(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607667
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】難消化性グルカンを含有する整腸剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/718 20060101AFI20191111BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20191111BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20191111BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20191111BHJP
【FI】
A61K31/718
A61P1/14
A61P1/10
A23L33/21
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-174402(P2014-174402)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-50173(P2016-50173A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】平 井 宏 和
(72)【発明者】
【氏名】濱 口 徳 寿
(72)【発明者】
【氏名】田 口 俊 久
【審査官】
小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−076044(JP,A)
【文献】
栄養学雑誌,1993年,Vol.51, No.1,p.31-37
【文献】
J Apple Glycosci,2006年,Vol.53,p.65-69
【文献】
日本家政学会誌,1993年,Vol.44, No.4,p.245-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A23L 33/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる、整腸剤であって、前記難消化性グルカン処理物が糖質分解酵素処理物、分画処理物または還元処理物である、整腸剤。
【請求項2】
DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物と、薬学的に許容される基材または担体とを混合することを特徴とする、請求項1に記載の整腸剤の製造方法であって、前記難消化性グルカン処理物が糖質分解酵素処理物、分画処理物または還元処理物である、製造方法。
【請求項3】
DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、整腸方法(医療行為を除く)であって、前記難消化性グルカン処理物が糖質分解酵素処理物、分画処理物または還元処理物である、整腸方法。
【請求項4】
DE70〜100の澱粉分解物の加熱縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、便通改善方法(医療行為を除く)であって、前記難消化性グルカン処理物が糖質分解酵素処理物、分画処理物または還元処理物である、便通改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性グルカンを有効成分とする整腸剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の乱れや食生活の欧米化、更にはストレスの増加等に伴い、近年便秘で悩む人が増加している。便秘は、腸内で便が長く滞留するため、腸内の有害細菌の増加、あるいは有害物質の吸収の増加を引き起こし、大腸ガンの原因にもなる。すなわち、腸内環境の改善が、人の健康維持・疾病予防に大きく関わっていることが近年の研究で明らかとなっている。そこで、整腸作用を有する食品や医薬品の摂取により便秘・腸内環境を改善することが提案されている。
【0003】
これまで、便秘を改善するために、種々の便通改善効果を有する化合物あるいは材料が提案されており、例えば、ペクチン、カラギーナン、イヌリン、難消化デキストリン、小麦ふすまなどの食物繊維や、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロースなどのオリゴ糖などが知られている(特許文献1〜4 ) 。しかしながら、これらの物質でも、体質によっては、下痢をしたり、効果が生じなかったりと便通改善効果が十分とはいえない。また、物質によっては農作物から抽出精製することで得られたり製造に特殊な酵素を必要としたりするため、供給安定性や製造コストの点で問題があった。さらに、整腸剤の選択肢を広げる意味でも、新たな整腸剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平07−12294号
【特許文献2】特開2002−51731号
【特許文献3】特開2003−12537号
【特許文献4】特開2009−167172号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新たな整腸剤を提供することを目的とする。
【0006】
本願発明者らは、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンが生体内で整腸作用を有することを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる、整腸剤。
