(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の重合体は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む重合体であり、
前記重合体が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)、及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)を有し、
重合体のブラッグ面間隔が27nm以上、50nm以下であり、
前記共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率が90mol%を超える。ここで、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」といい、重合体の材料として記載する場合は「単位」を省略し、単に「〜単量体」と記載する。
【0009】
また、本明細書において、「ビニル芳香族単量体単位を主体とする」とは、ブロック中、所定の単量体単位の含有量が、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは95mol%以上であることをいう。
【0010】
〔重合体の構造〕
本実施形態において、重合体の構造としては、特に限定されないが、例えば、下記の式(i)〜(vi)で表される構造が挙げられる。
(A−B)n ・・・(i)
B−(A−B)n ・・・(ii)
A−(B−A)n ・・・(iii)
A−(B−A)n−X ・・・(iv)
[(A−B)k]m−X ・・・(v)
[(A−B)k−A]m−X ・・・(vi)
(上記式(i)〜(vi)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックを表し、Bは、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロックを表し、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、m、n及びkは、1以上の整数を表し、1〜5の整数であることが好ましい。)
【0011】
水素添加前のブロック共重合体中にブロックA及びBが複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
カップリング剤又は多官能有機リチウム等の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しない又はXが重合開始剤の残基である非カップリング体との混合物であってもよい。
なお、各ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位との共重合体ブロックが存在してもよい。
【0012】
本実施形態において、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。これらが複数個共存しても良い。ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック中には、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存してもよい。
共重合体ブロック(B)の重合開始直後の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS1、導入した単量体の半分が重合した時点での共重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS2、導入した単量体の全量が重合した時の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量をS3とした場合、アスファルトと相溶性の点で、S2/S1>1且つS3/S2>1 の関係が成り立つ構造がより好ましい。
【0013】
アスファルトに添加する低いポリマー添加量やアスファルト組成物の引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、カップリング構造では無く、逐次重合により直鎖構造が好ましい。その中でもA−B−A構造が好ましい。
また、カップリング構造については、アスファルト組成物の低い粘度の点から、直鎖構造が好ましく、アスファルト組成物の高軟化点の点からラジアル構造が好ましい。さらに、ラジアル構造としては、3分岐、もしくは4分岐構造が好ましく、3分岐と4分岐構造を共に有することがより好ましい。また、3分岐構造と4分岐構造の比率は、3分岐/4分岐が5/95〜95/5であり、高軟化点の点から3分岐/4分岐が90/10以下が好ましく、75/25以下がより好ましく、60/40以下がよりさらに好ましく、40/60以下が最も好ましい。また、低粘度の点から3分岐/4分岐が10/90以上が好ましく、25/75以上がより好ましく、50/50以上がよりさらに好ましく、70/30以上が最も好ましい。
【0014】
本実施形態で用いる重合体の、X線小角散乱(SAXS)解析から得られる一次ピークから計算されるブラッグ面間隔が、アスファルト組成物の高い引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、27nm以上であり、28nm以上が好ましく、29nm以上がさらに好ましく、30nm以上が最も好ましい。
また、加工性の点で50nm以下であり、48nm以下が好ましく、46nm以下がさらに好ましく、45nm以下が最も好ましい。
また、アスファルトとの高い相容性の点で38.5nm以下が好ましく、38.0nm以下がより好ましく、37.5nm以下がさらに好ましく、37nm以下が最も好ましい。
なお、重合体のブラッグ面間隔は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
また、ブラッグ面間隔の値は共重合体ブロック(B)の重合において、撹拌動力を重合槽中の反応溶液量で除した比エネルギーと共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体の添加回数もしくは添加時間を制御することにより、27nm以上、50nm以下に調整することができる。
【0015】
具体的には、比エネルギーの値は0.1kw/m
3〜0.4kw/m
3の範囲内で、かつ添加回数を3回以上にする、もしくは添加時間を10〜70分間にすることで、27nm以上、38.5nm以下に調整することができ、比エネルギーの値を0.1kw/m
3〜0.5kw/m
3の範囲内で、かつ添加回数を3回以上にする、もしくは添加時間を10〜70分間にすることで、27nm以上、50nm以下に調整することができる。
比エネルギーを高くすることでブラッグ面間隔は大きくなる傾向にある。
【0016】
ブラッグ面間隔は後述する実施例記載の方法によって測定することができる。
本実施形態において、重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、アスファルト組成物の分離安定性、耐熱老化性、引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、20質量%以上が好ましい。33質量%以上がより好ましく、37質量%以上さらに好ましく、40質量%以上が最も好ましい。また、アスファルト組成物の分離安定性、柔軟性、引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、60質量%以下が好ましい。55質量%がより好ましく、48質量%以下がさらに好ましく、45質量%以下が最も好ましい。
なお、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0017】
本実施形態において、重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とするブロック(A)の含有量は、引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、10質量%以上が好ましい。13質量%以上がより好ましく、16質量%以上がさらに好ましく、17質量%以上が最も好ましい。また、アスファルト組成物の高い柔軟性や耐骨材剥離性の点で、40質量%以下が好ましい。35質量%以下がより好ましく、29質量%以下がさらに好ましく、22質量%以下が最も好ましい。
なお、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量は後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0018】
本実施形態において、重合体中の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位含有量は、アスファルト組成物の分離安定性、耐熱老化性、引張後の回復性の点で、10質量%以上が好ましい。20質量%以上がより好ましく、25質量%以上、さらに好ましい。また、アスファルトに添加するポリマーの低い添加量、アスファルト組成物の分離安定性、アスファルト組成物や重合体の柔軟性、耐候性、耐骨材剥離性の点で、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
