特許第6607913号(P6607913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607913金属カルベンオレフィンメタセシス2種の触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607913
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】金属カルベンオレフィンメタセシス2種の触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20191111BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20191111BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C08G61/08
   C08J5/04
   B01J31/24 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】116
(21)【出願番号】特願2017-251247(P2017-251247)
(22)【出願日】2017年12月27日
(62)【分割の表示】特願2015-560322(P2015-560322)の分割
【原出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-87338(P2018-87338A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】61/799,827
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/770,284
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507021366
【氏名又は名称】マテリア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、アンソニー、アール.
(72)【発明者】
【氏名】クルース、クリストファー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジアルデッロ、マイケル、エイ.
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530706(JP,A)
【文献】 特表2000−513393(JP,A)
【文献】 特表2004−530540(JP,A)
【文献】 特表2011−523625(JP,A)
【文献】 特開2002−363264(JP,A)
【文献】 特開2001−131264(JP,A)
【文献】 特開平10−338739(JP,A)
【文献】 特表2000−504359(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/174502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物であって、
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が式(V)
【化1】

[式中、
Qは、構造−CR1112−CR1314−又は−CR11=CR13−、を有する2つの原子による連結であり;
11、R12、R13及びR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから独立に選択され;
は水素であり、Rは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル及びC〜C24アリールから選択され;あるいはR及びRは、一緒になって、インデニリデン部分を形成することができ;
及びRは同じであり、それぞれ、非置換フェニルであり、又はC〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24アリール、置換C〜C24アリール、C〜C24ヘテロアリール、C〜C24アラルキル、C〜C24アルカリール若しくはハロゲン化物から選択される3つまでの置換基で置換されているフェニルであり;
及びLは、中性電子供与体配位子であり;
nは、0又は1であり;
kは、0又は1であり、
及びXは、アニオン性配位子である。]
によって表され、
単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒される環状オレフィン樹脂が30℃において粘度30cPに達するまでの時間が1分未満の場合、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を高速開始剤と分類し、
単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒される環状オレフィン樹脂が30℃において粘度30cPに達するまでの時間が1分超であり10分未満の個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を中速開始剤と分類し、
単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒される環状オレフィン樹脂が30℃において粘度30cPに達するまでの時間が10分超の個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を低速開始剤と分類した場合において、
類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤として分類され、且つ類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤として分類され、あるいは、
類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤として分類され、且つ類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤として分類され、あるいは、
類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤として分類され、且つ類似していない活性を有する少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤として分類され、
当該類似していない活性が、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒される環状オレフィン樹脂が30℃において粘度30cPに達するまでの時間である重合特性である、
上記ROMP組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のROMP組成物であって、
式中、
Qは、構造−CR1112−CR1314−を有する2つの原子による連結であり;
11、R12、R13及びR14は、水素から独立に選択され;
及びRは同じであり、それぞれ、非置換フェニルであり、又はC〜C20アルキル、置換C〜C20アルキルから選択される3つまでの置換基で置換されているフェニルであり;
nは、0であり;
kは、1であり、
及びXは、ハロゲンである、
上記ROMP組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のROMP組成物であって、
第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、中速開始剤として分類され、式中、Rは水素であり、Rは、C〜C20アルキル及びC〜C20アルケニルから選択され、且つ
第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、低速開始剤として分類され、式中、R及びRは、一緒になって、インデニリデン部分を形成する、
上記ROMP組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のROMP組成物であって、
第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、高速開始剤として分類され、式中、Rは水素であり、Rは、C〜C24アリールであり、且つ
第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、低速開始剤として分類され、式中、R及びRは、一緒になって、R及びRは、一緒になって、インデニリデン部分を形成する、
上記ROMP組成物。
【請求項5】
請求項2に記載のROMP組成物であって、
第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、中速開始剤として分類され、式中、Rは水素であり、Rは、C〜C20アルキル及びC〜C20アルケニルから選択され、且つ
第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、高速開始剤として分類され、式中、Rは水素であり、Rは、C〜C24アリールである、
上記ROMP組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の外因性阻害剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のROMP組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の接着促進剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のROMP組成物。
【請求項8】
ROMP組成物を重合する条件に請求項1〜7のいずれか一項に記載のROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法。
【請求項9】
ROMP組成物が、外因性阻害剤をさらに含む、請求項8に記載の物品を製造する方法。
【請求項10】
ROMP組成物が、少なくとも1種の基材材料をさらに含む、請求項9に記載の物品を製造する方法。
【請求項11】
ROMP組成物が、少なくとも1種の接着促進剤をさらに含む、請求項10に記載の物品を製造する方法。
【請求項12】
ROMP組成物を重合する条件に請求項11に記載のROMP組成物を曝すことを含む、製造品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2013年2月27日出願の米国仮特許出願第61/770,284号、及び2013年3月15日出願の米国仮特許出願第61/799,827号の利益を主張するものであり、それぞれの内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は、オレフィンメタセシス触媒、及びオレフィンメタセシス反応の制御方法に関する。より具体的には、本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)反応を触媒し、制御するための方法及び組成物、並びにROMPを介するポリマー物品の製造に関する。本発明のメタセシス反応を介して生成されたポリマー生成物は、広範な材料及び複合用途に利用することができる。本発明は、触媒作用、有機合成、並びにポリマー及び材料の化学及び製造の分野において実用性がある。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリマーの成型は、技術的及び商業的に重要な処理技術である。この技術の公知のものの1つでは、液体環状オレフィンモノマー樹脂を、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わせて、従来技術のROMP組成物を形成し、従来技術のROMP組成物を成形型に添加する(例えば、注ぎ、鋳造し、注入し、射出する等)。従来技術のROMP組成物は、従来技術のROMP組成物を重合するのに有効な条件に曝され、それが完了すると、成型物品は、必要とされ得る任意の任意選択の後硬化処理のために、成形型から取り出される。本開示の目的では、用語「従来技術のROMP組成物(単数又は複数)」は、本明細書で使用される場合、液体環状オレフィンモノマー樹脂を、ただ1種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)と組み合わせることによって形成されるROMP組成物であることを強調することが重要である。当技術分野で公知の通り、液体環状オレフィンモノマー樹脂は、添加される変性剤(modifier)、充填剤、強化剤(reinforcement)、難燃剤、顔料等を任意選択により含有することができる。このような従来技術のROMP組成物の例は、米国特許第5,342,909号、同第6,310,121号、同第6,515,084号、同第6,525,125号、同第6,759,537号、同第7,329,758号等に開示されている。
【0003】
物品をうまく成型するためには、ROMP組成物が重合する速度を制御できることが重要である。重合が進行するにつれて、ROMP組成物の粘度が増大し、液体状態からゲル状態を経て、最終的な硬質ポリマーまで進行する。この進行中のある時点で、温度は、一般に急速に上昇し始めて、激しく発熱する。ROMP組成物の粘度は、ROMP組成物が成形型に導入され得る前に、急速に上昇(急速に増大)しすぎてはならない。さらに、ROMP組成物は、成形型に導入され得る前にゲル化してはならず、又は発熱(すなわち硬化)してはならない。さらに、ROMP組成物は、成形型が完全に充填される前に、又は触媒がモノマーに完全に分散するのに十分な時間を有する前にゲル化してはならず、又は発熱してはならない。しかし場合によって、便宜的で好都合なサイクル時間のためには、成形型が充填された後に妥当な時間内で、触媒がモノマーの重合を開始しROMP組成物が発熱することが重要な場合がある。
【0004】
従来技術のROMP組成物を用いる物品の成型に伴う一般的な課題は、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、ルテニウム金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)の多くが、環状オレフィンと急速に反応し、したがって、例えば大型物品、複合物品、複雑な幾何形状及び/若しくは様々な厚さの領域を有する物品、並びに/又は1/4インチを超える厚さを有する物品などの多様なポリマー物品を成型するには、あまり適していないということである。
【0005】
従来技術のROMP組成物を使用する物品の成型に伴う特定の課題は、成形される物品の様々な領域又は部分が、成型サイクル中に、異なる重合度又は重合状態(例えば、液体、軟質ゲル、硬質ポリマーゲル、発熱)を有する場合があるということである。例えば、従来技術のROMP組成物は、物品の成型中に、成形型のある部分又は領域ではゲル化状態であり、成形型の別の部分又は領域では液体状態である場合がある。このことは、従来技術のROMP組成物が成形型のある部分で発熱し始めるが、成形型の別の部分ではまだ液体状態である場合に、特に問題となる。ROMP組成物が発熱し始めると、ROMP組成物中に存在する液体環状オレフィンモノマーの量が多いほど、成型物品は、欠陥を生じて修復が必要となり、又は破棄する必要が生じる可能性が高くなり、それによって、いずれの状況でも製造費用が増大する。理論に拘泥するものではないが、成型物品における特定の欠陥は、ROMP組成物中に存在する液体環状オレフィンモノマー(例えば、ジシクロペンタジエン)が、ROMP組成物の発熱中に生じた高温の結果、揮発する(液体状態から気体状態に変換する)場合に形成されると考えられる。
【0006】
さらに、液体環状オレフィンモノマーの揮発の課題は、特に加熱された成形型を使用する場合、一方の成形型表面が別の成形型表面よりも高温になることがあり、又は成形型表面の間で温度差が生じることがあり、従来技術のROMP組成物を使用する物品の成型中において問題になることが見出されている。この課題は、従来技術のROMP組成物が、型穴を充填するときに基材材料中及び/又は基材材料の周囲に浸透すると、基材材料(例えば、強化材料)が放熱板として機能し、従来技術のROMP組成物を有効に冷却する場合があるので、複合物品、特に厚さのある複合物品又は高度に充填された複合物品を成型する場合には深刻である。この場合、加熱された成形型表面に最も近い従来技術のROMP組成物の部分が発熱し始めても、加熱された成形型表面から最も離れた従来技術のROMP組成物の部分は液体状態のままであり、それによって液体環状オレフィンモノマーが揮発することにより成型物品に欠陥が生じるおそれがある。
【0007】
一般に、触媒メタセシス反応、特にROMP反応の反応速度を制御できることが有用であり、商業的に重要となり得る。特に、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、ルテニウム又はオスミウムカルベンオレフィンメタセシス触媒)で触媒される環状オレフィン樹脂組成物の重合速度を制御できることが有用であり、商業的に重要となり得る。さらに、ROMP組成物が発熱し始める前に、ROMP組成物中に存在する液体環状オレフィンモノマーが、成形型の異なる領域/部分又はROMP組成物のあらゆる場所で均一に形成されたゲル化状態に達するような方法で、物品の成型中にROMP組成物の重合を制御できることが特に有用であり、商業的に重要となり得る。より具体的には、ROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を、発熱時間に対して独立に制御するための手段を備えることが特に有用であり、商業的に重要となり得る。
【0008】
これまで、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、ルテニウム又はオスミウムカルベンオレフィンメタセシス触媒)で触媒される環状オレフィン樹脂組成物の重合速度を制御するための方法はほとんどなかった。従来技術のROMP組成物の重合速度を制御するある方法は、樹脂組成物及び/又は成形型の温度を制御/調節することによる方法である。残念ながら、以下の表11で実証されている通り、樹脂組成物及び/又は成形型の温度を調節しても、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御することができない。換言すれば、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒によって環状オレフィン樹脂組成物を触媒して、従来技術のROMP組成物を形成した後、組成物の温度及び/又は成形型の温度が上昇すると、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのにかかる時間、及び従来技術のROMP組成物が発熱するのにかかる時間の両方が短縮する。逆に、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒によって環状オレフィン樹脂組成物を触媒して、従来技術のROMP組成物を形成した後、組成物の温度及び/又は成形型の温度が低下すると、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのにかかる時間、及び従来技術のROMP組成物が発熱するのにかかる時間の両方が増大する。
【0009】
単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、ルテニウム又はオスミウムカルベンオレフィンメタセシス触媒)で触媒される環状オレフィン樹脂組成物の重合速度を制御する別の方法は、米国特許第5,939,504号及び国際特許出願PCT/US2012/042850に開示されており、これらの両方の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。ここで、外因性(exogenous)(外部の添加剤であること、或いは樹脂組成物に添加することができる、又は単一のカルベン触媒と混合し若しくは組み合わせることができる他の反応物であることを意味する)は、内因性(indigenous)(天然であること、又は単一のカルベン触媒の遷移金属に結合している成分によって確立されることを意味する)と区別される。米国特許第5,939,504号は、外因性「ゲル変性添加剤」又は外因性阻害剤、例えば中性電子供与体又は中性ルイス塩基、好ましくはトリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンを使用して、従来技術のROMP組成物の可使時間を変更することを開示している。国際特許出願PCT/US2012/042850は、外因性ヒドロペルオキシドゲル変性剤又は外因性阻害剤、例えばクメンヒドロペルオキシドを使用して、従来技術のROMP組成物の可使時間を変更することを開示している。樹脂組成物及び金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を組み合わせた後に、ROMP組成物が機能し得る時間は、可使時間(pot life)と呼ばれる。
【0010】
外因性阻害剤の使用は、従来技術のROMP組成物の可使時間を制御するための有益な方法であることに変わりはないが、外因性阻害剤の使用には、数々の制限があり、いくつかの改善が必要とされ、求められている。残念ながら、以下の表12で実証されている通り、従来技術のROMP組成物に外因性阻害剤(例えば、トリフェニルホスフィン又はクメンヒドロペルオキシド)を使用しても、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御することができない。換言すれば、従来技術のROMP組成物を形成した後、外因性阻害剤の濃度が上昇すると、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのにかかる時間、及び従来技術のROMP組成物が発熱するのにかかる時間の両方が増大する。逆に、従来技術のROMP組成物を形成した後、外因性阻害剤の濃度が低下すると、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのにかかる時間、及び従来技術のROMP組成物が発熱するのにかかる時間の両方が短縮する。しかし、従来技術のROMP組成物においてより多量の外因性阻害剤を使用すると、従来技術のROMP組成物から形成されたポリマー及び/又はポリマー複合体の特性に対して望ましくない効果(例えば、機械特性及び/又は熱特性の低下)をもたらすおそれがある。
【0011】
触媒メタセシス反応の速度を制御する、既に公知の別の方法は、カルベンオレフィンメタセシス触媒のルテニウム又はオスミウム遷移金属に結合している配位子の特徴の変更(内因性変性)による方法である。例えば、RuCl(PPh(=CHPh)は、RuCl(PCy(=CHPh)よりもゆっくり環状オレフィンと反応するが、RuCl(PPh)sIMes(=CHPh)は、RuCl(PCy)sIMes(=CHPh)よりも急速に環状オレフィンと反応する[sIMesは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデンを表し、Cyは、シクロヘキシルを表す]。さらに、配位子の変性は、例えば、本明細書に開示のC771、C835及びC871などの潜在的な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を調製するために使用されてきた。ROMPのためのいくつかの他の潜在的な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、公知であり、米国特許出願公開第2005/0261451号及び同第2012/0271019号、米国特許第RE38676号等に開示されている。残念ながら、以下に実証されている通り、潜在的な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、潜在的なルテニウム又はオスミウムオレフィンメタセシス触媒)では、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御することができない。
【0012】
環状オレフィン樹脂組成物の重合速度を制御する既に公知の別の方法は、米国特許第6,162,883号に開示されており、カルベンを含まないルテニウム熱触媒及びルテニウムカルベン熱触媒の触媒混合物を使用して、歪みを有する(strained)シクロオレフィンのROMPのための潜在的な触媒を作製している。しかし、米国特許第6,162,883号は、液体環状オレフィンモノマー樹脂のROMP中の液体環状オレフィンモノマーの揮発に関連する課題に対処しておらず、これらの課題に対処するための解決法も提示していない。さらに、米国特許第6,162,883号は、ROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御可能にするという課題には対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、当技術分野において、特にオレフィンメタセシスポリマーの特性及びそれらの関連用途において進歩が達成されているにも関わらず、オレフィンメタセシス反応、特にROMP反応を触媒し、制御するための方法及び組成物を含む多くの領域で、さらなる改善が引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)反応を触媒し、制御するための方法及び組成物、並びにROMPを介するポリマー物品の製造に関する。
【0015】
本発明の一目的は、オレフィンメタセシスプロセスにおいて使用するためのオレフィンメタセシス触媒組成物を提供することである。特に本発明の一目的は、ROMP組成物及びROMPプロセスにおいて使用するための、オレフィンメタセシス触媒組成物を提供し、それによって従来技術のROMP組成物の不利益を克服することである。さらに、本発明の一目的は、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有するポリマー物品及び/又はポリマー複合体を提供することである。これらの目的は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を提供することによって解決される。
【0016】
本発明者らは、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物と組み合わせてROMP組成物を形成すると、ROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御できることを発見した。その後、この硬質ポリマーゲルは、外部エネルギー源を加えることによって(例えば、成形型表面の加熱及び/又は後硬化ステップ)、及び/又は内部エネルギーによって(例えば、ROMP中の開環によって生じた反応の発熱の形態)、硬化することができる。
【0017】
より具体的には、本発明者らは、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含むROMP組成物によって、成型される物品の様々な領域又は部分が発熱し始める前に、成型される物品の様々な領域又は部分が硬質ポリマーゲルを均一に形成し、それによって液体環状オレフィンモノマーの揮発を低減及び/又は排除することができ、それによって、成型物品における欠陥(例えば空隙、気泡等)が低減及び/又は排除されることを発見した。
【0018】
一実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む組成物を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1種の環状オレフィン、及び少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む、組成物を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物を提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物を提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、樹脂組成物と組み合わせ、組み合わせた組成物を重合するのに有効な条件に組み合わせた組成物を曝すことによって、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物を重合する方法を提供する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物と、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法であって、物品が、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する方法を提供する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む製造品であって、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する製造品を提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む製造品であって、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する製造品を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む製造品であって、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する製造品を提供する。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む製造品であって、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する製造品を提供する。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む製造品であって、ポリマー平方インチ当たり1つ未満の目に見える空隙を有する製造品を提供する。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の基材材料、並びに任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤組成物、少なくとも1種の基材材料及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法を提供する。
【0067】
本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)反応にとって特定の利益があり、他のメタセシス反応、例えば開環クロスメタセシス反応、クロスメタセシス反応、閉環メタセシス反応、セルフメタセシス反応、エテノリシス反応、アルケノリシス反応、又は非環式ジエンメタセシス重合反応、並びにこのようなメタセシス反応の組合せと共に使用できることも見出されている。
【0068】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び実施例に照らして、当業者に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】例58及び59に記載の複合積層(composite laminate)の図である。
【0070】
図2】例60による2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物で触媒した環状オレフィン樹脂組成物から製造した、欠陥がないことを示している物品の写真である。
【0071】
図3】例61による単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒した環状オレフィン樹脂組成物から製造した、欠陥の存在を示している物品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
用語法及び定義
特定の反応物、置換基、触媒、触媒組成物、樹脂組成物、反応条件等は変わり得るので、別段指定されない限り、本発明はこれらに限定されない。また、本明細書で使用される用語法は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定的であると解釈されるべきでないと理解される。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、状況によって別段明示されない限り、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、「1つのα−オレフィン」への言及は、単一のα−オレフィン並びに2つ以上のα−オレフィンの組合せ又は混合物を含み、「1つの置換基」への言及は、単一の置換基並びに2つ以上の置換基等を包含する。
【0074】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「例えば」、「例として」、「などの」又は「含めた」は、より全般的な主題をさらに明確にする例を導入することを意味する。別段特定されない限り、これらの例は、本発明を理解するための助けとしてのみ提示され、いかなる様式でも限定的であることを意味しない。
【0075】
本明細書及び以下の特許請求の範囲では、いくつかの用語に言及するが、それらは以下の意味を有すると定義されるものとする。
【0076】
用語「アルキル」は、本明細書で使用される場合、典型的に、必ずではないが、1〜約24個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子を含有する直鎖、分岐又は環状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等、並びにシクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等を指す。一般に、やはり必ずではないが、アルキル基は、本明細書では、1〜約12個の炭素原子を含有する。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を指し、特定の用語「シクロアルキル」は、典型的に4〜8個、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する環状アルキル基を指す。用語「置換アルキル」は、1つ又は複数の置換基で置換されているアルキルを指し、用語「ヘテロ原子含有アルキル」及び「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているアルキルを指す。別段示されない場合、用語「アルキル」及び「低級アルキル」は、それぞれ、直鎖、分岐、環状、非置換、置換の、及び/又はヘテロ原子を含有するアルキル及び低級アルキルを含む。
【0077】
用語「アルキレン」は、本明細書で使用される場合、二官能性の直鎖、分岐又は環状アルキル基を指し、ここで「アルキル」は、先に定義されている通りである。
【0078】
用語「アルケニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの二重結合を含有する2〜約24個の炭素原子の直鎖、分岐又は環式炭化水素基、例えばエテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル等を指す。好ましいアルケニル基は、本明細書では、2〜約12個の炭素原子を含有する。用語「低級アルケニル」は、2〜6個の炭素原子のアルケニル基を指し、特定の用語「シクロアルケニル」は、好ましくは5〜8個の炭素原子を有する環状アルケニル基を指す。用語「置換アルケニル」は、1つ又は複数の置換基で置換されているアルケニルを指し、用語「ヘテロ原子含有アルケニル」及び「ヘテロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているアルケニルを指す。別段示されない場合、用語「アルケニル」及び「低級アルケニル」は、それぞれ、直鎖、分岐、環状、非置換、置換の、及び/又はヘテロ原子を含有するアルケニル及び低級アルケニルを含む。
【0079】
用語「アルケニレン」は、本明細書で使用される場合、二官能性の直鎖、分岐又は環状アルケニル基を指し、ここで「アルケニル」は、先に定義されている通りである。
【0080】
用語「アルキニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの三重結合を含有する2〜約24個の炭素原子の直鎖又は分岐炭化水素基、例えばエチニル、n−プロピニル等を指す。好ましいアルキニル基は、本明細書では、2〜約12個の炭素原子を含有する。用語「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を指す。用語「置換アルキニル」は、1つ又は複数の置換基で置換されているアルキニルを指し、用語「ヘテロ原子含有アルキニル」及び「ヘテロアルキニル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているアルキニルを指す。別段示されない場合、用語「アルキニル」及び「低級アルキニル」は、それぞれ、直鎖、分岐、非置換、置換の、及び/又はヘテロ原子を含有するアルキニル及び低級アルキニルを含む。
【0081】
用語「アルコキシ」は、本明細書で使用される場合、単一の末端エーテル連結を介して結合しているアルキル基を指す。すなわち、「アルコキシ」基は、−O−アルキルと表すことができ、ここでアルキルは、先に定義されている通りである。「低級アルコキシ」基は、1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を指す。同様に、「アルケニルオキシ」及び「低級アルケニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル連結を介して結合しているアルケニル及び低級アルケニル基を指し、「アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル連結を介して結合しているアルキニル及び低級アルキニル基を指す。
【0082】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、別段特定されない限り、単一の芳香環、又は一緒になって縮合しており、直接的に連結しており、若しくは間接的に連結している複数の芳香環(したがって、異なる芳香環が、メチレン又はエチレン部分などの共通の基に結合している)を含有する芳香族置換基を指す。好ましいアリール基は、5〜24個の炭素原子を含有しており、特に好ましいアリール基は、5〜14個の炭素原子を含有している。例示的なアリール基は、1つの芳香環、又は2つの縮合若しくは連結した芳香環、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等を含有している。「置換アリール」は、1つ又は複数の置換基で置換されているアリール部分を指し、用語「ヘテロ原子含有アリール」及び「ヘテロアリール」は、以下にさらに詳説する通り、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているアリール置換基を指す。
【0083】
用語「アリールオキシ」は、本明細書で使用される場合、単一の末端エーテル連結を介して結合しているアリール基を指し、ここで「アリール」は、先に定義されている通りである。「アリールオキシ」基は、−O−アリールと表すことができ、ここでアリールは、先に定義されている通りである。好ましいアリールオキシ基は、5〜24個の炭素原子を含有しており、特に好ましいアリールオキシ基は、5〜14個の炭素原子を含有している。アリールオキシ基の例として、フェノキシ、o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p−ハロ−フェノキシ、o−メトキシ−フェノキシ、m−メトキシ−フェノキシ、p−メトキシ−フェノキシ、2,4−ジメトキシ−フェノキシ、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
用語「アルカリール」は、アルキル置換基を有するアリール基を指し、用語「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキル基を指し、ここで「アリール」及び「アルキル」は、先に定義されている通りである。好ましいアルカリール及びアラルキル基は、6〜24個の炭素原子を含有しており、特に好ましいアルカリール及びアラルキル基は、6〜16個の炭素原子を含有している。アルカリール基として、p−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、2,7−ジメチルナフチル、7−シクロオクチルナフチル、3−エチル−シクロペンタ−1,4−ジエン等が挙げられるが、これらに限定されない。アラルキル基の例として、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチル等が挙げられるが、これらに限定されない。用語「アルカリールオキシ」及び「アラルキルオキシ」は、式−ORの置換基を指し、ここでRは、先に定義されている通り、それぞれアルカリール又はアラルキルである。
【0085】
用語「アシル」は、式−(CO)−アルキル、−(CO)−アリール、−(CO)−アラルキル、−(CO)−アルカリール、−(CO)−アルケニル又は−(CO)−アルキニルを有する置換基を指し、用語「アシルオキシ」は、式−O(CO)−アルキル、−O(CO)−アリール、−O(CO)−アラルキル、−O(CO)−アルカリール、−O(CO)−アルケニル、−O(CO)−アルキニルを有する置換基を指し、ここで「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」、アルカリール、アルケニル及びアルキニルは、先に定義されている通りである。
【0086】
用語「環状」及び「環式」(cyclc)並びに「環」(ring)は、置換されていても置換されていなくてもよく、及び/又はヘテロ原子を含有していても含有していなくてもよく、単環式、二環式又は多環式であり得る脂環式又は芳香族基を指す。用語「脂環式」は、通常の意味では、芳香族環式部分とは対照的に、脂肪族環式部分を指すために使用され、単環式、二環式又は多環式であってもよい。
【0087】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、通常の意味では、クロロ、ブロモ、フルオロ又はヨード置換基を指すために使用される。
【0088】
「ヒドロカルビル」は、直鎖、分岐、環状、飽和及び不飽和の種を含む、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約24個の炭素原子、最も好ましくは1〜約12個の炭素原子を含有する、一価のヒドロカルビルラジカル、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を指す。用語「低級ヒドロカルビル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子のヒドロカルビル基を意図し、用語「ヒドロカルビレン」は、1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約24個の炭素原子、最も好ましくは1〜約12個の炭素原子を含有し、直鎖、分岐、環状、飽和及び不飽和の種を含む二価のヒドロカルビル部分を指す。用語「低級ヒドロカルビレン」は、1〜6個の炭素原子のヒドロカルビレン基を指す。「置換ヒドロカルビル」は、1つ又は複数の置換基で置換されているヒドロカルビルを指し、用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」及び「ヘテロヒドロカルビル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているヒドロカルビルを指す。同様に、「置換ヒドロカルビレン」は、1つ又は複数の置換基で置換されているヒドロカルビレンを指し、用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン」及び「ヘテロヒドロカルビレン」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているヒドロカルビレンを指す。別段指定されない限り、用語「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビレン」は、それぞれ、置換されている及び/又はヘテロ原子を含有するヒドロカルビル及びヘテロ原子を含有するヒドロカルビレン部分を含むと解釈されるべきである。
【0089】
「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル基」などに見られる用語「ヘテロ原子含有」は、1つ又は複数の炭素原子が、炭素以外の原子、例えば窒素、酸素、硫黄、リン又はケイ素、典型的に窒素、酸素又は硫黄で置き換えられている、炭化水素分子又はヒドロカルビル分子の断片を指す。同様に、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子を含有するアルキル置換基を指し、用語「複素環式」は、ヘテロ原子を含有する環式置換基を指し、用語「ヘテロアリール」及び「複素芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子を含有する「アリール」及び「芳香族」置換基等を指す。「複素環式」基又は化合物は、芳香族であっても芳香族でなくてもよく、さらに「複素環」は、用語「アリール」に関して先に記載した通り、単環式、二環式又は多環式であり得ることに留意すべきである。ヘテロアルキル基の例として、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキル等が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール置換基の例として、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル等が挙げられるが、これらに限定されず、ヘテロ原子含有脂環式基の例として、ピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」等に見られる「置換」は、前述の定義のいくつかにおいて示唆されている通り、ヒドロカルビル、アルキル、アリール又は他の部分において、炭素(又は他の)原子に結合している少なくとも1つの水素原子が、1つ又は複数の非水素置換基で置き換えられていることを意味する。このような置換基の例として、本明細書では「Fn」と呼ばれる官能基、例えばハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C〜C24アルコキシ、C〜C24アルケニルオキシ、C〜C24アルキニルオキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C24アラルキルオキシ、C〜C24アルカリールオキシ、アシル(C〜C24アルキルカルボニル(−CO−アルキル)及びC〜C24アリールカルボニル(−CO−アリール)を含む)、アシルオキシ(C〜C24アルキルカルボニルオキシ(−O−CO−アルキル)及びC〜C24アリールカルボニルオキシ(−O−CO−アリール)を含む、−O−アシル)、C〜C24アルコキシカルボニル(−(CO)−O−アルキル)、C〜C24アリールオキシカルボニル(−(CO)−O−アリール)、ハロカルボニル(−CO)−X、ここでXはハロである)、C〜C24アルキルカルボナト(−O−(CO)−O−アルキル)、C〜C24アリールカルボナト(−O−(CO)−O−アリール)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシラト(−COO)、カルバモイル(−(CO)−NH)、モノ−(C〜C24アルキル)置換カルバモイル(−(CO)−NH(C〜C24アルキル))、ジ−(C〜C24アルキル)置換カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24アルキル))、モノ−(C〜C24ハロアルキル)置換カルバモイル(−(CO)−NH(C〜C24ハロアルキル))、ジ−(C〜C24ハロアルキル)置換カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24ハロアルキル))、モノ−(C〜C24アリール)置換カルバモイル(−(CO)−NH−アリール)、ジ−(C〜C24アリール)置換カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24アリール))、ジ−N−(C〜C24アルキル)、N−(C〜C24アリール)置換カルバモイル(−(CO)−N(C〜C24アルキル)(C〜C24アリール)、チオカルバモイル(−(CS)−NH)、モノ−(C〜C24アルキル)置換チオカルバモイル(−(CS)−NH(C〜C24アルキル))、ジ−(C〜C24アルキル)置換チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24アルキル))、モノ−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル(−(CS)−NH−アリール)、ジ−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24アリール))、ジ−N−(C〜C24アルキル)、N−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル(−(CS)−N(C〜C24アルキル)(C〜C24アリール)、カルバミド(−NH−(CO)−NH)、シアノ(−C≡N)、シアナト(−O−C≡N)、チオシアナト(−S−C≡N)、イソシアナート(−N=C=O)、チオイソシアナート(−N=C=S)、ホルミル(−(CO)−H)、チオホルミル(−(CS)−H)、アミノ(−NH)、モノ−(C〜C24アルキル)置換アミノ(−NH(C〜C24アルキル)、ジ−(C〜C24アルキル)置換アミノ(−N(C〜C24アルキル))、モノ−(C〜C24アリール)置換アミノ(−NH(C〜C24アリール)、ジ−(C〜C24アリール)置換アミノ(−N(C〜C24アリール))、C〜C24アルキルアミド(−NH−(CO)−アルキル)、C〜C24アリールアミド(−NH−(CO)−アリール)、イミノ(−CR=NH、ここでRとして、水素、C〜C24アルキル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等が挙げられるが、これらに限定されない)、C〜C20アルキルイミノ(−CR=N(アルキル)、ここでRとして、水素、C〜C24アルキル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等が挙げられるが、これらに限定されない)、アリールイミノ(−CR=N(アリール)、ここでRとして、水素、C〜C20アルキル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等が挙げられるが、これらに限定されない)、ニトロ(−NO)、ニトロソ(−NO)、スルホ(−SO−OH)、スルホナト(−SO−O)、C〜C24アルキルスルファニル(−S−アルキル;「アルキルチオ」とも呼ばれる)、C〜C24アリールスルファニル(−S−アリール;「アリールチオ」とも呼ばれる)、C〜C24アルキルスルフィニル(−(SO)−アルキル)、C〜C24アリールスルフィニル(−(SO)−アリール)、C〜C24アルキルスルホニル(−SO−アルキル)、C〜C24モノアルキルアミノスルホニル(−SO−N(H)アルキル)、C〜C24ジアルキルアミノスルホニル(−SO−N(アルキル))、C〜C24アリールスルホニル(−SO−アリール)、ボリル(−BH)、ボロノ(−B(OH))、ボロナト(−B(OR)、ここでRとして、アルキル又は他のヒドロカルビルが挙げられるが、これらに限定されない)、ホスホノ(−P(O)(OH))、ホスホナト(−P(O)(O)、ホスフィナト(−P(O)(O))、ホスホ(−PO)及びホスフィノ(−PH);並びにヒドロカルビル部分であるC〜C24アルキル(好ましくはC〜C12アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル)、C〜C24アルケニル(好ましくはC〜C12アルケニル、より好ましくはC〜Cアルケニル)、C〜C24アルキニル(好ましくはC〜C12アルキニル、より好ましくはC〜Cアルキニル)、C〜C24アリール(好ましくはC〜C14アリール)、C〜C24アルカリール(好ましくはC〜C16アルカリール)、及びC〜C24アラルキル(好ましくはC〜C16アラルキル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
「官能化ヒドロカルビル」、「官能化アルキル」、「官能化オレフィン」、「官能化環状オレフィン」等に見られる「官能化」は、ヒドロカルビル、アルキル、オレフィン、環状オレフィン又は他の部分において、炭素(又は他の)原子に結合している少なくとも1つの水素原子が、本明細書で先に記載したものなどの1つ又は複数の官能基で置き換えられていることを意味する。用語「官能基」は、本明細書に記載の使用に適した任意の官能性の種を含むことを意味する。特に、本明細書で使用される場合、官能基は、基材表面上の対応する官能基と反応又は結合する能力を、必ず有しているはずである。
【0092】
さらに、前述の官能基は、特定の基が可能であれば、具体的に先に列挙したものなどの1つ若しくは複数の追加の官能基、又は1つ若しくは複数のヒドロカルビル部分でさらに置換されていてもよい。同様に、前述のヒドロカルビル部分は、前述の通り、1つ若しくは複数の官能基、又は追加のヒドロカルビル部分でさらに置換されていてもよい。
【0093】
「任意選択の」又は「任意選択により」は、その後に記載の状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、したがってこの説明は、その状況が生じる場合と、生じない場合を含む。例えば、句「任意選択により置換されている」は、非水素置換基が、所与の原子上に存在しても存在しなくてもよいことを意味し、したがってこの説明は、非水素置換基が存在する構造と、非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0094】
用語「基材材料」は、一般に、本明細書で使用される場合、本発明の樹脂組成物又は本発明のROMP組成物(例えば、重合可能な組成物)が、樹脂に組み込まれる基材材料と接触し、その基材材料に適用され、又はその基材材料を有することができる、任意の材料を意味することを意図する。このような材料として、強化材料、例えばフィラメント、繊維、粗紡、マット、織物、生地、ニット材料、布地又は他の公知の構造、ガラス繊維及び生地、炭素繊維及び生地、アラミド繊維及び生地、並びにポリオレフィン又は他のポリマー繊維又は生地が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な基材材料として、金属密度調節剤、微粒子密度調節剤、例えば微粒子、及びマクロ粒子(macroparticulate)密度調節剤、例えばガラス又はセラミックビーズが挙げられる。
【0095】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「反応性配合物」、「重合可能な組成物」及び「ROMP組成物」は、同じ意味を有しており、本明細書では交換可能に使用される。
【0096】
単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒によって触媒された少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物のROMP反応、又は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物によって触媒された少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物のROMP反応に関して、用語「ROMP反応の開始」は、一般に重合中、ゲル化直前に生じる、樹脂組成物の粘度上昇を指す。オレフィンメタセシス重合の進行は、反応が液体モノマー状態からゲル化状態に進行するときの粘度上昇を測定することによって、安価に好都合にモニタすることができる。
【0097】
また、オレフィンメタセシス重合の進行は、メタセシス反応がモノマーから硬化状態に進行するときの温度上昇を測定することによって、安価に好都合にモニタすることができる。一般に、発熱プロファイルの測定は好都合であり、この測定により、硬化挙動が理解され、いつ硬化状態が達成されるかが理解される。発熱ピーク温度は、樹脂又はROMP組成物が重合中に達する最大温度であり、重合反応の完全性に関係し得る。ある場合には、より低い発熱ピーク温度は、重合が不完全であることを示し得る。しかし、樹脂若しくはROMP組成物が発熱しないこと、或いは発熱ピーク温度が低下若しくは抑制され、又は発熱し始める時間が遅延することが望ましい場合があることに留意することが重要である。例えば、非金属工具又は成形型、例えば複合工具又は成形型を使用してポリマー物品又はポリマー複合体を成型する場合、樹脂又はROMP組成物は、発熱せず、又は低い発熱ピーク温度を有し、又は発熱し始めるまでの時間が遅延することが有利であり、又は望ましい場合がある。
【0098】
用語「可使時間」及び「ゲル時間」は、一般に、交換可能に使用される。ゲル時間を決定するのに有用な様々な技術及び装置が、当技術分野で知られており、本発明で利用することができる。例えば、ゲル時間及び可使時間を含めたゲル挙動は、実施例に記載の通り粘度計を使用して、又は他の適切な技術によって、安価に好都合に決定することができる。多くの場合、流動性(pourability)又は弾性などの特性の質的な観測によってゲル時間を推定することが好都合であり、それで事足りる。このような技術では、決定されるゲル時間を必ず増大できなければならず、したがって本発明の状況では、(i)単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わされた環状オレフィン樹脂組成物と、(ii)少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と組み合わされた環状オレフィン樹脂組成物、との間のゲル時間の差異を決定することができる。当業者は、実際のゲル時間の測定が、利用される装置及び技術、並びに評価される組成物の種類に応じて決まり得ることを理解されよう。しかし本発明の状況では、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物の使用によって達成される、ゲル時間の相対的な増大又は短縮の決定は、ゲル時間を決定するために利用される特定の技術又は装置の影響を受けるべきではない。
【0099】
また当業者は、「機能時間」(又は「機能可能な可使時間」)(”working time”(or ”workable pot life”))が、異なるROMP組成物及び特定のROMP組成物ごとに変わり得、利用される用途又は装置に応じても変わり得ることを理解されよう。典型的に、機能時間は、重合開始(例えば、粘度が上昇し始めるとき)までの時間を超えるが、発熱時間よりも短い。
【0100】
用語「硬質ポリマーゲル」は、本明細書で使用される場合、Albuquerque Industrial Inc.製の硬度計(Model HP−10F−M)を使用して測定される場合、1〜70の範囲、好ましくは5〜60の範囲、より好ましくは10〜50の範囲の硬度計の硬度を有するポリマーゲルを意味することを意図する。
【0101】
ROMP反応の重合の制御
一般に、本発明と共に使用するための金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、任意の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒から選択することができる。好ましくは、本発明と共に使用するための金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、本明細書に開示のルテニウム又はオスミウム金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいずれかから選択することができる。
【0102】
理論に拘泥するものではないが、先に論じた通り、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の配位子環境は、ROMP反応における環状オレフィンモノマーの重合特性(例えば、開始速度、成長(propagation)速度、重合速度、開始速度定数(k)、成長速度定数(k)、開始速度定数/成長速度定数の比(k/k比)、粘度上昇速度、粘度30cPに達するまでの時間、硬質ポリマーゲルになるまでの時間、ピーク発熱温度に達するまでの時間等)に影響を及ぼし得ることが知られている。
【0103】
例えば、表1に示されている通り、第2世代Grubbs触媒として一般に公知のものでは、ベンジリデン部分を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、ジメチルビニルアルキリデン部分を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒よりも開始速度が速いが、遷移金属(例えば、ルテニウム)に結合している残りの配位子は、同じである。さらに、表1に示されている通り、フェニルインデニリデン部分を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、ジメチルビニルアルキリデン部分を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒よりも開始速度が緩慢であるが、遷移金属(例えば、ルテニウム)に結合している残りの配位子は、同じである。つまり、表1に示されている通り、開始速度は、ベンジリデン>ジメチルビニルアルキリデン>フェニルインデニリデンの順序で低下する。
【0104】
表1のさらなる試験では、第三級ホスフィン配位子構造が、第2世代Grubbs触媒の開始速度に対して効果を及ぼすが、遷移金属(例えば、ルテニウム)に結合している残りの配位子は同じであることも実証される。つまり、表1に示されている通り、開始速度は、第三級ホスフィン構造の関数として、PPh>PMePh>PCy>PEtPh>P(n−Bu)の順序で低下する。
【表1】
【0105】
驚くべきことに、本発明者らは、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の重合特性(例えば、開始速度、成長速度、重合速度、開始速度定数(k)、成長速度定数(k)、開始速度定数/成長速度定数の比(k/k比)、粘度上昇速度、粘度30cPに達するまでの時間、硬質ポリマーゲルになるまでの時間、ピーク発熱温度に達するまでの時間等)の1つ又は複数を使用して、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を形成することができ、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物と組み合わせて、ROMP組成物を形成することができ、ROMP組成物を使用すると、従来技術のROMP組成物を用いて調製された同じポリマー物品と比較して、改善された特性を有するポリマー物品を調製し得ることを発見した。
【0106】
より具体的には、本発明者らは、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物と組み合わせてROMP組成物を形成することによって、ROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間を発熱時間に対して独立に制御できることを発見した。その後、この硬質ポリマーゲルを、外部エネルギー源を加えること(例えば、成形型表面の加熱及び/又は後硬化ステップ)によって、及び/又は内部エネルギー(例えば、ROMP中の開環によって生じた反応の発熱の形態)によって、硬化することができる。
【0107】
さらに、本発明者らは、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含むROMP組成物によって、成型される物品の様々な領域又は部分が発熱し始める前に、成型される物品の様々な領域又は部分が、硬質ポリマーゲルを均一に形成し、それによって液体環状オレフィンモノマーの揮発を低減及び/又は排除することができ、それによって、成型物品における欠陥が低減及び/又は排除されることを発見した。
【0108】
さらに本発明者らは、同じ成型条件下で、同じ環状オレフィン樹脂組成物を使用すると、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の代わりに少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を使用した場合、物品を製造するのに必要な時間が短縮されることを発見した。この時間短縮(サイクル時間の短縮)は、環状オレフィン樹脂のROMPにおいて、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の代わりに少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を使用する場合、同じ時間内でより多くの物品を製造できるという経済的利点をもたらす。
【0109】
本発明の触媒組成物に使用するための個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を選択する前、及び本発明の触媒組成物を調製する前に、配位子環境を調査し、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の重合特性(例えば、開始速度、成長速度、重合速度、開始速度定数(k)、成長速度定数(k)、開始速度定数/成長速度定数の比(k/k比)、粘度上昇速度、粘度30cPに達するまでの時間、硬質ポリマーゲルになるまでの時間、ピーク発熱温度に達するまでの時間等)の1つ又は複数を測定することが重要である。本発明の触媒組成物の調製に使用するための個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を分類し、選択するための方法を、以下に論じる。
【0110】
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物
本発明の触媒組成物に使用するための個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を選択する場合、典型的に、オレフィンメタセシス反応(例えば、環状オレフィンのROMP)において類似していない活性/挙動を有する個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が選択される。しかし、本発明の触媒組成物に使用するための個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が選択され得る前に、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、まず、同一条件下でオレフィンメタセシス反応(例えば、環状オレフィンのROMP)におけるそれらの活性/挙動に基づいて、異なる群に分類されなければならない。
【0111】
本発明の触媒組成物に使用される個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を分類するために、種々の基準を使用することができる。このような基準として、環状オレフィン樹脂と組み合わせた場合の、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒によって示される重合特性の1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定されず、重合特性として、開始速度、成長速度、重合速度、開始速度定数(k)、成長速度定数(k)、開始速度定数/成長速度定数の比(k/k比)、粘度上昇速度、粘度30cPに達するまでの時間、硬質ポリマーゲルになるまでの時間、ピーク発熱温度に達するまでの時間等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
例えば、本発明の触媒組成物に使用する個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を分類するために使用できる基準の1つは、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒で触媒される環状オレフィン樹脂が、一定温度で測定可能な粘度に達するのに必要な時間である。本明細書の表5に示す通り、下記の、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒と組み合わせた場合の樹脂組成物Aが、下記の方法に従って30℃で30cPの粘度に達するのに必要な時間に基づいて、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を、高速、中速、又は低速開始剤と分類した。この基準及び方法を使用して、30℃において粘度30cPに達するまでの時間が1分未満の個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を高速開始剤と分類し、30℃において粘度30cPに達するまでの時間が1分超であり10分未満の個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を中速開始剤と分類し、30℃において粘度30cPに達するまでの時間が10分超の個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を低速開始剤と分類した。本明細書で表1に示され、及び/又は表5に列挙されている通り、この基準及び方法を使用して、モノマーと触媒の比が、DCPDモノマー100グラム当たり触媒懸濁液2グラムで45,000:1であった個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を、(i)高速開始剤C627、C831、C848、C747、(ii)中速開始剤C827、C713、C869、及び(iii)低速開始剤C771、C835、C871と分類した。さらに、本明細書で表1に示され、及び/又は表5に列挙されている通り、この基準及び方法を使用して、モノマーと触媒の比が、DCPDモノマー100グラム当たり触媒懸濁液2グラムで15,000:1であった個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を、(i)高速開始剤C747、C848、C827、(ii)中速開始剤C713、C771、及び(iii)低速開始剤C835、C871と分類した。さらに、本明細書で表1に示され、及び/又は表5に列挙されている通り、この基準及び方法を使用して、モノマーと触媒の比が、DCPDモノマー100グラム当たり触媒懸濁液2グラムで90,000:1であった個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を、(i)高速開始剤C747、(ii)中速開始剤C848、C827、C713、及び(iii)低速開始剤C771、C835、C871と分類した。
【0113】
個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を高速、中速、又は低速開始剤と分類すると、次にこの情報を使用して、本発明のオレフィンメタセシス触媒組成物(すなわち、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物)を調製することができる。
【0114】
先に論じた通り、本発明の利益を認識するために、触媒組成物に使用される個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、オレフィンメタセシス反応(例えば、ROMP)において同一条件下で類似していない活性/挙動(例えば、粘度30cPに達するまでの時間、開始速度定数(k)等)を有するべきである。
【0115】
2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいくつかの異なる組合せを有することができ、各金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、高速開始剤、中速開始剤、又は低速開始剤と分類される。最も広範な解釈に従って、これらの高速、中速及び低速の分類を使用すると、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、6つまでの異なる全般的な組合せ、(i)高速−高速、(ii)高速−中速、(iii)高速−低速、(iv)中速−中速、(v)中速−低速、及び(vi)低速−低速を有することができる。好ましい一実施形態では、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、高速開始剤と分類される第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、及び中速開始剤と分類される第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む。別の好ましい実施形態では、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、高速開始剤と分類される第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、及び低速開始剤と分類される第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む。別の好ましい実施形態では、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、中速開始剤と分類される第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、及び低速開始剤と分類される第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む。
【0116】
理論に拘泥するものではないが、一般に、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、高速開始剤と分類される触媒)と第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、低速開始剤と分類される触媒)の間で、相対的な開始速度又は粘度30cPに達するまでの時間に大きい差異がある場合、一般に、本発明の利益(例えば、ROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間をピーク発熱時間に対して独立に制御できること、成型物品の欠陥を低減及び/又は排除できること、ROMP中の液体環状オレフィンモノマーの揮発を低減及び/又は排除できること等)は、高濃度の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、低速開始剤と分類される触媒)及び低濃度の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、高速開始剤と分類される触媒)を有することによって認識され得る。この実験的支持は、以下の表6(例26、30、31、32、35、39)に提示される。
【0117】
理論に拘泥するものではないが、比較として、一般に2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、中速開始剤と分類される触媒)と第2のオレフィンメタセシス触媒(すなわち、高速開始剤又は低速開始剤と分類される触媒)の間で、相対的な開始速度又は粘度30cPに達するまでの時間がより類似している場合、一般に、本発明の利益は、(i)等濃度の第1及び第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の両方を有すること、又は(ii)高濃度の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、低速開始剤と分類される触媒)及び低濃度の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、中速開始剤と分類される触媒)を有すること、又は(iii)高濃度の第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、中速開始剤と分類される触媒)及び低濃度の第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(すなわち、高速開始剤と分類される触媒)を有することによって認識され得る。この実験的支持は、以下の表6(例27、28、34、37、38、40、41、42、58、60、63)に提示される。
【0118】
一般に、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、モノマーと触媒のモル比(「モノマーと触媒の比」)として表す場合、触媒負荷量は、一般に、全体的なモノマーと触媒の比(「全体のモノマーと触媒の比」)と示され、全体的なモノマーと触媒の比は、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のモノマーと触媒の比、及び第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のモノマーと触媒の比の合計である。全体的な触媒負荷量(全体的なモノマーと触媒の比)は、一般に、約10,000,000:1〜約1,000:1、好ましくは約1,000,000:1〜5,000:1、より好ましくは約500,000:1〜10,000:1、さらにより好ましくは約250,000:1〜20,000:1の範囲の量で存在する。
【0119】
一例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、45,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、45,409:1〜49,451:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0120】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、45,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜90,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、45,685:1〜90,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0121】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、45,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、1,000,000:1〜90,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、47,120:1〜90,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0122】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、15,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、15,045:1〜15,464:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0123】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、15,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜30,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、15,075:1〜30,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0124】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、15,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、1,000,000:1〜30,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、15,228:1〜30,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0125】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、90,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、91,650:1〜109,756:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0126】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、90,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜180,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、92,784:1〜180,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0127】
別の例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、90,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、1,000,000:1〜180,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、98,901:1〜180,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0128】
3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいくつかの異なる組合せを有することができ、各金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、高速開始剤、中速開始剤、又は低速開始剤と分類される。最も広範な解釈に従って、これらの高速、中速及び低速の分類を使用すると、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、10までの異なる全般的な組合せ、(i)高速−高速−高速、(ii)高速−中速−高速、(iii)高速−低速−高速、(iv)中速−高速−中速、(v)中速−中速−中速、(vi)中速−低速−中速、(vii)低速−高速−低速、(viii)低速−中速−低速、(ix)低速−低速−低速、及び(x)高速−中速−低速を有することができる。好ましい一実施形態では、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、高速開始剤である第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、中速開始剤である第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、及び低速開始剤である第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む。
【0129】
一般に、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、モノマーと触媒のモル比(「モノマーと触媒の比」)として表す場合、触媒負荷量は、一般に、全体的なモノマーと触媒の比(「全体のモノマーと触媒の比」)と示され、全体的なモノマーと触媒の比は、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のモノマーと触媒の比、及び第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のモノマーと触媒の比、及び第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のモノマーと触媒の比の合計である。全体的な触媒負荷量(全体的なモノマーと触媒の比)は、一般に、約10,000,000:1〜約1,000:1、好ましくは約1,000,000:1〜5,000:1、より好ましくは約500,000:1〜10,000:1、さらにより好ましくは約250,000:1〜20,000:1の範囲の量で存在する。
【0130】
一例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、45,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜100,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、46,107:1〜97,826:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0131】
一例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物について、15,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜100,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、15,121:1〜18,293:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0132】
一例として、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が高速開始剤と分類され、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が中速開始剤と分類され、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が低速開始剤と分類される、3種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィン触媒組成物について、90,000:1の全体的なモノマーと触媒の比では、第1の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、5,000,000:1〜500,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第2の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、3,000,000:1〜220,000:1の量(モノマーと触媒の比)で存在し、第3の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に、94,538:1〜219,027:1の量(モノマーと触媒の比)で存在する。
【0133】
本発明はまた、4つ以上の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を包含し、個々の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいくつかの異なる組合せを有することができ、各金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、高速開始剤、中速開始剤、又は低速開始剤と分類される。
【0134】
環状オレフィン
本発明と共に使用できる本明細書に開示の樹脂組成物は、1つ又は複数の環状オレフィンを含む。一般に、本明細書に開示の任意のメタセシス反応に適した環状オレフィンを使用することができる。このような環状オレフィンは、任意選択により置換されており、任意選択によりヘテロ原子を含有する、一不飽和、二不飽和又は多不飽和C〜C24炭化水素であり得、これは単環式、二環式又は多環式であってもよい。環状オレフィンは、一般に、個々に又はROMP環状オレフィン組成物の一部としてROMP反応に関与することができるという条件で、歪みを有する又は歪みを有していないいかなる環状オレフィンであってもよい。シクロヘキセンなどの歪みを有していない特定の環状オレフィンは、一般に、これら自体、ROMP反応を受けないと理解されているが、それにも関わらず、このような歪みを有していない環状オレフィンは、適切な環境下では、ROMPに対して活性になり得る。例えば、歪みを有していない環状オレフィンは、ROMP組成物にコモノマーとして存在する場合、ROMPに対して活性であり得る。したがって、用語「歪みを有していない環状オレフィン」は、本明細書で使用される場合、当業者に理解され得る通り、歪みを有していない環状オレフィンがROMPに対して活性であるという条件で、いかなる条件下又はいかなるROMP組成物においてもROMP反応を受け得るような、歪みを有していない環状オレフィンを指すことを意図する。
【0135】
一般に、環状オレフィンは、式(A)の構造によって表すことができ、
【化1】

