特許第6607707号(P6607707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607707
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】花粉回収装置および花粉回収方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20191111BHJP
   A01H 1/02 20060101ALN20191111BHJP
   B01D 46/24 20060101ALN20191111BHJP
   B07B 4/08 20060101ALN20191111BHJP
【FI】
   C12M1/26
   !A01H1/02 Z
   !B01D46/24 Z
   !B07B4/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-113153(P2015-113153)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-220656(P2016-220656A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】山口 常雄
(72)【発明者】
【氏名】直井 誠之
【審査官】 竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−099817(JP,A)
【文献】 実開昭50−088437(JP,U)
【文献】 特開昭61−265032(JP,A)
【文献】 特開昭61−260819(JP,A)
【文献】 特開昭53−002236(JP,A)
【文献】 特開2010−263842(JP,A)
【文献】 特開昭59−136114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00−17/00
C12M 1/00−3/10
B01D 46/00−46/24
B07B 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉収容殻部内に花粉を蓄える植物から前記花粉を回収するための花粉回収装置であって、
外部への前記花粉の飛散を抑制可能な作業空間を有する作業台と、
空気を吸引する吸引装置と、
前記作業空間と前記吸引装置を繋げるように設けられ、前記吸引装置の吸引作用により前記作業空間内の空気を前記吸引装置に向けて流下させる接続空間を有する接続部材と、
前記作業空間と前記接続空間との境界部に設けられ、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部は捕捉する花粉収容殻部捕捉部材と、
前記接続空間において、前記花粉収容殻部捕捉部材に対し前記吸引装置側へ流下した部分に設けられ、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気が通過することにより当該空気中の前記花粉を捕捉する花粉捕捉部材とを備え
前記花粉捕捉部材が、中空円筒状に形成されて空気中の前記花粉を濾過して捕捉する濾材を有し、且つ、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気が、前記濾材を径方向外側から径方向内側に向けて通過して前記吸引装置に向けて吸引されることにより前記濾材の径方向外側部分に前記花粉を捕捉するように、前記接続空間内に配設されることを特徴とする花粉回収装置。
【請求項2】
前記花粉収容殻部捕捉部材が、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部は捕捉する目開き寸法を有した網部材により構成されることを特徴とする請求項1に記載の花粉回収装置。
【請求項3】
前記濾材の濾層が、単一層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の花粉回収装置。
【請求項4】
前記濾材が、外表面が平滑化された中空円筒状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の花粉回収装置。
【請求項5】
前記作業台が、前記花粉収容殻部捕捉部材が設けられたベース部と、前記花粉収容殻部捕捉部材を上方から囲むように前記ベース部に取り付けられて前記作業空間を形成するカバー部とを備えて構成され、
前記ベース部に設けた開口部から、前記花粉収容殻部捕捉部材の上面部で捕捉され、残留した前記花粉収容殻部を落とし込んで回収する花粉収容殻部回収部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の花粉回収装置。
【請求項6】
花粉収容殻部内に花粉を蓄える植物から前記花粉を回収するための花粉回収方法であって、
作業台の上方に形成された、外部への前記花粉の飛散を抑制可能な作業空間内に、内部に前記花粉が蓄えられた前記花粉収容殻部を位置させるとともに、吸引装置の吸引作用により、前記作業空間の空気を、前記作業空間と前記吸引装置とを繋ぐ接続空間を介して前記吸引装置に吸引させる第1のステップと、
