特許第6607789号(P6607789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607789
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】電気手術器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   A61B18/12
【請求項の数】28
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-4657(P2016-4657)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-129674(P2016-129674A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】1500532.5
(32)【優先日】2015年1月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】594089821
【氏名又は名称】ジャイラス メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ミュリグ ジョーンズ
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−195706(JP,A)
【文献】 米国特許第8439911(US,B2)
【文献】 米国特許第7877852(US,B2)
【文献】 特開2007−195982(JP,A)
【文献】 特開2005−673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術器具用の顎部材を製造する方法であって:
長手方向の顎区間を有する顎ハウジングを提供するステップと;
導電性プレートを提供するステップと;
前記導電性プレートを第1の型内に置くステップと;
流動性の第1の絶縁材料が前記導電性プレートから所定距離突出する1以上の止め部材を形成するように流動性の第1の絶縁材料を前記型へ注入するステップと;
流動性の前記第1の絶縁材料を固化させるステップと;
前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを第2の型内に置くステップと;
前記導電性プレートを前記顎ハウジングに固定するために、流動性の第2の絶縁材料を前記型へ注入するステップと;
流動性の前記第2の絶縁材料を固化させるステップと;
前記顎ハウジングと、前記導電性プレートと、固化した前記絶縁材料とを顎部材として前記型から取り出すステップとを備える;
方法。
【請求項2】
前記注入するステップは、前記所定距離が約20μm乃至約350μm(0.00079インチ乃至約0.014インチ)であるステップである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顎ハウジング内に受容可能な予め成形されたインサートを提供するステップを備える;
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性プレートを第1の型内に置く前に、前記導電性プレートを前記予め成形したインサートに当てて置くステップを含む;
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予め成形したインサートに当接てて前記導電性プレートを置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと;
次に、前記第1のサブアセンブリを前記第1の型内に置くステップと;
流動性の前記第1の絶縁材料を注入するステップとを備える;
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
流動性の前記第1の絶縁材料を前記導電性プレートの上に注入し、これを固化させた後に、前記予め成形したインサートに当てて前記導電性プレートを置くステップを備える;
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記予め成形したインサートに当接して前記導電性プレートを置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと、
前記第1のサブアセンブリを前記顎ハウジング内に置いて第2のサブアセンブリを形成するステップと、
次いで、前記第2のサブアセンブリを前記第2の型内に置くステップと、及び流動性の第2の絶縁材料を注入するステップとを備える;
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予め成形したインサートを前記顎ハウジング内に置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと;
前記導電性プレートを前記第1のサブアセンブリの上に置いて第2のサブアセンブリを形成するステップと;
次に、前記第2のサブアセンブリを前記第2の型内に置くステップと;
流動性の前記第2の絶縁材料を注入するステップとを備える;
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを前記第2の型内に置く前に、導電性の導線を前記導電性プレートに当てて配設する追加ステップを備える;
