(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6607988
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20191111BHJP
G06F 8/65 20180101ALI20191111BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
B60R16/02 660U
G06F8/65
B60R16/023 P
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-71830(P2018-71830)
(22)【出願日】2018年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-177212(P2018-177212A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】10 2017 107 277.2
(32)【優先日】2017年4月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ステマー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール サンゼン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ レンツ
【審査官】
小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−060388(JP,A)
【文献】
特開2016−112909(JP,A)
【文献】
特開2012−035725(JP,A)
【文献】
特表2015−530060(JP,A)
【文献】
特開2004−336907(JP,A)
【文献】
特開2016−124455(JP,A)
【文献】
特開2007−022300(JP,A)
【文献】
特開2014−124978(JP,A)
【文献】
特開2014−162252(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0360540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/023
G06F 8/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするための装置であって、
前記高電圧制御ユニットは、第1制御装置を有する低電圧領域及び第2制御装置を有する高電圧領域を含み、
前記第1制御装置は、第1内部通信線を介して第1通信インターフェースに連結され、
前記高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするために、第1通信線を介して前記第1通信インターフェースに外部ユニットが連結され、
前記第1制御装置は、前記第1内部通信線を介して前記第1通信インターフェース及びガルバニック絶縁装置に連結されるか、または前記第1内部通信線を介して前記第1通信インターフェースに連結され且つ第4内部通信線を介して前記ガルバニック絶縁装置に連結され、
前記ガルバニック絶縁装置は、第3内部通信線を介して前記第2制御装置に連結されていることを特徴とする高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項2】
前記低電圧領域は、第1スイッチを介して低電圧電源供給装置に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項3】
前記高電圧領域は、第2スイッチを介して高電圧電源供給装置に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項4】
前記ガルバニック絶縁装置内にオプトカプラ(optocoupler)が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項5】
前記第1通信インターフェース内に、前記外部ユニットに連結するための直列バス(serial bus)として、USBインターフェース、RS232インターフェース、又はキャンバス(CAN−BUS)インターフェース用のコネクターが配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項6】
前記高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置は、車両内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置。
【請求項7】
高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするための方法であって、
第1制御装置を有する低電圧領域及び第2制御装置を有する高電圧領域を含む前記高電圧制御ユニットにおいて、
