(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
什器本体と、この什器本体に片持ち支持された板状をなす左右の棚受ブラケットと、これらの棚受ブラケットに左右の側壁を重なり合うように近接又は摺接させて当該棚受ブラケット間に架設された棚板と、この棚板の沈み込みを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第一のスライド案内機構と、前記棚板の浮き上がりを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第二のスライド案内機構とを備えたものであり、
前記第一のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第一のスライダと他方に設けられ前記第一のスライダをスライド可能に案内する第一の案内縁部とを備えたものであり、
前記第二のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第二のスライダと他方に設けられ前記第二のスライダをスライド可能に案内する第二の案内縁部とを備えたものであり、前記第一の案内縁部が、前記棚受ブラケットの前半領域における上縁側に設けられ、前記第二の案内縁部が、前記棚受ブラケットの後半領域における下縁側に設けられたものである什器。
什器本体と、この什器本体に片持ち支持された板状をなす左右の棚受ブラケットと、これらの棚受ブラケットに左右の側壁を重なり合うように近接又は摺接させて当該棚受ブラケット間に架設された棚板と、この棚板の沈み込みを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第一のスライド案内機構と、前記棚板の浮き上がりを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第二のスライド案内機構とを備えたものであり、
前記第一のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第一のスライダと他方に設けられ前記第一のスライダをスライド可能に案内する第一の案内縁部とを備えたものであり、
前記第二のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第二のスライダと他方に設けられ前記第二のスライダをスライド可能に案内する第二の案内縁部とを備えたものであり、前記第一のスライダ及び前記第二のスライダが、前記第一の案内縁部及び前記第二の案内縁部に対し外嵌する凹溝を備えたものであり、この凹溝の底面を前記第一の案内縁部及び第二の案内縁部の端面に摺接させるように構成されている什器。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の什器として、少なくとも2本の支柱を有する什器本体と、この什器本体の支柱にそれぞれ片持ち支持させた左右対をなす棚受ブラケットと、これらの棚受ブラケット間に固定状態で架設した棚板とを備えたものが知られている。そしてこの種の什器では、前記棚板を複数枚上下方向に所要の間隔を空けて配置するのが一般的であり、それら各棚板上に商品等を陳列して使用されている。
【0003】
ところがこのような什器では通常、売り場の面積効率をアップさせるべく各棚板を上下方向に配するピッチをなるべく小さく設定したいところ、そのようにすれば上方の他の棚板が近接してしまい奥に載置した商品付近にアクセスするのが難しく、新たな商品の補充等に難点があった。
【0004】
このような不具合を解消するための棚板を前方に引き出すことができるようにしたものも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この什器の棚板は、左右の棚受ブラケット間に固定状態で架設されたベースと、このベース上に配され前方に引出し可能なスライド棚部とを備えたものであり、前記ベースの左右両端部と前記スライド棚部の左右両端部との間にはスライドレール式のスライド案内機構が設けられている。
【0006】
ところで、前記スライド案内機構は、前記ベースの端部に設けたコ字形をなすベース側レール部と、前記スライド棚部の端部に設けられ前記ベース側レール部内に配された棚部側レール部と、この棚部側レール部を前後移動可能に支持すべく前記ベース側レール部に軸着された第一のローラと、前記ベース側レール部内に転動可能に設けられ前記スライド棚部に軸着された第二のローラとを備えたものである。
【0007】
