(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量平均分子量(Mw)が1〜30万、分散指数(Mw/Mn)1.0〜2.0の範囲にあり、下記ブロック[A]とブロック[B]が[A]−[B]−[A]で表される構造を有する(メタ)アクリル系トリブロックポリマーであって、
[A]ブロックは、ガラス転移温度(Tg)が100〜250℃の範囲にあって、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー全体に対して10〜40質量%の範囲にあり、ブロックを構成するモノマー単位は、水酸基以外の官能基含有モノマーが(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを形成するモノマー100質量%に対して0.1〜5質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを形成するモノマー100質量%に対して5〜39.9質量%であり、
[B]ブロックは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であって、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー全体に対して90〜60質量%の範囲にあり、実質的に官能基を含まず、
[A]ブロックと[B]ブロックの合計は100質量%である、(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを含み、
さらに、硬化剤として金属キレート系化合物を、前記(メタ)アクリル系トリブロックポリマー100質量部に対して0.01〜5質量部の量で含むことを特徴とする偏光板用粘着剤組成物(ただし、前記(メタ)アクリル系トリブロックポリマー、および前記(メタ)アクリル系トリブロックポリマー以外のアクリル系粘着剤を含み、前記(メタ)アクリル系トリブロックポリマーの配合量が前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して固形分換算で0.1〜10質量部である粘着剤組成物を除く)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<偏光板用粘着剤組成物>
本発明に係る偏光板用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを含む。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロはアクリロまたはメタクリロを意味する。
【0017】
〔(メタ)アクリル系トリブロックポリマー〕
本発明で使用される(メタ)アクリル系トリブロックポリマーは、ブロック[A]とブロック[B]が、[A]−[B]−[A]で表される構造を有する(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを示す。
【0018】
[A]ブロック
[A]ブロックは、ガラス転移温度(Tg)が100〜250℃の範囲にあり、水酸基以外の官能基含有モノマー(a−1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a−2) を構成要素として含む(メタ)アクリル系ポリマーである。
[A]ブロックのTgは、100〜250℃の範囲内にあると、物理的な擬似架橋点として作用する硬さを発現できる。
【0019】
各重合体ブロックのガラス転移温度(Tg)は、当該重合体ブロックを構成するモノマー単位及びその含有割合から、Foxの式により算定することができる。例えば、Foxの式により求めたガラス転移温度(Tg)が上記範囲となるように、重合体ブロックを合成することが出来る。
Foxの式:1/Tg=(W
1/Tg
1)+(W
2/Tg
2)+・・・+(W
m/Tg
m)
W
1+W
2+・・・+W
m=1
式中、Tgは重合体ブロックのガラス転移点であり、Tg
1,Tg
2,・・・,Tg
mは各モノマー由来の構成単位の前記重合体ブロックにおける重量分率である。
【0020】
前記Foxの式における各単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、Polymer Handbook Forth Edition Volume 1 (Wiley−Interscience 2003)記載の値を用いることができる。
上記に記載が無いTgは、例えば、示差走査型熱量計(DSC)により測定できる。DSCの測定条件としては、試料5mg、窒素雰囲気下とし、1回目の測定(1st RUN)で昇温速度20℃/分で−100℃から200℃まで昇温した後、降温速度99.9℃/分で−100℃まで冷却し、さらに2回目の測定(2nd RUN)で昇温速度20℃/分で−100℃から200℃まで昇温する。ここでガラス転移温度は、2nd RUNにおいて−100℃から200℃まで昇温したときに測定されるDSC曲線のベースラインが吸熱方向にシグモイド型に変化する領域において、シグモイド型に変化する領域より低温側のベースラインの延長線と、シグモイドにおける変曲点の接線の交点を指す。
【0021】
水酸基以外の官能基含有モノマー(a−1)としては、酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素系複素環含有モノマー、シアノ基含有モノマーが挙げられる。
【0022】
本明細書において酸基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸が挙げられる。
【0023】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。窒素系複素環含有モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタムが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0024】