前記第1制御装置の制御ソフトウェアをアップデートするために新たな第1制御ソフトウェアを提供し、前記第2制御装置の制御ソフトウェアをアップデートするために新たな第2制御ソフトウェアを提供し、前記第1及び第2制御装置のメモリー領域に前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアを伝送する段階を有し、
前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアを伝送する段階は、
前記第2制御装置がスイッチOFF状態である場合に、第1通信線を介して前記第1制御装置の第1通信インターフェースに連結された外部ユニットが、前記第1通信インターフェースに第1内部通信線を介して連結された前記第1制御装置のメモリー領域に前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアを伝送する段階と、
前記第1制御装置のメモリー領域に前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアを保存する段階と、
前記第1制御装置により、前記第2制御装置がスイッチON状態に切り替わったことが感知されると、前記第1制御装置が、前記第2制御装置のメモリー領域に前記第1制御装置のメモリー領域に保存された前記新たな第2制御ソフトウェアを第3通信リンクを介して伝送する段階と、を含み、
第3通信リンクは、前記第1制御装置に前記第1内部通信線を介して連結されるか、または第4内部通信線を介して連結されたガルバニック絶縁装置と、前記ガルバニック絶縁装置に第3内部通信線を介して連結された前記第2制御装置との間に形成されることを特徴とする高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート方法。
【請求項8】
前記第2制御装置のメモリー領域に前記新たな第2制御ソフトウェアを伝送した後、前記新たな第1制御ソフトウェアにより現在の第1制御ソフトウェアを上書きし、前記新たな第2制御ソフトウェアにより現在の第2制御ソフトウェアを上書きする段階と、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置をそれぞれ前記上書きされた前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアにより作動させる段階と、を有することを特徴とする請求項7に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート方法。
【請求項9】
前記第2制御装置のメモリー領域への前記新たな第2制御ソフトウェアの正しいデータ伝送に対する検査は、チェックサム(checksum)を用いて行われることを特徴とする請求項7又は8に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート方法。
【請求項10】
前記高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート方法は、車両内に配置された高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするための装置により実行されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置及びその方法に関し、より詳しくは、マイクロコントローラが制御する高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするための装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧制御ユニット、例えば、電気エアコン圧縮機(electric air−conditioning compressor)に使われる高電圧インバータは、据え付け使用(stationary use)の形態だけでなく、自動車(motor vehicle)内でも作動する。これらの高電圧制御ユニットは、通常、中央制御ユニット、例えば電子制御装置(ECU:electronic control unit)を備える。この電子制御ユニットの内部には、大慨マイクロコントローラ(MCU:microcontroller unit)があって、マイクロコントローラは制御ソフトウェアによって制御され、これにより高電圧インバータの正しい作動を可能にする。
【0003】
先行技術として、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車用の高電圧制御ユニットが公知となっており、このような高電圧制御ユニットは、互いに独立して制御可能な2つの領域を有する。高電圧(HV)領域と低電圧(LV)領域とは、互いにガルバニック絶縁方式で別個に設計されなければならない。
【0004】
