(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2層以上の層構造を有するシングル丸編からなる多層構造丸編地であって、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同じ編みループを形成する部分を有し、該丸編地は該セルロース系長繊維を10〜50重量%含有し、衣服として使用されるときに人体の肌に接する肌面層表面から該編地の内部に向かって0.13mm以内の領域におけるセルロース系長繊維の露出比率が30%以上であり、該セルロース系長繊維と該疎水性繊維の糸長比が1.01〜1.20であり、該丸編地は、吸水加工が施されており、該肌面層の該丸編地の接触冷感性が100〜200W/m2/℃であり、かつ、該丸編地に水0.3ccを滴下した後の該丸編地の水分率が10%になる時間が50分以下であることを特徴とする、前記多層構造丸編地。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の編地は、2層以上の層構造を有するシングル丸編からなる、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編ループを形成する部分を有することを特徴とする。2層以上の層構造にすることで、編地の表面層と肌面層を完全に分けることが可能となり、各々の層に別々の機能を付与することができる。2層以上の層構造を得る方法として、従来ではダブル丸編機を使用し各層の編み組織を変更して各々を編みわけ、2層以上の層構造とする方法がある。例えば、ダブル丸編みの2列針床の内、ダイアル側の針床にて天竺編み、シリンダ側の針床にてタック編みを入れた天竺編みとすることで、ダイアル側の針床で編まれた生地とシリンダ側に針床で編まれた生地を連結し、天竺編みが重なった2層構造の編地を得ることができる。更にダイアル側の針床で編まれた天竺編地とシリンダ側の針床で編まれた天竺編地を編み分けた後、両天竺編地を結節する層を別に編めば、3層構造も得られる(両面タック編み)。本実施形態の2層以上の層構造とは、編み組織で層構造を成しているものではなく、使用する糸を編地の表面又は裏面に編み条件により各々を配置して糸での層構造を有するものであり、シングル丸編みから得られる。シングル丸編みとは1列針床で編まれる編地であり、一方の生地表面はニットループで構成され、他方の生地表面はシンカーループで構成される編地である。ダブル丸編みは編地の両面とも主にニットル−プで構成されるので、これとは異なる。ダブル丸編みは、通常、各層に1種類の繊維を使用することから、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編みループを形成し、編地の表面層及び肌面層に各々を配置する本実施形態の構成とは異なり、本実施形態におけるように、接触冷感性と速乾性を満足することは困難である。本発明における肌面とは、衣服として使用されるときに人体の肌に接する側の面を示し、通常は編地製造時の裏面である。本発明はこれに限定されず、編地表裏の何れかの表面が、後述するセルロース系繊維の露出比率の範囲を満たしていれば、当該面を肌面とする。
【0012】
2層以上の層構造を有するシングル丸編みからなり、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編ループを形成する部分を有する方法として、シングル丸編機を使用したプレーティング編みが好ましい。プレーティング編みでは、編み針への給糸角度を調整することにより、編地の表面層もしくは肌面層に任意に繊維を配置することができる。接触冷感を高めるためには、セルロース系長繊維aを肌面層、疎水性繊維bを表面層に各々配置されるようにそれぞれの給糸角度を調整すればよい。給糸角度とは、編み機を横から見た時の編み針が上げカムによって上がる前の編み針の頭の位置を結ぶ水平線を基準とし、編み針に給糸される糸の角度をいう(
図1参照)。セルロース系長繊維aを裏面層に、疎水性繊維bを表面層に使用する場合、「セルロース系長繊維の給糸角度A>疎水性繊維の給糸角度B」、更に「(セルロース系長繊維の給糸角度A)−(疎水性繊維の給糸角度B)≧10度」となるように調整するとよい。この給糸角度は0〜90度までの範囲で調整することが好ましく、セルロース系長繊維の給糸角度の好ましくは20〜80度、よりこの好ましくは30〜70度、更に好ましくは40〜60度、特に好ましくは40〜50度、疎水性繊維の給糸角度の好ましくは10〜70度、より好ましくは20〜60度、更に好ましくは20〜50度、特に好ましくは20〜40度である。
