特許第6607690号(P6607690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607690電池用非水電解液用の添加剤、電池用非水電解液、及びリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607690
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】電池用非水電解液用の添加剤、電池用非水電解液、及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20191111BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-78617(P2015-78617)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-201185(P2016-201185A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宮里 将敬
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡子
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏弘
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−171936(JP,A)
【文献】 特開2006−107796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566 − 10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池用非水電解液用の添加剤を含有する電池用非水電解液であって、前記添加剤が下記式(1)で表される部分構造を有する無機チタン化合物を含み、
前記無機チタン化合物が、O=Ti−O−S構造を有する硫酸化合物、又はO=Ti−O−S構造を有する亜硫酸化合物であり、
前記無機チタン化合物の含有量が、前記電池用非水電解液の全量に対し0.05質量%〜5質量%である電池用非水電解液
【化1】
【請求項2】
前記無機チタン化合物が、下記式(2)で表される化合物を含む請求項1に記載の電池用非水電解液
【化2】
【請求項3】
正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合 金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドー プ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ド ープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質とし て含む
負極と、
請求項又は請求項に記載の電池用非水電解液と、

を含むリチウム二次電池。
【請求項4】
請求項に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られるリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用非水電解液用の添加剤、電池用非水電解液、及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウム二次電池は、主に、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含む電池用非水電解液から構成される。
正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiFePOのようなリチウム金属酸化物が用いられる。
また、非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SOCFCFのようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。
一方、負極に用いられる負極用活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵、放出が可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛を採用したリチウム二次電池が実用化されている。
【0003】
電池性能を改善する試みとして、種々の添加剤を電池用非水電解液に含有させることが提案されている。
例えば、電池の安全性を向上させることができるリチウム二次電池用電解液として、チタニウムオキサイドアセチルアセトネート等の有機金属化合物を含むリチウム二次電池用電解液が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、負極における溶媒の分解反応を抑制すること、および余分な被膜形成を抑制することにより、サイクル特性に優れるリチウム二次電池を与え得る非水系電解液として、チタン元素を成分として含む非水系電解液(チタン元素はチタン化合物に構成成分として含まれてもよい)が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、サイクル特性を向上(特に、充放電後の放電容量の減少を抑制)させることができるリチウム二次電池を与え得る非水系電解液として、負極に強固な被膜形成を伴うとされる有機チタネートとビニレンカーボネートとの添加剤の組合せを含む非水系電解液が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−520701号公報
【特許文献2】特開2006−107796号公報
【特許文献3】特開2004−265680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機チタン化合物を含有する非水電解液を用いた電池では、電極表面に形成される被膜により、初期の電池抵抗が高くなる場合がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、電池用非水電解液用の添加剤であって初期の電池抵抗を低減できる添加剤、並びに、この添加剤を含有する電池用非水電解液及びリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、電池用非水電解液用の添加剤として、特定の部分構造を有する無機チタン化合物を含む添加剤を用いることにより、初期の電池抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
【0007】
<1> 電池用非水電解液用の添加剤であって、下記式(1)で表される部分構造を有する無機チタン化合物を含む添加剤。
【0008】
【化1】
【0009】
<2> 前記無機チタン化合物が、下記式(2)で表される化合物を含む<1>に記載の添加剤。
【0010】
【化2】
【0011】
<3> <1>又は<2>に記載の添加剤を含有する電池用非水電解液。
<4> 前記無機チタン化合物の含有量が、電池用非水電解液の全量に対して0.001質量%〜10質量%である<3>に記載の電池用非水電解液。
<5> 正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