式中、J、RA1及びRA2は、以下の通りである:
A1及びRA2は、独立に、水素、ヒドロカルビル(例えば、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C30アラルキル又はC〜C30アルカリール)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C30アラルキル又はC〜C30アルカリール)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C〜C20ヘテロアルキル、C〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C30アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C30アルカリール)、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C30アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C30アルカリール)からなる群から選択され、置換ヒドロカルビル又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合、置換基は、ホスホナト、ホスホリル、ホスファニル、ホスフィノ、スルホナト、C〜C20アルキルスルファニル、C〜C20アリールスルファニル、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アリールスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニル、C〜C20アリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシラト、メルカプト、ホルミル、C〜C20チオエステル、シアノ、シアナト、チオシアナト、イソシアナート、チオイソシアナート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロナト、ボリル、又はハロゲン又は金属含有若しくは半金属含有基(金属は、例えばSn又はGeであり得る)などの官能基(「Fn」)であってもよい。RA1及びRA2は、それ自体が前述の基の1つであってもよく、したがって、Fn部分は、構造内に示されているオレフィンの炭素原子に直接的に結合している。しかし、後者の場合、官能基は、一般に、1つ若しくは複数の孤立電子対を含有するヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素若しくはリン原子を介して、又は電子に富んだ金属若しくは半金属、例えばGe、Sn、As、Sb、Se、Te等を介しては、オレフィンの炭素に直接的に結合しない。このような官能基を用いると、普通は、介在する連結Zが存在し、したがって、RA1及び/又はRA2は、構造−(Z−Fnを有する(nは1であり、Fnは官能基であり、Zは、ヒドロカルビレン連結基、例えばアルキレン、置換アルキレン、ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルケン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、又は置換ヘテロアリーレン連結である)。
Jは、飽和若しくは不飽和のヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン連結であり、Jが、置換ヒドロカルビレン又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンである場合、置換基は、1つ又は複数の−(Z−Fn基(nは、0又は1であり、Fn及びZは、既に定義されている通りである)を含むことができる。さらに、J内の環の炭素(又は他の)原子に結合している2つ以上の置換基は、連結して、二環式又は多環式オレフィンを形成することができる。Jは、一般に、単環式オレフィンでは、およそ5〜14個の範囲の環原子、典型的に5〜8個の範囲の環原子を含有し、二環式及び多環式オレフィンでは、各環は、一般に4〜8個、典型的に5〜7個の環原子を含有する。
【0136】
構造(A)によって包含される一不飽和の環状オレフィンは、構造(B)によって表すことができる
【化2】

式中、bは、一般に、必ずではないが、1〜10、典型的に1〜5の範囲の整数であり、RA1及びRA2は、構造(A)について先に定義されている通りであり、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル及び−(Z−Fn(n、Z及びFnは、既に定義されている通りである)からなる群から選択され、RB1〜RB6部分のいずれかが、置換ヒドロカルビル又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合、置換基は、1つ又は複数の−(Z−Fn基を含むことができる。したがって、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6は、例えば、水素、ヒドロキシル、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アリールオキシカルボニル、アミノ、アミド、ニトロ等であり得る。さらに、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6部分のいずれかは、他のRB1、RB2、RB3、RB4、RB5及びRB6部分のいずれかに連結して、4〜30個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換アリール基、又はこれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。脂環式基は、単環式、二環式又は多環式であってもよい。環式基は、不飽和である場合、一不飽和又は多不飽和を含有することができ、一不飽和の環式基が好ましい。環は、置換されている場合、一置換又は多置換を含有し、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(nは、0又は1であり、Z及びFnは、既に定義されている通りであり、官能基(Fn)は先に提示されている)から選択される。
【0137】
構造(B)によって包含される一不飽和の単環式オレフィンの例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン及びシクロエイコセン、並びにそれらが置換されたもの、例えば1−メチルシクロペンテン、1−エチルシクロペンテン、1−イソプロピルシクロヘキセン、1−クロロペンテン、1−フルオロシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、4−メトキシ−シクロペンテン、4−エトキシ−シクロペンテン、シクロペンタ−3−エン−チオール、シクロペンタ−3−エン、4−メチルスルファニル−シクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロオクテン、1,5−ジメチルシクロオクテン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
構造(A)によって包含される単環式ジエン反応物は、一般に、構造(C)によって表すことができる
【化3】

式中、c及びdは、独立に、1〜約8、典型的に2〜4の範囲の整数、好ましくは2(したがって、反応物はシクロオクタジエンである)であり、RA1及びRA2は、構造(A)について先に定義されている通りであり、RC1、RC2、RC3、RC4、RC5及びRC6は、RB1〜RB6について定義されている。この場合、RC3及びRC4は非水素置換基であることが好ましく、この場合、第2のオレフィン部分は四置換されている。単環式ジエン反応物の例として、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、及びこれらの置換類似体が挙げられるが、これらに限定されない。トリエン反応物は、ジエン構造(C)に類似しており、一般に、任意の2つのオレフィンセグメントの間に少なくとも1つのメチレン連結を含有する。
【0139】
構造(A)によって包含される二環式及び多環式オレフィンは、一般に、構造(D)によって表すことができる
【化4】

式中、RA1及びRA2は、構造(A)について先に定義されている通りであり、RD1、RD2、RD3及びRD4は、RB1〜RB6について定義されている通りであり、eは、1〜8(典型的に2〜4)の範囲の整数であり、fは、一般に1又は2であり、Tは、低級アルキレン又はアルケニレン(一般に、置換又は非置換のメチル又はエチル)、CHRG1、C(RG1、O、S、N−RG1、P−RG1、O=P−RG1、Si(RG1、B−RG1、又はAs−RG1(RG1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル、又はアルコキシである)である。さらに、RD1、RD2、RD3及びRD4部分のいずれかは、他のRD1、RD2、RD3及びRD4部分のいずれかに連結して、4〜30個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換アリール基、又はこれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。環式基は、単環式、二環式又は多環式であってもよい。環式基は、不飽和である場合、一不飽和又は多不飽和を含有することができ、一不飽和の環式基が好ましい。環は、置換されている場合、一置換又は多置換を含有し、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(nは、0又は1であり、Z及びFnは、既に定義されている通りであり、官能基(Fn)は先に提示されている)から選択される。
【0140】
構造(D)によって包含される環状オレフィンは、ノルボルネンファミリーのものである。本明細書で使用される場合、ノルボルネンは、限定されるものではないが、ノルボルネン、置換ノルボルネン(単数又は複数)、ノルボルナジエン、置換ノルボルナジエン(単数又は複数)、多環式ノルボルネン、及び置換多環式ノルボルネン(単数又は複数)を含めた、少なくとも1つのノルボルネン又は置換ノルボルネン部分を含む任意の化合物を意味する。この群に含まれるノルボルネンは、一般に、構造(E)によって表すことができる
【化5】

式中、RA1及びRA2は、構造(A)について先に定義されている通りであり、Tは、構造(D)について先に定義されている通りであり、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7及びRE8は、RB1〜RB6について定義されている通りであり、「a」は、単結合又は二重結合を表し、fは、一般に1又は2であり、「g」は、0〜5の整数であり、「a」が二重結合である場合、RE5、RE6の1つ及びRE7、RE8の1つは、存在しない。
【0141】
さらに、RE5、RE6、RE7及びRE8部分のいずれかは、他のRE5、RE6、RE7及びRE8部分のいずれかに連結して、4〜30個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換アリール基、又はこれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。環式基は、単環式、二環式又は多環式であってもよい。環式基は、不飽和である場合、一不飽和又は多不飽和を含有することができ、一不飽和の環式基が好ましい。環は、置換されている場合、一置換又は多置換を含有し、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(nは、0又は1であり、Z及びFnは、既に定義されている通りであり、官能基(Fn)は先に提示されている)から選択される。
【0142】
少なくとも1つのノルボルネン部分を有する、より好ましい環状オレフィンは、構造(F)を有する:
【化6】

式中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、RB1〜RB6について定義されている通りであり、「a」は、単結合又は二重結合を表し、「g」は、0〜5の整数であり、「a」が二重結合である場合、RF1、RF2の1つ及びRF3、RF4の1つは、存在しない。
【0143】
さらに、RF1、RF2、RF3及びRF4部分のいずれかは、他のRF1、RF2、RF3及びRF4部分のいずれかに連結して、4〜30個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換脂環式基、又は6〜18個の環炭素原子を含有する置換若しくは非置換アリール基、又はこれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子又は官能基を含むことができ、例えば連結は、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又は無水物部分を含むことができるが、これらに限定されない。脂環式基は、単環式、二環式又は多環式であってもよい。環式基は、不飽和である場合、一不飽和又は多不飽和を含有することができ、一不飽和の環式基が好ましい。環は、置換されている場合、一置換又は多置換を含有し、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、−(Z−Fn(nは、0又は1であり、Z及びFnは、既に定義されている通りであり、官能基(Fn)は先に提示されている)から選択される。
【0144】
ヒドロカルビルで置換された及び機能的に置換されたノルボルネンの調製のためのある経路では、ディールス−アルダー環化付加反応を用い、ここでシクロペンタジエン又は置換シクロペンタジエンは、適切な求ジエン体と高温で反応して、一般に以下の反応スキーム1に示されている置換ノルボルネン付加物を形成する:
【化7】

式中、RF1〜RF4は、構造(F)について既に定義されている通りである。
【0145】
他のノルボルネン付加物は、適切な求ジエン体の存在下で、ジシクロペンタジエンの熱分解によって調製することができる。反応は、ジシクロペンタジエンがシクロペンタジエンに最初に熱分解することによって進行し、その後、シクロペンタジエン及び求ジエン体のディールス−アルダー環化付加が生じて、スキーム2に示されている付加物が得られる:
【化8】

式中、「g」は、0〜5の整数であり、RF1〜RF4は、構造(F)について既に定義されている通りである。
【0146】
ノルボルナジエン及びその高次ディールス−アルダー付加物も同様に、スキーム3に示されている通り、アセチレン反応物の存在下、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンの熱反応によって調製することができる:
【化9】

式中、「g」は、0〜5の整数であり、RF1〜RF4は、構造(F)について既に定義されている通りである。
【0147】
したがって、二環式及び多環式オレフィンの例として、限定されるものではないが、ジシクロペンタジエン(DCPD);限定されるものではないが、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエン三量体)、シクロペンタジエン四量体、及びシクロペンタジエン五量体;エチリデンノルボルネン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン;5−エチル−2−ノルボルネン;5−イソブチル−2−ノルボルネン;5,6−ジメチル−2−ノルボルネン;5−フェニルノルボルネン;5−ベンジルノルボルネン;5−アセチルノルボルネン;5−メトキシカルボニルノルボルネン;5−エチオキシカルボニル−1−ノルボルネン;5−メチル−5−メトキシ−カルボニルノルボルネン;5−シアノノルボルネン;5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン;シクロヘキセニルノルボルネン;endo,exo−5,6−ジメトキシノルボルネン;endo,endo−5,6−ジメトキシノルボルネン;endo,exo−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン;endo,endo−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3−ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8−メチルテトラシクロドデセン;8−エチルテトラシクロドデセン;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8−メチル−8−テトラシクロドデセン;8−シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセン等を含めたシクロペンタジエンの三量体及び他の高次オリゴマー、並びにこれらの構造異性体、立体異性体、及びこれらの混合物が挙げられる。二環式及び多環式オレフィンのさらなる例として、C〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−ドデシル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、及び5−ブテニル−2−ノルボルネン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
好ましい環状オレフィンには、C〜C24不飽和炭化水素が含まれる。О、N、S又はPなどの1つ又は複数(典型的に2〜12)のヘテロ原子を含有するC〜C24環式炭化水素も好ましい。例えば、クラウンエーテル環状オレフィンは、環のあらゆる場所に数々のOヘテロ原子を含むことができ、こうしたオレフィンは、本発明の範囲に含まれる。さらに、好ましい環状オレフィンは、1つ又は複数(典型的に2又は3)のオレフィンを含有するC〜C24炭化水素である。例えば、環状オレフィンは、一不飽和、二不飽和又は三不飽和であり得る。環状オレフィンの例として、シクロオクテン、シクロドデセン、及び(c,t,t)−1,5,9−シクロドデカトリエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
環状オレフィンはまた、複数(典型的に2又は3)の環を含むこともできる。例えば、環状オレフィンは、単環系、二環系又は三環系であり得る。環状オレフィンが2つ以上の環を含む場合、環は、縮合していても縮合していなくてもよい。複数の環を含む環状オレフィンの好ましい例として、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。
【0150】
環状オレフィンはまた、置換されていてもよく、例えば水素の1つ又は複数(典型的に2、3、4又は5)が非水素置換基で置き換えられているC〜C24環式炭化水素であり得る。適切な非水素置換基は、本明細書で先に記載した置換基から選択することができる。例えば、水素の1つ又は複数(典型的に2、3、4又は5)が官能基で置き換えられている官能化環状オレフィン、すなわちC〜C24環式炭化水素は、本発明の範囲に含まれる。適切な官能基は、本明細書で先に記載した官能基から選択することができる。例えば、アルコール基で官能化された環状オレフィンを使用して、ペンダントアルコール基を含む、両端に官能基を有する(telechelic)ポリマーを調製することができる。環状オレフィン上の官能基は、官能基がメタセシス触媒を妨害する場合に保護することができ、当技術分野で一般に使用される保護基のいずれかを用いることができる。許容される保護基は、例えばGreeneら、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、第3版(New York:Wiley、1999年)に見出すことができる。官能化環状オレフィンの例として、2−ヒドロキシメチル−5−ノルボルネン、2−[(2−ヒドロキシエチル)カルボキシラート]−5−ノルボルネン、シデカノール(cydecanol)、5−n−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−n−ブチル−2−ノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
前述の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組合せを組み込んだ環状オレフィンは、本明細書に開示の方法に適している。さらに、前述の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組合せを組み込んだ環状オレフィンは、本明細書に開示の本発明に適している。
【0152】
本明細書に開示の方法において有用な環状オレフィンは、歪みを有していても、歪みを有していなくてもよい。環の歪みの量は、環状オレフィン化合物ごとに変わり、環の大きさ、置換基の存在及び識別、並びに複数の環の存在を含めたいくつかの要因に応じて決まることを理解されよう。環の歪みは、開環オレフィンメタセシス反応に向かう分子の反応性を決定する1つの要因である。高度に歪みを有する環状オレフィン、例えば特定の二環式化合物は、オレフィンメタセシス触媒により、容易に開環反応を受ける。歪みの少ない環状オレフィン、例えば特定の非置換炭化水素単環式オレフィンは、一般に反応性が低い。ある場合には、相対的に歪みを有していない(したがって相対的に非反応性の)環状オレフィンの開環反応は、本明細書に開示のオレフィン化合物の存在下で実施されると、生じることが可能になる。さらに、本発明において有用な本明細書に開示の環状オレフィンは、歪みを有していても、歪みを有していなくてもよい。
【0153】
本発明の樹脂組成物は、複数の環状オレフィンを含むことができる。複数の環状オレフィンを使用して、オレフィン化合物からメタセシスポリマーを調製することができる。例えば、本明細書で先に記載した環状オレフィンから選択された2つの環状オレフィンは、両方の環状オレフィンを組み込むメタセシス生成物を形成するために用いることができる。2つ以上の環状オレフィンが使用される場合、第2の環状オレフィンの一例は、環状アルケノール、すなわちC〜C24環式炭化水素であり、ここで、水素置換基の少なくとも1つを、アルコール又は保護されたアルコール部分で置き換えると、官能化環状オレフィンが得られる。
【0154】
複数の環状オレフィンを使用すると、特に環状オレフィンの少なくとも1つが官能化される場合、生成物内の官能基の位置決めをさらに制御することができる。例えば、架橋点の密度は、本明細書に開示の方法を使用して調製したポリマー及びマクロモノマーにおいて制御され得る。また、置換基及び官能基の量及び密度を制御することによって、生成物の物理的特性(例えば、融点、引張強度、ガラス転移温度等)を制御することができる。これら及び他の特性の制御は、単一の環状オレフィンだけを使用する反応で可能であるが、複数の環状オレフィンを使用することによって、形成可能なメタセシス生成物及びポリマーの範囲がさらに拡大することを理解されよう。
【0155】
より好ましい環状オレフィンとして、ジシクロペンタジエン;トリシクロペンタジエン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン;5−エチル−2−ノルボルネン;5−イソブチル−2−ノルボルネン;5,6−ジメチル−2−ノルボルネン;5−フェニルノルボルネン;5−ベンジルノルボルネン;5−アセチルノルボルネン;5−メトキシカルボニルノルボルネン;5−エトキシカルボニル−1−ノルボルネン;5−メチル−5−メトキシ−カルボニルノルボルネン;5−シアノノルボルネン;5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン;シクロヘキセニルノルボルネン;endo,exo−5,6−ジメトキシノルボルネン;endo,endo−5,6−ジメトキシノルボルネン;endo,exo−5−6−ジメトキシカルボニルノルボルネン;endo,endo−5,6−ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3−ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8−メチルテトラシクロドデセン;8−エチル−テトラシクロドデセン;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8−メチル−8−テトラシクロ−ドデセン;8−シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセン;シクロペンタジエンの高次オリゴマー、例えばシクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体等;並びにC〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5−ブチル−2−ノルボルネン;5−ヘキシル−2−ノルボルネン;5−オクチル−2−ノルボルネン;5−デシル−2−ノルボルネン;5−ドデシル−2−ノルボルネン;5−ビニル−2−ノルボルネン;5−エチリデン−2−ノルボルネン;5−イソプロペニル−2−ノルボルネン;5−プロペニル−2−ノルボルネン;及び5−ブテニル−2−ノルボルネン等が挙げられる。さらにより好ましい環状オレフィンとして、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、及びシクロペンタジエンの高次オリゴマー、例えばシクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体等、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、並びにC〜C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−ドデシル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−ブテニル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0156】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒
本発明で使用できる本明細書に開示の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、好ましくは、式(I)の構造を有する第8族遷移金属錯体である
【化10】