更に編地の表面層もしくは肌面層に任意に繊維を配置する方法として編成時の給糸張力を調整することで達成可能である。セルロース系長繊維aを肌面層、疎水性繊維bを表面層に配置するためには、その張力比(セルロース系長繊維の給糸張力÷疎水性繊維の給糸張力)が1.5〜4.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.0〜3.0、特に好ましくは2.5〜3.0である。給糸角度と張力比の両方を前記範囲に設定することで良好なプレーティング状態となり、所望の層構造を得ることができるが、給糸角度又は張力比のいずれか一方を上記の範囲に設定しても良好なプレーティング状態を得ることが可能である。
【0013】
セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編みループを形成することで、水分がセルロース系長繊維だけでなく、セルロース系長繊維と密着した疎水性繊維にも移行し、拡散性を高くすることができ、速乾性が向上する。セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編みループを形成する編みループは、編地タテ方向及びヨコ方向に連続して構成されることが好ましいが、連続して構成されなくてもしてもセルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編みループを形成する部分があれば、効果を発揮する。
更に弾性繊維cを使用して3種類の糸のプレーティング編みによる3層構造とする場合、弾性繊維は伸長させた状態で編み針に給糸されることから、編まれた後は伸長状態が解除され縮み、必然的に編みループが他の繊維に比べ小さくなり、最も編地の内側に配置されることで、3層構造の中間層に位置される(
図2参照)。
【0014】
本実施形態の編地に使用するセルロース系長繊維とはレーヨン、キュプラ、アセテート等の再生セルロース長繊維、絹等の天然セルロース長繊維等があり、これらに特に限定されない。これらは、綿やセルロース系短繊維に比べ、毛羽が少なく、糸表面が滑らかであるため、水分の拡散性が高い。中でも再生セルロース長繊維が好ましく、その中でもレーヨン長繊維やキュプラ長繊維は、繊維の水分率も大きく吸湿効果が高いため、より好ましい。更にキュプラ長繊維は丸断面であることから、レーヨン長繊維に比べて繊維1本1本の表面がなめらかであり、繊度も細いため、編地に用いた際には非常に柔らかい風合いとなり、更に拡散性も高く、特に好ましい。
また、これらのセルロース系長繊維に酸化チタンを含有していると、UVカット性や接触冷感性が向上することから特に好ましい。
【0015】
本実施形態の編地に使用する疎水性繊維とはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維があり、疎水性であればこれらに特に限定されない。また、これらの短繊維や長繊維、更にこれらの混紡糸や複合撚糸、混繊糸、仮撚混繊糸など、形態に制限はない。特に紡績糸の風合いを得るためには、ポリエステル紡績糸を使用すること、速乾性を高めるためには、ポリエステル長繊維やポリアミド長繊維を使用するが好ましい。
【0016】
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維が10〜50重量%含まれることを特徴とする。好ましくは15〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%である。セルロース系長繊維が10重量%未満であると、吸湿性が不十分で蒸れ感を感じ、不快となってしまうことがある。50重量%を超えると、編地自体の水分保持量が多くなりすぎ、速乾性が劣ることがある。
【0017】
本実施形態の編地に、肌面層の凹凸高さの差が0.13〜0.60mmとなる凹凸を有していてもよく、好ましくは0.15〜0.55mm、より好ましくは0.20〜0.50mm、更に好ましくは0.25〜0.45mmである。肌面層の凹凸高さの差を0.13mm〜0.60mmにする方法としては、編み組織や肌面層に使用する繊維の糸長を大きくすること、肌面層に使用する繊維の繊度をウェール方向(タテ方向)に変えることなどで凹凸高さの差が得られる。肌面層に使用する繊維の糸長を大きくすると、その繊維の編みループが大きくなり、肌面層に吐出することで、その編みループの高さが凹凸の高さの差となる。また、ウェール方向(編地のタテ方向)に糸長に差を持たせ、糸長の小さい編みループ段と糸長の大きい編みループ段でボーダー調とし、その編みループ段の高さの差を凹凸高さの差とすることもできる。更にウェール方向(編地のタテ方向)に使用する繊維の繊度に差を持たせ、繊度の小さい繊維による編みループ段と繊度の大きい編みループ段でボーダー調とすることで、凹凸高さの差を付与することも可能である。凹凸高さの差が0.13mm未満では、凹凸の無い編地と大差ない状態となり、特にセルロース系長繊維と疎水性繊維を交編し、ウェール方向(編地のタテ方向)にセルロース系長繊維と疎水性繊維をボーダー調に編地肌面層に配置した場合、肌面にセルロース系長繊維と疎水性繊維の両方が接触することになり、接触冷感性が不十分となることがある。凹凸高さの差が0.60mmを超えると、肌との接触面積が減りすぎ、接触冷感性が悪くなったり、肌触りやスナッグが悪化することがある。
