特許第6607797号(P6607797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607797
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-13590(P2016-13590)
(22)【出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-133923(P2017-133923A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】三原 俊哉
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−093141(JP,A)
【文献】 特開平08−145939(JP,A)
【文献】 特開2009−014707(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0302171(US,A1)
【文献】 実開昭62−134061(JP,U)
【文献】 米国特許第04786398(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406 − 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる検出素子と、
前記検出素子の径方向周囲を取り囲んで該検出素子を保持する筒状の主体金具と、
前記主体金具に取り付けられると共に、前記主体金具よりも後端側に延び、自身の内部へ外気を導入する第1通気孔を有する筒状の外筒と、
前記第1通気孔を塞ぐように前記外筒の径方向外側に配置され、通気性を有するフィルタと、
前記フィルタを径方向外側から囲むと共に、前記フィルタに連通する第2通気孔を有する筒状の保護外筒と、
を備えたガスセンサであって、
前記第2通気孔の直径が前記第1通気孔の直径より小さく、かつ前記第2通気孔の個数が前記第1通気孔の個数より多く
前記軸線方向において前記第2通気孔の存在する領域のすべてが前記第1通気孔の存在する領域と重なり、かつ、前記第2通気孔および前記第1通気孔は周方向に重ならないガスセンサ。
【請求項2】
前記第2通気孔の総面積が前記第1通気孔の総面積の70〜130%である請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第2通気孔の直径が2.0mm以下である請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記保護外筒の先端縁が前記外筒の外面から離間している請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出する検出素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の特定ガス(例えば、酸素やNO)の濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質を用いた検出素子を有するものが知られている。
この種のガスセンサとして、軸線方向に延びる検出素子の径方向周囲を主体金具で保持し、主体金具の後端側に外筒を取り付けた構成が知られている(特許文献1)。このガスセンサにおいては、外筒内部の検出素子に基準酸素濃度の外気を導入するため、外筒の側面に第1通気孔が形成されている。そして、第1通気孔を通気性のフィルタで塞ぎつつ、さらにフィルタの外側から保護外筒を被せ、保護外筒と外筒とを加締めてフィルタを固定している。また、保護外筒にもフィルタに連通する第2通気孔が開口しており、外気がフィルタを介して外筒内部に導入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−145939号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルタは保護外筒の第2通気孔から外部に露出しており、車両の洗車時の水滴や、走行時の雪などの外部の異物がフィルタに直接接触するおそれがある。そこで、これらの外部の異物がフィルタに直接接触することを抑制するため、特許文献1記載のガスセンサでは第2通気孔を第1通気孔よりも小径としている。
しかしながら、第2通気孔を第1通気孔より小径とすると、第2通気孔が通気抵抗となってフィルタの通気性が低下するおそれがある。
【0005】