式中、
Mは、第8族遷移金属であり、
、L及びLは、中性電子供与体配位子であり、
nは、0又は1であり、したがってLは存在しても存在しなくてもよく、
mは、0、1又は2であり、
kは、0又は1であり、
及びXは、アニオン性配位子であり、
及びRは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
、X、L、L、L、R及びRの任意の2つ以上は、一緒になって、1つ又は複数の環式基を形成することができ、さらにX、X、L、L、L、R及びRの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい。
【0157】
さらに、式(I)において、R及びRの一方又は両方は、構造−(W)−Uを有することができ、ここで、Wは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンから選択され、Uは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルで置換されている正電荷の第15族又は第16族の元素であり、Vは、負電荷の対イオンであり、nは0又は1である。さらに、R及びRは、一緒になって、インデニリデン部分を形成することができる。
【0158】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、第8族遷移金属としてRu又はOsを含有し、Ruが特に好ましい。
【0159】
本明細書に開示の反応において有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の数々の実施形態を、以下により詳細に記載する。便宜上、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、群で記載されるが、これらの群は、いかなる方式でも限定的であることを意味しないことが強調されるべきである。すなわち、本発明において有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいずれも、本明細書に記載の群の2つ以上の説明に該当し得る。
【0160】
次に、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群は、一般に、第1世代Grubbsタイプの触媒と呼ばれ、式(I)の構造を有する。金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群では、Mは、第8族遷移金属であり、mは、0、1又は2であり、n、X、X、L、L、L、R及びRは、下記の通りである。
【0161】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群では、nは0であり、L及びLは、独立に、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル(環状エーテルを含む)、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、置換ピリジン、イミダゾール、置換イミダゾール、ピラジン、置換ピラジン及びチオエーテルから選択される。例示的な配位子は、三置換ホスフィンである。好ましい三置換ホスフィンは、式PRH1H2H3を有し、ここでRH1、RH2及びRH3は、それぞれ独立に、置換又は非置換アリール又はC〜C10アルキル、特に第一級アルキル、第二級アルキル又はシクロアルキルである。最も好ましくは、L及びLは、独立に、トリメチルホスフィン(PMe)、トリエチルホスフィン(PEt)、トリ−n−ブチルホスフィン(PBu)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン(P−o−トリル)、トリ−tert−ブチルホスフィン(P−tert−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(Pシクロペンチル)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリオクチルホスフィン(POct)、トリイソブチルホスフィン、(P−i−Bu)、トリフェニルホスフィン(PPh)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン(P(C)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される。或いはL及びLは、独立に、ホスファビシクロアルカン(例えば、一置換9−ホスファビシクロ−[3.3.1]ノナン又は一置換9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン]、例えばシクロヘキシルフォバン、イソプロピルフォバン、エチルフォバン、メチルフォバン、ブチルフォバン、ペンチルフォバン等)から選択することができる。
【0162】
及びXは、アニオン性配位子であり、同じでも異なっていてもよく、又は一緒になって連結して、環式基、典型的に、必ずではないが5〜8員の環を形成する。好ましい実施形態では、X及びXは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン化物、又は以下の基の1つである。C〜C20アルキル、C〜C24アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C24アリールオキシカルボニル、C〜C24アシル、C〜C24アシルオキシ、C〜C20アルキルスルホナト、C〜C24アリールスルホナト、C〜C20アルキルスルファニル、C〜C24アリールスルファニル、C〜C20アルキルスルフィニル、NO、−N=C=O、−N=C=S、又はC〜C24アリールスルフィニル。任意選択により、X及びXは、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C24アリール、及びハロゲン化物から選択される1つ又は複数の部分で置換されていてもよく、これらは、ハロゲン化物を除いて、ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ及びフェニルから選択される1つ又は複数の基でさらに置換されていてもよい。より好ましい実施形態では、X及びXは、ハロゲン化物、ベンゾアート、C〜Cアシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキル、フェノキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルスルファニル、アリール、又はC〜Cアルキルスルホニルである。さらにより好ましい実施形態では、X及びXは、それぞれ、ハロゲン化物、CFCO、CHCO、CFHCO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO、MeO、EtO、トシラート、メシラート、又はトリフルオロメタン−スルホナートである。最も好ましい実施形態では、X及びXは、それぞれ塩化物である。
【0163】
及びRは、独立に、水素、ヒドロカルビル(例えば、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、ヘテロ原子含有C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等)、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換ヘテロ原子含有C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、C〜C24アラルキル等)、並びに官能基から選択される。R及びRはまた、連結して環式基を形成することができ、この環式基は、脂肪族又は芳香族であり得、置換基及び/又はヘテロ原子を含有することができる。一般に、このような環式基は、4〜12個、好ましくは5、6、7又は8個の環原子を含有する。
【0164】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒では、Rは水素であり、Rは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル及びC〜C24アリール、より好ましくはC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル及びC〜C14アリールから選択される。さらにより好ましくは、Rは、フェニル、ビニル、メチル、イソプロピル又はt−ブチルであり、これらは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、及び本明細書で先に定義されている官能基Fnから選択される1つ又は複数の部分で、任意選択により置換されている。最も好ましくは、Rは、メチル、エチル、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、ニトロ、ジメチルアミノ、メチル、メトキシ、及びフェニルから選択される1つ又は複数の部分で置換されているフェニル又はビニルである。最適には、Rは、フェニル又は−CH=C(CHである。
【0165】
、X、L、L、L、R及びRの任意の2つ以上(典型的に2、3又は4つ)は、例えば開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,312,940号に開示されている通り、一緒になって、二座又は多座配位子を含む環式基を形成することができる。X、X、L、L、L、R及びRのいずれかが連結して環式基を形成する場合、そのような環式基は、4〜12個、好ましくは4、5、6、7若しくは8個の原子を含有することができ、又は縮合若しくは連結し得るような環の2つ又は3つを含み得る。環式基は、脂肪族又は芳香族であり得、ヘテロ原子を含有していてもよく、及び/又は置換されていてもよい。環式基は、場合によって、二座配位子又は三座配位子を形成することができる。二座配位子の例として、ビスホスフィン、ジアルコキシド、アルキルジケトナート、及びアリールジケトナートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
一般に第2世代Grubbsタイプの触媒と呼ばれる、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の群は、式(I)の構造を有し、ここで、Lは、式(II)の構造を有するカルベン配位子であり、
【化11】

したがって、錯体は、式(III)の構造を有することができる
【化12】

式中、M、m、n、X、X、L、L、R及びRは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群について定義されている通りであり、残りの置換基は、以下の通りである;
X及びYは、典型的に、N、O、S及びPから選択されるヘテロ原子である。O及びSは二価なので、XがO又はSである場合、pは必然的に0であり、YがO又はSである場合、qは必然的に0であり、kは0又は1である。しかし、XがN又はPである場合、pは1であり、YがN又はPである場合、qは1である。好ましい一実施形態では、X及びYの両方は、Nであり、
、Q、Q及びQは、リンカー、例えばヒドロカルビレン(置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、例えば置換されている、及び/又はヘテロ原子含有アルキレンを含む)又は−(CO)−であり、w、x、y及びzは、独立に、0又は1であり、このことは、各リンカーが任意選択であることを意味する。好ましくは、w、x、y及びzは、すべて0である。さらに、Q、Q、Q及びQ内の隣接する原子上の2つ以上の置換基は、連結して、追加の環式基を形成することができ、
、R3A、R及びR4Aは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから選択される。さらに、X及びYは、独立に、炭素及び前述のヘテロ原子の1つから選択することができ、好ましくはX又はYのわずか一方が炭素である。また、L及びLは、一緒になって、単一の二価の(bindentate)電子供与性の複素環式配位子を形成することができる。さらに、R及びRは、一緒になって、インデニリデン部分を形成することができる。さらに、X、X、L、L、X及びYは、ホウ素又はカルボキシラートにさらに配位され得る。
【0167】
さらに、X、X、L、L、L、R、R、R、R3A、R、R4A、Q、Q、Q及びQの任意の2つ以上は、一緒になって、環式基を形成することができ、X、X、L、L、Q、Q、Q、Q、R、R、R、R3A、R及びR4Aの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい。X、X、L、L、L、R、R、R、R3A、R及びR4Aの任意の2つ以上は、−A−Fnになることもでき、ここで「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される二価の炭化水素部分であり、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は非置換であってもよく、アリールアルキレンのアリール部分は、置換又は非置換であり得、ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは、官能基であり、又は一緒になって環式基を形成し、X、X、L、L、Q、Q、Q、Q、R、R、R、R3A、R及びR4Aの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい。
【0168】
3A及びR4Aが連結して環式基を形成し、X若しくはYの少なくとも1つが窒素であり、又はQ若しくはQの少なくとも1つが、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン若しくは置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンであり、少なくとも1つのヘテロ原子が窒素である、式(II)の構造を有する特定のクラスのカルベン配位子は、一般に、N−複素環式カルベン(NHC)配位子と呼ばれる。
【0169】
好ましくは、R3A及びR4Aは、連結して環式基を形成し、したがってカルベン配位子は、式(IV)の構造を有する
【化13】

式中、R及びRは、先の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第2の群について定義されている通りであり、好ましくはR及びRの少なくとも1つ、より好ましくはR及びRの両方は、1〜約5個の環の脂環式又は芳香族であり、任意選択により1つ又は複数のヘテロ原子及び/又は置換基を含有する。Qは、リンカー、典型的に置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンリンカーを含むヒドロカルビレンリンカーであり、Q内の隣接する原子上の2つ以上の置換基はまた、連結して、追加の環式構造を形成することができ、この環式構造は、同様に置換されて、2〜約5個の環式基の縮合多環式構造を提供することができる。Qは、しばしば、必ずではないが、2つの原子による連結又は3つの原子による連結である。
【0170】
したがって、Lとして適したN−複素環式カルベン(NHC)配位子及び非環式ジアミノカルベン配位子の例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない。式中、DIPP又はDiPPは、ジイソプロピルフェニルであり、Mesは、2,4,6−トリメチルフェニルである:
【化14】
【0171】
したがって、Lとして適したN−複素環式カルベン(NHC)配位子及び非環式ジアミノカルベン配位子のさらなる例として、
【化15】

が挙げられるが、これらに限定されない[式中、RW1、RW2、RW3、RW4は、独立に、水素、非置換ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、又はヘテロ原子含有ヒドロカルビルであり、RW3及びRW4の一方又は両方は、独立に、ハロゲン、ニトロ、アミド、カルボキシル、アルコキシ、アリールオキシ、スルホニル、カルボニル、チオ、又はニトロソ基から選択され得る]。
【0172】
として適したN−複素環式カルベン(NHC)配位子のさらなる例は、米国特許第7,378,528号、同第7,652,145号、同第7,294,717号、同第6,787,620号、同第6,635,768号及び同第6,552,139号にさらに記載されており、それぞれの内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0173】
さらに、内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,838,489号に開示の熱活性化N−複素環式カルベン前駆体も、本発明と共に使用することができる。
【0174】
Mがルテニウムである場合、好ましい錯体は、式(V)の構造を有する。
【化16】
【0175】
より好ましい実施形態では、Qは、構造−CR1112−CR1314−又は−CR11=CR13−、好ましくは−CR1112−CR1314−を有する2つの原子による連結であり、ここで、R11、R12、R13及びR14は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択される。ここで官能基の例として、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C14アリール、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ホルミル、及びハロゲン化物から選択される1つ又は複数の部分で任意選択により置換されている、カルボキシル、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C24アルコキシカルボニル、C〜C24アシルオキシ、C〜C20アルキルチオ、C〜C24アリールチオ、C〜C20アルキルスルホニル、及びC〜C20アルキルスルフィニルが挙げられるが、これらに限定されない。R11、R12、R13及びR14は、好ましくは独立に、水素、C〜C12アルキル、置換C〜C12アルキル、C〜C12ヘテロアルキル、置換C〜C12ヘテロアルキル、フェニル、及び置換フェニルから選択される。或いは、R11、R12、R13及びR14の任意の2つは、一緒になって連結して、置換又は非置換、飽和又は不飽和の環構造、例えばC〜C12脂環式基又はC若しくはCアリール基を形成することができ、これらは例えば、連結若しくは縮合している脂環式若しくは芳香族基で、又は他の置換基で、それ自体が置換されていてもよい。さらなる一態様では、R11、R12、R13及びR14の任意の1つ又は複数は、リンカーの1つ又は複数を含む。さらに、R及びRは、非置換フェニルであり、又はC〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24アリール、置換C〜C24アリール、C〜C24ヘテロアリール、C〜C24アラルキル、C〜C24アルカリール若しくはハロゲン化物から選択される1つ若しくは複数の置換基で置換されているフェニルであり得る。さらに、X及びXは、ハロゲンであってもよい。
【0176】
及びRが芳香族である場合、これらは典型的に、必ずではないが、置換されていても置換されていなくてもよい1つ又は2つの芳香環から構成され、例えばR及びRは、フェニル、置換フェニル、ビフェニル、置換ビフェニル等であり得る。好ましい一実施形態では、R及びRは同じであり、それぞれ、非置換フェニルであり、又はC〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24アリール、置換C〜C24アリール、C〜C24ヘテロアリール、C〜C24アラルキル、C〜C24アルカリール若しくはハロゲン化物から選択される3つまでの置換基で置換されているフェニルである。好ましくは、存在する任意の置換基は、水素、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C14アリール、置換C〜C14アリール、又はハロゲン化物である。一例として、R及びRは、メシチル(すなわち、本明細書で定義のMes)である。
【0177】
式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第3の群では、M、m、n、X、X、R及びRは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群について定義されている通りであり、Lは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1の群及び第2の群について記載したもののいずれかなどの、強力に配位する中性電子供与体配位子であり、L及びLは、任意選択により置換されている複素環式基の形態の、弱く配位する中性電子供与体配位子である。やはりnは0又は1であり、したがってLは、存在しても存在しなくてもよい。一般に、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第3の群では、L及びLは、1〜4個、好ましくは1〜3個、最も好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含有する、任意選択により置換されている5員若しくは6員の単環式基であり、又は2〜5員、例えば5員若しくは6員の単環式基から構成される、任意選択により置換されている二環式若しくは多環式構造である。複素環式基が置換されている場合、その複素環式基は、配位ヘテロ原子上で置換されるべきではなく、複素環式基内の任意の1つの環式部分は、一般に、3つを超える置換基で置換されない。
【0178】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第3の群では、L及びLの例として、限定されるものではないが、窒素、硫黄、酸素又はその混合物を含有する複素環が挙げられる。
【0179】
及びLに適した、窒素含有複素環の例として、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ビピリダミン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、ピロール、2H−ピロール、3H−ピロール、ピラゾール、2H−イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、インドール、3H−インドール、1H−イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、インダゾール、キノリン、ビスキノリン、イソキノリン、ビスイソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、イミダゾリジン、ピコリルイミン、プリン、ベンゾイミダゾール、ビスイミダゾール、フェナジン、アクリジン、及びカルバゾールが挙げられる。さらに、窒素含有複素環は、非配位ヘテロ原子上で、非水素置換基により任意選択により置換されていてもよい。
【0180】
及びLに適した、硫黄含有複素環の例として、チオフェン、1,2−ジチオール、1,3−ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、ベンゾ(c)チオフェン、チオナフテン、ジベンゾチオフェン、2H−チオピラン、4H−チオピラン、及びチオアントレンが挙げられる。
【0181】
及びLに適した、酸素含有複素環の例として、2H−ピラン、4H−ピラン、2−ピロン、4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン、オキセピン、フラン、2H−1−ベンゾピラン、クマリン、クマロン、クロメン、クロマン−4−オン、イソクロメン−1−オン、イソクロメン−3−オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及びジベンゾフランが挙げられる。
【0182】
及びLに適した、混合複素環の例として、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、3H−1,2,3−ジオキサゾール、3H−1,2−オキサチオール、1,3−オキサチオール、4H−1,2−オキサジン、2H−1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2,5−オキサチアジン、o−イソオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピラノ[3,4−b]ピロール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、アントラニル、及びモルホリンが挙げられる。
【0183】
好ましいL及びL配位子は、窒素含有及び酸素含有芳香族複素環であり、特に好ましいL及びL配位子は、1〜3個、好ましくは1又は2個の置換基で任意選択により置換されている、単環式N−ヘテロアリール配位子である。特に好ましいL及びL配位子の具体例は、ピリジン及び置換ピリジン、例えば3−ブロモピリジン、4−ブロモピリジン、3,5−ジブロモピリジン、2,4,6−トリブロモピリジン、2,6−ジブロモピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、3,5−ジクロロピリジン、2,4,6−トリクロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、4−ヨードピリジン、3,5−ジヨードピリジン、3,5−ジブロモ−4−メチルピリジン、3,5−ジクロロ−4−メチルピリジン、3,5−ジメチル−4−ブロモピリジン、3,5−ジメチルピリジン、4−メチルピリジン、3,5−ジイソプロピルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,4,6−トリイソプロピルピリジン、4−(tert−ブチル)ピリジン、4−フェニルピリジン、3,5−ジフェニルピリジン、3,5−ジクロロ−4−フェニルピリジン等である。
【0184】
一般に、L及び/又はL上に存在する任意の置換基は、ハロ、C〜C20アルキル、置換C〜C20アルキル、C〜C20ヘテロアルキル、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24アリール、置換C〜C24アリール、C〜C24ヘテロアリール、置換C〜C24ヘテロアリール、C〜C24アルカリール、置換C〜C24アルカリール、C〜C24ヘテロアルカリル、置換C〜C24ヘテロアルカリル、C〜C24アラルキル、置換C〜C24アラルキル、C〜C24ヘテロアラルキル、置換C〜C24ヘテロアラルキル、及び官能基から選択され、適切な官能基として、C〜C20アルコキシ、C〜C24アリールオキシ、C〜C20アルキルカルボニル、C〜C24アリールカルボニル、C〜C20アルキルカルボニルオキシ、C〜C24アリールカルボニルオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C24アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、C〜C20アルキルカルボナト、C〜C24アリールカルボナト、カルボキシ、カルボキシラト、カルバモイル、モノ−(C〜C20アルキル)置換カルバモイル、ジ−(C〜C20アルキル)置換カルバモイル、ジ−N−(C〜C20アルキル)、N−(C〜C24アリール)置換カルバモイル、モノ−(C〜C24アリール)置換カルバモイル、ジ−(C〜C24アリール)置換カルバモイル、チオカルバモイル、モノ−(C〜C20アルキル)置換チオカルバモイル、ジ−(C〜C20アルキル)置換チオカルバモイル、ジ−N−(C〜C20アルキル)−N−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル、モノ−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル、ジ−(C〜C24アリール)置換チオカルバモイル、カルバミド、ホルミル、チオホルミル、アミノ、モノ−(C〜C20アルキル)置換アミノ、ジ−(C〜C20アルキル)置換アミノ、モノ−(C〜C24アリール)置換アミノ、ジ−(C〜C24アリール)置換アミノ、ジ−N−(C〜C20アルキル)、N−(C〜C24アリール)置換アミノ、C〜C20アルキルアミド、C〜C24アリールアミド、イミノ、C〜C20アルキルイミノ、C〜C24アリールイミノ、ニトロ、及びニトロソが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、2つの隣接する置換基は、一緒になって、任意選択により1〜3個のヘテロ原子及び前述の1〜3個の置換基を含有する環、一般に5員又は6員の脂環式又はアリール環を形成することができる。
【0185】
及びL上の好ましい置換基として、ハロ、C〜C12アルキル、置換C〜C12アルキル、C〜C12ヘテロアルキル、置換C〜C12ヘテロアルキル、C〜C14アリール、置換C〜C14アリール、C〜C14ヘテロアリール、置換C〜C14ヘテロアリール、C〜C16アルカリール、置換C〜C16アルカリール、C〜C16ヘテロアルカリル、置換C〜C16ヘテロアルカリル、C〜C16アラルキル、置換C〜C16アラルキル、C〜C16ヘテロアラルキル、置換C〜C16ヘテロアラルキル、C〜C12アルコキシ、C〜C14アリールオキシ、C〜C12アルキルカルボニル、C〜C14アリールカルボニル、C〜C12アルキルカルボニルオキシ、C〜C14アリールカルボニルオキシ、C〜C12アルコキシカルボニル、C〜C14アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、アミノ、モノ−(C〜C12アルキル)置換アミノ、ジ−(C〜C12アルキル)置換アミノ、モノ−(C〜C14アリール)置換アミノ、ジ−(C〜C14アリール)置換アミノ、及びニトロが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
先の中でも、最も好ましい置換基は、ハロ、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、置換フェニル、ホルミル、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ、ニトロ、及び前述の窒素複素環(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリジン、ピリダジン等を含む)である。
【0187】
特定の実施形態では、L及びLは、一緒になって、2つ以上の、一般に2つの配位ヘテロ原子、例えばN、O、S又はPを含有する二座又は多座配位子を形成することもでき、このような好ましい配位子は、Brookhartタイプのジイミン配位子である。ある代表的な二座配位子は、式(VI)の構造を有する
【化17】

式中、R15、R16、R17及びR18は、ヒドロカルビル(例えば、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、又はC〜C24アラルキル)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C24アリール、C〜C24アルカリール、又はC〜C24アラルキル)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C24アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C24アルカリール)、若しくは置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C〜C20ヘテロアルキル、C〜C24ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C〜C24アラルキル、又はヘテロ原子含有C〜C24アルカリール)であり、又は(1)R15及びR16、(2)R17及びR18、(3)R16及びR17、若しくは(4)R15及びR16と、R17及びR18の両方は、一緒になって、環、すなわちN−複素環を形成することができる。このような場合の好ましい環式基は、5員及び6員環、典型的に芳香環である。
【0188】
式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第4の群では、置換基の2つは、一緒になって、二座配位子又は三座配位子を形成する。二座配位子の例として、ビスホスフィン、ジアルコキシド、アルキルジケトナート、及びアリールジケトナートが挙げられるが、これらに限定されない。具体例として、−P(Ph)CHCHP(Ph)−、−As(Ph)CHCHAs(Ph)−、−P(Ph)CHCHC(CFO−、ビナフトラート(binaphtholate)ジアニオン、ピナコラートジアニオン、−P(CH(CHP(CH−、及び−OC(CH(CHCO−が挙げられる。好ましい二座配位子は、−P(Ph)CHCHP(Ph)−及び−P(CH(CHP(CH−である。三座配位子として、(CHNCHCHP(Ph)CHCHN(CHが挙げられるが、これに限定されない。他の好ましい三座配位子は、X、X、L、L、L、R及びRのうちの任意の3つ(例えば、X、L及びL)が、一緒になって、シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルになるものであり、これらはそれぞれ、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C20アルキルスルホニル、又はC〜C20アルキルスルフィニルで任意選択により置換されており、これらのそれぞれは、C〜Cアルキル、ハロゲン化物、C〜Cアルコキシ又はフェニル基(ハロゲン化物、C〜Cアルキル、又はC〜Cアルコキシで任意選択により置換されている)でさらに置換されていてもよい。より好ましくは、この種類の化合物では、X、L及びLは、一緒になって、シクロペンタジエニル又はインデニルになり、これらはそれぞれ、ビニル、C〜C10アルキル、C〜C20アリール、C〜C10カルボキシラート、C〜C10アルコキシカルボニル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C20アリールオキシで任意選択により置換されており、これらはそれぞれ、C〜Cアルキル、ハロゲン化物、C〜Cアルコキシ又はフェニル基(ハロゲン化物、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシで任意選択により置換されている)で任意選択により置換されている。最も好ましくは、X、L及びLは、一緒になって、シクロペンタジエニルになることができ、これは、ビニル、水素、メチル又はフェニルで任意選択により置換されている。四座配位子として、OC(CHP(Ph)(CHP(Ph)(CHCO、フタロシアニン、及びポルフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
Yが金属に配位している錯体は、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第5の群の例であり、一般に、「Grubbs−Hoveyda」触媒と呼ばれる。Grubbs−Hoveydaメタセシスに対して活性な金属カルベン錯体は、式(VII)によって記載することができる
【化18】

式中、
Mは、第8族遷移金属、特にRu若しくはOsであり、又はより具体的には、Ruであり、
、X及びLは、金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について本明細書で既に定義されている通りであり、
Yは、N、O、S及びPから選択されるヘテロ原子であり、好ましくは、Yは、O又はNであり、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、ナイトラート、シアノ、イソシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスファート、ボラート、又は−A−Fnからなる群から選択され、ここで「A」及びFnは、先に定義されており、Y、Z、R、R、R及びRの任意の組合せが連結して、1つ又は複数の環式基を形成することができ、
nは、0、1又は2であり、したがって、二価のヘテロ原子O又はSでは、nは1であり、三価のヘテロ原子N又はPでは、nは2であり、
Zは、水素、アルキル、アリール、官能化アルキル、官能化アリールから選択される基であり、ここで官能基(単数又は複数)は、独立に、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、ニトラート、シアノ、イソシアナート、ヒドロキシル、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスファート、又はボラート;メチル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、ベンジル、フェニル及びトリメチルシリルの1つ又は複数であり得、X、X、L,Y、Z、R、R、R及びRの任意の1つ又は複数の組合せは、連結して担体になることができる。さらに、R、R、R、R及びZは、独立に、チオイソシアナート、シアナト又はチオシアナトであり得る。
【0190】
本発明に適したGrubbs−Hoveyda配位子を含む錯体(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)の例として、
【化19】

が挙げられ、式中、L、X、X及びMは、触媒の他の群のいずれかについて記載されている通りである。適切なキレート化カルベン及びカルベン前駆体は、Pedersonら(両方の開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,026,495号及び同第6,620,955号)及びHoveydaら(両方の開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,921,735号及び国際公開第02/14376号)によってさらに説明されている。
【0191】
他の有用な錯体(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)には、式(I)、(III)又は(V)によるL及びRが連結している構造、例えば担体に結合するための官能基を含むスチレン化合物も含まれる。官能基がトリアルコキシシリル官能化部分である例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
【化20】
【0192】
連結した配位子を有する錯体(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)のさらなる例として、中性NHC配位子とアニオン性配位子の間、中性NHC配位子とアルキリデン配位子の間、中性NHC配位子とL配位子の間、中性NHC配位子とL配位子の間、アニオン性配位子とアルキリデン配位子、及びこれらの任意の組合せの間に連結を有するものが挙げられる。本明細書に列挙するには、可能な構造が多すぎるが、式(III)に基づくいくつかの適切な構造として、
【化21】

が挙げられる。
【0193】
前述の式(I)の構造を有する金属カルベンオレフィンメタセシス触媒に加えて、他の遷移金属カルベン錯体(金属カルベンオレフィンメタセシス触媒)として、
形式的には+2の酸化状態にあり、電子数が16であり、五配位であり、一般式(IX)を有し、金属中心を含有している中性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、
形式的には+2の酸化状態にあり、電子数が18であり、六配位であり、一般式(X)を有し、金属中心を含有している中性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、
形式的には+2の酸化状態にあり、電子数が14であり、四配位であり、一般式(XI)を有し、金属中心を含有しているカチオン性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体、
形式的には+2の酸化状態にあり、電子数が14又は16であり、それぞれ四配位又は五配位であり、一般式(XII)を有し、金属中心を含有しているカチオン性ルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体
【化22】

[式中、
M、X、X、L、L、L、R及びRは、既に定義された金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の4つの群のいずれかについて定義されている通りであり、
r及びsは、独立に、0又は1であり、
tは、0〜5の範囲の整数であり、
kは、0〜1の範囲の整数であり、
Yは、任意の非配位アニオン(例えば、ハロゲン化物イオン、BF等)であり、
及びZは、独立に、−O−、−S−、−NR−、−PR−、−P(=O)R−、−P(OR)−、−P(=O)(OR)−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S(=O)−、−S(=O)−、並びに任意選択により置換されている及び/又は任意選択によりヘテロ原子を含有するC〜C20ヒドロカルビレン連結から選択され、
は、−P(R又は−N(Rなどの任意のカチオン部分であり、
、X、L、L、L、Z、Z、Z、R及びRの任意の2つ以上は、一緒になって、環式基、例えば多座配位子を形成することができ、X、X、L、L、L、Z、Z、Z、R及びRの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい]
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
さらに、本発明で使用できる本明細書に開示の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XIII)の構造を有する第8族遷移金属錯体である:
【化23】