そのため、斯かるスライド案内機構は、構造が複雑で部品点数が多いため、部品の製造や組立に多くの工数を要するという問題がある。また、前記ローラの軸着部分等に不具合が発生する可能性があり、メンテナンスが不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、棚板を前方に引き出して便利に使用することができるにもかかわらず、構造が簡単で部品の製造及び組立に多大な構成を要することがなく、頻繁にメンテナンスを行わずに長期に亘って用いることができる什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち本発明に係る什器は、什器本体と、この什器本体に片持ち支持された板状をなす左右の棚受ブラケットと、これらの棚受ブラケットに左右の側壁を重なり合うように近接又は摺接させて当該棚受ブラケット間に架設された棚板と、この棚板の沈み込みを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第一のスライド案内機構と、前記棚板の浮き上がりを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第二のスライド案内機構とを備えたものであり、前記第一のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第一のスライダと他方に設けられ前記第一のスライダをスライド可能に案内する第一の案内縁部とを備えたものであり、前記第二のスライド案内機構が、前記棚受ブラケット及び前記側壁の何れか一方に設けられた第二のスライダと他方に設けられ前記第二のスライダをスライド可能に案内する第二の案内縁部とを備えたものであることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、棚板を棚受ブラケットに対し前後スライドさせる機構を、案内レールとローラとを用いたものに比べて構成の簡略化を図ることができ、製造及び組立の工数を削減することができるとともに、耐久性を向上させることができ、メンテナンスの手間を削減又は無くすことが可能になる。
【0013】
棚板の載置面の面積をより大きくするためには、棚板を、左右の側壁を左右の棚受ブラケットの外側面に近接又は摺接させるようにすることが望ましい。
【0014】
棚板の動作時の安全性を有効に向上させ得る構成として、第一のスライダ及び第二のスライダが、棚板の側壁に設けられたものであり、第一の案内縁部及び第二の案内縁部が棚受ブラケットに設けられたものを挙げることができる。すなわち斯かる構成により、スライダと縁部との接触部分を隠蔽することができるので安全性を高めることができる。
【0015】
また、第一の案内縁部が、棚受ブラケットの前半領域における上縁側に設けられ、第二の案内縁部が、棚受ブラケットの後半領域における下縁側に設けられたものであれば、棚板及び棚受ブラケットを一体的に取り扱うときに案内縁部に触れてしまうことを回避することができ、安全性を高めることができる。
【0016】
第一、第二のスライド案内機構により左右のがたつきが無い安定した前後スライドを実現するためには、第一のスライダ及び第二のスライダを、第一の案内縁部及び第二の案内縁部に対し外嵌する凹溝を備えたものとし、この凹溝の底面を第一の案内縁部及び第二の案内縁部の端面に摺接させるように構成することが望ましい。
【0017】
また、棚板を前方に引き出した状態を安定して維持するためには、少なくとも一方の案内縁部に、棚板が前側の動作端に位置した状態でスライダを位置決めする位置決め部分を設けることが望ましい。
【0018】
棚板を前方に引き出した状態でより多くの物を陳列し得るようにするためには、前側の動作端にある棚板の載置面の後方に位置する補助載置面を有した補助棚板を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、棚板を前方に引き出して便利に使用することができるにもかかわらず、構造が簡単で部品の製造及び組立に多大な構成を要することがなく、頻繁にメンテナンスを行わずに長期に亘って用いることができる什器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る什器は、
図1に示すように、例えば店舗において商品を陳列するために好適に用いられるものである。
【0023】
<構成説明>
