特許第6607709号(P6607709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607709
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】近接センサ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/78 20060101AFI20191111BHJP
   H03K 17/945 20060101ALI20191111BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H03K17/78 S
   H03K17/945 K
   H03K17/945 B
   H03K17/78 B
   H01H35/00 V
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-116001(P2015-116001)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-5428(P2017-5428A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上平 祥嗣
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/188756(WO,A1)
【文献】 特開平10−026524(JP,A)
【文献】 特開2015−028455(JP,A)
【文献】 特開2013−145133(JP,A)
【文献】 特表2012−524274(JP,A)
【文献】 特開2015−087123(JP,A)
【文献】 特表2006−505783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/74−17/98
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置と、
複数の受光部を備えた受光装置と、
を有し、
前記複数の受光部は、前記発光装置と前記受光装置が並ぶ方向に沿って前記受光装置の表面上に配列されており、かつ、前記発光装置から遠い受光部ほどクロストークを招く不要な反射光を検出しにくくなるものであって、
前記受光装置は、
装置外部との信号授受を行うインタフェイス部と、
装置外部から入力される制御パラメータを格納するレジスタ部と、
前記制御パラメータに応じてどの受光部を使用するかを任意に選択する制御部と、
を含み、
前記制御部は、クロストークを招く不要な反射光を検出していない受光部のうち、前記発光装置から見て最も近い位置に設けられている受光部を選択することを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の受光部の選択手法として、前記近接センサに何ら物体を近接させていない状況下で前記発光装置から光を照射しておき、前記複数の受光部でそれぞれ生成される検出信号のうち、その信号レベルが閾値を下回っているものを実際に使用することを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記制御部は、使用する受光部を一つだけ選択し、その受光部で得られた検出信号をセンサ出力信号として装置外部に出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記受光装置は、
前記発光装置から第1距離を隔てた第1受光部と、
前記発光装置から前記第1距離よりも長い第2距離を隔てた第2受光部と、
前記発光装置から前記第2距離よりもさらに長い第3距離を隔てた第3受光部と、
を含み、
前記第1受光部ではクロストークを招く不要な反射光が検出される一方、前記第2受光部及び前記第3受光部ではいずれもクロストークを招く不要な反射光が検出されていない場合、前記制御部は、前記第2受光部を使用して前記第1受光部及び前記第3受光部を不使用とすることを特徴とする請求項3に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記制御部は、使用する受光部を二つ以上選択し、それぞれの受光部で得られた検出信号の合成結果をセンサ出力信号として装置外部に出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記発光装置は、面発光レーザ素子であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項7】
前記発光装置と前記受光装置との間を光学的に分離することなく一体的に封止する透光性の封止部材をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の近接センサ。
【請求項8】
前記発光装置は、発光ダイオード素子であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項9】
前記発光装置と前記受光装置との間を光学的に分離する遮光壁部材をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の近接センサ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の近接センサと、
前記近接センサに対向する開口窓を備えた筐体と、
を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式の近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式の近接センサは、これを搭載するセットの外部に向けて発光装置から赤外光を放射し、セットの外部から戻ってくる反射光を受光装置で検出することにより、物体の近接有無(=物体による放射光の反射有無)を検出する。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0083900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学式の近接センサに関しては、その検出精度を高めるためにクロストーク対策が極めて重要となる。
【0006】
