特許第6607891号(P6607891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社ファイバー浜松の特許一覧 ▶ 金山化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6607891-ラッシング具 図000002
  • 特許6607891-ラッシング具 図000003
  • 特許6607891-ラッシング具 図000004
  • 特許6607891-ラッシング具 図000005
  • 特許6607891-ラッシング具 図000006
  • 特許6607891-ラッシング具 図000007
  • 特許6607891-ラッシング具 図000008
  • 特許6607891-ラッシング具 図000009
  • 特許6607891-ラッシング具 図000010
  • 特許6607891-ラッシング具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607891
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ラッシング具
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/10 20060101AFI20191111BHJP
   B65D 63/14 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B65D63/10 B
   B65D63/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-165150(P2017-165150)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-43560(P2019-43560A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年10月24日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510183730
【氏名又は名称】有限会社ファイバー浜松
(73)【特許権者】
【識別番号】000163899
【氏名又は名称】金山化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】安立 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 誠
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−171236(JP,A)
【文献】 特表昭57−500020(JP,A)
【文献】 実開昭59−116388(JP,U)
【文献】 特開2015−067293(JP,A)
【文献】 特開2003−300551(JP,A)
【文献】 特表2015−532245(JP,A)
【文献】 特開2001−206433(JP,A)
【文献】 特開2001−2117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/00−63/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に延びる紐状に形成されて一方の端部にフックを有した第1荷締め体と、
前記第1荷締め体における他方の端部側を任意の位置で保持して前記一方の端部側の長さを調整する長さ調整具と、
前記長さ調整具における前記第1荷締め体とは反対側に向かって長尺に延びる紐状に形成されて先端部にフックを有した第2荷締め体とを備え、
前記第1荷締め体および前記第2荷締め体のうちの少なくとも一方は、
繊維を筒状に織るまたは編んで自由に断面形状が変形可能な中空のチューブ状に形成されるとともに前記筒状を構成する繊維以外の繊維による縫合部分を有さない周方向に一続きの環状に形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項2】
請求項1に記載したラッシング具において、
前記中空のチューブ状に形成された前記第1荷締め体および/または前記第2荷締め体は、
外周部に長手方向に沿って屈曲させた折り癖からなる屈曲部が形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したラッシング具において、
前記第1荷締め体は、帯状に延びるベルトで構成されており、
前記第2荷締め体は、前記中空のチューブ状に形成されていることを特徴とするラッシング具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記中空のチューブ状に形成された前記第1荷締め体および/または前記第2荷締め体は、
内部空間に何も配置していない空の空間であることを特徴とするラッシング具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記中空のチューブ状に形成された前記第1荷締め体および/または前記第2荷締め体は、