【0018】
本実施形態の編地は、肌面層表面から0.13mm以内の領域におけるセルロース系長繊維の露出比率が30%以上であることを特徴とするが、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。肌面層から0.13mm以内の領域におけるセルロース系長繊維の露出比率が30%未満では、十分な接触冷感性が得られないことがある。前述した本発明のセルロース系長繊維が10〜50重量%含まれながら、肌面層表面から0.13mm以内の領域におけるセルロース系長繊維の露出比率が30%以上であるということは、編地内に含まれるセルロース系長繊維が、肌面層に集中して構成されていることを意味する。そうすることで編地の接触冷感性を向上させる。
【0019】
本実施形態の編地は、接触冷感性が100〜200W/m
2/℃であり、好ましくは105〜190W/m
2/℃、より好ましくは110〜180W/W/m
2/℃、更に好ましくは115〜170W/m
2/℃、特に好ましくは120〜160W/m
2/℃である。接触冷感性が100W/m
2/℃未満では、接触冷感性を感じにくいことがある。他方、200W/m
2/℃を超えると、冷感を強く感じ過ぎ、寒く感じてしまうことがある。
【0020】
本実施形態の編地は、水0.3ccを生地に滴下した後の生地の水分率が10%になる時間が50分以下であることを特徴とするが、好ましくは45分以下、より好ましくは43分以下である。水0.3ccを生地に滴下した後の生地の水分率が10%になる時間が50分を超えると、汗が編地中に長く滞在することで、ベタツキ感や汗冷えを感じて不快となることがある。
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維が配された表面の平均摩擦係数が0.90以下で、セルロース系長繊維が配された表面の摩擦係数の平均偏差が0.0070以下であることが好ましい。セルロース系長繊維が配された表面の平均摩擦係数はより好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下、特に好ましくは0.75以下である。セルロース系長繊維が配された表面の平均摩擦係数が0.90を超えると肌触りが悪くなる。
更にセルロース系長繊維が配された表面の摩擦係数の平均偏差は、より好ましくは0.0065以下、更に好ましくは0.0060以下である。セルロース系長繊維が配された表面の摩擦係数の平均偏差が0.0070を超えると肌触りが悪くなる。
【0021】
本実施形態の編地には吸水加工がされていることが好ましい。吸水加工がされていると、使用する疎水性繊維に吸水性が付与され、拡散性が高くなり、速乾性が向上する。特に本発明のセルロース系長繊維と同一編みループで形成される疎水性繊維に吸水加工されていると、密着したセルロース系長繊維の水分が疎水性繊維に移行し、拡散性を高くすることができ、速乾性が向上する。使用する吸水加工剤については特に限定されず、一般的な吸水加工剤を使用できる。
【0022】
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維の単糸繊度が0.1〜7.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0dtex、更に好ましくは0.5〜4.0dtex、特に好ましくは1.0〜3.0dtex、更に特に好ましくは1.0〜2.0dtexである。セルロース系長繊維の単糸繊度が0.1dtex未満では、着用時の摩擦等で単糸切れが起こり、摩擦耐久性が悪くなる。7.0dtexを超えると、吸水時の拡散性が不十分となり、速乾性が不足したり、肌触りが悪くなることがある。
【0023】