なお、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位含有量(RS)は、重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)から、上記ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)を除して求める。
具体的には、RS(%)=(TS−BS)/(100−BS)×100
【0019】
本実施形態における共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は50質量%以上であることが好ましい。重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が上記範囲内にあることにより、重合体とアスファルトとの相溶性が高く、アスファルト組成物の引張後の回復性、耐熱老化性、耐骨材剥性が向上する。70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。上限は特に制限はないが100質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることが好ましい。
ここで短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分とは、重合体ブロック(B)中の2〜6個のビニル芳香族単量体単位からなる成分である。そして、短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を100質量%とし、その中で2〜6個繋がったビニル芳香族単量体単位の含有量として求められる。
【0020】
また、2個繋がったビニル芳香族単量体単位の比率が、好ましくは10質量%以上、45質量%以下であり、さらに好ましくは13質量%以上、42質量%以下であり、よりさらに好ましくは19質量%以上、36質量%以下である。
また、3個繋がったビニル芳香族単量体単位の比率が、好ましくは45質量%以上、80質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上、75質量%以下であり、よりさらに好ましくは45質量%以上、65質量%以下である。
【0021】
共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、例えば、共重合体ブロック(B)を重合する際の共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体の添加時間と、反応器内温等で制御することができる。添加回数と添加時間と反応器内温のいずれか又は組み合わせによって制御できる。添加回数は増やすと短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が増加する傾向にあり、2回以上とすることが好ましい。
添加時間は長くすると短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が増加する傾向にあり、20分以上80分以下とすることが好ましい。反応器内温は高くすると短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が増加する傾向にあり、56℃〜90℃が好ましい。
【0022】
本実施形態で用いる重合体は、得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないことが好ましい。ここで、「−20〜80℃の範囲に共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において共重合体ブロック(B)の結晶化に起因するピークが現れないか、または、結晶化に起因するピークが認められるが、その結晶化による結晶化ピーク熱量が好ましくは3J/g未満であり、より好ましくは2J/g未満であり、さらに好ましくは1J/g未満であり、よりさらに好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて−20〜80℃の範囲に共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない重合体は、アスファルト組成物にした場合、特に高温貯蔵安定性と伸度が良好である。上記のような−20〜80℃の範囲に共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない重合体は、ビニル結合量調整剤や、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム重合性を調整するための、調整剤を用いて重合反応を行うことによって得られるベース非水添重合体を水添することによって得られる。
結晶化ピーク温度及び結晶化ピーク熱量は、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0023】
本実施形態で用いる重合体中の共役ジエン単量体単位に含まれる二重結合量の水素添加率は、アスファルトに添加する低いポリマー添加量、引張後の回復性、貯蔵時の高い耐熱老化性、耐骨材剥離性の点で、水素添加前の全二重結合量に対して、90mol%を超えることが必須である。93mol%以上が好ましく、95mol%以上がより好ましく、97mol%以上がさらに好ましい。
また、特に制限はないが100mol%以下が好ましい。さらに、粘度の点からは、98mol%以下が好ましく、96mol%以下がより好ましく、93mol%以下がさらに好ましい。なお、本明細書中、共役ジエン単量体単位は、水添前後に係らず「共役ジエン単量体単位」と称する。
二重結合量の水素添加率は、後述する水添工程における水素添加量や水添反応時間を制御することにより調整することができる。また、水素添加率は後述する実施例記載の方法で求めることができる。
【0024】
水素添加前の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量は、好ましくは15mol%以上50mol%以下であり、より好ましくは18mol%以上40mol%以下であり、さらに好ましくは21mol%以上32mol%以下であり、24mol%以上30mol%以下が最も好ましい。水素添加前の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量が15mol%以上であることにより、アスファルトに添加するポリマー添加量が低くなる傾向にある。また、50mol%以下であることにより、耐熱老化性や耐候性が高くなる傾向にある。ここで、「ビニル含有量」とは、水素添加前の共役ジエンの1,2−結合、3,4−結合、及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総mol量に対し、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の割合とする。なお、ビニル含有量は、NMRにより測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。共役ジエン単量体単位を主体とするブロック中のビニル含有量の分布は限定されない。
【0025】
本実施形態において、重合体のメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kgf)は、製造性の点で、0g/10分以上が好ましい。0.05g/10分以上がより好ましく、0.10g/10分以上がさらに好ましく、0.20g/10分以上が最も好ましい。また、アスファルト組成物の引張後の回復性、耐骨材剥製性の点で、5g/10分以下が好ましい。2g/10分以下がより好ましく、1g/10分以下がさらに好ましい。
本実施形態において、重合体の本実施形態において、重合体の重量平均分子量(Mw)は、アスファルト組成物の引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、5万以上が好ましい。10万以上がより好ましく、15万以上がさらに好ましく、17万以上が最も好ましい。また、製造性の点で、32万以下が好ましく、28万以下がより好ましく、26万以下がさらに好ましく、25万以下が最も好ましい。
【0026】
本実施形態において、重合体の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、アスファルトに添加する低いポリマー添加量の点で、1.03以上が好ましい。1.05以上がより好ましく、1.11以上がさらに好ましく、1.20以上が最も好ましい。また、製造性やアスファルトに添加する低いポリマー添加量の点で、2.0以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.3以下が最も好ましい。
重合体の重量平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例記載の方法により求めることができる。