このような先行技術では、いわゆる電圧レベル(voltage level)を、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車に対する電圧レベルとして、低電圧または低電圧領域(LV)という用語は、≦30Vの交流電圧及び≦60Vの直流電圧を範囲に含むように規定され、高電圧または高電圧領域(HV)という用語は、交流電圧の場合には30Vよりも大きく、直流電圧の場合には60Vよりも大きい範囲に対して使われる。
【0005】
高電圧領域と低電圧領域との間のガルバニック絶縁された回路経路はコストがかかるので、これらの領域はそれぞれ固有のマイクロコントローラを有する別の制御装置を含み、各マイクロコントローラにはそれぞれに作動を制御するための制御ソフトウェアが割り当てられる。このような制御ソフトウェアは、しばしばファームウエアとも呼ばれる。
【0006】
したがって、両方のマイクロコントローラもまた、互いにガルバニック絶縁されて、それぞれに対応するファームウエアによって制御される方式で互いに独立して自分の固有領域内で作動する。
【0007】
例えば、車両内で使われる高電圧領域及び低電圧領域の電源供給装置は、通常、互いに独立して、別のバッテリー制御ユニットによって制御される。
【0008】
消費電力を改善するために、または高電圧領域の構成回路の安全な電気的状態を達成するために、例えば、高電圧領域の電源供給装置をスイッチOFF状態、すなわち遮断することが考えられる。このような高電圧領域への電源の遮断は、高電圧制御ユニットへの介入前に、バッテリー制御ユニットのような制御装置によって自動的に実行されるか、または作業者や整備担当者により手動で行われる。したがって、高電圧領域への永続的な電源供給は保証されない。
【0009】
高電圧領域への電源供給が遮断された場合、外部ユニットと高電圧領域の制御装置との間に通信リンク(communication link)が形成されない。例えば、ファームウエアアップデートのような制御ソフトウェアアップデートのための、高電圧領域の制御装置との通信が行われないか、または中断される。
【0010】
したがって、高電圧領域がスイッチOFF状態で低電圧領域がスイッチON状態である作動状態では、低電圧領域の制御ソフトウェアアップデートのみが実行される。このような制御ソフトウェアアップデートの他にも、高電圧領域に対する診断や、高電圧領域に保存されたデータの読み取りも不可能な場合が多い。
【0011】
そこで、高電圧領域の状態に関係なく、高電圧領域及び低電圧領域の制御装置の制御ソフトウェアアップデートを可能とするソリューションが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−298261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、高電圧制御ユニットの高電圧領域の現在の作動状態に関係なく高電圧制御ユニットの低電圧領域及び高電圧領域に対する制御ソフトウェアアップデートを可能とする、高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするための装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアアップデート装置は、前記高電圧制御ユニットが、第1制御装置を有する低電圧領域及び第2制御装置を有する高電圧領域を含む。前記第1制御装置は、第1内部通信線を介して第1通信インターフェースに連結されている。前記高電圧制御ユニットの制御ソフトウェアをアップデートするために、第1通信線を介して前記第1通信インターフェースに外部ユニットが連結される。
具体的に、前記低電圧領域の第1制御装置は、前記高電圧領域の第2制御装置とともに内部で、すなわち、前記高電圧制御ユニットの内部で前記第1制御装置の第1通信インターフェースを介して相互に連結されて、前記第1制御装置と前記第2制御装置との間のデータ交換を可能にする。低電圧領域と高電圧領域との間のガルバニック絶縁または分離を保証するために、前記第1通信インターフェースとの連結は、ガルバニック絶縁装置を介して行われるが、ガルバニック絶縁装置は、絶縁または分離するための手段を有する。この手段は、絶縁体(isolator)、絶縁装置(isolating device)、またはカップリング部材(coupling member)と表記され、この手段によって、信号はガルバニック絶縁方式で分離されて伝送される。これに関して、従来技術では、例えば、オプトカプラ(optocoupler)を用いた誘導性(inductive)、容量性(capacitive)、及び他の類型の分離が開示されている。
【0015】
また、第1制御装置の機能範囲は、第1制御装置の第1制御ソフトウェアアップデートを実施する時、第2制御装置の第2制御ソフトウェアアップデートのためのデータも前記第1制御装置のメモリー領域に保存されるようにするアルゴリズムに拡大される。