式中、Mは、第8族遷移金属、特にルテニウム若しくはオスミウム、又はより具体的には、ルテニウムであり、
、X、L及びLは、先に定義されている金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2群について定義されている通りであり、
G1、RG2、RG3、RG4、RG5及びRG6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、ニトラート、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナト、チオシアナト、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスファート、ボラート又は−A−Fnからなる群から選択され、ここで「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される二価の炭化水素部分であり、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は非置換であってもよく、アリールアルキレンのアリール部分は、置換又は非置換であってもよく、ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは、官能基であり、又はRG1、RG2、RG3、RG4、RG5及びRG6の任意の1つ若しくは複数は、一緒になって連結して、環式基を形成することができ、又はRG1、RG2、RG3、RG4、RG5及びRG6の任意の1つ若しくは複数は、担体に結合していてもよい。
【0195】
さらに、式XIIIの第8族遷移金属錯体の好ましい一実施形態は、式(XIV)の第8族遷移金属錯体であり、
【化24】

式中、M、X、X、L及びLは、式XIIIの第8族遷移金属錯体について先に定義されている通りであり、
G7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16は、式XIIIの第8族遷移金属錯体のRG1、RG2、RG3、RG4、RG5及びRG6について先に定義されている通りであり、又はRG7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16の任意の1つ若しくは複数は、一緒になって連結して、環式基を形成することができ、又はRG7、RG8、RG9、RG10、RG11、RG12、RG13、RG14、RG15及びRG16の任意の1つ若しくは複数は、担体に結合していてもよい。
【0196】
さらに、式XIIIの第8族遷移金属錯体の別の好ましい実施形態は、式(XV)の第8族遷移金属錯体であり、
【化25】

式中、M、X、X、L及びLは、式XIIIの第8族遷移金属錯体について先に定義されている通りである。
【0197】
さらに、本発明で使用できる本明細書に開示の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XVI)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化26】

式中、Mは、第8族遷移金属、特にルテニウム若しくはオスミウム、又はより具体的には、ルテニウムであり、
及びLは、先に定義されている金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について定義されている通りであり、
Zは、酸素、硫黄、セレン、NRJ11、PRJ11、AsRJ11及びSbRJ11からなる群から選択され、
J1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10及びRJ11は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、ニトラート、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナト、チオシアナト、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスファート、ボラート又は−A−Fnからなる群から選択され、ここで「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される二価の炭化水素部分であり、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は非置換であってもよく、アリールアルキレンのアリール部分は、置換又は非置換であってもよく、ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは、官能基であり、又はRJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10及びRJ11の任意の1つ若しくは複数は、一緒になって連結して、環式基を形成することができ、又はRJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5、RJ6、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10及びRJ11の任意の1つ若しくは複数は、担体に結合していてもよい。
【0198】
さらに、式(XVI)の第8族遷移金属錯体の好ましい一実施形態は、式(XVII)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化27】

式中、M、X、L、Z、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10及びRJ11は、式XVIの第8族遷移金属錯体について先に定義されている通りであり、
J12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20及びRJ21は、式XVIの第8族遷移金属錯体のRJ1、RJ2、RJ3、RJ4、RJ5及びRJ6について先に定義されている通りであり、又はRJ7、RJ8、RJ9、RJ10、RJ11、RJ12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20及びRJ21の任意の1つ若しくは複数は、一緒になって連結して、環式基を形成することができ、又はRJ7、RJ8、RJ9、RJ10、RJ11、RJ12、RJ13、RJ14、RJ15、RJ16、RJ17、RJ18、RJ19、RJ20及びRJ21の任意の1つ若しくは複数は、担体に結合していてもよい。
【0199】
さらに、式(XVI)の第8族遷移金属錯体の別の好ましい実施形態は、式(XVIII)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化28】

式中、M、X、L、Z、RJ7、RJ8、RJ9、RJ10及びRJ11は、式(XVI)の第8族遷移金属錯体について先に定義されている通りである。
【0200】
さらに、本発明で使用できる本明細書に開示の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の別の群は、式(XIX)の構造を有するシッフ塩基配位子を含む第8族遷移金属錯体であり、
【化29】

式中、Mは、第8族遷移金属、特にルテニウム若しくはオスミウム、又はより具体的には、ルテニウムであり、
、L、R及びRは、先に定義されている金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の第1及び第2の群について定義されている通りであり、
Zは、酸素、硫黄、セレン、NRK5、PRK5、AsRK5及びSbRK5からなる群から選択され、
mは、0、1又は2であり、
K1、RK2、RK3、RK4及びRK5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロ原子含有アルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル、ニトリル、ニトロ、アルキルスルフィニル、トリハロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、ニトラート、シアノ、イソシアナート、チオイソシアナート、シアナト、チオシアナト、ヒドロキシル、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アルキルアミン、イミン、アミド、ハロゲン置換アミド、トリフルオロアミド、スルフィド、ジスルフィド、スルホナート、カルバマート、シラン、シロキサン、ホスフィン、ホスファート、ボラート又は−A−Fnからなる群から選択され、ここで「A」は、アルキレン及びアリールアルキレンから選択される二価の炭化水素部分であり、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和、環式又は非環式、及び置換又は非置換であってもよく、アリールアルキレンのアリール部分は、置換又は非置換であってもよく、ヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに存在することができ、Fnは、官能基であり、又はRK1、RK2、RK3、RK4及びRK5の任意の1つ若しくは複数は、一緒になって連結して、環式基を形成することができ、又はRK1、RK2、RK3、RK4及びRK5の任意の1つ若しくは複数は、担体に結合していてもよい。
【0201】
さらに、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、任意選択により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子の間の結合が少なくとも一部切断される活性化化合物と接触させることができ、この活性化化合物は、ハロゲン化銅(I);式Zn(RY1の亜鉛化合物(RY1は、ハロゲン、C〜Cアルキル又はアリールである);式SnRY2Y3Y4Y5によって表されるスズ化合物(RY2、RY3、RY4及びRY5のそれぞれは、独立に、ハロゲン、C〜C20アルキル、C〜C10シクロアルキル、アリール、ベンジル及びC〜Cアルケニルからなる群から選択される);及び式SiRY6Y7Y8Y9によって表されるケイ素化合物(RY6、RY7、RY8及びRY9のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、C〜C20アルキル、ハロ、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール及びビニルからなる群から選択される)からなる群から選択される金属又はケイ素化合物のいずれかである。さらに、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、任意選択により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子の間の結合が少なくとも一部切断される、無機酸、例えばヨウ化水素、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、硫酸、硝酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、HOClO、HOClO及びHOIOである活性化化合物と接触させることができる。さらに、式(XVI)〜(XIX)の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、任意選択により、第8族遷移金属と少なくとも1つのシッフ塩基配位子の間の結合が少なくとも一部切断される、有機酸、例えば限定されるものではないが、メタンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸及びトリフルオロメタンスルホン酸を含めたスルホン酸;限定されるものではないが、アセト酢酸、バルビツル酸、ブロモ酢酸、ブロモ安息香酸、クロロ酢酸、クロロ安息香酸、クロロフェノキシ酢酸、クロロプロピオン酸、cis−ケイ皮酸、シアノ酢酸、シアノ酪酸、シアノフェノキシ酢酸、シアノプロピオン酸、ジクロロ酢酸、ジクロロアセチル酢酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸、ジニコチン酸、ジフェニル酢酸、フルオロ安息香酸、ギ酸、フランカルボン酸、フル酸、グリコール酸、馬尿酸、ヨード酢酸、ヨード安息香酸、乳酸、ルチジン酸、マンデル酸、α−ナフトエ(naphtoic)酸、ニトロ安息香酸、ニトロフェニル酢酸、o−フェニル安息香酸、チオ酢酸、チオフェン−カルボン酸、トリクロロ酢酸、及びトリヒドロキシ安息香酸を含めたモノカルボン酸;並びに他の酸性物質、例えば限定されるものではないが、ピクリン酸及び尿酸である活性化化合物と接触させることができる。
【0202】
さらに、本発明と共に使用できる金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の他の例は、それぞれが参照によって本明細書に組み込まれる以下の開示に記載されている。米国特許第7,687,635号、同第7,671,224号、同第6,284,852号、同第6,486,279号、及び同第5,977,393号;国際公開第2010/037550号;並びに米国特許出願第12/303,615号、同第10/590,380号、同第11/465,651号(米国特許出願公開第2007/0043188号)及び同第11/465,651号(米国特許出願公開第2008/0293905号訂正公報);並びに欧州特許第1757613B1号及び同第1577282B1号。
【0203】
担持錯体の調製及び本明細書に開示の反応において使用できる金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の非限定的な例として、以下が挙げられ、それらのいくつかは、便宜上、本開示を通して分子量を参照することによって識別される:
【化30-1】

【化30-2】

【化30-3】

【化30-4】

【化30-5】
【0204】
先の分子構造及び式において、Phは、フェニルを表し、Cyは、シクロヘキシルを表し、Cpは、シクロペンチルを表し、Meは、メチルを表し、Buは、n−ブチルを表し、t−Buは、tert−ブチルを表し、i−Prは、イソプロピルを表し、pyは、ピリジン(N原子を介して配位)を表し、Mesは、メシチル(すなわち、2,4,6−トリメチルフェニル)を表し、DiPP及びDIPPは、2,6−ジイソプロピルフェニルを表し、MiPPは、2−イソプロピルフェニルを表す。
【0205】
担持錯体の調製及び本明細書に開示の反応において有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のさらなる例として、以下が挙げられる:ルテニウム(II)ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)(C716);ルテニウム(II)ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C801);ルテニウム(II)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C823);ルテニウム(II)(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)(トリフェニルホスフィン)(C830);ルテニウム(II)ジクロロ(フェニルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C835);ルテニウム(II)ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)(C601);ルテニウム(II)(1,3−ビス−(2、4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(3−ブロモピリジン)(C884);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)(C627);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C831);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C769);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C848);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C735);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C771);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C809);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C747);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C827);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C713);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C749);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C931);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C869);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C949);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C835);及び[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C871)。
【0206】
またさらに、ROMP反応及び/又は他のメタセシス反応、例えば閉環メタセシス、クロスメタセシス、開環クロスメタセシス、セルフメタセシス、エテノリシス、アルケノリシス、非環式ジエンメタセシス重合、及びこれらの組合せにおいて有用な金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、以下の構造を含む:
【化31-1】

【化31-2】
【0207】
一般に、本明細書において触媒として使用される遷移金属錯体は、それぞれの開示が参照によって本明細書に組み込まれるSchwabら(1996年)J.Am.Chem.Soc.118:100〜110、Schollら(1999年)Org.Lett.6:953〜956、Sanfordら(2001年)J.Am.Chem.Soc.123:749〜750、米国特許第5,312,940号、及び米国特許第5,342,909号に記載の方法などの、いくつかの異なる方法によって調製することができる。また、それぞれの開示が参照によって本明細書に組み込まれる、Grubbsらの米国特許出願公開第2003/0055262号、国際公開第02/079208号、及びGrubbsらの米国特許第6,613,910号も参照されたい。好ましい合成法は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、Grubbsらの国際公開第03/11455A1号に記載されている。
【0208】
好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、一般に「第1世代Grubbs」触媒と呼ばれる式(I)、一般に「第2世代Grubbs」触媒と呼ばれる式(III)、又は一般に「Grubbs−Hoveyda」触媒と呼ばれる式(VII)の構造を有する第8族遷移金属錯体である。
【0209】
より好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、式(I)
【化32】

[式中、
Mは、第8族遷移金属であり、
、L及びLは、中性電子供与体配位子であり、
nは、0又は1であり、
mは、0、1又は2であり、
kは、0又は1であり、
及びXは、アニオン性配位子であり、
及びRは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
、X、L、L、L、R及びRの任意の2つ以上は、一緒になって、1つ又は複数の環式基を形成することができ、さらに、X、X、L、L、L、R及びRの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい]、
及び式(VII)
【化33】

[式中、
Mは、第8族遷移金属であり、
は、中性電子供与体配位子であり、
及びXは、アニオン性配位子であり、
Yは、O又はNから選択されるヘテロ原子であり、
、R、R及びRは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
nは、0、1又は2であり、
Zは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
Y、Z、R、R、R及びRの任意の組合せは、連結して、1つ又は複数の環式基を形成することができ、さらに、X、X、L、Y、Z、R、R、R及びRの任意の組合せは、担体に結合していてもよい]
の構造を有している。
【0210】
最も好ましい金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、式(I)
【化34】

[式中、
Mは、ルテニウムであり、
nは、0であり、
mは、0であり、
kは、1であり、
及びLは、独立に、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、又はLは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、及び1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−複素環式カルベンであり、Lは、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、
及びXは、塩化物であり、
は、水素であり、Rは、フェニル若しくは−CH=C(CH若しくはチエニルであり、又はR及びRは、一緒になって、3−フェニル−1H−インデンを形成する]
及び式(VII)
【化35】