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを前記第2の型内に置く前に前記導電性の導線を所定位置に圧着するステップを備える;
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
流動性の前記第2の絶縁材料は、前記導線を前記導電性プレートと電気接続した状態で所定位置に固定することを支援する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性プレートが1以上の保持機構を備え、流動性の前記第1の絶縁材料が前記1以上の保持機構へ流れ込んで前記1以上の止め部材を形成する、
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の保持機構が1以上の凹部を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上の凹部が、前記導電性プレートに形成される複数の閉止された孔を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1以上の凹部が、前記導電性プレートに形成される樋状溝を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記1以上の保持機構が、前記導電性プレートに形成される複数の通路を備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記1以上の通路が、前記導電性プレートに複数の貫通孔を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記貫通孔は、前記導電性プレートの長手方向の軸線に沿って配設される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記導電性プレートは、前記複数の貫通孔が配置された細長い溝を備える、
請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細長い溝は実質的にU字形である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導電性プレートは、並進可能なナイフブレードを受容可能な長手方向に延びるスロットを含む、
請求項1乃至請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記1以上の保持機構は、前記長手方向に延びるスロットに近接して配設される、
請求項12乃至請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記1以上の保持機構は、前記長手方向に延びるスロットの両側に配設される、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1以上の保持機構は、前記長手方向に延びるスロット内に1以上の凹部を含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1乃至請求項24のいずれか1項の方法に従って作られる電気手術器具用の顎部材。
【請求項26】
組織を封止するためのエンドエフェクタアセンブリを製造する方法であって:
長手方向の顎区間を各顎ハウジングが有する一対の第1及び第2の顎ハウジングと、少なくとも一方の導電性プレートがその中に1以上の保持機構を含む一対の導電性プレートとを提供するステップと;
前記導電性プレートを第1の型内に置くステップと;
流動性の第1の絶縁材料を前記型に注入するステップであって、流動性の前記第1の絶縁材料は、前記1以上の保持機構に流入して前記導電性プレートから所定距離突出する1以上の止め部材を形成するように注入されるステップと;
流動性の前記第1の絶縁材料を固化させるステップと;
前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを第2の型内に置くステップと;
流動性の第2の絶縁材料を前記型に注入して前記導電性プレートを前記顎ハウジングに固定させるステップと;
流動性の前記第2の絶縁材料を固化させるステップと;
前記顎ハウジングと、前記導電性プレートと、前記固化した絶縁材料とを前記型から取り出して2つの顎部材を形成するステップと;
前記導電性プレートが実質的に互いに対向し互いに対して枢動関係となるように前記顎部材を枢軸周りに組み立てるステップとを備える;
方法。
【請求項27】
前記注入するステップは、前記所定距離が約20μm乃至約350μm(0.00079インチ乃至約0.014インチ)であるステップである、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項26又は請求項27の方法によって作られるエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気手術器具用の、特には、組織を封止する(sealing)ための鉗子器具用の顎部材を製造する方法に関する。こうしたシステムは、一般的には、外科的インターベンション(介入)における組織の治療で用いられ、最も一般的には、「鍵穴」手術(「キーホール」サージェリ)又は最小侵襲手術に用いられるが、それだけでなく、「直視下」手術(「オープン」サージェリ)でも用いられている。
【背景技術】
【0002】
