(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電池用非水電解液及びリチウム二次電池について、詳細に説明する。
【0020】
〔電池用非水電解液〕
本発明の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、後述の一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物である添加剤Aと、後述の一般式(V)で表されるリン酸シリルエステル化合物である添加剤Bと、を含有する。
【0021】
前述のとおり、特定のリン酸化合物を添加した非水電解液(例えば、前述の特許文献1参照)、硫酸エステル化合物及びリン酸シリルエステル化合物を含む非水電解液(例えば、前述の特許文献2及び3参照)、特定の環状硫酸エステル化合物を含む非水電解液(例えば、前述の特許文献4参照)が知られている。特許文献2の段落0019及び特許文献3の段落0013には、硫酸エステル化合物として、同一分子内にSO
3基を1つのみ有する環状硫酸エステル化合物が例示されている。
本明細書中において、「SO
3基」とは、下記構造の基(波線は結合位置を表す)を表す。
【0023】
本明細書中における「SO
3基」の概念には、以下に示すSO
4基(波線は結合位置を表す)の構造の一部であるSO
3基も包含される。以下に示すSO
4基は、例えば、一般式(I)、一般式(III)、及び式(IV)のそれぞれに含まれている。
【0025】
しかし、非水電解液を用いた電池に対し、電池抵抗を低減し、かつ、保存時の電池膨れを抑制することが求められる場合がある。
この点に関し、本発明の非水電解液によれば、電池に用いたときに、電池抵抗を低減でき(以下、「電池抵抗低減の効果」ともいう)、かつ、保存時の電池膨れを抑制できる(以下、「電池膨れ抑制の効果」ともいう)。
本明細書中において、「保存時の電池膨れ」と「保存による電池膨れ」とは同義である。
【0026】
本発明の非水電解液を用いた電池(例えばリチウム二次電池)では、添加剤A及び添加剤Bのいずれか一方を含み他方を含まない非水電解液を用いた電池と比較して、電池抵抗が低減される。
本発明の非水電解液によって電池抵抗低減の効果が得られる理由は、以下のように推測される。
即ち、本発明の非水電解液を用いた電池では、初期充電時において、電極表面(正極表面及び負極表面)に、添加剤A及び添加剤Bに由来する、全体的にイオン伝導性が良く、均質で安定な被膜が形成されるためと考えられる。
ここで、添加剤A及び添加剤Bのいずれか一方を含み他方を含まない非水電解液を用いた電池においても初期充電時において電極表面に被膜が形成され得るが、本発明の非水電解液では、より優れた性質(均質性、安定性等)を有する被膜が形成されると考えられる。このため、本発明の非水電解液を用いた電池では、添加剤A及び添加剤Bのいずれか一方を含み他方を含まない非水電解液を用いた電池と比較して、電池抵抗が低減されると考えられる。
【0027】
より具体的には、本発明の非水電解液によれば、同一分子内にSO
3基を1つのみ有する環状硫酸エステル化合物及びリン酸シリルエステル化合物を含む、特許文献2及び3に記載の非水電解液を用いた場合と比較しても、電池抵抗がより低減される。
この理由は、一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物(添加剤A)が、同一分子内にSO
3基を少なくとも2つ有する環状硫酸エステル化合物であるためと考えられる。詳細には、同一分子内にSO
3基を少なくとも2つ有する添加剤Aは、同一分子内にSO
3基を1つのみ有する環状硫酸エステル化合物と比較して、より多点的に電極表面に作用し、より均質でより安定な被膜を形成すると考えられる。このため、本発明の非水電解液によれば、特許文献2及び3に記載の非水電解液を用いた場合と比較して、電池抵抗がより低減されると考えられる。
【0028】
また、本発明の非水電解液を用いた電池では、添加剤A及び添加剤Bのいずれか一方を含み他方を含まない非水電解液を用いた電池と比較して、保存時の電池膨れが抑制される。
また、本発明の非水電解液によって電池膨れ抑制の効果が得られる理由は、以下のように推測される。
保存時の電池膨れは、電池の保存時に、非水電解液中の非水溶媒等が電極表面で分解されてガスを発生することによって生じる現象と考えられる。
本発明の非水電解液によれば、上述のとおり、添加剤A及び添加剤Bのいずれか一方を含み他方を含まない非水電解液を用いた電池と比較して、添加剤A及び添加剤Bに由来する、より均質でより安定な被膜が電極表面に形成されると考えられる。上記被膜により、保存時の非水溶媒等の分解及びこの分解によるガスの発生が抑制され、ひいては保存時の電池膨れが抑制されると考えられる。
【0029】
本発明の非水電解液に対し、添加剤Aに代えて、同一分子内にSO
3基を1つのみ有する環状硫酸エステル化合物を用いた場合には、電池抵抗を低減し、かつ、電池膨れを抑制させることは困難であった(例えば、後述の表1中、実施例1〜3及び比較例4〜6参照)。この理由は、同一分子内にSO
3基を少なくとも2つ有する添加剤Aとは異なり、同一分子内にSO
3基を1つのみ有する化合物は、電極表面に多面的に作用できないためと考えられる。
【0030】
本発明の非水電解液によれば、上述のとおり、電池抵抗を低減でき、かつ、保存時の電池膨れを抑制できる。従って、本発明の非水電解液には、電池の寿命を延ばす効果を有することが期待される。
【0031】
また、特許文献2及び3に記載の非水電解液では、硫酸エステル化合物の含有量とリン酸シリルエステル化合物の含有量との関係の制約が大きいという問題があった。
例えば、特許文献2の段落0022には、「非水電解質中の濃度がそれぞれ、硫酸エステル化合物については0.02〜0.2M、リン酸シリルエステル化合物については0.005〜0.04Mとなるように混合することにより、初めて内部抵抗を低減し、長期放置による内部抵抗の増大を大きく抑制し、長期間にわたって初期の出力特性を維持することができる」ことが開示されている。また、特許文献3の段落0046にも、「硫酸エステルの濃度を0.02〜0.2Mとし、かつ、リン酸シリルエステルの濃度を0.005〜0.04Mとすることで、高温での放置に伴う直流抵抗の上昇を抑制することができる」ことが開示されている。
特許文献2及び3に記載の非水電解液に対し、本発明の非水電解液では、添加剤Aの含有量と添加剤Bの含有量との関係に関する制約が少ないという利点もある。即ち、本発明の非水電解液では、添加剤Aの含有量及び添加剤Bの含有量に関し、広範な範囲にわたり、電池抵抗低減の効果及び電池膨れ抑制の効果を得ることができる(例えば、後述の表1中、実施例1〜3及び比較例4〜6参照)。
上記利点も、一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物(添加剤A)が同一分子内にSO
3基を少なくとも2つ有する環状硫酸エステル化合物であること、及び、添加剤Aにより、より均質でより安定な被膜が形成されることに起因すると考えられる。
【0032】
以下、本発明の非水電解液の成分について具体的に説明する。
【0033】
<添加剤A(環状硫酸エステル化合物)>