内部空間内で軸方向に直交する方向に自由に移動可能な状態で自由に屈曲可能な1つの線状または繊維状に形成された芯材を備えることを特徴とするラッシング具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したラッシング具において、
前記中空のチューブ状に形成された前記第1荷締め体および/または前記第2荷締め体は、
内部空間内で軸方向に直交する方向に自由に移動可能な状態で自由に屈曲可能な繊維状に形成された芯材を備え、
前記芯材は、
形状記憶合金、形状記憶ポリマーおよび形状記憶繊維のうちの少なくとも1つで構成されていることを特徴とするラッシング具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物としての物品を搬送または保管する際に物品を固定する荷締め用具としてのラッシング具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物としての物品を輸送または保管する際にこの物品を荷役用のパレットなどに固定するためにラッシング具が用いられている。例えば、下記特許文献1には、パレット上に載置された荷物を三方から縛る紐体が帯状のベルトで構成された荷締め用ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−67293公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された荷締め用ベルトにおいては、荷締め時における引張強度を向上させるためにベルトの厚さを厚くするとベルトの柔軟性が損なわれて荷物の凹凸形状に沿って変形し難くなり複雑な凹凸のある荷物を安定的に固定することが困難になるという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、荷物を安定的に固定することができる荷締め用具としてのラッシング具を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、長尺に延びる紐状に形成されて一方の端部にフックを有した第1荷締め体と、第1荷締め体における他方の端部側を任意の位置で保持して前記一方の端部側の長さを調整する長さ調整具と、長さ調整具における第1荷締め体とは反対側に向かって長尺に延びる紐状に形成されて先端部にフックを有した第2荷締め体とを備え、第1荷締め体および第2荷締め体のうちの少なくとも一方は、繊維を筒状に織るまたは編んで自由に断面形状が変形可能な中空のチューブ状に形成されるとともに前記筒状を構成する繊維以外の繊維による縫合部分を有さない周方向に一続きの環状に形成されていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ラッシング具は、荷物に掛けられる第1荷締め体および第2荷締め体のうちの少なくとも一方が自由に断面形状が変形可能な中空のチューブ状に形成されているため、これらの荷締め体を1つの帯状のベルトで構成した場合に比べてベルトの厚さを厚く形成した場合であって変形のための柔軟性の低下を抑えつつ引張強度を向上させることができ荷物を安定的に固定することができる。また、本発明に係るラッシング具は、第1荷締め体および/または第2荷締め体を1つの帯状のベルトで構成した場合に比べて、中空のチューブ状に形成することにより引張強度を維持しつつ荷締め体の幅を半分にすることができ、荷物における細かく複雑な凹凸や隙間に沿って柔軟に変形または通し易くすることができ幅広い形状の荷物を安定的に縛ることができる。また、本発明に係るラッシング具は、上記各荷締め体を断面形状が中実のロープなどで形成した場合に比べても、荷物における細かな凹凸や隙間に沿って柔軟に変形または通し易くなって細かく複雑な凹凸や隙間のある荷物を安定的に固定することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体は、外周部に長手方向に沿って屈曲させた折り癖からなる屈曲部が形成されていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、作業者が第1荷締め体および/または第2荷締め体に生じた捻じれを容易に発見して修正することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、第1荷締め体は、帯状に延びるベルトで構成されており、第2荷締め体は、中空のチューブ状に形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、長さ調整具に保持されて長さ調整される第1荷締め体がベルトで構成されているため、第1荷締め体を中空状に形成した場合に比べて長さ調整具の構成を簡単化および軽量化し易いとともに長さ調整具による長さ調整作業を行い易くすることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体は、内部空間に何も配置していない空の空間であることにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体は、内部空間内で軸方向に直交する方向に自由に移動可能な状態で自由に屈曲可能な1つの線状または繊維状に形成された芯材を備えることにある。