(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2の回転軸を有し、周面が前記固定ローラの周面及び前記自在ローラの周面に接するように、前記第2の回転軸が前記第1の回転軸と平行に配置されたアイドルローラを備えたことを特徴とする請求項1記載の媒体搬送装置。
前記第1の回転検出装置は、前記第1の回転軸と一体的に回転する第1のエンコーダと、該第1のエンコーダに形成された被検出部を検出する第1のセンサとを備えたことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の媒体搬送装置。
前記第2の回転検出装置は、前記自在ローラと一体的に回転する第2のエンコーダと、該第2のエンコーダに形成された被検出部を検出する第2のセンサとを備えたことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の媒体搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明に基づく実施の形態1の画像形成装置としてのプリンタ1の要部構成を概略的に示す要部構成図である。
【0010】
同図に示すように、プリンタ1には、中間転写体としての中間転写ベルト54の移動経路が形成されている。中間転写ベルト54は、高抵抗の半導電性プラスチックフィルムで、継ぎ目なしのエンドレス状に形成されており、駆動ローラ51、ベルト従動ローラ52、バックアップローラ53間に架けられ、駆動ローラ51によって回転駆動されて矢印A方向に移動する。尚、この駆動ローラ51は、後述するベルトモータ114(
図4)によって回転駆動される。
【0011】
ベルト従動ローラ52と駆動ローラ51間には、中間転写ベルト54の移動方向の上流側から順に、イエロー(Y)のトナー画像を形成するイメージドラムユニット(以下、IDユニットと略称する)11、マゼンタ(M)のトナー画像を形成するIDユニット12、シアン(C)のトナー画像を形成するIDユニット13、及びブラック(K)のトナー画像を形成するIDユニット14が、中間転写ベルト54に沿って一列に、着脱可能に配置され、これらの各感光体ドラム11a,12a,13a,14a上には、それぞれ対応する色のトナー画像が形成される。
【0012】
尚、
図1中のX、Y、Zの各軸は、ベルト従動ローラ52と駆動ローラ51間での中間転写ベルト54の移動方向(矢印A方向)にX軸をとり、後述する感光体ドラム11a〜14aの回転軸方向にY軸をとり、これら両軸と直交する方向にZ軸をとっている。またここでは、Z軸が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0013】
各IDユニットは、同一の構成を有しているため、ここではブラック(K)のIDユニット14を例にして、その内部構成について説明する。IDユニット14には、像担持体としての感光体ドラム14aが矢印方向に回転可能に配置され、この感光体ドラム14aの周囲には、その回転方向上流側から順に、感光体ドラム14aの表面に一定の圧力で接触して電荷を供給し、一様に帯電させる帯電ローラ14b、帯電された感光体ドラム14aの表面に、例えばLED等の光源による光を選択的に照射して静電潜像を形成する露光ヘッド24が配設される。尚、この露光ヘッド21〜24は、ここではそれぞれ対応するIDユニット11〜14から着脱可能に構成され、IDユニット11〜14及び露光ヘッド21〜24は、現像剤像形成部に相当する。
【0014】
更に、感光体ドラム14aの表面の静電潜像が形成された部分に所定色(ここではブラック)のトナーを付着させて現像し、トナー画像を発生させる現像ローラ14c、及び感光体ドラム14a上のトナー画像を中間転写ベルト54に転写した際に残留した転写残トナーを除去するクリーニングブレード14eが配設されている。このためクリーニングブレード14eは弾性体で形成され、そのエッジ部が感光体ドラム14aの表面に一定の圧力で接触するように配置されている。
【0015】
