(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<臍ヘルニア治療材固定用貼付材>
本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材は、支持体と、粘着剤層とを備え、10%伸長時の伸長強度が0.3〜5N/8mmであり、粘着力が3N/8mm以下である、臍ヘルニア治療材を固定するための臍ヘルニア治療材固定用貼付材である。
臍ヘルニア治療材固定用貼付材(以下単に「貼付材」と称する場合がある)は、例えば、支持体に慣用の手法を用いて粘着剤層を設け、10%伸長時の伸長強度が0.3〜5N/8mmであり、粘着力が3N/8mm以下とすることで得ることができる。
本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材は、貼付時に貼付部位が確認できるような視認性を考慮すると、透明又は半透明であることが好ましい。
また、本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材は、乳幼児等の臍輪の開存孔が閉塞した状態を維持し、入浴等により臍窩に水が入り雑菌等が繁殖するのを防ぐため、防水性であることが好ましい。
【0014】
本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材は、本願特定の伸長強度、及び粘着力の範囲のものであれば、任意の支持体と粘着剤層を備えた貼付材(以下「任意の貼付材」と称する場合がある)を複数積層したものであってもよい。任意の貼付材を積層して本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材とする場合、好ましくは2〜3枚、より好ましくは2枚の任意の貼付材を積層することができる。n枚の任意の貼付材を積層する場合、第一の貼付材の粘着剤層、第一の貼付材の支持体、第二の貼付材の粘着剤層、第二の貼付材の支持体・・・・第nの貼付材の粘着剤層、第nの貼付材の支持体がこの順で積層した臍ヘルニア治療材固定用貼付材とすることが好ましい。
任意の貼付材の支持体及び粘着剤層の材質及び膜厚等は、後述の本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材に用いたものと同様のものを用いることができ、複数枚の任意の貼付材を貼り合わせて臍ヘルニア治療材固定用貼付材とした際に本願特定の伸長強度、及び粘着力となるものであればよい。
任意の貼付材の粘着剤層のうち、臍ヘルニア治療材固定用貼付材とした際に皮膚と接触する粘着剤層は、皮膚への刺激を低減する上で、本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材に好ましく用いられるものと同様であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の貼付材はさらに担持体及び剥離体の少なくとも一方を備えてもよい。担持体は、支持体の粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に剥離可能な状態で設けられる。剥離体は、粘着剤層の支持体が設けられた面とは反対側の面に剥離可能な状態で設けられる。すなわち、本発明の貼付材は、担持体、支持体、粘着剤層、及び剥離体を、この順序で、備えていてもよい。また、本発明では、担持体と支持体との間、支持体と粘着剤層との間、及び/又は粘着剤層と剥離体との間に、他の層を一層以上介在させてもよい。例えば、接着性や剥離性を高めるため、下塗剤層や接着剤層、又は剥離剤層を設けてもよいし、あるいはフィルム、不織布、織布、又はそれらの積層体を介在させてもよい。また、支持体を一層以上の複数層としてもよい。例えば、上記特定の範囲の伸長強度と粘着力となるよう支持体を異なる材質のフィルムの積層体とさせてもよい。
【0016】
上記の粘着剤層は、支持体にパターンコーティング、例えば格子状やダイヤモンド等の形状でコーティングされて設けられてもよいが、皮膚への固定性を向上させるために、該粘着剤層が支持体の1面全体を覆った状態にあるのが好ましい。また、貼付材を皮膚から剥がした際の角質剥離量が減少する点、皮膚と粘着剤層の間に貯留した水分による固定性の低下を抑制する点から、本発明の貼付材の透湿度は200〜4,000g/m
2・dayであることが好ましい。
【0017】
本発明において、透湿度の測定はJIS Z−0208に準じるものとする。透湿度が高いほど、蒸れが少ない支持体等であるといえる。特に本発明において「高透湿性」という言葉を用いる場合があるが、JIS Z−0208に準じた試験において200g/m
2・day以上を指すものとする。
【0018】
(伸長強度)
10%伸長強度の測定は、JIS Z 0237に準じるものとする。伸長強度を上記の範囲とすることで、取扱い性に優れ、貼付中の違和感を低減できる。また、腹内から強い圧力を受けても臍ヘルニア治療材が飛び出すことなく確実に保持し、優れた固定力が得られる。また、臍ヘルニア治療材固定用貼付材が固すぎず、腹内からの強い圧力も受け止めて緩衝することができる。