本発明の非水電解液は、下記一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物(以下、「一般式(I)で表される化合物」ともいう)である添加剤Aを含有する。
一般式(I)で表される化合物は、同一分子内にSO
3基を少なくとも2つ有する化合物である。
【0035】
一般式(I)中、R
1は、一般式(II)で表される基又は式(III)で表される基を表し、R
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、一般式(II)で表される基、又は式(III)で表される基を表す。
一般式(II)中、R
3は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基を表す。一般式(II)、式(III)、および式(IV)における波線は、結合位置を表す。
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物中に、一般式(II)で表される基が2つ含まれる場合、2つの一般式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0036】
一般式(I)中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0037】
一般式(I)中、「炭素数1〜6のアルキル基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0038】
一般式(I)中、「炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖のハロゲン化アルキル基であり、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ヨウ化メチル基、ヨウ化エチル基、ヨウ化プロピル基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基がより好ましい。
【0039】
一般式(I)中、「炭素数1〜6のアルコキシ基」とは、炭素数が1〜6個である直鎖又は分岐鎖アルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0040】
一般式(I)中のR
1として、好ましくは、一般式(II)で表される基(一般式(II)において、R
3は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基である。
一般式(I)中のR
2として、好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、一般式(II)で表される基(一般式(II)において、R
3は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0041】
一般式(I)中のR
1が一般式(II)で表される基である場合、一般式(II)中のR
3は前述のとおり、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であるが、R
3としてより好ましくは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IV)で表される基であり、更に好ましくは、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は、式(IV)で表される基である。
一般式(I)中のR
2が一般式(II)で表される基である場合、一般式(II)中のR
3の好ましい範囲については、一般式(I)中のR
1が一般式(II)で表される基である場合におけるR
3の好ましい範囲と同様である。
【0042】
本発明の効果がより効果的に奏される点からみた一般式(I)の好ましい形態は、
R
1が、一般式(II)で表される基(一般式(II)中、R
3はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)、又は式(III)で表される基であり、R
2が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、一般式(II)で表される基(一般式(II)中、R
3はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい。)、又は式(III)で表される基である形態である。
一般式(I)のより好ましい形態は、R
1が一般式(II)で表される基(一般式(II)中、R
3はフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基であることが好ましい)又は式(III)で表される基であり、R
2が水素原子又はメチル基である形態である。
一般式(I)の更に好ましい形態は、R
1が式(III)で表される基であり、R
2が水素原子である組み合わせ(最も好ましくは1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−メゾ−エリスリトール)である。
【0043】
一般式(I)において、R
1が一般式(II)で表される基である環状硫酸エステル化合物は、下記一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物である。
【0045】
一般式(XII)中、R
2及びR
3は、一般式(I)及び一般式(II)におけるR
2及びR
3とそれぞれ同義である。
【0046】
一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物としては、R
2が、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R
3が、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IV)で表される基である化合物が好ましい。
更に、一般式(XII)で表される環状硫酸エステル化合物としては、R
2が、水素原子又はメチル基であって、R
3が、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基である化合物が特に好ましい。
【0047】
本発明における一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物としては、下記例示化合物1〜30で示される化合物が挙げられる。但し、一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物は、これらに限られない。
下記例示化合物の構造中、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「tBu」はターシャリーブチル基を、「Pent」はペンチル基を、「Hex」はヘキシル基を、「OMe」はメトキシ基を、「OEt」はエトキシ基を、「OPr」はプロポキシ基を、「OBu」はブトキシ基を、「OPent」はペンチルオキシ基を、「OHex」はヘキシルオキシ基を、それぞれ表す。また、R
1〜R
3における「波線」は、結合位置を表す。