現像ローラ14cには、現像ローラ14cにトナーを供給すると共に摩擦帯電させる供給ローラ14dが接触した状態で配置され、これらの上方には供給ローラ14dへ供給するトナーを貯蔵するトナーカートリッジ14fが配置されている。このトナーカートリッジ14fは、ブラック(K)のトナーを貯蔵して、IDユニット14本体に着脱可能に取り付けられる。尚、これら各装置に用いられている回転体は、後述するIDモータ115(
図4)からギアなどを経由して動力が伝達され回転する。
【0016】
IDユニット11〜14の各感光体ドラム11a〜14aには、それぞれ中間転写ベルト54を介して1次転写部材としての1次転写ローラ31〜34が対向して配置されている。各1次転写ローラ31〜34は、挟持する中間転写ベルト54を矢印A方向に移動しながら、感光体ドラム11a〜14aが中間転写ベルト54に接する各1次転写位置において、各感光体ドラム11a〜14aの表面に形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト54に順次重ねて1次転写する。この1次転写の際には、後述するように、転写バイアス発生部107(
図4)によって、各1次転写ローラ31〜34に所定の転写電圧が印加される。
【0017】
クリーニングブレード55は、ベルト従動ローラ52に対向する位置で中間転写ベルト54に当接して配置され、中間転写ベルト54の表面に付着するトナー等の付着物を掻き落とす。ここで掻き落とされた付着物は、クリーナ容器56に落下し、収容される。
【0018】
この中間転写ベルト54は、上述したように現像剤像形成部により形成された各色のトナー像が順次重ねて1次転写されたトナー像(カラー画像)を2次転写部63まで搬送する。現像剤像転写部としての2次転写部63では、中間転写ベルト54に1次転写されたトナー像を、所定の電圧が印加された2次転写ローラ61により、後述するレジストローラ対75から搬出される記録用紙2に2次転写する。
【0019】
記録媒体収容カセット71は、プリンタ1の下部に着脱可能に取り付けられ、記録媒体としての記録用紙2を積載する。記録媒体収容カセット71に積載された記録用紙2は、所定のタイミングで、図示しない弁別手段とホッピングローラ72により1枚ずつ取り出され、搬送ローラ対73,74、レジストローラ対75により中間転写ベルト54と2次転写ローラ61のニップ部である2次転写部63に搬送される。この間レジストローラ対75によって斜行が矯正される。
【0020】
後述するように、ホッピングローラ72はホッピングモータ111(
図4)によって回転駆動され、レジストローラ対75はレジストモータ112(
図4)によって回転駆動され、搬送ローラ対73,74及び76は搬送モータ113(
図4)によって回転駆動される。尚、
図1では、記録用紙2の搬送路を点線で示している。ホッピングローラ72、搬送ローラ対73,74,76、及びレジストローラ対75が媒体搬送部に相当する。
【0021】
2次転写部63では、2次転写ローラ61により、中間転写ベルト54に転写されているトナー像を、ニップ部に搬送されてきた記録用紙2に2次(再)転写し、転写した記録用紙2を搬送路に沿って矢印C方向に排出する。この2次転写の際には、後述するように、転写バイアス発生部107(
図4)によって、2次転写ローラ61に所定の転写電圧が印加される。
【0022】
定着ユニット68は、内部に熱源を備えたヒートローラ66と、図示しない付勢手段によりヒートローラ66に付勢される加圧ローラ67を有し、記録用紙2がヒートローラ66と加圧ローラ67間を通過する間に、記録用紙2上に転写されたトナー画像を、熱と圧力により定着する。搬送ローラ対76は、トナーが定着された記録用紙2をプリンタ1の外部に形成されたスタッカ部69へ排出する。
【0023】
図2は、レジストローラ対75の要部構成を示す外観斜視図である。同図に示すように、レジストローラ対75は、下側に配置されて、後述するレジストモータ112(
