直接塗布することから、剤から毛髪内部への水分吸収や毛髪表面での毛管現象などが阻害要因となり、広範囲に均一に塗り広げることが難しい。そのため塗布性能は、均一な染まりを実現する上で、重要な商品性能及び消費者価値である。
【0004】
しかし、2剤式エアゾール型には、第1剤と第2剤との混合比が一定にならず、脱色ムラや染色ムラが生じやすい、金属製の耐圧容器等が過酸化水素により酸化され腐食する、過酸化水素の分解によって耐圧容器の内圧が過度に上昇するといった問題がある。また1剤式ノンエアゾール型には、脱色能が無いか弱いため、一度の施術で得られる色調変化を大きくするのは難しく、鮮やかな染毛を求める場合には、塗布後に長時間放置したり、施術を繰り返したりすることが必要となり、染毛操作が煩雑になり易いという問題がある。
【0005】
これに対し、2剤式染毛剤又は脱色剤組成物をノンエアゾール型のフォーマー容器から泡状に吐出させるものが提案されている(特許文献1参照)。この場合も剤が泡状であるため、毛髪上の広い表面積に剤を広げやすく、毛髪にムラなく適用でき、仕上がりに色ムラの生じないことが認められている。ノンエアゾール型の2剤式泡状染毛剤又は脱色剤は、髪になじみやすい低粘度液体の泡を導入することで頭髪全体にも広げやすくした技術であり、従来の剤型に比べて、均一全体染めが格段に簡単になった。このものは、第1剤と第2剤の混合液をフォーマー容器から泡状に吐出することにより、第1剤の泡と第2剤の泡を吐出後に混合する従来の2剤式エアゾール型のものと比較して、混合比にばらつきが生じにくく、しかも従来の1剤式ノンエアゾール型のものと比較して十分な染毛力又は脱色力を得ることが可能である。更に、課題であった保存安定性やシャンプー堅牢性も克服されたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、これらノンエアゾール型の2剤式泡状染毛剤又は脱色剤は、頭髪への塗布後に、気になる部位や根元部位に剤を定着させる目的で揉み込みを行うことがあるが、頭髪への塗布後に揉み込みを行った後の泡の挙動については、従来においてはほとんど考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-339216号公報
【特許文献2】特開2010-235581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
染毛剤や毛髪脱色剤は、頭髪の根元部分や気になる部分に塗布し易く、かつそのような部位に定着できることが望ましい。しかし、前述のとおり、クリーム状の染毛剤又は毛髪脱色剤は、高い粘度に調整されているため髪への密着性は高いが、頭髪に対し均一に剤を広げにくく、また毛髪の根元まで十分に剤を行き渡らせにくいという問題があり、一方、ノンエアゾール型2剤式泡状染毛剤又は脱色剤は、低粘度の液剤の泡を使用するため頭髪全体に広げることは容易であるが、塗布後に生え際の髪同士が密着せず、髪が浮いた状態のままとなるため、生え際部分の染色性が十分とはいえなかった。
【0009】
このように、従来技術においては、頭髪の根元部分や気になる部分に塗布し易く、かつそのような部位に定着できるという要望を満たすために、頭髪に塗布された剤の物性を意図的に変化させることが考慮されたものはない。
【0010】
本発明は、特許文献1及び2における塗布性に優れ全頭に剤を広げ易いというノンエアゾール型2剤式泡状染毛剤又は脱色剤に特有の特長を生かしたまま、塗布後には、塗布された泡を、生え際の髪同士を密着させ、生え際の髪の束が浮いた状態になることを防ぐことができる物性に変化させる毛髪の染色又は脱色方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ノンエアゾール型の2剤式泡状染毛剤又は脱色剤において、泡を頭髪に塗布した後に、泡を手で揉み、その複素弾性率G*を吐出時の複素弾性率G*の特定倍まで上昇させることにより、前述の課題が解決されることを見出した。
【0012】
本発明は、下記の工程(1)〜(4)を有する、毛髪の染色又は脱色方法を提供するものである。
(1)アルカリ剤を含有する第1剤及び過酸化水素を含有する第2剤を、ノンエアゾールフォーマー容器の容器本体内で混合して、混合液を調製する工程;
(2)該容器本体にノンエアゾールフォーマーを取り付けた後、ノンエアゾールフォーマー容器から、工程(1)で調製した混合液を泡状物として吐出する工程;
(3)該泡状物を、手を用いて毛髪に塗布する工程;
(4)毛髪上の泡状物を手で揉み、該泡状物の複素弾性率G*を工程(2)で吐出された際の3倍以上10倍以下とする工程
【発明の効果】
【0013】
本発明の毛髪の染色又は脱色方法によれば、毛髪への塗布時には根元部分や気になる部分に塗布し易く、かつ、塗布後には複素弾性率G*が増加した泡によって、生え際の毛髪同士を密着させ、生え際の毛髪の束が浮くのを防ぐことができるため、毛髪の先端から生え際の根元まで確実に毛髪の染毛又は脱色をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔アルカリ剤〕
第1剤中にはアルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、十分な染毛・脱色効果の点から、好ましくは混合液中の0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、混合液中の15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0015】
〔過酸化水素〕
第2剤中には過酸化水素を含有する。第2剤中の過酸化水素の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは9質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。第1剤と第2剤の混合液中における過酸化水素の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。第2剤のpHは、過酸化水素の分解抑制のため、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。
本明細書において、pH(25℃)は、堀場製作所社製のpH-Meter F-51を用いて測定した値である。
【0016】
〔ノンエアゾールフォーマー容器〕
