特許第6607961号(P6607961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6607961反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607961
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20191111BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   G01S7/481 A
   G01C3/06 120Q
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-560234(P2017-560234)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公表番号】特表2018-514791(P2018-514791A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016060494
(87)【国際公開番号】WO2016184735
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】15167963.6
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴゴラ, トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター, アンドレアス
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0227317(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0182587(US,A1)
【文献】 特開平01−272457(JP,A)
【文献】 特開2010−096574(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013205589(DE,A1)
【文献】 特開2001−208845(JP,A)
【文献】 特開2007−298372(JP,A)
【文献】 特表2002−525582(JP,A)
【文献】 特開2006−047079(JP,A)
【文献】 特開2010−127918(JP,A)
【文献】 特開平08−129064(JP,A)
【文献】 特開2004−212059(JP,A)
【文献】 特開2000−088566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48−7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00−3/32
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型目標物(33,51,61)からの距離を光学的に測定する装置(10)であって、
電気光学装置として構成されて、レーザビーム(27)を発するビーム発生源(14)と、
もう1つの電気光学装置として構成されて、前記反射型目標物で反射または散乱された受光ビーム(28)を受光する検出器(15)と、
前記レーザビーム(27)を整形する出射側光学システム(21)、及び前記受光ビーム(28)を整形する受光側光学システム(22)を有するビーム整形システム(16)と、
前記レーザビーム(27)のビーム経路に配置可能なレーザビーム整形部材(35)と、を備え、
前記レーザビーム整形部材(35)は、出射側素子(72ij(i,j=1〜3);82ij(i,j=1〜5);92ij(i,j=0,i,j=1〜4))の第1配列(71;81;91)を有する出射側開口配置部材として構成され、
前記出射側素子(72ij;82ij;92ij)は、第1コントロールユニット(73)により、前記レーザビーム(27)に対して透過性を有さない出射状態(TSij<10%)と、前記レーザビーム(27)に対して部分的な透過性を有する出射状態(10%≦TSij≦90%)と、前記レーザビーム(27)に対して完全な透過性を有する出射状態(90%<TSij)との間で切り換え可能であって、
前記第1コントロールユニット(73)には、前記第1配列(71;81;91)を有して予め設定された少なくとも1つの第1の出射側素子配置部材と、前記第1配列(81;91)を有して予め設定された少なくとも1つの第2の出射側素子配置部材とが設けられ、
前記第1の出射側素子配置部材において、前記レーザビーム(27)のビーム経路に配置される前記第1配列(71;81;91)の前記出射側素子(72ij;82ij;92ij)の少なくとも50%は、前記レーザービーム(27)に対して透過性を有さない状態(TSij<10%)に設定され、
前記第2の出射側素子配置部材において、前記レーザビーム(27)のビーム経路に配置される前記第1配列(81;91)の前記出射側素子(82ij(i,j=1〜5),92ij(i,j=0,i,j=1〜4))の少なくとも50%は、前記レーザービーム(27)に対し、部分的な透過性を有する状態(10%≦TSij≦90%)、または完全な透過性を有する状態(90%<TSij)に設定される
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1配列(81;91)における1つの出射側素子(8233;9200)または隣接する複数の出射側素子(9200,9222,9223,9232,9233)は、前記レーザビーム(27)のための出射側開口(83;93;96)を形成し、
前記出射側開口(83;93;96)は、部分的ビームを生成すると共に、前記部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度(αmin)を下回ることのない1つまたは複数の広がり角(α,α)で広げる
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1配列(81;91)は、複数の前記出射側素子によって形成される複数の出射側開口(84,85.1,85.2,85.3,85.4;94,95.1,95.2,95.3,95.4)を有し、
前記出射側開口(84,85.1,85.2,85.3,85.4;94,95.1,95.2,95.3,95.4)は、複数の部分的ビームを生成すると共に、前記部分的ビームのそれぞれを、1.0ミリラジアンの下限角度(αmin)を下回ることのない1つまたは複数の広がり角(α,α)で広げる
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1配列(81)における部分的な透過性または完全な透過性を有する前記出射側素子(8213,8222,8223,8224,8231,8232,8233,8234,8235,8242,8243,8244,8253;8212,8213,8214,8221,8222,8223,8224,8225,8231,8232,8233,8234,8235,8241,8242,8243,8244,8245,8252,8253,8254)は、整形用開口(86;87)を形成し、
前記整形用開口(86;87)は、前記レーザビームを、0.3ミリラジアンの上限角度(βmax)より小さい1つまたは複数の広がり角(β,β)を有した整形後レーザビームに変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記受光ビーム(28)のビーム経路に配置可能であり、受光側素子(75kl(k,l=1〜9))の第2配列(74)を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビ
ーム整形部材(36)を備え、
前記受光素側子(75kl)は、第2コントロールユニット(76)により、前記受光ビーム(28)に対して透過性を有さない受光状態(TEkl<10%)と、前記受光ビーム(28)に対して少なくとも部分的な透過性を有する受光状態(10%≦TEkl≦100%)との間で切り換え可能である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記受光側素子(75kl)は、前記受光ビーム(28)に対して透過性を有さない受光状態(TEkl<10%)と、前記受光ビーム(28)に対して部分的な透過性を有する受光状態(10%≦TEkl≦90%)と、前記受光ビーム(28)に対して完全な透過性を有する受光状態(90%<TEkl)との間で切り換え可能であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2コントロールユニット(76)には、前記第2配列(74)を有して予め設定された少なくとも1つの受光側素子配置部材が設けられ、
前記受光側素子配置部材において、前記第2配列(74)の1つの受光側素子または隣接する複数の受光側素子(75kl)は、前記受光ビーム(28)のための受光側開口(101.1,101.2,101.3,101.4;102.1,102.2,102.3,102.4)を形成する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記第2配列(74)は、互いに間隔を置いて配置された複数の受光側素子(101.1,101.2,101.3,101.4;102.1,102.2,102.3,102.4)を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2コントロールユニット(76)には、前記第2配列(74)を有して予め設定された複数の受光側素子配置部材が設けられ、