図4)によって回転駆動されるドライブローラ81及びドライブローラ81と同軸で、その回転軸81aに対して回転自在に配置された連れ回りローラ89、上側に配置されて、連れ回りするアイドルローラ(自力の駆動手段を持たないローラ)82とを有する。
【0024】
ドライブローラ81は、第1の回転軸としての回転軸81a、固定ローラとしての6個の分割ローラ83〜88、第1エンコーダ80a、を備える。6個の分割ローラ83〜88は、回転軸81aを同軸として、両端側から3個ずつ、中央部に連れ回りローラ89を配置するだけのスペースをあけて略等間隔に固定配置され、一端側に固定配置された分割ローラ83の端部側には第1エンコーダ80aが、各分割ローラ83〜88と同軸に固定配置されている。
【0025】
ドライブローラ81の中央部には、自在ローラとしての連れ回りローラ89が、6個の分割ローラ83〜88と同軸に配置されているが、この連れ回りローラ89は、回転軸81aに対して軸方向移動は規制されつつ、回転自在に配置されている。またこの連れ回りローラ89には、第2エンコーダ89aが、同軸で固定配置されている。尚、分割ローラ83〜88及び連れ回りローラ89の各外径は同一に形成されている。
【0026】
第1センサ91は、第1エンコーダ80aに、放射状に等角度間隔で形成された複数のスリットを個別に検出できる位置に配置され、例えばスリットを透過する光を検出することによって得られる、第1エンコーダ80aの第1の回転情報を、後述するプリンタ制御部101(
図4)に送信する。尚、第1エンコーダ80aと第1センサ91とが第1の回転検出装置に相当する。
【0027】
また第2センサ92は、第2エンコーダ89aに、放射状に等角度間隔で形成された複数のスリットを個別に検出できる位置に配置され、例えばスリットを透過する光を検出することによって得られる、第2エンコーダ89aの第2の回転情報を、後述するプリンタ制御部101(
図4)に送信する。尚、第2エンコーダ89aと第2センサ92とが第2の回転検出装置に相当する。
【0028】
アイドルローラ82は、その第2の回転軸としての回転軸82aがドライブローラ81の回転軸81aと平行に、且つその周面がドライブローラ81の各ローラの周面に当接するように配置されている。従ってアイドルローラ82は、記録用紙2を挟んでいない場合はドライブローラ81の回転動作により連れ回って回転し、記録用紙2を挟んでいる場合は、記録用紙2の搬送移動に連れて回転する。
【0029】
更に連れ回りローラ89は、記録用紙2を挟んでいない場合はアイドルローラ82の回転動作により連れ回って回転し、記録用紙2を挟んでいる場合は、記録用紙2の搬送移動に連れて回転する。従って、連れ回りローラ89は、ドライブローラ81が回転する用紙の搬送駆動状態にあっても、何らかの理由、例えば滑り等で記録用紙2が移動していない、或はその移動速度が分割ローラ83〜88の回転に見合わない場合には、回転を停止し、或は分割ローラ83〜88の回転速度に対して低下した状態となる。即ち、連れ回りローラ89は、記録用紙2の実際の移動速度に準じた回転速度で回転する。
【0030】
図3は、
図1において、レジストローラ対75と2次転写部63の間を拡大した部分拡大図である。同図に示すように、レジストローラ対75の、媒体搬送方向(矢印C方向)の下流側には、記録用紙センサ77が配置されている。記録用紙センサ77は、通過する用紙に接して変位するレバーとレバーの変位を検出する変位センサの組み合わせとしてもよいし、
図3に示すように、発光側と受光側を用紙搬送ルート(点線で示す)の上下にそれぞれ配置した透過型センサでも良く、搬送される記録用紙2の先端及び後端検出が可能な配置及び構成とする。
【0031】
2次転写部63は、レジストローラ対75によって搬送される記録用紙2を受け入れ、記録用紙2が、中間転写ベルト54と2次転写ローラ61との間を通過する過程で、中間転写ベルト54に1次転写されたトナー像を、記録用紙2の記録面に2次転写する。
【0032】
図4は、プリンタ1の主な制御系の回路構成を示すブロック図である。
【0033】