本実施形態の編地は、少なくとも天竺組織を一部に使用していることが好ましい。特にセルロース系長繊維と疎水性繊維が同じ編みループを形成している箇所が天竺組織であることが好ましい。セルロース系長繊維と疎水性繊維が同じ編みループを形成している箇所が天竺組織であると、セルロース系長繊維と疎水性繊維がより密着した状態で編地を構成することができ、更に表面層の疎水性繊維が外気に触れることから、速乾性が向上する。本実施形態の編地に使用する組織は特に限定されないが、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編ループを形成した天竺組織が編地全体の中の一部分に構成されていてもよい。例えば、セルロース系長繊維と疎水性繊維を同一編ループで形成した天竺組織を10コース編成した後、疎水性繊維のみをカノコ編みで10コース編成したボーダー調の組織である。また、セルロース系長繊維と疎水性繊維が同一編ループを形成した天竺組織を編地全体に構成したものでもよい。
【0024】
本実施形態の編地は、弾性繊維をさらに含有していることが好ましい。弾性繊維を含有することで、ストレッチ性が付与され、着用時の突っ張り感が軽減され、動きやすくなり、快適感が向上する。弾性繊維としては、ポリウレタン弾性糸、ポリエーテル・エステル弾性糸、ポリアミド弾性糸、ポリオレフィン弾性糸、あるいは、これらに非弾性繊維を被覆し、カバリング状態としたものでもよい。更に天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状である、いわゆるゴム糸などを使用することもできるが、伸縮性に優れ、一般的に広く利用されているポリウレタン弾性糸が特に好ましい。弾性繊維の繊度は、着用した際に衣服が重くなり過ぎないように、15〜80dtexのものが好ましく、より好ましくは20〜60dtex、更に好ましくは20〜50dtexである。
【0025】
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維と疎水性繊維の糸長比が1.01〜1.20であることが好ましく、より好ましくは1.02〜1.15、更に好ましくは1.02〜1.10である。セルロース系長繊維と疎水性繊維の糸長比が1.01を下回ると、同一編みループを形成している疎水性繊維が肌面へ露出しやすくなり、セルロース長繊維の肌面への接触が減少し、冷感性が不足することがある。他方、1.20を超えるとセルロース系長繊維が肌面に露出し、冷感性は向上するが、肌面の凹凸が増し、肌触りが悪くなったり、スナッグの悪化やセルロース系繊維の摩耗切れが増加することがある。尚、疎水性繊維とは主に編地表面を構成する繊維のことをいう。
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維と疎水性繊維の単糸繊度比が0.3〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.9、更に好ましくは0.5〜0.8、特に好ましくは0.6〜0.7である。セルロース系長繊維と疎水性繊維の単糸繊度比が0.3未満になると、セルロース系長繊維の単糸が太すぎて、肌触りが悪くなることや、疎水性繊維の単糸繊度が細くなりすぎて、ピリングや毛羽の発生が起こり、品位が不良となることがある。セルロース系長繊維と疎水性繊維の単糸繊度が1.0を超えるということは、セルロース系長繊維の単糸繊度が疎水性繊維の単糸繊度よりも小さいということになり、疎水性繊維への水分の拡散が不十分となり速乾性が不足することがある。尚、疎水性繊維とは主に編地表面を構成する繊維のことをいう。
【0026】
本実施形態の編地は、セルロース系長繊維と疎水性繊維の繊度比が1.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.6、更に好ましくは1.3〜2.2、特に好ましくは1.4〜1.8である。セルロース系長繊維と疎水性繊維の繊度比が1.0未満ということはセルロース系長繊維の繊度が疎水性繊維の繊度よりも大きいということになり、セルロース系長繊維が編地の肌面のみならず、編地表面にも散見されるような状態になり、イラツキや品位の不良が発生する。セルロース系長繊維と疎水性繊維の繊度比が3.0を超えると、特徴であるセルロース系長繊維の含有率を達することが困難になったり、編地タテ方向に並ぶシンカーループの間隔が開き、肌触りが不良となることがある。尚、疎水性繊維とは主に編地表面を構成する繊維のことをいう。
【0027】
本実施形態の編地は、疎水性繊維の単糸繊度が0.3〜3.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5dtex、更に好ましくは0.6〜2.0dtex、特に好ましくは0.7〜1.5dtexである。尚、疎水性繊維とは主に編地表面を構成する繊維のことをいう。
【0028】