前記複数の受光側素子配置部材は、少なくとも一部の前記受光側素子(75kl)の透過率(TEkl)が、前記受光側素子配置部材の間で互いに相違する
ことを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記出射側素子(72ij)の前記第1配列(71)と、前記受光側素子(75kl)の前記第2配列(74)とは、共通の光調整器(34)に配置されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載するような、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射型目標物からの距離を光学的に測定する公知の装置として、望遠鏡と、距離測定デバイスと、レーザビームの広がりを調整する調整デバイスとからなる装置が開示されている。距離測定デバイスは、レーザビームを発するビーム発生源と、目標物で反射されて生じた受光ビームを受光する検出器と、レーザビームのビーム整形を行う出射側光学システム、及び受光ビームのビーム整形を行う受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。レーザビームの広がりは、ビーム発生源におけるレーザビームの射出角や、ビーム発生源と出射側光学システムとの間のビーム経路長、またはビーム発生源の前方への付加的な出射側光学システムの配置により調整が可能である。レーザビームの広がりを調整するために提案されている手段は、いずれも距離測定デバイスの内部で行われるものであり、距離測定デバイスの安定性が低下するという欠点がある。
【0003】
また、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置は、特許文献2によっても公知である。この装置は、距離測定デバイスと、目標物に向けてレーザビームを調整する調整デバイスとを備えている。距離測定デバイスは、1つまたは2つのビーム発生源と、検出器と、出射側光学システム及び受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。1つまたは2つのビーム発生源は、ビーム広がりが大きい第1レーザビームと、ビーム広がりが小さい第2レーザビームとを生成し、第1レーザビームは、散乱型目標物からの距離測定用に設けられ、第2レーザビームは、反射型目標物からの距離測定用に設けられる。
【0004】
適切なレーザビームの選択は、ビーム発生源、または検出器で行うことが可能である。一具体例では、第1レーザビーム及び第2レーザビームが同時に発せられて目標物に照射される。受光ビームのビーム経路には、検出器の手前に光学フィルタが配置され、第1レーザビーム及び第2レーザビームの一方のみが、この光学フィルタを通過するようになっている。光学フィルタは、手動操作によって配置され、または個々の光学フィルタを受光ビームのビーム経路に送り込むことが可能な、モータ駆動式のフィルタホイールまたはフィルタスライダにより配置される。異なるビーム広がりを有した2つのレーザビームが必要となるということは、目標物からの距離の測定を調整する上で不利である。様々なビーム広がりを形成するためには、いくつかのビーム経路といくつかのビーム整形用光学システムが必要となり、そのために必要な空間が増大する。
【0005】
更に、特許文献3も、反射型目標物からの距離を光学的に測定する公知の装置として、距離測定デバイスと、距離測定デバイスの外部に配置された調整デバイスとからなる装置を開示する。距離測定デバイスは、ビーム発生源と、検知器と、出射側光学システム及び受光側光学システムを有したビーム整形システムとを備える。調整デバイスは、レーザビームのビーム経路に配置可能で散乱用光学システムとして構成された、少なくとも1つのレーザビーム整形部材を備える。反射型目標物からの様々な距離の範囲に対してレーザビームを調整可能とするため、散乱用光学部材として構成されて、それぞれが互いに異なる散乱特性を有した複数のレーザビーム整形部材が設けられる。更なる展開として、調整デバイスは、受光ビームのビーム経路に配置可能で散乱用プレートとして構成された、少なくとも1つの受光ビーム整形部材を備える。散乱用プレートを用いることにより、受光ビームを減衰させて、検出器が過剰入力状態となるのを防止することが可能となる。受光ビームを反射型目標物からの様々な距離の範囲に適合させることができるようにするため、散乱用プレートとして構成されて光散乱特性が互いに異なる複数の受光ビーム整形部材が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19727988号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19840049号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102013205589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射型目標物からの距離を光学的に測定する公知の装置は、例えば直接的または間接的に入射する太陽光など、外部光により、固定的な測定時間での距離測定では測定誤差が増大し、そのために測定結果の精度が低下するという欠点があり、また距離測定に必要な測定時間が増大するという欠点がある。レーザビームとは異なり、外部光は方向を特定することができず、様々な方向から入り込む可能性がある。散乱用プレートとして構成された受光ビーム整形部材は、方向が定められた受光ビームに比べ、きわめてわずかしか外部光を減衰させない。リトロリフレクタ面を用いる場合、光学的に距離を測定する公知の装置は、散乱用光学部材が引き起こすビームの拡散に起因した更なる欠点を有する。リトロリフレクタ面が、入射するレーザビームの光軸に直角に配置されない場合には、最短距離がレーザビームの光軸上では測定されず、距離測定デバイスが測定した距離は、実際の距離に対して誤差を有する。このような誤差は、散乱用光学部材によってレーザビームが拡散するほど増大する。
【0008】
本発明の目的は、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置として、単体のリトロリフレクタ体、及びリトロリフレクタ面からの距離の測定に好適な装置を得ることにある。更に、この装置において、簡易な装備で外部光を減衰させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
初めに述べた、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置において、このような目的は、独立請求項1に記載の特徴を有した発明によって達成される。有用な更なる態様は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明によれば、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置は、出射側素子の第1配列を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材を備え、出射側素子は、第1コントロールユニットにより、レーザビームに対して透過性を有さない出射状態と、レーザビームに対して少なくとも部分的な透過性を有する出射状態との間で切り換え可能となっている。切り換え可能な出射側素子の第1配列を有する出射側開口配置部材として構成されたレーザビーム整形部材は、単体のリトロリフレクタ体からの距離の光学的な測定、及びリトロリフレクタ面からの距離の光学的な測定のいずれにも好適である。第1配列のそれぞれの出射側素子は、透過性を有さない出射状態と少なくとも部分的な透過性を有する出射状態との間で、互いに独立して切り換えることが可能であり、出射側素子の透過性は、少なくとも、レーザビームの波長周辺の波長領域と関係がある。出射側素子の透過性は透過率によって示され、透過率は、入射する放射エネルギに対する、透過が許容される放射エネルギの比として定義される。
【0011】
レーザビームは、第1配列における個々の出射側素子の透過率により、目標物の種類(散乱型目標物、単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)に適合するよう調整することが可能である。目標物については、散乱型目標物と反射型目標物とに区別され、反射型目標物については、単体のリトロリフレクタ体とリトロリフレクタ面とに区別される。単体のリトロリフレクタ体として定義される反射型目標物は、トリプルプリズムからなり、トリプルプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径よりも大きくなっていて、入射したレーザビームが、トリプルプリズムの1つの面に当たるようになっている。単体のリトロリフレクタ体の例としては、25mmまたは50mmの幅を有したトリプルプリズムがある。リトロリフレクタ面として定義される反射型目標物は、平坦面に互いに隣接して配置された複数のプリズムからなり、それぞれのプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径よりも小さくなっていて、入射したレーザビームが、複数のプリズムに当たるようになっている。リトロリフレクタ面の例としては、反射膜やキャッツアイ型リフレクタがある。
【0012】