本実施形態において、重合体の粘弾性測定から得られる0℃以下のtanδピーク高さは、耐骨材剥離性の点で、0.7以上が好ましい。0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましく、1.0以上が最も好ましい。また、0℃以下のtanδピーク高さは、骨材剥離性の点で、2.0以下が好ましい。1.6以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0027】
また、上記重合体のtanδピーク温度は、アスファルトとの高い相容性の点で、-70℃以上が好ましい。-50℃以上がより好ましく、-40℃以上がさらに好ましい。また、重合体のtanδピーク温度は、アスファルト組成物の柔軟性、引張後の回復性、耐骨材剥製性の点で、0℃以下が好ましい。-10℃以下がより好ましく、-15℃以下がさらに好ましい。
上記、tanδピーク高さや温度は、後述する実施例記載の方法により求めることができる。
【0028】
共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位の含有量の比率を制御することにより、−70〜0℃の範囲にtanδのピークトップを有するようにすることができる。ビニル芳香族単量体単位の比率を上げるとtanδのピークトップは高温側に有する傾向にあり、ビニル芳香族単量体単位の比率を下げるとtanδのピークトップは低温側に有する傾向にある。
【0029】
また、共重合体ブロック(B)の重合において温度と各単量体の添加時間もしくは添加回数を制御することにより、ピークトップの値を0.7以上2.0以下に調整することができる。具体的には、反応器内温を56〜90℃の範囲内で、反応器内圧を0.1MPa〜0.50MPaの範囲内で、かつ一定速度で添加する共役ジエン単量体とスチレン単量体の添加時間を10〜60分の範囲内もしくは、添加回数を3回以上にする。また、別の方法として、水添反応時の温度にも依存する傾向があり、上記いずれかの方法に加えて水添反応時の温度を80℃以上120℃以下にするとピークトップの値を0.7以上2.0以下に近づく傾向がある。
【0030】
〔重合体の形態〕
アスファルトと混合する前の本実施形態の重合体の嵩密度は、アスファルトに添加する低いポリマー添加量、アスファルトへの高い溶解性、高い作業性、輸送コスト等の点で、0.05g/mL以上が好ましい。0.10g/mL以上がより好ましく、0.17g/mL以上がさらに好ましく、0.25g/mL以上が最も好ましい。また、アスファルトに添加する低いポリマー添加量、アスファルトへの高い溶解性の点で、0.45g/mL以下が好ましい。0.38g/mL以下がより好ましく、0.35g/mL以下がさらに好ましく、0.30g/mL以下が最も好ましい。
アスファルトと混合する前の本実施形態の重合体の比表面積は、アスファルトに添加する低いポリマー添加量、アスファルトへの高い溶解性の点で、0.10m
2/g以上が好ましい。0.20m
2/g以上がより好ましく、0.30m
2/g以上がさらに好ましく、0.41m
2/g以上が最も好ましい。また、アスファルトに添加する低いポリマー添加量、アスファルトへの高い溶解性、高い作業性、輸送コスト等の点で、0.55m
2/g以下が好ましい。0.52m
2/g以下がより好ましく、0.50m
2/g以下がさらに好ましく、0.48m
2/g以下が最も好ましい。
【0031】
〔重合体の製造方法〕
本実施形態で用いる重合体は、炭化水素溶媒中、リチウム化合物を重合開始剤として、少なくとも共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体を重合させて重合体を得る重合工程、得られた重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合に水素添加する水素添加工程、重合体を含む溶液の溶媒を脱溶剤する脱溶剤工程を順次行い、製造することができる。
(重合工程)
重合工程においては、炭化水素溶媒中、リチウム化合物を重合開始剤として、少なくとも共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体を含む単量体を重合させて重合体を得る。
【0032】
(炭化水素溶媒)
重合工程において用いる炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
(重合開始剤)
重合工程において重合開始剤として用いるリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等の分子中に一個以上のリチウム原子を結合した化合物が挙げられる。このような有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(重合に用いる単量体)
共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の1対の共役二重結合を有するジオレフィンが挙げられる。このなかでも、経済性の点で、好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、機械強度の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル芳香族単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。このなかでも経済性の観点から、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体の他、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体と共重合可能な他の単量体を用いることもできる。
重合工程においては、重合速度の調整、重合した共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、及びビニルの比率)の調整、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体との反応比率の調整等を目的として、所定の極性化合物やランダム化剤を使用することができる。
【0036】
極性化合物やランダム化剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
重合工程で実施する重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用できる。公知の方法としては、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0037】
(失活工程)
失活工程により重合体の活性末端を失活することが好ましい。重合体の活性末端を失活する方法は、活性末端と活性水素を有する化合物と反応させることで達成できる。活性水素を有する化合物は特に限定されないが、経済性の点で、アルコールや水が好ましい。
【0038】
(水素添加工程)
水素添加工程は、重合工程で得られた重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部に水素添加反応する工程である。水素添加反応に使用される触媒としては、特に限定されないが、例えば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co、Fe、Cr等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機Al等の還元剤とを用いるいわゆるチーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物等のいわゆる有機錯触媒、或いはチタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒が挙げられる。このなかでも、経済性、重合体の耐熱老化性あるいは耐候性の観点で、チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒系が好ましい。
【0039】
水添方法としては、特に限定されないが、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報に記載された方法や、好ましくは特公昭63−4841号公報及び特公昭63−5401号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して水添ブロック共重合体溶液を得ることができる。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
水添反応は、特に限定するものではないが、高い水添活性の観点で、上述する重合体の活性末端を失活する工程後に行うことが好ましい。
【0040】
水素添加工程において、ビニル芳香族単量体単位の共役結合が水素添加されてもよい。全ビニル芳香族単量体単位中の共役結合の水素添加率は、好ましくは30mol%以下であり、より好ましくは10mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。また、全ビニル芳香族単量体中の共役結合の水素添加率の下限は、特に限定されないが、0mol%である。全ビニル芳香族単量体中の共役結合の水素添加率が上記範囲内であることにより、アスファルトに添加するポリマー添加量低く、あるいはアスファルトとの相容性が高くなる傾向にある。
【0041】
(脱溶剤工程)
脱溶剤工程は、重合体を含む溶液の溶媒を脱溶剤する工程である。脱溶剤方法としては、特に限定されないが、スチームストリッピング法や直接脱溶媒法が挙げられる。