構成部品を型に組み入れ、型に導入した流動性の材料で構成部品を取り囲んで完成顎部材を形成するオーバーモールド成形プロセスによって電気手術器具用の顎部材を製造することは公知である。米国特許第7,150,097号及び第7,922,953号は、そのような製造方法の例である。止め部材を顎部材上に設けることも公知であり、米国特許第7,877,852号は、そのような製造方法の一例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施の形態は、先に述べた先行技術に記載された製造方法に対する1以上の改良代替案を提供する試みである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの態様は、電気手術器具用の顎部材を製造する方法であって:長手方向の顎区間を有する顎ハウジングを提供するステップと;導電性プレートを提供するステップと;前記導電性プレートを第1の型内に置くステップと;流動性の第1の絶縁材料が前記導電性プレートから所定距離突出する1以上の止め部材を形成するように流動性の第1の絶縁材料を前記型へ注入するステップと;流動性の前記第1の絶縁材料を固化させるステップと;前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを第2の型内に置くステップと;前記導電性プレートを前記顎ハウジングに固定するために、流動性の第2の絶縁材料を前記型へ注入するステップと;流動性の前記第2の絶縁材料を固化させるステップと;前記顎ハウジングと、前記導電性プレートと、固化した前記絶縁材料とを顎部材として前記型から取り出すステップとを備える方法を提供する。
【0005】
先に引用した米国特許第7,877,852号において、止め部材は、別体の絶縁ハウジング内に予め形成され、次にハウジングが開孔(aperture)を有する導電性封止プレートと組み立てられ、絶縁ハウジングの止め部材が開孔から突出する。代替の配置構成において、止め部材の材料を溶融形態で封止プレートに形成されたキャビティ(空洞)内に分散させ(行き渡らせ)、これを固化させて止め部材を形成する。本発明の実施の形態は、これら両配置構成に対する改良代替案を提供するものであり、第1のオーバーモールド成形プロセス(射出成形プロセス(型キャビティ内に射出された溶融材料を利用する成形プロセス))中に1以上の止め部材が形成される。こうして、他の構成部品と一緒に注意深く組み立てる必要があるハウジング等の予め形成される構成部品とは対照的に、1以上の止め部材はオーバーモールド成形された構成部品の一部となる。
【0006】
好ましくは、前記注入するステップは、前記所定距離が約20μm乃至約350μm(0.00079インチ乃至約0.014インチ)のステップである。1以上の止め部材が導電性プレートからこのような距離だけ突出することを確実にすることにより、顎部材間に把持される組織の効果的な封止が達成される。
【0007】
好ましくは、前記方法は、前記顎ハウジング内に受容可能な予め成形されたインサートを提供するステップを備える。前記方法は、好ましくは、前記導電性プレートを第1の型内に置く前に、前記導電性プレートを前記予め成形したインサートに当てて置くステップを備える。一つの構成によれば、前記方法は、前記予め成形したインサートに当接てて前記導電性プレートを置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと;次に、前記第1のサブアセンブリを前記第1の型内に置くステップと;流動性の前記第1の絶縁材料を注入するステップとを含む。こうして、導電性プレートとインサートとを予め組立てておいてから、第1の流動性の材料の型成形を行う。加えて、第1の流動性の材料の提供は、止め部材を形成すると同時に導電性プレートと予め成形されたインサートとを互いに固定するように作用する。かくして一体的なアセンブリが形成され、これ以降はこの一体的なアセンブリを単体部品として扱うことができる。第1の流動性の材料が固化した後、導電性プレートと、インサートと、すでに固化した第1の流動性の材料とで形成された一体的なアセンブリを顎ハウジング上に配置し、これを第2の型内に置いて第2の流動性の材料を注入できるようにする。
【0008】
前記方法は、流動性の前記第1の絶縁材料を前記導電性プレートの上に注入し、これを固化させた後に、前記予め成形したインサートに当てて前記導電性プレートを置くステップを含んでもよい。この構成では、前記方法は、前記予め成形したインサートに当接して前記導電性プレートを置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと;前記第1のサブアセンブリを前記顎ハウジング内に置いて第2のサブアセンブリを形成するステップと;次いで、前記第2のサブアセンブリを前記第2の型内に置くステップと、及び流動性の第2の絶縁材料を注入するステップとを含む。この代替の方法は、第2の流動性の材料を注入している間に、導電性プレートと、インサートと、顎ハウジングとが互いに固定されるように、導電性プレート上に1以上の止め部材を形成した後に、導電性プレートをインサート上に配置する。
【0009】
さらなる代替の方法によれば、前記方法は、(流動性の前記第1の絶縁材料を注入した後で)前記予め成形したインサートを前記顎ハウジング内に置いて第1のサブアセンブリを形成するステップと;前記導電性プレートを前記第1のサブアセンブリの上に置いて第2のサブアセンブリを形成するステップと;次に、前記第2のサブアセンブリを前記第2の型内に置くステップと;流動性の前記第2の絶縁材料を注入するステップとを含む。これは、部品の組み立て順序だけが上記方法とは異なり、インサートを顎ハウジングに装入してから、導電性プレートを加える。