本発明において、ノンエアゾールフォーマー容器とは、ノンエアゾール型の容器であって、第1剤と第2剤の混合液を、噴射剤を使用することなく空気と混合して泡状に吐出させるために使用する容器を意味する。ノンエアゾールフォーマー容器は、ノンエアゾールフォーマー及び容器本体から構成される。本明細書において、ノンエアゾールフォーマー容器を単にフォーマー容器と、ノンエアゾールフォーマーを単にフォーマーと呼ぶことがある。フォーマー容器の使用により、吐出させた剤の飛び散りを防止できるという効果も得られる。特に、ノンエアゾール型の容器は、エアゾール型の容器に比べて、製品を安価に製造可能であり、吐出速度の調整がしやすく、一定の処理を行えば再利用が可能で、しかも高圧ガスの噴射剤が不要であるため製品の流通においてより安全に取り扱うことができる。
【0017】
フォーマー容器としては、泡吐出手段を有する公知のポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器等、ノンエアゾール型の容器で泡吐出手段を有するものであればいずれの容器を用いることもできる。
【0018】
ノンエアゾールフォーマーは、ネット等の泡生成部分を有するものであり、第1剤と第2剤との混合液が乾燥固化して目詰まりを起こした場合に、次回の吐出時に泡の流れによって、直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消できるという点から薄肉のネットを有することが好ましい。この場合、ネットのメッシュとしては、50〜280メッシュが好ましく、90〜250メッシュがより好ましく、130〜220メッシュがより好ましい。この範囲のメッシュのネットを使用することにより、クリーミーな泡を生成することができる。また、このようなメッシュの材質として好ましくは、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、カーボンファイバー、ステンレス等を挙げることができ、より好ましくはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルであり、より好ましくはナイロンである。
【0019】
本発明において使用するノンエアゾールフォーマーには、このようなネットを少なくとも一枚、好ましくは複数枚配設し、経済性、泡の安定性等の点から2枚配設することがより好ましい。この場合最初に液が通過するメッシュの方が、次に通過するメッシュより目が粗いか、同一の目の粗さであることが好ましい。
【0020】
フォーマー容器において、内容物に接触する部分(容器内壁,泡吐出手段内壁等)は、アルカリ及び過酸化水素により腐食せず、また、過酸化水素の分解により発生した酸素が透過する材質で構成することが好ましい。
【0021】
〔工程(1)〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(1)として、アルカリ剤を含有する第1剤及び過酸化水素を含有する第2剤を、ノンエアゾールフォーマー容器の容器本体内で混合して、混合液を調製する工程を有する。
【0022】
混合直後の混合液のpH(25℃)は、染毛又は脱色効果の点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、皮膚刺激性の抑制の点から、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10.5以下である。
pH調整剤としては、前記のアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0023】
混合液の粘度(25℃)は、ノンエアゾールフォーマー容器からの良好な吐出性の観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上であり、また、好ましくは600mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以下である。
【0024】
本発明において、混合液の粘度(25℃)は、B型回転粘度計で、ローターNo.1を用い、測定対象が100mPa・s以下の場合の回転速度は60rpm、100〜200mPa・sの場合は30rpm、200mPa・s以上の場合は12rpmで測定する。回転数の大きい測定から順番に行い、表示が振り切れることなく測定できた時点で測定を完了し、それ以降の回転数の小さい測定は行わない。
【0025】
第1剤と第2剤の混合液の粘度を上記範囲に調整することにより、塗布しやすい泡体積を実現することができ、かつ混合液を毛髪に塗布した後の垂れ落ちを抑制することができる。また、スクイズフォーマー容器で泡状物を吐出する際にスクイズしやすくなり、ポンプフォーマーで泡状物を吐出する際にポンピングしやすくなる。混合液の粘度を前述の範囲に調整するためには、水溶性溶剤を添加、あるいは界面活性剤、ポリオール類、高級アルコール等の含有量や種類を適宜調整すればよい。
【0026】
混合液の調製に際しては、使用するまでは第1剤及び第2剤のそれぞれをフォーマー容器の容器本体と別個の容器に充填しておき、使用時に双方の剤を当該容器本体に移し入れ、混合するようにしてもよいが、使用するまでは一方の剤をフォーマー容器の容器本体に、他方の剤を別個の容器に充填しておき、使用時に他方の剤をフォーマー容器の容器本体内に移し入れるようにしてもよい。この場合、第2剤は、過酸化水素の分解によって生じる酸素のために容器内の圧力が上昇することを防止するため、ガス透過性のある容器に充填しておくことが好ましく、酸素透過性のある材質(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)から成る容器に充填することがより好ましい。一方、第1剤は、酸化染料の酸化を防止するため、酸素が透過し難い容器を用いる必要がある。
【0027】
〔工程(2)〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(2)として、容器本体にノンエアゾールフォーマーを取り付けた後、ノンエアゾールフォーマー容器から、工程(1)で調製した混合液を泡状物として吐出する工程を有する。
【0028】
吐出後(塗布前)の泡状物の容量は、全頭を泡状物で覆う観点から、好ましくは900mL以上、より好ましくは1000mL以上であり、また、好ましくは2000mL以下、より好ましくは1800mL以下、更に好ましくは1500mL以下である。
【0029】
吐出後(塗布前)の泡状物の複素弾性率G*は、液ダレ防止の観点から、好ましくは250Pa以上、より好ましくは280Pa以上、更に好ましくは310Pa以上であり、また、塗り広げ易さの観点から、好ましくは2000Pa以下である。
本発明において、泡状物の複素弾性率G*は、レオメーター(アントンパール社製のMCR300)を用いて測定した。ジオメトリーは直径50mm、ステンレス製パラレルプレートを使用し、測定部温度は30℃に保持した。測定手順としては、スパチュラで泡をレオメーターの台座部分に4.5〜5.5cm3取り、ギャップを2mmに調整し、台座の間から溢れた泡は丁寧に取り除いた後、30秒間保持して泡を測定部温度になじませた後、周波数2Hzで、ひずみ1×10-3〜1×103%動的ひずみ掃引評価した。得られたデータから、ひずみに対して線形領域となる値を複素弾性率G*とした。