この什器は、床面に載置される図示しないベース、このベースの巾方向両端且つ前後方向中央から立設される対をなす支柱60、及びこの対をなす支柱60に架設された図示しない横架材を有する什器本体6と、対をなす支柱60に片持ち支持された板状をなす左右の棚受ブラケットたるブラケット4と、これらのブラケット4間に架設された棚板3とを有する。また本実施形態では、左右のブラケット4間に棚板3とは別に支柱60付近に補助棚板5を架設することが可能である。そして本実施形態に係る什器は、棚板3をブラケット4に対し前後にスライド可能に構成されている。すなわち
図1に示すように、支柱60に対し上側に図示された棚板3はスライド動作における前端位置(F)にある状態が示されており、下側に図示された棚板3はスライド動作における後端位置(B)にある状態が示されている。
【0024】
什器本体6を構成する支柱60は、
図1に示すように、例えば金属製の矩形パイプ部材である支柱本体61を主体としたものである。この支柱本体61には上端から下端近傍まで、所定の間隔をなしてフック孔62が設けられている。このフック孔62は棚板3を掛け止めるために所定の形状及び寸法、配置をなすことにより、棚板3を所望の高さ位置に着脱可能に取り付けることができる。当該フック孔62の具体的な形状、構成については既存の構成を種々利用し得るものであるため、具体的な説明を省略する。
【0025】
しかして本実施形態に係る什器は、棚板3の前縁3c側の沈み込みを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第一のスライド案内機構1と、棚板3の後縁3d側の浮き上がりを抑止しつつ前後方向にスライド可能に支持する第二のスライド案内機構2とを備えたものである。第一のスライド案内機構1は、側壁32に設けられた第一のスライダ11とブラケット4に設けられ第一のスライダ11をスライド可能に案内する第一の案内縁部12とを備えたものであり、第二のスライド案内機構2が、側壁32に設けられた第二のスライダ21とブラケット4に設けられ第二のスライダ21をスライド可能に案内する第二の案内縁部22とを備えたものである。
【0026】
以下、斯かる什器の構成のうち、特に棚板3、ブラケット4、補助棚板5、第一のスライド案内機構1及び第二のスライド案内機構2の構成について、
図1〜
図15を参照しつつ具体的に説明する。なお
図5及び
図10において図中*で標記され符号wが付されている部分には、スポット溶接による溶接継ぎ手wが形成される。すなわち
図5及び
図10では溶接継ぎ手wの箇所が模式的に示されている。
【0027】
棚板3は、
図1〜
図6に示すように、複数の板金素材を折り曲げ且つ互いに溶接により固定してなる。この棚板3は、商品を載置するための載置面3aを構成する棚板本体31と、この棚板本体31の両側に固定された側壁32と、棚板3の前縁3cを構成する前壁33と、棚板本体31の下側から例えばスポット溶接により固定された補強板34とを有している。
【0028】
棚板本体31は、上側において載置面3aを構成するとともに後端側を下方及び前方に折り曲げることにより、後縁3dを形成している。また後縁3dが下方に折り曲げる寸法は、補助棚板5に干渉しないように前壁33の上下寸法よりも小さい寸法に設定されている。
【0029】
前壁33は、本実施形態では棚板本体31の前側を下方及び後方に折り曲げることにより棚板本体31と一体に形成されているが、勿論棚板本体31とは別体の板金素材或いは別異の素材によって構成しても良い。この前壁33は棚板3の前縁3cを主に構成しており、この前壁33の上下寸法が補強板34の上下寸法よりも大きく設定されることで、棚板3を前方から目視しても補強板34が好適に隠蔽される。
【0030】
補強板34は、棚板3の載置面3aの撓みを防止しつつ棚板3全体としての強度を向上させるためのものである。補強板34は、棚板本体31の幅方向略全域に相当する巾寸法を有し、棚板3の前縁3c付近及び前後中央よりもやや後側でそれぞれ棚板本体31に固定されている。しかし勿論、当該構成は補強板34を固定する前後位置を限定するものでは無く例えば前後中央に配する構成を妨げない。はまた補強板34は前後にフランジが形成された側面視概略チャネル形状をなし、
図5に溶接継ぎ手wを示すように、前後のフランジ部分における複数箇所が棚板本体31に対しスポット溶接により固定されている。
【0031】
側壁32は、正面視逆さL字状をなす板金素材に樹脂素材である第一のスライダ11、第二のスライダ21をリベットにより固定したものである。しかしながら第一のスライダ11、第二のスライダ21を固定する態様は他にビスによる固定など、既存の種々の手法を適用し得る。この側壁32は、棚板本体31の両側端の下方から平面部分をスポット溶接により固定することで、棚板本体31に固定される。そして棚板本体31の両端から垂下する立壁部分が左右のブラケット4の外側面4aに近接又は摺接することで、ブラケット4に対し好適に支持され得る。そして本実施形態では、この側壁32の立壁部分の端面及びその近傍、そして当該立壁部分に固定された第一のスライダ11及び第二のスライダ21が、ブラケット4に対する前後スライド動作を好適に行わせる構成をなすが、当該構成については後に詳述する。