[式中、
Mは、ルテニウムであり、
は、トリ−n−ブチルホスフィン(Pn−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCp)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリフェニルホスフィン(PPh)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)からなる群から選択される三置換ホスフィンであり、又はLは、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン、及び1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデンからなる群から選択されるN−複素環式カルベンであり、
及びXは、塩化物であり、
Yは、酸素であり、
、R、R及びRは、それぞれ水素であり、
nは、1であり、
Zは、イソプロピルである]
の構造を有している。
【0211】
本明細書に記載の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒のいずれかに適した担体は、合成、半合成又は自然に存在する材料から生成されていてもよく、有機又は無機の、例えばポリマー、セラミック、又は金属性のものであり得る。担体との結合は、一般に、必ずではないが共有結合性であり、共有結合性連結は、直接的であってもよく間接的であってもよい。間接的な共有結合性連結は、典型的に、必ずではないが、担体表面上の官能基を介して生じる。カチオン基を含有している担体とカップリングした、金属錯体上の1つ若しくは複数のアニオン基の組合せ、又はアニオン基を含有している担体とカップリングした、金属錯体上の1つ若しくは複数のカチオン基の組合せを含めた、イオン結合も適している。
【0212】
適切な担体が利用される場合、担体は、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、酸化アルミニウム、シリカ−アルミナ、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、チタニア、二酸化チタン、マグネタイト、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、粘土、ジルコニア、二酸化ジルコニウム、炭素、ポリマー、セルロース、セルロースポリマーアミロース、アミロースポリマー、又はこれらの組合せから選択することができる。担体は、好ましくは、シリカ、ケイ酸塩又はこれらの組合せを含む。
【0213】
特定の実施形態では、官能基、不活性な部分、及び/又は過剰の配位子を含むように処理された担体を使用することも可能である。本明細書に記載の官能基のいずれも、担体上に組み込むのに適しており、一般に、当技術分野で公知の技術によって達成することができる。また、例えば担体に連結している錯体の配置又は量を制御するために、不活性な部分を担体上に組み込んで、一般に担体上の利用可能な結合部位を低減することができる。
【0214】
本明細書に記載の単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、及び少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、当技術分野で公知の技術に従って、オレフィンメタセシス反応で利用することができる。単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、又は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、典型的に、固体、溶液又は懸濁液として樹脂組成物に添加される。単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、又は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、懸濁液として樹脂組成物に添加される場合、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、又は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の混合物は、分散化キャリア、例えば鉱物油、パラフィン油、大豆油、トリ−イソプロピルベンゼン、又は触媒(単数又は複数)を有効に分散させるために十分に高い粘度を有し、十分に不活性であり、オレフィンメタセシス反応において低沸点の不純物として作用しないように十分に高い沸点を有する、任意の疎水性の液体に懸濁される。反応物に使用される触媒の量(すなわち、「触媒負荷量」又は「全体のモノマーと触媒の比」)は、様々な要因、例えば反応物の識別及び用いられる反応条件に依存して決まることを理解されよう。したがって、触媒負荷量又は「全体のモノマーと触媒の比」は、反応ごとに最適に、独立に選択され得ると理解される。
【0215】
接着促進剤
本明細書に開示されている本発明に使用することができる接着促進剤は、一般に、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物(例えば、メチレンジフェニルジイソシアナート及びヘキサメチレンジイソシアナートなど)である。接着促進剤は、ジイソシアナート、トリイソシアナート又はポリイソシアナート(すなわち、4つ以上のイソシアナート基を含有する)であり得る。接着促進剤は、少なくとも1つのジイソシアナート、トリイソシアナート又はポリイソシアナートの混合物である。本発明のより特定的な態様において、接着促進剤は、ジイソシアナート化合物若しくはジイソシアナート化合物の混合物を含む又はそれらに限定される。
【0216】
一般に、本発明に使用することができる接着促進剤は、少なくとも2つのイソシアナート基を有する任意の化合物であり得る。適切な接着促進剤には、限定されることなく、少なくとも2つのイソシアナート基を含むイソシアナート化合物が含まれ、化合物は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル及び官能化ヒドロカルビル化合物から選択される。上記に記載されたように、適切なヒドロカルビル接着促進剤化合物には、一般に、アルキル、シクロアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アルカリル及びアラルキル化合物が含まれる。置換ヘテロ原子含有及び官能化ヒドロカルビル接着促進剤化合物には、前述のヒドロカルビル化合物、並びに本明細書上記に示されたそれらの変形が含まれる。
【0217】
本発明に使用することができる接着促進剤は、アルキルジイソシアナートであり得る。アルキルジイソシアナートは、典型的には、必ずしも1〜約24個の炭素原子を含有するとは限らないが、直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和炭水化物基、好ましくは2〜約12個の炭素原子を含有するジイソシアナート、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、オクタメチレンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナートなどの6〜12個の炭素原子を含有するジイソシアナートを意味する。シクロアルキルジイソシアナートは、典型的には4〜16個の炭素原子を有する環状アルキル基を含有する。6〜約12個の炭素原子を含有する好ましいシクロアルキルジイソシアナートは、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシルなどである。より好ましいシクロアルキルジイソシアナートは、イソホロンジイソシアナート(IPDI)として一般的に知られている5−イソシアナト−1−(イソシアナトメチル)−1,3,3−トリメチル−シクロヘキサンと呼ばれるアセトンと、イソシアナト−[(イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)の異性体との縮合生成物として生じる。H12MDIは、アリールジイソシアナートメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)の水素化形態から誘導される。
【0218】
本発明に使用することができる接着促進剤は、アリールジイソシアナートであり得る。アリールジイソシアナートは、単一の芳香族環、或いは一緒に縮合している、直接的に連結している又は間接的に連結している(異なる芳香族環がメチレン若しくはエチレン部分などの共通の基に結合している)複数の芳香族環を含有する芳香族ジイソシアナートを意味する。好ましいアリールジイソシアナートは、5〜24個の炭素原子を含有し、特に好ましいアリールジイソシアナートは、5〜14個の炭素原子を含有する。例示的なアリールジイソシアナートは、1つの芳香族環又は2つの縮合若しくは連結芳香族環、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノンなどを含有する。好ましい芳香族ジイソシアナートには、トルエン、ジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)及びメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)が含まれ、その3つの異性体の2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIの任意の混合物を含みうる。
【0219】
本発明に使用することができる接着促進剤は、例えばジイソシアナートなどのイソシアナートを含有するポリマーであり得る。イソシアナートを含有するポリマーは、2つ以上の末端及び/又は側鎖アルキル若しくはアリールイソシアナート基を含有するポリマーを意味する。イソシアナートを含有するポリマーは、一般に、改善された機械的特性を提供するために、樹脂中において最小可溶性を有する必要がある。イソシアナートを含有する好ましいポリマーには、PM200(ポリMDI)、Lupranate(登録商標)(BASFからのポリMDI)、例えば、Krasol(登録商標)LBD2000(TDIに基づいたもの)、Krasol(登録商標)LBD3000(TDIに基づいたもの)、Krasol(登録商標)NN−22(MDIに基づいたもの)、Krasol(登録商標)NN−23(MDIに基づいたもの)、Krasol(登録商標)NN−25(MDIに基づいたもの)などのKrasol(登録商標)イソシアナート末端ポリブタジエンプレポリマーが含まれるが、これらに限定されない。Krasol(登録商標)イソシアナート末端ポリブタジエンプレポリマーはCray Valleyから入手可能である。
【0220】
本発明に使用することができる接着促進剤は、アルキルジイソシアナート及びアリールジイソシアナートの三量体であり得る。最も単純な形態では、ポリイソシアナート化合物の任意の組み合わせを三量体化して、イソシアナート官能基を含有するイソシアナート環を形成することができる。アルキルジイソシアナート及びアリールジイソシアナートの三量体を、アルキルジイソシアナート又はアリールジイソシアナートのイソシアヌラートと呼ぶこともできる。好ましいアルキルジイソシアナート及びアリールジイソシアナートの三量体には、ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt)、イソホロンジイソシアナート三量体、トルエンジイソシアナート三量体、テトラメチルキシレンジイソシアナート三量体、メチレンジフェニルジイソシアナート三量体などが含まれるが、これらに限定されない。より好ましい接着促進剤は、トルエンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート(TMXDI)、並びに3つの異性体の2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIの任意の混合物を含むメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI);液体MDI;固体DMI;ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt);ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI);イソホロンジイソシアナート(IPDI);4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI);ポリマーMDI(PM200);MDIプレポリマー(Lupranate(登録商標)5080);液体カルボジイミド変性4,4’−MDI(Lupranate(登録商標)MM103);液体MDI(Lupranate(登録商標)MI);液体MDI(Mondur(登録商標)ML);及び液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)である。さらにより好ましい接着促進剤は、3つの異性体の2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIの任意の混合物を含むメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI);液体MDI;固体DMI;ヘキサメチレンジイソシアナート三量体(HDIt);ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI);イソホロンジイソシアナート(IPDI);4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI);ポリマーMDI(PM200);MDIプレポリマー(Lupranate(登録商標)5080);液体カルボジイミド変性4,4’−MDI(Lupranate(登録商標)MM103);液体MDI(Lupranate(登録商標)MI);液体MDI(Mondur(登録商標)ML);液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)である。
【0221】
オレフィン複合体の機械的特性を改善する接着促進剤の任意の濃度が、本発明にとって十分である。一般に、接着促進剤の適切な量は、0.001〜50phr、特に0.05〜10phr、より特定的には0.1〜10phr、又はさらにより特定的には0.5〜4.0phrの範囲である。
【0222】
接着促進剤は、一般に、任意の基材材料との使用に適しており、接着促進剤の添加は、接着促進剤が含まれないことを除いて同じ樹脂組成物と比較して、基材材料への樹脂(例えば、ROMP)組成物の接着に有益な改善を提供する。1つの実施形態において、本発明は、任意の基材材料の使用を対象とし、そのような材料の表面は、少なくとも2つのイソシアナート基を有する接着促進剤と反応することができる。接着促進剤との使用に特に適した基材材料は、エポキシ及びメタクリラート樹脂との使用に適した、仕上剤又はサイズ剤を含有するものを含むガラス及び炭素材料表面であり、この場合、仕上剤又はサイズ剤を、接着促進剤が有効であるために除去する(例えば、洗浄又は熱清浄する)必要はない。他の適切な基材材料には、木材及びアルミニウム材料が含まれる。追加的に適する基材材料を、繊維、織物、微粒子、セラミック、金属、ポリマー及び半導体材料から選択することもできる。ポリマーマトリックス複合体(例えば、ROMPポリマーマトリックス複合体)は、1種の基材材料又は異なる基材材料の混合物を含むことができる。1つ以上の接着促進剤を本発明に使用することができる。
【0223】
本発明の使用に適した追加の接着促進剤は、式:Fn−(A)−Si(Yの官能化シランを含み、式中、Yは、ハロゲン化物(好ましくは、塩化物)又はORであり;Fnは、アクリラート、メタクリラート、アリル、ビニル、アルケン、シクロアルケン又はノルボルネンから選択される官能基であり;Aは、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンから選択される二価連結基であり;nは、0又は1であり、Rは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル又は置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、好ましくは低級アルキル、より好ましくはメチル、エチル又はイソプロピルから選択され、並びにジアルキル及びジアリールペルオキシドから選択されるペルオキシドである。
【0224】
本発明に使用される追加の接着促進剤及びそれらの使用方法には、国際特許出願PCT/US00/03002(その内容は、参照として本明細書に組み込まれる)に開示されているものが含まれる。
【0225】
ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物
ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物は、典型的には、ヒドロキシル、アミン、チオール、リン又はシラン官能基と共に、2〜20個の炭素を含有する。本明細書に開示されている本発明に使用することができるヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物は、一般に、官能基を含有する少なくとも1個のヘテロ原子及び少なくとも1つのメタセシス活性オレフィンを含有する化合物であり、以下の一般構造のものである。
(O)−(Q−(X)−H
式中、O、Q及びXは以下のとおりである。
は、環状オレフィン及び非環状オレフィンから選択されるメタセシス活性オレフィンフラグメントであり、炭素−炭素二重結合は、典型的には、四置換されておらず(例えば、少なくとも1つの置換基は、水素である);
は、例えばヒドロカルビレン(例えば、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、並びに置換及び/若しくはヘテロ原子含有アルキレンなどの置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンを含む)又は−(CO)−基などの、任意の連結基(例えば、n=0又は1)であり;
は、N(R)、P(R)、OP(R)、OP(R)O、OP(OR)O、P(=O)(R)、OP(=O)(R)、OP(=O)(R)O、OP(=O)(OR)O、Si(R、Si(RO、Si(ORO又はSi(R)(OR)Oなどの、酸素、硫黄又はヘテロ原子含有フラグメントであり、
各Rは、互いに独立して、水素又はさらなる官能基を場合により含むヒドロカルビル基である。各Rは、互いに独立して、最も一般的には水素、アリール又は低級アルキル基である。
【0226】
メタセシス活性オレフィンには、本明細書に記載されている環状オレフィンが含まれ、そのような環状オレフィンは、単、二又は多環式であり得る、場合より置換され、場合によりヘテロ原子を含有する、一不飽和、二不飽和又は多不飽和C〜C24炭化水素であり得る。環状オレフィンは、一般に、環状オレフィンが独立して又はROMP環状オレフィン組成物の一部としてROMP反応に関与することができる限り、任意の歪み又は非歪み環状オレフィンであり得る。メタセシス活性オレフィンには、非環状オレフィンも含まれ、そのような非環状オレフィンは、場合により置換されている、場合によりヘテロ原子を含有する、一不飽和、二不飽和又は多不飽和C〜C30炭化水素、典型的にはC〜C20炭化水素又はより典型的にはC〜C12炭化水素であり得る。非環状オレフィンは、1つ以上の末端オレフィン及び/若しくは1つ以上の内部オレフィン、並びに/又は末端オレフィン及び/若しくは内部オレフィンの任意の組み合わせを含有することができる。
【0227】
ヘテロ原子含有官能基において、Xは、一般的には酸素、硫黄又はNRであり、最も一般的には酸素であり、すなわち、ヒドロキシ置換オレフィンである。ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む好ましい化合物には、5−ノルボルネン−2−メタノール(NB−MeOH);2−ヒドロキシエチルビシクル[2.2.1]ヘプタ−2−エン−カルボキシラート(HENB);2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA);アリルアルコール;オレイルアルコール;9−デセン−1−オール;ビニルアルコール、アリルアルコール、シス−13−ドデセノール及びトランス−9−オクタデセノール、並びに他の不飽和アルコール、ノルボルニルアルコール、2−シクロオクテン−1−オール、2−シクロオクタジエン−1−オール及びp−ビニルフェノール、並びに脂環式構造を有する他のアルコール;2−ヒドロキシエチルメタクリラート;2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルメタクリラート、エトキシル化ヒドロキシエチルアクリラート、エトキシル化ヒドロキシエチルメタクリラート、ポリプロピレングリコールモノメタクリラート、ポリプロピレングリコールモノアクリラート、フェノールアクリラート、フェノールメタクリラート、ビスフェノールA型エポキシアクリラート、ノボラック型エポキシアクリラート及び臭素化ビスフェノールA型エポキシアクリラート、並びに1つ以上のメタクリル又はアクリル基及びヒドロキシル基を有する他のメタクリル酸又はアクリル酸などが含まれるが、これらに限定されない。
【0228】
さらに、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物を、環状オレフィン樹脂組成物に添加することができる。オレフィン複合体の機械的特性を改善する、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物の任意の濃度が、本発明にとって十分である。一般に、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物の適切な量は、0.001〜50phr、特に0.05〜10phr、より特定的には0.1〜10phr又はさらにより特定的には0.5〜4.0phrの範囲である。ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む1つ以上の化合物を、本発明に使用することができる。
【0229】
接着促進剤組成物
少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物を、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物と組み合わせ、予備反応させて、樹脂内保存安定性を有する接着促進剤組成物を提供し、改善された機械的特性を有するオレフィンメタセシス複合体を提供する。少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物の任意の濃度が、本発明に使用される接着促進剤組成物の調製に使用するために十分であり、予備反応混合物を形成するために使用される、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物のmol%又はmol当量は、予備反応混合物を形成するために使用される、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物のmol%又はmol当量よりも大きい。ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物とのモル比は、0.001:1〜0.90:1の範囲である。ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物との好ましいモル比は、0.01:1〜0.75:1、特に0.01:1〜0.5:1、より特定的には0.02:1〜0.25:1の範囲である。当業者は、ヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物と、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物との最適の比が、環状オレフィン樹脂組成物に添加される接着促進剤組成物の量の関数として調整される必要があり得ることを認識する。
【0230】
本明細書に開示されている本発明に使用することができる接着促進剤組成物は、一般に、上記に考察された少なくとも1種の接着促進剤(すなわち、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する少なくとも1つの化合物(例えば、メチレンジフェニルジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート))と、上記に考察されたヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む少なくとも1つの化合物(例えば、2−ヒドロキシエチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−カルボキシラート(HENB)、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、オレイルアルコール、9−デセン−1−オール)とを含む組成物であり、化合物は多様な比で組み合わされて、予備反応混合物を形成することができ、次に予備反応混合物は、続いて環状オレフィン樹脂組成物に添加され、接着促進剤組成物は、樹脂内保存安定性を有する。
【0231】
本発明に使用される接着促進剤組成物の調製に有用である、少なくとも2つのイソシアナート基を含有する化合物、並びにヘテロ原子含有官能基及びメタセシス活性オレフィンを含む化合物が、本明細書に開示されている。
【0232】
好ましい接着促進剤組成物には、液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)及び2−ヒドロキシエチルビシクル[2.2.1]ヘプタ−2−エン−カルボキシレート(HENB)の予備反応混合物;液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の予備反応混合物;液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)及びオレイルアルコールの予備反応混合物;並びに液体MDI(Mondur(登録商標)MLQ)及び9−デセン−1−オールの予備反応混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0233】
オレフィン複合体の機械的特性を改善する接着促進剤組成物の任意の濃度が、本発明にとって十分である。一般に、接着促進剤組成物の適切な量は、0.001〜50phr、特に0.05〜10phr、より特定的には0.1〜10phr又はさらにより特定的には0.5〜4.0phrの範囲である。
【0234】
接着促進剤組成物は、一般に、任意の基材材料との使用に適しており、接着促進剤組成物の添加は、接着促進剤組成物が含まれないことを除いて同じ樹脂組成物と比較して、基材材料への樹脂(例えば、ROMP)組成物の接着に有益な改善を提供する。1つの実施形態において、本発明は、任意の基材材料の使用を対象とし、そのような材料の表面は、接着促進剤組成物と反応することができる。接着促進剤組成物との使用に特に適した基材材料は、エポキシ及びメタクリラート樹脂との使用に適した、仕上剤又はサイズ剤を含有するものを含むガラス及び炭素材料表面であり、この場合、仕上剤又はサイズ剤を、接着促進剤組成物が有効であるために除去する(例えば、洗浄又は熱清浄する)必要はない。他の適切な基材材料には、木材及びアルミニウム材料が含まれる。追加的に適する基材材料を、繊維、織物、微粒子、セラミック、金属、ポリマー及び半導体材料から選択することもできる。ポリマーマトリックス複合体(例えば、ROMPポリマーマトリックス複合体)は、1種の基材材料又は異なる基材材料の混合物を含むことができる。
【0235】
樹脂組成物及び物品
本明細書に開示されている本発明に使用することができる樹脂組成物は、一般に、少なくとも1種の環状オレフィンを含む。本明細書上記に記載された環状オレフィンは、使用に適しており、官能化されていても、非官能化であってもよく、置換されていても、非置換であってもよい。加えて、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィンと、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物とを含むことができる。加えて、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィンを含むことができ、樹脂組成物は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と組み合わされる。別の実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィン及び外因性阻害剤(例えば、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ヒドロペルオキシド)を含むことができる。ここで、外因性(樹脂組成物に添加すること又は少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む触媒組成物と混合若しくは組み合わせることができる外部添加剤又は他の反応体を意味する)は、内在性(在来的であること又はカルベン触媒の遷移金属に結合している成分により確立されることを意味する)と区別される。本発明に使用される外因性阻害剤又は「ゲル変性添加剤」及びそれらの使用方法は、米国特許第5,939,504号に開示されており、その内容は、参照として本明細書に組み込まれる。米国特許第5,939,504号は、中性電子供与体又は中性ルイス塩基、好ましくはトリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンなどの、外因性「ゲル変性添加剤」又は外因性阻害剤の使用を開示する。外因性阻害剤として使用されるトリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンには、限定されることなく、トリメチルホスフィン(PMe)、トリエチルホスフィン(PEt)、トリ−n−ブチルホスフィン(PBu)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン(P−o−トリル)、トリ−tert−ブチルホスフィン(P−tert−Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(Pシクロペンチル)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P−i−Pr)、トリオクチルホスフィン(POct)、トリイソブチルホスフィン(P−i−Bu)、トリフェニルホスフィン(PPh)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン(P(C)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)及びジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)が含まれる。外因性阻害剤として使用される好ましいトリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンは、トリシクロヘキシルホスフィン及びトリフェニルホスフィンである。単一のトリアルキルホスフィン及び/又はトリアリールホスフィンを使用することができる又は2つ以上の異なるトリアルキルホスフィン及び/又はトリアリールホスフィンの組み合わせを使用することができる。別の実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィン及び接着促進剤を含むことができる。本発明に使用される接着促進剤及びそれらの使用方法には、上記に記述されたもの及び国際特許出願PCT/US2012/042850(その内容は参照として本明細書に組み込まれる)にさらに開示されているものが含まれる。別の実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィン及びヒドロペルオキシドゲル変性剤(外因性阻害剤)を含むことができる。本発明に使用されるヒドロペルオキシドゲル変性剤及びそれらの使用方法は、国際特許出願PCT/US2012/042850(その内容は、参照として本明細書に組み込まれる)に開示されている。国際特許出願PCT/US2012/042850は、クメンヒドロペルオキシドなどの外因性ヒドロペルオキシドゲル変性剤又は外因性阻害剤の使用を開示する。一般に、ヒドロペルオキシドは、ゲル状態の開始を遅延するのに有効な任意の有機ヒドロペルオキシドであり得るが、ヒドロペルオキシドは、典型的には、アルキル、例えばC〜C24アルキル、アリール、例えばC〜C24アリール、アラルキル又はアルカリル、例えば、C〜C24アルカリル、ヒドロペルオキシド、とりわけ第二級又は第三級の脂肪族又は芳香族ヒドロペルオキシドである。使用に適したより特定的なヒドロペルオキシドには、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、(2,5−ジヒドロペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、トリフェニルメチルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド(例えば、Glidox(登録商標)500;LyondellBasell)及びパラメンタンヒドロペルオキシド(例えば、Glidox(登録商標)300;LyondellBasell)が含まれる。より好ましくは、使用に適したヒドロペルオキシドには、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドが含まれる。ゲル変性添加剤を、溶媒の不在下で又は有機若しくは水性の溶液として反応混合物に添加することができる。単一のヒドロペルオキシド化合物を、ゲル変性添加剤として使用することができる又は2つ以上の異なるヒドロペルオキシド化合物の組み合わせを、使用することができる。
【0236】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の環状オレフィンと少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む組成物を提供する。
【0237】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、組成物を提供する。
【0238】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物を提供する。
【0239】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物を提供する。
【0240】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせ、組み合わせた組成物を、組み合わせた組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことによって、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物を重合する方法を提供する。
【0241】
別の実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、例えばガラス又は炭素基材材料などの少なくとも1種の基材材料を含むことができる。別の実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を含むことができる。
【0242】
本発明の樹脂組成物は、場合により添加物を用いて配合されうる。適切な配合剤には、ゲル変性剤、硬度調節剤、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、安定剤、充填剤、結合剤、カップリング剤、チオキトロープ、衝撃改質剤、エラストマー、湿潤剤、湿潤剤、殺生剤、可塑剤、顔料、難燃剤、染料、繊維、並びに仕上剤、被覆剤、カップリング剤、膜形成剤及び/又は潤滑剤で処理されたものなどの、サイズ強化剤及び基材を含む強化剤材料が含まれるが、これらに限定されない。さらに、樹脂組成物の存在する添加剤の量は、使用される特定の種類の添加剤に応じて変わりうる。樹脂組成物中の添加剤の濃度は、典型的には、例えば0.001〜85重量パーセント、特に0.1〜75重量パーセント又はさらにより特定的には2〜60重量パーセントの範囲である。
【0243】
適切な衝撃改質剤又はエラストマーには、限定されることなく、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックゴム、ランダムスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−スチレントリブロックゴム、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、エチレン−ビニルアセタート及びニトリルゴムが含まれる。好ましい衝撃改質剤又はエラストマーは、ポリブタジエンのDiene 55AC10(Firestone)、ポリブタジエンのDiene 55AM5(Firestone)、EPDM Royalene 301T、EPDM Buna T9650(Bayer)、スチレン−エチレン/ブテン−スチレンコポリマーのKraton G1651H、Polysar Butyl 301(Bayer)、ポリブタジエンのTaktene 710(Bayer)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのKraton G1726M、Ethylene−Octene Engage 8150(DuPont−Dow)、スチレン−ブタジエンのKraton D1184、EPDM Nordel 1070(DuPont−Dow)及びポリイソブチレンのVistanex MML−140(Exxon)である。そのような材料は、通常、約0.10phr〜10phrのレベルであるが、より好ましくは約0.1phr〜5phrのレベルで樹脂組成物に用いられる。多様な極性衝撃改質剤又はエラストマーを使用することもできる。
【0244】
本発明の樹脂組成物は、場合により、架橋剤、例えばジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド及びペルオキシ酸から選択される架橋剤を用いて又は用いることなく配合されうる。
【0245】