【0030】
吐出後(塗布前)の泡状物における空気と混合液との気液混合比は、泡状物の髪への馴染み易さ及び塗り易さの点から、好ましくは5mL/g以上、より好ましくは8mL/g以上であり、また、好ましくは40mL/g以下、より好ましくは30mL/g以下である。
【0031】
ノンエアゾールフォーマー容器として、ポンプフォーマー容器を用いる場合は、ポンプフォーマーを掌で押すことで泡状物を吐出し、スクイズフォーマー容器を用いる場合は、容器本体を手でスクイズすることで泡状物を吐出することができる。
【0032】
〔工程(3)〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(3)として、泡状物を、手を用いて毛髪に塗布する工程を有する。
【0033】
泡状物を手を用いて毛髪に塗布する際、泡状物に含まれる液体成分が毛髪に吸収されるため、毛髪に塗布した1回目の泡状物は消失する傾向にある。そのため泡状物を毛髪上に残すために、同一箇所に2回以上、更には3〜5回塗布することが好ましい。
【0034】
塗布し終わった時(揉む前)に毛髪上に存在する泡状物の容量は、全頭を泡状物で覆う観点から、好ましくは200mL以上、より好ましくは250mL以上、更に好ましくは300mL以上であり、また、好ましくは800mL以下、より好ましくは600mL以下である。
【0035】
塗布し終わった時(揉む前)に毛髪上に存在する複素弾性率G*は、液ダレ防止の観点から、好ましくは400Pa以上、より好ましくは450Pa以上、更に好ましくは500Pa以上である。
【0036】
工程(3)において、手を保護する観点から、手袋を装着した手を用いて泡状物を毛髪に塗布することが好ましい。
【0037】
工程(3)の前に、予め毛髪を梳かしておくことが好ましい。これにより、続く工程(4)において、毛髪がからみにくくなるので、混合液が飛び散るおそれを低減させることができる。また、毛髪を梳かした後、従来の染毛剤又は脱色剤組成物の適用で汎用されているブロッキング操作を行う必要はなく、更にはブロッキング操作を行わないことが好ましい。これにより、続く工程(4)以降の操作をスムーズに進めることができる。
【0038】
〔工程(4)〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(4)として、該毛髪上の泡状物を手で揉み、泡状物の複素弾性率G*を工程(2)で吐出された際の3倍以上10倍以下にする工程を有する。この工程(4)により毛髪の生え際に密着する泡状組成物を得ることができる。
【0039】
揉んだ後の泡状物の複素弾性率G*の工程(2)で吐出された際の複素弾性率G*に対する倍率は、毛髪の生え際における泡状物の密着性を向上させる観点から、好ましくは3.1倍以上、より好ましくは3.3倍以上、更に好ましくは3.5倍以上であり、また、好ましくは6倍以下、より好ましくは5倍以下、更に好ましくは4.8倍以下である。
【0040】
具体的な複素弾性率で示すと、揉んだ後の泡状物の複素弾性率G*は、毛髪の生え際における泡状物の密着性を向上させる観点から、好ましくは750Pa以上、より好ましくは900Pa以上、更に好ましくは1200Pa以上であり、また、好ましくは3000Pa以下、より好ましくは2000Pa以下である。
ここで、揉んだ後の泡状物の複素弾性率が前記の範囲に達しない場合、増粘剤を毛髪に塗布することにより、所望の複素弾性率にすることもできる。これにより、泡状物の毛髪への密着性を向上させることができる。
【0041】
毛髪上の泡状物を揉んだ後、毛髪上に存在する泡状物の容量は、全頭を泡状物で覆う観点から、好ましくは200mL以上、より好ましくは250mL以上、更に好ましくは300mL以上であり、また、好ましくは800mL以下、より好ましくは600mL以下、更に好ましくは580mL以下である。
【0042】
毛髪上の泡状物を揉む時間を増やすことで、泡状物の複素弾性率をより上昇させることができる。毛髪上の泡状物を揉む時間は、水を蒸発させ、徐々に複素弾性率を上昇させる観点から、好ましくは2〜10分間、より好ましくは3〜10分間、更に好ましくは5〜10分間である。
【0043】
また、毛髪上の泡状物を揉んだ後、生え際の毛髪を後方に押さえ付けながら撫で付けることで、毛髪の生え際における泡状物の密着性を向上させることができる。生え際の密着性が向上することで、生え際の毛髪の根元から毛先まで染まりムラがなくなり、染毛又は脱色を均一にすることができる。
【0044】
〔工程(5)〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(5)として、工程(4)の後に毛髪上に存在する泡状物を毛髪の生え際の部分に寄せる工程を有することができる。
【0045】
本工程を行うことにより、生え際の毛髪同士がより密着するのと同時に、生え際の毛髪の束が浮いた状態になることをより有効に防ぐことができる。その結果、毛髪の先端から生え際まで均一に染毛又は脱色をすることができる、という本発明の効果を更に高めることができる。
【0046】
〔その他の工程〕
本発明の毛髪の染色又は脱色方法は、工程(4)又は(5)の後、更に3〜60分間放置する工程、毛髪上の泡状物を水で洗い流す工程を有することができる。
【0047】
〔界面活性剤〕
第1剤と第2剤の混合液中には、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤を更に含有させることができる。これら界面活性剤は、第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に配合することができる。
【0048】
<カチオン界面活性剤>
カチオン界面活性剤として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0049】
【化1】
【0050】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は、独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは炭素数8〜36であって、かつ残余が炭素数1〜7である。X-はアニオンを示す。〕
【0051】
ここで炭化水素基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基、脂肪酸アミド基、脂肪酸エステル基が挙げられる。
【0052】