これらのうち、モノマー(a−1)としては、ガラス基板等の被着体への密着性が高く、耐久性が向上することから、カルボキシル基含有モノマーから選択される少なくとも1種が好ましい。モノマー(a−1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0025】
(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを形成するモノマー成分100質量%中、モノマー(a−1)の使用量は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%の範囲にある。使用量が前記範囲にあると、ガラス転移温度を上記範囲に調整できるとともに、耐久性と応力緩和性のバランスを取ることができる。
なお、水酸基を含む官能基含有モノマーを使用すると、水酸基は反応性に富む為、架橋反応が進行しすぎてしまい、応力緩和性が低下し、耐久性とのバランスを取ることが困難となる。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−2)としては、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(CH
2=CR
1−COOR
2;R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1〜18のアルキル基である)が用いられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレートが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
メタアクリル系トリブロックポリマーを形成するモノマー成分100質量%中、モノマー(a−2)の使用量は、通常5〜39.9質量%、好ましくは10〜20質量%の範囲にある。
[A]ブロックには、上記以外に、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレート等のその他のモノマーが共重合されていてもよい。
【0028】
[B]ブロック
[B]ブロックは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であり、実質的に官能基を含まない(メタ)アクリル系ポリマーである。[B]ブロックを構成する(メタ)アクリル系ポリマーとしては、ホモポリマーのTgが0℃以下のモノマー(a−3)を共重合して得られた(共)重合体である。
[B]ブロックにおける実質的官能基量は、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0029】
[B]ブロックのTgは、0℃以下であると、粘着剤層の柔軟性、すなわち偏光板の熱収縮に対する追従性および被着体への濡れ性において望ましい。
ブロック[B]のガラス転移温度(Tg)は、ブロック[A]と同様の手法で求めることができる。
【0030】
モノマー(a−3)としては、例えば、CH
2=CR
1−COOR
2(R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数1〜18のアルキル基である)で表される化合物のうち、ホモポリマーのTgが0℃以下である化合物が挙げられる。 具体的には、エチルアクリレート(−24℃)、プロピルアクリレート(−37℃)、ブチルアクリレート(−54℃)、ラウリルアクリレート(−3℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−50℃)、ヘキシルメタクリレート(−5℃)、オクチルメタクリレート(−20℃)、ラウリルメタクリレート(−65℃)、が挙げられる。括弧内の数値は、各モノマーのホモポリマーのTgを示す。
【0031】
モノマー(a−3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
[B]ブロックには、上記以外に、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレート等のその他のモノマーが共重合されていてもよい。
また、最終的に[B]ブロックのTgが0℃以下になるのであれば、Tgが0℃以上のモノマーが共重合されていてもよい。
【0032】
トリブロックポリマー組成
本発明で使用されるトリブロックポリマーは、前記ブロック[A]とブロック[B]が、[A]−[B]−[A]で表される構造を有し、重量平均分子量(Mw)1万〜30 万、分散指数(Mw/Mn)1.0〜2.0 の範囲にある。この範囲にあるものは耐久性と応力緩和性のバランスを取ることができる。
本発明で使用されるトリブロックポリマーの分子量および分散指数は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、求めることができる。
【0033】
本発明では、[A]ブロック 、[B] ブロックとの間のガラス転移温度に100℃以上の差を付けているので、両者の相溶性は著しく低いものとなる。ガラス転移温度差(ΔTg
A-B)は、好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。
本発明では、相溶性の著しく低い[A] ブロックと[B]ブロック が一本のポリマーにトリブロック状に共重合され、さらに分散指数(Mw/Mn)が1.0〜2.0とする。
このような[A]ブロック、[B]ブロックから構成される所定のガラス転移温度差および分散指数を有することで、ポリマー分子間での[A] ブロックの自己組織化、[B]ブロックの自己組織化が促されると考えられ、これによって、粘着剤層中にミクロ相分離構造が自己組織化され、[A] ブロックのハードセグメントが疑似架橋点として働くようになると考えられる。
【0034】