前記作業台における前記作業空間と前記接続空間との境界部に設けられた花粉収容殻部捕捉部材において、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部を捕捉するとともに、前記接続空間において、前記花粉収容殻部捕捉部材に対して前記吸引装置側へ流下した部分に設けられた中空円筒状の濾材を有する花粉捕捉部材により、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気を、前記濾材の径方向外側から径方向内側に向けて通過させて前記吸引装置に向けて吸引させることで当該空気中の前記花粉を前記濾材の径方向外側部分に捕捉する第2のステップとを、この順に実行することを特徴とする花粉回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄花等の花粉収容殻部内に花粉を蓄える植物から花粉を回収するために用いられる花粉回収装置、およびその装置を用いた花粉回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、スギ、ヒノキ、マツ、シラカバ、ハンノキ、ブタクサ、ヨモギ等の花粉によりアレルギー反応(花粉症)が引き起こされることが問題になっており、このようなことから、花粉症の症状を改善する医薬品やサプリメントを開発・製造することが考えられている。このような医薬品やサプリメントの開発・製造にあたっては、まとまった量の花粉(花粉症の原因となる花粉)が必要になるため、スギ等の植物から花粉を効率良く回収することが求められている。
【0003】
従来のスギ花粉回収方法の一例として、下記の特許文献1に開示された方法を挙げることができる。この特許文献1に開示された回収方法は、スギの枝葉の雄花に袋を被せて雄花を育成する雄花育成工程と、育成された雄花から花粉を回収する花粉回収工程と、回収された花粉を乾燥させる花粉乾燥工程とからなる。上記三つの工程のうちの雄花育成工程および花粉回収工程は、複数の小工程からなる。具体的には、雄花育成工程は、枝打ち工程、袋詰め工程および育成工程の合計三つの小工程からなり、一方、花粉回収工程は、花粉飛散工程、雄花分離工程、第1花粉分離工程、雄花粉砕工程および第2花粉分離工程の合計五つの小工程からなる。
【0004】
ここで、合計五つの小工程からなる花粉回収工程について詳細に説明すると、まず、袋詰めされたスギの枝葉を外部から叩いて袋内において花粉を飛散させ(花粉飛散工程)、その後で、袋内の花粉を取り出すとともに枝葉から雄花を分離させ、花粉と雄花とを混在する状態で回収する(雄花分離工程)。そして、回収された雄花および花粉を篩にかけて両者を分離し(第1花粉分離工程)、分離された雄花を粉末状に粉砕する(雄花粉砕工程)。最後に、粉砕された雄花の粉末を篩機にかけて花粉を分離して回収する(第2花粉分離工程)。
【0005】
ところで、花粉飛散工程では、枝葉を叩いて袋内で花粉を飛散させるため、このときの衝撃で枝葉から枝や葉が小片となって分離し、雄花分離工程で回収される花粉および雄花に枝葉の小片が混在することが多い。そこで、第1花粉分離工程において篩にかける際、まず、目の粗い篩を用いて枝葉の小片のような比較的大きな混在物を除去する一回目の篩作業を行い、その後で、目の細かい篩を用いて雄花のような比較的小さな混在物を除去する二回目の篩作業を行うようにして、花粉から他の混在物を分離していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010‐263842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、特許文献1の花粉回収方法では、第1花粉分離工程において、2回の篩作業を行うため、どうしても周囲に飛散する花粉の量が多くなって花粉の回収効率が低下するとともに、飛散した花粉によって作業環境が悪化するという問題がある。また、篩作業を繰り返して行うと、その分だけ作業工数が増えて花粉回収の作業効率が低下するという問題もある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、花粉の回収ロスを少なくして効率良く回収することを可能とするとともに作業環境を良好な状態に維持し、さらに、花粉回収の作業効率を向上させることができる花粉回収装置および花粉回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る花粉回収装置は、花粉収容殻部内に花粉を蓄える植物から前記花粉を回収するための花粉回収装置であって、外部への前記花粉の飛散を抑制可能な作業空間を有する作業台(例えば、実施形態における吸引作業台2)と、空気を吸引する吸引装置(例えば、実施形態におけるメイン側ブロワ36)と、前記作業空間と前記吸引装置を繋げるように設けられ、前記吸引装置の吸引作用により前記作業空間内の空気を前記吸引装置に向けて流下させる接続空間を有する接続部材(例えば、実施形態における花粉受容部材31、第1筒部材33、カートリッジ収容部材32および第1配管部材37)と、前記作業空間と前記接続空間との境界部に設けられ、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部は捕捉する花粉収容殻部捕捉部材(例えば、実施形態における網部材22c)と、前記接続空間において、前記花粉収容殻部捕捉部材に対し前記吸引装置側へ流下した部分に設けられ、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気が通過することにより当該空気中の前記花粉を捕捉する花粉捕捉部材(例えば、実施形態におけるフィルタカートリッジ34)とを備え、前記花粉捕捉部材が、中空円筒状に形成されて空気中の前記花粉を濾過して捕捉する濾材を有し、且つ、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気が、前記濾材を径方向外側から径方向内側に向けて通過して前記吸引装置に向けて吸引されることにより前記濾材の径方向外側部分に前記花粉を捕捉するように、前記接続空間内に配設されることを特徴とする