臍ヘルニア治療材固定用貼付材の伸長強度の調整は、臍ヘルニア治療材固定用貼付材の、粘着層の厚さ、支持体の厚さ、剛軟度、密度によっても調整し得る。
【0019】
(粘着力)
粘着力の測定は、JIS Z 0237に準じるものとする。試験板はベークライト板を使用し、90°引きはがし粘着力試験法を行うことで、特徴をもつ多くのテープ材を同じ測定方法で比較することができる。上記の範囲とすることで、皮膚貼付後に剥離する際に比較的痛みを小さくすることができる。
臍ヘルニア治療材固定用貼付材の粘着力の調整は、慣用の方法で行い得るが、粘着剤層の粘着力や支持体の厚さや剛軟度によっても調整し得る。
すなわち、粘着剤層の厚さを厚くした場合は粘着力が高くなり、薄くした場合は粘着力が低くなる傾向にある。支持体を厚くした場合は貼付材としての剛性が高くなって粘着力が高くなる傾向にあり、支持体を薄くした場合は粘着力が低くなる傾向にある。
また、支持体自体の剛軟度に影響を受けるため、一概には言えないが、例えば不織布や織布とした場合については、粘着力はウレタンの場合とほぼ傾向が同じになる。
本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材の粘着力は3N/8mm以下であることが好ましく、ヒト皮膚粘着力が、24時間貼付で0.3〜1.5N/8mm、特に0.7〜1.2N/8mm付近であることがより好ましい。ここでヒト皮膚粘着力について、数値を「付近」としたのは、個体差や季節変動による数値のばらつき(例えば、夏季は低い傾向を、冬季は高い傾向を示す)が大きいため、被験者10名の平均値が上述の数値付近となることを示したためである。
【0020】
(固定力)
固定力が1.0N/8mm以上であることが好ましく1.5N/8mm〜5.0N/8mmであることがより好ましい。
固定力を上記範囲とすることで、臍ヘルニア治療材が飛び出すことなく確実に保持し、腹内からの強い圧力も受け止めて緩衝し、剥がれにくくすることができる。
固定力は、ベークライト板を12mm間隙をあけて固定し、その間隙上に幅8mmの粘着テープをJIS Z 0237に準じて貼付し、その間隙より縦約10mm×横約10mm×高さ約20mmのブロックでテープを押しはがす方向に5〜10mm押したときの平均強度を測定することにより求められる。
臍ヘルニア治療材固定用貼付材の固定力の調整は、臍ヘルニア治療材固定用貼付材の伸長強度、粘着剤層の粘着力や支持体の厚さ、剛軟度、密度によっても調整し得る。
【0021】
<支持体>
支持体として、織布、不織布、フィルム、フォームその他を用いることができるが、例えばプラスチックフィルムは好適に使用することができるものの一つである。材質は、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、セルロースその他から製造する支持体を用いることができるが、例えばウレタン樹脂が好適であり、柔軟で適度な強度を持ち、特に皮膚への貼付材の固定性を高めたり貼付中の違和感を減らしたりする観点から好ましくは水膨潤性が低いものが使用される。支持体は異なる材質のものを積層して使用することもできる。支持体は、防水性であることが好ましいが、防水性のある支持体と、防水性のない支持体を積層して用いても良い。
【0022】
本発明において、支持体をウレタン樹脂から製造する場合は、特に制限されず、エーテル系ウレタン樹脂及びエステル系ウレタン樹脂などが挙げられ、エーテル系ウレタン樹脂が好ましい。
支持体には、必要に応じて通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などが添加され得る。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0023】
これらウレタン樹脂製のフィルムは、市販のものを用いることができ、市販品としては例えば、DINTEX FT1080−PE、DINTEX FT1881−PE(ユニポリマー製)、サンプレンHMP−17A(三洋化成製)等があり、それぞれ入手可能である。
【0024】
支持体の厚みは、貼付材としての取り扱い性を高める点から、10μm以上、特に15μm以上が好ましく、また、臍ヘルニア治療材固定用貼付材の伸長強度を前述の範囲とし易くなり、本発明の効果が奏し易くなる点から、50μm以下、好ましくは40μm以下が好ましい。上記の範囲であれば、取り扱い性に優れた、臍ヘルニア治療材固定用貼付材とし易くなる。
【0025】
<担持体>
担持体は、支持体を補強して、本発明の貼付材の製造性や操作性を向上させる役割を果たす。また、この担持体は貼付時に貼付部位が確認できるような視認性を考慮すると、透明もしくは半透明であることが好ましい。さらに、この担持体は、支持体に対して相対的に高い弾性率を有して、支持体に対し、3〜20倍程度の弾性率であるものが好ましい。また、担持体を支持体に積層させる面には、支持体と適度な接着性を保って積層される必要があるため、各種処理を行っておくことが適切である。このような処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、マット処理などが例示される。