なお、2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン環の4位及び5位の置換基に由来する立体異性体が生じる場合があるが、両者とも本発明に含まれる化合物である。
【0051】
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物のうち、分子内に2個以上の不斉炭素が存在する場合はそれぞれ立体異性体(ジアステレオマー)が存在するが、特に記載しない限りは、対応するジアステレオマーの混合物である。
【0052】
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物として、好ましくは、例示化合物A−1、例示化合物A−2、例示化合物A−16,例示化合物A−22、例示化合物A−23、例示化合物A−24〜A−28であり、特に好ましくは、例示化合物A−1、例示化合物A−2、例示化合物A−16、例示化合物A−22である。
【0053】
一般式(I)で表される環状硫酸エステル化合物を合成する方法には特に制限はないが、例えば、国際公開第2012/053644号の段落0062〜0068に記載の合成方法によって合成することができる。
【0054】
本発明の非水電解液は、添加剤A(一般式(I)で表される化合物)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本発明の非水電解液中における添加剤Aの含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜10質量%であることが更に好ましく、0.01質量%〜8質量%であることが更に好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜5質量%であることが特に好ましい。
【0055】
なお、添加剤Aは、非水電解液として実際に二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水電解液を取り出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。そのため、電池から抜き出した非水電解液から、少なくとも上記添加剤Aが検出できる場合には、非水電解液に添加剤Aが含まれるとみなすことができる。後述の添加剤B、添加剤Cをはじめとする他の添加剤についても同様である。
本明細書中において、「添加剤の含有量」との用語及び「添加剤の添加量」との用語は、いずれも、非水電解液の全量に対する添加剤の含有量を意味する。
【0056】
<添加剤B>
本発明の非水電解液は、一般式(V)で表されるリン酸シリルエステル化合物である添加剤Bを含有する。
【0058】
一般式(V)において、R
4〜R
12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の有機基を表す。
【0059】
一般式(V)中、「炭素数1〜12の有機基」としては、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、又は、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数2〜12のアルケニル基が好ましい。
【0060】
上記「炭素数1〜12のアルキル基」とは、炭素数が1〜12個である直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。
無置換の炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基などが挙げられる。
また、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されている炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基などが挙げられる。
【0061】
また、上記「炭素数2〜12のアルケニル基」とは、炭素数が2〜12個である直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を示す。
無置換の炭素数2〜12のアルケニル基としては、具体例には、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基などが挙げられる。
また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている炭素数2〜12のアルケニル基としては、例えば、2−フルオロエテニル基、2,2−ジフルオロエテニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、2,3−ジフルオロ−2−プロペニル基、3,3−ジフルオロ−2−メチル−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−ブテニル基、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基などが挙げられる。
【0062】
一般式(V)中、R
4〜R
12は、本発明の効果が効果的に奏される点から、それぞれ独立に、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、少なくとも1つのフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、又はトリフルオロメチル基であることが更に好ましい。
【0063】
一般式(V)で表されるリン酸シリルエステル化合物としては、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリエチルシリル)ホスフェート、トリス(トリプロピルシリル)ホスフェート、トリス(トリビニルシリル)ホスフェート、トリス(トリフルオロメチルシリル)ホスフェート等が挙げられる。但し、一般式(V)で表されるリン酸シリルエステル化合物は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0064】
本発明の非水電解液は、添加剤B(一般式(V)で表されるリン酸シリルエステル化合物)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本発明の非水電解液中における添加剤Bの含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜3質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%であることが特に好ましい。
【0065】
また、本発明の効果(添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせによる効果)をより効果的に奏する観点からは、非水電解液中における、添加剤Bに対する添加剤Aの含有質量比〔添加剤A/添加剤B〕は、0.1〜10.0であることが好ましく、0.5〜8.0であることがより好ましく、1.0〜5.0であることが更に好ましい。
【0066】
本発明の非水電解液において、添加剤Aと添加剤Bとの好ましい組み合わせは、添加剤Aの上述の好ましい形態と、添加剤Bの上述の好ましい形態と、を任意に組み合わせてなる組み合わせである。
本発明の非水電解液において、本発明の効果が特に顕著に奏される観点から、