具体的に、第1制御装置の制御ソフトウェアをアップデートするために新たな第1制御ソフトウェアを提供し、第2制御装置の制御ソフトウェアをアップデートするために新たな第2制御ソフトウェアを提供する。このような場合、前記新たな第1及び第2制御ソフトウェアは前記第1制御装置のメモリー領域に転送される。
【0016】
さらに、第1制御装置及び第2制御装置の機能範囲は、高電圧領域が活性状態またはスイッチON状態になってからすぐに、第2制御装置の第2制御ソフトウェアアップデートを第1制御装置のメモリー領域に保存されたデータに自動的に実行させる追加アルゴリズムに拡大される。第2スイッチが高電圧領域を高電圧電源供給装置に連結し、高電圧領域がスイッチONする場合、追加アルゴリズムは2つの制御装置のこのようなスイッチON状態を感知し、前記制御装置の個別通信インターフェースを介して内部通信リンクを形成した後、第2制御装置の第2制御ソフトウェアアップデートのために第1制御装置のメモリー領域に保存されたデータを第2制御装置に伝送する。第2制御装置では、伝送されたデータが対応するメモリー領域に保存される。
【0017】
上述した高電圧制御ユニットの機能の拡張は、高電圧領域の作動状態に関係なく、第1制御ソフトウェア及び第2制御ソフトウェアのアップデートの実行を可能にする。これによって、特に、整備担当者の安全を理由として高電圧領域がスイッチOFFされる整備作業の実行時、高電圧制御ユニットのファームウエアをアップデートする可能性を有する。
【0018】
本発明によるソリューションの追加的なメリットは、第2制御装置の第2制御ソフトウェアアップデートのために外部ユニットを、通信線を介して高電圧領域に連結する必要がない。その結果、関連装置及び作業者に対する電気的な安全性が向上する。
【0019】
また、第1通信インターフェースは、外部ユニットに連結するための直列バス(serial bus)用コネクターを有する。このためには、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、RS232インターフェース、又はキャンバス(CAN−BUS:Controller Area Network)インターフェースのような従来技術で公知となったカップリングバスシステムが用いられる。
または、任意のバスシステム、例えば、並列バスを介して外部ユニットと第1通信インターフェースとをカップリングするために、他のコネクターも提供され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高電圧制御ユニットの高電圧領域の作動状態に関係なく、制御ソフトウェアのアップデートが実行可能になり、回路が簡単で、製造費用が低減された高電圧制御ユニットを提供することができる。
また、高電圧による回路及び整備担当者への危険が減少された、安全性が向上した高電圧制御ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】先行技術による高電圧制御ユニットの基本回路を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による高電圧制御ユニットの回路において、2つの電圧領域で制御ソフトウェアをアップデートするための異なる作動状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による高電圧制御ユニットの回路において、2つの電圧領域で制御ソフトウェアをアップデートするための異なる作動状態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による高電圧制御ユニットの回路において、2つの電圧領域で制御ソフトウェアをアップデートするための異なる作動状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による高電圧制御ユニットの回路において、2つの電圧領域で制御ソフトウェアをアップデートするための異なる作動状態を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による高電圧制御ユニットの回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、先行技術による高電圧制御ユニットの基本回路を示す図である。高電圧制御ユニット(1’)は、2つの部分に分けて設計され、低電圧領域(2)と高電圧領域(3)とを含む。各領域は、例えば、別個のマイクロコントローラを有する固有の制御装置(4、5)を含む。低電圧領域(2)にはLV−MCU(Low−Voltage−Micro−Controller−Unit)と表記される第1制御装置(4)が割り当てられ、高電圧領域(3)にはHV−MCU(High−Voltage−Micro−Controller−Unit)と表記される第2制御装置(5)が割り当てられる。
【0024】