[A]ブロックは、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー全体の重量の10〜40質量%、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%であり、[B]ブロックは、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー全体の90〜60質量%、好ましくは90〜70質量%、さらに好ましくは90〜80質量%の範囲にある。
【0035】
Tg が高い[A]ブロック が少なすぎると疑似架橋構造が形成しなくなり、[A]ブロックが多すぎるとトリブロックポリマーのTg が高くなりすぎて粘着性を損ない、粘着剤として機能しにくくなるものと考えられる。このようなトリブロックポリマーを使用すると、塗工直後の自己組織化により低分子量・低ゲル分率でありながらも耐久性を満たすに十分な凝集力を有する粘着剤が得られ、且つ低ゲル分率であるので光漏れが無い粘着剤を得ることができる。
【0036】
上記したトリブロックポリマーは、一般的なリビングラジカル重合を用いて製造することができる。このうち、重合反応の制御の容易さの点などから、原子移動ラジカル重合によって好適に製造することができる。原子移動ラジカル重合法は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、金属錯体を触媒とする重合法である。リビングラジカル重合法によりトリブロックポリマーを製造する場合、モノマー単位を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次の重合体ブロックを重合する方法、別々に重合した重合体ブロックを反応により結合する方法などが挙げられるが、モノマー単位の逐次添加による方法によってトリブロックポリマーを製造することが好ましい。
【0037】
モノマー単位の逐次添加によりトリブロックポリマーを製造する場合、[A]ブロックを構成するモノマー成分と、[B]ブロックを構成するモノマー成分との添加順序について、特に制限されないが、先に[B]ブロックを重合して、[B]ブロックの重合末端から[A]ブロックを重合させる方が、重合制御が容易である。
【0038】
また、塊状重合法によってポリマーを合成することで、有機溶剤を一切含まないホットメルト型粘着剤として、アクリルモノマーで希釈する事によってエネルギー線硬化型粘着剤としての製品形態も可能であり、環境配慮型の粘着剤とすることも可能である。
【0039】
上記ブロックポリマーは塗工直後の自己組織化により低分子量・低ゲル分率でありながらも十分な凝集力を有している。このため、かかるトリブロックポリマーを含む粘着剤組成物は、養生期間が不要な粘着剤となる。このため、必ずしも架橋剤や硬化剤の添加の必要はないが、硬化剤を加えることによりさらに強固な凝集力を得ることも可能である。硬化剤として公知の多官能硬化剤を使用することも可能である。
【0040】
硬化剤
本発明では、組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。
硬化剤としては、金属キレート系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられるが、組成物を塗工直後に架橋の完成する金属キレート系化合物を用いることが好ましい。
【0041】
金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、特にアルミキレート化合物が好ましい。具体的には、アルミニウムiso-プロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジiso−プロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0043】
金属キレート系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。金属キレート系化合物は、配位結合によりトリブロックポリマーを架橋する(疑似架橋)。金属キレート系化合物を用いる場合、塗工直後に架橋が完成し、養生を必要としないため、養生期間不要の粘着剤とすることができる。
また、通常は養生に一週間程度を要するイソシアネート系やエポキシ系のような一般的な硬化剤を用いた場合にも養生期間の短縮が可能である。
【0044】
イソシアネート系化合物としては、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられる。イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4〜30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7〜30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8〜30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0045】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。さらに、イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0046】
また、[A]ブロックが、カルボキシル基を有する場合は、硬化剤としてエポキシ系化合物も利用できる。エポキシ系化合物としては、例えば、1分子中のエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物が通常用いられる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N' ,N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンが挙げられる。
【0047】
硬化剤は、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは、0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部の範囲にある。この範囲で硬化剤を含むと耐久性と応力緩和性のバランスを取ることができる。