脱溶剤工程により得られる重合体中の残存溶媒量は、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、さらにより好ましくは0.01質量%以下である。また、重合体中の残存溶媒量の下限は、特に限定されないが、少ない方が好ましく、より好ましくは0質量%であるが、脱溶剤時の経済性の点で、通常、0.01質量%以上0.1質量%範囲である。
【0042】
重合体の耐熱老化性やゲル化の抑制の観点で、酸化防止剤を添加することが好ましい。 酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル補捉剤等のフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等のリン系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤が挙げられる。また、両性能を併せ持つ酸化防止剤を使用してもよい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。このなかでも、重合体やアスファルト組成物の耐熱老化性やゲル化の抑制の観点で、フェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。
その他、重合体の着色防止や機械強度向上の観点から、脱溶剤工程の前に、重合体中の金属を除去する脱灰工程や、ポリマーのpHを調整する中和工程、例えば、酸の添加や炭酸ガスの添加を行ってもよい。
【0043】
〔アスファルト組成物〕
<アスファルト>
本実施形態で用いることができるアスファルトとしては、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、または天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したもの等が挙げられる。その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的には、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。これらは混合して使用しても良い。
好適なアスファルトとして、針入度(JIS−K2207によって測定)が好ましくは30以上300以下であり、より好ましくは40以上200以下であり、さらに好ましくは45以上150以下であるストレートアスファルトが挙げられる。
【0044】
<アスファルト組成物>
本実施形態のアスファルト組成物において、重合体の配合割合は、アスファルト100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であるが、経済性の点で少ない方が好ましい。重合体の配合割合はアスファルト100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である。
本実施形態において、必要に応じて任意の石油樹脂を配合することができる。石油樹脂の種類としては、特に制限はないが、C5系石油樹脂等の脂肪族系石油樹脂、C9系石油樹脂等の芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の脂環族系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂などの石油樹脂、並びにこれら石油樹脂を水添して得られる水添石油樹脂が使用できる。石油樹脂の量に関しては特に制限はないが、アスファルト100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上6質量部以下である。
【0045】
本実施形態において、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、ガラス繊維などの無機充填剤、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。添加剤の量に関しては特に制限はなく、適宜選択することができるが、アスファルト100質量部に対して、通常、50質量部以下である。
【0046】
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法に関しては、特に限定はない。また、重合体及びアスファルトの混合物を攪拌する際の条件に関しても特に制限はないが、160℃以上200℃以下(通常は、180℃前後)の温度で行うことができる。撹拌時間は通常30分〜6時間であるが、経済性の点で短い方が良い。攪拌速度は、用いる装置により適時選択すればよいが、通常、100ppm以上8,000rpm以下である。
アスファルト組成物には、本実施形態の重合体以外に、その他のポリマーとしては、特に 限定されないが、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、アタクチックポリプロピレン、非晶性ポリアルファオレフィン等のオレフィン系ポリマーやポリプロピレンとエチレン・プロピレン共重合体のブレンド、ポリプロピレンとエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体のブレンド、エチレン等の共重合体であるオレフィン系熱可塑性エラストマー等を併用しても良い。
【0047】
高い耐熱老化性や軟化点の点で、オレフィン系ポリマーと併用することが好ましい。その中でも少なくともプロピレン単位を有するオレフィン系ポリマーが好ましい。添加量としては、本実施形態の重合体100質量部に対して、5〜40質量部入れることが好ましい。
その他のブロック共重合体としては、ブロック共重合体(a)が少なくとも一つのビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)、及び少なくとも一つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(C)からなるブロック共重合体(a)が好ましい。ブロック共重合体(a)は特に限定されないが、例えば、SIS、SBS、SEBS、SEPSが好ましい。この中でも低温伸度の観点からSBSが好ましい。
【0048】
「共役ジエン単量体単位を主体とする」とは、重合体ブロック中に共役ジエン単量体単位を、90質量%を超えて含み、好ましくは95質量%以上含むことをいう。上限は特に制限はないが、100質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることが好ましい。
良好な低温伸度の点から、本実施形態の重合体とブロック共重合体(a)の合計量中ブロック共重合体(a)の配合比は15〜85質量%の範囲である。また、良好な低温性能、低粘度の点からブロック共重合体(a)の配合量は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、65質量%以上がよりさらに好ましく、75質量%以上が最も好ましい。また、高軟化点、引っ張り後の回復性の点から、ブロック共重合体(a)の配合量は75質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、45質量%以下がよりさらに好ましく、35質量%以下が最も好ましい。
【0049】
また、ブロック共重合体(a)の構造に関しては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の式(i)〜(vi)で表される構造が挙げられる。
(A−B)n ・・・(i)
B−(A−B)n ・・・(ii)
A−(B−A)n ・・・(iii)
A−(B−A)n−X ・・・(iv)
[(A−B)k]m−X ・・・(v)
[(A−B)k−A]m−X ・・・(vi)
(上記式(i)〜(vi)中、Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックを表し、Bは、共役ジエン単量体単位を主体とするブロックを表し、Xは、カップリング剤の残基又は多官能有機リチウム等の重合開始剤の残基を表し、m、n及びkは、1以上の整数を表し、1〜5の整数であることが好ましい。)
【0050】
前記カップリング剤又は多官能有機リチウム等の重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、エポキシ系化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等が挙げられる。
本実施形態の重合体は、Xがカップリング剤の残基であるカップリング体と、Xを有しない又はXが重合開始剤の残基である非カップリング体との混合物であってもよい。
【0051】
また、ここで言うブロック共重合体(a)とは、スチレン含有量が20〜50質量%、ビニル結合量が8〜60質量%、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10〜50万であることが好ましい。
さらに、アスファルト組成物の高軟化点、引っ張り後の高回復性の点から、mが2以上の上記式(v)、(vi)がより好ましい。