同図において、ホストインターフェース部102は、コマンド/画像処理部103に対してデータを送受信し、コマンド/画像処理部103は、露光ヘッドインターフェース部104に画像データを出力する。露光ヘッドインターフェース部104は、プリンタ制御部101によってヘッド駆動パルス等を制御され、各色用の露光ヘッド21〜24を発光させる。
【0034】
制御部としてのプリンタ制御部101は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成され、帯電バイアス発生部105、現像バイアス発生部106、及び転写バイアス発生部107に電圧設定信号を送る。帯電バイアス発生部105は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)用のIDユニット11〜14の各帯電ローラ11b〜14b(
図1に14bのみ示す)に個別に帯電バイアス電圧を印加し、現像バイアス発生部106は、同じく各色用のIDユニット11〜14の各現像ローラ11c〜14c等(
図1に14cのみ示す)に個別にバイアス電圧を印加する。
【0035】
転写バイアス発生部107は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)用の各IDユニット11〜14の感光体ドラム11a〜14aに対向して配置された各色用の1次転写ローラ31〜34、及び2次転写ローラ61に対して個別にバイアス電圧を印加する。
【0036】
プリンタ制御部101は、ホッピングローラ72を駆動するホッピングモータ111、レジストローラ対75を駆動する駆動モータとしてのレジストモータ112、搬送ローラ対73,74,76を駆動する搬送モータ113、駆動ローラ51を駆動するベルトモータ114、IDユニット11〜14の各感光体ドラム11a〜14a等の各回転体をIDユニット毎に個別に駆動する4つのドラムモータ(Y、M、C、K)115、定着ユニット68のヒートローラ66及び加圧ローラ67を駆動する定着ユニットモータ116を所定のタイミングで駆動する。定着ユニット68のヒートローラ66に備えられる定着ヒータ109は、ヒートローラ66の温度を検出するサーミスタ108の検出値に応じてプリンタ制御部101によって温度制御される。
【0037】
第1センサ91は、第1エンコーダ80aのスリットを検出することで、ドライブローラ81の第1の回転情報、即ちレジストローラ対75の分割ローラ83〜88(
図2)がレジストモータ112から回転駆動力を受けて回転する際の駆動回転情報をプリンタ制御部101に送信し、第2センサ92は、第2エンコーダ89aのスリットを検出することで、連れ回りローラ89(
図2)の第2の回転情報、即ち連れ回りローラ89が記録用紙2の実際の移動量に伴って回転する、実移動回転情報をプリンタ制御部101に送信する。記録用紙センサ77は、レジストローラ対75から搬出される記録用紙2を検出し、その用紙検出情報をプリンタ制御部101に送信する。
【0038】
以上の構成において、先ずプリンタ1の印刷動作の概要について主に
図1、
図4を参照しながら説明する。
【0039】
プリンタ1は、外部機器からホストインターフェース部102を介してPDL(Page Description Language)等で記述された印刷データを入力する。入力されたデータは、コマンド/画像処理部103によってビットマップデータに変換される。プリンタ1は、定着ユニット68(
図1)の定着ヒータ109を、サーミスタ108の温度検出値に応じて温度制御することにより所定の温度にした後、印字動作を開始する。
【0040】
記録媒体収容カセット71にセットされた記録用紙2をホッピングローラ72及び搬送ローラ対73,74で給紙し、レジストローラ対75によって斜行を矯正した後、電子写真プロセスに同期したタイミングで、2次転写部63に搬送する。
【0041】
一方4つのIDユニット11〜14は、電子写真プロセスにより内部の感光体ドラム11a〜14aにトナー像を形成する。この電子写真プロセスにおいて、4つの各感光体ドラム11a〜14aは、それぞれに対応して配置されてビットマップデータに応じて点灯する露光ヘッド21〜24(