【0010】
上述の花粉回収装置において、前記花粉収容殻部捕捉部材が、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部は捕捉する目開き寸法を有した網部材により構成されることが好ましい。
【0012】
上述の花粉回収装置において、前記濾材の濾層が、単一層からなることが好ましい。
【0013】
上述の花粉回収装置において、前記濾材が、外表面が平滑化された中空円筒状に形成されることが好ましい。なお、ここで、「外表面が平滑化された中空円筒」とは、凹凸をなくした外表面を有する中空円筒のことを意味する。
【0014】
さらに、前記作業台が、前記花粉収容殻部捕捉部材が設けられたベース部(例えば、実施形態における天板22)と、前記花粉収容殻部捕捉部材を上方から囲むように前記ベース部に取り付けられて前記作業空間を形成するカバー部(例えば、実施形態におけるカバー部材23)とを備えて構成され、前記ベース部に設けた開口部(例えば、実施形態における後側開口部22b)から、前記花粉収容殻部捕捉部材の上面部で捕捉され、残留した前記花粉収容殻部を落とし込んで回収する花粉収容殻部回収部(例えば、実施形態における雄花回収部4)を備えることが好ましい。
【0015】
本発明に係る花粉回収方法は、花粉収容殻部内に花粉を蓄える植物から前記花粉を回収するための花粉回収方法であって、作業台の上方に形成された、外部への前記花粉の飛散を抑制可能な作業空間内に、内部に前記花粉が蓄えられた前記花粉収容殻部を位置させるとともに、吸引装置の吸引作用により、前記作業空間の空気を、前記作業空間と前記吸引装置とを繋ぐ接続空間を介して前記吸引装置に吸引させる第1のステップと、前記作業台における前記作業空間と前記接続空間との境界部に設けられた花粉収容殻部捕捉部材において、前記花粉を通過させる一方で前記花粉収容殻部を捕捉するとともに、前記接続空間において、前記花粉収容殻部捕捉部材に対して前記吸引装置側へ流下した部分に設けられた中空円筒状の濾材を有する花粉捕捉部材により、前記花粉収容殻部捕捉部材を通過した前記作業空間からの空気を、前記濾材の径方向外側から径方向内側に向けて通過させて前記吸引装置に向けて吸引させることで当該空気中の前記花粉を前記濾材の径方向外側部分に捕捉する第2のステップとを、この順に実行するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る花粉回収装置は、作業空間と接続空間との境界部に設けられ、花粉を通過させる一方で花粉収容殻部を捕捉する花粉収容殻部捕捉部材と、花粉収容殻部捕捉部材に対し吸引装置側へ流下した部分に設けられ、花粉収容殻部捕捉部材を通過した作業空間からの空気が通過することにより当該空気中の花粉を捕捉する花粉捕捉部材とを備えて構成される。このように構成されたことで、吸引装置によって作業空間内の空気を吸引する際に、作業空間内の花粉収容殻部が花粉収容殻部捕捉部材により捕捉された状態で、この花粉収容殻部に蓄えられた花粉が吸引されて花粉収容殻部から分離され、花粉収容殻部捕捉部材を通過して花粉捕捉部材により捕捉される。例えば回収された花粉を篩にかけて混在物を除去する際に、従来は花粉に花粉収容殻部が混在していたので目の大きさの異なる篩を用いて複数回篩作業を行う必要があったが、本発明に係る花粉回収装置では、花粉回収の初期段階で花粉収容殻部と花粉とを分離するようにしているので、従来と比較して篩作業の回数を減らすことができる。このように、篩作業の回数を減らすことで、花粉の回収ロス(篩作業の際に飛散する花粉)を少なくして花粉を効率良く回収できるとともに作業環境の改善を図り、且つ作業工数を減らして花粉回収作業の作業効率を向上させることができる。
【0017】
上述の花粉回収装置において、花粉収容殻部捕捉部材が、花粉を通過させる一方で花粉収容殻部は捕捉する目開き寸法を有した網部材により構成されることが好ましく、この構成によれば、例えば金網のような安価な汎用品により花粉収容殻部捕捉部材を構成することができる。
【0018】
また、花粉捕捉部材が、中空円筒状に形成されて空気中の花粉を濾過して捕捉する濾材を有する構成が好ましく、このように構成すれば、例えば中空円筒状のフィルタカートリッジにより花粉捕捉部材を構成することができる。このため、本発明の実施形態において後述するように、中空円筒状の安価なフィルタカートリッジ(花粉捕捉部材)を用いて花粉回収装置を構成することにより、花粉回収装置の製造コストを抑えることが可能になる。
【0019】
上述の花粉回収装置において、濾材の濾層が、単一層からなることが好ましく、この構成の場合、例えば濾層が複数の層からなる構成と比較して、濾材に内側からエアを吹き付けて逆流洗浄(「逆洗」とも称される)を行うときに、濾層の外表面に残留する花粉を除去しやすくなる。このため、逆流洗浄により花粉捕捉部材を再利用可能となり、花粉回収装置のランニングコストを抑えることができる。
【0020】
上述の花粉回収装置において、濾材が、外表面が平滑化された中空円筒状に形成されることが好ましく、この構成の場合、例えば濾材の周面部がひだ状に形成された構成と比較して、濾材に対して内側からエアを均一に吹き付けて、濾材(濾層)の外表面に残留する花粉を効果的に除去することが容易である。よって、花粉捕捉部材を逆流洗浄しやすい構成として、再利用することができる。
【0021】
さらに、ベース部に設けた開口部から、花粉収容殻部捕捉部材上に残留した花粉収容殻部を落とし込んで回収する花粉収容殻部回収部を備えることが好ましい。この構成によれ