従って、本発明は、フィルタの通気性を維持すると共に、外部の異物がフィルタに直接接触することを抑制したガスセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延びる検出素子と、前記検出素子の径方向周囲を取り囲んで該検出素子を保持する筒状の主体金具と、前記主体金具に取り付けられると共に、前記主体金具よりも後端側に延び、自身の内部へ外気を導入する第1通気孔を有する筒状の外筒と、前記第1通気孔を塞ぐように前記外筒の径方向外側に配置され、通気性を有するフィルタと、前記フィルタを径方向外側から囲むと共に、前記フィルタに連通する第2通気孔を有する筒状の保護外筒と、を備えたガスセンサであって、前記第2通気孔の直径が前記第1通気孔の直径より小さく、かつ前記第2通気孔の個数が前記第1通気孔の個数より多く、前記軸線方向において前記第2通気孔の存在する領域のすべてが前記第1通気孔の存在する領域と重なり、かつ、前記第2通気孔および前記第1通気孔は周方向に重ならない
このガスセンサによれば、第2通気孔の直径が第1通気孔の直径より小さいことにより、第2通気孔からフィルタが外部に露出しても、外部の異物がフィルタに直接接触することを抑制できる。又、第2通気孔の個数が第1通気孔の個数より多いので、第1通気孔より小径の第2通気孔が通気抵抗となってフィルタの通気性が低下することを抑制できる。
又、このガスセンサによれば、第2通気孔と第1通気孔とが軸線方向に少なくとも一部重なることで、軸線方向のガスセンサの高さを低減することができ、ガスセンサの小型化を図ることができる。又、保護外筒と外筒の間でフィルタを加締め固定する場合、軸線方向に加締め部を設けるためのスペースが必要になるが、第2通気孔と第1通気孔とが軸線方向に重なることで、このスペースを確実に設け、フィルタの加締め固定を確実に行える。
又、第2通気孔と第1通気孔とが周方向に重ならないことで、外部の異物がフィルタに接触したときにフィルタを貫通してフィルタが破損することを有効に抑制できる。
なお、図2に示すように、「軸線方向において第2通気孔の存在する領域」とは、「保護外筒39の外周面において第2通気孔39hが占める軸線方向の(帯状の)領域39R」を意味し、「軸線方向において第1通気孔の存在する領域」とは、「外筒33の外周面において第1通気孔33hが占める軸線方向の(帯状の)領域33R」を意味する。そして、「軸線方向において第2通気孔の存在する領域および第1通気孔の存在する領域が重なる」とは、「第2通気孔39hが占める軸線方向の領域39Rと、第1通気孔33hが占める軸線方向の領域33Rとが軸線方向において重なる」ことを意味する。
つまり、第2通気孔および第1通気孔が周方向に重ならなくても、第2通気孔および第1通気孔のそれぞれを軸線方向に投影した領域(帯)が重なるように各孔を配置することをいう。
【0007】
前記第2通気孔の総面積が前記第1通気孔の総面積の70〜130%であってもよい。
このガスセンサによれば、第2通気孔と第1通気孔の通気抵抗が近い値となるので、第2通気孔が通気抵抗となってフィルタの通気性が低下することをより一層抑制できる。
【0008】
前記第2通気孔の直径が2.0mm以下であってもよい。
このガスセンサによれば、外部の異物がフィルタに直接接触することをより一層抑制できる。
【0010】
前記保護外筒の先端縁が前記外筒の外面から離間していてもよい。
このガスセンサによれば、ガスセンサの先端側が被検出ガスに曝されて加熱され、外筒から後端側へ熱が伝わっても、外筒の外面から離間した保護外筒の先端縁がこの熱を放熱する放熱部として機能する。これにより、外筒と保護外筒の間に配置されたフィルタが受熱してクリープし(収縮し)、通気性やシール性が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、フィルタの通気性を維持すると共に、外部の異物がフィルタに直接接触することを抑制したガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサを軸線方向に沿う面で切断した断面図である。
図2】フィルタ近傍の図1の部分断面図である。
図3】加締め前の外筒を示す斜視図である。
図4】加締め前の保護外筒を示す斜視図である。
図5】加締め後の外筒と保護外筒を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る酸素センサ(ガスセンサ)1を軸線O方向(先端から後端に沿う方向)に沿う面で切断した断面構造を示す。この実施形態において、酸素センサ1は自動車の排気管内に挿入されて先端(図1の保護キャップ31側)が排気ガス中に曝され、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサになっている。
なお、図1の下側(保護キャップ31側)を酸素センサ1の先端側とし、図1の上側を酸素センサ1の後端側とする。
【0014】