図1)によって個別の静電潜像が形成される。この静電潜像が、それぞれ対応して配置された現像ローラ11c〜14cによって現像されることにより、4つの各感光体ドラム11a〜14aには、それぞれ対応する色のトナー像が形成される。
【0042】
4つの各感光体ドラム11a〜14a上に形成されたトナー像は、それぞれの感光体ドラムに対向して配置された1次転写ローラ31〜34に印加された各転写バイアス電圧によって、中間転写ベルト54上に順次重ねて1次転写される。中間転写ベルト54上に1次転写されたトナー像(カラー画像)は、所定の電圧が印加された2次転写ローラ61によって、電子写真プロセスに同期して2次転写部63に搬送される記録用紙2の記録面上に2次転写される。このためプリンタ制御部101は、図示しない用紙検出器からの用紙検出等に基づいて、現像剤像形成部による電子写真プロセス、及び記録用紙2の搬送タイミング等を調整する。
【0043】
記録面にトナー像が2次転写された記録用紙2は、定着ユニット68によって定着された後、搬送ローラ対76によって更に搬送され、装置外のスタッカ部69に排出される。
【0044】
次に、プリンタ制御部101が行う、レジストローラ対75による記録用紙2の搬送時に生じる搬送すべりの検出と、搬送すべりの補正処理について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。説明の都合上、レジストローラ対75に記録用紙2の先端部が到達した状態から説明する。
【0045】
レジストローラ対75によって搬送される記録用紙2の先端部を、記録用紙センサ77が検出したか否かを監視し(ステップS101)、検出した場合(ステップS101、Yes)には、サンプリング用タイマをオンする(ステップS102)。サンプリング用タイマは、第1センサ91と第2センサ92の回転情報を比較する一定時間間隔のタイミング(以下、サンプリングタイミングと称す)を生成するものである。また後述するように、このサンプリングタイミングでレジストモータ112の速度調整も行う。
【0046】
尚、ここでの第1センサ91の第1の回転情報(駆動回転情報)は、第1エンコーダ80aに、放射状に等角度間隔で形成された複数のスリットを検出することで発生する、ドライブローラ81の回転速度に比例して周期が短くなるパルスであり、第2センサ92の第2回転情報(実移動回転情報)は、第2エンコーダ89aに、放射状に等角度間隔で形成された複数のスリットを検出することで発生する、連れ回りローラ89の回転速度に比例して周期が短くなるパルスである。また、第1エンコーダ80aと第2エンコーダ89aの各スリットは、同一の角度間隔で形成され同数である。
【0047】
次に第1の回転情報のパルスをカウントする第1カウンタと第2の回転情報のパルスをカウントする第2カウンタの、各カウンタ値を0に初期化し(ステップS103)、更に所定メモリに格納される各カウンタ値の差の、前回値(Cn−1)、及び今回値(Cn)の各変数も初期化する(ステップ104)。
【0048】
その後、第1カウンタによる第1の回転情報のパルス波形の立ち上がり及び立ち下がりエッジのカウント、及び第2カウンタによる第2の回転情報のパルス波形の立ち上がり及び立ち下がりエッジのカウントを開始する(ステップS105)。以後、第1、第2の回転情報の各パルス波形の立ち上がり及び立ち下がりエッジの累積カウント数を、単にカウント数と称す場合がある。
【0049】
次にサンプリングタイミングだけ(所定の一定時間だけ)時間が経過したら(ステップS106、Yes)、第1カウンタと第2カウンタの各累積カウンタ値の差の今回値(Cn)
(Cn)=「第1カウンタの累積カウント値」
−「第2カウンタの累積カウント値」 …(1)
を算出し、所定のメモリに変数(Cn)として格納する(ステップS7)。
【0050】
従って、今回値(Cn)は、計測を始めてから今までに発生したすべり量に比例した数値となる。
【0051】