【0048】
本発明で使用されるトリブロックポリマーにおいては塗工直後に自己組織化が起こり官能基を含有する[A]セグメントが集合する形となる。これにより官能基同士も近接しあうこととなり硬化剤との反応によるポリマー間の架橋が迅速に進むと考えられる。このため、養生期間が不要、あるいは著しく短縮できると考えられる。
【0049】
ランダムポリマーの場合には官能基は当然のことながらポリマー中にランダムに導入され、且つ塗工直後の構造もランダム構造を採っているので官能基同士は離れており硬化剤との反応による架橋構造の形成はブロックポリマーと比べて遅くなるため養生期間として一週間程度を要するようになると考えられる。
【0050】
シランカップリング剤
本発明の組成物は、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤は、粘着剤層をガラス基板等の被着体に対して強固に接着させ、高湿熱環境下で偏光板の剥がれを防止でき、前記ブロックポリマーと組み合わせると耐久性の向上効果が大きい。
【0051】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0052】
このうち、応力緩和性などの点でエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー100質量部に対して、通常1質量部以下、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。含有量が前記範囲にあると、高湿熱環境下における偏光板の剥がれや、高温環境下におけるシランカップリング剤のブリードが防止される傾向にある。
【0053】
一般にランダムラジカル重合で合成されたポリマーは官能基がポリマー中にランダムに導入されるためシランカップリング剤を用いてガラス基板等の被着体との接着を図った場合にはポリマーとガラス基板等の被着体界面との接着は強固なものとなり応力緩和性に乏しくなる。
【0054】
これに対し、本発明においてはトリブロックポリマーの[A]ブロック にのみ官能基を導入させているので、ガラス基板などの基材との接着性を確保しつつも官能基が導入されていないソフトセグメントである[B]ブロックの効果(flexibility)により応力緩和性を同時に付与することを両立させている。これにより耐久性と光漏れ特性を両立させることが可能となる。そして、さらにシランカップリング剤と併用することでこの効果を高めることができる。
【0055】
帯電防止剤
本発明の組成物には、帯電防止剤が含まれていてもよく、具体的には界面活性剤、イオン性化合物、導電性ポリマーが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩類、アミド4級アンモニウム塩類、ピリジウム塩類、第1級〜第3級アミノ基等のカチオン性基を有するカチオン性界面活性剤;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン性基を有するアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アルキルイミダゾリニウムベタイン類、アルキルアミンオキサイド類、アミノ酸硫酸エステル類等の両性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル類、N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシアルキルアミン類、アルキルジエタノールアミド類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
また、界面活性剤として重合性基を有する反応型乳化剤も挙げられ、上記の界面活性剤または反応性乳化剤を含むモノマー成分を高分子量化したポリマー系界面活性剤を用いることもできる。
【0056】
イオン性化合物は、カチオン部とアニオン部とから構成され、室温下(23℃/50%RH)では固体状でも液体状のいずれであってもよい。
イオン性化合物を構成するカチオン部としては、無機系カチオンまたは有機系カチオンのいずれか一方であっても双方であってもよい。無機系カチオンとしては、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが好ましく、帯電防止性が優れたLi
+、Na
+およびK
+がより好ましい。有機系カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリンカチオン、ピロールカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0057】
イオン性化合物を構成するアニオン部としては、カチオン部とイオン結合してイオン性化合物を形成し得るものであれば特に制限されない。具体的には、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、AlCl
4-、Al
2Cl
7-、BF
4-、PF
6-、SCN
-、ClO
4-、NO
3-、CH
3COO
-、CF
3COO
-、CH
3SO
3-、CF
3SO
3-、(CF
3SO
2)
2N
-、(F
2SO
2)
2N
-、(CF
3SO
2)
3C
-、AsF
6-、SbF
6-、NbF
6-、TaF
6-、F(HF)
n-、(CN)
2N
-、C
4F
9SO
3-、(C
2F
5SO
2)
2N
-、C
3F
7COO
-および(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
-が挙げられる。これらの中では、フッ素原子を含むアニオンは、低融点のイオン性化合物を与えるので好ましく、(F
2SO
2)
2N
-および(CF
3SO
2)
2N
-がとりわけ好ましい。
【0058】