<3>又は<4>に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<6> <5>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られるリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池用非水電解液用の添加剤であって初期の電池抵抗を低減できる添加剤、並びに、この添加剤を含有する電池用非水電解液及びリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
図2図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の添加剤、電池用非水電解液、及びリチウム二次電池について、詳細に説明する。
【0015】
〔添加剤(添加剤A)〕
本発明の添加剤(本明細書中において、「添加剤A」ともいう)は、電池用非水電解液用の添加剤であって、下記式(1)で表される部分構造を有する無機チタン化合物を含む。
【0016】
【化3】
【0017】
従来、電池用非水電解液に対し、有機物添加剤である有機チタニウム化合物を添加することにより、電池性能を改善する技術が提案されている。一般に、有機物添加剤は充放電により分解し、その分解物が電極表面に被膜を作ることが知られている。
しかしながら、この被膜の性質によっては、初期の電池抵抗が高くなる場合がある。初期の電池抵抗が高くなると、電池の出力特性が低下するため、電池性能が低下するという問題を生じる。そのため、初期の電池抵抗が出来るだけ低い電池が求められている。
本発明者は鋭意検討した結果、電池用非水電解液用の添加剤として、上記式(1)で表される部分構造を有する無機チタン化合物を含む添加剤(添加剤A)を用いることにより、初期の電池抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の添加剤(添加剤A)によれば、初期の電池抵抗を低減できる。
【0018】
添加剤Aによって上記効果が得られる理由は、以下のように推測される。
即ち、添加剤Aを用いた電池(例えばリチウム二次電池)では、初期充電時において、式(1)で表される部分構造を有する無機チタン化合物が速やかに電極表面に作用し、有機成分を含まない伝導性が高い被膜が形成されると考えられる。この伝導性が高い被膜の作用により、初期の電池抵抗が低減されると考えられる。
より詳細には、式(1)で表される部分構造(以下、「Ti−O−S構造」ともいう)を有する上記無機チタン化合物は、電極表面に対し、Ti、O、及びSの各原子によって多点的に作用すると考えられる。これにより、電極表面に良質で安定な被膜が形成されると考えられる。この多点的な作用をより効果的に働かせる観点から、上記無機チタン化合物は、O=Ti−O−S構造を有することが好ましい。
【0019】
以上の理由により、添加剤Aを含有する非水電解液では、該添加剤Aを含有しない非水電解液と比較して、初期の電池抵抗が低減されると考えられる。
【0020】
<無機チタン化合物>
無機チタン化合物は、上記式(1)で表される部分構造(Ti−O−S構造)を有する。
上記式(1)において、末端のチタン原子(Ti)及び硫黄原子(S)の各々の結合状態(例えば、結合手の数、結合の種類、等)には特に制限はなく、これらの原子がどのような結合状態を有していても、上述した効果が奏される。
【0021】
Ti−O−S構造を有する無機チタン化合物(以下、「特定無機チタン化合物」ともいう)として、具体的には、硫酸チタン化合物、オキシ硫酸チタン化合物、亜硫酸チタン化合物、オキシ亜硫酸チタン化合物などが挙げられる。
【0022】
また、特定無機チタン化合物の一分子内に含まれるTi−O−S構造の数は、1つのみであっても2つ以上であってもよい。
一分子内にTi−O−S構造を2つ以上含む無機チタン化合物としては、硫酸チタン化合物として、Ti(SO、Ti(SOなどが挙げられる。
【0023】
上記式(1)中の末端のTiは、初期の電池抵抗をより低減する観点から、Ti=O結合を形成していることが好ましい。即ち、初期の電池抵抗をより低減する観点から、特定無機チタン化合物は、O=Ti−O−S構造を有すること(即ち、オキシチタン化合物であること)が好ましい。
【0024】
上記式(1)中の末端のSは、より安定な被膜を形成する観点から、硫酸構造の一部であること、又は、亜硫酸構造の一部であることが好ましく、硫酸構造の一部であることがより好ましい。即ち、より安定な被膜を形成する観点から、特定無機チタン化合物は、硫酸化合物又は亜硫酸化合物であることが好ましく、硫酸化合物であることがより好ましい。
特定無機チタン化合物は、オキシチタン化合物であり且つ硫酸化合物であること(即ち、オキシ硫酸チタン化合物であること)、又は、オキシチタン化合物であり且つ亜硫酸化合物であること(即ち、オキシ亜硫酸チタン化合物であること)が更に好ましく、オキシ硫酸チタン化合物であることが特に好ましい。
【0025】
特定無機チタン化合物は、下記式(2)で表される化合物を含むことが特に好ましい。 式(2)で表される化合物は、初期の電池抵抗を低減させる効果に優れる。
式(2)で表される化合物は、オキシ硫酸チタン化合物である。
【0026】
【化4】
【0027】
添加剤Aは、有効成分として特定無機チタン化合物(Ti−O−S構造を有する無機チタン化合物)を含んでいればよく、添加剤Aに含まれる特定無機チタン化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
例えば、添加剤Aは、式(2)で表される化合物と、式(2)で表される化合物以外の特定無機チタン化合物の少なくとも1種と、を含んでいてもよい。
また、添加剤Aは、特定無機チタン化合物による効果が損なわれない範囲で、特定無機チタン化合物以外の成分を含んでいてもよい。
特定無機チタン化合物以外の成分としては、特定無機チタン化合物以外の無機チタン化合物、有機チタン化合物、等が挙げられる。
添加剤Aにおける特定無機チタン化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、添加剤Aの全量に対し、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、理想的には100質量%である。
添加剤Aが式(2)で表される化合物を含む場合において、添加剤Aにおける式(2)で表される化合物の含有量の好ましい範囲は、上述した、添加剤Aにおける特定無機チタン化合物の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0028】
〔電池用非水電解液〕
本発明の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、特定無機チタン化合物を含む添加剤Aを含有する。
本発明の非水電解液における特定無機チタン化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜8質量%であることが更に好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%であることが特に好ましい。
本発明の非水電解液が式(2)で表される化合物を含む場合において、本発明の非水電解液における式(2)で表される化合物の含有量の好ましい範囲は、上述した特定無機チタン化合物の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0029】