今回値(Cn)は、前回値(Cn−1)(但し、初回はゼロに設定されている)と共に、次のステップS108におけるレジストモータ速度調整アルゴリズムに渡され、レジストモータ112の速度を調整するために使用される。ここで、ステップS108のレジストモータ速度調整アルゴリズムの内容について説明する。
【0052】
図6は、ステップS108におけるレジストモータ112の速度調整の過程を示すフローチャートである。この速度調整のため、同図に示すように、ステップS201〜ステップS203による各判断によって、第1〜第4までの4つの速度調整が択一的に選択されて適用される。
【0053】
先ず、上式(1)による今回値(Cn)が次式
(Cn)≦1 …(2)
を充たすか否かを判定し(ステップS201)、今回値(Cn)が1以下であった場合(ステップS201、Yes)、第1の速度調整を実行する(ステップS204)。
【0054】
即ちこの場合、ドライブローラ81側の第1エンコーダ80aの「第1の累積カウント値」と、連れ回りローラ89側の第2エンコーダ89aの「第2の累積カウント値」の差分が1カウント(エッジ)以内ということになり、制御理論値通りに記録用紙2を搬送できている(すべりが発生していない)と判断できる。そのためこの第1の速度調整では、レジストモータ速度を、ドライブローラ81の周速度が記録用紙2の所望の搬送速度となる基準印刷速度に設定し媒体搬送を継続する。
【0055】
尚、基準印刷速度ですべりなく記録用紙2が搬送されている場合の、記録用紙2の搬送位置を、以後、記録用紙2の目標搬送位置と称す場合がある。
【0056】
次に、今回値(Cn)が1より大きかった場合(ステップS201、No)、次の不等式
今回値(Cn)−前回値(Cn−1)≧1 …(3)
を充たすか否かを判定し(ステップS202)、上記不等式(3)を満たす場合(ステップS202、Yes)、第2の速度調整を実行する(ステップS205)。
【0057】
即ちこの場合、前回測定時より今回測定時の方が、すべり量が増加していることになる。そのため記録用紙2の搬送遅れを取り戻すため、この第2の速度調整では、レジストモータ速度を、「今回値(Cn)−前回値(Cn−1)」の差分の段階分の速度アップを実行(設定)する。ここで、レジストモータ112の速度設定は、予め用意した速度テーブルに基づいて行われるものとし、1カウント差を解消するのに適した速度変化を1ステップとして、目標印刷速度の上下に数ステップ分の速度設定値が、予め準備されているものである。
【0058】
次に、上記不等式(3)を充たさなかった場合(ステップS202、No)、
今回値(Cn)−前回値(Cn−1)=0 …(4)
を充たすか否かを判定し(ステップS203)、上式(4)を満たす場合(ステップS203、Yes)、第3の速度調整を実行する(ステップS206)。
【0059】
即ちこの場合、すべり量の変化はないが、すべりによる記録用紙2の搬送遅れ(目標搬送位置に対する)が生じたままであり((2)式を充たしていないため)、この搬送遅れを取り戻すため、この第3の速度調整では、レジストモータ速度を「1ステップ速度アップした速度」に設定する。これにより、すべりが生じたままでも、記録用紙2の搬送遅れ分をレジストモータの速度アップにより解消する。
【0060】
次に、上記不等式(4)を充たさなかった場合(ステップS203、No)、
今回値(Cn)−前回値(Cn−1)<0 …(5)
を充たす状態にあると判断でき、第4の速度調整を実行する(ステップS207)。
【0061】
即ちこの場合、先の速度調整によるレジストモータ速度の速度アップや、何らかの要因によるすべり量の減少により、記録用紙2が、目標搬送位置に近づいていることを示している。従って、レジストモータ速度を徐々に戻す必要があるため、この第4の速度調整では、レジストモータ速度を、「前回値(Cn−1)−今回値(Cn)−1」の差分の段階分の速度ダウンを実行(設定)する。
【0062】
このとき、「前回値(Cn−1)−今回値(Cn)=1」の場合は、速度ダウンがなく現状速度のままとなるが、これは、現在の搬送状況として、記録用紙2が遅れ分を解消しながら目標搬送位置に近付いてはいるが、まだカウンタ値1つ分の搬送遅れがあるため、現在の速い速度のままでさらに近付けたいからである。