1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つ(好ましくは1つ)が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜30、更には炭素数10〜24、更には炭素数12〜18のアルキル基であることが好ましく、残余が炭素数1〜3、更には炭素数1又は2、更には炭素数1のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、乳酸イオン、サッカリンイオンが挙げられ、なかでも入手の容易性の観点から塩化物イオン及び臭化物イオンが好ましい。
【0054】
カチオン界面活性剤としては、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、臭化モノアルキルトリメチルアンモニウムが好ましく、なかでも塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(ラウリルトリモニウムクロリド)がより好ましい。
【0055】
カチオン界面活性剤は二種以上を併用することもでき、第1剤、第2剤のいずれか一方又は両方に含有させることができる。第1剤と第2剤の混合液中におけるカチオン界面活性剤の含有量は、第1剤と第2剤との混合物の泡立ちと塗布性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0056】
<アニオン界面活性剤>
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、コハク酸アルキル又はコハク酸アルケニルの塩等のカルボン酸界面活性剤;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル界面活性剤;スルホコハク酸塩、イセチオン酸塩、タウリン塩、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸等のスルホン酸界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩等のアミノ酸誘導体型界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、泡立ちの観点から、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩が好ましい。これらの中でも、次の一般式(2)又は(3)で表される化合物がより好ましく、一般式(2)で表される化合物が更に好ましい。
【0058】
5-O-(CH2CH2O)n1-(CH2CH(CH3)O)m1-SO31 (2)
6-O-(CH2CH2O)n2-(CH2CH(CH3)O)m2-COOX2 (3)
【0059】
〔式中、R5及びR6は、各々炭素数8〜25個の炭化水素基であり、n1及びn2は各々平均付加モル数0〜50であり、m1及びm2は各々平均付加モル数0〜50であり、X1及びX2は、各々アルカリ金属又はNH4である。〕
【0060】
一般式(2)及び(3)中のR5及びR6の各々は、好ましくは炭素数10〜24、より好ましくは炭素数12〜22、更に好ましくは12〜18である。また、R5及びR6は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。
【0061】
一般式(2)及び(3)中のn1及びn2の各々は、起泡性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上であり、また、好ましくは45以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0062】
一般式(2)及び(3)中のm1及びm2の各々は、起泡性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは5以下であり、より更に好ましくは0である。
【0063】
一般式(2)及び(3)中のX1及びX2の各々は、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、トリエタノールアミンやアンモニウムが挙げられるが、これらの中でナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムが更に好ましい。なかでも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス硫酸ナトリウム)が好ましい。
【0064】
アニオン界面活性剤は二種以上を併用することもでき、第1剤、第2剤のいずれか一方又は両方に含有させることができる。第1剤と第2剤の混合液中におけるアニオン界面活性剤の含有量は、良好な泡立ちの観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0065】
第1剤と第2剤の混合液中には、毛髪上での複素弾性率を維持させる観点から、カチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。毛髪上の泡状物を手で揉むことにより、泡状物中の液体分が毛髪に吸収されながらせん断される。泡膜中にアニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤が存在すると、その相互作用により微小な析出物が成長する。この析出物が泡のプラトーボーダー等の気液界面に溜まることによって、排液しにくくなり泡の合一が妨げられる。そして、揉むことでせん断力がかかることによって上昇した複素弾性率は、この界面に存在する析出物によって維持されると考えられる。また、揉んでいる際には、気体と液体の界面が大きく増え、水分の蒸散(水分量の減少)によって析出物がより弾性的になっているとも考えられる。アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤を併用する場合に、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤を増量すれば、析出物の容量が増えるため揉んだ後の複素弾性率をより上昇させることができる。特にアニオン界面活性剤を増やすことによる効果が大きい。
【0066】
第1剤と第2剤の混合液中におけるカチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の合計含有量は、良好な泡安定性と泡立ちの観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8.5質量%以下である。
【0067】
第1剤と第2剤の混合液中におけるカチオン界面活性剤に対するアニオン界面活性剤の質量比(アニオン界面活性剤/カチオン界面活性剤)は、良好な泡安定性と泡立ちの観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは15以下である。