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ラッシング具において、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体は、内部空間内で軸方向に直交する方向に自由に移動可能な状態で自由に屈曲可能な繊維状に形成された芯材を備え、芯材は、形状記憶合金、形状記憶ポリマーおよび形状記憶繊維のうちの少なくとも1つで構成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体の内部空間内で軸方向に直交する太さ方向に自由に移動可能な状態、換言すれば、同太さ方向に空間的な遊びがある状態で自由に屈曲可能な柔軟な線状または繊維状に形成された芯材を備えているため、屈曲などの変形に対する柔軟性を維持しつつ引張強度を更に向上させることができ荷物を安定的に固定することができる。また、このように構成した本発明の他の特徴によれば、ラッシング具は、芯材が形状記憶合金、形状記憶ポリマーおよび形状記憶繊維のうちの少なくとも1つで構成されているため、荷物を縛る際の形状または荷物を縛らない保管時などの形状に容易に変形させることができ作業性を向上させることができる。なお、形状記憶合金および形状記憶ポリマーは、ある温度以下で変形を与えてもその温度以上に加熱することで変形前の元の形状に復帰する性質を持った合金材または樹脂材のことである。また、形状記憶繊維は、折り目や縮れなどの変形を与えても水につけて乾かすなどの操作によって変形前の元の形状に復帰するように加工された繊維のことである。
【0016】
また、これらの場合、前記ラッシング具において、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体は、織物で構成することができる。これによれば、ラッシング具は、中空のチューブ状に形成された第1荷締め体および/または第2荷締め体が織物で構成されているため、これらの荷締め体を繊維を編んで構成した編物で構成した場合に比べて固縛時における各荷締め体の伸長を防止でき、緊縛力を長期間に亘って維持することができるとともに繊維の解れおよび引っ掛けなどによる損傷も防止することができる。また、第1荷締め体および/または第2荷締め体を織物または編物で構成することにより、第1荷締め体および/または第2荷締め体が濡れた際における排水性および速乾性を確保することができる。
【0017】
また、これらの場合、前記ラッシング具において、長さ調整具は、第2荷締め体が通される環状の挿通環を有し、第2荷締め体は、両端部にそれぞれフックを有することができる。これによれば、ラッシング具は、長さ調整具が第2荷締め体が通される環状の挿通環を有するとともに第2荷締め体の両端部にそれぞれフックを有しているため、荷物を3点で固定することができ立方体や直方体などの比較的整った形状の荷物は元より凹凸が激しい異形物からなる荷物であっても安定的に固定することができる。また、本発明に係るラッシング具は、挿通環を介して第2荷締め体の各両端部と挿通環との長さを調整することができるため、幅広い大きさおよび形状の荷物を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るラッシング具の外観構成の概略を示す平面図である。
図2図1に示したラッシング具を用いて荷物をパレット上に固定した使用状態を示す斜視図である。
図3図1に示したラッシングにおけるフックの外観構成の概略を示しており、(A)はフックにフック掛け部を掛ける際にゲート体を押し下げた状態を示す側面図であり、(B)はフックにフック掛け部に掛けてゲート体が押し上げられた状態を示す側面図である。
図4図1に示したラッシング具の第2荷締め体の断面形状を示す断面図である。
図5図2に示したラッシング具において荷物の外表面に形成された2つの突起間に垂直方向に形成された隙間に第2荷締め体が通った状態を示す断面図である。
図6図2に示したラッシング具において荷物の外表面と同外表面上に形成された水平部分によって水平方向に形成された隙間に第2荷締め体が通った状態を示す断面図である。
図7】本発明の変形例に係る第1荷締め体および/または第2荷締め体であって、内部空間に1つの線状の芯材を設けた状態の断面形状を示す断面図である。
図8】本発明の他の変形例に係る第1荷締め体および/または第2荷締め体であって、内部空間に複数の繊維からなる芯材を設けた状態の断面形状を示す断面図である。
図9】本発明の他の変形例に係るラッシング具の外観構成の概略を示す平面図である。
図10図9に示したラッシング具を用いて荷物をパレット上に固定した使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るラッシング具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るラッシング具100の外観構成の概略を示す平面図である。また、図2は、図1に示したラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90上に固定した使用状態を示す斜視図である。このラッシング具100は、荷役用のパレット90上に載置された物品(例えば、エンジンやトランスミッションなど)を荷物WKとして縛ってパレット90上に固定するための荷役用の道具である。
【0020】