なお、特定無機チタン化合物を含む添加剤Aを非水電解液用の添加剤として用いて実際に電池を作製し、作製された電池を解体して再び非水電解液を取り出した場合、非水電解液中の特定無機チタン化合物の含有量が著しく低下している場合がある。そのため、電池から抜き出した非水電解液から少なくとも特定無機チタン化合物が検出される場合には、非水電解液に添加剤Aが含まれるとみなすことができる。
本明細書中において、「含有量」との用語及び「添加量」との用語は、いずれも、非水電解液の全量に対する含有量を意味する。
【0030】
<添加剤B>
本発明の非水電解液は、更に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フッ素原子を有するカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、及びスルトン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤Bを含有することが好ましい。
本発明の非水電解液が添加剤Bを含有することにより、上述した添加剤Aによる効果がより効果的に奏される。この理由は、添加剤Bが、電極表面に被膜を形成するか、または、添加剤Aによって形成された被膜を強化することにより、電極表面での溶媒の分解がより効果的に抑制されるためと考えられる。
【0031】
(炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物)
炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物としては、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、エチルプロピニルカーボネート、ジプロピニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,4−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,4−ジエチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、プロピニルエチレンカーボネート、4,4−ジプロピニルエチレンカーボネート、4,5−ジプロピニルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネートであり、より好ましくは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートである。
【0032】
(フッ素原子を有するカーボネート化合物)
フッ素原子を有するカーボネート化合物としては、メチルトリフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、メチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートなどの鎖状カーボネート類;4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−トリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートである。
【0033】
(フルオロリン酸化合物)
フルオロリン酸化合物としては、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸、モノフルオロリン酸、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、フルオロリン酸ジメチル、フルオロリン酸ジエチルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウムである。
【0034】
(オキサラト化合物)
オキサラト化合物としては、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムである。
【0035】
(スルトン化合物)
スルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1−メチル−1,3−プロペンスルトン、2−メチル−1,3−プロペンスルトン、3−メチル−1,3−プロペンスルトン等のスルトン類が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンである。
【0036】
上述した添加剤Bは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、及び1,3−プロペンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0037】
本発明の非水電解液が添加剤Bを含有する場合、含有される添加剤Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本発明の非水電解液が添加剤Bを含有する場合、その含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、添加剤Aによる効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.1質量%〜4質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜1質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0038】
また、本発明の非水電解液は、上記以外のその他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、上述のジフルオロリン酸リチウム以外のジフルオロリン酸塩、モノフルオロリン酸リチウム以外のモノフルオロリン酸塩、及びフルオロスルホン酸塩が挙げられる。
また、その他の添加剤は、例えば、国際公開第2012/053644号、特許第4033074号公報、特許第4819409号公報、特開2012−226878号公報、特許第5353923号公報、特許第4424895号公報などに記載の添加剤の中から、適宜選択して用いることができる。
【0039】
次に、非水電解液の他の成分について説明する。
非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。
【0040】
<非水溶媒>
非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0041】
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0042】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、上記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0043】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0044】
(鎖状の非プロトン性溶媒)
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0045】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0046】
(溶媒の組み合わせ)
非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。