ば、残留した花粉収容殻部を花粉収容殻部捕捉部材上から除去する際に、例えば摘み上げたりしなくても単にベース部上を滑らせて移動させるだけで、簡単に除去することができる。
【0022】
本発明に係る花粉回収方法は、作業台の作業空間内に花粉収容殻部を位置させるとともに、作業空間の空気を吸引装置に吸引させる第1のステップと、花粉収容殻部捕捉部材において花粉収容殻部を捕捉するとともに、花粉捕捉部材において、花粉収容殻部捕捉部材を通過した作業空間からの空気を通過させることにより花粉を捕捉する第2のステップとを、この順に実行する方法である。このため、作業空間内の空気が吸引装置に吸引される際に、作業空間内の花粉収容殻部は花粉収容殻部捕捉部材により捕捉された状態で、蓄えている花粉が吸引されて分離され、花粉捕捉部材により捕捉される。このようにして、花粉収容殻部と花粉とを別々に分けて回収することができる。よって、回収された花粉を篩にかけて混在物を除去する際に、従来構成と比較して篩作業の回数を減らすことができるので、花粉の回収ロスを少なくして花粉を効率良く回収できるとともに作業環境の改善を図ることができ、さらに作業工数を減らして花粉回収作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る花粉回収装置の正面図である。
図2】上記花粉回収装置の平面図である。
図3】上記花粉回収装置の拡大平面図である。
図4】カートリッジ収容部材へのフィルタカートリッジの取付構造を示す側断面図である。
図5】上記花粉回収装置に用いられるフィルタカートリッジを示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図6】上記花粉回収装置を用いて行われる花粉回収工程を含む一連の花粉取得工程の順序を示す図である。
図7図3中におけるVII−VII部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明を適用した一例としての花粉回収装置1の構成について、図1〜5を参照しながら説明する。花粉症の原因となる花粉を蓄える植物として、スギ、ヒノキ、マツ、シラカバ、ハンノキ、ブタクサおよびヨモギ等が知られているが、以下に説明する花粉回収装置1は、特にスギから採取されるスギ花粉を効率良く回収できる構成を有する。説明の便宜上、各図中に付記する矢印方向で前後、左右および上下方向を定義して説明を行う。
【0025】
花粉回収装置1は、図1〜3に示すように、正面視略門型に構成された吸引作業台2と、吸引作業台2の中央下部および右方に設けられたメイン花粉回収部3と、吸引作業台2の中央下部に設けられた雄花回収部4(図3参照)と、吸引作業台2の後方左側に設けられたサブ花粉回収部5とを備えて構成される。なお、この花粉回収装置1は花粉回収室R内に設置されており、花粉回収装置1を用いて花粉回収作業を行うときに、花粉回収室Rの外へ花粉が飛散しないようになっている。
【0026】
吸引作業台2は、上下に延びる左右一対の支持脚21,21と、平面視略矩形に形成されて支持脚21,21により支持された天板22と、天板22の上面を囲むように天板22に取り付けられたカバー部材23とを備えて構成される。図3に示すように、天板22には、中央部分において平面視略矩形となって上下に貫通する前側開口部22aと、前側開口部22aの後側において平面視略矩形となって上下に貫通する後側開口部22bとが形成されている。天板22における前側開口部22aが形成された部分には、この前側開
口部22aを覆うように網部材(金網)22cが取り付けられている。この網部材22cとして、スギ花粉を通過させるが、スギ雄花を捕捉可能な大きさの目開き寸法(例えば、約1mmの目開き寸法)を有する安価な汎用品(金網)を用いることが可能である。
【0027】
カバー部材23は、下方に向けて開放された箱状の部材であり、天板22の後端部から上方に立設されて左右に延びる後壁部23Bと、天板22の左端部から上方に立設されて前後に延びる左壁部23Lと、天板22の右端部から上方に立設されて前後に延びる右壁部23Rと、後壁部23B、左壁部23Lおよび右壁部23Rの上端部に繋がって略水平に延びる上壁部23Uと、上壁部23Uの前端部に取り付けられて下方に垂れ下がる透明なビニールシート23Fとを備えて構成される。このカバー部材23が天板22に取り付けられて、天板22およびカバー部材23(後壁部23B、左壁部23L、右壁部23R、上壁部23Uおよびビニールシート23F)により囲まれて略密閉された作業空間Sが形成される。上述のように、カバー部材23の前側部分が、可撓性を有した透明なビニールシート23Fを用いて構成されているので、このビニールシート23Fを上方に捲り上げることにより、作業空間S内への作業対象物(後述するスギの枝葉)の出し入れが可能である。また、ビニールシート23Fが透明なので、外部から作業空間S内の状態を目視で把握可能である。図1に示すように、後壁部23Bの左右中央部分には、前後に貫通するサブ側吸引孔23bが形成されており、このサブ側吸引孔23bを覆うように網部材(金網)23cが取り付けられている。この網部材23cは、例えば網部材22cと略同一の目開き寸法を有する金網を用いて構成される。
【0028】