【0010】
どの方法を用いても、その方法は好ましくは、前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを前記第2の型内に置く前に、導電性の導線を前記導電性プレートに当てて配設する追加ステップを含む。好ましくは、前記導電性のワイヤは、前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを前記第2の型内に置く前に、所定位置に圧着される。典型的には、流動性の前記第2の絶縁材料は、前記導線を前記導電性プレートと電気接続した状態で所定位置に固定することを支援する。
【0011】
好ましくは、前記導電性プレートが1以上の保持機構を備え、流動性の前記第1の絶縁材料が前記1以上の保持機構へ流れ込んで前記1以上の止め部材を形成する。一つの好ましい構成では、前記1以上の保持機構が1以上の凹部を備える。好ましくは、前記1以上の凹部は、前記導電性プレートに形成される複数の閉止された孔を備える。または、前記1以上の凹部は、前記導電性プレートに形成される樋状溝を備える。代わりに、前記1以上の保持機構が、前記導電性プレートに形成される複数の通路を備えてもよく、例えば前記1以上の通路は、前記導電性プレートの複数の貫通孔である。貫通孔があるため、第1の流動性の材料はこれらの貫通孔を流れ上がって導電性プレート上に1以上の止め部材を形成することができる。好ましくは、前記貫通孔は、前記導電性プレートの長手方向の軸線に沿って配設される。
【0012】
好ましい組合せによれば、前記導電性プレートは、前記複数の貫通孔が配置された細長い溝を備える。これにより樋状溝構造が貫通孔と組み合わさって、導電性プレートの下から孔を通って流れる第1の流動性の材料によって固定された細長い止め部材が形成される。導電性プレートの各半部に1つの細長い止め部材が形成されるように、細長い溝は実質的にU字形であることが好ましい。典型的には、導電性プレートは、並進可能なナイフブレード(ナイフの刃状の部材)を受容できる長手方向に延びたスロットを含み、この場合、U字形の溝は、長手方向に延びるスロットの各々の側に1つの細長い止め部材をもたらす。
【0013】
どのような種類の保持機構が提供されようとも、それらは好ましくは、前記長手方向に延びるスロットに近接して配設される。典型的には、前記1以上の保持機構は、前記長手方向に延びるスロットの両側に配設される。好ましくは、前記1以上の保持機構は、前記長手方向に延びるスロット内に1以上の凹部を備える。
【0014】
本発明の実施の形態は、組織を封止するためのエンドエフェクタアセンブリを製造する方法にある。この方法は:長手方向の顎区間を各顎ハウジングが有する一対の第1及び第2の顎ハウジングと、少なくとも一方の導電性プレートがその中に1以上の保持機構を含む一対の導電性プレートとを提供するステップと;前記導電性プレートを第1の型内に置くステップと;流動性の第1の絶縁材料を前記型に注入するステップであって、流動性の前記第1の絶縁材料は、前記1以上の保持機構に流入して前記導電性プレートから所定距離突出する1以上の止め部材を形成するように注入されるステップと;流動性の前記第1の絶縁材料を固化させるステップと;前記顎ハウジングと前記導電性プレートとを第2の型内に置くステップと;流動性の第2の絶縁材料を前記型に注入して前記導電性プレートを前記顎ハウジングに固定させるステップと;流動性の前記第2の絶縁材料を固化させるステップと;前記顎ハウジングと、前記導電性プレートと、前記固化した絶縁材料とを前記型から取り出して2つの顎部材を形成するステップと;前記導電性プレートが実質的に互いに対向し互いに対して枢動関係となるように前記顎部材を枢軸周りに組み立てるステップとを備える。
【0015】
本発明の実施の形態はまた、前述の方法によって作られる電気手術器具用の顎部材又はエンドエフェクタ(先端に設けられる、人間の手(ハンド)と同様な働きをする部分)にある。
【0016】
本発明の実施の形態を、添付の図面を参照し単なる例としてここで更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態による製造方法で用いる導電性プレートの斜視概略図である。
図2図2は、図1の導電性プレートの底面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態による製造方法で用いるインサート構成部品の斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態による製造方法の第1の製造段階でサブ構成部品(従属構成部品)を成す図1乃至図3の導電性プレート及びインサート構成部品の斜視図である。
図5図5は、図4のサブ構成部品の部分拡大断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態による製造方法のその後の段階における図4のサブ構成部品の概略図である。
図7図7は、本発明の実施の形態による製造方法の最終の段階で用いられる顎ハウジングの斜視図である。
図8図8は、本発明の実施の形態による製造方法の最終の段階で形成される顎部材の斜視概略図である。