図1に示す第1制御装置(4)の内部には、第1制御装置(4)を制御する第1制御ソフトウェア(6)の現在のバージョンが、ファームウエアを示す記号のFW、第1制御装置(4)に所属する制御ソフトウェアを示す記号のLV−MCU、及び現在のバージョン番号v.1.0で表示されている。これと同様に、
図1に示す第2制御装置(5)の内部には、第2制御装置(5)を制御する第2制御ソフトウェア(7)の現在のバージョンが、ファームウエアを示す記号のFW、第2制御装置(5)に所属する制御ソフトウェアを示す記号のHV−MCU、及び現在のバージョン番号のv.1.0で表示されている。
【0025】
図1には、低電圧領域(2)に連結された低電圧電源供給装置(8)と、高電圧領域(3)に連結された高電圧電源供給装置(9)とを別個に示している。これらの電源供給装置との接続及び遮断を行うため、低電圧領域(2)には、第1スイッチ(10)が提供され、高電圧領域(3)には、第2スイッチ(11)が提供される。これらのスイッチ(10、11)は手動または適切な制御手段によってスイッチングされ、機械的または電子的スイッチとして設計される。
【0026】
また、
図1には、例えば、個人用コンピュータ(PC)またはラップトップコンピュータのような外部ユニット(12)が示され、外部ユニットは、第1通信リンク(22)をなす第1通信線(13)、第1通信インターフェース(14)、及び第1内部通信線(15’)を介して第1制御装置(4)に連結される。第1通信リンク(22)を介して、例えば、第1制御ソフトウェア(6)のアップデートが実行される。さらに診断の目的で第1制御装置(4)からデータが読み出される。外部ユニット(12)として、診断装置(diagnostic device)または診断テスター(diagnostic tester)が使われる。
【0027】
また、外部ユニット(12)は、第2通信リンク(23)をなす第2通信線(16)、第2通信インターフェース(17)、第2内部通信線(18)、ガルバニック絶縁装置(19)、及び第3内部通信線(20)を介して第2制御装置(5)に連結される。第2通信リンク(23)を介して、例えば、第2制御ソフトウェア(7)のアップデートが実行される。さらに、診断の目的で第2制御装置(5)からデータが読み出される。
【0028】
外部ユニット(12)は、フラッシュツール(Flash Tool)のような通信手段(21)を有し、このような通信手段により、低電圧領域(2)及び/又は高電圧領域(3)に対する通信リンク(22、23)を形成するだけでなく、形成された通信リンク(22、23)を介したデータ伝送も実現する。
【0029】
図1の実施形態では、外部ユニット(12)を用い、第1通信リンク(22)を介して、バージョンFW LV−MCU v.1.0からバージョンFW LV−MCU v.2.0への第1制御ソフトウェア(6)のアップデートを実施しなければならない。また、例えば、第2通信リンク(23)を介して、バージョンFW HV−MCU v.1.0からバージョンFW HV−MCU v.2.0への第2制御ソフトウェア(7)のアップデートを実施しなければならない。
【0030】
図1に示すように、低電圧領域(2)は第1スイッチ(10)を通じて、低電圧電源供給装置(8)に連結され、これにより低電圧領域はスイッチON状態または活性状態であるが、高電圧領域(3)は開放された第2スイッチ(11)によって高電圧電源供給装置(9)から遮断され、非活性状態またはスイッチOFF状態である。
【0031】
この状態では、単にバージョンFW LV−MCU v.1.0からバージョンFW LV−MCU v.2.0への第1制御ソフトウェア(6)のアップデートのみが実行される。外部ユニット(12)と第2制御装置(5)との第2通信リンク(23)は形成されない。このため、第2制御ソフトウェア(7)はアップデートされない。
【0032】
本先行技術によれば、第2制御ソフトウェア(7)のアップデートは、第2スイッチ(11)が、第2通信リンク(23)を介して第2制御ソフトウェア(7)のアップデートが現在進行している間に開放されて、高電圧電源供給装置(9)が高電圧領域(3)から遮断された場合には成功裏に完了されない。
【0033】
図2〜
図5は、本発明の一実施形態による高電圧制御ユニットの回路において、2つの電圧領域で制御ソフトウェアをアップデートするための異なる作動状態を示す図である。
図2〜
図5には、各々、低電圧領域(2)及び高電圧領域(3)を有する高電圧制御ユニット(1)の回路が、第1制御ソフトウェア(6)及び第2制御ソフトウェア(7)のアップデートを実施するための異なる作動状態を示している。
【0034】
図1とは異なり、
図2〜5に示す高電圧制御ユニット(1)は、第1内部通信線(15)とガルバニック絶縁装置(19)との間の連結を有する。この追加の連結によって、低電圧領域(2)の第1制御装置(4)と高電圧領域(3)の第2制御装置(5)との第3通信リンク(24)が形成され、この第3通信リンク(24)を介して第1及び第2制御装置(4、5)との間でデータが伝送される。このような方式は、特に、第2制御装置(5)の第2制御ソフトウェア(7)をアップデートするためのデータ伝送に適用される。