酸素センサ1は、検出素子3がハウジング(主体金具)29内に組み付けられている。この検出素子3は、軸線O方向に延びる酸素イオン伝導性の固体電解質体に一対の電極5,7を積層した酸素濃淡電池を構成し、酸素量に応じた検出値を出力する公知の酸素検出素子である。詳細には、検出素子3は、先端に向かってテーパ状に縮径する有底筒状の固体電解質体と、固体電解質体の内周面と外周面にそれぞれ形成された内側電極5及び外側電極7とからなる。そして、検出素子3の内部空間を基準ガス雰囲気とし、検出素子3の外面に被検出ガスを接触させてガスの検知を行うようになっている。
検出素子3の中央付近には、径方向外側に突出する鍔部3aが設けられている。一方、主体金具29の先端寄りの内周面には内側に縮径する段部29eが設けられ、段部29eの上にパッキン27、筒状のセラミック部材23が順に配置されている。そして、検出素子3を主体金具29の内側に挿通し、鍔部3aをセラミック部材23に当てることにより、間接的に段部29eに後端側から検出素子3の鍔部3aが当接し、検出素子3が主体金具29内に組み付けられている。
また、検出素子3の凹状の内部空間には、検出素子3を加熱するために、棒状のヒータ17が挿入されている。
【0015】
さらに、鍔部3aの後端側における検出素子3と主体金具29との径方向の隙間に、筒状のシール材(タルク粉末)25が充填され、さらにシール材25の後端側に筒状の絶縁部材(セラミックスリーブ)21が配置されている。
【0016】
この主体金具29の後端側には、検出素子3及びヒータ17の後端側の周囲を覆う様に、例えばステンレスからなる耐熱金属製の外筒33が、Oリング35を介して加締めによって取り付けられている。
なお、主体金具29の後端側にOリング35と外筒33の先端のフランジ部33f(図3参照)とを配し、主体金具29の後端部を内側に屈曲して加締めることにより、絶縁部材21が先端側に押し付けられてシール材25を押し潰し、絶縁部材21,シール材25が加締め固定されるとともに、検出素子3と主体金具29の隙間がシールされる。
【0017】
更に、外筒33の後端側には、後述するフィルタ37を介して、例えばステンレスからなる耐熱金属製の保護外筒39が外嵌されている。
外筒33と保護外筒39は、外筒33の軸線O方向の中央付近で加締められて互いに固定され、加締め部Aが設けられている。加締め部Aにおいては、保護外筒39だけでなく、外筒33も径方向内側に凹んで変形するまで強く加締められている。
また、外筒33の加締め部Aよりも後端側に縮径された後端部33e(図3参照)が形成され、この縮径された後端部33eと保護外筒39との間の内部空間にフィルタ37が介装されている。
なお、保護外筒39は外筒33よりも後端側へ突出して開口している。
【0018】
外筒33の後端部の開口を覆うようにして、絶縁性の筒状のセパレータ45が配置されている。さらに、セパレータ45の2個の挿通孔43には、それぞれ端子金具9,10の基部が挿通されている。この各基部にそれぞれリード線13,14が加締め接続されている。
なお、セパレータ45は、外筒33よりも小径の先端部と、外筒33よりも大径の後端部とが段部45sで繋がった形状をなし、セパレータの先端部を外筒33の後端内側に挿入し、外筒33の後端縁に段部45sを当接させることで、セパレータ45が外筒33内に位置決めされている。
【0019】
さらに、保護外筒39の後端部の内側には、セパレータ45の後端部に接するようにして、筒状のグロメット(弾性部材)47が配置され、保護外筒39で加締め固定されて加締め部Dが形成されている。グロメット47としては、例えばシリコンゴムやフッ素ゴム等からなる弾性部材を用いることができる。
このグロメット47には4個の挿通孔が貫通しており、リード線13,14がセパレータ45の挿通孔43及びグロメット47の挿通孔から外部に引き出されている。又、セパレータ45にはさらに2個の挿通孔(図示せず)が貫通しており、ヒータ17の電極18に接続された2本のリード線15,16が、セパレータ45及びグロメット47のこれらの挿通孔を通って外部に引き出されている。
【0020】
端子金具9は、筒形状を有し、検出素子3の内側に内嵌され、検出素子3の内側に設けられた内側電極5と電気的に接続される。又、端子金具10は、筒形状を有し、検出素子3の外側に外嵌めされ、検出素子3の外側に設けられた外側電極7と電気的に接続される。
【0021】
一方、主体金具29の先端には、金属製(ステンレスなど)で開口部31aを有する筒状の保護キャップ31が固定され、主体金具29から突出する検出素子3の先端が保護キャップ31で覆われている。この保護キャップ31は、排気ガスを保護キャップ31の内部に取り込むための複数の孔部を有している。
【0022】
