【実施例】
【0018】
実施例に係る仕切り装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図4の画面左側を仕切り装置の正面側(前方側)とし、仕切り装置の正面側から見て左右側を仕切り装置の左右側として説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施例の仕切り装置1は、工場やサーバールーム等において、安全の観点から人の立ち入りを防ぐために、機械周辺やサーバ周辺を区画するものである。この仕切り装置1は、床面から立設する複数の支柱2,2,…と、隣接する支柱2,2,…同士の間に渡って配設される仕切り部材3,3,…と、隣接する支柱2,2間に仕切り部材3が設けられず開放された出入口部4を開閉する引き戸装置5と、から主に構成されている。尚、ここでは、工場内等の部屋を構成する図示しない左右の壁面間に渡って延びる仕切り装置1を例に取り説明しているが、部屋内に独立して無端状に配置される仕切り装置1により、所定の空間を区画するようになっていてもよい。
【0020】
図2に示されるように、支柱2は、金属製であり、押出形成により中空形状に形成されており、支柱2の上端部は上方に開口する開口部2aとなっている。また、支柱2は、その下端開口部に挿通される差し込み部(図示せず)を備えた脚部2bにより床面に立設しており、この脚部2bがアンカーボルトへのナットの固定等により床面に固定されている。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、仕切り部材3は、支柱2,2間を仕切る面部を構成する格子状部材31と、格子状部材31の上下左右の辺を囲う枠体32と、から成る。格子状部材31は、上下に延びる複数の線材311,311,…と、左右に延びる複数の線材312,312,…と、を備え、線材311,311,…及び線材312,312,…間には、前後に連通する複数の連通部313,313,…が形成されており、連通部313,313,…を介して仕切り装置1で区切られた所定の空間内の様子を確認できるようになっている。また、面部が線材311,311,…及び線材312,312,…により形成される格子状部材31であることから、仕切り部材3を軽量化することができる。さらに、格子状部材31は、枠体32により補強されているため、仕切り部材3の面形状を保持することができる。尚、支柱2,2間を仕切る面部は、化粧板等のパネルであってもよい。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、引き戸装置5は、出入口部4を閉塞可能な大きさの引き戸6と、引き戸6をスライド可能に吊支する左右方向に延びる上部レール7と、引き戸6が左右方向に移動する際に少なくとも引き戸6の下端部を案内する案内レール8と、引き戸6により出入口部4を閉めた際に引き戸6の端面が当接する上下方向に延びる戸当たり部材9と、を主に備えている。
【0023】
上部レール7は、後述するレール構成部材71,71’が支柱2,2,…の前方側にずれて配置されており、案内レール8は、引き戸6が出入口部4を開放する方向に移動する側にある仕切り部材3の枠体32の下部枠部材34の前方側に固定されている。引き戸6は、仕切り部材3’の上部枠部材33の上面に10,10が左右方向に離間して配設され、且つ、仕切り部材3’の下部枠部材34’の下面に案内レール8に案内される水平方向に回転可能な被案内部材12が設けられたものであり、これら上部レール7及び案内レール8により案内されて左右方向に安定してスライド移動することが可能となっている。
【0024】
この引き戸6は、戸当たり部材9側の側部枠部材35に鍵付取手16が設けられており、鍵付取手16の操作により側部枠部材35内から戸当たり部材9側に倒れ込む図示しない係合鉤部と、戸当たり部材9の側部枠部材35側の面に設けられた係合凹部と、の係合により引き戸6がスライド移動しないように鍵をかけることができるようになっている。また、走行部材10は、前後に延びる軸(図示しない)周りに回転する車輪11,11が前後に配置されて形成されている(
図4参照)。
【0025】
また、戸当たり部材9は、引き戸6が出入口部4を閉塞する方向に移動する側にある支柱2の前方側にずれて配置されており、支柱2に対して固定されている。また、戸当たり部材9が固定される支柱2(上部レール7の取付けに使用しない支柱)には、その開口部2aを閉塞するキャップ15が取付けられており、開口部2a内から塵埃が入り込まないようになっている。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、上部レール7は、前後に離間して配置される2つのレール構成部材71,71’と、レール構成部材71,71’を支柱2に取り付ける第1保持部材72,72と、レール構成部材71,71’を戸当たり部材9に取り付ける第2保持部材73と、を備えている。第1保持部材72,72及び第2保持部材73は、レール構成部材71,71’の長手方向(左右方向)に離間して配設されている。