【0063】
以上のように、上記したレジストモータ速度調整アルゴリズムでは、検出した連れ回りローラ89の遅れ分(記録用紙2がすべって遅れた分に相当)に基づいてレジストモータ速度を調整(速度UP)し、記録用紙2の搬送位置を目標搬送位置に接近或は一致させるようにする。
【0064】
以上のように、
図5に示すステップS108において、今回のレジストモータ112の速度調整が終了すると、今回値(Cn)を前回値(Cn−1)として保存する(ステップS109)。
【0065】
次に、記録用紙2の先端部が、後述する“レジストモータ速度調整限界点”に到達したか否かを監視し、到達するまでの間、ステップS106〜ステップS109までのレジストモータ速度の調整処理を継続する(ステップS110、No)。記録用紙2の先端部が、“レジストモータ速度調整限界点”に到達すると(ステップS110、Yes)、レジストモータ速度を前記した基準印刷速度に戻し、一連の処理を終了する。
【0066】
図7は、レジストモータ速度調整限界点の説明に供する図である。同図は、記録用紙2が、レジストローラ対75で搬送され、記録用紙センサ77で検出された後、レジストモータ速度が、上記した方法により、所定のサンプリングタイミングで調整された様子を示している。ここでは、同図に示すように、記録用紙2の搬送時のすべりにより、レジストモータ速度が、基準印刷速度より1ステップアップ、或は2ステップアップ調整されている。
【0067】
やがて、記録用紙2の先端が2次転写部63に至るが、この段階で、以後の転写処理を円滑に行うためレジストモータ速度を基準印刷速度に戻す必要がある。レジストモータ速度調整限界点は、このために必要となる、2次転写部63と記録用紙2の先端間の必要最小限の距離に相当し、現在のレジストモータ速度から基準印刷速度に戻すために必要となる減速距離分をファームウェアで計算し、レジストローラ対75からの距離に換算して求められるものである。
【0068】
尚、本実施の形態では、
図6に示すフローに従って、レジストモータ速度の調整を実施したが、これに限定されるものではなく、他の方法によりレジストモータ速度を調整してもよい。要は、記録用紙2の先端がレジストモータ速度調整限界点に至るまでの間に、検出したずれ量を補うようにレジストモータ速度を制御すればよい。
【0069】
図8は、本発明によるレジストローラ対75の構成、及びその駆動方法の特徴の説明に供する図である。
【0070】
図2で説明したように、ドライブローラ81と連れ回りローラ89とは、レジストモータ112からギア等の伝達機構を介して回転力が伝達される回転軸81aを同軸として、一方(分割ローラ83〜88)が固定配置され、他方(連れ回りローラ89)が回転自在に配置されている。
【0071】
従って、ドライブローラ81が記録用紙2に伝達する回転量(第1の回転情報)を伝達機構の誤差分を含まないで検出可能であり、同一軸上の連れ回りローラ89により記録用紙2の実際の移動量(第2の回転情報)を伝達機構の誤差分や記録用紙2の伸縮量を含まないで検出可能となる。従って、これらの第1の回転情報(駆動回転情報)と第2の回転情報(実移動回転情報)とを比較することで、ドライブローラ81の回転動作に対する記録用紙2の搬送状況(媒体のすべり)を正確に検出することができる。
【0072】
ここで、比較例について説明する。
図9は、比較例におけるレジストローラ対201と連れ回りローラ205の配置関係を示す概略構成図である。
【0073】
同図に示すようにこの比較例において、レジストローラ対201は、図示しない駆動手段によって駆動力が伝達されるドライブローラ203と、これに連れ回りするアイドルローラ204によって構成され、これらによって挟持する記録用紙2を矢印方向に搬送する。そして連れ回りローラ205は、レジストローラ対201とは別体で設けられ、ドライブローラ203と平行な回転軸205a(
図10)を有し、その周面が記録用紙2に接するように、記録用紙2の搬送方向におけるレジストローラ対201の上流側に離間して配置されている。