担持体が支持体から剥離しにくい場合は、担持体の中央部付近に切れ目を設けてもよく、担持体同士の切れ目間隔を空けて担持体を2枚としてもよい。また、さらに担持体の切れ目上部にテープ又はフィルムを積層して、掴み片として口取り部を設けてもよい。口取り部はフィルム、不織布、織布、又はそれらの積層体としてもよいし、粘着テープとしてもよく、着色も可能である。担持フィルムの端部分は波形或いは複数の切り込みを入れた状態としても良く、支持体より大きく形成したものを使用してもよい。これらは、貼付材をロール状とした場合においても、担持フィルムを剥ぎ取りやすくし、取り扱い性を向上させるのに有効である。
【0026】
上記の担持体として用いられるのは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。また、これらの単体の担持体だけでなく、紙、不織布、織布、編布、金属箔と積層した複合体の担持体であっても差し支えない。このような担持体には、視認性やコストなどの観点から低密度ポリエチレンフィルム、ポリオレフィン及びポリエステルフィルムが用いられることが好ましい。
【0027】
<粘着剤層>
粘着剤層は、臍ヘルニア治療材固定用貼付材の伸長強度及び粘着力を上記範囲とし得るものであれば特に制限はない。粘着剤としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系など各種の接着剤を使用することができる。
アクリル系粘着剤としては、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとアクリル酸若しくはメタクリル酸とのエステル化物であるアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを用いて得られる共重合体を使用することができる。。具体的には、アクリル系粘着剤としては、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル系単量体と、該アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体が好ましい。
皮膚への刺激を低減する上で、ウレタン系粘着剤が好ましく、透湿度が5,000g/m
2・day以上のポリウレタン系粘着剤であって、
(1)数平均分子量5,000以上かつ平均官能基数2以上のポリオキシアルキレン構造を含有する活性水素化合物と、
(2)数平均分子量1,500〜5,000かつ平均官能基数1のポリオキシアルキレン構造を含有する活性水素化合物と、
(3)有機ポリイソシアネートと、
を反応させて得られる粘着剤(ここで、上記の粘着剤を得るのに使用された全活性水素化合物の平均官能基数が2〜2.6であり、かつ上記粘着剤中の全活性水素化合物のエチレンオキシド単位の含有量が3〜8重量%である)であることが好ましい。
【0028】
透湿度は7,000g/m2・day以上であることがより好ましい。粘着剤層の透湿度の上限値は8,000g/m2・day以下であってもよいが、透湿度は高ければ高いほど好ましく、上限値は特に制限されない。
本発明において粘着剤の透湿度の調整は公知の方法で行い得る(例えば、特開平7−231910号公報、特開2005−58288号公報参照)。一般的に、ポリウレタン系粘着剤中のエチレンオキシド(EOと略すこともある)単位を多くすることにより、高透湿性を得ることができるが、EO単位が余りに多いと、水分吸収時に膨潤が発生しベタツキや、物性値の低下が発生する。また、可塑剤添加により透湿性や粘着性の操作も可能であるが、可塑剤添加により、ポリウレタン系粘着剤の内部凝集力不足が発生し、粘着力の低下が発生したり、剥離時に、皮膚表面への粘着剤の糊残りを生じたりする。更に、これら可塑剤の化学成分による刺激にて、かぶれや皮膚炎症の原因になると報告もされている。
粘着剤は、可塑剤等を添加することなく、ポリウレタン系粘着剤中の全活性水素化合物のEO単位含有量を調整することなどで、優れた粘着特性と高透湿性とを両立させることができる。
粘着剤のポリウレタン系粘着剤中の全活性水素化合物のEO単位含有量はポリウレタン系粘着剤全体に対して3〜8重量%であり、特に4〜6%重量とすることで、更に高透湿性で優れた粘着特性を持つ皮膚に優しい粘着剤を作製することができる。
【0029】
また、本発明の粘着剤層は、透湿度が5,000g/m
2・day以上であっても、粘着層の厚さが25μmであり、支持体の厚さが20μmであるときのウレタン支持体の場合において、後述の試験法による対ベークライト粘着力が0.5〜2.0N/15mm、好ましくは1.0〜1.7N/15mmであることもでき、また、後述の試験法によるプローブタックが、0.2〜1.0N/5mmφ、好ましくは0.5〜1.0N/5mmφであることもできる。
【0030】