また、アスファルト組成物の高軟化点、アスファルト組成物の骨材への耐付着性、アスファルト混合物の高い耐流動わだち掘れ性、高い摩耗性を改善する必要がある場合には、本実施形態の重合体に官能基を付与することが好ましい。官能基を付与するための変性方法としては、例えば、重合体のリビング末端に、官能基含有原子団を生成する変性剤を付加反応させる方法が挙げられる。
【0052】
官能基に含有される元素としては、特に酸素、窒素、リン、硫黄、スズ、ケイ素が好ましい。
官能基は特に水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
なお変性反応により、分岐構造を与える場合は上述のカップリング剤としての機能も果たす。
また、さらに耐流動わだち掘れ性の点で、窒素を含む官能基を有することが好ましい。官能基が一分子中に2〜4mol%含有することがより好ましい。さらに窒素を含む官能基および酸素を有する官能基を共に含有することが好ましい。
【0053】
前記変性剤の一例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、γ−カプロラクトン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0054】
上記の変性剤の使用量は、重合体のリビング末端1当量に対して、0.5〜5当量で使用することが推奨される。
また、低粘度と高軟化点のバランスの点から、官能基を含有するラジアル型の重合体がより好ましい。
【0055】
本実施形態の重合体やその他のポリマーのアスファルトへの高い溶解性、アスファルト組成物の骨材への耐付着性、アスファルト混合物の高い耐流動わだち掘れ性、高い耐摩耗を改善する必要がある場合には、架橋することが好ましい。
架橋剤として、硫黄・硫黄化合物系、リン系、有機過酸化物系、エポキシ系、イソシアネート系、樹脂系、アミン系、金属キレート系、チウラム等が挙げられる。
これらの中から、1種でも良いし、2種以上を用いても良い。同じ系の中から、2種以上を用いても良い。
【0056】
硫黄・硫黄化合物系としては、元素硫黄、塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4,4′−ジチオジモルホリン、チオアセトアミド等が使用できる。
リン系としては、無水リン酸(P2O5)、ポリリン酸、オキシ三塩化リン(POCl3) 、三塩化リン(PCl3)又は五硫化リン(P2S5)等が使用できる。
【0057】
有機過酸化物系としては、第三ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(第三ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、第三ブチルペルオキシイソブチレート等が使用できる。
【0058】
エポキシ系としては、エチレン・ノルマルブチルアクリレート・グリシジルメタクリレート(メタクリル酸グリシジル)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が使用できる。
イソシアネート系としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が使用できる。
【0059】
樹脂系としては、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が使用できる。
アミン系としては、ヘキサメチレン・ジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、ヘキサメチレンジアミン・カルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、4,4−メチレンビス(2−クロロアニリン)等が使用できる。
金属キレート系としては、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸マグネシウム等が使用できる。
この中で、上記の効果が大きく、経済性の点で、硫黄・硫黄系化合物、ポリリン酸が好ましい。
【0060】
本実施形態のアスファルト組成物中の架橋剤量は、本実施形態の重合体やその他のポリマーのアスファルトへの高い溶解性、アスファルト組成物の骨材への耐付着性、アスファルト混合物の高い耐流動わだち掘れ性、高い耐摩耗の点で、0.03質量%以上が好ましい。0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。一方、製造中に有毒ガスの発生を抑制や経済性の点で、3質量%以下が好ましい。1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下が最も好ましい。
さらに、アスファルト組成物の骨材への高い耐付着性、高い耐流動わだち掘れ性、高い摩耗性の点で、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンをカップリング剤に用いたラジアル構造の重合体と硫黄・硫黄系化合物、またはポリリン酸の組み合わせが好ましい。
【0061】
本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用、ルーフィング・防水シート用、シーラントの分野で利用でき、特に道路舗装用の分野で好適に利用できる。この中でも道路舗装用が好適である。
本発明のアスファルト組成物は、適宜の骨材と混合することにより道路舗装用混合物とすることができる。混合する温度は、90℃〜200℃が好ましく、90℃以下では、骨材とアスファルト組成物とを均一に混合することが難しく、200℃を超えるとアスファルト組成物が分解或いは架橋する恐れがあり好ましくない。本発明の道路舗装用混合物は、一般の舗装用混合物と同様に舗装用混合物製造所で製造することができ、使用する混合撹拌ミキサーとしては、連続型のものでも、バッチ型のものでもいずれも使用できる。 混合方法は、まず、90℃〜200℃に加熱された骨材をミキサーに投入し、20秒〜30秒空練りした後に、骨材と同じ温度に加熱した本発明のアスファルト組成物を投入し、40〜60秒間混合するだけで良好な混合物を製造することができる。
【0062】
使用する骨材としては、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に準ずるものが適用できることはいうまでもないが、それ以外の各種低品位骨材や再生骨材など材質などに関わりなく本発明に供することができる。例えば、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等の他にこれらに類似する粒状材料で、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材、繊維等も使用できる。
骨材は、一般に、粗骨材、細骨材、及びフィラーに大別され、粗骨材とは2.36mmふるいに留まる骨材であって、一般には粒径範囲2.5〜5mmの7号砕石、粒径範囲5〜13mmの6号砕石、粒径範囲13〜20mmの5号砕石、更には、粒径範囲20〜30mmの4号砕石などの種類があるが、本発明においてはこれら種々の粒径範囲の粗骨材の1種または2種以上を混合した骨材、或いは、合成された骨材などを使用することができる。これらの粗骨材には、骨材に対して0.3〜1重量%程度のストレートアスファルトを被覆しておいても良い。
【0063】
本発明で使用する細骨材とは、2.36mmふるいを通過し、かつ、0.075mmふるいに止まる骨材をいい、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂などが挙げられる。
また、フィラーとは、0.075mmふるいを通過するものであって、例えば、スクリーニングスのフィラー分、石粉、消石灰、セメント、焼却炉灰、クレー、タルク、フライアッシュ、カーボンブラックなどであるが、このほか、ゴム粉粒、コルク粉粒、木質粉粒、樹脂粉粒、繊維粉粒、パルプ、人工骨材等であっても、0.075mmふるいを通過するものであれば、フィラーとして使用することができる。
【0064】
道路舗装混合物として調合する場合の骨材粒度やアスファルト組成物量は、例えば、「アスファルト舗装要綱」、社団法人日本道路協会、平成4年12月発行、第92頁に記載された「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」に準じて決めればよい。
中でも、例えばアスファルト組成物2〜15質量%、骨材85〜98質量%からなる道路舗装用混合物が好ましい。
本実施形態の重合体は、アスファルト防水シート用組成物にも好適に使用できる。
本実施形態の重合体を用いることによって、アスファルト防水シートの疲労破断抵抗性、耐候性、低温での耐ひび割れ性、高温での耐ズレや耐垂れ性、荷重抵抗性をより、改善することができる。
【0065】
実施形態の重合体の添加量としては、高い柔軟性、より低温での耐ひび割れ性、より高温での耐ズレや耐垂れ性、高い疲労屈曲性、耐候性の点で、道路用組成物よりも多く、アスファルトと重合体の合計100質量%に対して、重合体の割合が5質量%以上が好ましい。7質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましい。一方、組成物の製造性や経済性の点で、20質量%以下が好ましい。17質量%以下がより好ましく、14質量%以下がさらに好ましい。
【0066】
アスファルト防水シート用組成物には、本実施形態の重合体以外に、必要に応じて、種々のポリマー、粘着付与剤、軟化剤、酸化防止剤、耐候剤、無機充填剤、滑材、離型剤、架橋剤を用いて良い。
