【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記したような4ドラム式のアンローダでは、グラブバケット8が閉じている場合、支持ロープ16,16'と開閉ロープ20,20'の四本のロープの全てがグラブバケット8の昇降とトロリ7の横行の操作に関わるが、グラブバケット8が開いている場合には、開閉ロープ20,20'はグラブバケット8の昇降とトロリ7の横行には実質的に関わっておらず、支持ロープ16,16'のみの張力によってこの二つの操作を行うことになる。
【0014】
すなわち、グラブバケット8を閉じた状態では、前記四本のロープの全てに張力が発生しており、グラブバケット8は吊下点16a,16a'及び接続点20a,20a'の四箇所において支持されている。つまり、前記四本のロープの全てがグラブバケット8の支持に参加しており、グラブバケット8の昇降やトロリ7の横行においても、前記四本のロープの全てが協同して働く。
【0015】
しかし、グラブバケット8を開いた状態では、開閉ロープ20,20'がグラブバケット8に向けて繰り出された状態であり、開閉ロープ20,20'には張力が発生しておらず、したがってこの二本のロープはグラブバケット8の支持には参加しない。つまり、グラブバケット8は第一と第二の吊下点16a,16a'の二箇所においてのみ、二本の支持ロープ16,16'によって支持された形となっており、グラブバケット8の昇降やトロリ7の横行といった動作は、二本の支持ロープ16,16'の張力によって行われる。
【0016】
そして、グラブバケット8を開いた状態、すなわちグラブバケット8を二本の支持ロープ16,16'の張力のみによって支持している状態において、トロリ7と共にグラブバケット8を横行させてからトロリ7を停止させる操作を行った場合、その後に停止状態のまま長時間が経過すると、時間の経過に伴い、横行と停止に伴って発生したグラブバケット8の振れが、横行方向だけでなく、該横行方向に直交する方向に広がる現象が発生する虞があった。
【0017】
トロリ7及びグラブバケット8を、陸側(
図7参照)へ向かって横行させる場合を例にとって、この現象について説明する。尚、以下では、トロリ7が横行する方向(
図7中における左右方向)を「横行方向」、横行方向に直交する方向(
図7の紙面に垂直な方向、すなわちアンローダが走行するレール3に平行な方向)を「走行方向」と称する。
【0018】
陸側への横行操作では、上記したように、陸側の第一の支持ロープ16と第一の開閉ロープ20は陸側の第一の支持ドラム15と第一の開閉ドラム19にそれぞれ巻き込まれ、海側の第二の支持ロープ16'と第二の開閉ロープ20'は海側の第二の支持ドラム15'と第二の開閉ドラム19'からそれぞれ繰り出される。
【0019】
このとき、グラブバケット8が開いていると、上記したように開閉ロープ20,20'には張力が発生しておらず、この横行動作とグラブバケット8の支持は、支持ロープ16,16'の張力によって行われる。グラブバケット8は、トロリ7が陸側へ向かって動き出した後、上部のトロリ7に引かれた支持ロープ16,16'の張力を受けて陸側へ向かって動き出すので、グラブバケット8がトロリ7の後に続いて陸側へ移動する形となる。したがって、横行中、支持ロープ16,16'は、上部をトロリ7によって陸側へ、下部をグラブバケット8によって海側へそれぞれ引かれ、傾斜した状態となる。このとき、陸側の第一の支持ロープ16と海側の第二の支持ロープ16'とでは、陸側の第一の支持ロープ16の方により大きい張力が発生している。
【0020】
続いて横行操作を停止すると、トロリ7が先に停止し、トロリ7の後からついてきたグラブバケット8は、重力に従い、トロリ7の下方で海側から陸側へ向かう横行方向を初期振れ方向とした振り子状の往復運動を開始する。このグラブバケット8の往復運動を支持しているのは、第一と第二の吊下点16a,16a'にそれぞれ取り付けられた第一と第二の支持ロープ16,16'である。
【0021】
ここで、上記したような4ドラム式アンローダの場合、グラブバケット8を吊り下げているロープ(支持ロープ16,16'、開閉ロープ20,20')やシーブ(支持シーブ18,18'、開閉シーブ22,22')の構造を平面視すると、
図10に示したような配置となっている(尚、ここでは説明の都合上、静止状態における配置を図示しているが、トロリ7やグラブバケット8の動作の状態によっては、各機器の相対的な配置がこの位置からずれる場合があることは言うまでもない)。グラブバケット8を支持する二つの支点である吊下点16a,16a'が、グラブバケット8の走行方向に平行な中心線L
1上に配列しており、この二つの吊下点16a,16a'は、グラブバケット8の横行方向に平行な中心線L
2を挟んで配置されている。そして、グラブバケット8の図中下側に位置する第一の吊下点16aは、トロリ7上の陸側(