(2)難消化性グルカンが、活性炭の存在下で加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる、(1)に記載の整腸剤。
(3)難消化性グルカンが、100〜300℃で加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる、(1)または(2)に記載の整腸剤。
(4)DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を添加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の整腸剤の製造方法。
(5)DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、整腸方法(医療行為を除く。)。
(6)DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、便通改善方法(医療行為を除く。)。
【0008】
本発明によれば、難消化性グルカンを使用することで、新規な整腸剤を提供できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】I期とII期の「排便日数」の変化量Δ(平均値±標準偏差)を示した図である。
【
図3】I期とII期の「排便回数」の変化量Δ(平均値±標準偏差)を示した図である。
【
図4】I期とII期の「排便量」の変化量Δ(平均値±標準偏差)を示した図である。
【0010】
本発明による整腸剤は、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる整腸剤である。
【0011】
本発明において「難消化性グルカン」は、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味し、DE70〜100の澱粉分解物を、加熱処理により縮合反応させることで得られる糖縮合物として得ることができる。難消化性グルカンは、水溶性食物繊維画分を豊富に有している。
【0012】
難消化性グルカンの原料となる澱粉分解物としては、DEが70〜100である澱粉分解物を使用することができる。澱粉分解物のDEが70を下回ると、分解が不十分であるために得られる難消化性グルカンに澱粉由来の構造が多く残存してしまい、体内酵素により分解され易く容易に吸収されてしまう傾向があり、整腸効果の点で好ましくない。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。澱粉分解物は、DEが75〜100であることが好ましく、80〜100であることがより好ましい。本発明に用いられる「DE70〜100の澱粉分解物」は、DEが所定の範囲を満たす澱粉分解物であればよく、例えば、マルトオリゴ糖、水飴、粉飴、グルコース等が挙げられる。その性状も特に制限はなく、結晶品(無水ぶどう糖結晶、含水ぶどう糖結晶等)、液状品(液状ぶどう糖、水飴等)、非結晶粉末品(粉飴等)のいずれでも良いが、ハンドリングや製造コストを考慮すると液状品を用いることが好ましい。特に、グルコースの精製工程で生じる副産物である「ハイドロール」と呼ばれるグルコースシラップの使用は、リサイクルや原料コスト削減の観点から極めて有利である。
【0013】
本発明において「加熱縮合」は、澱粉分解物を加熱条件下において縮合させることをいい、加熱縮合方法は当業者に周知である。加熱縮合における加熱条件は、縮合反応により水溶性食物繊維が豊富な難消化性グルカン(糖縮合物)が得られれば特に制限はなく、当業者であれば加熱条件を適宜決定することができるが、得られる難消化性グルカン(糖縮合物)の食物繊維含量が70%以上となるように加熱することが好ましく、例えば、100℃〜300℃で1〜180分間、より好ましくは、150℃〜250℃で1〜180分間加熱処理することができる。
【0014】
本発明において「加熱縮合」は、無触媒条件下で行ってもよいが、縮合反応の反応効率の点から触媒存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては糖縮合反応を触媒するものであれば特に制限はないが、無機酸(塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等)、有機酸(クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、酢酸等)、鉱物性物質(珪藻土、活性白土、酸性白土、ベントナイト、カオリナイト、タルク等)および活性炭(水蒸気炭、塩化亜鉛炭、スルホン化活性炭、酸化活性炭)を用いることができる。得られる水溶性食物繊維素材の着色や安全性、更には味・臭いを考慮すると、触媒として活性炭を用いることが好ましい。また、前記各触媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0015】
本発明に用いる難消化性グルカンは、上記手法で得られた糖縮合物をそのまま用いても良く、あるいは、難消化性グルカンの各種処理物を用いても良い。難消化性グルカン処理物としては、例えば、難消化性グルカン酵素処理物、難消化性グルカン分画処理物、難消化性グルカン還元処理物が挙げられる。
【0016】
本発明において「難消化性グルカン酵素処理物」は、糖縮合物を糖質分解酵素で酵素処理して得ることができる。当該処理により難消化性グルカン中の消化性部位を分解することができるため、食物繊維含量を高める事ができる。
【0017】