イオン性化合物としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ジフルオロスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウムビス(ジフルオロスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−オクチル−4−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチルピリジニウムフルオロスホニウムイミド、1−オクチル−3−メチルピリジニウム、トリフルオロスルホニウムイミドが好ましい。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物において、帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系トリブロックポリマー100質量部に対して、通常3質量部以下、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜2.5質量部である。
【0060】
有機溶媒
本発明の粘着剤組成物は、必ずしも溶媒を含まなくともよいが、その塗工性を調整するため、有機溶媒を含有していてもよい。本発明の粘着剤組成物において、有機溶媒の含有量は、通常50〜90質量%、好ましくは60〜85質量%である。
【0061】
なお、本明細書において「固形分」とは、粘着剤組成物中の含有成分のうち上記有機溶媒を除いた全成分をいい、「固形分濃度」とは、粘着剤組成物100質量%に対する前記固形分の割合をいう。
【0062】
その他添加剤
本発明の粘着剤組成物は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、金属腐蝕防止剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋促進剤、ナノ粒子などを含有してもよい。
【0063】
偏光板用粘着剤組成物の調製
本発明の組成物は、(メタ)アクリル系ブロックポリマーと、必要に応じて硬化剤、シランカップリング剤、有機溶媒とを、従来公知の方法により混合することで調製することができる。例えば、(メタ)アクリル系ブロックポリマーを合成する際に得られた、当該ポリマーを含むポリマー溶液に、硬化剤などを必要に応じて他の成分を配合することが挙げられる。
【0064】
本発明の粘着剤組成物を用いて、偏光子の片面のみに偏光子保護層を有する偏光板、および偏光子の両面に偏光子保護層を有さない偏光板上に粘着剤層を形成した際にも、偏光板および基板の反り、ならびに光漏れ現象を抑制することができる。また、本発明では、偏光子に粘着剤層が直接接触する構成でも、高温・高湿熱環境下において、粘着剤層の断裂、偏光板の剥がれ等を抑制することができる。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、液晶セルを構成する基板と偏光板の貼り合わせ用途に好適である。
本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤のゲル分率は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。前記ゲル分率は、例えば実施例記載の条件により測定される値である。
【0066】
<偏光板用粘着剤層>
本発明の偏光板用粘着剤層は、上述の粘着剤組成物より形成される。本発明の粘着剤組成物を用いることで形成することができる。
【0067】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【0068】
支持体およびカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。
【0069】
本発明の粘着剤層は、以上の特性を有することから、高温・高湿熱環境下においても光漏れ防止性に優れている。また、本発明の粘着剤層は養生期間が不要であり、塗工直後から使用可能である。このため、カバーフィルムなどの使用を削減できるので工程を簡素化できる上に、廃棄物を少なくすることも可能である。
【0070】
〔偏光板用粘着シート〕
本発明の偏光板用粘着シートは、上述の粘着剤組成物より形成された粘着剤層を有する。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離処理されたカバーフィルムが貼付された粘着シートが挙げられる。
【0071】
基材およびカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。
【0072】
基材およびカバーフィルムの膜厚は、特に限定されないが、通常10〜125μm、好ましくは25〜75μmである。
粘着剤層の形成条件は、〔偏光板用粘着剤層〕の欄に記載した条件と同様である。
粘着剤層の厚みは、粘着性能維持の観点から、通常5〜75μm、好ましくは10〜50μmである。
【0073】
〔粘着剤層付き偏光板〕
本発明の粘着剤層付き偏光板は、偏光板と、前記偏光板の少なくとも一方の面に積層された、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層とを有する。なお、本明細書では、「偏光板」は「偏光フィルム」を包含する意味で用いる。
【0074】
偏光板としては、従来公知の偏光フィルムを使用することができる。例えば、偏光子そのもの、偏光子と、偏光子上に配置された偏光子保護層とを有する多層フィルムが挙げられる。本発明では、偏光子に上記粘着剤層が直接接して配置されていてもよく、例えば、偏光子の片面のみに偏光子保護層が配置され、他方の面に偏光子保護層が配置されていない構成、偏光子の両面に偏光子保護層が配置されていない構成が挙げられる。
【0075】
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに偏光成分を含有させて、延伸することにより得られる延伸フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニル共重合体の鹸化物が挙げられる。偏光成分としては、例えば、ヨウ素または二色性染料が挙げられる。
【0076】