添加剤Aとして、一般式(I)において、R
1が一般式(II)で表される基(一般式(II)中、R
3はフッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は式(IV)で表される基である)又は式(III)で表される基であり、R
2が水素原子又はメチル基である化合物を用い、かつ、添加剤Bとして、一般式(V)において、R
4〜R
12がメチル基、エチル基、プロピル基、又はトリフルオロメチル基で表される基である化合物を用いることが好ましい。
【0067】
<添加剤C>
本発明の非水電解液は、更に、炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物、フッ素原子で置換されたカーボネート化合物、フルオロリン酸化合物、オキサラト化合物、及びスルトン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤Cを含有することが好ましい。本発明の非水電解液が添加剤Cを含有することにより、上述した本発明の効果がより効果的に奏される。この理由は、添加剤Cが、添加剤Aによって電極表面に形成された被膜を強化することにより、電極表面での溶媒の分解がより効果的に抑制されるためと考えられる。
本発明の実施形態において、添加剤Bが少なくとも1つのフッ素原子を含むリン酸シリルエステル化合物である場合、この少なくとも1つのフッ素原子を含むリン酸シリルエステル化合物は、添加剤Bに該当し、添加剤Cとしてのフルオロリン酸化合物には該当しないものとする。
【0068】
(炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物)
炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネート化合物としては、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、エチルプロピニルカーボネート、ジプロピニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,4−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,4−ジエチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、プロピニルエチレンカーボネート、4,4−ジプロピニルエチレンカーボネート、4,5−ジプロピニルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネートであり、より好ましくは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートである。
【0069】
(フッ素原子を有するカーボネート化合物)
フッ素原子を有するカーボネート化合物としては、メチルトリフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、メチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートなどの鎖状カーボネート類;4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−トリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネートである。
【0070】
(フルオロリン酸化合物)
フルオロリン酸化合物としては、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸、モノフルオロリン酸、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、フルオロリン酸ジメチル、フルオロリン酸ジエチルなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウムである。
【0071】
(オキサラト化合物)
オキサラト化合物としては、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくはジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウムである。
【0072】
(スルトン化合物)
スルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1−メチル−1,3−プロペンスルトン、2−メチル−1,3−プロペンスルトン、3−メチル−1,3−プロペンスルトン等のスルトン類が挙げられる。これらのうち、好ましくは、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンである。
【0073】
上述した添加剤Cは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビスオキサラトホウ酸リチウム、1,3−プロパンスルトン、及び1,3−プロペンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0074】
本発明の非水電解液が添加剤Cを含有する場合、含有される添加剤Cは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
本発明の非水電解液が添加剤Cを含有する場合、添加剤Cの含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、本発明の効果がより効果的に奏される観点から、非水電解液の全量に対し、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.1質量%〜4質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜2質量%の範囲であることが更に好ましく、0.1質量%〜1質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0075】
また、本発明の非水電解液は、上記以外のその他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、上述のジフルオロリン酸リチウム以外のジフルオロリン酸塩、モノフルオロリン酸リチウム以外のモノフルオロリン酸塩、及びフルオロスルホン酸塩が挙げられる。
また、その他の添加剤は、例えば、国際公開第2012/053644号、特許第4033074号公報、特許第4819409号公報、特開2012−226878号公報、特許第5353923号公報、特許第4424895号公報などに記載の添加剤の中から、適宜選択して用いることができる。
【0076】
次に、非水電解液の他の成分について説明する。
非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒とを含有する。
【0077】
<非水溶媒>
本発明における非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0078】
(環状の非プロトン性溶媒)