ポリウレタン系粘着剤は、分子構造として比較的長いソフトセグメントを持たせることで、柔軟となることが好ましく、したがって、前記(1)の活性水素化合物の数平均分子量は5,000以上、好ましくは10,000以上である。数平均分子量が5,000未満ではウレタン結合濃度が大きくなり、粘着力が低くなる傾向にある。前記(1)の活性水素化合物の数平均分子量の上限は特に制限されないが、数平均分子量15,000以下、特に12,000以下が、得られる粘着剤の粘着力が大きくなったり、糊残り(貼付材を皮膚から剥した時の皮膚に粘着剤が残存すること)を減少させたりする点で、好ましい。
より良好な粘着特性(例えば、指先タック官能試験による硬さ、タック感、粘着力など)を確保するため、より好ましくは、前記(1)の活性水素化合物は数平均分子量が5,000〜10,000である。
また、前記(1)の活性水素化合物の平均官能基数(F)は、2以上であれば特に制限されないが、2〜3が好ましい。凝集力が上昇して、糊残りなどの不具合が減る点で、平均官能基数は2以上が好ましい。一方、凝集力が強くなり過ぎず、粘着力が上昇し得る点や粘着剤作製時のゲル化を抑える点で、平均官能基数は3以下が好ましい。
なお、F=2とF=3の前記(1)の活性水素化合物の混合比率を変えることで、理論上Fは2〜3の間で自由に設定することができる。
【0031】
前記(1)の活性水素化合物として、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールを一部エステル変性したエーテルエステルポリオール、及びアミノ基を持つポリアルキレン(例えばエチレン及びプロピレンなど)オキシドジアミンなどが例示され、ポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、平均官能基数が2のものとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びこれらを共重合させたポリエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール、平均官能基数が3以上のものとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロースなど活性水素基を3以上持つものを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオール、また或いはこれら2または3以上の平均官能基数を持つポリオールの2種以上の混合物が好ましい。具体的には、三洋化成社のサンニックスシリーズ、三井化学ポリウレタン社のアクトコールシリーズ、旭電化社のアデカーポリエーテルシリーズ、Lyondell社のAcclaimシリーズなどが使用できる。
前記(1)の活性水素化合物を単体で用いてもよいが、例えば、数平均分子量、平均官能基数、モノマー単位の種類などで異なる2種以上の混合物を使用してもよい。
【0032】
ポリウレタン系粘着剤は、粘着力を落すことなく、高い透湿度が得られる点から、前記(2)の数平均分子量1,500〜5,000かつ平均官能基数1のポリオキシアルキレン構造を含有する活性水素化合物を使用して製造される。この上記(2)の活性水素化合物の数平均分子量は、1,500〜5,000、好ましくは2,000〜5,000である。
特に、数平均分子量5,000以上、とりわけ5,000〜12,000の前記(1)の活性水素化合物と、前記(2)の活性水素化合物とを組み合わせて、好ましくは比較的高分子量、例えば2,000〜5,000の前記(2)の活性水素化合物とを組み合わせて得られるポリウレタン系粘着剤は、粘着力及び透湿度が向上して好ましい。このようにして得られたポリウレタン系粘着剤は、可塑剤を使用したりすることなく、透湿度を大きくすることができるので、可塑剤の使用などによって生じるベタツキなどが抑えられる点でも有利である。
前記(2)の活性水素化合物として、ポリオキシアルキレンモノオール及びポリアルキレン(例えばエチレンなど)オキシドモノアミンなどが例示され、ポリオキシアルキレンモノオールが好ましい。ポリオキシアルキレンモノオールとして、例えば、アルキルモノオールを開始剤としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたアルキルポリオキシエチレン/ポリプロピレンモノオール、アルキルポリオキシテトラメチレンモノオール、また或いはこれらの2種以上の混合物が例示される。
前記の(2)の活性水素化合物を単体で用いてもよいが、例えば、数平均分子量やモノマー単位の種類などで異なる2種以上の混合物を使用してもよい。
【0033】
ポリウレタン系粘着剤を製造する際の前記(2)の活性水素化合物の使用量は、特に制限されないが、優れた粘着力及び透湿度が得られる点から、前記(1)の活性水素化合物100重量部に対して、好ましくは5〜55重量部、より好ましくは20〜40重量部使用される。
【0034】
ポリウレタン系粘着剤の製造に使用される活性水素化合物は、優れた粘着物性を得るために、前記(1)及び(2)の活性水素化合物のみからなるものが好ましいが、他のモノオールやポリオールなどの活性水素化合物を粘着特性に問題を生じない程度で含有することも可能である。このようなモノオールやポリオールなどの活性水素化合物として、アクリルモノオールやエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど一般的なものが使用可能である。