【0068】
<両性界面活性剤>
両性界面活性剤としては、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基又はアシル基を有するカルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウム系の界面活性剤が挙げられ、なかでもカルボベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤が好ましい。好ましい両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。両性界面活性剤は二種以上を併用することもでき、第1剤と第2剤の混合液中における含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0069】
<非イオン界面活性剤>
非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。アルキルポリグルコシドとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、更には8〜14、特に9〜11であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。グルコシドの平均縮合度は1〜5、特に1〜2が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が10〜22、特に12〜18であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。なかでもオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜40、特に4〜30であるものが好ましい。アルキルグリセリルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、特に8〜12であるものが好ましく、またこのアルキル基が分岐鎖であるものが好ましい。非イオン界面活性剤は二種以上を併用することもでき、第1剤と第2剤の混合液中における含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0070】
〔カチオン性ポリマー〕
第1剤と第2剤の混合液中には、カチオン性ポリマーを更に含有させることができる。カチオン性ポリマーは、第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に配合することができる。カチオン性ポリマーとしては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸共重合体等のジメチルジアリルアンモニウム塩系共重合体が挙げられる。それらの中でも、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体を含有させることが好ましい。
【0071】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体は、次の一般式(4)又は(5)で表される骨格を有する重合体である。
【0072】
【化2】
【0073】
〔式中、R7及びR8は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基(フェニル基等)、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基又はカルボアルコキシアルキル基を示し、R9及びR10は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を示し、X-は陰イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、リン酸アニオン、硝酸アニオン等)を示す。〕
【0074】
本発明のジアリル4級アンモニウム塩の重合体は、毛髪のツヤ、まとまり及び指通りを向上させる観点から、一般式(4)又は(5)で表される構成単位を、一分子中に好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは95〜100モル%含有することが好ましい。
【0075】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体としては、ジアリル4級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマーが好ましい。
ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸との重合物としては、例えば次の一般式(6)又は(7)で表されるものが好ましい。
【0076】
【化3】
【0077】
〔各式中、R7、R8、R9、R10、X-は前記と同じ意味を示す。x及びyはそれぞれ1〜100の整数を示す。zは150〜8,000の整数を示す。〕
xとyの割合(x:y)は、好ましくは80:20であり、より好ましくは90:10であり、更に好ましくは95:5である。
【0078】
カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、毛髪へ吸着して、洗髪時・すすぎ時に脱落しにくいものとすると共に泡を安定化する観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また泡の良好な吐出性の観点から、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは200,000以下である。
【0079】
ここで、重量平均分子量は、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件にて測定することができる。
移動層:50mM LiBr, 1%CH3COOH/エタノール:水=3:7
カラム:TSK gel α-M(2本直列)
標準物質:ポリエチレングリコール
【0080】
カチオン性ポリマーの電荷密度は、毛髪のツヤ、まとまり及び指通りを向上させる観点から、好ましくは5.0meq/g以上、より好ましくは5.5meq/g以上、更に好ましくは6.1meq/g以上であり、剤の安定性の観点から、好ましくは6.5meq/g以下である。
【0081】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体の具体例としては、マーコート100(Lubrizol社製、ジアリル4級アンモニウムのホモポリマー)、マーコート295、マーコート280(Lubrizol社製、ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマー)が挙げられる。