また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0047】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80:20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0048】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0049】
(その他の溶媒)
本発明の非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。
他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CHCHO)
HO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)
CHO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)CH
CHO[CHCH(CH)O]CH
19PhO(CHCHO)[CH(CH)O]CH
(Phはフェニル基)
CHO[CHCH(CH)O]CO[OCH(CH)CHOCH
上記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0050】
<電解質>
本発明の非水電解液は、種々公知の電解質を含有することができる。
電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
電解質の具体例としては、(CNPF、(CNBF、(CNClO、(CNAsF、(CSiF、(CNOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、(CNPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0051】
LiC(SO27)(SO28)(SO29)、LiN(SOOR30)(SOOR31)、LiN(SO32)(SO33)(ここでR27〜R33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF、LiBF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO、LiAsF、LiNSO[C(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。
電解質は、通常は、非水電解液中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0052】
非水電解液において、非水溶媒として、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPFを含有することが望ましい。
LiPFは、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPFは単独で使用してもよいし、LiPFとそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPFとLiBF、LiPFとLiN[SO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFとLiBFとLiN[SO(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。
【0053】
リチウム塩中に占めるLiPFの比率は、1質量%〜100質量%、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%が望ましい。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
【0054】
また、非水電解液は、過充電防止剤を含有することもできる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ターフェニル(o−、m−、p−体)の部分水素化体(例えば、1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3−ジ−t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;フルオロトルエン(o−、m−、p−体)、ジフルオロトルエン、トリフルオロトルエン、テトラフルオロトルエン、ペンタフルオロトルエン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、1−フルオロ−4−t−ブチルベンゼン、2−フルオロビフェニル、フルオロシクロヘキシルベンゼン(例えば、1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)等の芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
中でも、上記で例示した芳香族化合物が好ましい。
また、過充電防止剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0055】
非水電解液が過充電防止剤を含有する場合、過充電防止剤の含有量には特に制限はないが、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。
また、上記過充電防止剤の含有量は、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0056】
非水電解液は、本発明の目的を妨げない範囲で、上述した化合物以外の他の化合物を添加剤として少なくとも1種含有していてもよい。
他の化合物として具体的には、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテン、硫酸ビニレン等の硫酸エステル類;並びにスルホラン、3−スルホレン、ジビニルスルホン等のイオウ系化合物、を挙げることができる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのうち、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテンが好ましい。
【0057】
〔リチウム二次電池〕
本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液を含んで構成されている。
通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0058】
(負極)
上記負極を構成する負極活物質は、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0059】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0060】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0061】
(正極)
上記正極を構成する正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1−X)〔0<X<1〕、α−NaFeO型結晶構造を有するLi1+αMe1−α(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1−α)≦1.6)、LiNiCoMn〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)、LiFePO、LiMnPOなどのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0062】