(ラッシング具100の構成)
ラッシング具100は、主として、第1荷締め体101、長さ調整具104および第2荷締め体106を備えて構成されている。第1荷締め体101は、ラッシング具100の全体の長さ調整を可能としつつ長さ調整具104および第2荷締め体106と協働して荷物WKを荷役用のパレット90上に固定するためのものであり、長尺に延びる紐状に形成されている。
【0021】
本実施形態においては、第1荷締め体101は、樹脂材(例えば、ナイロンやポリプロピレンなど)を引っ張り強度に優れた幅広の帯状に形成したベルトで構成されている。この場合、第1荷締め体101は、様々な形状および大きさの荷物WKに対応するために、想定される標準的な大きさの荷物WKに対して十分に長い長さに形成されている。この第1荷締め体101は、一方の端部にフック102が取り付けられているとともに他方の端部が自由端で構成されて長さ調整具104に保持されている。また、第1荷締め体101におけるこれらの一方の端部と他方の端部との間には、保護スリーブ103が設けられている。
【0022】
フック102は、図3(A),(B)にそれぞれ示すように、第1荷締め体101における前記一方の端部をパレット90のフック掛け部92に着脱自在に引っ掛けるための金属製の部品であり、主として、フック本体102a、ゲート体102bおよびスプリング102cによって構成されている。
【0023】
フック本体102aは、第1荷締め体101の前記一方の端部に連結される部分であるとともにフック掛け部92に引っ掛けられる部分であり、平板を略J字状に折り曲げて形成されている。ゲート体102bは、フック本体102aの内側に引っ掛けられたフック掛け部92がフック本体102a内から外れることを防止するためのものであり、フック本体102aの平板部分からフック本体102aの先端部に向かって弾性的に突出する金属製の棒体で構成されている。スプリング102cは、ゲート体102bをフック本体102aの先端部に向かって弾性的に押圧するコイルスプリングである。なお、図3においては、フック102に対するフック掛け部92の相対移動方向およびゲート体102bの移動方向をそれぞれ破線矢印で示している。
【0024】
保護スリーブ103は、荷物WKを縛る第1荷締め体101の損傷を防止するための部品であり、長尺に延びる第1荷締め体101における長手方向の一部の範囲の外周部を覆う筒状に形成されている。この場合、保護スリーブ103は、第1荷締め体101上を自由に移動可能な大きさの内径に形成されている。この保護スリーブ103は、本実施形態においては、樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)製のシート材を筒状に形成して構成されている。
【0025】
長さ調整具104は、第1荷締め体101の長さを調整することでラッシング具100全体の長さ調整を可能としつつ第1荷締め体101と第2荷締め体106とを互いに連結するための器具であり、長尺に延びる第1荷締め体101を作業者の任意の位置で固定することができる留め具(所謂バックル)で構成されている。本実施形態においては、長さ調整具104は、長さ調整具104内に挿通される第1荷締め体101にローレット加工が施された押圧片をトーションコイルスプリングの弾性力で押し付けて第1荷締め体101を固定する所謂スプリングバックルで構成されている。
【0026】
すなわち、長さ調整具104には、第1荷締め体101を引き込みおよび送り出し可能に保持されているとともに、第2荷締め体106が長さ調整不能な状態で連結されている。なお、長さ調整具104は、長さ調整具104から延びる第1荷締め体101の長さを作業者の任意の長さに調整できる留め具であればよく、スプリングバックル以外のバックル、例えば、ラチェットバックルやオーバセンタバックルの他、スプリングの弾性力を利用しないバックル、例えば、カムバックルやラダーバックルで構成することもできる。この長さ調整具104には、荷物保護体105が設けられている。
【0027】
荷物保護体105は、長さ調整具104が荷物WKに接触して損傷を与えることを防止するための部品であり、長さ調整具104における荷物WK側の面を覆う大きさおよび形状に形成されている。本実施形態においては、荷物保護体105は、人手で屈曲変形可能な柔軟なシート状の材料(例えば、第1荷締め体101と同じ素材)で構成されている。この場合、荷物保護体105は、長さ調整具104に対して長手方向および幅方向にそれぞれ張り出すように2枚のシート材を隣接配置して縫合により長さ調整具104の下面に取り付けられている。
【0028】
第2荷締め体106は、第1荷締め体101および長さ調整具104と協働して荷物WKを荷役用のパレット90上に固定するためのものであり、長尺に延びる紐状に形成されている。より具体的には、第2荷締め体106は、図4に示すように、樹脂製の繊維(例えば、ナイロンやポリプロピレンなど)を中空の筒状に織ったチューブ状に形成されている。これにより、第2荷締め体106は、任意の位置で軸線方向に直交する方向に自由に屈曲するとともに断面形状が自由に変形するように構成されている。
【0029】