本実施形態の編地に使用するセルロース系長繊維の繊度は特に限定されないが、30〜200dtexが好ましく、より好ましくは30〜180dtex、更に好ましくは30〜150dtex、特に好ましくは50〜120dtexである。
本実施形態の編地に使用する疎水性繊維の繊度は特に限定されないが、紡績糸なら100〜30番が好ましい。特に好ましくは90〜30番、更に好ましくは80〜40番である。
【0029】
本実施形態の編地の目付はその用途に合わせて適時設定すればよいが、80〜400g/m
2が好ましい。特に好ましくは100〜350g/m
2、更に好ましくは120〜300g/m
2、特に好ましくは130〜200g/m
2である。
本実施形態の編地の厚みは特に制限はないが、0.4〜1.3mmが好ましい。特に好ましくは0.5〜1.2mm、更に好ましくは0.6〜1.0mm、特に好ましくは0.7〜0.9mmである。
【0030】
編機のゲージについては、特に限定されないものの、18〜40ゲージの編機を、用途や使用する繊維の太さによって、任意に選択することが好ましいが、衣料として適度な目付が得られることや、汎用性を考え、特に20〜36ゲージが好ましい。
本実施形態の丸編地はセルロース系長繊維にて構成された編地表面側を肌面側、疎水性繊維にて構成された編地表面を外気側として使用することで所望の効果を発現する。
【0031】
本実施形態の編地は、生機編地とした後、精錬、熱セット、染色等の加工を行う。加工方法は、通常の丸編地の加工方法に準じて行えばよい。また、要求される伸び特性や目付、厚み等により、適宜仕上げ密度を調整することが好ましい。
さらに、染色段階での付帯加工として、防汚加工、抗菌加工、消臭加工、防臭加工、吸汗加工、吸湿加工、紫外線吸収加工、減量加工など、さらに後加工としてカレンダー加工、エンボス加工、シワ加工、起毛加工、オパール加工、シリコン系柔軟剤等を使用した柔軟加工など、最終的な要求特性に応じて適宜付与することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。
実施例における各評価方法は次のとおりであった。
(i)セルロース系長繊維の混率(重量%)
編地上に100ウェール分タテ方向に切り込みを入れ、編み組織を構成する糸種・本数を編地からほどき、各々重量を測定する。それらすべての糸重量に対して、各々の糸重量の比率を算出する。
【0033】
(ii)凹凸高さの差
編地断面写真を(株)キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−2000にて任意の倍率で撮影し、計測モードにて、表面層を基準として肌面層の凹部分と凸部分の高さを測定し、その差を凹凸高さの差として算出する。任意の場所5カ所を測定する。
【0034】
(iii)セルロース系長繊維の露出比率
編地を反応染色(濃色系の反応染料1%owf、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、浴比1:100、60℃×30分)し、セルロース系長繊維に色を付け、染色する前の密度になるように熱セットする。その編地の肌面を(株)ハイロックス社製デジタルマイクロスコープKH−8700にて100倍の倍率で、3D観察モードで0.02mmの間隔で編地肌面の最外層から編地の厚みの分まで撮影し、3D画像を撮影する。その後、面積計測モードで、編地肌面の最外層を基準として、そこから0.13mmの位置で水平に編地をカットした画像をカラー印刷する。その印刷画像を20℃×65%環境下で24時間調湿した後、画像部分を切り出し、水平にカットした箇所(編地肌面の最外層から013mmよりも深い部分)を切り落とす。残った印刷画像の中から染色されて色のついた繊維部分を切り落とし、その後の印刷画像の重量を測定し、染色されて色のついた繊維部分(セルロース系長繊維)の比率を算出する。
編地が染色されている場合は、セルロース系長繊維を脱色した後、脱色する前の密度になるように熱セットし直して測定する。
【0035】
(iv)接触冷感性
20℃×65%環境下において調湿された8cm×8cmにカットされた編地を、カトーテック社製KES−F7−IIにて、環境温度+10℃に温められた該装置の熱板を編地の肌面に置いた時の最大熱移動量(W/m
2/℃)を測定する。
【0036】
(v)水0.3ccを生地に滴下した後、生地の水分率が10%になる時間
20℃×65%環境下において調湿された10cm×10cmにカットされた編地の重量を測定し、その後、肌面にマイクロピペットにて0.3ccの水を滴下し、滴下した水が完全に吸水したことを確認した後、そこから時間を測定開始し、吊り干しした状態で5分ごとに重量を測定し、編地中の水分率が10%を下回るまで測定する。その測定値をグラフにし、編地中の水分率が10%になる時間を求める。