本発明に用いられる「糖質分解酵素」は、糖質に作用し加水分解反応を触媒する酵素であり、特に制限はないが、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ(アミログルコシダーゼ)、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、α−グルコシダーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−フルクトシダーゼ、セロビアーゼ、ゲンチオビアーゼ等を挙げることができ、前記酵素を単独で用いてもよく、複数の酵素を組み合わせて用いてもよい。難消化性グルカンへの分解作用からα−アミラーゼ、グルコアミラーゼが好ましく、両酵素のいずれかを単独で作用させてもよいが、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼを共に作用させるのが特に好ましい。
【0018】
本発明において「酵素処理」の処理条件は、酵素処理により糖縮合物の易消化性部分が消化される条件であれば特に制限はなく、当業者であれば酵素処理条件を適宜決定することができるが、酵素処理によりグルコース含量が1%以上、より好ましくは2%以上増加するように処理するのが好ましく、例えば、20〜120℃で30分間〜48時間、より好ましくは、50〜100℃で30分間〜48時間酵素処理することができる。
【0019】
本発明において「難消化性グルカン分画処理物」は、難消化性グルカン酵素処理物を二糖以下の画分が15%以下となるように分画処理して得ることができる。言い換えれば「難消化性グルカン分画処理物」は三糖以上の糖類を85%を超えて有するものである。ここで「%」は、固形分に対する質量%を意味する。
【0020】
本発明において「分画処理」は、二糖以下の画分を15%以下にすることができるものであれば特に制限はなく、その分離方法は当業者に周知の手段を利用することができる。
【0021】
前記分画処理は、例えば、膜分離、ゲルろ過クロマトグラフィー、カーボン−セライトカラムクロマトグラフィー、強酸性陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、エタノール沈殿、溶媒沈殿など当業者に周知の糖質の精製方法を使用することができる。
【0022】
前記分画処理は、二糖以下の画分が10%以下となるよう行うのが好ましく、5%以下となることが特に好ましい。
【0023】
本発明において「難消化性グルカン還元処理物」は、難消化性グルカンを還元処理して得ることができる。
【0024】
本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。還元処理方法は当業者に周知であり、例えば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の糖アルコールを調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応とも言われている。
【0025】
本発明における「還元処理」を具体的に説明すると、難消化性グルカンを水に溶解し、そこにラネーニッケル触媒を適量加え、水素ガスを添加し、高温条件下で還元する。次に、脱色・脱イオン処理して、難消化性グルカン還元処理物を得ることができる。
【0026】
本発明において「整腸剤」とは、腸内環境を整えて、下痢や便秘等の症状を改善する製剤を意味する。本発明による整腸剤は、特には、便通改善剤である。
【0027】
本発明による整腸剤は、難消化性グルカンを含有していればよく、難消化性グルカン単独でも、その他の成分と混合したものであっても良い。
【0028】
本発明による整腸剤は、必要に応じて、有効成分である難消化性グルカンに対し薬学的に許容される基材や担体を添加して製剤化することができる。本発明による整腸剤は、例えば、経口投与される製剤であり、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、粉末、顆粒、カプセル剤等の形態で提供することができる。このような製剤化は、通常、医薬の製造に用いられる方法に従って、製造することができる。本発明によれば、本発明による整腸剤を医薬品または医薬部外品として使用することができる。
【0029】
本発明の整腸剤は、また、飲食品に添加して提供することもできる。添加する飲食品の種類に特に制限はなく、例えば、日常的に食する飲食品、健康食品(特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品等)、機能性食品、病者用食品等として提供することができる。その形態としては、飲食物、錠剤、液剤、カプセル(軟カプセル、硬カプセル)、粉末、顆粒、スティック、ゼリーなどが挙げられる。このような飲食品は、通常、食品の製造に用いられる方法に従って、製造することができる。なお、「特定保健用食品」とは、機能等を表示して食品の製造または販売等を行う場合に、保健上の観点から法上の何らかの制限を受けることがある食品をいう。
【0030】
本発明による整腸剤の使用量は、特に制限されず、適宜設定することができる。例えば、難消化性グルカンまたはその処理物が、食物繊維量として、1日あたり1〜30g、好ましくは、3〜10g摂取されるように設定することができる。
【0031】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる、整腸用組成物、特には、便通改善用組成物が提供される。
【0032】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を添加することを特徴とする、整腸剤の製造方法が提供される。
【0033】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、整腸方法が提供される。当該方法からは、医療行為を除いてもよい。