【0032】
ブラケット4は、
図1〜3、
図7及び
図8に示すように、後半領域4cが補助棚板5を好適に支持し得るとともに、前半領域4bは棚板3の着脱を容易にし得る形状に設定されている。そしてこのブラケット4は、本実施形態では例えば平板状の板金材を主体としたブラケット本体41と、後端側にて支柱60に設けられた上下三つのフック孔62に掛け得るフック42と、先端上側にて棚板3を前後スライド可能に支持する樹脂素材からなる補助スライダ43と、この補助スライダ43の下方である前半領域4b下側にて棚板3のスムーズな装着を促すために形成した装着案内縁部48とを有している。
【0033】
ブラケット本体41は、
図2、
図7及び
図8に示すように、後半領域4cの上端側二箇所を凹ませて形成された補助棚板5を支持するための爪受44と、棚板3のスライド動作における後端位置(B)で棚板3側に当接し、更なる後方へのスライドを禁止するための上側後当接面45a並びに下側後当接面45bと、棚板3が前端位置(F)をとったときに棚板3側に当接する前当接面47とを有している。そして本実施形態では、当該ブラケット本体41が形成するブラケット4の前半領域4b及び後半領域4cの構成並びに形状により、棚板3の前後スライドを好適に行わせる構成をなすが、当該構成については後に詳述する。
【0034】
フック42は、本実施形態ではブラケット4の後端に等間隔に例えば三つ、同一の下向き形状のものを適用している。斯かるフック42の形状により、対をなすブラケット4が棚板3を支持し、棚板3とブラケット4が一体的に取り扱われても、棚板3の載置面3aを水平とし、当該フック42を支柱60のフック孔62へ真っ直ぐ方向に差し込みそのまま下方へ下げれば、ブラケットは容易に支柱60へ装着される。しかしながら当該フック42の数は二つの場合や四、五つある態様であっても良く、さらにフック42の形状は斯かる形状に限定されるものではない。例えば、最も上に位置するフック42の形状のみ上向き形状とする態様を妨げない。斯かる場合には支柱60への装着の際、ブラケット4を一時的に傾けるように取り付ければ上記同様、容易な取り付けが可能である。
【0035】
補助スライダ43は、ブラケット本体41の前端上側に固定された正面視概略コの字形状をなす樹脂の一体成形品である。具体的にはブラケット本体41の前端部分には
図7にて破線で図示されるような側面視形状矩形状をなす開口が設けられ、当該開口に補助スライダ43に設けられた図示しない爪部分を嵌合させることにより、ブラケット本体41に対し容易且つ確実に固定されている。しかし当該補助スライダ43の取付態様は既存の種々の構成を適宜適用し得る。この補助スライダ43は、棚板3の下向面3bに接して棚板3のスライド動作及び着脱動作をスムーズに行わせるための滑り面46を有している。
【0036】
装着案内縁部48は、補助スライダ43が固定されたブラケット本体41の前端部分から前半領域4bの下縁側に亘って、ブラケット本体41の縁にアール形状をなすアール端面49を有する。これにより、棚板3側に設けられた第二のスライダ21の動作を円滑に行わせることができる。このアール端面49の形状は、ブラケット4の前端に近い程曲率が大きく、換言すれば曲率半径が小さく成形されている。
【0037】
補助棚板5は、主に補助載置面5aを構成する補助板本体51と、ブラケット4側に設けられたブラケット本体41の爪受44に係り合う四つの掛爪52と、補助板本体51の下面側から溶接に取り付けられる補助補強板54とを有している。この補助棚板5は、
図1に示すように、前側の動作端たる前端位置(F)にある棚板3の載置面3aの後方に補助載置面5aが位置付けられるようにブラケット4に装着される。また補助棚板5は、補助板本体51よりも掛爪52の上縁が上側となるように成形されることで、補助載置面5aが前後スライドする棚板3側に何ら干渉しないように設定してある。そして補助補強板54は、上述した補強板34同様、補助棚板5の補助載置面5aの撓みを防止しつつ補助棚板5全体としての強度を向上させるためのものである。補助補強板54は、補助板本体51の幅方向略全域に相当する巾寸法を有し、補助板本体51の前後中央で補助板本体51に固定されている。この補助補強板54は前後にフランジが形成された概略チャネル形状をなし、