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0079】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、上記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0080】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0081】
(鎖状の非プロトン性溶媒)
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0082】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0083】
(溶媒の組み合わせ)
本発明の非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0084】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80:20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0085】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0086】
(その他の溶媒)
本発明に係る非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CH
2CH
2O)
aH
HO[CH
2CH(CH
3)O]
bH
CH
3O(CH
2CH
2O)
cH
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
dH
CH
3O(CH
2CH
2O)
eCH
3
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
fCH
3
C
9H
19PhO(CH
2CH
2O)
g[CH(CH
3)O]
hCH
3
(Phはフェニル基)
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
iCO[OCH(CH
3)CH
2]
jOCH
3
上記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0087】
<電解質>
本発明の非水電解液は、種々公知の電解質を含有することができる。電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
本発明における電解質の具体例としては、(C
2H
5)
4NPF
6、(C
2H
5)
4NBF
4、(C
2H
5)
4NClO
4、(C
2H
5)
4NAsF
6、(C
2H
5)
4N
2SiF
6、(C
2H
5)
4NOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、(C
2H
5)
4NPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0088】
LiC(SO
2R
27)(SO
2R
28)(SO
2R
29)、LiN(SO
2OR
30)(SO
2OR
31)、LiN(SO
2R
32)(SO
2R
33)(ここでR
27〜R
33は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF
6、LiBF
4、LiOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO
4、LiAsF
6、LiNSO
2[C
kF
(2k+1)]
2(k=1〜8の整数)、LiPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。
本発明に係る電解質は、通常は、非水電解液中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0089】
本発明の非水電解液において、非水溶媒として、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPF
6を含有することが望ましい。LiPF
6は、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPF
6は単独で使用してもよいし、LiPF
6とそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF
6以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPF
6とLiBF
4、LiPF
6とLiN[SO
2C
kF
(2k+1)]
2(k=1〜8の整数)、LiPF
6とLiBF
4とLiN[SO
2C
kF
(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。
【0090】
リチウム塩中に占めるLiPF
6の比率は、1質量%〜100質量%、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%が望ましい。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
【0091】
また、本発明の非水電解液は、過充電防止剤を含有することもできる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ターフェニル(o−、m−、p−体)の部分水素化体(例えば、1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3−ジ−t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;フルオロトルエン(o−、m−、p−体)、ジフルオロトルエン、トリフルオロトルエン、テトラフルオロトルエン、ペンタフルオロトルエン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、1−フルオロ−4−t−ブチルベンゼン、2−フルオロビフェニル、フルオロシクロヘキシルベンゼン(例えば、1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)等の芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
中でも、上記で例示した芳香族化合物が好ましい。
また、過充電防止剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0092】
本発明の非水電解液が過充電防止剤を含有する場合、過充電防止剤の含有量には特に制限はないが、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。
また、上記過充電防止剤の含有量は、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0093】
本発明の非水電解液は、本発明の目的を妨げない範囲で、上述した化合物以外の他の化合物を添加剤として少なくとも1種含有していてもよい。