ポリウレタン系粘着剤を得るのに使用された全活性水素化合物の平均官能基数とは、前記(1)及び(2)の活性水素化合物を含めた、前記(3)の有機ポリイソシアネートと反応させたすべての活性水素化合物について、活性水素化合物ごとの平均官能基数とその添加重量割合との積を総和して求められるものである。この平均官能基数は、優れた粘着特性が得られる点から、2〜2.6、好ましくは2.05〜2.4である。
【0035】
ポリウレタン系粘着剤の構成分子であるアルキレンオキシド、つまりポリオキシアルキレン構造を含有する前記(1)及び(2)の活性水素化合物は一般的に人体への安全性が高いことが確認されている。同様にこれをセグメントに有するポリウレタンもまた安全性が高く、医療用高分子材料として実用されている。また前記(1)及び(2)の活性水素化合物の種類を選択することにより、セグメントの親水性、疎水性のバランスを調節でき、ウレタン結合による分子のフレキシビリティが加わり、透明度が高く皮膚に対して密着性がよく、柔軟で馴染みが良く、低刺激性の粘着剤となる。従って、人体に貼付する用途に適しており、医療用貼付材用の粘着剤として好適である。この場合、粘着性、安全性、材料としての安定性、経済性など全てを充足した新規粘着剤となり得るものである。
【0036】
ポリウレタン系粘着剤に用いられる前記(3)の有機ポリイソシアネートとしては、一般にポリウレタン樹脂の製造に使用できるものは全て使用可能である。具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、或いはテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、また或いはイソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、さらにこれらの混合物等の有機ジイソシアネートが好ましいが、これらの一部をウレタン化、ウレトジオン化、又はカルボジイミド化などにより変性したポリイソシアネートも使用できる。また、ポリオールにてプレポリマー化したイソシアネートプレポリマーを使用することも可能である。
活性水素化合物と有機ポリイソシアネートのNCO/OHモル比は、反応におけるゲル化が抑えられ、粘着力が上昇するため、0.7/1.00〜1.00/1.00が好ましい。残存NCO量が低ければ、経時安定性などが良好になるため、1.05/1.00以下、特に1.00/1.00以下の比率が好ましい。また、0.7/1.00以上の場合、残存活性水素化合物の量が減少するため、ブリードアウトの可能性が低下し、好ましい。
【0037】
本発明におけるポリウレタン系粘着剤の製造は、公知の方法を採用することができ、例えば、特許第5457446号公報に記載の方法により行うことができる。
【0038】
ポリウレタン系粘着剤を製造する際には、必要に応じて触媒及び紫外線吸収剤、酸化防止剤、及び加水分解防止剤等の添加剤を用いることができる。
【0039】
本発明の貼付材の粘着剤層の厚さは、特に制限されないが、皮膚への固定性を担保し、支持体厚みとのバランスの点から10μm以上が好ましく、粘着剤層が厚くなりすぎると透湿度が低下する点から40μm以下が好ましい。
また、皮膚を覆うという用途において、貼付材の粘着剤層の厚さを3〜7μm付近とする場合は、貼付材としての皮膚への追従性を貼付材に与えることができる。
【0040】
<剥離体>
本発明の貼付材は、粘着剤層の支持体が設けられた面の反対側の面に剥離可能な剥離体を備えることが好ましい。
剥離体としては、貼付材の分野で慣用のものを用いることができる。例えばシリコーン離型処理した上質紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙 等の紙基材やポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることができる。
該剥離体は、剥離体の外形を分断する線状の分断部を有することが好ましい。
剥離体の略中心部に、その外形を分断する線状の剥離ライナー分断部を1本もしくは2本以上設けることによって、一方の剥離体を剥がしても、他方の剥離体が残り、粘着面に触れることなく貼付作業ができるようになり、作業性が向上する。分断部は2本以上有することが好ましい。また、分断部は線状であればよく、直線であっても曲線であってもよい。分断部を設けることで、貼付材をロール状とした場合においては、特に剥離体を剥ぎ取りやすくし、取り扱い性を向上させるのに有効である。また、2枚以上の剥離体を粘着剤から剥離しやすいように、剥離体を一方に覆い被さるか又は折り返すように配置しても、取り扱い性を向上させるのに有効である。
【0041】
<臍ヘルニア治療材>
臍ヘルニア治療材は、適度の弾性と、臍輪の開存孔を塞いでおくだけのある程度の硬さを有し、腹腔内圧を緩衝する弾性体であることが好ましい。該弾性体は、乳幼児の繊細な皮膚に刺激を与えないような低皮膚刺激性のものであると好ましい。