図10に示すように前後のフランジ部分における複数箇所が補助板本体51に対しスポット溶接により固定されている。
【0038】
しかして本実施形態に係る什器は上述の通り、棚板3とブラケット4との間に第一のスライド案内機構1並びに第二のスライド案内機構2を設けている。
【0039】
第一のスライド案内機構1は、棚板3の側壁32に設けられた第一のスライダ11とブラケット4に設けられ第一のスライダ11をスライド可能に案内する第一の案内縁部12とを備えたものである。
【0040】
第一のスライダ11は、
図3〜
図6に示すように、棚板3の側壁32に設けられた、摩擦係数が小さい合成樹脂を一体成形したものである。しかし当該第一のスライダ11に用いる素材は当該合成樹脂に限られず、例えば表面にコーティングを施した金属素材としても良い。この第一のスライダ11は、左右の側壁32の内側にそれぞれ対向する位置であり且つ側面視側壁32の外縁よりもはみ出さない位置に設けられているため、棚板3の側面視で側壁32に完全に隠蔽されている。そして第一のスライダ11は第一の案内縁部12を構成するブラケット本体41の端面に対し外嵌する下向きに開放された形状をなす凹溝11aを備えている。この凹溝11aは、ブラケット本体41の端面に摺接する底面13と、端面近傍の両側面に当たる内側面14とを有している。また本実施形態ではこの第一のスライダ11は、ブラケット本体41の端面を凹溝11a内へ案内するための挿入案内面11bと、前端位置(F)にあるときにブラケット本体41の前当接面47に当接する前当たり面11cと、後端位置(B)にあるときにブラケット本体41の上側後当接面45aに当接する後当たり面11dとを有している。
【0041】
第一の案内縁部12は、ブラケット4の前半領域4bにおける上縁側に設けられている。この第一の案内縁部12は、凹溝11aの底面13に当接する受圧端面15と、この受圧端面15近傍両側に位置し凹溝11aの内側面14に当たり得る側面16とを有している。また本実施形態では、第一の案内縁部12は、受圧端面15の前後端を僅かに凹ませて形成した、前位置決め部分17及び後位置決め部分18を有している。当該前位置決め部分17はその後ろ側に僅かに後方へ傾斜した案内傾斜面17aを有し、後位置決め部分18はその前側に僅かに前方へ傾斜した案内傾斜面18aを有している。これにより棚板3を前端位置(F)及び後端位置(B)からスライドさせる為に必要な操作力は、中間位置をスライドさせる為に必要な操作力よりも若干ではあるが大きな操作力を要する。換言すれば、前位置決め部分17及び後位置決め部分18が設けられることにより、棚板3は前端位置(F)、後端位置(B)でそれぞれ好適に位置決めされる。
【0042】
第二のスライド案内機構2が、側壁32に設けられた第二のスライダ21とブラケット4に設けられ第二のスライダ21をスライド可能に案内する第二の案内縁部22とを備えたものである。
【0043】
第二のスライダ21は、
図3〜
図6に示すように、棚板3の側壁32に設けられた、摩擦係数が小さい合成樹脂を一体成形した、上記第一のスライダ11と同形状をなすものである。よって当然第二のスライダ21に用いる素材は当該合成樹脂に限られず、例えば表面にコーティングを施した金属素材としても良い。この第二のスライダ21は、左右の側壁32の内側にそれぞれ対向する位置であり且つ側面視側壁32の外縁よりもはみ出さない位置に設けられているため、棚板3の側面視で側壁32に完全に隠蔽されている。そして第二のスライダ21は第二の案内縁部22を構成するブラケット本体41の端面に対し外嵌する上向きに開放された形状をなす凹溝21aを備えている。この凹溝21aは、ブラケット本体41の端面に摺接する底面23と、端面近傍の両側面26に当たる内側面24とを有している。また本実施形態ではこの第二のスライダ21は、ブラケット本体41の端面を凹溝21a内へ案内するための挿入案内面21bと、後端位置(B)にあるときにブラケット本体41の下側後当接面45bに当接する後当たり面21dとを有している。
【0044】
第二の案内縁部22は、ブラケット4の後半領域4cにおける下縁側に設けられている。この第二の案内縁部22は、凹溝21aの底面23に当接する受圧端面25と、この受圧端面25近傍両側に位置し凹溝21aの内側面24に当たり得る側面26とを有している。
【0045】
<動作説明>
そして本実施形態では、上述した構成により、支柱60に取り付けられた対をなすブラケット4に対する棚板3の着脱を容易に行なうことができる。さらにブラケット4に取り付けられた棚板3は、補助棚板5に干渉されることなくスムーズな前後スライドが可能である。以下、ブラケット4に対する棚板3の装着並びに装着された棚板3の動作について、