発せられるレーザビームの放射エネルギは、散乱型目標物からの距離の測定用に設定される。散乱型目標物の場合、レーザビームは、目標物で大きな角度範囲にわたって散乱され、放射エネルギのわずかな部分のみが受光側光学システムに届き、検出器に送られる。反射型目標物からの距離測定の場合、レーザビームが目標物で反射され、指向された受光ビームとして検出器に照射される。反射型目標物からの距離測定において、検出器の過剰入力状態を避けるため、入射する受光ビームの放射エネルギは、ビーム発生源が発するレーザビームの放射エネルギよりも大幅に小さなものとする必要がある。放射エネルギの低減は、レーザビームのビーム経路に設けた手段、及び受光ビームのビーム経路に設けた手段の少なくとも一方により行うことが可能である。
【0013】
単体のリトロリフレクタ体の場合は、レーザビームの多くの部分が、本発明による出射側開口配置部材によって遮られ、通過できた部分は、回折によって広がる。このような広がりにより、単体のリトロリフレクタ体にレーザビームを指向させる上で要求される精度を低くすることができる。単体のリトロリフレクタ体の場合は、反射されて生じた受光ビームが検出器に検知されるように、レーザビームをリトロリフレクタ体の中央部分に当てる必要がある。レーザビームが単体のリトロリフレクタ体の中央部分に当たらないと、反射されて生じた受光ビームが平行にずれて、受光側光学システムから外れ、検出器から逸れる可能性がある。リトロリフレクタ面の場合は、本発明による出射側開口配置部材により、主として境界領域において、レーザビームが整形されると共に均質化される。
【0014】
出射側素子は、レーザビームに対して透過性を有さない出射状態、レーザビームに対して部分的な透過性を有する出射状態、及びレーザビームに対して完全な透過性を有する出射状態の間で切り換え可能であるのが好ましい。出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの形状は、個々の出射型素子の透過率によって設定することが可能である。透過性を有さない出射側素子は、透過率が10%未満であって、完全な透過性を有する出射側素子は、透過率が90%を上回り、部分的な透過性を有する出射側素子は、透過率が10%〜90%の範囲内にある。遮断されるレーザビームの部位では、出射側素子が透過性を有さない出射状態に切り換えられる。それ以外のレーザビームの部位では、出射側素子が部分的な透過性を有する出射状態、または完全な透過性を有する出射状態に切り換えられる。部分的な透過性を有する出射側素子の場合、通過が許容される放射エネルギの割合は、出射側素子の透過率によって変更することが可能である。透過率が小さくなるほど、より多くレーザビームが減衰する。出射側素子の透過率は、0%から100%までの間で、複数段階に分けて不連続に設定するか、或いは段階を設けずに連続的に変化させて設定することができる。複数段階に分けて不連続に透過率を設定可能とする場合は、段階を設けずに連続的に変化させて透過率を設定する場合に比べ、透過率の調整を迅速に行える点、及び電子回路が安価となる点で有利である。段階を設けずに連続的に変化させて透過率を設定可能とする場合は、出射側素子の透過率を極めて正確に設定できる点で有利である。
【0015】
本発明に係る装置の好ましい更なる態様において、第1コントロールユニットには、第1配列を有して予め設定された少なくとも1つの第1の出射側素子配置部材が設けられ、当該第1の出射側素子配置部材において、レーザビームのビーム経路に配置される第1配列の出射側素子の少なくとも50%は、レーザービームに対して透過性を有さない状態に設定される。出射側素子の比率を算出する際には、レーザビームが少なくとも部分的に当たる第1配列の出射側素子のみが考慮される。少なくとも50%の出射側素子がレーザービームに対して透過性を有さないように設定された第1配列は、単体のリトロリフレクタ体からの距離を光学的に測定する上で好適である。透過性を有さない少なくとも50%の出射側素子によって、レーザビームの多くの部分が遮られる。レーザビームのビーム経路に配置されて、部分的または完全な透過性を有する出射側素子は、レーザビームのための出射側開口を形成し、所望の大きさのレーザビームの広がりを得ることができる。出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの広がり角は、出射側開口の寸法によって設定することができる。
【0016】
第1配列における1つの出射側素子または隣接する複数の出射側素子は、レーザビームのための出射側開口を形成し、この出射側開口は、部分的ビームを生成すると共に、当該部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ることのない1つまたは複数の広がり角で広げるのが特に好ましい。レーザビームの広がり角に関する1.0ミリラジアンの下限角度は、単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定用に規定され、出射側開口の最大寸法に変換することができる。この出射側開口の最大寸法は、部分的ビームの広がり角を1.0ミリラジアンの下限角度より大きくしようとする場合に、上回ってはならない寸法である。出射側開口の寸法が小さくなるほど、出射側開口を出た後のビーム経路における部分的ビームの広がり角が大きくなる。広がり角の下限角度を1.0ミリラジアンとすることにより、単体のリトロリフレクタ体を用いる場合に、レーザビームの大きな広がりを確実に得ることができる。
【0017】
出射側開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。出射側開口の開口形状により、部分的ビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するかが定まる。正方形の開口形状を有した出射側開口は、1つの寸法(正方形の辺の長さ)によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。長方形の開口形状を有した出射側開口は、2つの寸法(長辺及び短辺の長さ)によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した出射側開口は、出射側開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有した部分的ビームを生成する。
【0018】
第1配列は、複数の出射側開口を有し、これらの出射側開口は、複数の部分的ビームを生成すると共に、部分的ビームのそれぞれを、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ることのない1つまたは複数の広がり角で広げるようにするのが特に好ましい。複数の出射側開口を用いることにより、単体のリトロリフレクタ体にレーザビームを指向させる上で要求される精度を低くすることができる。出射側開口を出た後の部分的ビームは、初めのうちはビーム径が小さいため、出射側開口配置部材から数mの近接した距離範囲では、出射側開口配置部材が、単体のリトロリフレクタ体に正確にレーザビームを指向させる必要があることになる。複数の出射側開口の場合、部分的ビームのそれぞれのビーム径が足し合わされることによってビーム径が増大する。単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するための出射側開口配置部材として、例えば、出射側開口配置部材に入る前のレーザビームの光軸と同軸に配置された中央出射側開口を、当該中央出射側開口の周囲に環状に分散配置された更なる出射側開口と共に用いるのが好適である。複数の出射側開口により生成され、出射側開口配置部材を出た後で互いに合体してレーザビームを形成する部分的ビームは、同じ広がり角を有するべきであり、周方向に沿って一定の広がり角であるのが好ましい。出射側開口のそれぞれは、同じ開口形状及び同じ寸法であるのが好ましい。
【0019】
単体のリトロリフレクタ体の場合に必要となる、入射する受光ビームの放射エネルギの低減は、出射側開口を介して行うことが可能である。レーザビームの放射エネルギは、出射側開口配置部材の出射側透過面積、及び出射側開口の透過性により調整することが可能である。出射側開口配置部材の出射側透過面積は、一般に個々の出射側開口の開口面積の合計として定義される。それぞれの出射側開口の寸法が同じ場合、出射側透過面積は、出射側開口の数と個々の出射側開口の開口面積との積で算出することもできる。出射側開口の開口面積に代え、または加え、出射側開口の透過性により、レーザビームの放射エネルギを調整することが可能である。出射側開口の透過性は、レーザビームの放射エネルギにのみ影響を及ぼすのに対し、出射側開口の寸法に依存する出射側透過面積は、部分的ビームの放射エネルギ及び広がり角を変化させる。出射側開口の透過性により、部分的ビームの広がり角を変化させることなく、レーザビームの放射エネルギを調整することが可能となる。
【0020】
本発明に係る装置の好ましい更なる態様において、第1コントロールユニットには、第1配列を有して予め設定された少なくとも1つの第2の出射側開口配置部材が設けられ、当該第2の出射側開口配置部材において、レーザビームのビーム経路に配置される第1配列の出射側素子の少なくとも50%は、レーザービームに対し、部分的な透過性を有する状態、または完全な透過性を有する状態に設定される。出射側素子の比率を算出する際には、レーザビームが少なくとも部分的に当たる第1配列の出射側素子のみが考慮される。少なくとも50%の出射側素子がレーザービームに対して部分的または完全な透過性を有するように設定された第1配列は、リトロリフレクタ面からの距離を光学的に測定する上で好適である。レーザビームのビーム経路に配置されて、部分的または完全な透過性を有するように設定された出射側素子は、レーザビームのための整形用開口を形成することができる。