【0027】
図4に示されるように、レール構成部材71,71’は、断面視略コ字形状を成し、その開口側同士が対向するように配置されている。また、レール構成部材71,71’の下端片711,711’は、車輪11,11が走行する走行路となっており、下端片711,711’同士の対向面側には、車輪11,11の落下を防ぐ立上片712,712’が形成されている。すなわち、車輪11,11がレール構成部材71,71’の下端片711,711’上に載置されるとともに、車輪11,11を繋ぐ前記した図示しない軸と引き戸6を構成する仕切り部材3’とを繋ぐ連結軸17が、前後に離間する立上片712,712’同士の間を通過することにより、引き戸6が上部レール7の長手方向(左右方向)に沿ってスライド移動可能に上部レール7に吊支されるようになっている。尚、
図3に示されるように、レール構成部材71,71’は、その左右両端が開口しているため、その左右いずれかの開口から車輪11,11を入れ込むことで、上部レール7に対して引き戸6を容易に組み付けることができるとともに、図示しないストッパ部材を前記開口に取付けることにより、該開口から引き戸6が離脱することが防止される。
【0028】
図4に示されるように、これらレール構成部材71,71’の上端片713,713’の下面には、レール構成部材71,71’同士の過近接を防止する左右方向に延びるスペーサ部材74が配置されている。
【0029】
図3及び
図4に示されるように、第1保持部材72は、レール構成部材71,71’を上方から被覆するとともに下方側に開口する略コ字状の保持部721と、保持部721の後端側から下方側に延び支柱2の開口部2aに挿入可能な挿入部722と、を備えている。保持部721内には、レール構成部材71,71’とスペーサ部材74とが配置され、保持部721の上端に設けられた貫通孔721aと、レール構成部材71,71’との間と、スペーサ部材74に設けられた孔74aと、にボルト13が挿通され、当該ボルト13にナット14が螺合及び緊締されることにより、各部材71,71’、74、72,72が上下に圧接されて連結されている。
【0030】
また、
図3に示されるように、第2保持部材73は、レール構成部材71,71’を上方から被覆するとともに下方側に開口する略コ字状の保持部731と、保持部731の前端側下端部から後方側に延びる取付片732と、を備えており、上記と同様の取付態様によりレール構成部材71,71’が保持部731に連結保持されている。また、
図5に示されるように、取付片732は、戸当たり部材9の上端面にボルト・ナット等により固定されている。
【0031】
このように、上部レール7は、レール構成部材71,71’が前後に離間して配置されることから、車輪11,11の走行路となる下端片711,711’の位置関係を調整できるため、引き戸6と上部レール7との組み付け作業を行い易い。さらに、1つの部材から形成される上部レールに比べ、単純な略コ字形状のレール構成部材71,71’の組み合わせにより上部レール7を構成できるため、上部レール7の製造コストを抑えることができる。
【0032】
上述のように、レール構成部材71,71’と、第1保持部材72,72と、第2保持部材73と、を組み上げて形成した上部レール7は、各挿入部722,722を上方から支柱2の開口部2aに差し込む(凹凸嵌合)だけで支柱2に対して設置されるようになっており、支柱2に対する引き戸装置5の設置作業が極めて簡便となっている(
図2参照)。
【0033】
また、各挿入部722,722を上方から支柱2の開口部2aに差し込む構成であるため、支柱2を必要以上に長く形成する必要が無く、支柱2をコンパクトにできる。
【0034】
また、前述のように支柱2は、中空の管材であるため、支柱2に対して開口部2aを形成する特段の加工を必要とせず、その支柱2の上端部を開口部2aとして利用して挿入部722を差し込むことができる。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、挿入部722は、横断面形状が略コ字形状を成すように、金属製のプレート等を折り曲げて形成されており、
図4に示されるように、支柱2の開口部2aには、挿入部722の下端側の一部が挿入されるようになっている。挿入部722は、断面視コ字形状の左右片がリブとして機能するため、軽量化されながらも強度が高くなっている。前述のように、レール構成部材71,71’が支柱2よりも前方側に配置されるように第1保持部材72により片持ち状態で支持される構成となっているため、挿入部722の後端側と支柱2の開口部2aの内周面との当接箇所を中心として、上部レール7が前方側に倒れ込むように回動しようとする力が働くようになっているが、当該回動しようとする力が挿入部722に掛かっても屈曲変形することを防止できる。