図11〜
図15に示して説明する。なおこれらの図においてブラケット4は支柱60に装着されている事を想定しているが図示並びに説明の便宜上、これらの図では支柱60の図示を省略している。
【0046】
まず、棚板3をブラケット4に装着するにあたり、
図11に示すように第二のスライダ21の凹溝21aをブラケット4の装着案内縁部48に摺接させるようにする。同図に示すように、第二のスライダ21の底面23が装着案内縁部48のアール端面49に案内されるため、第二のスライダ21はブラケット本体41の下縁側にスムーズにもぐり込むことができる。
【0047】
続いて
図12に示すように、第二のスライダ21が後半領域4cに近接するようになると、第一のスライダ11を補助スライダ43の後方へ載置するように棚板3を動作させる。またここまでの動作中、凹溝11aには内側面14が設けられ側面16に適宜当接するようにしているため、棚板3のブラケット4に対する左右のずれやがたつきはほとんど生じない。
【0048】
そして
図13に示すように、第一のスライダ11の凹溝11aを第一の案内縁部12の前端、すなわち前位置決め部分17に載置すれば、第一のスライダ11の前当たり面11cとブラケット本体41の前当接面47とが当接し、棚板3は前端位置(F)をとることになる。当該前端位置(F)では、使用者は左右のブラケット4の前半部分を下側から側壁32とともに抱え込むように把持すれば、棚板3とブラケット4を一体的に取り扱うことができる。つまり同図の状態のまま、使用者は左右のブラケット4の支柱60への着脱を容易に行うことができる。
【0049】
また棚板3を前端位置(F)とした状態では
図14に示すように、左右のブラケット4に計四箇所設けられた前後左右の爪受44に掛爪52を掛けることで、補助棚板5を容易に装着することができる。
【0050】
そして左右のブラケット4に補助棚板5を装着した状態であっても、
図15に示すように、棚板3を後端位置(B)へ容易にスライドさせることができる。後端位置(B)までのスライド動作において、第一の案内縁部12には後位置決め部分18が設けられているので、当該後位置決め部分18の案内傾斜面18aにより、棚板3を後端位置(B)近傍までスライドさせれば、第一のスライダ11の凹溝11aの底面13が案内傾斜面18aを滑り落ちるように動作するので、棚板3は自ずと後端位置(B)に位置決めされる。このとき、第二のスライダ21の後当たり面21dがブラケット本体41の下側後当接面45bに当接し、第一のスライダ11の後当たり面11dが上側後当接面45aに当接するため、棚板3は後端位置(B)よりも後方へ移動することはない。また後端位置(B)では、棚板3の両外側方から抱え込むように棚板3及びブラケット4を把持すれば、把持する前後位置に拘わらず棚板3とブラケット4を一体的に取り扱うことができる。つまり同図の状態のまま、使用者は左右のブラケット4の支柱60への着脱を容易に行うことができる。
【0051】
また他方、
図15に示した後端位置(B)から
図14に示す前端位置(F)前方へ棚板3をスライドさせるときには、棚板3を前端位置(F)近傍までスライドさせれば、第一のスライダ11の凹溝11aの底面13が前位置決め部分17の案内傾斜面17aを滑り落ちるように動作するので、棚板3は自ずと前端位置(F)に位置決めされる。このとき、第一のスライダ11の前当たり面11cがブラケット本体41の前当接面47に当接するため、棚板3は前端位置(F)よりも前方へ移動することはない。
【0052】
また
図13〜
図15に示す態様での棚板3のスライド動作中は、第一のスライダ11の凹溝11aの内側面14が第一の案内縁部12の側面16に、第二のスライダ21の凹溝21aの内側面24が第二の案内縁部22の側面26にそれぞれ近接或いは接した状態が維持されているため、スライド動作中に左右にずれたりがたついたりすることは無い。加えて斯かるスライド動作中は補助スライダ43は上面側の滑り面46が常に棚板3の下向面3bに摺接した状態となっている。これにより、よりスムーズなスライド動作が実現されている。
【0053】
そして前端位置(F)にある棚板3をブラケット4から取り外すときは第一のスライダ11が補助スライダ43の上方を乗り越えるように棚板3を持ち上げてやればよい。換言すれば、
図12及び
図11に示した動作の逆を行なえば良い。
【0054】