メイン花粉回収部3は、作業空間S内の空気を下方へ吸引することによりこの空気に含まれる花粉を捕捉して回収するものであり、網部材22c(前側開口部22a)全体を下方から囲むように天板22に取り付けられて、下方に向けて窄まる形状を有するとともに上下に開放された内部空間を有する花粉受容部材(花粉用ホッパー)31と、円筒状に形成されて前後に延び花粉受容部材31の下方に設けられたカートリッジ収容部材32と、花粉受容部材31およびカートリッジ収容部材32の間に上下に延びて配設されて、これらの内部空間同士を繋ぐ円筒状の第1筒部材33と、カートリッジ収容部材32内に着脱自在に収容保持されるフィルタカートリッジ34と、カートリッジ収容部材32の下部に着脱自在に取り付けられて回収された花粉を貯留するメイン側花粉回収容器35と、作業台2の右方に設けられたメイン側ブロワ36と、カートリッジ収容部材32の後部(後述する第2筒部材32c)およびメイン側ブロワ36の吸引側接続部36aを繋ぐ第1配管部材37と、一端がメイン側ブロワ36の排気側接続部36bに接続されるとともに他端が花粉回収室Rの外部に繋がる第2配管部材38とを備えて構成される。
【0029】
カートリッジ収容部材32は、図4に示すように、円筒状に形成されて前後に延びる本体部材32a(二点鎖線示す部材)と、円盤状に形成されるとともに前後に貫通する孔部を有し本体部材32aの後側底部に取り付けられたアダプタ部材32bと、アダプタ部材32bに繋がって後方に延び第1配管部材37の一端が接続される筒状の第2筒部材32cと、アダプタ部材32bに取り付けられて前方に延びるセンターロッド32dと、厚み方向に貫通する多数の孔部を有する金属板材(パンチングメタルとも称される)を用いて、前後に延びる中心軸を有する円筒状に形成され、ナット32fをセンターロッド32dに螺合させることにより、アダプタ部材32bに押し付けて取り付けられる収容部材側チューブ部材32eとを備えて構成される。なお、収容部材側チューブ部材32eとして、樹脂材料により形成されたものを用いても良い。
【0030】
フィルタカートリッジ34は、図5に示すように、全体として前後に延びる円筒状に形成されており、円筒状に形成されたカートリッジ側チューブ部材34aと、カートリッジ側チューブ部材34aの径方向外側に配設された円筒状の濾材34bと、カートリッジ側チューブ部材34aおよび濾材34bの間に挟持された密着防止部材34cと、円盤状に
形成されて、カートリッジ側チューブ部材34a,濾材34bおよび密着防止部材34cの前後両端部に取り付けられたエンドプレート34d,34dと、円環状に形成されて、各エンドプレート34d,34dの前後外面に取り付けられたガスケット34g,34gとを備えて構成される。
【0031】
カートリッジ側チューブ部材34aは、収容部材側チューブ部材32eと同様にパンチングメタルを用いて、前後に延びる中心軸を有する円筒状に構成される。濾材34bは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PTEF(テフロン(登録商標)の商品名で知られるポリテトラフルオロエチレン)もしくはナイロン等の化学繊維材料にカレンダー加工を施して形成されており、平滑な表面を有する。また、この濾材34bは、スギ花粉を捕捉可能な大きさの開口、すなわち、スギ花粉の大きさ(約30〜35μm)よりも小さな開口(例えば約10μm)を有する。
【0032】
一方、密着防止部材34cは、濾材34bと同様にPET等を用いて形成され、例えば40mesh程度の開口(「mesh」は1インチあたりの開口の数を表しており、濾材34bよりも大きな開口)を有する。この密着防止部材34cをカートリッジ側チューブ部材34aと濾材34bとの間に挟持させることにより、カートリッジ側チューブ部材34aへの濾材34bの密着を防止できるようになっている。このため、濾材34bの径方向外側から径方向内側に向けて空気を通過させて、濾材34の外周面で空気中の花粉を捕捉して濾過するときの濾材34bの濾過面積(実際に空気が通過して、濾材として機能する部分の面積)を確保でき、効率の良い濾過が可能となっている。なお、この密着防止部材34cは、スギ花粉よりも大きな開口(40mesh)を有しており、スギ花粉を捕捉する機能を有しない。また、エンドプレート34dも、濾材34bと同様にPET等の材料を用いて形成される。ガスケット34gは、アダプタ部材32bおよび後述する枠部材34eとの気密性を確保するためのシール材である。このような中空円筒状の安価なフィルタカートリッジ34(後述するフィルタカートリッジ53)を用いることにより、花粉回収装置1の製造コストを抑えることができる。
【0033】
このフィルタカートリッジ34は、図4に示すように、カートリッジ収容部材32の本体部材32a内に着脱自在に収容されて保持される。より詳細に説明すると、フィルタカートリッジ34は、まず、中心軸を前後に向けて収容部材側チューブ部材32eに通される。そして、前端部に枠部材34eが取り付けられた状態でナット34fをセンターロッド32dに螺合させることにより、アダプタ部材32bと枠部材34eとにより前後に挟持されて本体部材32a内に保持される。一方、本体部材32aからフィルタカートリッジ34を取り外す場合には、ナット34fを緩めて枠部材34eを外すことにより、本体部材32aから前方にフィルタカートリッジ34を引き出して取り外すことができる。
【0034】
メイン側ブロワ36は、電動モータ(図示せず)、および電動モータの出力軸に連結された羽根車(図示せず)を有して構成され、電動モータにより羽根車を回転駆動させることで、吸引側接続部36aから吸引した空気を排気側接続部36bに排出するようになっている。ここで、作業空間Sと吸引側接続部36aとが、花粉受容部材31、第1筒部材33、カートリッジ収容部材32、フィルタカートリッジ34および第1配管部材37を介して接続されている。このため、メイン側ブロワ36を駆動させることにより、作業空間S内の空気を網部材22c、花粉受容部材31、第1筒部材33、カートリッジ収容部材32、フィルタカートリッジ34および第1配管部材37を通過させて、吸引側接続部36aからメイン側ブロワ36内に吸引した後、排気側接続部36bおよび第2配管部材38を通過させて花粉回収室Rの外部に排出することができる。