【0036】
さらに、上部レール7が前方側に倒れ込むように回動しようとする力は、第2保持部材73を介して支柱2の前方側に配設された戸当たり部材9の上端に掛かるため、上部レール7を安定的に支持して上部レール7が前方側に倒れ込むことを確実に防止できる(特に
図5参照)。
【0037】
また、
図4に示されるように、挿入部722の下端部は、その前面側が下方側に向けて先細りするように形成されるテーパ面722aを備えており、これにより挿入部722を支柱2の開口部2aに挿入し易くなっている。
【0038】
また、挿入部722における支柱2の開口部2aに差し込まれる部分は、断面矩形状の支柱2の内面に内嵌される形状となっており、該挿入部722が支柱2に対して、前後左右の移動、及び挿入部722の軸周りの回動が規制されているとともに、引き戸6及び上部レール7自体の重量により、各挿入部722,722が上方に移動して各支柱2,2の開口部2a,2aから抜け出すことが規制されているため、支柱2と挿入部722とを必ずしもボルト・ナット等により固定する必要がない。
【0039】
また、上部レール7は、レール構成部材71,71’の長手方向に沿って設けられた第1保持部材72の各挿入部722,722が、各支柱2,2の開口部2a,2aにそれぞれ挿入されることにより、各支柱2,2上に設置されるため、上部レール7を各支柱2,2上に設置した状態にあっては、各挿入部722,722の軸周りの回動がレール構成部材71,71’により互いに防止され、仕切り装置1の所定の位置に確実に位置決めされる。ここでいう所定の位置とは、仕切り装置1に対する上部レール7の左右方向の位置と、仕切り装置1に対する上部レール7のレール構成部材71,71’の水平方向の取付け角度と、を指す。
【0040】
また、上部レール7は、複数の支柱2,2に支持されることとなるため、左右方向に長尺の上部レール7を安定的に支持できる。尚、挿入部722,722を差し込む支柱2,2の開口部2a,2aを選択することで、仕切り装置1における上部レール7の設置位置も容易に変更することが可能であるため、引き戸装置5を配置する位置を容易に変更できる。
【0041】
図4に示されるように、挿入部722は、その上下方向中央部から上方にかけて前方側に張り出す張出部722cを備えており、挿入部722の一部が支柱2の開口部2aに挿入された状態において、張出部722cの下面722b(端面保持部)が支柱2の上端面2cに当接して載置支持されるようになっている。これにより、支柱2に対する上部レール7の高さ位置が位置決めされ、第1保持部材72,72同士の高さ位置も同一となるため、上部レール7を水平に設置することができる。
【0042】
尚、本実施例では、中空の支柱2の上端部を開口部2aとして利用する態様について説明したが、これに限られず、例えば、中実の支柱の上端部に上方に開口する凹部を形成し、その凹部を開口部として利用してもよい。これによれば、中実の支柱を用いることにより大型の引き戸装置であっても安定して支持することができる。さらに、端面保持部は、支柱2の上端面2cに載置支持される張出部722cの下面722bに限られず、前記中実の支柱の凹部の底面に載置支持される挿入部722の下方端面であってもよい。
【0043】
また、挿入部722における支柱2の開口部2aに差し込まれる部分を、断面矩形状の支柱2の内面に内嵌される形状とするとともに、左右方向に延びるレール構成部材71,71’に固定される第1保持部材72,72の挿入部722,722が、それぞれ異なる支柱2,2に挿入されることにより、各挿入部722,722の軸周りの回動を防止していたが、挿入部722の軸周りの回動を規制する手段は、挿入部722と支柱2とを固定するボルト・ナット等の固定手段であってもよいし、単に、複数の挿入部722,722が、それぞれ異なる支柱2,2に挿入されることのみを用いてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、引き戸6が支柱2,2,…よりも前方側にずれて取付けられている態様について説明したが、引き戸6は支柱2,2,…よりも後方側にずれて取付けられていてもよい。
【0046】
また、第2保持部材73を特段設けず、第1保持部材72,72のみでレール構成部材71,71’を支持するようにしてもよいが、安定性の観点から上記実施例の態様の方が好ましい。
【0047】
また、上部レールは、1つの上部レール構成部材に挿入部が溶接などで一体で固着されたものであってもよい。
【0048】
尚、支柱の上端部を挿入部(凸部)とし、且つ第1保持部材に前記挿入部に外嵌する開口部(凹部)を設け、挿入部に開口部を外嵌させることにより、支柱の上方に上部レールを載置支持するようにしてもよい。