【0082】
混合液中のカチオン性ポリマーの含有量は、効果の持続性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0083】
〔染料〕
本発明を染色方法として用いる場合、第1剤に酸化染料中間体又は直接染料を含有する。
【0084】
(酸化染料中間体)
酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、オルトクロルパラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、3-メチル-4-アミノフェノール、2-ヒドロキシエチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、4-アミノ-メタクレゾール、オルトアミノフェノール、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0085】
また、カプラーとしては、例えばレゾルシン、2-メチルレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノオルトクレゾール、メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2,6-ジアミノピリジン、2-メチル-5-ヒドロキシエチルアミノフェノール、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、及びこれらの塩等が挙げられる。
【0086】
プレカーサーとカプラーはそれぞれ2種以上を併用してもよく、プレカーサーとカプラーそれぞれの含有量は、第1剤と第2剤の混合液中の0.01〜5質量%、更には0.1〜4質量%が好ましい。
【0087】
(直接染料)
直接染料としては、酸性染料、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。より具体的には、酸性染料としては、青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、酸性橙3等が挙げられ、ニトロ染料としては、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC赤3、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン等が挙げられ、分散染料としては、分散紫1、分散青1、分散黒9等が挙げられ、塩基性染料としては、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄76、塩基性橙31、塩基性赤51等が挙げられる。
【0088】
直接染料は、2種以上を併用してもよく、酸化染料中間体と併用してもよい。またその含有量は、第1剤と第2剤の混合液中の0.001〜5質量%、更には0.01〜3質量%が好ましい。
【0089】
〔油剤〕
第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に、吐出させる混合液の泡を安定化させる観点から、更に油剤を含有させることができる。このような油剤としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素類;ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油等のグリセリド類;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル類;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸類;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、2-オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール類;その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル等が挙げられる。これらのうち、高級アルコール類が好ましく、更にはミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、が好ましい。
【0090】
第1剤と第2剤の混合液における油剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0091】
〔シリコーン〕
第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に、泡状物を毛髪に滑らかになじませるため、また毛髪に高いコンディショニング効果を付与するため、一定範囲内で、更にシリコーンを含有させることもできる。シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、オキサゾリン変性シリコーンエラストマー等、及びこれらを界面活性剤により水中に分散させたエマルションが挙げられる。これらのうち、増粘剤を用いることなく安定に水中に分散可能な点から、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン及びこれらのエマルションが好ましい。
【0092】
第1剤と第2剤の混合液におけるシリコーン類の含有量は、染毛剤の泡立ちを妨げずに、泡を毛髪に滑らかになじませるため、また毛髪に高いコンディショニング効果を付与するため、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、また、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。
【0093】
〔不揮発性親水性溶剤〕
第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に、不揮発性親水性溶剤を更に含有させることができる。これにより、混合液の泡を毛髪に塗布した後、放置している間に、混合液から水分が蒸発して過酸化水素等の刺激性の成分が濃縮されることによる頭皮に対する刺激を軽減することができる。不揮発性親水性溶剤としては、ポリオール類やその低級(炭素数1〜4)アルキルエーテル類等が好ましい。ポリオール類としては、炭素数2〜6のものが好ましく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。ポリオールの低級アルキルエーテル類としては、前掲のポリオールのモノ低級アルキルエーテルやポリ低級アルキルエーテル(例えばジ低級アルキルエーテル)等が挙げられる。なかでもポリオールのモノメチルエーテル又はモノエチルエーテルが好ましく、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。これらは、二種以上を併用することもできる。