図7は、近接センサの一従来例を示す模式図である。本従来例の近接センサ300は、基板310と、発光装置320と、受光装置330と、ケース部材340と、集光部材350及び360と、を有するモジュールとして構成されている。なお、発光装置320は発光ダイオード素子である。また、受光装置330には、セットの外部から入射される光(物体からの反射光)を検出する手段として、単一の受光部331が設けられている。
【0007】
近接センサ300で生じるクロストークの原因としては、(1)開口窓400の上面410から戻ってくる反射光Lx、(2)開口窓400の下面420から戻ってくる反射光Ly、及び、(3)モジュールの内部を伝わる漏洩光Lzを挙げることができる。
【0008】
(1)の反射光Lxに起因するクロストークについては、近接センサ300と開口窓400を隔てるギャップd31を調整することにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。ただし、赤外光を反射しにくい物体(黒髪など)の近接を正しく検出するために、当該クロストークを敢えて0レベルまで低減しない場合もある。
【0009】
(2)の反射光Lyに起因するクロストークについても、ギャップd31を調整することにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。
【0010】
(3)の漏洩光Lzに起因するクロストークについては、モジュール設計(遮光壁部材341の厚肉化、ないしは、発光装置320と受光装置330を隔てる受発光間距離d32の調整など)により、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。
【0011】
上記のように、従来のクロストーク対策は、基本的に、近接センサ300と開口窓400を隔てるギャップd31を調整することにより実現されていた。
【0012】
図8図10は、それぞれ、ギャップ調整手法のバリエーション(第1例〜第3例)を示す模式図である。
【0013】
図8の第1例では、近接センサ300とプリント配線基板500との間にインターポーザ(台座)600を設けることにより、ギャップ調整が行われている。なお、近接センサ300とプリント配線基板500との間は、インターポーザ600の内部に形成されたビア(不図示)を介して電気的に接続されている。
【0014】
図9の第2例では、近接センサ300が搭載されるフレキシブル配線基板700を屈曲させて厚肉部材800(スポンジゴムなど)を挟み込むことにより、ギャップ調整が行われている。
【0015】
図10の第3例では、近接センサ300の上面に厚肉部材900(スポンジゴムなど)を設けることにより、ギャップ調整が行われている。なお、厚肉部材900には、近接センサ300の集光部材350及び360にそれぞれ対応するように、開口部910及び920が形成されている。なお、第2例(図9)と第3例(図10)は併用してもよい。
【0016】
上記従来のギャップ調整手法によれば、ギャップd31を任意に調整することができるので、反射光Lx及びLyに起因するクロストークを低減することが可能となる。
【0017】
しかしながら、第2例(図9)や第3例(図10)のギャップ調整手法では、ギャップd31のばらつきや厚肉部材800及び900のがたつきが生じやすく、クロストークの低減効果が不安定になるという課題があった。
【0018】
また、上記従来のギャップ調整手法では、近接センサ300以外に別途のギャップ調整部材(600、800、900)を必要とする上、仕様の異なるセット毎に厚さが最適化されたギャップ調整部材(600、800、900)を複数用意しておかなければならないので、作業負担の増大やセット全体のコストアップを招くという課題もあった。
【0019】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、セット毎のクロストーク対策が容易な近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書中に開示されている近接センサは、発光装置と、複数の受光部を備えた受光装置と、を有し、前記受光装置は、どの受光部を使用するかを任意に選択する機能を備えている構成(第1の構成)とされている。
【0021】
なお、上記第1の構成から成る近接センサにおいて、前記複数の受光部は、前記発光装置と前記受光装置が並ぶ方向に沿って前記受光装置の表面上に配列されている構成(第2の構成)にするとよい。
【0022】
また、上記第1または第2の構成から成る近接センサにおいて、前記受光装置は、装置外部との信号授受を行うインタフェイス部と、装置外部から入力される制御パラメータを格納するレジスタ部と、前記制御パラメータに応じて使用する受光部を選択する制御部とを含む構成(第3の構成)にするとよい。
【0023】
また、上記第3の構成から成る近接センサにおいて、前記制御部は、使用する受光部を一つだけ選択し、その受光部で得られた検出信号をセンサ出力信号として装置外部に出力する構成(第4の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第3の構成から成る近接センサにおいて、前記制御部は、使用する受光部を二つ以上選択し、それぞれの受光部で得られた検出信号の合成結果をセンサ出力信号として装置外部に出力する構成(第5の構成)にするとよい。
【0025】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光装置は、面発光レーザ素子である構成(第6の構成)にするとよい。
【0026】
また、上記第6の構成から成る近接センサは、前記発光装置と前記受光装置との間を光学的に分離することなく一体的に封止する透光性の封止部材をさらに有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0027】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光装置は、発光ダイオード素子である構成(第8の構成)にするとよい。
【0028】
また、上記第8の構成から成る近接センサは、前記発光装置と前記受光装置との間を光学的に分離する遮光壁部材をさらに有する構成(第9の構成)にするとよい。