【0074】
図10は、連れ回りローラ205と、この連れ回りローラ205の回転を検出するためのエンコーダ205b及びセンサ206の配置関係を示す平面図である。
【0075】
同図に示すように、エンコーダ205bは、矢印方向に搬送される記録用紙2の搬送領域外まで延在する連れ回りローラ205の回転軸205aに、搬送領域外で固定配置され、センサ206はこのエンコーダ205bに形成された図示しないスリットを検出して回転情報をプリンタ制御部に出力すべく、エンコーダ205bを挟むように配置されている。
【0076】
図11は、連れ回りローラ205と、この連れ回りローラ205の回転を検出するためのエンコーダ205b及びセンサ206の別の配置関係例を示す概略構成図である。ここでは、連れ回りローラ205の回転を軸間に架けられたベルト210で別の回転軸に伝達し、伝達された回転軸上にエンコーダ205bを固定している。センサ206はこのエンコーダ205bに形成されたスリットを検出して回転情報をプリンタ制御部に出力すべく、エンコーダ205bを挟むように配置されている。
【0077】
図12は、比較例における、ドライブローラ203と連れ回りローラ205の構成、及びその駆動方法の特徴の説明に供する図である。
【0078】
記録用紙2を搬送するドライブローラ203を回転させるための駆動源となるレジストモータ212の制御理論値と、記録用紙2の実際の移動のみに同期して回転する連れ回りローラ205の回転情報とを比較し、現在の記録用紙の搬送状況(媒体のすべり)を確認している。この場合、レジストモータ212の制御理論周期に対して、連れ回りローラ205の回転検出周期に差異が発生すれば、記録用紙の搬送が遅れている、又はすべりが発生していると判断できる。
【0079】
しかしながらこの方法では、まずドライブローラ203側の伝達機構による誤差分によりレジストモータ212とドライブローラ203との間に回転誤差が発生する。ここでいう伝達機構による誤差分とは、ドライブローラ203の回転を記録用紙2に伝達する際に発生する誤差分であり、
(1)レジストモータ212とドライブローラ203間に配置されているギアのバックラッシュにより記録用紙2に伝達されない量、
(2)ドライブローラ203とこれに連れ回りするアイドルローラ204との間の押し付け力(ローラテンション)の強弱によって記録用紙にすべりが発生して伝達されない量、
(3)ドライブローラ203のローラ径の大小(製造ばらつき)で発生する理論値との誤差分
などが考えられ、これらの要因により、制御側で認識していない誤差分が存在する。
【0080】
更に、連れ回りローラ205側の伝達機構による誤差分によっても、連れ回りローラ205と回転検出機構(エンコーダ205b、センサ206)との誤差が発生する。ここでいう伝達機構による誤差分としても、上記(1)〜(3)と同様の、ギアのバックラッシュ、すべり発生、連れ回りローラ205のローラ径の製造ばらつき、及び記録用紙2自体の伸縮等が考えられる。
【0081】
この比較例における記録用紙(媒体)2のすべり検出は、モータ制御理論値(ファームウェアが認識しているモータの挙動)と、上述した誤差情報分を全て含むセンサ206の出力値との差分により算出しているため、この方法では、正確に媒体のすべりを検出できていないことになる。
【0082】
尚、本実施の形態では、先端書き出し位置のみの精度向上を求めたが、長尺媒体では、その全領域に対してレジストモータの速度調整を行うように構成してもよい。
更に、本実施の形態では、連れ回りローラを1つ配置した例を示したが、記録用紙の幅方向の左右端に一対の連れ回りローラを配置し、記録用紙のスキュー量の検出及びその補正を兼ねる様に構成してもよいなど、種々の態様を取り得るものである。
【0083】
以上のように、本実施の形態のプリンタ1によれば、記録用紙2の遅れ(すべり)分を正確に検出することができるため、モータ速度を調整することで記録用紙2の搬送遅れ分を正確に補正することが可能となり、このため高品位印刷が可能となる。