この場合、第2荷締め体106は、外周部の周方向における互いに反対側の2つの位置に長手方向に沿って屈曲させた屈曲部106aが形成されており、断面形状が図示上下方向に潰された楕円形状または扁平形状に形成されている。ここで、屈曲部106aは、第2荷締め体106を折った折り癖(折り痕)として成形できるほか、縫い目として成形することもできる。この第2荷締め体106は、一方の端部が長さ調整具104に連結されているとともに、他方の端部である先端部にフック107が設けられている。
【0030】
フック107は、第2荷締め体106における前記他方の端部をパレット90のフック掛け部92に着脱自在に引っ掛けるための金属製の部品であり、前記フック102と同様に構成されている。すなわち、フック107は、フック本体102a、ゲート体102bおよびスプリング102cと同じフック本体107a、ゲート体107bおよびスプリング107cを備えて構成されている。なお、図1においては、第1荷締め体101、保護スリーブ103および第2荷締め体106の各一部を省略して示している。
【0031】
(ラッシング具100の作動)
次に、上記のように構成したラッシング具100の作動について説明する。このラッシング具100は、荷役用のパレット90上に載置された荷物WKをパレット90に固縛するために用いられるものである(図2参照)。この場合、パレット90は、荷物WKを載置可能な大きさの平面視で方形状に形成された平たい板状体である。このパレット90における4つの側面のうち、互いに対向する2つの側面からなる1組の側面にはフォークリフトの爪を挿入するためのフォーク挿入孔91が貫通した状態で形成されている。
【0032】
また、パレット90における4つの側面のうちの前記1組の側面とは異なる互いに対向する残りの2つの側面からなるもう1組の側面にはラッシング具100のフック102,107をそれぞれ引っ掛けるためのフック掛け部92がそれぞれ張り出した状態で設けられている。この場合、フック掛け部92は、ラッシング具100のフック102,107の各内側に収まる外径の丸棒で構成されており、各側面の長手方向に沿って延びて形成されている。なお、図2においては、互いに対向する2つの側面にそれぞれ形成されるフック掛け部92のうちの一方(図示手前側)のみ示している。
【0033】
パレット90上に荷物WKを固縛する作業者は、まず、パレット90上に荷物WKを載置した後、ラッシング具100を用意して荷物WKに掛ける。具体的には、作業者は、第1荷締め体101のフック102をパレット90におけるフック掛け部92に引っ掛けた後、第1荷締め体101、長さ調整具104および第2荷締め体106を荷物WK上に掛け渡して第2荷締め体106のフック107をフック102を引っ掛けたフック掛け部92とは反対側のフック掛け部92に引っ掛ける。
【0034】
次に、作業者は、ラッシング具100で荷物WKをパレット90に対して固縛する。具体的には、作業者は、第1荷締め体101の自由端側を引っ張ることによって長さ調整具104が固定する第1荷締め体101の位置を変化させて長さ調整具104から延びる第1荷締め体101の長さを短くしていく。この第1荷締め体101を締めていく過程において作業者は、荷物WK上に掛けられる第2荷締め体106の位置を適宜調節する。
【0035】
この場合、作業者は、第2荷締め体106の外形を潰して変形させることにより第2荷締め体106を荷物WKの表面に形成された凹凸または隙間に沿わせて配置することができる。具体的には、第2荷締め体106は、中空の筒状に形成されているため、図5に示すように、上下方向である縦方向に延びる隙間S1,S2に対してそれぞれ第2荷締め体106の外形を縦方向に平らに変形させて通すことができる。また、第2荷締め体106は、図6に示すように、縦方向に直交する横方向に延びる隙間S3に対して第2荷締め体106の外形を横方向に平らに変形させて通すことができる。
【0036】
この場合、作業者は、第2荷締め体106の外周部を周方向に無限軌道のように回転させながら挿入することで第2荷締め体106を狭い隙間内に挿し込むこともできる。すなわち、第2荷締め体106は、縦方向に延びて形成された隙間S1,S2と横方向に延びて形成された隙間S3とが互いに隣接して形成されていても過度な変形を強いることなく自然な変形を介して通すことができる。また、第2荷締め体106は、荷物WKにおける角部Kにおいても扁平に潰れて接触面積を拡大させて縛ることができる。また、第2荷締め体106は、屈曲部106aが形成されているため、作業者は第2荷締め体106に生じた捻じれを容易に発見して修正することができる。
【0037】
これらの作業を経て作業者は、ラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90に対して固縛することができる。なお、作業者は、ラッシング具100を用いて荷物WKをパレット90に対して固縛する作業において、第2荷締め体106のフック107をフック掛け部92に掛けた後に第1荷締め体101のフック102をフック掛け部92に掛けるようにしてもよいことは当然である。
【0038】
次に、作業者は、パレット90上にラッシング具100によって固縛された荷物WKを輸送または保管する。この場合、ラッシング具100は、長さ調整具104を介した第1荷締め体101および第2荷締め体106によって荷物WKを固定するため、荷物WKを安定的に固定することができる。