偏光子保護層としては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの樹脂から選択される2種以上の混合物が挙げられる。
【0077】
偏光板の厚さは、通常10〜200μm、好ましくは50〜100μmである。本発明では、偏光子上に形成される偏光子保護層を省略することができるため、偏光板を薄型化することもできる。
【0078】
本発明の粘着剤層付き偏光板としては、例えば、偏光子保護層と偏光子と上記粘着剤層とがこの順で積層された構成、偏光子保護層と偏光子と偏光子保護層と上記粘着剤層とがこの順で積層された構成、上記粘着剤層と偏光子保護層と偏光子と上記粘着剤層とがこの順で積層された構成、上記粘着剤層と偏光子保護層と偏光子と偏光子保護層と上記粘着剤層とがこの順で積層された構成、上記粘着剤層と偏光子と上記粘着剤層とがこの順で積層された構成が挙げられる。これらの構成では、粘着剤層上には最外層として上述したカバーフィルムが配置されていてもよい。
【0079】
偏光板(例:偏光子)表面に粘着剤層を形成する方法に特に制限はなく、偏光板表面に直接バーコーター等を用いて上記粘着剤組成物を塗布し乾燥および養生させる方法、本発明の偏光板用粘着シートが有する粘着剤層を偏光板表面に転写し養生させる方法が挙げられる。乾燥および養生の条件やゲル分率の範囲等は、〔偏光板用粘着剤層〕の欄に記載した条件と同様である。
粘着剤層は、偏光板の少なくとも一方の面に形成されていればよく、偏光板の片面のみに粘着剤層が形成される態様、偏光板の両面に粘着剤層が形成される態様が挙げられる。
【0080】
また、上記偏光板には、例えば保護層、防眩層、位相差層、視野角向上層等の他の機能を有する層が積層されていてもよい。
【0081】
上記のようにして得られる本発明の粘着剤層付き偏光板を液晶セルの基板表面に設けることにより液晶素子が製造される。ここで液晶セルは、液晶層が2枚の基板間に挟まれた構造を有している。
液晶セルが有する基板としては、例えばガラス基板が挙げられる。基板の厚さとしては、通常0.05〜3mm、好ましくは0.2〜1mmである。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0083】
〔GPC〕
(メタ)アクリル系トリブロックポリマー及び(メタ)アクリル系ランダムポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
・測定装置:HLC−8320GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー(株)製)
(1)TSKgel HxL−H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0084】
[合成例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n−ブチルアクリレート(BA)85部、1,6−ジ[2−(N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル)プロピオネート]ヘキシレンアルコキシアミン溶液を1部、N−tert−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロオキシド溶液を0.07部仕込み、窒素ガスを導入しながら117℃に昇温し、6時間重合反応を行った。反応終了後、39部のトルエンにて希釈した。次いで、メチルメタクリレート(MMA)14部、メタクリル酸(MAA)1部、トルエンを108部仕込み、窒素を導入しながら、105℃で1時間30分反応を行った。得られたポリマーをトルエンで希釈し、固形分濃度30質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系ブロックポリマーの重量平均分子量(Mw)は10万であり、分散指数(Mw/Mn)は1.2であった。
【0085】
得られた(メタ)アクリル系ブロックポリマーはブロック[A]とブロック[B]が[A]−[B]−[A]で表される構造を有するトリブロックポリマーであり、MMAとMAAとから構成される[A]ブロックのガラス転移温度(Tg)は111℃であり、BAから構成される[B]ブロックのガラス転移温度(Tg)は−54℃であった。
【0086】
[合成例2〜4]
重合反応に用いたモノマー成分を表1に記載したとおりに変更したこと以外は合成例1と同様に行い、固形分濃度30質量%のポリマー溶液を調製した。結果を表1に示す。
【0087】
[合成例5〜7]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n−ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、メチルメタクリレート(MMA)を表2の割合とし、酢酸エチルを100部仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃に昇温した。次いで、tert−ブチルパーオキシピバレート0.1部を加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し固形分濃度30質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系共重合体の特性を表2に合わせて示す。
【0088】
【表1】
【表2】
【0089】
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
2−HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0090】
[実施例1〜4]
(1)粘着剤組成物の調製
合成例1で得られたポリマー溶液(固形分濃度30質量%)と、当該溶液に含まれる(メタ)アクリル系トリブロックポリマー 100部(固形分量)に対して、アルミキレート化合物(綜研化学(株)製、M−12AT)、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)を表3に示す量で混合して、粘着剤組成物を得た。