【0029】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第1〜第9いずれかの構成から成る近接センサと、前記近接センサに対向する開口窓を備えた筐体と、を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0030】
本明細書中に開示されている発明によれば、セット毎のクロストーク対策が容易な近接センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】近接センサの第1実施形態を示す模式図
図2】受光装置の一構成例を示すブロック図
図3】電子機器の第1構成例を示す模式図
図4】電子機器の第2構成例を示す模式図
図5】近接センサの第2実施形態を示す模式図
図6】スマートフォンの外観図
図7】近接センサの一従来例を示す模式図
図8】ギャップ調整手法の第1例を示す模式図
図9】ギャップ調整手法の第2例を示す模式図
図10】ギャップ調整手法の第3例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
図1は、近接センサの第1実施形態を示す模式図である。なお、本図の上段には近接センサ100の模式的な上面図が描写されており、本図の下段にはA1−A2縦断面図が描写されている。
【0033】
本実施形態の近接センサ100は、基板110と、発光装置120と、受光装置130と、封止部材140と、を有するモジュールとして構成されている。
【0034】
基板110は、発光装置120と受光装置130を担持する板状部材である。
【0035】
発光装置120は、近接センサ100を搭載するセットの外部に向けて光を放射する半導体素子である。本実施形態の近接センサ100では、発光装置120として、光の共振方向が基板面に対して垂直な面発光レーザ素子(いわゆるVCSEL[vertical cavity surface emitting LASER]レーザ素子)が用いられている。
【0036】
面発光レーザ素子は、発光ダイオード素子と比べて放射光の指向角が狭い。従って、モジュールの内部を伝わる漏洩光に起因したクロストークを考慮せずに済むので、遮光壁部材を省略し、発光装置120と受光装置130を隔てる受発光間距離を縮めることが可能となる。これにより、セットの設けられる開口窓の直径を小さくすることができるので、セットの意匠性を高めることが可能となる。また、発光装置120の出射光を収束させるための集光部材も不要となる。
【0037】
受光装置130は、セットの外部から入射される光を受光する半導体集積回路装置(受光IC)である。本実施形態の近接センサ100では、受光装置130の表面上に複数の受光部131〜134が設けられており、受光装置130は、どの受光部を使用するかを任意に選択する機能を備えている(詳細は後述)。
【0038】
受光部131〜134は、本図で示したように、発光装置120と受光装置130が並ぶ方向に沿って受光装置130の表面上に配列されている。なお、本図の例では、発光装置120から見て相対的に遠い領域に受光部131〜134が偏在して配列されている。受光部131〜134が配列されていない領域(=非受光領域)には、受光装置130に必要な種々の回路要素を形成すればよい。
【0039】
ただし、受光部131〜134の配列レイアウトについては、あくまでも一例であり、他の配列レイアウトを採用しても構わない。また、受光部の設置数についても任意(2以上)である。
【0040】
封止部材140は、発光装置120と受光装置130との間を光学的に分離することなく一体的に封止する透光性の樹脂部材である。
【0041】
図2は、受光装置130の一構成例を示すブロック図である。本構成例の受光装置130は、先に説明した受光部131〜134に加えて、インタフェイス部135と、レジスタ部136と、制御部137と、を含む。
【0042】
受光部131〜134は、それぞれ、発光装置120から放射される光の波長に感度ピークを持つ受光素子(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)であり、受光量に応じた検出信号S1〜S4を出力する。
【0043】
インタフェイス部135は、所定の通信プロトコル(ICプロトコルなど)に準拠して、装置外部との信号授受を行うフロントエンド手段である。
【0044】
レジスタ部136は、インタフェイス部135を介して装置外部から入力される制御パラメータD1を揮発的ないしは不揮発的に格納する。
【0045】
制御部137は、レジスタ部136から読み出される制御パラメータD1に応じて、受光部131〜134の中から実際に使用する受光部を選択する。より具体的に述べると、制御部137は、受光部131〜134に対する電力の供給/遮断を司っており、使用対象とされた受光部にのみ電力供給を行う構成とされている。このような構成とすることにより、使用されない受光部で電力を浪費せずに済む。
【0046】
なお、受光部の選択手法については、種々のバリエーションが考えられる。例えば、制御部137は、受光部131〜134の中から実際に使用する受光部を一つだけ選択し、その受光部で得られた検出信号を最終的なセンサ出力信号Sdetとして、インタフェイス部135から装置外部に出力するようにすればよい。
【0047】
或いは、制御部137は、受光部131〜134の中から実際に使用する受光部を二つ以上選択し、それぞれの受光部で得られた検出信号の合成結果(合算値や平均値など)を最終的なセンサ出力信号Sdetとして、インタフェイス部135から装置外部に出力するようにしてもよい。
【0048】
図3は、近接センサ100を搭載した電子機器の第1構成例を示す模式図である。本構成例の電子機器1は、近接センサ100と、これを担持する筐体200と、有している。筐体200には、近接センサ100に対向する透光性の開口窓210が形成されている。なお、セットの各部寸法は、筐体厚d11、ギャップd12、受発光間距離d13、開口窓径φ1、及び、放射角αとする。
【0049】
ここでは、開口窓210の上面211から戻ってくる反射光L1に起因するクロストークについて検討する。
【0050】