【0035】
雄花回収部4は、図3に示すように、後側開口部22bを下方から囲むように天板22
に取り付けられて、下方に向けて窄まる形状を有するとともに上下に開放された内部空間を有する雄花受容部材(雄花用ホッパー)41と、作業台2の後方に配設された雄花回収容器42(図2参照)と、雄花受容部材41と雄花回収容器42とを繋ぐ筒状の筒部材43とを備えて構成される。このため、天板22(網部材22c)上に堆積する枝葉の小片や雄花を、例えば刷毛等を用いて後方に移動させて後側開口部22bに落とし込むことにより、雄花受容部材41および筒部材43を通過させて雄花回収容器42(図2参照)で回収することができる。
【0036】
サブ花粉回収部5は、作業空間S内の空気を後方に吸引することにより、作業空間Sの空気中に飛散している花粉を捕捉して回収するものであり、その構成は、上述したメイン花粉回収部3の構成と基本的に同様である。すなわち、サブ花粉回収部5は、図3に示すように、作業台2の後方に配設されたサブ側ブロワ51と、円筒状に形成されて上下に延びるカートリッジ収容部材52と、カートリッジ収容部材52の下部に着脱自在に取り付けられて回収された花粉を貯留するサブ側花粉回収容器(図示せず)と、カートリッジ収容部材52内に着脱自在に収容保持されるフィルタカートリッジ53と、後壁部23Bに形成されたサブ側吸引孔23bおよびカートリッジ収容部材52の側部に接続された第1配管部材54と、カートリッジ収容部材52の上部とサブ側ブロワ51の吸引側接続部51aを繋ぐ第2配管部材55と、一端がサブ側ブロワ51の排気側接続部51bに接続されるとともに他端が花粉回収室Rの外部に繋がる第3配管部材56とを備えて構成される。
【0037】
フィルタカートリッジ53は、メイン花粉回収部3のフィルタカートリッジ34と同一構成を有しており、中心軸を上下に向けた状態でカートリッジ収容部材52内に着脱自在に収容保持される。
【0038】
サブ側ブロワ51は、メイン花粉回収部3のメイン側ブロワ36と基本的に同一構成を有しており、電動モータにより羽根車を回転駆動させることで、吸引側接続部51aから吸引した空気を排気側接続部51bに排出するようになっている。このため、サブ側ブロワ51を駆動させることにより、作業空間S内の空気を第1配管部材54、カートリッジ収容部材52、フィルタカートリッジ53および第2配管部材55を通過させて、吸引側接続部51aからサブ側ブロワ51に吸引した後、排気側接続部51bおよび第3配管部材56を通過させて花粉回収室Rの外部に排出することができる。
【0039】
このように構成される花粉回収装置1を用いて、スギの枝葉(雄花)から花粉を回収する作業を行うのであるが、この作業を含めた一連の花粉取得工程S1を示したものが図6である。図6に示すように、一連の花粉取得工程S1は、雄花育成工程S10、花粉回収工程S20、混在物除去工程S30および花粉乾燥工程S40からなり、このうちの「花粉回収工程S20」において、花粉回収装置1を用いてスギの枝葉から花粉を回収する作業が行われる。また、本実施形態に係る花粉回収方法は、この花粉回収工程S20において花粉回収装置1を用いて実行される方法である。次に、この図6を参照しながら、一連の花粉取得工程S1について説明する。すなわち、本実施形態に係る花粉回収工程S20に加え、本実施形態の理解のためにその前後の工程(雄花育成工程S10、混在物除去工程S30および花粉乾燥工程S40)についても簡単に、順を追って説明する。
【0040】
<雄花育成工程S10>
スギは、枝葉先端に密生する雄花の内部に花粉を蓄えており、この雄花が直径2mm程度で全長3〜5mm程度の楕円形状に成熟して開花することにより、花粉が外部に飛散しやすい状態となる。このため、雄花が開花した状態で花粉回収装置1による花粉回収を行えば、効率良く花粉を回収できる。そこで、花粉回収の前準備として雄花を育成して開花させる工程を設けており、それがこの雄花育成工程S10である。雄花育成工程S10で
は、本明細書の背景技術に挙げた特許文献1(特開2010‐263842号公報)に記載されているように、スギの樹木から、開花前の雄花を有する枝葉を伐採し、その枝葉(雄花)に花粉飛散防止用の紙袋を被せた後、この紙袋が被せられた枝葉を水耕栽培することにより雄花を育成して開花させる。このようにして雄花を開花させた後に、例えば送風機を用いて送風を行って、紙袋(枝葉および雄花を覆う紙袋)に風を当てることにより、雄花に蓄えられた花粉の乾燥度を、好ましくは14%以下にまで低下させる。このようにして花粉の乾燥度を低下させることにより、枝葉から雄花が自然に分離されやすくなる。
【0041】
<花粉回収工程S20>
続いて、花粉回収装置1を用いて、上記雄花育成工程S10により開花した雄花から花粉を回収する花粉回収工程S20を実行する。この花粉回収工程S20を実行するにあたって、まず、メイン側ブロワ36およびサブ側ブロワ51を駆動させ、作業空間Sの空気をメイン側ブロワ36およびサブ側ブロワ51に吸引させる。その状態で作業者は、作業空間Sに対して前方から(ビニールシート23F側から)紙袋が被せられた状態のスギの枝葉を挿入し、枝葉に被せられた紙袋を破る等して枝葉から外す。上述したように、雄花育成工程S10において花粉の乾燥度を14%以下にまで下げることにより、大部分の雄花が枝葉から自然に分離されて紙袋内に堆積させるようにすることができる。このため、枝葉から紙袋を外すと、紙袋内に放出されて充満する花粉が作業空間S内に放出されるとともに、紙袋内に堆積した雄花が天板22(網部材22c)上に落下する。ここで、網部材22cは雄花を捕捉可能な目開き寸法を有するので、雄花は網部材22cを通過することなく網部材22cに捕捉されて残留する。