酸化防止剤及びオゾン分解防止剤には、ゴム及びプラスチック産業に使用される酸化防止剤又はオゾン分解防止剤が含まれる。「Index of Commercial Antioxidants and Antiozonants,第4版」は、Goodyear Chemicals,The Goodyear Tire and Rubber Company,Akron,Ohio 44316から入手可能である。適切な安定剤(すなわち、酸化防止剤又はオゾン分解防止剤)には、限定されることなく、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT);Wingstay S(Goodyear)などのスチレン化フェノール;2−及び3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール;Wingstay C(Goodyear)などのアルキル化ヒンダードフェノール;4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);Cyanox(登録商標)及びPermanax WSOなどのその他のビスフェノール;2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)フェノール);4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール);ポリブチル化ビスフェノールA;4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール);4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール);1,1’−チオビス(2−ナフトール);Ethyl酸化防止剤738などのメチレン架橋ポリアクリルフェノール;2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール);Wingstay Lなどのp−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;テトラキス(メチレン−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン、すなわちIrganox 1010;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、例えばEthanox 330;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三級ブチルフェノール)、例えばEthanox 4702又はEthanox 4710;1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌラート、すなわちGood−rite 3114、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、トリス(ノニルフェニルホスフィット)、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル)ペンタエリトリトール)ジホスフィット、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィット、Naugard 492などのホスフィット化フェノール及びビスフェノール、Irganox B215などのホスフィット/フェノール酸酸化防止剤ブレンド;Irganox 1093などのジ−n−オクタデシル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホナート;Irganox 259などの1,6−ヘキサメチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナート)及びオクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート、すなわちIrganox 1076、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジホスホニット、ジフェニルアミン、並びに4,4’−ジエムトキシジフェニルアミンが含まれる。そのような材料は、通常、約0.10phr〜10phrのレベルであるが、より好ましくは約0.1phr〜5phrのレベルで樹脂組成物に用いられる。
【0246】
適切な強化材料には、ポリマーに組み込まれたとき、ポリマー複合体の強度又は剛性を追加するものが含まれる。強化材料は、フィラメント、繊維、ロービング、マット、織物、生地、編物材料、布地又は他の既知の構造の形態であり得る。適切な強化剤材料には、ガラス繊維及び生地、炭素繊維及び生地、アラミド繊維及び生地、ポリオレフィン繊維及び生地(Spectraの商標名でHoneywellにより生産されたものなどの超高分子量ポリエチレン生地を含む)、並びにポリオキサゾール繊維又は生地(Zylonの商標名でToyobo Corporationにより生産されたものなど)が含まれる。Ahlstromガラスロービング(R338−2400)、Johns Manvilleガラスロービング(Star ROV(登録商標)−086)、Owens Corningロービング(OCV 366−AG−207、R25H−X14−2400、SE1200−207、SE1500−2400、SE2350−250)、PPGガラスロービング(Hybon(登録商標)2002、Hybon(登録商標)2026)、Toho Tenax(登録商標)炭素繊維トウ(HTR−40)及びZoltek炭素繊維トウ(Panex(登録商標)35)を含む、表面仕上剤、サイズ剤又は被覆剤を含有する強化材料が、記載されている発明に特に適している。さらに、表面仕上剤、サイズ剤又は被覆剤を含有する強化材料を使用して調製された任意の生地が、本発明に適している。有利には、本発明は、表面仕上剤、サイズ剤又は被覆剤を強化材料から取り除く高価なプロセスを必要としない。加えて、ガラス繊維及び生地には、限定されることなく、Aガラス、Eガラス又はSガラス、S−2ガラス、Cガラス、Rガラス、ECRガラス、Mガラス、Dガラス、並びに石英及びシリカ/石英が含まれうる。好ましいガラス繊維強化剤は、エポキシ、ビニルエステル及び/又はポリウレタン樹脂を使用して配合された仕上剤を有するものである。これらの種類の樹脂の組み合わせを使用して配合されたとき、強化剤は、時々、「多重適合性」と記載される。そのような強化剤は、一般に、ビニル、アミノ、グリシドキシ又はメタクリルオキシ官能基(又はこれらの多様な組み合わせ)を含むオルガノシランカップリング剤により、製造の際に処理され、仕上剤が被覆されて、繊維表面を保護し、取り扱い及び加工(例えば、巻き付け及び織り込み)を推進する。仕上剤は、典型的には、化学薬品と、膜形成剤、界面活性剤及び潤滑剤などのポリマー化合物との混合物を含む。とりわけ好ましいガラス強化剤は、幾らかの量のアミノ官能化シランカップリング剤を含有するものである。とりわけ好ましい仕上剤は、エポキシに基づいた及び/又はポリウレタンに基づいた膜形成剤を含むものである。好ましいガラス繊維強化剤の例は、Hybon(登録商標)2026、2002及び2001(PPG)多重適合性ロービング;Ahlstrom R338エポキシシランサイズロービング;StarRov(登録商標)086(Johns Manville)軟質シランサイズ多重適合性ロービング;OCV(商標)366、SE1200及びR25H(Owens Corning)多重適合性ロービング;OCV(商標)SE1500及び2350(Owens Corning)エポキシ適合性ロービング;並びにJushi Group多重適合性ガラスロービング(752型、396型、312型、386型)に基づいたものである。追加の適切なポリマー繊維及び生地には、限定されることなく、ポリエステル、ポリアミド(例えば、E.I.DuPontから入手可能なNYLONポリアミド、芳香族ポリアミド(E.I.DuPontから入手可能なKEVLAR芳香族ポリアミド又はLenzing Aktiengesellschaftから入手可能なP84芳香族ポリアミドなど)、ポリイミド(例えば、E.I.DuPontから入手可能なKAPTONポリイミド、ポリエチレン(例えば、Toyobo Co.,Ltd.からのDYNEEMAポリエチレン)の1つ以上が含まれうる。追加の適切な炭素繊維には、限定されることなく、Hexcel CorporationからのAS2C、AS4、AS4C、AS4D、AS7、IM6、IM7、IM9及びPV42/850;Toray Industries,Inc.からのTORAYCA T300、T300J、T400H、T600S、T700S、T700G、T800H、T800S、T1000G、M35J、M40J、M46J、M50J、M55J、M60J、M30S、M30G及びM40;Toho Tenax,Inc.からのHTS12K/24K、G30−500 3k/6K/12K、G30−500 12K、G30−700 12K、G30−7000 24K F402、G40−800 24K、STS 24K、HTR 40 F22 24K 1550tex;Grafil Inc.からの34−700、34−700WD、34−600、34−600WD及び34−600非サイズ;Cytec IndustriesからのT−300、T−650/35、T−300C及びT−650/35Cが含まれうる。追加の適切な炭素繊維には、限定されることなく、AKSACA(A42/D011)、AKSACA(A42/D012)、Blue Star Starafil(10253512−90)、Blue Star Starafil(10254061−130)、SGL Carbon(C30 T050 1.80)、SGL Carbon(C50 T024 1.82)、Grafil(347R1200U)、Grafil(THR 6014A)、Grafil(THR 6014K)、Hexcel Carbon(AS4C/EXP 12K)、Mitsubishi(Pyrofil TR 50S 12L AF)、Mitsubishi(Pyrofil TR 50S 12L AF)、Toho Tenax(T700SC 12000−50C)、Toray(T700SC 12000−90C)、Zoltek(Panex 35 50K、サイズ11)、Zoltek(Panex 35 50K、サイズ13)が含まれうる。追加の適切な炭素生地には、限定されることなく、Vectorply(C−L1800)及びZoltek(Panex 35D Fabic−PX35UD0500−1220)による炭素生地が含まれうる。追加の適切なガラス生地には、限定されることなく、PPG Hybon(登録商標)2026に基づいているVectorply(E−LT 3500−10);PPG Hybon(登録商標)2002に基づいているSaertex(U14EU970−01190−T2525−125000);Chongqing Polycomp Internation Corp.(CPIC(登録商標)Fiberglass)(EKU 1150(0)/50−600);並びにPPG Hybon(登録商標)2002に基づいているOwens Corning(L1020/07A06 Xweft 200tex)及びSGL Kumpers(HPT970)により供給されるガラス生地が含まれうる。
【0247】
他の適切な充填剤には、例えば、金属密度調節剤、例えば微小球などの微粒子密度調節剤及び例えばガラス又はセラミックビーズなどのマクロ粒子密度調節剤が含まれる。金属密度調節剤には、粉末化、焼結、切削、剥片化、充填、粒状化又は造粒された金属、金属酸化物、金属窒化物及び/又は金属炭化物が含まれるが、これらに限定されない。好ましい金属密度調節剤には、とりわけ、タングステン、炭化タングステン、アルミニウム、チタン、鉄、鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素及び炭化ケイ素が含まれる。微粒子密度調節剤には、ガラス、金属、熱可塑性(膨張性若しくは予備膨張のいずれか)又は熱硬化性及び/或いはセラミック/ケイ酸塩微小球が含まれるが、これらに限定されない。マクロ粒子密度調節剤には、ガラス、プラスチック又はセラミックビーズ;金属ロッド、チャンク、ピース又はショット;中空のガラス、セラミック、プラスチック又は金属の球、ボール又はチューブなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
本発明は、少なくとも1種の環状オレフィンと、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物とを含む樹脂組成物から製造される物品も対象とする。
【0249】
別の実施形態において、本発明は、物品を作製するための方法であって、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、上記方法を提供する。
【0250】
別の実施形態において、本発明は、物品を作製する方法であって、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、上記方法を提供する。
【0251】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0252】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の基材材料及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0253】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤、少なくとも1種の基材材料及び任意の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを含む、製造品を提供する。
【0254】
別の実施形態において、本発明は、物品を作製する方法であって、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物と、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、上記方法を提供する。
【0255】
別の実施形態において、本発明は、物品を作製する方法であって、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン、少なくとも1種の接着促進剤及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、上記方法を提供する。
【0256】
別の実施形態において、本発明は、物品を作製する方法であって、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び任意選択の外因性阻害剤を含む樹脂組成物とを組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を基材材料と接触させ、ROMP組成物を、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、上記方法を提供する。
【0257】
物品には、注型、遠心注型、引抜成形、成形、回転成形、開放成形、反応射出成形(RIM)、樹脂移送成形(RTM)、流し込み、真空含浸、表面被覆、フィラメント巻き及びポリマー物品の製造に有用である他の既知の方法を含む標準的な製造技術により形成されるものが含まれるが、これらに限定されない。成形部品には、反応射出成形、樹脂移送成形及び真空補助樹脂移送成形が含まれるが、これらに限定されない。さらには、本発明の組成物及び製造品は、単一ポリマー表面界面に限定されず、複数のポリマー表面界面を含有する多層及び積層も含まれる。本発明は、多孔質材料への樹脂の注入による物品の製造にも適している。そのような多孔質材料には、木材、セメント、コンクリート、連続気泡網状発泡体及びスポンジ、紙、段ボール、フェルト、天然又は合成繊維のロープ又はブレード、並びに多様な焼結材料が含まれるが、これらに限定されない。加えて、他の製造技術には、限定されることなく、セル注型、浸漬注型、連続注型、埋め込み、注封、封入成型、膜注型又は溶媒注型、ゲート注型、成形注型、スラッシ注型、押出、機械的発泡、化学的発泡、物理的発泡、圧縮成形又はマッチドダイ成形、吹付、真空補助樹脂移送成形(VARTM)、Seeman複合樹脂射出成形プロセス(SCRIMP)、吹込み成形、インモールドコーティング、成形型内塗装又は射出、真空形成、強化反応射出成形(RRIM)、構造反応射出成形(SRIM)、熱膨張移送成形(TERM)、樹脂射出再循環成形(RICM)、制御大気圧樹脂注入(CAPRI)、手積みが含まれる。RIMの使用又はRIM、SRIM及びRRIMを限定することなく含む衝突型混合ヘッドの使用を必要とする製造技術では、製造品は、単一混合ヘッド又は複数の混合ヘッド、並びに複数の材料射出流(例えば、2つの樹脂流及び1つの触媒流)を使用して成形することができる。
【0258】
本発明は、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物から製造される物品であって、樹脂組成物は、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と組み合わされ、得られた樹脂組成物は、場合により、例えば官能化基材であり得る基材に適用される、上記物品も対象とする。
【0259】
さらに、本発明は、任意の配置、重量、サイズ、厚さ又は幾何学的形状の製造品の作製も可能にする。製造品の例には、限定されることなく、航空宇宙用部品、船舶用部品、自動車部品、スポーツ用品用部品、電気部品及び工業部品、医療用部品、歯科用部品、石油ガス用部品又は軍事用部品として使用される任意の成形又は造形品が含まれる。1つの実施形態において、物品は、航空機又は一般的な発電に使用されるタービン部品であり得る。1つの実施形態において、タービン部品には、限定されることなく、インレット、パイロン、フェアリング、防音パネル、逆推力装置パネル、ファンの羽根、ファン収納ケース、バイパスダクト、空気力カウル又はエーロフォイル部品の1つ以上が含まれうる。1つの実施形態において、物品は、タービン羽根部品であり得る又はタービン羽根であり得る。1つの実施形態において、物品は、風回転羽根、塔、スパーキャップ又は風車のナセルであり得る。1つの実施形態において、物品は、機体部品であり得る。航空宇宙用部品の例には、限定されることなく、胴体表面、翼、フェアリング、扉、点検用パネル、空力制御面又は補強剤(stiffner)の1つ以上が含まれうる。1つの実施形態において、物品は、自動車部品であり得る。自動車部品の例には、限定されることなく、車体パネル、フェンダー、スポイラー、トラックの荷台(truck bad)、保護プレート、フード、長軸方向レール、ピラー又は扉の1つ以上が含まれうる。工業部品の例には、限定されることなく、ライザープラットフォーム(riser platform)、油及びガス用の衝突保護構造、橋梁、管、圧力容器、電柱、コイル、コンテナ、タンク、ライナー、電解槽カバー、格納容器、腐食環境(例えば、塩素アルカリ性、苛性、酸性、塩水など)に適用される物品、コンクリート建築物及び道路の強化構造又は放熱器の1つ以上が含まれうる。電気部品の例には、限定されることなく、コイル若しくは電気モーターなどの巻線物品又は絶縁装置の1つ以上が含まれうる。1つの実施形態において、物品は、磁気共鳴画像系の渦電流遮蔽部品又は任意の電磁放射線の遮蔽部品であり得る。1つの実施形態において、物品は、限定されることなく、乗員若しくは車両の防弾装甲又は人員若しくは機器を保護する防弾構造を含む軍事用部品であり得る。1つの実施形態において、物品は、限定されることなく、矢柄、テニスラケットフレーム、ホッケースティック、複合弓リム又はゴルフクラブシャフトを含むスポーツ用品用部品であり得る。油及びガス用部品の例には、ケーシングセントラライザー及びドリルストリングセントラライザーが含まれる。
【0260】
本発明の樹脂組成物は、サイズ剤組成物をさらに含むことができる又は産業界で一般的に使用される特定の市販のシランによりサイズされた基材材料への改善された接着を提供するために、さらに使用されうる。当該技術において知られているように、ガラス繊維は、典型的には、形成された直後に化学溶液(例えば、サイズ剤組成物)により処理されて、ガラス繊維を強化する、並びに加工及び複合体製造の際に、ストランドの機械的完全性を保護する。オレフィンメタセシス触媒及びポリジシクロペンタジエン複合体と適合性があるサイズ剤処理は、米国特許第6,890,650号及び同第6,436,476号に記載されており、両方の開示は、参照として本明細書に組み込まれる。しかしこれらの開示は、工業的なガラス製造に一般的に使用されない特別のシラン処理の使用に基づいている。それと比較して、本発明は、産業界に一般的に使用されるシランによりサイズされたポリマーガラス複合体に改善された機械的特性を提供することができる。
【0261】
ガラスサイズ剤配合物は、典型的には、少なくとも1つの膜形成剤(典型的には、膜形成ポリマー)、少なくとも1つのシラン及び少なくとも1つの潤滑剤を含む。メタセシス触媒又はオレフィン重合反応の有効性を妨げない又は実質的に減少しないサイズ剤配合物の任意の成分が、本発明に適合性があると考慮され、本明細書において一般に使用されうる。
【0262】
ROMP触媒と適合性がある膜形成剤には、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン及び/又はポリ酢酸ビニルが含まれる。オレフィンメタセシス触媒の性能に有害な影響を与えない他の一般的な膜形成剤を、使用することもできる。膜形成剤は、典型的には非イオン性の水性エマルションとして使用される。1つを超える膜形成剤を所定のサイズ剤配合物に使用して、ガラス加工性と複合体の機械的特性との所望の釣り合いを達成することができる。
【0263】
より詳細には、膜形成剤は、エポキシ基1つ当たりの平均分子量(EEW)が500未満であるエポキシモノマー若しくはオリゴマーにより定義される、低分子量エポキシエマルション及び/又はエポキシ基1つ当たりの平均分子量(EEW)が500を超えるエポキシモノマー若しくはオリゴマーにより定義される、高分子量エポキシエマルションを含むことができる。適切な低分子量生成物の例には、Franklin K8−0203(EEW190)及びFranklin E−102(EEW225〜275)を含む、Franklin Internationalにより生産された水性エポキシエマルションが含まれる。低分子量エポキシエマルションの他の例は、Hexionから入手可能であり、EPI−REZ(商標)3510−W−60(EEW185〜215)及びEPI−REZ(商標)3515−W−60(EEW225〜275)を含む。低分子量エポキシエマルションのさらなる例は、COIMから入手可能であり、Filco 309(EEW270)及びFilco 306(EEW330)を含む。低分子量エポキシエマルションのさらなる例は、DSMから入手可能であり、Neoxil(登録商標)965(EEW220〜280)及びNeoxil(登録商標)4555(EEW220〜260)を含む。適切な高分子量エポキシエマルション生成物の例には、EPI−REZ(商標)3522−W−60(EEW615〜715)を含む、Hexionにより生産されたエポキシエマルションが含まれる。
【0264】
変性エポキシ、ポリエステル及びポリウレタンの水性エマルションを膜形成剤に使用することもできる。適切な変性エポキシ生成物の例には、Neoxil(登録商標)2626(500〜620のEEWを有する可塑化エポキシ)、Neoxil(登録商標)962/D(470〜550のEEWを有するエポキシエステル)、Neoxil(登録商標)3613(500〜800のEEWを有するエポキシエステル)、Neoxil(登録商標)5716(210〜290のEEWを有するエポキシノボラック)、Neoxil(登録商標)0035(2500のEEWを有する可塑化エポキシエステル)及びNeoxil(登録商標)729(200〜800のEEWを有する潤滑化エポキシ)を含む、DSMにより生産されたエマルションが含まれる。変性エポキシエマルションのさらなる例は、COIMから入手可能であり、Filco 339(2000のEEWを有する不飽和ポリエステルエポキシ)及びFilco 362(530のEEWを有するエポキシエステル)を含む。適切なポリエステル生成物の例には、Neoxil(登録商標)954/D、Neoxil(登録商標)2635及びNeoxil(登録商標)4759(不飽和ビスフェノールポリエステル)を含む、DSMにより生産されたエマルションが含まれる。DSMからの追加の適切な生成物には、Neoxil(登録商標)9166及びNeoxil(登録商標)968/60(アジペートポリエステル)が含まれる。適切な生成物のさらなる例には、Filco 354/N(不飽和ビスフェノールポリエステル)、Filco 350(不飽和ポリエステル)及びFilco 368(飽和ポリエステル)含む、COIMにより生産されたエマルションが含まれる。適切なポリウレタン生成物の例には、Baybond(登録商標)330及びBaybond(登録商標)401を含む、Bayer Material Scienceにより生産されたエマルションが含まれる。
【0265】
膜形成剤は、ポリオレフィン若しくはポリオレフィン−アクリル酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、変性ポリ酢酸ビニル又はポリオレフィン−酢酸コポリマーを含むこともできる。適切なポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロブチレン及びそれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定されず、ポリオレフィンは、酸化、マレイン化、そうでなければ有効な膜形成剤の使用のために処理されうる。適切な生成物の例には、Michem(登録商標)Emulsion 91735、Michem(登録商標)Emulsion 35160、Michem(登録商標)Emulsion 42540、Michem(登録商標)Emulsion 69230、Michem(登録商標)Emulsion 34040M1、Michem(登録商標)Prime 4983R及びMichem(登録商標)Prime 4982SCを含む、Michelmanにより生産されたエマルションが含まれる。適切な生成物の例には、PD 708H、PD 707及びPD 0166を含む、HB Fullerにより生産されたエマルションが含まれる。追加の適切な生成物には、Duracet(登録商標)637を含む、Franklin Internationalにより生産されたエマルションが含まれる。追加の適切な生成物には、Vinamul(登録商標)8823(可塑化ポリ酢酸ビニル)、Dur−O−Set(登録商標)E−200(エチレン−酢酸ビニルコポリマー)、Dur−O−Set(登録商標)TX840(エチレン酢酸ビニルコポリマー)及びResyn(登録商標)1971(エポキシ変性ポリ酢酸ビニル)を含む、Celaneseにより生産されたエマルションが含まれる。
【0266】
これらに限定されることはないが、好ましい膜形成剤には、Franklin K80−203、Franklin E−102、Hexion 3510−W−60、Hexion 3515−W−60及びMichelman 35160などの、低及び高分子量エポキシ、飽和及び不飽和ポリエステル、並びにポリオレフィンが含まれる。
【0267】
非イオン性潤滑剤をサイズ剤組成物に添加することもできる。ROMP組成物に適合性がある適切なイオン性潤滑剤には、ポリエチレングリコールのエステル及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーが含まれる。1つを超える非イオン性潤滑剤を、望ましい場合に所定のサイズ剤配合物に使用して、例えば、ガラス加工性と複合体の機械的特性との所望の釣り合いを達成することができる。
【0268】
適切な潤滑剤は、200〜2000、好ましくは200〜600の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)単位を含有することができる。これらのPEG単位を、1つ以上の脂肪酸によりエステル化することができ、オレイン酸エスエル、トール油酸エステル(tallate)、ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル及び他が含まれる。特に好ましい潤滑剤には、PEG400ジラウレート、PEG600ジラウレート、PEG400ジステアレート、PEG600ジステアレート、PEG400ジオレエート及びPEG600ジオレエートが含まれる。適切な生成物の例には、MAPEG(登録商標)400 DO、MAPEG(登録商標)400 DOT、MAPEG(登録商標)600 DO、MAPEG(登録商標)600 DOT及びMAPEG(登録商標)600 DSを含む、BASFにより生産された化合物が含まれる。追加の適切な生成物には、Mulsifan 200 DO、Mulsifan 400 DO、Mulsifan 600 DO、Mulsifan 200 DL、Mulsifan 400 DL、Mulsifan 600 DL、Mulsifan 200 DS、Mulsifan 400 DS及びMulsifan 600 DSを含む、Zschimmer & Schwarzにより生産された化合物が含まれる。追加の適切な生成物の例には、Agnique(登録商標)PEG 300 DO、Agnique(登録商標)PEG 400 DO及びAgnique(登録商標)PEG 600 DOを含む、Cognisにより生産された化合物が含まれる。
【0269】
適切な非イオン性潤滑剤には、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーも含まれる。適切な生成物の例には、Pluronic(登録商標)L62、Pluronic(登録商標)L101、Pluronic(登録商標)P103及びPluronic(登録商標)P105を含む、BASFにより生産された化合物が含まれる。
【0270】
カチオン性潤滑剤をサイズ剤組成物に添加することもできる。ROMPに適合性があるカチオン性潤滑剤には、Pulcra Chemicalsにより生産されたEmery 6760Lなどの変性ポリエチレンイミンが含まれる。
【0271】
シランカップリング剤を場合よりサイズ剤組成物に添加することができ、非限定例には、アルキル、アルケニル及びノルボルネニルシランと共に、メタクリレート、アクリレート、アミノ又はエポキシ官能化シランが含まれる。
【0272】
場合により、サイズ剤組成物は、サイズ剤樹脂のpHを変更するために、1つ以上の添加剤を含有することができる。1つの好ましいpH変更剤は、酢酸である。
【0273】
サイズ剤組成物は、場合により、ガラスサイズ剤組成物に有用な他の添加剤を含有することができる。そのような添加剤には、乳化剤、消泡剤、共溶媒、殺生剤、酸化防止剤及びサイズ剤組成物の有効性を改善するように設計された添加剤が含まれうる。サイズ剤組成物は、任意の方法により調製され、任意に技術又は方法によりガラス繊維又は生地などの本明細書に使用される基材材料に適用されうる。
【0274】
好ましい実施形態において、本明細書に開示されているメタセシス反応は、乾燥した不活性雰囲気下で実施される。そのような雰囲気は、窒素及びアルゴンなどのガスを含む任意の不活性ガスを使用して作り出すことができる。不活性雰囲気の使用は、触媒活性を促進する観点から最適であり、不活性雰囲気下で実施される反応は、典型的には比較的低い触媒装填量で実施される。本明細書に開示されている反応は、酸素含有及び/又は水含有雰囲気下で実施することもでき、1つの実施形態において、反応は、周囲条件下で実施される。しかし反応における酸素又は水の存在は、不活性雰囲気下で実施される反応と比較して、高い触媒装填量の使用を必要とする。反応体の蒸気圧が許容される場合、本明細書に開示されている反応を、減圧下で実施することもできる。
【0275】
本明細書に開示されている反応を溶媒中で実施することができ、交差メタセシスに対して不活性である任意の溶媒を用いることができる。一般に、メタセシス反応に使用することができる溶媒には、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、エーテル、脂肪族炭化水素、アルコール、水又はこれらの混合物などの有機、プロトン性又は水性の溶媒が含まれる。溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、p−キシレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ペンタン、メタノール、エタノール、水又はこれらの混合物が含まれる。好ましい実施形態において、本明細書に開示されている反応は、未希釈で、すなわち溶媒を使用することなく実施される。
【0276】
本明細書に開示されている方法によるメタセシス反応が実施される温度は、必要に応じて調整することができ、少なくとも約−78℃、−40℃、−10℃、0℃、10℃、20℃、25℃、35℃、50℃、70℃、100℃若しくは150℃であり得ること又は温度は、上若しくは下限としてこれらの値のいずれかを有する範囲内であり得ることが、理解される。好ましい実施形態において、反応は、少なくとも約35℃の温度で実施され、別の実施形態において、反応は、少なくとも約50℃の温度で実施される。
【0277】
本発明は特定の実施形態と共に記載されてきたが、上記の記載、並びに続く実施例は、例示するのであって、本発明の範囲を制限することを意図しないことが、理解されるべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点及び改変は、本発明が関わる当業者に明白である。
【0278】
実験
以下の実施例では、使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にする努力がなされてきたが、幾らかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に指示のない限り、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は近大気圧であり、粘度はセンチポアズ(cP)である。
【0279】
以下の実施例は、本明細書に記載されている発明を制限するものとして考慮されるべきではなく、むしろ、本発明の少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物及びその使用の代表例として提供されている。
【実施例】
【0280】
材料及び方法
全てのガラス器具をオーブン乾燥し、反応を、特に示されない限り、周囲条件下で実施した。全ての溶媒及び試薬は、商業供給者から購入し、特に示されない限り、受け取ったままで使用した。
【0281】
Ultrene(登録商標)99ジシクロペンタジエン(DCPD)は、Cymetech Corporationから得た。20〜25%のトリシクロペンタジエン(及び少量の高級シクロペンタジエン同族体)を含有する変性DCPD基剤樹脂は、米国特許第4,899,005号に一般的に記載されているように、Ultrene(登録商標)99のDCPDの熱処理により調製した。
【0282】
液体MDI(4,4’−MDIと2,4’−MDIの50/50混合物)を、Bayer Material Science(Mondur(登録商標)MLQ)から受け取ったままで使用し、指示された場所で使用した。Ethanox(登録商標)4702酸化防止剤(4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三級ブチルフェノール)、Albemarle Corporationを、指示された場所で使用した。2phrのCab−o−sil(登録商標)TS610ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)を含有するCrystal Plus 70FG鉱油(STE Oil Company,Inc.)を使用して、触媒懸濁液を調製した。トリフェニルホスフィン(TPP)を、Arkemaから受け取ったままで使用した。クメンヒドロペルオキシド(CHP)であるヒドロペルオキシドゲル変性剤を、Sigma Aldrich(特に特定されない限り、純度88%)又はSyrgis Performance Initiators(Norox(登録商標)CHP、85%)から受け取ったままで使用した。CHPを、DCPD中の1,000ppm濃度の貯蔵溶液として、樹脂配合物に加えた。
【0283】
金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を、標準的な方法で調製し、[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)(C627);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C831);1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C848);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C771);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C747);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C827);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3−メチル−2−ブテニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C713);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C869);[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C835);及び[1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルインデニリデン)(トリ−n−ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C871)が含まれる。
【0284】
樹脂組成物(A):樹脂組成物は、酸化防止剤のEthanox(登録商標)4702(2phr)を、20〜25%のトリシクロペンタジエンを含有する変性DCPD基剤樹脂に溶解することによって調製した。樹脂組成物は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して測定して、30℃+/−0.5℃で14.6〜15.6センチポアズ(cP)の初期粘度を有した。
【0285】
樹脂組成物(B):低粘度(25℃で10〜15センチポアズ)樹脂組成物(8.368グラム)は、変性DCPD基剤樹脂(8,000グラム)、2phrのEhanox(登録商標)4702(160グラム)、2phrのMondur MLQ(160グラム)及び0.6phrのトリフェニルホスフィン(48グラム)を混合することによって調製した。
【0286】
樹脂組成物(C):貯蔵樹脂組成物(948.9グラム)は、変性DCPD基剤樹脂(926.2グラム)、2phrのEhanox(登録商標)4702(18.5グラム)、0.25phrのCab−o−sil TS610(2.3グラム)及び20ppmのクメンヒドロペルオキシド(1.9グラムの、DCPD中1000ppmの貯蔵溶液)を混合することによって調製した。
【0287】
触媒懸濁液:多様なオレフィンメタセシス触媒組成物は、下記の表2、表3及び表4に示されている1、2又は3つのルテニウムカルベンオレフィンメタセシス触媒を含む鉱油懸濁液として調製した。2phrのCab−o−sil TS610を含有するCrystal Plus 70FG鉱油を使用して、触媒懸濁液を調製した。表2のそれぞれの触媒懸濁液組成物、触媒懸濁液(1S)〜(22S)は、DCPDモノマー100グラム当たり2グラムの触媒懸濁液で総モノマーと触媒の比が45,000:1を有するように調製した。表3のそれぞれの触媒懸濁液組成物、触媒懸濁液(23S〜34S)は、DCPDモノマー100グラム当たり2グラムの触媒懸濁液で総モノマーと触媒の比が15,000:1を有するように調製した。表4のそれぞれの触媒懸濁液組成物、触媒懸濁液(35S〜50S)は、DCPDモノマー100グラム当たり2グラムの触媒懸濁液で総モノマーと触媒の比が90,000:1を有するように調製した。
【表2】