【0021】
整形用開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。整形用開口の開口形状により、整形後レーザビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するかが定まる。正方形の開口形状を有した整形用開口は、正方形の辺の長さによって規定され、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有したレーザビームを生成する。長方形の開口形状を有した整形用開口は、長辺及び短辺の長さによって規定され、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有したレーザビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形ビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した整形用開口は、整形用開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有したレーザビームを生成する。
【0022】
第1配列における部分的または完全な透過性を有する出射側素子は、整形用開口を形成し、この整形用開口は、レーザビームを、0.3ミリラジアンの上限角度より小さい1つまたは複数の広がり角を有した整形後レーザビームに変換するのが特に好ましい。レーザビームの広がり角に関する0.3ミリラジアンの上限角度は、リトロリフレクタ面からの距離の測定用に規定され、整形用開口の最小寸法に変換することができる。広がり角の上限角度を0.3ミリラジアンとすることで、リトロリフレクタ面からの距離を測定する場合に、レーザビームを確実に均質化することができ、単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定に必要なレーザビームの大きな広がりが生じることは確実になくなる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、第1コントロールユニットには、予め設定された少なくとも1つの第1の出射側素子配置部材と、予め設定された少なくとも1つの第2の出射側素子配置部材とが設けられる。予め設定された少なくとも1つの第1の出射側素子配置部材と、予め設定された少なくとも1つの第2の出射側素子配置部材とを有した、本発明による装置は、単体のリトロリフレクタ体、及びリトロリフレクタ面からの距離の光学的な測定に好適である。予め設定された第1の出射側素子配置部材は、単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定に用いられ、予め設定された第2の出射側素子配置部材は、リトロリフレクタ面からの距離の測定に用いられる。第1配列を有して予め設定された複数の出射側素子配置部材を用いることにより、反射型目標物が位置する様々な距離範囲、反射型目標物の様々な形式(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)、及び反射型目標物の様々な大きさに対して、レーザビーム整形部材を調整することが可能となる。単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定については、1.0ミリラジアンの下限角度が規定され、リトロリフレクタ面からの距離の測定については、0.3ミリラジアンの上限角度が規定される。反射型目標物の両方の形式について、レーザビームの広がり角は、距離の増大に伴って減少させる必要があり、即ち、近接する領域では、大きな広がり角が有利であり、長い距離では小さな広がり角が有利である。単体のリトロリフレクタ体の場合の広がり角は、1.0ミリラジアンの下限角度を下回らないように制限され、リトロリフレクタ面の場合の広がり角は、0.3ミリラジアンの上限角度を上回らないように制限される。
【0024】
本発明に係る装置の好ましい更なる態様において、受光ビームのビーム経路に配置可能であり、受光側素子の第2配列を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材を備え、受光側素子は、第2コントロールユニットにより、受光ビームに対して透過性を有さない受光状態と、受光ビームに対して部分的な透過性を有する受光状態との間で切り換え可能である。切り換え可能な受光側素子の第2配列を有する受光側開口配置部材として構成された受光ビーム整形部材は、単体のリトロリフレクタ体からの距離の光学的な測定、及びリトロリフレクタ面からの距離の光学的な測定に好適である。受光側素子の第2配列を有する受光ビーム整形部材の使用により、反射型目標物までの距離、反射型目標物の形式(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)、及び反射型目標物の大きさに対して、受光ビームを適合させることが可能となる。それぞれの受光側素子は、透過性を有さない受光状態と少なくとも部分的な透過性を有する受光状態との間で、互いに独立して切り換えることが可能であり、受光側素子の透過性は、レーザビームの波長周辺の波長領域と関係がある。受光側素子の透過性は透過率によって示され、透過率は、入射する放射エネルギに対する、透過が許容される放射エネルギの比として定義される。
【0025】
反射型目標物(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)の場合に必要となる、入射する受光ビームの放射エネルギの低減は、受光側素子の第2配列を有する受光側開口配置部材を介して行うことが可能である。受光ビームの放射エネルギは、受光側開口配置部材の受光側透過面積、及び受光側開口の透過性によって調整することが可能である。受光側開口配置部材の受光側透過面積は、一般に個々の受光側開口の開口面積の合計として定義される。それぞれの受光側開口の寸法が同じ場合、受光側透過面積は、受光側開口の数と受光側開口の開口面積との積で算出することもできる。受光側開口配置部材に入る直前の受光ビームのビーム断面積に対する受光側透過面積の比が小さくなるほど、受光ビームの放射エネルギが小さくなる。受光側透過面積を制限することによる受光ビームの減衰は、レーザビーム発生源の波長とは無関係であり、例えば広範な波長スペクトルを有した太陽光のような外部光も減衰させることが可能であって、外部光の減衰は、付加的な装備を必要とすることなく行われる。
【0026】
受光側素子は、受光ビームに対して透過性を有さない受光状態と、受光ビームに対して部分的な透過性を有する受光状態と、受光ビームに対して完全な透過性を有する受光状態との間で切り換え可能であるのが特に好ましい。第2配列のそれぞれの受光側素子は、これら3つの受光状態(透過性を有さない受光状態、部分的な透過性を有する受光状態、及び完全な透過性を有する受光状態)の間で、互いに独立して切り換えが可能であり、受光側素子の透過性は、ビーム発生源の波長の周辺の波長領域と関係がある。第2配列の受光側素子の透過性は、第1配列の出射側素子の透過性と同様に、透過率によって示される。透過性を有さない受光側素子は、透過率が10%未満であり、完全な透過性を有する受光側素子は、透過率が90%を上回り、部分的な透過性を有する受光側素子は、透過率が10%〜90%の範囲内にある。受光側素子の透過率は、0%から100%までの間で、複数段階に分けて不連続に設定するか、或いは段階を設けずに連続的に変化させて設定することができる。複数段階に分けて不連続に透過率を設定可能とする場合は、段階を設けずに連続的に変化させて透過率を設定する場合に比べ、透過率の調整を迅速に行える点、及び電子回路が安価となる点で有利である。段階を設けずに連続的に変化させて透過率を設定可能とする場合は、受光側素子の透過率を極めて正確に設定できる点で有利である。
【0027】
受光側素子の透過性(不透過性、部分的な透過性、及び完全な透過性)は、ビーム発生源の波長の周辺の波長領域と関連があり、0%〜100%の範囲で示される透過率は、ビーム発生源の波長を有した受光ビームに適用される。ビーム発生源の波長に加え、それ以外の波長領域でも減衰を得ることが可能である。広範な波長領域で減衰を行う広帯域光学フィルタの使用が効果的である。受光ビームの減衰に広帯域光学フィルタを用いることには、受光ビームに加え、広範な波長スペクトルを有した太陽光のような外部光を、手間をかけずに減衰させることができるという利点がある。
【0028】
第2コントロールユニットには、第2配列を有して予め設定された少なくとも1つの受光側素子配置部材が設けられ、この受光側素子配置部材において、第2配列の1つの受光側素子または隣接する複数の受光側素子は、受光ビームのための受光側開口を形成するのが特に好ましい。反射型目標物(単体のリトロリフレクタ体またはリトロリフレクタ面)の場合に必要となる、入射する受光ビームの放射エネルギの低減は、受光側開口を介して行うことが可能である。受光ビームの放射エネルギは、受光側開口の開口面積、及び受光側開口の透過性により設定することが可能である。受光側開口の開口面積を制限することによる受光ビームの減衰は、レーザビーム発生源の波長とは無関係であり、付加的な装備を必要とすることなく外部光を減衰させることができる。
【0029】
第2配列は、互いに間隔を置いて配置された複数の受光側素子を有するのが特に好ましい。受光ビームのビーム断面に沿って分散配置された複数の受光側開口を用いることにより、受光ビームの均質化がなされる。均質化は、ビーム断面において不均質に放射エネルギが分布する受光ビームに対して特に好適である。受光側透過面積は、受光側開口の数、及び受光側開口の開口面積によって調整することが可能である。