【0042】
この状態を模式的に示したものが図7である。この図7には、紙袋Bの下部から下方に向けて花粉Kが放出されるとともに、紙袋B内の雄花Fが花粉Kをある程度蓄えた状態で網部材22c上に落下した状態を示している。下方に放出された花粉Kは、メイン側ブロワ36の吸引作用により、網部材22cを通って花粉受容部材31内に吸引される。一方、網部材22c上に落下した雄花Fはその表面および内部に花粉Kを蓄えているが、網部材22c上に捕捉されて残留したまま、メイン側ブロワ36の吸引作用により、蓄えられた花粉Kが網部材22cを通って花粉受容部材31内に吸引される。すなわち、メイン側ブロワ36の吸引作用により、網部材22c上において雄花F(花粉Kを蓄える殻部)と花粉Kとが分離される。このようにして花粉受容部材31内に吸引された花粉K(紙袋Bから放出された花粉K、およびメイン側ブロワ36の吸引作用により雄花Fから分離された花粉K)は、花粉受容部材31および第1筒部材33を通過してカートリッジ収容部材32内に流入した後、フィルタカートリッジ34を径方向外側から径方向内側に向けて空気が通過する際に、フィルタカートリッジ34(濾材34b)の表面で捕捉される。
【0043】
ここで、図7に示すように、カートリッジ収容部材32内における第1筒部材33との接続部分に、バッフル板32gが設けられている。このため、第1筒部材33からカートリッジ収容部材32内に流入する空気(花粉K)は、バッフル板32gにより左右に振り分けられて流入するので、フィルタカートリッジ34(濾材34b)の表面全体を使って効率良く花粉Kが捕捉される。また、上述のように、濾材34bはカレンダー加工が施されて外表面が平滑に形成されているので、捕捉された花粉Kは濾材34bの外表面を滑り落ちて、メイン側花粉回収容器35に貯留される。なお、フィルタカートリッジ34を径方向外側から径方向内側に向けて通過した空気(花粉Kが濾過された後の空気)は、第1配管部材37、メイン側ブロワ36および第2配管部材38を通過して花粉回収室Rの外部に排出される。以上の説明から分かるように、花粉回収装置1は、網部材22c上に雄花Fを捕捉した状態でメイン側ブロワ36により吸引することで、花粉回収の初期段階において雄花Fと花粉Kとを分離し、雄花Fを混在させることなく分離した状態で花粉Kを回収することができる。
【0044】
一方、作業空間S内に放出された花粉Kのうちで、サブ花粉回収部5に吸引された花粉Kは、第1配管部材54を通過してカートリッジ収容部材52内に流入した後、フィルタカートリッジ53を径方向外側から径方向内側に向けて空気が通過する際に、フィルタカートリッジ53の表面で捕捉される。フィルタカートリッジ53の表面で捕捉された花粉Kは、フィルタカートリッジ53の表面を滑り落ちてサブ側花粉回収容器に(図示せず)貯留される。なお、フィルタカートリッジ53を径方向外側から径方向内側に向けて通過した空気(花粉Kが濾過された後の空気)は、第2配管部材55、サブ側ブロワ51および第3配管部材56を通過して花粉回収室Rの外部に排出される。
【0045】
紙袋Bが外されて作業空間S内に花粉Kおよび雄花Fが放出された後の枝葉は、作業空間Sから取り出され、その後、次の枝葉(紙袋が被せられた枝葉)が作業空間S内に挿入される。このように枝葉を順次入れ替えるとともに、作業空間S内で紙袋Bを外して花粉Kおよび雄花Fを取り出す作業を繰り返して行って、花粉Kを回収する。なお、作業者は、網部材22c上に残留する雄花Fを適宜後方に移動させて雄花回収部4に落とし込むことにより、網部材22c上に残留する雄花Fを簡単に除去することができる。
【0046】
ところで、例えば雄花と花粉とを一緒に(混在させた状態で)回収する構成では、回収された花粉が雄花の表面に付着したり空殻内部(雄花内部)に入り込むため、花粉を効率良く分離回収することが難しくなり、その結果、分離回収作業に長時間を要することとなる。これに対して本発明に係る花粉回収装置1は、雄花が網部材22c上に捕捉されて、花粉回収の初期段階において花粉とほぼ分離され、且つ、網部材22c付近の空気がメイン側ブロワ36により吸引される構成であるため、回収された花粉が雄花の表面に付着したり空殻内部に入り込むことを防止でき、効率良く花粉を分離回収することができる。なお、紙袋を外す際に、枝葉から葉や枝の小片も分離されることがあるが、網部材22cの目開き寸法よりも大きな小片は網部材22cにより捕捉され、一方、網部材22cの目開き寸法以下の小片は、全体としてみれば僅かではあるが網部材22cを通過して、花粉と一緒にフィルタカートリッジ34の表面で捕捉される。
【0047】
ところで、花粉回収装置1により行われる花粉回収工程S20において、ロット毎にフィルタカートリッジ34,53を交換するロット管理が要求される場合がある。これは、フィルタカートリッジ34,53に残留する花粉の影響を排除したロット管理を行うためであるが、ロットが切り換わる毎に新たなフィルタカートリッジを用いると、花粉回収を行うに応じてランニングコストが増加する。そこで、花粉回収装置1においては、フィルタカートリッジ34,53の濾材(濾材34bおよび密着防止部材34c)を、ひだ状ではなく外表面が滑面とされた円筒状としている。このため、フィルタカートリッジ34,53の円筒内側からエアを吹き付ける逆流洗浄により、濾材全体に略均一にエアを吹き付けることができて、濾材に残留する花粉を除去しやすい。また、逆流洗浄によってもなお濾材に花粉が残留する場合があるので、カートリッジ収容部材32,52からフィルタカートリッジ34,53を取り外し、これらにエアを吹き付けて逆流洗浄した後に、たんぱく質を不活性化する液体に浸す。これにより、フィルタカートリッジ34,53が再利用可能となり、ロット毎にフィルタカートリッジを交換しながら花粉を回収する場合のランニングコストを抑えることができる。なお、必要に応じて、ロットが切り換わる毎に収容部材側チューブ部材32eを本体部材32aから取り外し、これにエアを吹き付けて花粉を除去するようにしても良い。