【0094】
第1剤と第2剤の混合液中における不揮発性親水性溶剤の含有量は、頭皮刺激を低減する効果と泡質を良好なものとする点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0095】
〔その他任意成分〕
本発明において、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、動植物油脂、天然又は合成の高分子、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0096】
本発明において、アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤との混合比が、質量比で1:4〜4:1であることが好ましく、更には1:3〜2:1、1:2〜1:1が好ましい。
【0097】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0098】
<1> 下記の工程(1)〜(4)を有する、毛髪の染色又は脱色方法。
(1)アルカリ剤を含有する第1剤及び過酸化水素を含有する第2剤を、ノンエアゾールフォーマー容器の容器本体内で混合して、混合液を調製する工程;
(2)該容器本体にノンエアゾールフォーマーを取り付けた後、ノンエアゾールフォーマー容器から、工程(1)で調製した混合液を泡状物として吐出する工程;
(3)該泡状物を、手を用いて毛髪に塗布する工程;
(4)毛髪上の泡状物を手で揉み、該泡状物の複素弾性率G*を工程(2)で吐出された際の3倍以上10倍以下とする工程
【0099】
<2> 工程(2)において吐出された泡状物の複素弾性率G*が、好ましくは250Pa以上、より好ましくは280Pa以上、更に好ましくは310Pa以上であり、また、好ましくは2000Pa以下である、<1>に記載の染色又は脱色方法。
【0100】
<3> 工程(2)において吐出された泡状物の容量が、好ましくは900mL以上、より好ましくは1000mL以上であり、また、好ましくは2000mL以下、より好ましくは1800mL以下、更に好ましくは1500mL以下である、<1>又は<2>に記載の染色又は脱色方法。
【0101】
<4> 工程(4)において手で揉んだ後の泡状物の複素弾性率G*が、好ましくは750Pa以上、より好ましくは900Pa以上、更に好ましくは1200Pa以上であり、また、好ましくは3000Pa以下、より好ましくは2000Pa以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0102】
<5> 工程(4)において手で揉んだ後の泡状物の容量が、好ましくは200mL以上、より好ましくは250mL以上、更に好ましくは300mL以上であり、また、好ましくは800mL以下、より好ましくは600mL以下、更に好ましくは580mL以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0103】
<6> 工程(4)において手で揉んだ後の泡状物の複素弾性率G*が、工程(2)で吐出された際の複素弾性率G*に対し、好ましくは3.1倍以上、より好ましくは3.3倍以上、更に好ましくは3.5倍以上であり、また、好ましくは6倍以下、より好ましくは5倍以下、更に好ましくは4.8倍以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0104】
<7> 工程(1)において調製された混合液の粘度(25℃)が、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上であり、また、好ましくは600mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下、更に好ましくは100mPa・s以下である、<1>〜<6>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0105】
<8> 好ましくは、工程(4)の後に工程(5)として、毛髪上に存在する泡状物を毛髪の生え際の部分に寄せる工程を有する、<1>〜<7>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0106】
<9> 好ましくは、混合液中にカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤を含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0107】
<10> 混合液中におけるカチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の合計含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8.5質量%以下である、<9>に記載の染毛又は脱色方法。
【0108】
<11> 混合液中におけるカチオン界面活性剤に対するアニオン界面活性剤の質量比(アニオン界面活性剤/カチオン界面活性剤)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは15以下である、<9>又は<10>に記載の染色又は脱色方法。
【0109】
<12> 混合液中におけるカチオン界面活性剤の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である、<9>〜<11>のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【0110】
<13> カチオン界面活性剤が、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物である、<9>〜<12>のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【0111】
【化4】
【0112】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は、独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R1、R2、R3及びR4のうち1つ又は2つは炭素数8〜36であって、かつ残余が炭素数1〜7である。X-はアニオンを示す。〕
【0113】
<14> カチオン界面活性剤が、好ましくは塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化ラウリルトリメチルアンモニウムからなる群より選ばれる1種以上である、<13>に記載の染毛又は脱色方法。