第1例の電子機器1では、発光装置120から放射された光が開口窓210の上面211で反射され、反射光L1として受光装置130に戻ってくる。ただし、本図の例では、反射光L1が非受光領域(受光部131〜134の非配置領域)にしか当たらない。従って、受光部131〜134のいずれを使用したとしても、クロストークの原因となる反射光L1が検出されることはない。
【0051】
このような状況であれば、発光装置120から見て最も近い位置に設けられている受光部131を選択することにより、開口窓径φ1の小径化にも対応することが可能となる。また、必要に応じて受光部132〜134を適宜併用してもよい。
【0052】
図4は、電子機器の第2構成例を示す模式図である。なお、本構成例の電子機器1は、基本的に先出の第1構成例と同様であるが、セットの各部寸法(筐体厚d21、ギャップd22、受発光間距離d23、開口窓径φ2、及び、放射角α)が異なっている。より具体的に述べると、第2構成例では、ギャップd22と開口窓径φ2が第1構成例よりも大きく設計されている(d22>d12、φ2>φ1)。
【0053】
ここでも、開口窓210の上面211から戻ってくる反射光L2に起因するクロストークについて検討する。
【0054】
第2例の電子機器1においても、発光装置120から放射された光が開口窓210の上面211で反射され、反射光L2として受光装置130に戻ってくる。ここで、本図の例では、先の第1例(図3)と異なり、反射光L2が受光領域の一部(受光部131及び132)に当たっている。従って、受光部131または132を使用した場合には、クロストークの原因となる反射光L2を検出してしまうおそれがある。
【0055】
このような状況では、発光装置120から見て受光部132よりもさらに遠い位置に設けられている受光部133または134を選択すればよいことが分かる。
【0056】
上記の第1例(図3)や第2例(図4)で示したように、受光装置130の表面上に複数の受光部131〜134を設けて、どの受光部を選択するかを任意に設定可能とすることにより、規格の異なるセット毎のクロストーク対策として、煩雑なギャップ調整作業が基本的に不要となる。従って、セット毎のクロストーク対策が容易かつ安価となるので、セット設計のフレキシビリティを高めることが可能となる。
【0057】
また、同一規格のセットに搭載される近接センサ100については、そのキャリブレーション(出荷時調整)ができるので、製品の信頼性を高めることが可能となる。
【0058】
なお、受光部131〜134の選択手法としては、例えば、近接センサ100に何ら物体を近接させていない状況下で発光装置120から光を放射しておき、受光部131〜134でそれぞれ生成される検出信号S1〜S4のうち、その信号レベルが閾値を下回っているもの(=クロストークを招くおそれのある不要な反射光を検出していないもの)を実際に使用するようにすればよい。
【0059】
また、先にも述べたように、第1実施形態の近接センサ100では、発光装置120として面発光レーザ素子を用いているので、封止部材140によるシングルモールドパッケージを採用することができる。従って、近接センサ100の製造工程を簡易化し、モジュールの小型化やコストダウンを実現することが可能となる。
【0060】
<第2実施形態>
図5は、近接センサの第2実施形態を示す模式図である。本実施形態の近接センサ100は、受光装置130が複数の受光部131〜134を備えている点において、先の第1実施形態と共通している。ただし、発光装置120として発光ダイオード素子を用いている点において、先の第1実施形態とは相違する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0061】
発光ダイオード素子は、面発光レーザ素子と比べて放射光の指向角が広い。従って、発光装置120として発光ダイオード素子を用いる場合には、発光装置120と受光装置130を遮光性のケース部材150で覆うとともに、発光装置120と受光装置130との間を光学的に分離する遮光壁部材151を設ける必要がある。また、ケース部材150には、発光装置120及び受光装置130とそれぞれ対向する位置に透光性の集光部材160及び170を形成すればよい。
【0062】
すなわち、第2実施形態の近接センサ100は、従来例(図7)の近接センサ300をベースとしつつ、受光部の設置数を2以上に増やし、どの受光部を選択するかを任意に設定可能とした構成であると言える。このような構成を採用することにより、先の第1実施形態と同様、規格の異なるセット毎のクロストーク対策として、煩雑なギャップ調整作業が基本的に不要となるので、セット設計のフレキシビリティを高めることが可能となる。
【0063】
<スマートフォンへの適用>
図6は、スマートフォンの外観図である。スマートフォンXは、電子機器1の一具体例であり、外観的には、タッチパネル機能を備えた表示画面X1(液晶ディスプレイや有機EL[electro-luminescence]ディスプレイ)と、光学式の近接センサX2と、スピーカX3及びマイクX4と、を有する。
【0064】
スマートフォンXでの音声通話時には、ユーザの耳と口がそれぞれスピーカX3とマイクX4に近付けられる。このとき、表示画面X1にはユーザの頬が近接するので、これを近接センサX2で検出して表示画面X1のタッチパネル機能をオフさせることにより、音声通話時における意図しないタッチ操作を未然に防止することができる。
【0065】
なお、近接センサX2としては、これまでに説明してきた近接センサ100を好適に用いることが可能である。
【0066】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、携帯型の電子機器(スマートフォンやデジタルカメラなど)に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 電子機器
100 近接センサ
110 基板
120 発光装置
130 受光装置
131〜134 受光部
135 インタフェイス部
136 レジスタ部
137 制御部
140 封止部材
150 ケース部材
151 遮光壁部材
160、170 集光部材
200 筐体
210 開口窓
211 上面
X スマートフォン
X1 表示画面
X2 近接センサ
X3 スピーカ
X4 マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10