【0037】
(vi)平均摩擦係数、摩擦係数の平均偏差
カトーテック社製、摩擦感テスター KES−SE−SPを使用し、測定速度1mm/s、荷重50gの条件で、編地のセルロース系長繊維が配された表面を編地のタテ方向に向かって接触子である合皮でこすり、平均摩擦係数(MIU)と摩擦係数の平均偏差(MMD)を測定する。N=3のデータを採取し、タテ方向の向きを変え、更にN=3のデータを採取し、その平均値を算出する。
【0038】
(vii)糸長比
編地上に100ウェール分の範囲をマーキングし、セルロース系長繊維と疎水性繊維を編地からほどく。ほどいた糸の上端を固定し、下端に0.088cN/dtexの荷重をかけ、30秒後の長さを測定する(糸長:mm/100w)。測定値から以下の式:
糸長比=(セルロース系長繊維の糸長)/(疎水性繊維の糸長)
によって、糸長比を算出する。
【0039】
(viii)セルロース系長繊維と疎水性繊維の単糸繊度比
編地から各々の繊維を抜出し、単糸繊度を求め、以下の式から算出する。
単糸繊度比=疎水性繊維の単糸繊度÷セルロース系長繊維の単糸繊度
【0040】
(ix)セルロース系長繊維と疎水性繊維の繊度比
編地から各々の繊維を抜出し、繊度を求め、以下の式から算出する。
繊度比=疎水性繊維の繊度÷セルロース系長繊維の繊度
【0041】
(x)吸湿性
25cm×25cmにカットされた編地を乾燥機にて110℃×2時間乾燥させた、絶乾状態の試料の重量を測定する。その試料を20℃×90%の人工気候室に投入し、3時間後に重量を測定する。測定値から絶乾状態の試料重量に対する、20℃×90%環境下での重量変化率を算出する。
【0042】
(xi)放熱性
20℃×65%環境下において調湿された編地を、カトーテック社製KES−F7−IIにて、保温性測定のドライコンタクト法にて熱板温度30℃、風量0.3m/秒にて測定し、下記計算式:
放熱量(W/m
2/℃)=測定値(W/0.01m
2/10℃)×(100/10)
で放熱量を算出する。
【0043】
[実施例1]
24Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル紡績糸50番の糸長を330mm/100w、ポリウレタン弾性糸22dtexの糸長を104mm/100w、キュプラ長繊維56dtex30fの糸長を320mm/100wで給糸角度をポリエステル紡績糸よりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、ポリエステル紡績糸を編地表面層、ポリウレタン弾性糸を編地中間層、キュプラ長繊維を編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後通常のプレセットを行った後、染色仕上げを行い、その際に高松油脂(株)性吸水加工剤SR−1000を2wt%加え、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0044】
[実施例2]
32Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル長繊維56dtex72fの糸長を260mm/100w、ポリウレタン弾性糸22dtexの糸長を81mm/100w、キュプラ長繊維56dtex30fの糸長を250mm/100wで給糸角度をポリエステル長繊維よりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、ポリエステル長繊維を編地表面層、ポリウレタン弾性糸を編地中間層、キュプラ長繊維を編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0045】
[実施例3]
32Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル長繊維56dtex72fの糸長を250mm/100w、ポリウレタン弾性糸22dtexの糸長を75mm/100w、キュプラ長繊維33dtex24fの糸長を240mm/100wで給糸角度をポリエステル長繊維よりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、ポリエステル長繊維を編地表面層、ポリウレタン弾性糸を編地中間層、キュプラ長繊維を編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0046】
[実施例4]
24Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル長繊維167dtex144fの糸長を310mm/100w、ポリウレタン弾性糸78dtexの糸長を100mm/100w、キュプラ長繊維84dtex45fの糸長を280mm/100w、ポリエステル長繊維84dtex36fの糸長を290mm/100wとし、ポリエステル長繊維167dtex144fとポリウレタン弾性糸78dtexとキュプラ長繊維84dtex45fをプレーティング編みで編成した後、ポリエステル長繊維167dtex144fとポリウレタン弾性糸78dtexとポリエステル長繊維84dtex36fをプレーティング編みで編成し、肌面層がキュプラ長繊維84dtex45fとポリエステル長繊維84dtex36fがボーダー調となるように編成した。その際の給糸角度を、キュプラ長繊維84dtex45fを編成する箇所では、ポリエステル長繊維167dtex144fよりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整し、ポリエステル長繊維84dtex36fを編成する箇所では、ポリエステル長繊維167dtex144fよりもポリエステル長繊維84dtex36fの方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、ポリエステル長繊維167dtex144fを編地表面層、ポリウレタン弾性糸を編地中間層、キュプラ長繊維とポリエステル長繊維84dtex36fを編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0047】
[
参考例5]
染色加工時の吸水加工を施さなかった以外は実施例1と同じ糸種、編成方法、染色加工を行い、以下の表1に示す性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0048】
[比較例1]
28Gダブル丸編機を用いて、
図3の両面タック編み組織にて、ポリエステル長繊維84dtex24fで表面層と肌面層を構成し、その表面層と肌面層をつなぐ結節糸をキュプラ長繊維56dtex30fとしてキュプラ長繊維が編地の中間層に位置した3層編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0049】
[比較例2]
28Gダブル丸編機を用いて、
図4のメッシュ組織にて、ポリエステル長繊維56dtex72fで表面層を構成し、キュプラ長繊維56dtex30fで肌面層を構成した2層編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0050】
[比較例3]
28Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、綿50番の糸長を330mm/100w、キュプラ長繊維56dtex30fの糸長を320mm/100wで給糸角度を綿よりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、綿を編地表面層、キュプラ長繊維を編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0051】
[比較例4]
24Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル紡績糸50番の糸長を320mm/100w、ポリウレタン弾性糸22dtexの糸長を104mm/100w、キュプラ長繊維56dtex30fの糸長を330mm/100wで給糸角度をポリエステル紡績糸よりもキュプラ長繊維の方を小さくなるように調整したプレーティング編みにて3層天竺を編成した。この編地は、ポリエステル紡績糸よりもキュプラ長繊維の糸長を大きくし、更に給糸角度をポリエステル紡績糸よりもキュプラ長繊維の方を小さくなるように調整したため、ポリエステル紡績糸とキュプラ長繊維が編地表面層や編地肌面層の両方に配置されたものである。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0052】
[比較例5]
24Gシングル丸編機を用いて、
図2の天竺組織にて、ポリエステル紡績糸50番の糸長を320mm/100w、ポリウレタン弾性糸22dtexの糸長を104mm/100w、モダール紡績糸80番の糸長を330mm/100wで給糸角度をポリエステル長繊維よりもキュプラ長繊維の方を大きくなるように調整したプレーティング編みにて、ポリエステル紡績糸を編地表面層、ポリウレタン弾性糸を編地中間層、モダール紡績糸を編地肌面層に配置した3層天竺編地を編成した。その後実施例1と同様の染色加工を行い、以下の表1の性量・機能を有する多層丸編地を得た。
【0053】
【表1】