【0048】
<混在物除去工程S30>
続いて、メイン花粉回収部3(メイン側花粉回収容器35)で回収された花粉に混在する僅かな混在物(枝や葉の小片等)を除去して花粉の品質(純度)を高めるために、回収された花粉を超音波篩機(図示せず)にかけて混在物を除去する。このとき、比較的大きな枝葉や雄花のほとんどが網部材22c上で捕捉されて、メイン側花粉回収容器35内に
混入することがないので、従来のように、篩の目の大きさを変更して複数回に分けて篩作業を行う必要がない。このため、花粉の回収ロスを少なくして短時間で効率良く混在物を除去することができ、また、周囲へ飛散する花粉を抑えて作業環境の改善も図られる。さらに、この混在物除去工程S30は、花粉に対して極少量の混在物(網部材22cの目開き寸法以下の小片)が混在する回収物から、この極少量の混在物を分離する工程なので、この混在物を精度良く分離して純度の高い花粉を得ることが可能である。この効果は、純度の高い目的物(花粉)を得るためには、予め目的物の占める割合がなるべく大きくなるように設定する、というフィルタ理論の応用により得られるものである。なお、サブ花粉回収部5は、作業空間Sの空気中に飛散している花粉を後方へ吸引する構成なので、作業空間S内の空気を下方へ吸引するメイン花粉回収部3と比較して、吸引される混在物が少ない反面、吸引される花粉も少ない。換言すれば、サブ花粉回収部5において回収される花粉は、その量は少ないが、混在物も大幅に少ない品質(純度)の高いものである。
【0049】
<花粉乾燥工程S40>
続いて、上記混在物除去工程S30により混在物が除去された花粉を紙袋に詰めて、花粉乾燥設備(図示せず)内に収容する。そして、この花粉乾燥設備内に乾燥した空気を供給することにより、紙袋内の花粉を所定の乾燥度まで乾燥させて、所望の品質(純度および乾燥度)の花粉を得る。
【0050】
上述の実施形態において、花粉回収装置1とは別に超音波篩機を設けて、この超音波篩機により混在物除去工程S30の篩作業を行う構成を例示して説明したが、例えば以下のように構成することも可能である。すなわち、メイン側花粉回収容器35に貯留される花粉が超音波篩機に供給されるように、メイン側花粉回収容器35に超音波篩機を接続する構成も可能である。このように構成すれば、カートリッジ収容部材32からメイン側花粉回収容器35を外し、花粉を超音波篩機に投入する作業を省くことができるので、花粉を超音波篩機に投入する際に生じる花粉回収ロス(飛散する花粉)を減らすことができる。
【0051】
上述の実施形態においては、スギ花粉の回収に適した構成、具体的には、スギ雄花を捕捉可能な大きさの目開き寸法を有する網部材22c、およびスギ花粉を捕捉可能な大きさの開口を有する濾材34bを備えて構成される花粉回収装置1を例示して説明した。この花粉回収装置1は本発明を適用した一例であって、例えばヒノキの雄花を捕捉可能な大きさの目開き寸法を有する網部材、およびヒノキ花粉を捕捉可能な大きさの開口を有する濾材を用いることにより、ヒノキ花粉の回収に適した花粉回収装置を構成することができる。
【0052】
上述の実施形態においては、雄花育成工程S10、混在物除去工程S30および花粉乾燥工程S40の実施を前提とする花粉取得工程S1を例示して説明したが、本発明に係る花粉回収方法はこれに限定されない。例えば、開花した雄花を蓄える枝葉をスギの樹木から伐採し、この枝葉を作業空間Sに挿入して花粉回収を行う方法(雄花育成工程S10を省いた方法)でも良い。また、要求される花粉の品質(純度や乾燥度合)に応じて、混在物除去工程S30や花粉乾燥工程S40を省くことも可能である。
【0053】
上述の実施形態では、メイン側ブロワ36を吸引作業台2の右方に配置するとともに、サブ側ブロワ51およびカートリッジ収容部材52を吸引作業台2の後方に配置した構成を例示して説明しているが、メイン側ブロワ36等の配置構成はこれに限定されず、種々の配置構成とすることが可能である。例えばメイン側ブロワ36、サブ側ブロワ51およびカートリッジ収容部材52を、左右一対の支持脚21,21と天板22とによって囲まれる領域内に配置しても良く、このようにすれば、配管部材を短くしたコンパクトな花粉回収装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 花粉回収装置
2 吸引作業台(作業台)
3 メイン花粉回収部
4 雄花回収部(花粉収容殻部回収部)
5 サブ花粉回収部
22 天板(ベース部)
22b 後側開口部(開口部)
22c 網部材(花粉収容殻部捕捉部材)
23 カバー部材(カバー部)
31 花粉受容部材(接続部材)
32 カートリッジ収容部材(接続部材)
33 第1筒部材(接続部材)
34 フィルタカートリッジ(花粉捕捉部材)
34b 濾材
36 メイン側ブロワ(吸引装置)
37 第1配管部材(接続部材)
42 雄花回収容器(殻部収容部)
51 サブ側ブロワ(吸引装置)
S 作業空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7