他の化合物として具体的には、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテン、硫酸ビニレン等の硫酸エステル類;並びにスルホラン、3−スルホレン、ジビニルスルホン等のイオウ系化合物、を挙げることができる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのうち、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ブテン、硫酸ペンテンが好ましい。
【0094】
本発明の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0095】
〔リチウム二次電池〕
本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液を含んで構成されている。
通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0096】
(負極)
上記負極を構成する負極活物質は、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0097】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0098】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm
3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0099】
(正極)
上記正極を構成する正極活物質としては、MoS
2、TiS
2、MnO
2、V
2O
5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiNi
XCo
(1−X)O
2〔0<X<1〕、α−NaFeO
2型結晶構造を有するLi
1+αMe
1−αO
2(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1−α)≦1.6)、LiNi
xCo
yMn
zO
2〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2等)、LiFePO
4、LiMnPO
4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0100】
(セパレータ)
上記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
上記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
上記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本発明の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0101】
(電池の構成)
本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0102】
本発明のリチウム二次電池(非水電解液二次電池)の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本発明のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(
図1中では不図示)及び積層型電極体(
図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、
図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本発明の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(
図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0103】
なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液と、を含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本発明の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0104】
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。その他の用途としては、例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0105】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の実施例において、「wt%」は質量%を表す。
また、以下の実施例において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液中における含有量(即ち、最終的に得られる非水電解液全量に対する量)を表す。
【0106】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池として、
図1に示すラミネート型電池と同様の構成のラミネート型電池を作製した。
【0107】
<負極の作製>
人造黒鉛98質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス1質量部を水溶媒で混錬し、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ12μmの帯状銅箔製の負極集電体の両面に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極(負極板)を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cm
2であり、充填密度は1.45g/mlであった。
以上の負極板を6枚作製し、得られた6枚の負極板の各々に負極タブを取り付けた。
【0108】
<正極の作製>
LiCoO
2を98質量部、アセチレンブラック1質量部及びポリフッ化ビニリデン1質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体の両面に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極(正極板)を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は25mg/cm
2であり、充填密度は3.6g/mlであった。
以上の正極板を5枚作製し、得られた5枚の正極板の各々に正極タブを取り付けた。
【0109】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ30:35:35(質量比)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質であるLiPF