(セパレータ)
上記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
上記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
上記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本発明の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0063】
(電池の構成)
本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0064】
本発明のリチウム二次電池(非水電解液二次電池)の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本発明のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(図1中では不図示)及び積層型電極体(図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本発明の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0065】
なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0066】
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0067】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の実施例において、「wt%」は質量%を表す。
また、以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液中における含有量(即ち、最終的に得られる非水電解液全量に対する量)を表す。
【0068】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池として、図1に示すラミネート型電池と同様の構成のラミネート型電池を作製した。
【0069】
<負極の作製>
人造黒鉛98質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス1質量部を水溶媒で混錬し、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ12μmの帯状銅箔製の負極集電体の両面に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極(負極板)を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cmであり、充填密度は1.45g/mlであった。
以上の負極板を6枚作製し、得られた6枚の負極板の各々に負極タブを取り付けた。
【0070】
<正極の作製>
LiCoOを98質量部、アセチレンブラック1質量部及びポリフッ化ビニリデン1質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体の両面に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極(正極板)を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は25mg/cmであり、充填密度は3.6g/mlであった。
以上の正極板を5枚作製し、得られた5枚の正極板の各々に正極タブを取り付けた。
【0071】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質であるLiPFを、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対して、添加剤Aとして式(2)で表される化合物(添加量0.5wt%)を添加し、非水電解液を得た。
【0072】
<積層電極体の作製>
負極タブを取り付けた上記負極板6枚と、正極タブを取り付けた上記正極板5枚とを、微多孔性ポリエチレンフィルム(厚み20μm;セパレータ)を介し、正極タブと負極タブとが同一の辺に配置される方向に積層させた。このとき、正極板と負極板とを、両側の最外層がいずれも負極板となるように、交互に積層させた。得られた積層体に、形状保持のため絶縁テープ(セパレータ)を巻き付け、積層電極体とした。
【0073】
<正極端子及び負極端子の取り付け>
6枚の負極板の各々から延びる6枚の負極タブを、銅箔からなる1枚の負極端子に、超音波溶接によって取り付けた。
5枚の正極板の各々から延びる5枚の正極タブを、アルミニウム箔からなる1枚の正極端子に、超音波溶接によって取り付けた。
【0074】
<積層ラミネート型電池の作製>
正極端子及び負極端子を取り付けた積層電極体を、アルミニウム製のラミネート外装体に収容し、正極端子及び負極端子が取り付けられた側のラミネート外装体の一辺を熱融着した。このとき、正極端子の一部及び負極端子の一部が、ラミネート外装体の周端部から突出するようにした。正極端子及び負極端子が突出する部分は、それぞれ、絶縁シールによってシールした。
次に、ラミネート外装体の残りの3辺のうちの2辺を熱融着した。
次に、ラミネート外装体の熱融着していない1辺側からラミネート外装体内に上記非水電解液を注入し、上記非水電解液を、各正極板、各負極板、及び各セパレータに含浸させた。次いで、上記熱融着していない1辺を熱融着することにより、ラミネート外装体を密封した。以上により、ラミネート型電池を得た。
得られたラミネート型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
【0075】
[評価方法]
<電池の充放電特性:初期の放電容量>
上記ラミネート型電池を、25℃の恒温槽中で500mA定電流かつ定電圧4.4Vで充電し、この25℃恒温槽中で500mA定電流で3.3Vまで放電した際の放電容量を測定し、初期放電容量[mAh]とした。
得られた結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例1〕
実施例1において、式(2)で表される化合物を添加しなかった(すなわち添加剤なし)こと以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製、評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
〔実施例2〕
実施例1において、添加剤Aとして、式(2)で表される化合物の添加量を添加量0.2wt%に変更したこと以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。電池の作製及び評価についても実施例1と同様に実施した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、添加剤Aを用いた実施例1〜2では、添加剤Aを用いなかった比較例1と比較して、初期放電容量が10%も増加していた。即ち、実施例1〜2では、初期の電池抵抗が低減されていることが確認された。
【符号の説明】
【0080】
1 ラミネート外装体
2 正極端子
3 負極端子
4 絶縁シール
5 正極板
6 負極板
7、8 セパレータ
図1
図2