図9図9は、図8の顎部材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を参照すると、シム1の形態の導電性プレートは、打抜加工、機械加工、エッチング、曲げ加工のうちの1以上で又は鋳造により製造され、左側封止面3と、右側封止面4と、端部5とを含む上面2を備える。このシムは、中央スロット6と、スロット6を縁取る略U字形の樋状溝7とを有する。複数の貫通孔8が樋状溝7内に位置している。
【0019】
複数の保持タブ9がシム1の縁部に在り、保持タブはシムの両側に沿って等間隔に配置されている。単体のエンドタブ10がシムの遠位端に在り、それよりも大きな接続タブ11がシムの近位端に在る。
【0020】
図3は、シム1の形状に対応するように予め形成された細長い形状の高分子インサート(挿入体)12を示す。インサート12は、U字形の溝14を持つ上面13を有し、インサートのこの上面は、シム1を載置できる寸法とされている。第1の製造ステップにおいて、シム1をインサート12の上に置き、タブ9及び10がインサートのそれぞれ両側及び前部の周囲に延出する状態とする。組み立てられたシムとインサートを型(不図示)内に置き、シリコーン等の流動性のプラスチック材料15を型に注入する。プラスチック材料15はシム1とインサート12との間に流入し、溝14を含む空き領域の全てを満たす。材料15はまた、貫通孔8を通って流れ、樋状溝7に入り込んで図4及び図5に符号16で示す略U字形の止め部材を形成する。
【0021】
止め部材16はシムの上面2から上方に20μm乃至約350μmだけ突出する。流動性の材料15を固化させ、シム1とインサート12とを互いに固定する。固定後、図6に示すように電導線17をシムの近位端の接続タブ11に取り付ける。はんだ付け、圧着、又はその両方によって導線17を固定する。
【0022】
上記に対する代替の実施の形態は、シム1とインサート12を共に型に入れ流動性のプラスチック材料15を用いてシム1とインサート12とを固定するのではなく、インサート12は入れずに、適切な型にシム1を挿入する。この実施の形態では、貫通孔8を通って樋状溝7へ流入するように流動性のプラスチック材料15を型に注入し、上記と同様に、図4及び図5に符号16で示す略U字形の止め部材を形成するが、シムとインサートとを一緒に固定はしない。こうして、形成された止め部材16がシム1に備えられてから以降のプロセスで、シム1はプラスチック製インサートへ導入された状態になる。
【0023】
図7は、製造工程の次の段階で用いられる金属製の顎ハウジング18を示す。顎ハウジングも打抜加工、機械加工、金属射出成形又は鋳造のいずれかで製造され、キャビティ20を内部に画成(定め形成)する略U字形の断面を有する細長い顎本体19を備える。顎本体19の近位側にあるのは一対のフランジ21及び22であり、それぞれ枢支孔(旋回する軸を支える孔)23と傾斜したカムスロット24とを有する。
【0024】
製造工程にはこの時点でいくつか選択肢がある。第1の選択肢では、顎ハウジング18を第2の型(不図示)内に置き、図6に示すサブアセンブリ(従属組立体)(シム1と、インサート12と、形成された止め部材16とから成る)を型内の顎ハウジングの上に置き、インサートの下部分がキャビティ20に受容された状態とする。第2の選択肢では、図6に示すサブアセンブリを顎ハウジング18へ入れてから、顎ハウジングを第2の型へ入れる。どちらの方法を採ったとしても、次にポリエチレン又はポリプロピレン等の第2の流動性の材料25が型に注入され、顎ハウジング18の周り、及び、顎ハウジングとインサート12との間に流入するようにする。
【0025】
第2の流動性の材料25は顎ハウジング18と型の側部との間に流入し、図8及び図9に符号26で示す顎本体を創出する。顎本体26がシムと、インサート12と、顎ハウジング18とを一体に固定して完成顎部材27と成し、その外側及び底を構成するように、第2の流動性の材料25を固化する。
【0026】
顎部材27は、もう一つの同様の顎部材と組み立てられて、当該技術分野で公知であるように、組織を封止及び/又は切断するための鉗子器具用のエンドエフェクタを形成することができる。顎部材27は、枢支孔23を貫通する枢軸ピン(旋回する軸、ピン)(不図示)に装着でき、一方の顎を他方に対して開位置と閉位置で枢動(軸線を中心に旋回すること)させるためにカムピン(同じく不図示)をカムスロット24に配置することができる。
【0027】
本発明の範囲を逸脱することなく上記に対して変更が可能であること、そして構成部品の代替構成を採用できることを当業者は理解するであろう。流動性の材料がシム11の上方まで上昇するための切欠き又は貫通孔を設けることにより、第1のオーバーモールド成形プロセス時に止め部材を形成でき、第2のオーバーモールド成形プロセスを用いて顎部材の残り部分の固定と創出を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 シム
2 上面
3 左側封止面
4 右側封止面
5 端部
6 中央スロット
7 樋状溝
8 貫通孔
9 保持タブ
10 エンドタブ
11 接続タブ
12 インサート
13 上面
14 U字形の溝
15 プラスチック材料(第1の流動性の材料)
16 U字形の止め部材
17 導線
18 顎ハウジング
19 顎本体
20 キャビティ
21、22 一対のフランジ
23 枢支孔
24 傾斜したカムスロット
25 第2の流動性の材料
26 顎本体
27 完成顎部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9