6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対して、添加剤A(環状硫酸エステル化合物)としての上記例示化合物A−22(添加量0.5wt%)、及び、添加剤Bとしてのトリス(トリメチルシリル)ホスフェート(以下、TMSPともいう)(添加量0.1wt%)をそれぞれ添加し、非水電解液を得た。
【0110】
<積層電極体の作製>
負極タブを取り付けた上記負極板6枚と、正極タブを取り付けた上記正極板5枚とを、微多孔性ポリエチレンフィルム(厚さ20μm;セパレータ)を介し、正極タブと負極タブとが同一の辺に配置される方向に積層させた。このとき、正極板と負極板とを、両側の最外層がいずれも負極板となるように、交互に積層させた。得られた積層体に、形状保持のため絶縁テープ(セパレータ)を巻き付け、積層電極体とした。
【0111】
<正極端子及び負極端子の取り付け>
6枚の負極板の各々から延びる6枚の負極タブを、銅箔からなる1枚の負極端子に、超音波溶接によって取り付けた。
5枚の正極板の各々から延びる5枚の正極タブを、アルミニウム箔からなる1枚の正極端子に、超音波溶接によって取り付けた。
【0112】
<積層ラミネート型電池の作製>
正極端子及び負極端子を取り付けた積層電極体を、アルミニウム製のラミネート外装体に収容し、正極端子及び負極端子が取り付けられた側のラミネート外装体の一辺を熱融着した。このとき、正極端子の一部及び負極端子の一部が、ラミネート外装体の周端部から突出するようにした。正極端子及び負極端子が突出する部分は、それぞれ、絶縁シールによってシールした。
次に、ラミネート外装体の残りの3辺のうちの2辺を熱融着した。
次に、ラミネート外装体の熱融着していない1辺側からラミネート外装体内に上記非水電解液を注入し、上記非水電解液を、各正極板、各負極板、及び各セパレータに含浸させた。次いで、上記熱融着していない1辺を熱融着することにより、ラミネート外装体を密封した。以上により、ラミネート型電池を得た。
得られたラミネート型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
【0113】
[評価方法]
<初期(保存前)電池抵抗>
上記ラミネート型電池の初期(保存前)電池抵抗を評価した。詳細を以下に示す。
上記ラミネート型電池を定電圧4.2Vで充電し、次いで、該充電後のラミネート型電池を恒温槽内で−20℃に冷却し、−20℃にて50mA定電流で放電し、放電開始から10秒間における電位低下を測定することにより、ラミネート型電池の直流抵抗[Ω](−20℃)を測定し、得られた値を初期(保存前)抵抗値[Ω](−20℃)とした。
後述の比較例1のラミネート型電池についても同様にして、初期(保存前)抵抗値[Ω](−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での初期抵抗値(相対値;%)として、「初期電池抵抗(相対値;%)」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0114】
初期電池抵抗(相対値;%)
=(実施例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃))×100
【0115】
<保存後電池抵抗>
上記ラミネート型電池の保存後電池抵抗を評価した。詳細を以下に示す。
上記ラミネート型電池を定電圧4.2Vで充電し、次いで、該充電後のラミネート型電池を80℃の恒温槽内で2日間保存した後、初期電池抵抗と同様の方法でラミネート型電池の直流抵抗[Ω](−20℃)を測定し、得られた値を保存後抵抗値[Ω](−20℃)とした。
後述の比較例1のラミネート型電池についても同様にして、保存後抵抗値[Ω](−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での保存後抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での保存後抵抗値(相対値;%)として、「保存後電池抵抗(相対値;%)」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0116】
保存後電池抵抗(相対値;%)
=(実施例1での保存後抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での保存後抵抗値[Ω](−20℃))×100
【0117】
<保存による電池膨れ>
上記ラミネート型電池を用い、保存による電池膨れ(即ち、保存時の電池膨れ)を評価した。詳細を以下に示す。
上記ラミネート型電池を定電圧4.2Vで充電し、充電後のラミネート型電池の中央部の厚さを測定し、初期電池厚さ[mm]とした。
次いで、このラミネート型電池を80℃の恒温槽中で2日間保存した。
2日間保存したラミネート型電池の中央部の厚さを測定し、保存後電池厚さ[mm]とした。
上記保存後電池厚さ[mm]から上記初期電池厚さ[mm]を差し引くことにより、保存による電池厚さの増分[mm]として、保存による電池膨れ[mm]を求めた。
【0118】
後述の比較例1についても実施例1と同様にして、保存による電池膨れ[mm]を求めた。
【0119】
以上の結果から、下記式により、比較例1での保存による電池膨れを100%としたときの実施例1での保存による電池膨れ(相対値;%)を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0120】
保存による電池膨れ(相対値;%)
=(実施例1での保存による電池膨れ〔mm〕/比較例1での保存による電池膨れ〔mm〕)×100
【0121】
〔実施例2〜3、比較例1〜6〕
実施例1において、添加剤Aの種類、添加剤Aの添加量、添加剤Bの添加量、及び添加剤Bの添加量のうちの少なくとも1つを、下記表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
−表1の説明−
・各添加剤の欄の「無し」は、その添加剤を用いなかったことを示す。
・添加剤A及び添加剤B欄の「%」は、各添加剤の添加量(最終的に得られる非水電解液中における含有量)(質量%)を示す。
・添加剤A欄において、PGLSTとは、以下に示す構造の、1,2−プロパンジオール硫酸エステル(同一分子内にSO
3基を1つのみ有する比較用環状硫酸エステル化合物)である。
【0124】
【化11】
【0125】
表1に示すように、添加剤A及び添加剤Bを含有する非水電解液を用いた実施例1〜3では、添加剤Aも添加剤Bも含有しない非水電解液を用いた比較例1に対し、初期電池抵抗、保存後電池抵抗、及び保存による電池膨れが低減されていた。
実施例1〜3に対し、添加剤Bを含有せず添加剤Aを含有する非水電解液を用いた比較例2では、初期電池抵抗が上昇し、保存後電池抵抗が上昇し又は同等であり、保存による電池膨れが増大した。
実施例1〜3に対し、添加剤Aを含有せず添加剤Bを含有する非水電解液を用いた比較例3では、初期電池抵抗が上昇し、保存後電池抵抗が上昇し、保存による電池膨れが増大した。
実施例1〜3に対し、添加剤AではなくPGLST(同一分子内にSO
3基を1つのみ有する比較用環状硫酸エステル化合物)を用いた比較例4〜6では、初期電池抵抗が上昇し、保存後電池抵抗が上昇し、保存による電池膨れが増大した。
実施例1〜3では、添加剤Bの含有量について幅広い範囲(0.1wt%〜2.0wt%)にわたり、電池抵抗低減及び電池膨れ抑制の効果が確認された。