【表3】

【表4】
【0288】
(例1〜24)
粘度測定:
例1〜24のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(1S〜10S、23S〜29S、35S〜41S)(4.0グラム)を、樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表5に示す。
【0289】
ゲル硬度測定:
例1〜23のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(1S〜10S、23S〜29S、35S〜40S)(0.4グラム)を、樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表5に示す。
【0290】
ピーク発熱温度までの時間の測定:
例1〜23のそれぞれにおいて、ROMP組成物のピーク発熱温度までの時間を、上記に記載されたゲル硬度測定を行うために調製された試料によって測定した。ピーク発熱温度を、Type K熱電対を取り付けたOmega Data Logger Thermometer(HH309A型)の使用により測定し、熱電対は、アルミニウムパンの底部に取り付けられていた。ピーク発熱温度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物がピーク発熱温度に達するまでに必要な時間と定義する。ピーク発熱温度までの時間を表5に示す。
【表5-1】

【表5-2】
【0291】
(例25〜42)
粘度測定:
例25〜42のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(11S〜18S、30S〜32S、42S〜48S)(4.0グラム)を、樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表6に示す。
【0292】
ゲル硬度測定:
例25〜42のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(11S〜18S、30S〜32S、42S〜48S)(0.4グラム)を、樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表6に示す。
【0293】
ピーク発熱温度までの時間の測定:
例25〜42のそれぞれにおいて、ROMP組成物のピーク発熱温度までの時間を、上記に記載されたゲル硬度測定を行うために調製された試料により測定した。ピーク発熱温度を、Type K熱電対を取り付けたOmega Data Logger Thermometer(HH309A型)の使用により測定し、熱電対は、アルミニウムパンの底部に取り付けられていた。ピーク発熱温度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物がピーク発熱温度に達するまでに必要な時間と定義する。ピーク発熱温度までの時間を表6に示す。
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0294】
(例43〜50)
粘度測定:
例43〜50のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(19S〜22S、33S〜34S、49S〜50S)(4.0グラム)を、樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表7に示す。
【0295】
ゲル硬度測定:
例43〜50のそれぞれにおいて、樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。適切な触媒懸濁液(19S〜22S、33S〜34S、49S〜50S)(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表7に示す。
【0296】
ピーク発熱温度までの時間の測定:
例43〜50のそれぞれにおいて、ROMP組成物のピーク発熱温度までの時間を、上記に記載されたゲル硬度測定を行うために調製された試料により測定した。ピーク発熱温度を、Type K熱電対を取り付けたOmega Data Logger Thermometer(HH309A型)の使用により測定し、熱電対は、アルミニウムパンの底部に取り付けられていた。ピーク発熱温度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物がピーク発熱温度に達するまでに必要な時間と定義する。ピーク発熱温度までの時間を表7に示す。
【表7】
【0297】
実施例の評価
表5、6及び7のデータを比較すると、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒よりも、環状オレフィン(例えば、ジシクロペンタジエン)の重合に対してより大きな制御を可能にすることが分かる。例えば、下記の表8のデータは、表5、6及び7に提示されたいくつかのデータのまとめであり、個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747、C713及びC771)を使用して、(i)2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747/C771、C713/C771)及び(ii)3つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747/C713/C771)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を調製した。個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747、C713及びC771)は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747/C771、C713/C771)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。3つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C747/C713/C771)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。
【表8-1】