【0091】
(2)粘着剤層付き偏光板の作製
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、上記(1)で得られた粘着剤組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を有するシートを得た。
前記シートと偏光板(厚さ:110μm、層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/トリアセチルセルロースフィルム)とを、前記塗膜と偏光板とが接するように貼り合わせ、養生せずに、PETフィルムと厚さ20μmの粘着剤層と偏光子と偏光子保護層とを有する粘着剤層付き偏光板を得た。
【0092】
[比較例1〜8]
実施例1において、ポリマー溶液を合成例2〜7で得られたポリマー溶液に変更し、配合組成を表3に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物、粘着剤層付き偏光板を得た。
なお、アルミキレート化合物の代わりにイソシアネート系化合物として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(綜研化学(株)製、L−45)、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学(株)製、TD−75)を用い、またシランカップリング剤として、比較例2および5〜7では3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)を使用し、比較例6および7は、粘着層を23℃/50%RH環境下で7日間静置して養生させた。
【0093】
[評価]
〔耐久性試験(耐熱性・耐湿熱性試験)〕
実施例・比較例で得られた粘着剤層付き偏光板(PETフィルム/粘着剤層/偏光子保護層/偏光子/偏光子保護層からなる積層体)を150mm×250mmの大きさに裁断して、試験片を作成した。試験片からPETフィルムを剥離し、ラミネーターロールを用いて、粘着剤層/偏光子/偏光子保護層からなる積層体を、厚さ0.5mmのガラス基板の片面に、粘着剤層とガラス基板とが接するように貼着した。得られた積層体を、50℃/5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持して、試験板を作成した。同様の試験板を2枚作成した。前記試験板を、温度80℃の条件下(耐熱性)または温度60℃/湿度90%RHの条件下(耐湿熱性)で500時間放置し、以下の基準で発泡、浮き、剥がれの発生を観察して評価した。
◎:発泡、浮き、剥がれ等の外観不良は観察されなかった
○:発泡、浮き、剥がれ等の外観不良が僅かに観察された
×:発泡、浮き、剥がれ等の外観不良が明らかに観察された
【0094】
〔光漏れ試験〕
実施例・比較例で得られた2枚の粘着剤付き偏光板(PETフィルム/粘着剤層/偏光子/偏光子保護層からなる積層体)を310mm×385mmの大きさに裁断して、試験片を作成した。試験片からPETフィルムを剥離し、ラミネーターロールを用いて、粘着剤層/偏光子/偏光子保護層からなる積層体を、厚さ0.5mmのガラス基板の両側に互いに偏光軸が直交するように、かつ粘着剤層とガラス基板とが接するように貼着した。得られた積層体を、50℃/5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。この試験板を温度80℃の条件下に500時間放置して、以下の基準で光漏れの観察を行った。
○:光漏れは観察されなかった
×:光漏れが明らかに観察された
【0095】
【表3】
【0096】
・M−12AT:アルミキレート化合物
・L−45:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
(綜研化学(株)製、固形分75質量%、トルエン溶液)
・TD−75:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート
(綜研化学(株)製、固形分75質量%、酢酸エチル溶液)
・KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学工業(株)製)
※硬化剤およびシランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリルトリブロックポリマーまたは(メタ)アクリル系ランダムポリマー100質量部に対する含有量を固形分比で記載した。
【0097】
実施例1において特に硬化剤やシランカップリング剤等を用いなくとも十分な耐久性と光漏れ特性を得ることができ、しかも養生期間が不要にできる。また、実施例2〜3において、硬化剤、シランカップリング剤等を加えると、更に耐久性が良好となり、実施例4において、シランカップリング剤と金属キレート系化合物を組み合わせることで、より耐熱、耐湿性が良好となり、且つ、養生期間の不要、光漏れ性を両立できる。
【0098】
比較例1および2にあるように、官能基が含まれていない(メタ)アクリル系トリブロックポリマーを用いた場合は凝集力が不十分であり、結果として耐久性が低下している。比較例3および4においては、官能基として水酸基を含有するブロック共重合体であると、応力緩和性に欠け、耐久性が低下する。比較例5において、[A]ブロックの含有量が多すぎると、ポリマーの応力緩和性が損なわれるため、耐久性及び光漏れ特性が低下する。(メタ)アクリル系トリブロックポリマーと同程度の分子量を持つ(メタ)アクリル系ランダムポリマーである合成例5を用いた比較例6では、凝集力が全く足りず、硬化剤を用いても耐久性を満足させることはできない。比較的高分子量体であるランダム共重合体(合成例6)を用いた比較例7では硬化剤を用いることで耐久性は良好なものとなるが、イソシアネート系化合物を用いると養生期間を不要にすることはできない。比較例8では、光漏れ試験中、耐久性不足により貼り付けたガラスからサンプルが脱落し、測定することが出来なかった。