【0030】
第2コントロールユニットには、第2配列を有して予め設定された複数の受光側素子配置部材が設けられ、これら複数の受光側素子配置部材は、少なくとも一部の受光側素子の透過率が、受光側素子配置部材の間で互いに相違するのが特に好ましい。第2配列を有して予め設定された複数の受光側素子配置部材を用いることにより、反射型目標物が位置する様々な距離範囲、反射型目標物の様々な形式(単体のリトロリフレクタ体、またはリトロリフレクタ面)、及び反射型目標物の様々な大きさに対し、受光ビーム整形部材を調整することが可能となる。これら距離範囲、形式、及び大きさに対する受光ビーム整形部材の調整は、受光側開口の寸法と、受光側透過面積とによって行うことが可能である。
【0031】
本発明に係る装置の好ましい更なる態様において、出射側素子の第1配列と受光側素子の第2配列とは、第1コントロールユニット及び第2コントロールユニットによって制御可能な、共通の光調整器に配置される。この光調整器は、例えば、内側出射領域と外側受光領域とを有し、内側出射領域は、出射側素子の第1配列を備え、外側受光領域は、受光側素子の第2配列を備える。内側出射領域と外側受光領域とを有する光調整器は、レーザビームと受光ビームとが同軸状に配置される距離測定デバイスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る装置として、距離測定デバイスと、レーザビーム整形部材及び受光ビーム整形部材を有した調整デバイスとを備え、反射型目標物からの距離を光学的に測定する装置を示す図である。
図2A】1つの出射側開口を有する第1の開口配置部材を備えた、図1に示す装置による、単体のリトロリフレクタ体からの距離の光学的な測定を示す図である。
図2B】複数の出射側開口を有する第1の開口配置部材を備えた、図1に示す装置による、単体のリトロリフレクタ体からの距離の光学的な測定を示す図である。
図3図1に示す装置による、リトロリフレクタ面からの距離の光学的な測定を示す図である。
図4】複数の出射側素子の第1配列、及び複数の受光側素子の第2配列を有する光調整器として構成された調整デバイスの一実施形態を示す図である。
図5A】目標物までの距離が異なる距離範囲にある場合に、単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するために、25個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された2つの第1の出射側素子配置部材の一方を示す図である。
図5B】目標物までの距離が異なる距離範囲にある場合に、単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するために、25個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された2つの第1の出射側素子配置部材の他方を示す図である。
図6A】目標物までの距離が異なる距離範囲にある場合に、リトロリフレクタ面からの距離を測定するために、25個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された2つの第2の出射側素子配置部材の一方を示す図である。
図6B】目標物までの距離が異なる距離範囲にある場合に、リトロリフレクタ面からの距離を測定するために、25個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された2つの第2の出射側素子配置部材の他方を示す図である。
図7A】目標物までの距離が3つの異なる距離範囲にある場合に、単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するために、17個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された3つの第1出射側素子配置部材の1つを示す図である。
図7B】目標物までの距離が3つの異なる距離範囲にある場合に、単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するために、17個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された3つの第1出射側素子配置部材の1つを示す図である。
図7C】目標物までの距離が3つの異なる距離範囲にある場合に、単体のリトロリフレクタ体からの距離を測定するために、17個の出射側素子の第1配列を有して予め設定された3つの第1出射側素子配置部材の1つを示す図である。
図8A】異なる距離範囲にある目標物までの距離を光学的に測定するために、図4に示す受光側素子の第2配列を有して予め設定された2つの受光側素子配置部材の一方を示す図である。
図8B】異なる距離範囲にある目標物までの距離を光学的に測定するために、図4に示す受光側素子の第2配列を有して予め設定された2つの受光側素子配置部材の他方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面に基づき、本発明の実施形態を以下に説明する。図面は、実施形態を必ずしも正しい縮尺率で示すものではなく、説明に役立つように、概略で示したり、幾分変形して示したりするものである。図面から直接的に明らかとなる教示に加え、関連する先行技術も参考とされる。本発明の大要から逸脱することなく、実施形態の形状や詳細な構成に対する様々な調整や変更が可能であることに留意すべきである。明細書、図面、及び特許請求の範囲に記載された本発明の特徴は、本発明の態様において、それぞれが個々に必須となりうるだけでなく、あらゆる組み合わせも必須となりうる。更に、明細書、図面、及び特許請求の範囲の少なくともいずれか1つに記載された本発明の特徴のうちの少なくとも2つの組み合わせは、いずれも本発明の範囲に含まれるものである。本発明の大要は、以下に示して説明する実施形態の厳密な形状及び詳細な構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に示す主題に比べて狭められた主題に限定されるものでもない。寸法範囲が示される場合、その範囲内にある値も、限界値として示しうるものであり、任意に請求項に含めうるものである。簡略化のため、同一または類似の機能を有した、同一または類似の部材については、同じ参照符号を用いる。
【0034】
図1は、本発明に係る装置として、距離測定デバイス11と、距離測定デバイス11の外部に設けられた調整デバイス12とを備え、目標物からの距離を光学的に測定する装置10を示す図である。目標物については、入射したレーザビームが主に反射される反射型目標物と、入射したレーザビームが主に散乱される散乱型目標物とに区別される。
【0035】
更に、反射型目標物については、単体のリトロリフレクタ体と、リトロリフレクタ面とに区別される。単体のリトロリフレクタ体として定義される反射型目標物は、1つのトリプルプリズムからなり、トリプルプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径より大きくなっていて、入射したレーザビームが、トリプルプリズムの1つの面に当たるようになっている。単体のリトロリフレクタ体の例として、25mmまたは50mmの幅を有したトリプルプリズムがある。リトロリフレクタ面として定義される反射型目標物は、平坦面に互いに隣接して配置された複数のプリズムからなり、それぞれのプリズムの寸法は、一般的なレーザビームのビーム径より小さくなっていて、入射したレーザビームが、複数のプリズムに当たるようになっている。リトロリフレクタ面の例として、反射膜やキャッツアイ型リフレクタがある。ここでの適用に関わるキャッツアイ型リフレクタは、レーザビームのビーム径に対するプリズムの寸法の比が、0.1〜1.0のリトロリフレクタ面であり、反射膜は、レーザビームのビーム径に対するプリズムの寸法の比が、0.1未満のリトロリフレクタ面となっている。
【0036】
距離測定デバイス11は、ビーム発生源14として構成された第1電気光学装置、検出器15として構成された第2電気光学装置、ビーム整形光学システム16、ビームスプリット光学システム17、光学装置保持部材18、及び回路基板19を備える。ビーム整形光学システム16は、レーザビームを整形する出射側光学システム21と、受光ビームを整形する受光側光学システム22とを備え、一体型のビーム整形光学システムにまとめられている。ビーム発生源14、ビーム整形光学システム16、及びビームスプリット光学システム17は、光学装置保持部材18に固定され、検出器15は、回路基板19に固定される。本実施形態における光学装置保持部材18は、ビーム発生源14のための第1受容部23と、ビーム整形光学システム16のための第2受容部24と、ビームスプリット光学システム17のための第3受容部25とを有する。検出器15は、回路基板19に設けられたもう1つの受容部26に固定される。
【0037】
ビーム発生源14は、可視光または赤外線のレーザビーム27を生成するレーザダイオードで構成される。検出器15は、目標物で反射または散乱されて生じた受光ビーム28を受光するフォトダイオードで構成される。ビームスプリット光学システム17は、レーザビームと同軸状に伝播する受光ビームからレーザビームを分離するものであり、ビーム発生源14とビーム整形光学システム16との間のレーザビームのビーム経路で、且つビーム整形光学システム16と検出器15との間の受光ビームのビーム経路に配置される。ビームスプリット光学システム17は、例えば、偏光ビームスプリッタ、孔あきミラー、またはそれ以外のビームスプリット光学素子で構成することができる。ビーム発生源14及び検出器15は、制御・分析デバイス29と接続されており、この制御・分析デバイス29が、基準ビームと受光ビームとの時間差に基づき、目標物までの距離を求める。