なお、主体金具29の中央付近には、径方向外側に突出し六角レンチ等を係合するための多角形の鍔部29cが設けられ、鍔部29cより先端側の主体金具29外側面には雄ねじ部29dが形成されている。又、鍔部29cの先端面と雄ねじ部29dの後端との間の段部には、排気管に取付けた際のガス抜けを防止するガスケット28が嵌挿されている。
そして、主体金具29の雄ねじ部29dを排気管等のネジ孔に取付けることで、検出素子3の先端を排気管内に露出させて被検出ガス(排気ガス)を検知している。
【0023】
次に、図2を参照し、外筒33と保護外筒39の間にフィルタ37を配置する態様について説明する。
外筒33の後端部の側面には、周方向に等間隔で4個(図2では1個のみ図示)の第1通気孔33hが開口し、外筒33内部へ外気を導入可能になっている。そして、外筒33の径方向外側には、第1通気孔33hを塞ぐように環状の通気性のフィルタ37が被せられ、さらにフィルタ37を径方向外側から保護外筒39が囲んでいる。保護外筒39の側面には周方向に等間隔で6個(図2では1個のみ図示)の第2通気孔39hが開口し、第2通気孔39hからフィルタ37の外面の一部が露出することで第2通気孔39hがフィルタ37に連通し、外気がフィルタ37を介して外筒33内部に導入されるようになっている。
【0024】
また、保護外筒39は、後端部がグロメット47の後端面上に設けられるように径方向内側に折り曲げられてなり(図5参照)、後端部の中央に形成された開口にグロメット47の挿通孔が臨み、リード線13〜16が外部に引き出される。
フィルタ37は、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂等の樹脂の多孔質構造体からなり、撥水性を有しているため外部の水を通さずに検出素子3の内部空間に基準ガス(大気)を導入するようになっている。フィルタ37の厚さとしては、加締め前で、0.5〜2.0mm、加締め後で、0.2〜1.0mmの範囲のものを採用すると、十分な耐水性及び耐衝撃性を有するので好適である。また、フィルタ37の軸線O方向の長さとしては、8〜20mmの範囲のものを採用すると、十分な耐水性及び耐衝撃性を有するので好適である。
【0025】
外筒33と保護外筒39は、第1通気孔33h及び第2通気孔39hよりそれぞれ先後の2箇所で、フィルタ37を介して加締められ、先端側加締め部B及び後端側加締め部Cが設けられている。
先端側加締め部B及び後端側加締め部Cにおいては、保護外筒39が径方向内側に凹むように変形しているが、外筒33は径方向に変形しない程度に加締められている。保護外筒39だけでなく、外筒33も径方向内側に凹んで変形するまで強く加締められてもよい。
但し、先端側加締め部B及び後端側加締め部Cは、第1通気孔33h及び第2通気孔39hの孔形状が変形しないように加締められることが好ましい。これにより、第1通気孔33h及び第2通気孔39hにて正確な通気量を確保することができる。
加締めとしては、六角加締め、八角加締め、丸加締め等を採用できる。
また、外筒33及び保護外筒39の厚みは、0.2〜0.8mmであるとよい。
【0026】
次に、図3図4を参照し、本発明の特徴部分である外筒33及び保護外筒39について説明する。
図3に示す外筒33の第1通気孔33hは、直径2.2mmで後端部33eの部位に4個形成され、図4に示す保護外筒39の第2通気孔39hは、直径1.8mmで6個形成されている。
このように、第2通気孔39hの直径が第1通気孔33hの直径より小さい。これにより、第2通気孔39hからフィルタが外部に露出しても、外部の異物がフィルタ37に直接接触することを抑制できる。又、第2通気孔39hの個数が第1通気孔33hの個数より多いので、第1通気孔33hより小径の第2通気孔が通気抵抗となってフィルタ37の通気性が低下することを抑制できる。
なお、第2通気孔39h及び第1通気孔33hの直径は、円換算径とする。第2通気孔39hの直径が各孔で異なる場合、各孔の平均値を第2通気孔39hの直径とみなす。又、第1通気孔33hの直径が各孔で異なる場合、直径の平均値を第1通気孔33hの直径とみなす。
【0027】
第2通気孔39hの総面積が第1通気孔33hの総面積の70〜130%であると、第2通気孔39hと第1通気孔33hの通気抵抗が近い値となるので、第2通気孔が通気抵抗となってフィルタ37の通気性が低下することをより一層抑制できる。なお、第2通気孔39hの総面積は、第2通気孔39hの直径×個数である。第1通気孔33hの総面積も同様である。
又、第2通気孔39hの直径が2.0mm以下であると、外部の異物がフィルタ37に直接接触することをより一層抑制できる。フィルタ37の破損抑制の観点から、第2通気孔39hの直径は小さければ小さいほど好ましい。
【0028】