以上のような構成とすることにより、本実施形態によれば、棚板3を棚受ブラケットたるブラケット4に対し前後スライドさせる機構を、従来の如く案内レールとローラとを用いずに実現している。その結果斯かる構成を有する従来品に比べて構成の簡略化が実現できており、製造及び組立の工数の削減が図れている。更に斯かる構成により、耐久性も有効に向上し、しかもメンテナンスの手間を削減又は無くすにも寄与している。
【0055】
加えて本実施形態では、役割の異なる第一のスライダ11及び第二のスライダ21を用いて棚板3のスライドを案内しているため、棚板3に作用する種々の荷重を二つのスライダにより分散させている。その結果、例えば単一のスライダを用いて棚板3のスライドを案内する場合に比べて、各スライダを大幅に小さなものとしても耐久性の向上を実現している。すなわち本実施形態によれば、簡素な構成であり且つ耐久性を有効に向上させた什器が実現されている。
【0056】
特に本実施形態では、棚板3の後縁3d側がブラケット4から浮き上がるのを抑止するための第二のスライド案内機構2を備えているので、上述の通り棚板3の前端部分と左右のブラケット4の前端部を掴めば、棚板3とブラケット4とを一体化したような状態で一体的に取り扱うことが可能となり、棚板3の什器本体6すなわち支柱60への取り付けや、支柱60への取付位置の変更を、容易に行うことができる。このように本実施形態によれば、棚板3を連続的にスライドさせる機構を簡素な構成にて実現せしめている。
【0057】
また、棚板3の載置面3aの面積をより大きくするために本実施形態では、棚板3を、左右の側壁32を左右のブラケット4の外側面4aに近接させるようにしている。
【0058】
そして、棚板3の動作時の安全性を有効に向上させ得るようにする構成として本実施形態では、第一のスライダ11及び第二のスライダ21を、棚板3の側壁32に設けられたものとし、第一の案内縁部12及び第二の案内縁部22をブラケット4に設けている。これにより、第一のスライダ11及び第二のスライダ21とブラケット4側との接触部分を隠蔽することができるので安全性が高いものとなっている。
【0059】
また本実施形態では、第一の案内縁部12を、ブラケット4の前半領域4bにおける上縁側に設け、第二の案内縁部22を、ブラケット4の後半領域4cにおける下縁側に設けているので、棚板3及びブラケット4を一体的に取り扱うときに案内縁部に触れてしまうことを回避でき、安全性がより高まったものとなっている。特に本実施形態では、ブラケット4の重心はフック42寄りにあるので棚板3とブラケット4を一体的に取り扱うときには棚受ブラケット4の自重によりブラケット4が後方へ脱落し易くなるところ、第二の案内縁部22を、後半領域4cにおける下縁側に設けて当該脱落が起こり難い構成を実現している。
【0060】
第一のスライド案内機構1、第二のスライド案内機構2により左右のがたつきが無い安定した前後スライドを実現するために本実施形態では、第一のスライダ11及び第二のスライダ21に、第一の案内縁部12及び第二の案内縁部22に対し外嵌する凹溝11a、21aを設け、この凹溝11a、21aの底面13、23を第一の案内縁部12及び第二の案内縁部22の端面に摺接させるようにしている。
【0061】
また、棚板3を前方に引き出した状態を安定して維持するために本実施形態では、第一の案内縁部12に、棚板3が前側の動作端に位置した状態で第一のスライダ11を位置決めする前位置決め部分を設けている。
【0062】
特に、棚板3を前方に引き出した状態である前端位置(F)でより多くの物を陳列することや、載置面3a上の陳列物の並び替えや入れ替えをより容易に行い得るようにするために本実施形態では、前端位置(F)にある棚板3の載置面3aの後方に位置する補助載置面5aを有した補助棚板5を設けている。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態では什器が有する全ての棚板が前後スライド可能である態様を開示したが、勿論、一部の棚板のみ上記実施形態の構成により前後スライド可能としたものであってもよい。加えて上記実施形態では棚板に両スライダを設け棚受ブラケットに両案内縁部を設けたが勿論、スライダと案内縁部とを棚板に設け、対応する案内縁部とスライドとを棚受ブラケットに設けたり、棚受ブラケットに両スライダを設け棚板に両案内縁部を設けたりしても良い。また棚板本体を構成する素材を板金素材以外の木製素材や樹脂素材、更には紙素材としたり、棚受ブラケットと什器本体との間の係合構造を既存の異なる構造としたりするといった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0065】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。