【0038】
ビーム発生源14と、一体構造の光学装置保持部材18に一体的に組み込まれたビームスプリット光学システム17との間のレーザビーム27のビーム経路には、開口部31が配置されている。開口部31は、ビーム発生源14の開口角度を制限し、ビームスプリット光学システム17及びビーム整形光学システム16に向かうレーザビーム27の形状を調整するために用いられる。ビーム発生源14と開口部31との間には、開口部31と同じ様に、一体構造の光学装置保持部材18に一体的に設けられた遮光部材32が配設される。遮光部材32は、入射光を吸収し、不要な反射を防止するものである。このような目的のため、遮光部材32は、内側に低反射性の吸収剤コーティングがなされている。開口部31及び遮光部材32は、ビーム発生源14から検出器15までの部分における光学的及び電気的な雑音を低減する。
【0039】
単体のリトロリフレクタ体33として構成された反射型目標物は、図1の実施形態において、距離測定デバイス11から短い距離にある目標物として用いられる。調整デバイス12は、レーザビーム整形部材35と受光ビーム整形部材36とを有した光調整器34を備える。レーザビーム整形部材35は、複数の出射側素子による第1配列を備え、受光ビーム整形部材36は、複数の受光側素子による第2配列を備える。これら複数の出射側素子は、光調整器34の内側出射領域を形成し、複数の受光側素子は、光調整器34の外側受光領域を形成する。
【0040】
ビーム発生源14は、ビームスプリット光学システム17に向けてレーザビーム27を発する。レーザビーム27の最大限可能な部分が、ビームスプリット光学システム17から出射されて出射側光学システム21に照射され、この出射側光学システム21で最初のビーム整形が行われる。出射側光学システム21は、レーザビーム27を平行にして、平行レーザビーム37としてレーザビーム整形部材35に向かわせるコリメーティングレンズとして構成される。コリメーティングレンズ21の光学的特性は、散乱型目標物の距離測定に適合したものとされる。平行レーザビーム37は、レーザビーム整形部材35に照射され、レーザビーム整形部材35において、平行レーザビーム37のビーム整形と減衰とが行われる。整形後レーザビーム38は、反射型目標物33に照射される。
【0041】
目標物33で反射して生じた受光ビーム28は、受光ビーム整形部材36に当たり、この受光ビーム整形部材36が、受光ビーム28を整形し、減衰させて、整形後受光ビーム39として受光側光学システム22に向かわせる。受光側光学システム22では、整形後受光ビーム39の更なるビーム整形が行われる。2回整形後受光ビーム41は、ビームスプリット光学システム17に向けられ、当該ビームスプリット光学システム17で偏向される。偏向後受光ビーム42は、検出器15に当たる。ビームスプリット光学システム17により、偏向後受光ビーム42の光軸と、発せられたレーザビーム27の光軸とが、確実に互いに相違したものとなる。
【0042】
図2A及び図2Bは、図1に示す装置10による、単体のリトロリフレクタ体51からの距離の光学的な測定を示す概略図である。単体のリトロリフレクタ体51に対するレーザビームの調整が、1つの出射側開口を有する出射側開口配置部材(図2A)として構成されたレーザビーム整形部材、または複数の出射側開口を有する出射側開口配置部材(図2B)として構成されたレーザビーム整形部材を用いて行われる。
【0043】
距離測定デバイス11は、出射側光学システム21を用い、平行レーザビーム37を生成する。平行レーザビーム37のビーム経路には、単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定用に構成された、第1レーザビーム整形部材52が配設される。単体のリトロリフレクタ体の場合は、反射されて生じた受光ビームが受光側光学システム22に照射され、検出器15で検知できるように、レーザビームをリトロリフレクタ体の中央部分に当てる必要がある。レーザビームがリトロリフレクタ体の中央部分に当たらないと、反射されて生じた受光ビームが平行にずれて、受光側光学システム22から外れてしまう可能性がある。レーザビームを単体のリトロリフレクタ体に向けるために要求される精度を低下させてもよいように、レーザビームが広げられる。
【0044】
第1レーザビーム整形部材52は、1つの第1出射側開口53を有した第1出射側開口配置部材として構成される。第1出射側開口53は、ある径の円形開口形状を有する。第1出射側開口53は、部分的ビーム54を生成し、この部分的ビーム54を、1.0ミリラジアンの下限角度αminより大きい第1広がり角αで広げる。部分的ビーム54の第1広がり角αは、第1出射側開口53の径で調整可能であり、第1出射側開口53の径が小さくなるほど、部分的ビーム54の第1広がり角αが大きくなる。また、第1出射側開口53は、レーザビームの放射エネルギを大幅に減少させる。
【0045】
出射側開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。1.0ミリラジアンの下限角度αminは、出射側開口が超えてはならない出射側開口の最大寸法に変換することができる。出射側開口の開口形状により、部分的ビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。円形または正方形の開口形状を有した出射側開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の1辺の長さ)によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した出射側開口は、2つの寸法によって規定され、出射側開口を出た後に、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した出射側開口は、出射側開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有した部分的ビームを生成する。
【0046】
第1出射側開口53を出た当初、部分的ビーム54はビーム径が小さく、近接した距離範囲の場合には、単体のリトロリフレクタ体51への正確な指向が必要となる。部分的ビーム54を単体のリトロリフレクタ体51に向ける際に要求される精度を低減するため、図2Bに示す第2レーザビーム整形部材55を用いることが可能である。第2レーザビーム整形部材55は、複数の第2出射側開口56.1,56.2,56.3を有した第2出射側開口配置部材として構成される。これら第2出射側開口56.1,56.2,56.3は、それぞれ部分的ビーム57.1,57.2,57.3を生成し、これら部分的ビーム57.1,57.2,57.3を、1.0ミリラジアンの下限角度αminより大きい第2広がり角αで広げる。第2出射側開口56.1,56.2,56.3の好適な配置例として、平行レーザビーム37の光軸と同軸状に中央の第2出射側開口を配置し、中央の第2出射側開口の周囲に、それ以外の第2出射側開口を環状に分散配置してもよい。それぞれの部分的ビームの第2広がり角αは、第2出射側開口56.1,56.2,56.3の径で調整することが可能であり、第2出射側開口56.1,56.2,56.3の径が小さくなるほど、部分的ビームの第2広がり角αが大きくなる。
【0047】
出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの放射エネルギは、出射側開口配置部材の出射側透過面積と、各出射側開口の透過性とによって調整することが可能である。出射側開口配置部材の出射側透過面積は、一般に個々の出射側開口の開口面積の合計で規定される。各出射側開口が同じ寸法の場合、出射側透過面積は、出射側開口の数と出射側開口の開口面積との積で算出することも可能である。出射側開口配置部材に入る直前のレーザビームの断面積に対する出射側透過面積の比が小さいほど、出射側開口配置部材を出た後のレーザビームの出射部分の放射エネルギが小さくなる。
【0048】
図3は、図1に示す装置10による、リトロリフレクタ面61からの距離の光学的な測定を示す概略図である。距離測定デバイス11は、出射側光学システム21を用い、平行レーザビーム37を生成する。平行レーザビーム37のビーム経路には、リトロリフレクタ面からの距離の測定用に構成された、レーザビーム整形部材62が配設される。
【0049】
レーザビーム整形部材62は、入射したレーザビームを、広がり角βの整形後レーザビーム64に変換する円形の開口形状の整形用開口63を有しており、整形後レーザビーム64の広がり角βは、0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さい。整形後レーザビーム64の広がり角βは、整形用開口63の径で調整することが可能であり、整形用開口63の径が大きくなるほど、整形後レーザビーム64の広がり角βは小さくなる。
【0050】