図2に示すように、軸線O方向において第2通気孔39hの存在する領域および第1通気孔33hの存在する領域は重なり、かつ、第2通気孔39hおよび第1通気孔33hは周方向に重ならないことが好ましい。
第2通気孔39hと第1通気孔33hとが軸線O方向に少なくとも一部重なることで、軸線O方向のガスセンサ1の高さを低減することができ、ガスセンサの小型化を図ることができる。又、保護外筒39と外筒33の間でフィルタ37を加締め固定する場合、軸線O方向に加締め部を設けるためのスペースが必要になるが、第2通気孔39hと第1通気孔33hとが軸線O方向に重なることで、このスペースを確実に設け、フィルタの加締め固定を確実に行える。
一方、第2通気孔39hと第1通気孔33hとが周方向に一部でも重なると、重なり部分ではフィルタ37が保護外筒39と外筒33のいずれにも保持されないので、外部の異物がフィルタ37に接触したときにフィルタ37を貫通してフィルタ37が破損するおそれがある。そこで、第2通気孔39hと第1通気孔33hとが周方向に重ならないことで、フィルタ37の破損を有効に抑制できる。
【0029】
なお、図1図5に示すように、本実施形態では、保護外筒39の先端縁39fが径方向外側に拡がり、外筒33の外面から離間している。
このため、ガスセンサ1の先端側が被検出ガスに曝されて加熱され、外筒33から後端側へ熱が伝わっても、外筒39の外面から離間した保護外筒39の先端縁39fがこの熱を放熱する放熱部として機能する。これにより、外筒33と保護外筒39の間に配置されたフィルタ37が受熱してクリープし(収縮し)、通気性やシール性が低下することを抑制できる。
なお、保護外筒39を外筒33に被せて加締め部Aを形成後、先端縁39fを拡げる加工を行う。
【0030】
次に、本実施形態の酸素センサ1の製造方法の一例について説明する。まず、外筒33の後端側に、筒状のフィルタ37を外嵌するとともに、端子金具9、10が装着されたセパレータ45を配置する。この際、外筒33の後端にセパレータ45の段部45sを当接させる。次に、外筒33の外側に保護外筒39を被せて両者を加締め、加締め部Aを形成して外筒33と保護外筒39とを固定する。さらに、保護外筒39の内側に、セパレータ45の後端に接するようにグロメット47を配置して加締め、加締め部Dを形成する。次いで、外筒33と保護外筒39とをフィルタ37を介して加締め、先端側加締め部B及び後端側加締め部Cを形成する。
【0031】
その後は、公知の方法にて酸素センサ1を作成する。具体的には、検出素子3、主体金具29、保護キャップ31等にて形成された下部組立体に上述の保護外筒39が固定された外筒33を組み付け、主体金具29の後端側にOリング35と外筒33とを配し、主体金具29の後端部を内側に屈曲して加締め固定する。
【0032】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0033】
検出素子としては、例えば酸素濃度によって起電力が変化する素子や、抵抗値が変化する素子を採用できる。検出素子の固体電解質体としては、例えばジルコニアやイットリア等の酸素イオン伝導性固体電解質を採用できる。さらに、検出素子としては、上記した酸素センサ素子(λセンサ素子)の他、全領域空燃比センサ素子、NOセンサ素子、アンモニアセンサ素子を用いることができ、筒型の素子だけでなく、板型の素子であってもよい。
【0034】
又、第1通気孔33hと第2通気孔39hの形成位置及び個数は上記に限られない。さらに、本実施形態では、フィルタ37は環状形状を有していたが、これに限られず、第1通気孔33hと第2通気孔39hとを連通する形態であれば、周方向に部分的に設けられていてもよい。
【0035】
又、上記実施形態では、グロメット(弾性部材)が保護外筒の後端側に内挿されて保護外筒の後端側の開口を封止したが、外筒が保護外筒よりも後端側に延びている場合、グロメットが外筒の後端側に内挿されて外筒(および保護外筒)を封止してもよい。
【0036】
又、上記実施形態では、本発明を、検出素子に基準酸素濃度の外気を導入するタイプのガスセンサに適用したが、これに限らず、例えばガスセンサ内部の結露防止のためにフィルタから通気するタイプのガスセンサに適用してもよい。ガスセンサ内部が結露すると、セパレータの挿通孔に装着され、互いに隣接する端子金具の基部の間に水が付着して両端子が導通する不具合が生じることがある。
【符号の説明】
【0037】
1 ガスセンサ
3 検出素子
29 主体金具
33 外筒
33h 第1通気孔
33R 第1通気孔の存在する領域
37 フィルタ
39 保護外筒
39f 保護外筒の先端縁
39h 第2通気孔
39R 第2通気孔の存在する領域
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5