【0042】
弾性体としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等の合成ゴム、その他のゴム状弾性体、ウレタン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、シリコーンゴム等の発泡体その他のスポンジ弾性体、圧縮綿、脱脂綿、綿球、不織布、不織布の積層品などの繊維弾性体などを好ましく用いることができる。
また、これらの弾性体には、適当な特性を得るために皮膚刺激性の低い各種の添加剤などを使用することができる。
【0043】
臍ヘルニア治療材1は、臍輪の開存孔5を塞ぐ先端突起7と、先端突起7の基部8よりも大きく形成された後方突起9を備えていることが好ましい。
図1に示すものは、先端突起7の先端部11が弧面状にされたドーム形状にされていて、この先端突起7の基部8から側方に張出す厚みのある後方突起9が形成されている。この後方突起9は、その上面が球面状になっている接触面17に続いて丸味19のある側部21があり、臍窩13の上部及び腹部15周辺の皮膚表面と接触するようになっており、接触面17に対向する背面23を有している。
【0044】
通常、この臍ヘルニア治療材1は、上記材料によって一体に形成されることが多いが、先端突起7と後方突起9とで異なる材料を使用することによって一体的に形成することもできる。
【0045】
臍ヘルニア治療材1を形成する緩衝弾性体の硬さは、この治療材によって直径12mm、高さ10mmの円柱状としたものを、高さで5mm圧縮したときの荷重を圧縮応力として示したときに、6N/12mmφ×5mm以上、280N/12mmφ×5mm以下であり、好ましくは7N/12mmφ×5mm以上、250N/12mmφ×5mm以下である。圧縮応力がこれより小さいものは、ヘルニア部を押し込んだ際や腹腔内圧等の腹腔内の圧力が高くなった際に、綿球のように押し出されてずれることがあり、また、圧縮応力がこれより大きいものは、硬すぎて皮膚を傷める可能性がある。
【0046】
臍ヘルニア治療材1は、乳幼児の体の大きさ、臍窩13の形、腹内の圧力、臍輪の開存孔5の大きさ等に応じて、大きさの異なったものを使用することがあるので、通常大きさの異なるものを複数個用意しておき、その乳幼児にあった大きさのものを使用するようにするとよい。
【0047】
図1に示すものでは、先端突起7のドーム状をした先端部11から基部8までの長さが約15mm、基部8の直径が約20mmであり、後方突起9の厚さが約10mmで、直径が約35mm程度に形成されている。中程度の大きさのものとしては、先端突起7の先端部11から基部8までの長さが約15mm、基部8の直径が約14mmであり、後方突起9の厚さが約10mmで、直径が約30mm程度に形成される。小さいものとしては、先端突起7の先端部11から基部8までの長さが約10mm、基部8の直径が約10mmであり、後方突起9の厚さが約10mmで、直径が約25mm程度に形成される。
【0048】
この臍ヘルニア治療材1を使用する場合、先ず、乳幼児等の臍窩13及び臍窩13の周縁の腹部15表面を清潔にした後、筋膜3に存する臍輪の開存孔5から突出している腸管を指等により開存孔5内に納め、つまり腹腔内に押し込めた状態にする。
【0049】
次に、臍ヘルニア治療材1を、先端突起7から臍窩13内に挿入すると、先端突起7の先端部11が、臍輪の開存孔5を塞いで、臍輪の開存孔5から腸管が突出することを防止することができるようになる。このとき、後方突起9も臍窩13内に嵌入されるようになり、臍窩13の上部表面と臍窩13の周辺の皮膚が後方突起9の表面と接触している状態を維持している。こうして臍窩13内に挿入した臍ヘルニア治療材1の背面23側から本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材25を貼り付ければ臍窩13に固定することができる。
【0050】
臍窩13内に挿入されている先端突起7は、腹直筋4内に腸管を納めた状態で、開存孔5を閉塞した状態を維持することができる。さらに、乳幼児がいきんだりして腹圧が高くなったとき、後方突起9は、腹圧の作用を受け止めてこれを緩衝するようになり、先端突起7が開存孔5内に入り込んでこれを押し拡げるようなこともなく、開存孔5を安定的に閉塞して腸管の封入状態を好適に維持することができるので、確実に臍ヘルニアの治療を行うことができる。
【0051】
上記した
図1に示すものは後方突起9の背面23を弧面状に形成しているもので、乳幼児の腹部15の皮膚の丸みに沿うようにして本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材25を背面23に貼付することができ、先端突起7に対する押圧作用を安定化して圧迫固定性を良好にすることができる。
【0052】
臍ヘルニア治療材固定用貼付材の大きさ及び形状には特に制限はなく、臍ヘルニア治療材を皮膚に保持し得る大きさ及び形状であればよい。好ましくは臍ヘルニア治療材よりも大きく、例えば、
図1に示す臍ヘルニア治療材の基部8の面積より大きいことが好ましい。より好ましくは、4cm