【0039】
次に、ラッシング具100による固縛状態を解く場合には、作業者は、長さ調整具104を操作して第1荷締め体101の固定状態を解除して第1荷締め体101の長さを長くした後、第1荷締め体101および第2荷締め体106における各フック102,107をフック掛け部92からそれぞれ取り外す。この場合、作業者は、第2荷締め体106の外形を潰して変形または回転させることにより荷物WKの表面に形成された隙間S1,S2,S3内に挿し込まれた第2荷締め体106を円滑に取り外すことができる。
【0040】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ラッシング具100は、荷物WKに掛けられる第2荷締め体106が自由に断面形状が変形可能な中空のチューブ状に形成されているため、この第2荷締め体106を1つの帯状のベルトで構成した場合に比べてベルトの厚さを厚く形成した場合であって変形のための柔軟性の低下を抑えつつ引張強度を向上させることができ荷物WKを安定的に固定することができる。また、本発明に係るラッシング具100は、第2荷締め体106を1つの帯状のベルトで構成した場合に比べて、中空のチューブ状に形成することにより引張強度を維持しつつ第2荷締め体106の幅を半分にすることができ、荷物WKにおける細かく複雑な凹凸や隙間に沿って柔軟に変形または通し易くすることができ幅広い形状の荷物WKを安定的に縛ることができる。また、本発明に係るラッシング具100は、第2荷締め体106を断面形状が中実のロープなどで形成した場合に比べても、荷物WKにおける細かな凹凸や隙間に沿って柔軟に変形または通し易くなって細かく複雑な凹凸や隙間のある荷物WKを安定的に固定することができる。
【0041】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、参照する図における上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付すとともに重服する説明は適宜省略する。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、ラッシング具100は、第2荷締め体106を中空のチューブ状に形成して構成した。しかし、ラッシング具100は、第2荷締め体106に代えてまたは加えて第1荷締め体101を中空のチューブ状に形成して構成することもできる。
【0043】
また、上記実施形態においては、第2荷締め体106は、樹脂製の繊維を織った織物で構成した。しかし、第2荷締め体106は、樹脂製以外の繊維や線材、例えば、天然繊維、炭素繊維、金属製の繊維や線材、さらには、織物以外で構成、例えば、繊維を編んだ編物で構成することもできる。
【0044】
また、上記実施形態においては、第2荷締め体106は、外周部における2つの位置に長手方向に沿って屈曲部106aをそれぞれ形成して構成した。しかし、第2荷締め体106は、外周部における少なくとも1つの位置に屈曲部106aを形成して構成することで第2荷締め体106の捻じれを確認し易くことができる。なお、第2荷締め体106は、屈曲部106aを省略して構成できることは当然である。
【0045】
また、上記実施形態においては、第2荷締め体106は、内部空間内に何も配置しない空の空間で構成した。しかし、第2荷締め体106は、内部空間で軸方向に直交する太さ方向に自由に移動可能な状態、換言すれば、同太さ方向に空間的な遊び空間がある状態で自由に屈曲可能な柔軟な線状または繊維状に形成された芯材110を備えて構成することもできる。この場合、芯材110は、図7に示すように、1つの線状または繊維で構成されていてもよいが、図8に示すように、多数の繊維の束で構成されていてもよい。
【0046】
また、芯材110を多数の繊維の束で構成する場合、この束を構成する各繊維は互いに撚った撚糸で構成してもよいが、互いに撚らずに単独で平行に延びるように配置するとよい。これによれば、ラッシング具100は、第2荷締め体106の内部空間内での移動し易いとともに屈曲などの変形に対する柔軟性を維持しつつ引張強度を更に向上させることができ荷物WKを安定的に固定することができる。また、ラッシング具100は、第2荷締め体106に屈曲部106aが形成されている場合には、多数の繊維からなる芯材110を扁平にして隙間S1〜S3に挿入し易くすることができる。なお、芯材110を構成する繊維としては、天然繊維のほか、樹脂繊維、炭素繊維またはガラス繊維を用いることができる。また、芯材110は、繊維よりも太い線材、例えば、針金などの金属製の線材で構成することもできる。
【0047】
また、芯材110を形状記憶合金製の線材、形状記憶ポリマー製の線材および形状記憶繊維のうちの少なくとも1つで構成することできる。これによれば、ラッシング具100は、荷物WKを縛る際の形状または荷物WKを縛らない保管時などの形状に容易に変形させることができ作業性を向上させることができる。なお、形状記憶合金および形状記憶ポリマーは、ある温度以下で変形を与えてもその温度以上に加熱することで変形前の元の形状に復帰する性質を持った合金材または樹脂材のことである。また、形状記憶繊維は、折り目や縮れなどの変形を与えても水につけて乾かすなどの操作によって変形前の元の形状に復帰するように加工された繊維のことである。