アスファルト防水シートを常温で施工される場合には、高い低温使用性、アスファルト防水シート用組成物の低い粘度、高い施工性が必要な場合には、針入度が高めのアスファルトを用いることが好ましい。針入度80以上のアスファルトが好ましい。100以上がより好ましく、130以上がさらに好ましく、160以上が最も好ましい。
【0067】
アスファルト防水シートをトーチ工法等の高温で施工される場合には、アスファルト防水シート用組成物の粘度が低くなり過ぎないように、常温で施工される場合よりも、低めの針入度、30以上150以下が好ましい。60以上120以下がより好ましく、80以上100以下が好ましい。
アスファルト防水シートの高い低温使用性、アスファルト防水シート用組成物の低い粘度、高い施工性が必要な場合には、軟化剤を添加することが好ましい。効果の大きさの点で、オイルが好ましい。プロセスオイルがより好ましい。
また、必要に応じて無機充填剤を使用しても良い。
アスファルト防水シートの施工方法としては、熱工法、トーチ工法、自着工法、複合工法が挙げられる。実施形態の重合体を用いたアスファルト防水シート用組成物は、高い耐熱老化性を有するため、熱工法やトーチ工法にも好適に使用できる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における重合体及びアスファルト組成物に関する測定方法は、以下のとおりである。
<重合体中のビニル芳香族単量体単位の含有量(スチレン含有量)>
一定量の重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて、ビニル芳香族化合物(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0069】
<重合体中の重合体ブロック(A)の含有量>
水添前の重合体を使用し、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,p.429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125mL第3級ブタノール溶液を用いた。
【0070】
<重合体中のビニル含有量と水素添加率>
部分水添ブロック共重合体中のビニル含有量及び共役ジエン中の不飽和基の水素添加率を、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
水添反応後の反応液に、大量のメタノール中に沈澱させることで、部分水添ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、部分水添ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H−NMR測定のサンプルとして用いた。1H−NMR測定の条件を以下に記す。なお、ビニル結合量、水素添加率は、いずれも、水添反応後の重合体サンプルを用いて測定した。
【0071】
(測定条件)
測定機器 :JNM−LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0072】
<重量平均分子量、分子量分布>
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、温度35℃で測定した。クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)と数平均分子量の比から分子量分布を求めた。
【0073】
<短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量(短連鎖スチレン含有量)>
重合体のジクロロメタン溶液に(O3)濃度1.5%の酸素を150mL/分で通過させて酸化分解し、得られたオゾニドを、水素化アルミニウムリチウムを混合したジエチルエーテル中に滴下して還元した。つぎに、純水を滴下して加水分解し、炭酸カリウムを添加し塩析、濾過を行うことによりビニル芳香族炭化水素成分を得た。このビニル芳香族炭化水素成分をGPCにより測定した。ここで得られたピークの面積比(短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分に相当するピーク面積/ピークの総面積)を算出することにより重合体中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が得られた。なお、オゾン発生機は日本オゾン(株)製OT−31R−2型を用い、GPC測定は、ウォーターズ製の2487を用い、クロロホルムを溶媒とし、流量1.0mL/分、カラムオーブン35℃で、カラムはShodexカラム−K803Lを2本接続して測定を行った。
【0074】
<tanδ(損失正接)ピーク高さ、温度>
tanδ(損失正接)ピーク高さ、温度は、粘弾性測定解析装置ARES(ティー・エイ・インスルメント・ジャパン株式会社製、商品名)を用い、粘弾性スペクトルを測定することにより求めた。捻じりタイプのジオメトリーに、測定用資料をセットし、ひずみ0.5%、測定周波数は1Hzで測定した。
【0075】
<ブラッグ面間隔>
ナノスケールX線構造評価装置NANO−Viewer[装置は、リガク製]とPILATUS100K(2次元半導体検出器)を用いて測定した。PILATUS100Kにより得られた2次元SAXSパターンについて、バックグラウンド、空セル散乱補正を施した後、円環平均を取ることで1次元散乱プロフィールを求めた。1次元散乱プロフィールからミクロ相分離構造由来の散乱1次ピーク位置(2θm)を読み取り、ブラッグの式(1)によりドメイン間距離dを算出した。
d=λ/2/sin(θm)(1) θm:散乱1次ピーク位置のブラッグ角
【0076】
<水添触媒の調製>
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1, 000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
【0077】
<重合体の重合方法>
(重合体1)
ジャケット付き槽型反応器を用いて、所定量のシクロヘキサンを反応器に仕込んで、反応器内を温度60℃に調整した。その後、n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.12質量部となるように反応器の底部から添加した。さらに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を、n−ブチルリチウム1molに対して0.40molとなるように添加した。その後、モノマーとして、1ステップ目の重合反応として、スチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を約10分間で供給し、反応器内温度を65℃に調整した。供給停止後、15分間反応させた。
【0078】
次に2ステップ目の重合反応として、ブタジエン57質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン23質量部を含有するシクロへキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.30kw/m
3に調整し、反応器内圧を0.30MPaにして反応を行い、供給停止後、15分間反応させた。
次に、3ステップ目の重合反応として、スチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を約10分間で供給し、反応器内温度を65℃に調整した。供給停止後、15分間反応させた。
次に得られた重合体に、上記水添触媒を重合体の質量に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノール水溶液を添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対して0.1質量%添加した。
得られた重合体構造を表1に示す。
【0079】
(重合体2)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.085質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を55℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン58質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン20質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.35kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、水添触媒を95ppm添加する以外は重合体1と同様に重合した。
【0080】
(重合体3)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.125質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を65℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン45質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン33質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.25kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0081】