2〜400cm
2であり、更に好ましくは9cm
2〜200cm
2である。形状は、円、楕円、四角であることが好ましく、正方形又は長方形であることがより好ましい。また、角に丸みを持たせたものであることが更に好ましい。
【0053】
本明細書中に示された上限値及び下限値で示される数値範囲は、それを任意に狭めることで一部除いてもよく(また、その範囲内の一点又は数点を除いてもよい)、除いた後の範囲においても、除く前と同様の作用効果を奏する。
【0054】
<臍ヘルニア治療材固定用貼付材キット>
臍ヘルニア治療材固定用貼付材キットは、第一の貼付材と、第二の貼付材により構成される。第一の貼付材と第二の貼付材は共に支持体と、粘着剤層とを備え、第一の貼付材と、第二の貼付材とを積層して臍ヘルニア治療材固定用貼付材とすることができる。好ましくは、第一の貼付材の支持体の、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に第二の貼付材の支持体の、粘着剤層が設けられた面を貼り合わせることにより本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材とすることができる。
すなわち、第一の貼付材の粘着剤層、第一の貼付材の支持体、第二の貼付材の粘着剤層、第二の貼付材の支持体がこの順で積層した臍ヘルニア治療材固定用貼付材とすることができる。
第一の貼付材、及び第二の貼付材の支持体及び粘着剤層の材質及び膜厚等は、上述の本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材に用いたものと同様のものを用いることができ、第一の貼付材と、第二の貼付材とを積層して臍ヘルニア治療材固定用貼付材とした際に本願特定の伸長強度、及び粘着力となるものであればよい。
第一の貼付材の粘着剤層は、皮膚への刺激を低減する上で、本発明の臍ヘルニア治療材固定用貼付材に好ましく用いられるものと同様であることが好ましい。
【0055】
臍ヘルニア治療材固定用貼付材キットは、更に、上述の臍ヘルニア治療材を具備してもよい。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の合成例、実施例及び比較例中の部及び%は、原則として、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0057】
本発明における臍ヘルニア治療材の適当な硬さ等の使用適性を評価する為に、以下の試料を用意して試験を行った。
【0058】
試料1:ウレタン系粘着剤(試料2の粘着剤)を膜厚25μmの粘着剤層とし、膜厚30μmのウレタンフィルム(試料8の支持体)を支持体とした貼付材
試料2:ポリウレタン系粘着剤(平均官能基数3、数平均分子量10,000のポリエーテルポリオールと、平均官能基数2、数平均分子量4,000のポリエーテルポリオールと、平均官能基数1、数平均分子量3,500のポリエーテルポリオールとを、3/3/4の割合になるように調整し、平均官能基数2、重量平均分子量600のヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマーを、モル比がポリオール中の水酸基100に対してイソシアネート基が90となるように加え、常法に従って反応させた粘着液に、架橋剤を添加した粘着剤)を膜厚25μmの粘着剤層とし、膜厚17μmのポリエーテル系ポリウレタンフィルムを支持体とした貼付材
試料3:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル/アクリル酸エトキシジエチレングリコール=75/5/20)を膜厚40μmの粘着剤層とし、膜厚75μmの低密度ポリエチレンフィルムを支持体とした貼付材
試料4:アクリル系粘着剤(アクリル酸イソノニル/アクリル酸メトキシノナエチレングリコール/メタクリル酸ノナエチレングリコール=83/16/1)を膜厚40μmの粘着剤層とし、膜厚260μmのスパンボンド法により得られたポリプロピレン不織布(坪量40g/m
2)を支持体とした貼付材
試料5:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸=96/4)を膜厚20μmの粘着剤層とし、膜厚30μmのポリエステル系ポリウレタンフィルムを支持体とした貼付材
試料6:アクリル系粘着剤(アクリル酸イソノニル/アクリル酸メトキシノナエチレングリコール/メタクリル酸ノナエチレングリコール=83/16/1)を膜厚40μmの粘着剤層とし、膜厚120μmのポリエステル不織布(坪量40g/m
2)を支持体とした貼付材
試料7:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル/酢酸ビニル/アクリル酸=85/11/4)を膜厚5μmの粘着剤層とし、膜厚5μmのポリエーテル系ポリウレタンフィルムを支持体とした貼付材
試料8:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル/酢酸ビニル/アクリル酸=85/11/4)を膜厚20μmの粘着剤層とし、膜厚30μmのポリエステル系ポリウレタンフィルムを支持体とした貼付材