【0114】
<15> 混合液中におけるアニオン界面活性剤の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、<9>〜<14>のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【0115】
<16> アニオン界面活性剤が、好ましくは下記一般式(2)又は(3)で表される化合物である、<9>〜<15>のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
5-O-(CH2CH2O)n1-(CH2CH(CH3)O)m1-SO31 (2)
6-O-(CH2CH2O)n2-(CH2CH(CH3)O)m2-COOX2 (3)
〔式中、R5及びR6は、各々炭素数8〜25個の炭化水素基であり、n1及びn2は各々平均付加モル数0〜50であり、m1及びm2は各々平均付加モル数0〜50であり、X1及びX2は、各々アルカリ金属又はNH4である。〕
【0116】
<17> アニオン界面活性剤が、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、<16>に記載の染毛又は脱色方法。
【0117】
<18> 好ましくは、混合液中にカチオン性ポリマーを含有する、<1>〜<17>のいずれかに記載の染毛又は脱色方法。
【0118】
<19> カチオン性ポリマーが、好ましくは次の一般式(4)又は(5)で表される骨格を有する重合体である、<18>に記載の染色又は脱色方法。
【0119】
【化5】
【0120】
〔式中、R7及びR8は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基(フェニル基等)、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基又はカルボアルコキシアルキル基を示し、R9及びR10は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を示し、X-は陰イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、リン酸アニオン、硝酸アニオン等)を示す。〕
【0121】
<20> カチオン性ポリマーの電荷密度が、好ましくは5.0meq/g以上、より好ましくは5.5meq/g以上、更に好ましくは6.1meq/g以上であり、また、好ましくは6.5meq/g以下である、<18>又は<19>に記載の染色又は脱色方法。
【0122】
<21> 混合液中のカチオン性ポリマーの含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である、<18>〜<20>のいずれかに記載の染色又は脱色方法。
【0123】
<22> <1>〜<21>のいずれかに記載の染色又は脱色方法における工程(4)により得られる泡状組成物。
【0124】
<23> <1>〜<21>のいずれかに記載の染色又は脱色方法に用いるための2剤式染毛剤又は脱色剤の使用。
【実施例】
【0125】
実施例1〜6及び比較例1
表1に示す配合組成の第1剤と、表2に示す第2剤(各例共通)を調製し、それぞれ容器に封入し、25℃の部屋で液温を25℃とした。第1剤と第2剤を混合比(質量比)1:1.5で、スクイズフォーマー容器(大和製罐社、容積210mL、メッシュの粗さは混合室150メッシュ、先端200メッシュ、空気導入路の最狭部の開口面積の合計は0.35mm2、ディップチューブの内径はφ1.7mm)内で混合し、泡状に吐出させた。
次いで、以下の方法で各種評価を行い、その結果を表3に示した。
【0126】
<毛髪に対する操作>
操作1(塗布):スクイズフォーマー容器から吐出させた直後の泡状物を手のひらにのせ、手を用いてウィッグ(ビューラックス社製 No.755S;髪の長さ約30cm)に塗布し、これを繰り返すことによって泡状物を髪全体に広げた。泡状物の液体成分が髪に吸収されるため髪に塗布したはじめの泡状物が消えるので、泡状物を髪に残すために同一箇所に3回塗布して合計80gの泡状物を使用した。
操作2(揉み):前記ウィッグ上に塗布した泡状物(80g)をウィッグ上の髪と一緒に、手を用いて3分間揉んだ。
【0127】
<塗布性及び密着性の評価>
〔塗布性の評価〕
操作1の塗布の際における塗布性(塗りやすさ、髪へのなじみやすさ)について評価した。評価は、パネラー4名の目視により以下の判定基準で行い、その平均結果を示した。
3:手グシで簡単に剤を根元までしっかりなじませることができる
2:手では毛量の多い後頭部の根元等、場所によって剤がなじみにくい場合がある
1:手ではなじみが悪く、根元などを塗り残す
【0128】
〔密着性の評価〕
操作2の前(揉む前)の状態、及び操作2の後(揉んだ後)の状態において、ウィッグの生え際の髪を、手を使って泡状物で押さえつけるように撫で付け、生え際の髪の浮き上がり方について評価した。評価は、パネラー4名の目視により以下の判定基準で行い、その平均結果を示した。
3:生え際の髪の束が浮くことなくウィッグに髪が密着
2:生え際の髪の束が浮かないように、5回以上押さえつけて丁寧に撫で付けることを繰り返すことでウィッグに髪が密着
1:生え際の髪の束が浮いている部分があり、髪が密着していない
【0129】
<泡状物の評価(泡状物の容量・複素弾性率)>
下記の3つの段階における泡状物について、泡状物の容量及び複素弾性率を測定した。なお、これら泡状物の評価に際しては、前記塗布性及び密着性の評価とは別個に、前記操作1及び2を行った。
塗布前の泡状物:操作1でスクイズフォーマー容器から吐出させた直後の泡状物(80g)を使用した。
揉む前の泡状物:操作2の前、ウィッグからかきとった泡状物を使用した。
揉んだ後の泡状物:操作2の後、ウィッグからかきとった泡状物を使用した。
【0130】
〔泡状物の容量の測定〕
泡状物のすべてをビーカーに移し取り、その容量を測定した。
【0131】
〔複素弾性率G*の測定〕
レオメーターはアントンパール社製MCR300で、ジオメトリーは直径50mm、ステンレス製パラレルプレートを使用し、測定部温度は30℃に保持した。測定手順としては、スパチュラで泡をレオメーターの台座部分に4.5〜5.5cm3取り、ギャップを2mmに調整し、台座の間から溢れた泡は丁寧に取り除いた後、30秒間保持して泡を測定部温度になじませ、周波数を2Hzに固定して、1×10-3〜1×103%の動的ひずみ掃引評価を行った。得られたデータから、ひずみに対して線形領域となる値をG*とした。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】