(重合体4)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.115質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を65℃とし、1ステップ目を、スチレン18質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン50質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン14質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.32kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン18質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0082】
(重合体5)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.125質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を65℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度20質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン57質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度20質量%)とスチレン21質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度20質量%)を15分毎に3回に分けて供給し、比エネルギーを0.32kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度20質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0083】
(重合体6)
1ステップ目を、スチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度25質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン60質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度25質量%)とスチレン21質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度25質量%)を10分間かけて添加し、比エネルギーを0.32kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン9質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度25質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0084】
(重合体7)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.125質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を56℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン57質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン21質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を55分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.32kw/m
3に調整し、反応器内圧を0.25MPaにして反応を行い、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0085】
(重合体8)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.130質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を85℃とし、1ステップ目を、スチレン8質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン50質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン35質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.08kw/m
3に調整し、反応器内圧を0.32MPaにして反応を行い、3ステップ目を、スチレン7質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0086】
(重合体9)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.140質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を56℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン59質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン19質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を55分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.09kw/m
3に調整し、反応器内圧を0.25MPaにして反応を行い、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0087】
(重合体10)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.085質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を50℃とし、1ステップ目を、スチレン17質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、反応器内温度を53℃とし、2ステップ目を、ブタジエン43質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン24質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を55分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.42kw/m
3に調整し、反応器内圧を0.15MPaにして反応を行い、3ステップ目を、スチレン16質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とする以外は重合体1と同様に重合した。
【0088】
(重合体11)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.080質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を55℃とし、1ステップ目を、スチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン57質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン24質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.35kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン9質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、水添触媒を85ppm添加する以外は重合体1と同様に重合した。
【0089】
(重合体12)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.085質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を55℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン58質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン20質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.39kw/m