整形用開口は、その開口面積と寸法とによって規定される。0.3ミリラジアンの上限角度βmaxは、整形用開口が下回ってはならない整形用開口の最小寸法に変換することができる。整形用開口の開口形状により、整形後レーザビームが、1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。円形または正方形の開口形状を有した整形用開口は、1つの寸法(円形の径、または正方形の1辺の長さ)によって規定され、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有したレーザビームを生成する。楕円形または長方形の開口形状を有した整形用開口は、2つの寸法によって規定され、周方向に沿って広がり角が変化する楕円形のビーム断面を有したレーザビームを生成し、その広がり角は、周方向に沿って、楕円形のビーム断面の長軸における最大広がり角と、楕円形のビーム断面の短軸における最小広がり角との間で変化する。不規則な開口形状を有した整形用開口は、整形用開口を出た後に、最大広がり角と最小広がり角との間にある複数の広がり角を有したレーザビームを生成する。
【0051】
図4は、レーザビーム整形部材35及び受光ビーム整形部材36を有した図1の光調整器34を詳細に示す図である。レーザビーム整形部材35は、光調整器34の内側出射領域を形成し、受光ビーム整形部材36は、光調整器34の外側受光領域を形成する。レーザビーム整形部材35は、i及びjのそれぞれを1,2,3とするとき、3行3列で配列された9個の出射側素子72ijの第1配列71を有する出射側開口配置部材として構成されている。第1配列71における出射側素子72ijの位置は、第1配列71の行を示す第1指標iと、第1配列71の列を示す第2指標jとによって特定される。出射側素子72ijは、第1コントロールユニット73を用い、レーザビームに対して透過性を有さない第1出射状態、レーザビームに対して部分的な透過性を有する第2出射状態、及びレーザビームに対して完全な透過性を有する第3出射状態の間で切り換えが可能となっている。出射側素子72ijの透過性は、入射するレーザビームの放射エネルギに対する、出射される側の放射エネルギの比で規定される透過率TSijによって示される。
【0052】
出射側素子72ijの透過率TSij(i,j=1,2,3)は、出射側素子72ijの各々について、第1コントロールユニット73により個別に設定することが可能となっている。出射側素子72ijが第1出射状態のとき、透過率TSijは10%未満(TSij<10%)であって、出射側素子72ijは、レーザビームに対して透過性を有さないと規定される。出射側素子72ijが第2出射状態のとき、透過率TSijは10%〜90%の範囲(10%≦TSij≦90%)にあって、出射側素子72ijは、レーザビームに対して部分的な透過性を有すると規定される。出射側素子72ijが第3出射状態のとき、透過率TSijは90%より大(90%<TSij)であって、出射側素子72ijは、レーザビームに対して完全な透過性を有すると規定される。
【0053】
受光ビーム整形部材36は、k及びlのそれぞれを1〜9とするとき、9行9列で配列された72個の受光側素子75klの第2配列74を有する受光側開口配置部材として構成されている。k及びlのそれぞれが4,5,6については、受光側素子75klが設けられておらず、第1配列71の9個の出射側素子72ijで占められている。受光側素子75klは、第2コントロールユニット76を用い、受光ビームに対して透過性を有さない第1受光状態、受光ビームに対して部分的な透過性を有する第2受光状態、及び受光ビームに対して完全な透過性を有する第3受光状態の間で切り換えが可能となっている。第2配列74の受光側素子75klの透過性は、第1配列71の出射側素子72ijと同じように、入射する受光ビームの放射エネルギに対する、出射される側の放射エネルギの比で規定される透過率TEklによって示される。
【0054】
受光側素子75klの透過率TEkl(k,l=1〜9)は、受光側素子75klの各々について、第2コントロールユニット76により個別に設定することが可能である。受光側素子75klが第1受光状態のとき、透過率TEklは10%未満(TEkl<10%)であって、受光側素子75klは、受光ビームに対して透過性を有さないと規定される。受光側素子75klが第2受光状態のとき、透過率TEklは10%〜90%の範囲(10%≦TEkl≦90%)にあって、受光側素子75klは、受光ビームに対して部分的な透過性を有すると規定される。受光側素子75klが第3受光状態のとき、透過率TEklは90%より大(90%<TEkl)であって、受光側素子75klは、受光ビームに対して完全な透過性を有すると規定される。
【0055】
出射側素子及び受光側素子の透過性(不透過性、部分的な透過性、及び完全な透過性)は、ビーム発生源の波長周辺の波長領域と関連があり、0%〜100%で示される透過率TSij及びTEklは、ビーム発生源の波長を有したレーザビーム及び受光ビームに適用される。ビーム発生源の波長周辺の波長領域に加え、それ以外の波長領域も減衰させることが可能である。広範な波長領域で減衰が生じる広帯域光学フィルタの使用は、受光ビーム整形部材36にとって、何よりも有効である。受光ビームの減衰に広帯域光学フィルタを用いることにより、受光ビームに加えて、太陽光などのような広範な波長スペクトルを有した外部光も、更なる装備を必要とすることなく減衰させることができる。
【0056】
レーザビーム整形部材35に必要な大きさは、実質的に平行レーザビーム37のビーム断面によって定まる。図4の実施形態において、第1配列71は、3行3列に配列された9個の出射側素子72ijからなる。それぞれの出射側素子72ijは、同じ大きさの正方形で形成されている。これに代えて、個々の出射側素子72ijは、別の形状を有していてもよいし、互いに異なる形状であってもよく、例えば、出射側素子72ijは6角形であってもよいし、光軸周辺の出射側素子の方が、光軸から離間した出射側素子よりも寸法が小さくなるようにしてもよい。出射側素子の数が増えるほど、個々の出射側素子の開口面積は小さくなり、より細かく平行レーザビーム37の整形を行うことが可能となる。
【0057】
図5A図5Bは、i及びjのそれぞれを1〜5とするとき、単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定用に、5行5列で配列された25個の出射側素子82ijの第1配列81を有して予め設定された2つの第1出射側素子配置部材を示す。図5Aに示す第1出射側素子配置部材は、第1距離範囲の場合の距離の測定用に設けられ、図5Bに示す第1出射側素子配置部材は、第2距離範囲の場合の距離の測定用に設けられる。
【0058】
第1配列81は、光調整器34の第1配列71の代わりに設けることができる。第1配列71と第1配列81とは、出射側素子の数、及び出射側素子の寸法の少なくとも一方が互いに相違する。それ以外の、第1配列71及び第1配列81の作動方法は同じである。第1配列81の出射側素子82ijは、第1コントロールユニット73を用い、透過性を有さない第1出射状態、部分的な透過性を有する第2出射状態、及び完全な透過性を有する第3出射状態の間で切り換えることが可能となっている。出射側素子82ijの透過率TSijは、互いに独立して設定することが可能である。第1配列81における出射側素子82ijの位置は、第1配列81における行を示す第1指標iと、第1配列81における列を示す第2指標jとによって特定される。
【0059】
図5Aに示す第1出射側素子配置部材では、出射側素子8233が、レーザビームに対し完全な透過性を有する状態に設定され、それ以外の24個の出射側素子が、レーザビームに対し透過性を有さない状態に設定される。出射側素子8233は、レーザビーム用の出射側開口83を形成し、部分的ビームを生成すると共に、この部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度αminを下回ることのない広がり角αで広げる。出射側開口83は正方形の開口形状を有しており、出射側開口83を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角αとなる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。
【0060】
図5Bに示す第1出射側素子配置部材では、出射側素子8222,8224,8233,8242,8244が、レーザビームに対して完全な透過性を有する状態に設定され、それ以外の20個の出射側素子が、レーザビームに対して透過性を有さない状態に設定される。5個の出射側素子8222,8224,8233,8242,8244は、5個の出射側開口84,85.1,85.2,85.3,85.4を形成し、5つの部分的ビームを生成すると共に、それぞれの部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度を下回ることのない広がり角αで広げる。出射側開口84は、中央の出射側開口となり、それ以外の出射側開口85.1〜85.4は、中央の出射側開口84の周囲に配置される。出射側開口84,85.1〜85.4は正方形の開口形状を有しており、これら出射側開口84,85.1〜85.4を出た後に、それぞれが周方向に沿って一定の広がり角αとなる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。出射側開口84,85.1〜85.4の寸法は同じであるので、それぞれの部分的ビームの広がり角αは一致する。
【0061】
図6A図6Bは、i及びjのそれぞれを1〜5とするとき、リトロリフレクタ面からの距離の測定用に、25個の出射側素子82ijの第1配列81を有して予め設定された2つの第2出射側素子配置部材を示す。図6Aに示す第2出射側素子配置部材は、第1距離範囲の場合の距離の測定用に設けられ、図6Bに示す第2出射側素子配置部材は、第2距離範囲の場合の距離の測定用に設けられる。
【0062】