【0034】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を含んでなる飲食物を摂取させることを特徴とする、便通改善方法が提供される。当該方法からは、医療行為を除いてもよい。
【0035】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を用いる、整腸方法が提供される。当該方法からは、医療行為を除いてもよい。
【0036】
本発明によれば、DE70〜100の澱粉分解物を加熱縮合させて得られた糖縮合物からなる難消化性グルカンまたは該難消化性グルカン処理物を用いる、便通改善方法が提供される。当該方法からは、医療行為を除いてもよい。
【実施例】
【0037】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0038】
実施例:難消化性グルカンの整腸作用の確認試験
試験食品
試験食品の処方を表1に示した。
【表1】
【0039】
難消化性グルカンとしては、フィットファイバー#80(日本食品化工社製)を使用した。フィットファイバー#80は、DE87(レーンエイノン法で測定)の澱粉分解物を、特開2013−76044号に記載の方法に従って、活性炭を触媒として加熱縮合させることで得られた糖縮合物である。
【0040】
マルトデキストリンとしては、パインデックス#2(松谷化学工業株式会社製)を使用した。なお、マルトデキストリンは、難消化性グルカンと同等の着色となるように着色料(カラメル)を用いて色調を調整した。
【0041】
試験のデザイン
試験の概略を表2に、試験デザインを
図1に示した。
【表2】
【0042】
なお、試験食品は、摂取期間I期および摂取期間II期(計4週間)に、1日1回、1包を100mL程度の水または湯に溶かして朝食前の空腹時に5分程度で摂取した。摂取後に沈殿があったら、再度水を注いですべて摂取した。
【0043】
検査及び調査
被験者は、試験期間中(前観察期間、摂取期間I期、摂取期間II期:計6週間)、毎日、試験食品摂取の有無(摂取期間のみ)、排便時間、排便回数、排便量、排便時刻、整腸剤・便秘薬を含む医薬品使用の有無、生理の有無、その他胃腸症状中心に体調の変化の有無、生活状況の変化の有無を記録した。
【0044】
評価項目と評価基準は以下の通りとした。
排便日数:1週間あたりの排便があった日数をカウントする。
排便回数:1日あたりの回数を調査する。(排便がなかった日は排便回数を「0」とする)
排便量:鶏卵M1個を目安として、被験者の目測により数値化する。(鶏卵1個で割り切れない場合は、0.5個、1.5個のように記入)
【0045】
被験者は、また、試験期間中(前観察期間、摂取期間I期、摂取期間II期:計6週間)、毎日、食事・間食・禁止食品(乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌などの生菌類含有食品、オリゴ糖・食物繊維を強化した食品、便秘改善によいとされる健康食品類(特定保健用食品を含む)、及び糖アルコール多量含有食品)摂取の有無、アルコール摂取の有無等の摂取内容をすべて記録した。なお、栄養計算は実施しない。
【0046】
有効性に関する解析
排便日数、排便回数、排便量に関し、前観察期、I期、II期について下記手順で比較した。
1)基本統計量(平均値、標準偏差)を算出する。
2)I期とII期の変化量(Δ)について基本統計量(平均値、標準偏差)を算出する。
3)群内比較: I期、II期についてWilcoxon符号付順位検定、対応のあるt検定を実施する。(I期 vs II期)
4)群間比較: 前観察期、I期、II期についてSteel検定、Dunnett検定を実施する。(対照食品群 vs 低用量群、対照食品群 vs 中用量群、対照食品群 vs 高用量群)
【0047】
試験結果
排便日数、排便回数および排便量について解析を行い、I期とII期の変化量をそれぞれ
図2、
図3および
図4に示した。
【0048】
排便日数については、高用量群において、I期(対照食品)と比較してII期で有意に高い値を示した(対応のあるt検定: p = 0.011、Wilcoxon符号付順位検定: p = 0.012)。また、I期とII期の変化量に関して、中用量群、高用量群は、対照食品群と比較して用量依存的な増加傾向を示した(
図2)。
【0049】
排便回数については、高用量群において、I期(対照食品)と比較してII期で有意に高い値を示した(対応のあるt検定: p = 0.024、Wilcoxon符号付順位検定: p = 0.026)。また、I期とII期の変化量に関して、低用量群、中用量群、高用量群は、対照食品群と比較して用量依存的な増加傾向を示した(
図3)。
【0050】
排便量については、高用量群において、I期(対照食品)と比較してII期で有意に高い値を示した(対応のあるt検定: p = 0.026、Wilcoxon符号付順位検定: p = 0.04968)。また、I期とII期の変化量に関して、低用量群、中用量群、高用量群は、対照食品群と比較して増加傾向を示した(
図4)。
【0051】
本試験により、本発明による難消化性グルカンは、排便日数、排便回数、排便量について、I期(対照食品)と比較してII期で有意に高い値を示し、排便日数については対照食品群と比較して用量依存的な増加傾向を示し(中用量群、高用量群)、排便回数については対照食品群と比較して用量依存的な増加傾向を示し(低用量群、中用量群、高用量群)、排便量については対照食品群と比較して増加傾向を示すことし(低用量群、中用量群、高用量群)が確認された。なお、その他の条件が有効性の判定に影響を与えていないことは被験者の記録から確認されている。
【0052】
以上のことから、本発明による難消化性グルカンは整腸作用を有しており、整腸剤として有用であることが示された。