試料9:試料2の貼付材の支持体の、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に試料8の貼付材の支持体の、粘着剤層が設けられた面を貼り合わせた貼付材
臍ヘルニア治療材試料10:弾性体(株式会社イノアックコーポレーションの製品「AZOTE」(品番LD−33))を、先端突起7の先端部11から基部8までの長さを15mm、基部8の直径を14mmとし、後方突起9の厚さが10mmで、直径を30mmとした臍ヘルニア治療材。
【0059】
上記した試料1〜9及び臍ヘルニア治療材試料10を使用して、以下の試験を行った。
[固定力評価]
温度23±1℃、相対湿度50±5%の環境下において、ベークライト板を12mm間隙をあけて固定し、その間隙上に8mm幅×100mm長さにカットした試験片を貼付し、1kgのゴムロールで600mm/分の速度で2往復圧着した。そして、圧着後1分以内にその間隙より縦約10mm×横10mm×高さ約20mmのブロックで速度30mm/分にてテープを押しはがす方向に押しこんだ。テープを押しはがす方向に、ブロックを5〜10mm押したときの平均荷重を測定した。
この測定は、引張圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン)で各試料について3回ずつ行い、その平均値を臍ヘルニア治療材固定用貼付材の固定力(N/8mm)とした。
それらの測定結果は、表1に記載した。
【0060】
[伸長強度評価]
JIS Z−0237に従い、23℃雰囲気下で試料1〜9を8mm幅×100mm長さにカットし、上記と同じ引張圧縮試験機に間隙30mmで固定した。これを速度300mm/分で破断するまで引張した。得られたデータより、10%引張時の強度を求め、これを各試料について3回ずつ行い、その平均値を10%伸長時の伸長強度とした。
【0061】
[粘着力評価]
JIS Z−0237に従い、23℃雰囲気下でベークライト板(フェノール樹脂板、住友ベークライト社製、PL−1102)に試料1〜9を8mm幅×100mm長さにカットした試験片を貼付し、1kgのゴムロールで600mm/分の速度で2往復圧着し、圧着後1分以内に、剥離角度90度、剥離速度300mm/分の剥離力を測定した。これを各試料について3回ずつ行い、その平均値を粘着力とした。
【0062】
[貼付中の違和感の評価]
成人男性5名の腹部皮膚に、試料1〜9を5cm幅×5cm長さにカットした試験片を貼付し24時間後に、各試料を除去して、「貼付中の違和感」を、次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○;違和感なし、△;わずかな違和感、×;違和感あり
【0063】
[剥離時の痛みの評価]
成人男性5名の腹部皮膚に、試料1〜9を5cm幅×5cm長さにカットした試験片を貼付し24時間後に、各試料を除去して、「剥離時の痛み」を、次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○;痛みなし、△;わずかな痛み、×;痛みあり
【0064】
[治療適正評価]
上記した試料10を使用して、試料1、試料2、試料7、試料8および試料9の治療適性評価を行った。
生後3か月以内の臍ヘルニア患者を被験者として、先ず、被験者の臍窩及び臍窩周縁の腹部表面を清潔にした後、臍輪の開存孔から突出したヘルニア部を指にて腹直筋の内側に押し込め、ヘルニア部を開存孔内に収めた状態にした。次に、試料10を、先端突起から臍窩内に挿入し、後方突起の背面の上から試料1の臍ヘルニア治療材固定用貼付材によって腹部に貼り付けて、試料10の治療材を臍窩に固定した。試料2、試料7、試料8および試料9についても同様に臍窩に固定した。
固定してから5日後、被験者の臍窩から試料10の治療材を除去して、この治療材が接触している臍窩や臍窩の周辺皮膚に皮膚刺激などの症状が生じているか等について観察し、次の基準で評価した。
○;皮膚刺激なし、△;わずかな皮膚刺激、×;皮膚刺激あり
【0065】
[治療材試験の結果]
試料1〜5および試料9の臍ヘルニア治療材固定用貼付材では、後方突起も臍窩内に嵌入されるようになり、臍窩の上部表面と臍窩の周辺皮膚が後方突起の表面と接触している状態に試料1の臍ヘルニア治療材固定用貼付材で5日間しっかりと固定されていた。これによって、臍輪の開存孔が閉塞した状態を維持することができた。そして、5日後、試料1の臍ヘルニア治療材固定用貼付材を除去したところ、これと接触している皮膚に皮膚刺激などによる変化した症状は見られなかった。
一方、試料7の臍ヘルニア治療材固定用貼付材では試料10をしっかりと固定することができず、臍輪の開存孔が閉塞した状態を3日後には維持することができなかった。
また、試料8の臍ヘルニア治療材固定用貼付材では試料10をしっかりと固定することができたが、5日後に試料3を除去したところ、これと接触している皮膚に、皮膚刺激などによる変化した症状が少し見られた。
【0066】
【表1】