【表8-2】
【0298】
表8から、例8の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計31@210.0分、ピーク発熱時間@235.8分)と比較した、例27の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計32@86.0分、ピーク発熱時間@231.3分)の検査(examination)は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを、実証している。
【0299】
表8から、例8の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計31@210.0分、ピーク発熱時間@235.8分)と比較した、例26の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@110.0分、ピーク発熱時間@240.0分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを、さらに実証している。
【0300】
表8から、例8の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計31@210.0分、ピーク発熱時間@235.8分)と比較した、例44の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@115.0分、ピーク発熱時間@235.7分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを、実証している。
【0301】
例えば、下記の表9のデータは、表5、6及び7に提示されたいくつかのデータのまとめであり、個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848、C713及びC835)を使用して、(i)2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848/C835)及び(ii)3つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848/C713/C835)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を調製した。個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848、C713及びC835)は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848/C835)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。3つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C848/C713/C835)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。
【表9】
【0302】
表9から、例9の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@255.0分、ピーク発熱時間@258.1分)と比較した、例30の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@97分、ピーク発熱時間@242.6分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを実証している。
【0303】
表9から、例9の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@255.0分、ピーク発熱時間@258.1分)と比較した、例31の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@230.0分、ピーク発熱時間@240.5分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを実証している。
【0304】
表9から、例9の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@255.0分、ピーク発熱時間@258.1分)と比較した、例46の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計32@190.0分、ピーク発熱時間@235.5分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを、実証している。
【0305】
例えば、下記の表10のデータは、表5、6及び7に提示されたいくつかのデータのまとめであり、個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C627及びC871)を使用して、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C627/C871)含むオレフィンメタセシス触媒組成物を調製した。個別の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C627及びC871)は、それぞれ総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(例えば、C627/C871)を含むオレフィンメタセシス触媒組成物は、総モノマーと触媒との比の45,000:1を有した。
【表10】
【0306】
表10から、例10の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計33@321.0分、ピーク発熱時間@325.8分)と比較した、例32の硬質ポリマーゲルに達するまでの時間及びピーク発熱温度に達するまでの時間(硬度計30@230.0分、ピーク発熱時間@319.4分)の検査は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物が、ROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対する独立した制御を可能にすることを実証している。
【0307】
(例51〜53)
粘度測定:
(例51−樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表11に示す。)
(例52−樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により35℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定は、Brookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、35℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表11に示す。)
(例53−樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により40℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定はBrookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、40℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表11に示す。)
【0308】
ゲル硬度測定:
(例51−樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表11に示す。)
(例52−樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより35℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=35℃、(b)35℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表11に示す。)
(例53−樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより40℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=40℃、(b)40℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表11に示す。)
【0309】
ピーク発熱温度までの時間の測定:
例51〜53のそれぞれにおいて、ROMP組成物のピーク発熱温度までの時間を、上記に記載されたゲル硬度測定を行うために調製された試料により測定した。ピーク発熱温度を、Type K熱電対を取り付けたOmega Data Logger Thermometer(HH309A型)の使用により測定し、熱電対は、アルミニウムパンの底部に取り付けられていた。ピーク発熱温度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物がピーク発熱温度に達するまでに必要な時間と定義する。ピーク発熱温度までの時間を表11に示す。
【0310】
表11に示されており、上記に考察されたように、樹脂組成物及び/又は成形型の温度の調整は、従来技術のROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対して独立した制御を可能にしない。換言すると、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を用いる環状オレフィン樹脂組成物の触媒作用によって、従来技術のROMP組成物を形成した後、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達する時間及び従来技術のROMP組成物が発熱するまでの時間は、組成物温度及び/又は成形型温度が増加すると、両方とも減少する。逆に、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を用いる環状オレフィン樹脂組成物の触媒作用によって、従来技術のROMP組成物を形成した後、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達する時間及び従来技術のROMP組成物が発熱するまでの時間は、組成物温度及び/又は成形型温度が減少すると、両方とも増加する。
【表11】
【0311】
(例54〜57)
粘度測定:
(例54−樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定はBrookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表12に示す。)
(例55−トリフェニルホスフィン(0.025phr)を含有する樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定はBrookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表12に示す。)
(例56−トリフェニルホスフィン(0.05phr)を含有する樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定はBrookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表12に示す。)
(例57−トリフェニルホスフィン(1.0phr)を含有する樹脂組成物(A)(204.0グラム)を、250mLのプラスチックボトルに加えた。樹脂組成物を加熱浴により30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(4.0グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物の粘度測定はBrookfield Viscometer(DV−II+Pro型)、スピンドル(Code S62型)を150RPMの速度で使用して、30℃で得た。30cPの粘度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が30cPの粘度に達するまでに必要な時間と定義する。30cPの粘度までの時間を表12に示す。)
【0312】
ゲル硬度測定:
(例54−樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表12に示す。)
(例55−トリフェニルホスフィン(0.025phr)を含有する樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表12に示す。)
(例56−トリフェニルホスフィン(0.05phr)を含有する樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表12に示す。)
(例57−トリフェニルホスフィン(1.0phr)を含有する樹脂組成物(A)(20.4グラム)を、標準的な実験室オーブンにより30℃+/−0.5℃で平衡にした。触媒懸濁液5S(0.4グラム)を樹脂組成物と合わせて、ROMP組成物を形成した。ROMP組成物をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に加えた。触媒作用の直後に、以下のオーブン温度プロファイルを開始した((a)初期温度=30℃、(b)30℃で3時間の保持、(c)3時間後に、0.5℃/分で120℃に昇温、(d)120℃で2時間の保持及び(e)周囲温度への冷却)。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により周期的に測定した。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計10〜29のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計30〜39のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計30〜39のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物が硬度計40〜70のゲル硬度に達するまでに必要な時間と定義する。硬度計10〜29のゲル硬度までの時間、硬度計30〜39のゲル硬度までの時間、硬度計40〜70のゲル硬度までの時間を、表12に示す。)
【0313】
ピーク発熱温度までの時間の測定:
例54〜57のそれぞれにおいて、ROMP組成物のピーク発熱温度までの時間を、上記に記載されたゲル硬度測定を行うために調製された試料により測定した。ピーク発熱温度を、Type K熱電対を取り付けたOmega Data Logger Thermometer(HH309A型)の使用により測定し、熱電対は、アルミニウムパンの底部に取り付けられていた。ピーク発熱温度までの時間を、樹脂組成物が触媒作用を受けた後に、ROMP組成物がピーク発熱温度に達するまでに必要な時間と定義する。ピーク発熱温度までの時間を表12に示す。
【0314】
表12に示されており、上記に考察されたように、従来技術のROMP組成物における外因性阻害剤(例えば、トリフェニルホスフィン)の使用は、従来技術のROMP組成物が発熱時間に関連して硬質ポリマーゲルに達するのに必要な時間に対して独立した制御を可能にしない。換言すると、従来技術のROMP組成物を形成した後、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達する時間及び従来技術のROMP組成物が発熱するまでの時間は、外因性阻害剤の濃度が増加すると、両方とも増加する。逆に、従来技術のROMP組成物を形成した後、従来技術のROMP組成物が硬質ポリマーゲルに達する時間及び従来技術のROMP組成物が発熱するまでの時間は、外因性阻害剤の濃度が減少すると、両方とも減少する。
【表12】
【0315】
(例58)
この例58の複合積層(composite laminate)を以下のように構築した(図1)。複合積層の底層を、36”×36”の寸法を有するアルミニウム製の密封及び離型処理成形型表面(10)から構成した。3つの熱電対(11a、11b、11c)を、成形型表面(10)に取り付けた。各プライが12.5”×20”の寸法を有する50枚のプライから構成される一方向ガラス繊維強化材料(Vectorply E−LT1800)の第1層(12a)を、成形型表面(10)の上に位置させた。1つの熱電対(11b)を、一方向ガラス繊維強化材料の第1層(12a)の上面に取り付けた。各プライが12.5”×20”の寸法を有する50枚のプライから構成される一方向ガラス繊維強化材料(Vectorply E−LT1800)の第2層(12b)を、熱電対(11d)が一方向ガラス繊維強化材料の第1と第2層(12a、12b)の間に位置するように、一方向ガラス繊維強化材料の第1層(12a)の上に位置させた。2つの熱電対(11e、11f)を、一方向ガラス繊維強化材料の第2層(12b)の上面に取り付けた。剥離プライ(Richmond Aircraft ProductsのA8888ポリアミド)(13)を、一方向ガラス繊維強化材料(12a、12b)の100プライを覆って配置した。6”×12.5”の寸法を有する樹脂流制御構造(Nidacore Matline 400)の第1片(14)を、樹脂流制御構造(14)の一端が、一方向ガラス繊維強化材料(12a、12b)の一端の近くに位置するように、剥離プライ(13)の上に配置した。12”×32”の寸法を有する一次樹脂分布媒体(Colbond Enkafusion 7001)(15)を、複合積層の上に配置した。6”×12.5”の寸法を有する樹脂流制御構造(Nidacore Matline 400)の第2片(16)を、一次樹脂分布媒体(15)の上に配置し、樹脂流制御構造の第2片(16)が樹脂流制御構造の第1片(14)の上に積み重なり、一次樹脂分布媒体(15)が樹脂流制御構造の第1と第2片(14、16)の間に位置するように、整列させた。2”×12”の寸法を有する第2樹脂分布媒体(Colbond Enkachannel)(17a、17b)を、入口(18)及び出口(19)それぞれの位置に対応する複合積層の反対端において、一次樹脂分布媒体(15)の上に位置させた。真空バッグ(Richmond Air Craft Products Stretch−Vac−2000)(図示せず)を、完成した積層を覆って配置した。入口(18)及び出口(19)を、真空バッグ(図示せず)を介して設置し、それぞれの二次樹脂分布媒体(17a、17b)の上に位置させた。真空バッグ(図示せず)を、密封テープ(Airtech AT200−Yテープ)を使用して成形型表面に取り付け、真空を出口(19)に適用して、積層から空気を排気した。
【0316】
複合積層(図1)を、35℃に設定した加熱台に配置した。複合積層を耐燃ブランケットで覆い、複合積層を、熱電対(11a〜11f)により測定して、35℃で平衡にした。樹脂組成物(B)(8.368グラム)を、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物(160グラム)と合わせ、触媒組成物は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 70FG)に懸濁したC771(モノマーと触媒の比が67,500:1)及びC827(モノマーと触媒の比が135,000:1)を含み、触媒懸濁液は、総モノマーと触媒の比の45,000:1を有した。樹脂組成物(8.368グラム)及び触媒懸濁液(160グラム)は、混合の直前は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒作用を受けた樹脂組成物を、予備成形物(積層)の完全な含浸を有する複合積層に導入した。触媒作用を受けた樹脂組成物の一部(20グラム)をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に配置し、アルミニウムパンを加熱台に配置して、耐燃ブランケットで覆った。触媒作用の115分後(成形型温度35℃)、20グラムの触媒作用を受けた樹脂組成物は、硬度計30の硬度を有する硬質ポリマーゲルを形成した。ポリマーゲルの硬度を、Albuquerque Industrial Inc.の硬度計(HP−10F−M型)の使用により測定した。触媒作用の115分後(成形型温度35℃)、加熱台温度を、1分当たり0.5℃の速度で35℃から120℃に増加し、続いて120℃の温度で2時間保持した。2時間後に、加熱台の電源を切り、成形複合積層を、周囲温度(20〜25℃)に冷まし、続いて成形型から取り出した。成形複合積層の外面を、構造的欠陥及び不備(例えば、空隙、気泡及び/又は樹脂の基板剥離、不十分な樹脂強化界面など)について目視検査した。目視検査によると、構造的欠陥及び不備は、例58により得られた成形複合積層において観察されなかった。
【0317】
(例59)
例58の手順に従って、複合積層(図1)を調製し、熱電対(11a〜11f)により測定して、35℃で平衡にした。樹脂組成物(B)(8.368グラム)を、懸濁液の形態の単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(160グラム)と合わせ、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 70FG)に懸濁したC771(モノマーと触媒の比が45,000:1)であり、触媒懸濁液は、総モノマーと触媒の比の45,000:1を有した。樹脂組成物(8.368グラム)及び触媒懸濁液(160グラム)は、混合の直前は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒作用を受けた樹脂組成物を、予備成形物(積層)の完全な含浸を有する複合積層に導入した。触媒作用を受けた樹脂組成物の一部(20グラム)をアルミニウムパン(直径6cm×深さ1.5cm)に配置し、アルミニウムパンを加熱台に配置して、耐燃ブランケットで覆った。触媒作用の115分後(成形型温度35℃)、20グラムの触媒された樹脂組成物は、紐状ゲルであり、したがって硬質ポリマーゲルを形成しなかった。触媒作用の115分後(成形型温度35℃)、加熱台温度を、1分間当たり0.5℃の速度で35℃から120℃に増加し、続いて120℃の温度で2時間保持した。2時間後に、加熱台の電源を切り、成形複合積層を、周囲温度(20〜25℃)に冷まし、続いて成形型から取り出した。成形複合積層の外面を、構造的欠陥及び不備(例えば、空隙、気泡及び/又は樹脂の基板剥離、不十分な樹脂強化界面など)について目視検査した。目視検査によると、例59により得られた成形複合積層の上面は、白化外観形成の欠陥を、そのような欠陥を有さなかった例58により得られた成形複合積層と比較して有した。理論に束縛されることなく、この白色又は外観(すなわち、欠陥)は、樹脂マトリックスとガラス強化剤との適合性の減少を示しており、最終的には、望ましい特性とは言えないものをもたらす。理論に束縛されることなく、この種類の欠陥(例えば、白化表面外観/色)は、液体環状オレフィンモノマー(例えば、DCPD)がROMP組成物の発熱の際に揮発することによって、特に液体環状オレフィンモノマーが、ROMP組成物が発熱し始める前に、成形型の異なる領域/区域の全体にわたって又はROMP組成物の全体にわたって均一に形成された硬質ポリマーゲルに達しなかった場合にもたらされると考えられる。
【0318】
(例60)
3Mから入手可能なK25中空ガラス球(254グラム)を、樹脂組成物(C)(847グラム)に加えて、充填樹脂組成物を形成し、それを混合し、続いて真空下で脱ガスした。充填樹脂組成物(1101グラム)を、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む触媒組成物(16.5グラム)と合わせ、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 70FG)に懸濁したC848(モノマーと触媒の比が120,000:1)及びC827(モノマーと触媒の比が120,000:1)であり、触媒懸濁液は、総モノマーと触媒の比の60,000:1を有した。充填樹脂組成物及び触媒懸濁液は、混合の直前は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒された樹脂組成物を、円筒アルミニウム成形型(内径4”及び高さ9”)の中に注ぎ、成形型は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒作用の90分後、アルミニウム成形型を、加熱ブランケットの使用により加熱した。触媒された樹脂組成物は、触媒作用後に103分間の発熱時間を有した。成形品を周囲温度に冷まし、続いて成形型から取り出した。成形品の写真が図2に示されており、成形品に欠陥が不在であることを示している。
【0319】
(例61)
3Mから入手可能なK25中空ガラス球(254グラム)を、樹脂組成物(C)(847グラム)に加えて、充填樹脂組成物を形成し、それを混合し、続いて真空下で脱ガスした。充填樹脂組成物(1101グラム)を、懸濁液の形態の単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒(16.5グラム)と合わせ、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 70FG)に懸濁したC827(モノマーと触媒の比が60,000:1)であり、触媒懸濁液は、総モノマーと触媒の比の60,000:1を有した。充填樹脂組成物及び触媒懸濁液は、混合の直前は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒された樹脂組成物を、円筒アルミニウム成形型(内径4”及び高さ9”)の中に注ぎ、成形型は、周囲温度(20〜25℃)であった。触媒作用の90分後、アルミニウム成形型を、加熱ブランケットの使用により加熱した。触媒された樹脂組成物は、触媒作用後に101分間の発熱時間を有した。成形品を周囲温度に冷まし、続いて成形型から取り出した。成形品の写真が図3に示されており、成形品に欠陥が存在することを示している。理論に束縛されることなく、これらの欠陥は、液体環状オレフィンモノマー(例えば、DCPD)がROMP組成物の発熱の際に揮発することによって、特に液体環状オレフィンモノマーが、ROMP組成物が発熱し始める前に、成形型の異なる領域/区域の全体にわたって又はROMP組成物の全体にわたって均一に形成された硬質ポリマーゲルに達しなかった場合にもたらされると考えられる。
【0320】
(例62)
約880lbの重量を有する電解槽カバーを、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒により重合された樹脂組成物から成形した。(i)Ultrene(登録商標)99 Polymer Grade DCPD(6%のトリシクロペンタジエンを含有)、(ii)2phrのEthanox(登録商標)4702及び(iii)4phrのKraton(登録商標)G1651Hを含む樹脂組成物。単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 500FG)に懸濁されたルテニウム触媒C827(モノマーと触媒の比が60,000:1)であった。電解槽カバーを複合成型により成形した。成形型は、1つが電解槽カバーの内部(コア)を確定する雄セクションであり、1つが電解槽カバーの内部(キャビティー)を確定する雌セクションである、2つの複合セクションを含んだ。成形型の雄及び雌セクションの両方とも、成形型の温度を制御する液体(水/プロピレングリコール混合物)の循環用加熱/冷却チャンネルを含有した。成形型は、約5フィートの幅、約8フィートの長さ及び約4フィートの高さを有した。2つの成形型セクション(雄及び雌)を、一連のラッチ作用手動クランプにより一緒に保持した。成形型を、電解槽カバーの上部が確定されている底部でゲートさせ、複数のベント(4つ)を、電解槽カバーのフランジ付き底面が確定されている成形型上部に分布させた。樹脂組成物を、100:2の体積比(樹脂組成物:触媒懸濁液)で単一のミックスヘッド(mix head)により触媒懸濁液と合わせ、3構成要素反応射出成形(RIM)機の使用によって、800〜1200psigの射出圧力により約131.6lb/分の連続的な速度で成形型に射出した。触媒懸濁液を、800〜1200psigの射出圧力により約2.7lb/分の連続的な速度で反応射出成形(RIM)機から射出させた。成形型を10度未満の化合物角度で傾けた。成形型の雌セクション(キャビティー)は93°Fであり、成形型の雄セクション(コア)は73°Fであった。樹脂組成物は、射出の直前は、デイタンク(day tank)中で70°Fであった。触媒懸濁液は、射出の直前は、触媒分配タンク中で90°Fであった。成形型を、6分30秒(短時間)で充填した。反応性配合物の発熱までの時間(煤煙時間)は、42分34秒で観察された。成形電解槽カバーを、57分0秒後に成形型から取り出し、周囲温度に冷ました。手持式携帯光源を使用して、半透明成形電解槽カバーを、構造的欠陥及び不備、表面(外側)不備(例えば、気泡又は不要な空隙)及び基材(内側)不備(例えば、気泡又は不要な空隙)について目視検査した。構造的不備、表面(外側)不備又は基材(内側)不備は、観察されなかった。
【0321】
(例63)
例62の一般的手順の後、約880lbの重量を有する電解槽カバーを、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含む環状オレフィン触媒組成物により重合された樹脂組成物から成形した。樹脂組成物は、(i)Ultrene(登録商標)99 Polymer Grade DCPD(6%のトリシクロペンタジエンを含有)、(ii)2phrのEthanox(登録商標)4702及び(iii)4phrのKraton(登録商標)G1651Hであった。環状オレフィン触媒組成物は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の混合物であり、触媒組成物は、2phrのCab−o−sil TS610を含有する鉱油(Crystal Plus 500FG)に懸濁したC827(モノマーと触媒の比が60,000:1)及びC848(モノマーと触媒の比が500,000:1)を含んだ。樹脂組成物を、800〜1200psigの射出圧力で約127.8lb/分の連続的な速度により成形型に射出し、触媒懸濁液を、800〜1200psigの射出圧力により約2.5lb/分の連続的な速度で射出した。成形型の雌セクション(キャビティー)は95°Fであり、成形型の雄セクション(コア)は94°Fであった。樹脂組成物は、射出の直前は、デイタンク中で76°Fであった。触媒懸濁液は、射出の直前は、触媒分配タンク中で78°Fであった。成形型を、6分26秒(短時間)で充填した。反応性配合物の発熱までの時間(煤煙時間)は、23分0秒で観察された。成形電解槽カバーを、49分0秒後に成形型から取り出し、周囲温度に冷ました。手持式携帯光源を使用して、半透明成形電解槽カバーを、構造的欠陥及び不備、表面(外側)不備(例えば、気泡又は不要な空隙)及び基材(内側)不備(例えば、気泡又は不要な空隙)について目視検査した。構造的不備、表面(外側)不備又は基材(内側)不備は、観察されなかった。類似した成形条件下において、同じ環状オレフィン樹脂組成物の使用によって、物品(例えば、電解槽カバー)を作製するために必要な時間は、2つの金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の代わりに使用したときに低減されることが注目される。この時間の低減(サイクル時間の低減)は、より多く物品(例えば、電解槽カバー)が、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、単一の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の代わりに使用したときと同じ時間(例えば、8時間の労働時間)で作製されうるという点において、経済的な利点を提供する。
以下、特願2015−560322の出願当初の特許請求の範囲の内容を記載する。
[請求項1]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、ROMP組成物。
[請求項2]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物と組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、ROMP組成物を重合する方法。
[請求項3]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物を、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物と組み合わせて、ROMP組成物を形成し、ROMP組成物を重合するのに有効な条件にROMP組成物を曝すことを含む、物品を製造する方法。
[請求項4]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、製造品。
[請求項5]
ポリマー物品を調製するためのROMP組成物の使用であって、ROMP組成物が、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィンを含む樹脂組成物とを含む、上記使用。
[請求項6]
ポリマー複合体を調製するためのROMP組成物の使用であって、ROMP組成物が、少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含むオレフィンメタセシス触媒組成物と、少なくとも1種の環状オレフィン及び少なくとも1種の基材材料を含む樹脂組成物とを含む、上記使用。
[請求項7]
樹脂組成物を重合するためのオレフィンメタセシス触媒組成物の使用であって、オレフィンメタセシス触媒組成物が少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒を含み、樹脂組成物が少なくとも1種の環状オレフィンを含む、上記使用。
[請求項8]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が、オスミウムカルベンオレフィンメタセシス触媒、ルテニウムカルベンオレフィンメタセシス触媒、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物、請求項2若しくは3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用。
[請求項9]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒が、式(I)の構造を有する錯体から選択される、請求項1に記載の組成物、請求項2若しくは3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用
[化1]

[式中、
Mは、第8族遷移金属であり、
、L及びLは、独立に、中性電子供与体配位子から選択され、
nは、0又は1であり、したがってLは存在しても存在しなくてもよく、
mは、0、1又は2であり、
kは、0又は1であり、
及びXは、独立に、アニオン性配位子であり、
及びRは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び官能基から選択され、
、X、L、L、L、R及びRの任意の2つ以上は、一緒になって、1つ又は複数の環式基を形成することができ、さらに、X、X、L、L、L、R及びRの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい]。
[請求項10]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の少なくとも1種が、Lが式(II)の構造を有するカルベン配位子である錯体から選択される、請求項9に記載の組成物、方法、製造品及び使用。
[化2]

[式中、
X及びYは、独立に、C、N、O、S及びPから選択され、
Xが、O又はSである場合、pは0であり、Xが、N又はPである場合、pは1であり、
Yが、O又はSである場合、qは0であり、Yが、N又はPである場合、qは1であり、
、Q、Q及びQは、独立に、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、及び−(CO)−から選択され、さらに、Q内の隣接する原子上の2つ以上の置換基は、連結して、追加の環式基を形成することができ、
w、x、y及びzは、独立に、0又は1であり、
、R3A、R及びR4Aは、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、及び置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルから選択され、
、X、L、L、R、R、R、R3A、R、R4A、Q、Q、Q及びQの任意の2つ以上は、一緒になって、環式基を形成することができ、さらに、X、X、L、L、Q、Q、Q、Q、R、R、R、R3A、R及びR4Aの任意の1つ又は複数は、担体に結合していてもよい]。
[請求項11]
少なくとも2種の金属カルベンオレフィンメタセシス触媒の少なくとも1種が、L、L及びLの少なくとも1つがN−複素環式カルベン配位子である錯体から選択される、請求項9に記載の組成物、方法、製造品及び使用。
[請求項12]
少なくとも1種の環状オレフィンが、歪みを有する環状オレフィン、歪みを有していない環状オレフィン、又はこれらの組合せから選択され、環状オレフィンが、官能基を含有することができ、又はハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカリールオキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボナト、アリールカルボナト、カルボキシ、カルボキシラト、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル、ハロアルキル置換カルバモイル、アリール置換カルバモイル、チオカルバモイル アルキル置換チオカルバモイル、アリール置換チオカルバモイル、カルバミド、シアノ、シアナト、チオシアナト、ホルミル、チオホルミル、アミノ、アルキル置換アミノ、アリール置換アミノ、アルキルアミド、アリールアミド、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ニトロ、ニトロソ、スルホ、スルホナト、アルキルスルファニル、アリールスルファニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールスルホニル、ボリル、ボロノ、ボロナト、ホスホノ、ホスホナト、ホスフィナト、ホスホ、ホスフィノ若しくはこれらの組合せから選択される基で置換されていてもよい、請求項1に記載の組成物、請求項2若しくは3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用。
[請求項13]
樹脂組成物が、少なくとも1種の外因性阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物、請求項2又は3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用。
[請求項14]
樹脂組成物が、少なくとも1種の接着促進剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物、請求項2若しくは3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用。
[請求項15]
樹脂組成物が、少なくとも1種の基材材料をさらに含む、請求項1に記載の組成物、請求項2若しくは3に記載の方法、請求項4に記載の製造品、又は請求項5、6若しくは7に記載の使用。
[請求項16]
ROMP組成物を、少なくとも1種の基材材料と接触させることをさらに含む、請求項2又は3に記載の方法。
[請求項17]
少なくとも1種の基材材料が、強化材料、ガラス繊維、ガラス生地、炭素繊維、炭素生地、アラミド繊維、アラミド生地、ポリオレフィン繊維、ポリオレフィン生地、ポリマー繊維、ポリマー生地、金属密度調節剤、微粒子密度調節剤、又はマクロ粒子密度調節剤から選択される、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
請求項3に記載の方法によって調製された、物品。
図1
図2
図3