【0048】
また、上記実施形態においては、ラッシング具100は、第2荷締め体106における一方の端部を長さ調整具104に連結するとともに他方の端部にフック107を備えて構成した。すなわち、ラッシング具100は、荷物WKに対して2か所で固縛するように1つの線状に構成した。しかし、ラッシング具100は、荷物WKに対して3か所で固縛するように三叉状に構成することもできる。
【0049】
具体的には、図9に示すように、ラッシング具100は、長さ調整具104における第1荷締め体101を保持する側とは反対側に連結体120を介して挿通環121を設けるとともに第2荷締め体106の両端部にフック107をそれぞれ設けて構成することができる。この場合、連結体120は、長さ調整具104と第2荷締め体106とを互いに連結するための部品であり、前記第1荷締め体101と同じ素材によって構成されている。これにより、長さ調整具104と挿通環121とは、連結体120の変形によって互いに変位および変向可能に連結されている。
【0050】
また、挿通環121は、第2荷締め体106を遊動的に通して長さ調整具104と連結するための部品であり、金属製の丸棒を円形のリング状に形成して構成されている。この場合、挿通環121は、第2荷締め体106の幅よりも十分に大きな内径のリング状に形成されている。これにより、第2荷締め体106は、挿通環121を介して二又に形成される。すなわち、ラッシング具100は、第1荷締め体101および第2荷締め体106によって三叉状に形成される。また、この場合、荷物保護体105は、荷物WKに対して挿通環121を覆う大きさに形成されている。
【0051】
このように構成されたラッシング具100の使用に際しては、作業者は、図10に示すように、第1荷締め体101をパレット90のフック掛け部92に引っ掛けるとともに、第2荷締め体106における2つのフック107を第1荷締め体101とは反対側のフック掛け部92に引っ掛けた後、長さ調整具104を操作して縛る。このように構成されたラッシング具100によれば、荷物WKを3点で固定することができ立方体や直方体などの比較的整った形状の荷物WKは元より凹凸が激しい異形物からなる荷物WKであっても安定的に固定することができる。また、このラッシング具100は、挿通環121を介して第2荷締め体106の各両端部と挿通環121との長さを調整することができるため、幅広い大きさおよび形状の荷物WKを固定することができる。
【0052】
なお、挿通環121は、連結体120を省略して長さ調整具104に直接設けることもできる。また、挿通環121は、金属材以外の材料(例えば、樹脂材)で構成されていてもよい、円形以外のリング状(例えば、方形など)に形成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、ラッシング具100は、保護スリーブ103および荷物保護体105をそれぞれ備えて構成した。しかし、ラッシング具100は、保護スリーブ103および荷物保護体105をそれぞれ備えて省略して構成することができる。また、ラッシング具100は、保護スリーブ103を第2荷締め体106に設けることもできる。
【0054】
また、上記実施形態においては、ラッシング具100は、フック102,107にゲート体102b,107bおよびスプリング102c,107cをそれぞれ備えて構成した。しかし、フック102,107は、少なくともフック掛け部92に引っ掛けることができる金具であればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、フック102,107は、ゲート体102b,107bおよびスプリング102c,107cをそれぞれ省略して構成することができる。また、フック102,107は、フック本体102a,107aを平板を折り曲げて形成した所謂フラットフックで構成した。しかし、フック102,107は、フラットフック以外で構成、例えば、カギフック(ナローフックともいう)、デルタリングフック、ナスカンフック、スイベルフック、チェーンフックまたはスナップフックなどで構成することもできる。
【0055】
また、上記実施形態においては、ラッシング具100は、荷物WKをパレット90上に固定した。しかし、ラッシング具100は、荷物WKを運搬や保管のために固定する際に用いられれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、ラッシング具100は、パレット90の他に、例えば、車両の荷台やアンカーが設置された床面に荷物WKを固定することができる。
【符号の説明】
【0056】
WK…荷物、S1,S2,S3…隙間、K…角部、
90…パレット、91…フォーク挿入孔、92…フック掛け部、
100…ラッシング具、
101…第1荷締め体、102…フック、102a…フック本体、102b…ゲート体、102c…スプリング、103…保護スリーブ、104…長さ調整具、105…荷物保護体、106…第2荷締め体、106a…屈曲部、107…フック、107a…フック本体、107b…ゲート体、107c…スプリング、
110…芯材、
120…連結体、121…挿通環。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10