図6Aに示す第2出射側素子配置部材では、レーザビーム用の出射側素子8211,8212,8214,8215,8221,8225,8241,8245,8251,8252,8254,8255が、レーザビームに対して透過性を有さない状態に設定され、出射側素子8213,8222,8223,8224,8231,8232,8233,8234,8235,8242,8243,8244,8253が、レーザビームに対して完全な透過性を有する状態に設定される。完全な透過性を有する状態に設定された出射側素子は、レーザビームに対する整形用開口86を形成し、入射したレーザビームを均質化して、0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さい複数個の広がり角βを有した整形後レーザビームに変換する。
【0063】
整形用開口86及び第1配列81の中心点を形成する出射側素子8233は、平行レーザビーム37の光軸が整形用開口86の中心点と一致するように配置される。出射側素子8233の中心点を起点とする、水平方向(第1配列81の行に沿う方向)の左右の寸法と、垂直方向(第1配列81の列に沿う方向)の上下の寸法とは一致している。整形用開口86の開口形状によって、整形後レーザビームが、1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。正方形の開口形状を有した整形用開口は、レーザビームの周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有したレーザビームを生成する。13個の正方形の出射側素子8213,8222,8223,8224,8231,8232,8233,8234,8235,8242,8243,8244,8253からなる整形用開口86は、完全な正方形の開口形状ではなく、整形用開口86を出た後に、複数の広がり角を有したレーザビームを生成する。整形後レーザビームの広がり角βは、いずれも0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さくなっている。
【0064】
図6Bに示す第2出射側素子配置部材では、出射側素子8211,8215,8251,8255が、レーザビームに対して透過性を有さない状態に設定され、それ以外の21個の出射側素子8212,8213,8214,8221,8222,8223,8224,8225,8231,8232,8233,8234,8235,8241,8242,8243,8244,8245,8252,8253,8254が、レーザビームに対して完全な透過性を有する状態に設定される。完全な透過性を有する状態に設定された出射側素子は、レーザビームに対する整形用開口87を形成し、入射したレーザビームを均質化して、0.3ミリラジアンの上限角度βmaxより小さい複数個の広がり角βを有した整形後レーザビームに変換する。
【0065】
図7A図7B図7Cは、i及びjのそれぞれを0とし、またi及びjのそれぞれを1〜4とするとき、3つの異なる距離範囲にある単体のリトロリフレクタ体からの距離の測定用に、17個の出射側素子92ijの第1配列91を有して予め設定された3つの第1出射側素子配置部材を示す。
【0066】
中央の出射側素子である出射側素子9200を、i及びjのそれぞれを2,3とする4個の非正方形の出射側素子92ijが取り囲んでおり、これら4個の非正方形の出射側素子によって四角形の輪が形成されている。4個の非正方形の出射側素子9222,9223,9232,9233は、iを1,4、jを1〜4とし、またiを2,3、jを1,4とする12個の出射側素子92ijによって取り囲まれている。第1配列91は、光調整器34の第1配列71の代わりに用いることが可能である。第1配列71と第1配列91とは、出射側素子の数、出射側素子の寸法、及び出射側素子の形状のうちの少なくとも1つが相違しているが、それ以外の作動方法は同様である。
【0067】
図7Aに示す第1出射側素子配置部材では、中央の出射側素子9200が、レーザビームに対し完全または部分的な透過性を有する状態(TSij≧10%)に設定され、それ以外の16個の出射側素子が、レーザビームに対し透過性を有さない状態(TSij<10%)に設定される。中央の出射側素子9200は、レーザビーム用の出射側開口93を形成し、部分的ビームを生成すると共に、この部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度αminを下回ることのない広がり角αで広げる。
【0068】
図7Bに示す第1出射側素子配置部材では、中央の出射側素子9200と、正方形の第1配列81の角部に配置されて、i及びjのそれぞれを1,4とする、4個の出射側素子92ijとが、レーザビームに対し完全または部分的な透過性を有する状態(TSij≧10%)に設定され、それ以外の12個の出射側素子が、レーザビームに対し透過性を有さない状態(TSij<10%)に設定される。5個の出射側素子9200,9211,9214,9244,9241は、5個の出射側開口94,95.1,95.2,95.3,95.4を形成し、5つの部分的ビームを生成すると共に、それぞれの部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度αminを下回ることのない広がり角αで広げる。これら出射側開口94,95.1〜95.4の寸法は同じであるので、それぞれの部分的ビームの広がり角αは一致する。
【0069】
図7Cに示す第1出射側素子配置部材では、中央の出射側素子9200と、i及びjのそれぞれを2,3とする、4個の非正方形出射側素子92ijとが、レーザビームに対し完全または部分的な透過性を有する状態(TSij≧10%)に設定され、それ以外の12個の出射側素子が、レーザビームに対し透過性を有さない状態(TSij<10%)に設定される。5個の出射側素子9200,9222,9223,9232,9233は、出射側開口96を形成し、部分的ビームを生成すると共に、この部分的ビームを、1.0ミリラジアンの下限角度αminを下回ることのない広がり角αで広げる。出射側開口96の寸法は、図7Aに示す第1出射側素子配置部材の出射側開口93の2倍であり、出射側開口96が生成する部分的ビームの広がり角αは、出射側開口93が生成する部分的ビームの広がり角αより小さくなる。
【0070】
出射側開口93,94,95.1〜95.4,96の開口形状により、部分的ビームが1つの広がり角と複数の広がり角とのいずれを有するのかが定まる。出射側素子9200は、出射側開口93,94,96の中心点を形成し、平行レーザビーム37の光軸が出射側開口93,94,96の中心点と一致するように、第1配列91が配置される。出射側開口93,94,95.1〜95.4,96は、それぞれ正方形の開口形状を有し、出射側開口を出た後に、周方向に沿って一定の広がり角となる円形のビーム断面を有した部分的ビームを生成する。
【0071】
図8A図8Bは、図4に示した受光側素子75klの第2配列74に関し、予め設定された2つの受光側素子配置部材を示す図である。受光側素子75klは、第2コントロールユニット76を用い、透過性を有さない受光状態(TEkl<10%)、部分的な透過性を有する受光状態(10%≦TEkl≦90%)、及び完全な透過性を有する受光状態(90%<TEkl)の間で切り換えが可能となっている。透過率TEklは、ビーム発生源14の波長周辺の波長領域、またはビーム発生源14の波長を含む広範な波長領域と関連のあるものとすることができる。
【0072】
図8Aに示す受光側素子配置部材では、6個の隣接する受光側素子が、受光ビーム用の受光側開口を形成している。kを1,2、lを4〜6とする受光側素子75klが第1受光側開口101.1を形成し、kを4〜6、lを8,9とする受光側素子75klが第2受光側開口101.2を形成し、kを8,9、lを4〜6とする受光側素子75klが第3受光側開口101.3を形成し、kを4〜6、lを1,2とする受光側素子75klが第4受光側開口101.4を形成する。
【0073】
図8Bに示す受光側素子配置部材では、3行3列で配列された9個の隣接する受光側素子が、受光ビーム用の受光側開口を形成している。k及びlのそれぞれを1〜3とする受光側素子75klが第1受光側開口102.1を形成し、kを1〜3、lを7〜9とする受光側素子75klが第2受光側開口102.2を形成し、k及びlのそれぞれを7〜9とする受光側素子75klが第3受光側開口102.3を形成し、kを7〜9、lを1〜3とする受光側素子75klが第4受光側開口102.4を形成する。
【0074】
受光側開口101.1〜101.4,102.1〜102.4における各受光側素子75klは、完全な透過性を有する状態(90%<TEkl)、または部分的な透過性を有する状態(10%≦TEkl≦90%)に切り換えることが可能である。受光側素子75klの透過率TEklにより、受光ビームの放射エネルギを調整することができる。透過率TEklを小さく設定するほど、検出器15に到達する受光ビームの放射エネルギが減少する。受光側素子75klの透過率TEklは、0%から100%までの間で、複数段階に分けて不連続に設定してもよいし、段階を設けずに連続的に変化させて設定してもよい。複数段階に分けて設定可能な透過率の場合は、段階を設けずに連続的に変化させて設定可能な透過率の場合に比べ、透過率の設定を迅速に行える点、及び電子回路が安価となる点で有利である。段階を設けずに連続的に変化させて設定可能な透過率の場合は、受光側素子75klの透過率を極めて正確に設定できる点で有利である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B