図7参照)に位置する第一の支持シーブ18から陸側の第一の支持ロープ16を介して支持され、図中上側に位置する第二の吊下点16a'は、トロリ7上の海側(
図7参照)に位置する第二の支持シーブ18'から海側の第二の支持ロープ16'を介して支持されている。
【0022】
吊下点16a,16a'や支持シーブ18,18'をこのような配置とした場合、上記したトロリ7の横行操作停止時におけるトロリ7やグラブバケット8の位置関係を平面視すると、例えば、
図11のようになっており、グラブバケット8は、トロリ7の直下から海側寄り(
図7参照。
図11中では左寄り)の位置にある。このとき、上記したように、陸側の第一の支持ロープ16からグラブバケット8の第一の吊下点16aにかかる張力Tが、海側の第二の支持ロープ16'から第二の吊下点16a'にかかる張力T'より大きくなっている。
【0023】
グラブバケット8は、この状態から図中右側に向かって振り子状に移動しようとするところであるが、ここで、グラブバケット8を図中右側に向かって引く張力Tの作用点である第一の吊下点16aは、張力Tの作用方向と直交する向き(すなわち、走行方向)に、グラブバケット8の重心から離れた位置にある。すなわち、力の作用点が重心に対して偏心している。結果として、張力Tの水平方向の成分は、グラブバケット8を横行方向に引っ張るだけでなく、グラブバケット8を反時計回りに回転させる力としても作用することになる。こうして、グラブバケット8は、トロリ7の下方で単純な振り子状の往復運動に留まらない複雑な運動を開始する。
【0024】
さらに、グラブバケット8に加わる張力は、往復運動中、グラブバケット8のトロリ7に対する位置や傾きによっても様々に変動する。
図10のようにグラブバケット8がトロリ7の直下の位置に来た場合を一例として説明すると、この位置においては、図中下側に位置する第一の吊下点16aは、第一の支持ロープ16の張力Tによって平面視で図中右側に引かれ、図中上側に位置する第二の吊下点16a'は、第二の支持ロープ16'の張力T'によって平面視で図中左側に引かれている。すなわち、グラブバケット8には、第一と第二の支持ロープ16,16'の張力T,T'それぞれの水平方向の成分により、反時計回りに回転する方向の力がかかっている。この位置では、グラブバケット8は慣性に従って左右のいずれかに移動しようとしながら、反時計回りに回転しようとする。このように、グラブバケット8の運動中、グラブバケット8に対しては水平方向に常にその向きや大きさが変動する力が加わることになる。
【0025】
トロリ7の横行動作の開始直後は、このグラブバケット8の動きは、横行方向に細長く伸びた8の字状の往復運動として表れる。その後、ウインチドラム(支持ドラム15,15'、開閉ドラム19,19')によるロープ(支持ロープ16,16'、開閉ロープ20,20')の操作を停止した状態が続くと、グラブバケット8の運動は8の字状の往復運動から、楕円状の回転運動へと移行していく。さらに停止状態が長引くと、回転運動の軌道は横行方向に細長く伸びた楕円状の軌道から、走行方向に膨らんだ楕円状の軌道へと徐々に遷移していく。
【0026】
こうした現象は、グラブバケット式アンローダの通常の運転においてはあまり観察されることはない。グラブバケット8の運動は、横行操作の停止後、時間と共に上記した経過を辿るのであり、停止後しばらくの間は、軌道は横行方向に沿った細長い形状をとる。したがって、厳密に見れば8の字ないし楕円状の軌道を描いているとしても、実質的には横行方向の単純な振れと変わらないものと見なしてアンローダの操作を問題なく続行することができる。また、グラブバケット8が閉じた状態であれば、グラブバケット8は吊下点16a,16a'及び接続点20a,20a'の四点で支えられているので、上記したような現象は発生しない。
【0027】
しかしながら、アンローダの運転中、例えば開いた状態で上昇させたグラブバケット8をトロリ7と共に横行させた後、グラブバケット8を降ろす位置を決めかねるなど、横行後のグラブバケット8を開いた状態のまま長時間にわたって停止させることがないとは言えない。そして、停止時間が数分といった単位の長さに及べば、その間にグラブバケット8の走行方向の振れが大きくなっていってしまうことがあり得る。そうなった場合、グラブバケット8を降下させて着床させれば振れを停止させることはできるが、グラブバケット8が走行方向に振れた状態で昇降操作を行えば、グラブバケット8が周囲の物と干渉してしまう可能性がある。また、振れが自然に収まるのを待つこともできるが、それには時間がかかってしまい、作業効率が低下する。そこで、グラブバケットの横行操作後の停止時間が長時間に及んだ場合にも、横行方向と直交する向き(走行方向)への動きを効果的に抑え込む構造が求められていた。
【0028】
本発明は、斯かる実情に鑑み、グラブバケットの横行操作の停止時に、グラブバケットの横行方向と直交する向きの振れの発生を効果的に低減し得るグラブバケットの吊下構造を提供しようとするものである。