3に調整し、3ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、水添反応は行わない以外は重合体1と同様に重合した。
【0090】
(重合体13)
1ステップ目を、スチレン17質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン67質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、供給停止後15分間反応させ、3ステップ目を、スチレン16質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、水添反応は行わない以外は重合体1と同様に重合した。
【0091】
(重合体14)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.100質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を57℃とし、2ステップ目を、ブタジエン60質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン20質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を57分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.42kw/m
3に調整する以外は重合体1と同様に重合した。
【0092】
(重合体15)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.080質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を56℃とし、2ステップ目を、ブタジエン60質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン20質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)を59分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、比エネルギーを0.46kw/m
3に調整する以外は重合体1と同様に重合した。
【0093】
(重合体16)
n−ブチルリチウムを、全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して、0.085質量部となるように反応器の底部から添加し、重合温度を55℃とし、1ステップ目を、スチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、2ステップ目を、ブタジエン59質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とスチレン20質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度15質量%)とし、比エネルギーを0.35kw/m
3に調整し重合を行った。その後、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンをn−ブチルリチウム1molに対して0.95molとなるように添加し、25分間反応させた。
次に、得られた重合体に水添触媒を95ppm添加する以外は重合体1と同様に重合した。
【0094】
【表1】
【0095】
<アスファルト組成物の調製>
750mLの金属缶にストレートアスファルト60−80〔新日本石油(株)製〕を500g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次に、溶融状態のアスファルト100質量部を、4000rpmの回転速度で攪拌しながら、3.5質量%の重合体を添加し、添加後に90分間、撹拌してアスファルト組成物を作製した。
また、上記重合体の添加工程において、重合体2とSBSを配合比40質量部/60質量部で添加し、その後、180分間、撹拌して、実施例12、13のアスファルト組成物を製造した。
また、重合体2とSBSを配合比60質量部/40質量部で添加し、その後は上記実施例12、13と同じ方法で製造し、実施例14のアスファルト組成物を製造した。
実施例12、13、14について、SBSは以下のものを使用した。
実施例12:KratonD1184、ラジアル型ポリマーで、スチレン含有量が30%、ジブロック含有量が14.5%、ポリスチレン換算で重量平均分子量が40万
実施例13、14:KratonD1101、直鎖型ポリマーで、スチレン含有量が31%、ジブロック含有量が17.0%、ポリスチレン換算で重量平均分子量が18万
【0096】
<道路舗装用混合物の調整>
実施例1〜
5、参考例6〜8、実施例9、参考例10、実施例11〜14、比較例1〜5で得たアスファルト組成物と骨材とを、実験用の容量27リットルの加熱装置装備混合機を用いて混合物総量10kgを混合し、本発明の道路舗装用混合物を密粒度型の混合物として得た。使用した骨材は、栃木県下都賀郡岩舟町の砕石、砕砂、千葉県印旛郡栄町の細砂及び栃木県佐野市山菅町の石粉であった。混合物に使用した骨材の粒度分布を下記、表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
混合は次の手順で行った。即ち、まず所定粒度の密粒度型の骨材94.5質量部を混合機に投入し25秒間空練りを行い、次いで、実施例1で得たアスファルト組成物を5.5質量部を混合機に投入し、50秒間本練りを行い、密粒度型の道路舗装用混合物を得た。なお、空練り、本練りとも混合温度は177℃であった。
【0099】
<アスファルト組成物の特性>
アスファルト組成物の各物性を以下の方法により測定し、結果を表3に示す。
(引張後の回復性)
上記方法で作製したアスファルト組成物を専用の治具に流し込み供試体を作成。25℃の水槽の中で5cm/分の速度で引っ張り、20cm伸ばした時点で停止させ、5分間静置後に中央で切断。その後、60分間水槽の中で放置し供試体が元の長さに対してどれくらい戻ったかを測定した。引張後の回復性が高い方が良く、良い順から◎、○、△、×とする。
80%以上 : ◎
75%以上80%未満 : ○
70%以上75%未満 : △
70%未満 : ×
【0100】
(重合体の耐熱老化性)
上記方法で作製した重合体を3.5質量%含有したアスファルト組成物を190℃で貯蔵し、所定時間経過後にサンプリングし、重合体の分子量分布の変化をGPCで解析した。
重合体の熱劣化により、GPCで得られる重合体のピーク高さが低くなる。貯蔵前の重合体のピーク高さの変化が少ない方が耐熱老化性が高く良い。評価は、高さ変化が30%以上となる日数で評価し、良い順から○、△、×とし、○のみ実用上、十分な性能である。
2日以上 : ○
1日以上2日未満 : △
1日未満 : ×
【0101】
(耐骨材剥離性)
上記<道路舗装用混合物の調整>により密粒度混合物を作成し、マーシャル安定度用の供試体をロサンゼルス試験器に入れ、鋼球を使用しないでドラムを300回転させ、試験後の損失量(耐骨材剥離性)を測定する。耐骨材剥離性は低い方が良く、良い順から◎、○、△、×とする。
20%未満 : ◎
20%以上23%未満 : ○
23%以上26%未満 : △
26%以上 : ×
【0102】
(加工性)
上記<道路舗装用混合物の調整>により密粒度混合物を作成し、施工した場合の敷均し易さを評価する。敷均し易い方が良く、良い順から◎、○、×とする。
敷均し易い : ◎
上記と下記の中間 : ○
流動性が無くなり敷均し難い : ×
【0103】
(低温伸度)
JIS−K2207に準じて、上記方法で製造した重合体1〜16を3.5質量%含有するアスファルト組成物、もしくは、実施例12〜14において重合体2とSBSの合計の含有量が3.5質量%となるアスファルト組成物の伸度を測定した。
定型のアスファルト試料を5℃の水中で、5℃/minの速度で引っ張り、試料が破断するまでの長さ(cm)を測定した。
値が高い方が低温性能が高いと判断し、良い順から○、△、×とした。
20cm以上 : ○
10cm以上 : △
10cm未満 : ×
【0104】
(動的安定度)
骨材には6号砕石/7号砕石/砂砕/細目砂/石粉の配合比36/19/27/12/6%を用い、アスファルト組成物5.5質量部、骨材94.5質量部で、180℃混合する以外は上記<道路舗装用混合物の調整>により、密粒度混合物を作成し、試験法便覧B003に準じて実施した。所定の寸法の供試体上を載荷した小型のゴム車輪を規定温度、規定時間、規定速度で繰り返し往復走行させ、単位時間あたりの変形量から動的安定度(回/mm)を求めた。
値が高い方が耐わだち掘れ性が高いと判断し、良い順から◎、○、△、×とした。
20000回/mm以上 : ◎
10000回/mm以上 : ○
5000回/mm以上 : △
5000回/mm未満 : ×
【0105】
〔実施例1〜
5、参考例6〜8、実施例9、参考例10、実施例11〜14〕、〔比較例1〜5〕
表3に、実施例1〜
5、参考例6〜8、実施例9、参考例10、実施例11〜14及び比較例1〜5の評価結果について、それぞれ示した。下記表3より、本発明の重合体であれば、アスファルト組成物の引張後の回復性が高く、貯蔵時の耐熱老化性が高く、耐骨材剥離性が高いことが分かる。
【0106】
【表3】