【0035】
第1制御ソフトウェア(6)及び第2制御ソフトウェア(7)のアップデートの順序を、
図2〜
図5に4つの例示的ステップで示す。
【0036】
図2は、第1ステップとして、低電圧領域(2)が、閉じられたスイッチ(10)を通じて低電圧電源供給装置(8)に連結され、これによってスイッチON状態または活性状態である作動状態を示す。同時に、高電圧領域(3)は、開放されたスイッチ(11)によって高電圧電源供給装置(9)から遮断され、これによってスイッチOFF状態または非活性状態である。
【0037】
フラッシュツールのような、関連する通信手段(21)が適切な制御プログラムによって制御されるPCまたはラップトップコンピュータのような外部ユニット(12)は、こうした外部ユニット(12)の通常のインターフェース及び第1通信線(13)を介して高電圧制御ユニット(1)の第1通信インターフェース(14)に連結される。
【0038】
第1通信インターフェース(14)内には、外部ユニット(12)を連結するための直列バス(serial bus)として、USBインターフェース、又はRS232インターフェース、又はキャンバス(CAN−BUS)インターフェース用のコネクターが配置される。
【0039】
第1通信インターフェース(14)は、高電圧制御ユニット(1)の内部で第1内部通信線(15)を介して第1制御装置(4)だけでなく、ガルバニック絶縁装置(19)にも連結される。第1通信インターフェース(14)は、高電圧制御ユニット(1)の低電圧領域(2)に配置されているので、連結された外部ユニット(12)や作業者の安全確保のために特別な措置が要らない。
【0040】
なお、ガルバニック絶縁装置(19)内には、オプトカプラ(optocoupler)が配置され得る。
【0041】
図2は、バージョンFW HV−MCU v.1.0の第2制御ソフトウェア(7)を有する第2制御装置(5)を示し、この時、第2制御装置(5)は第2制御ソフトウェア(7)によって作動される。また、
図2は、バージョンFW LV−MCU v.1.0の第1制御ソフトウェア(6)を有する第1制御装置(4)を示す。
【0042】
また、第1制御装置(4)内には、バージョンFW HV−MCU v.1.0の第2制御ソフトウェア(7)も示されており、この場合、第1制御ソフトウェア(6)の他に第2制御ソフトウェア(7)が第1制御装置(4)のメモリー領域に保存される。
【0043】
外部ユニット(12)に提供された、新たな第1制御ソフトウェア(6a)及び新たな第2制御ソフトウェア(7a)で、第1制御ソフトウェア(6)及び第2制御ソフトウェア(7)をそれぞれアップデートするために、外部ユニット(12)と第1制御装置(4)との間に第1通信リンク(22)と第2通信リンク(23)とが形成され、新たな第1制御ソフトウェア(6a)及び新たな第2制御ソフトウェア(7a)のデータが第1制御装置(4)内部にあるメモリー領域に伝送される。第1通信リンク(22)及び第2通信リンク(23)の形成は、第1通信線(13)、第1通信インターフェース(14)、及び第1内部通信線(15)を介して行われる。
【0044】
図3は、第2ステップとして、新たな第1制御ソフトウェア(6a)と新たな第2制御ソフトウェア(7a)とが第1制御装置(4)の内部にあるメモリー領域に伝送された作動状態を示す。第1制御装置(4)のメモリー領域には、アップデートされたバージョンFW LV−MCU v.2.0の第1制御ソフトウェア(6a)及びアップデートされたバージョンFW HV−MCU v.2.0の第2制御ソフトウェア(7a)が保存されている。
【0045】
高電圧制御ユニット(1)の制御ソフトウェアをアップデートした後、外部ユニット(12)との連結が分離されるが、その理由は、高電圧制御ユニット(1)への最新ファームウエアの伝送が完了したからである。また、
図3は、低電圧領域(2)が活性状態にスイッチングされ、高電圧領域(3)が非活性状態にスイッチングされた状態にある高電圧制御ユニット(1)を示している。
【0046】
図4は、第3ステップとして、第2スイッチ(11)が閉じられた作動状態を示す。したがって、高電圧電源供給装置(9)の電圧が高電圧領域(3)に印加される。この時、高電圧領域(3)は、スイッチON状態または活性状態である。
【0047】
同時に、このような高電圧領域(3)の活性状態またはスイッチON状態は、第1制御装置(4)によって自動的に感知されるが、第1制御装置は、このために第1制御ソフトウェア(6)の内部に適切なアルゴリズムを有する。
【0048】
高電圧領域(3)の活性状態またはスイッチON状態が感知されると、第1内部通信線(15)、ガルバニック絶縁装置(19)及び第3内部通信線(20)を介して第1制御装置(4)と第2制御装置(5)との間の第3通信リンク(24)が形成される。この第3通信リンク(24)を介して、第2制御ソフトウェア(7)を新たな第2制御ソフトウェア(7a)にアップデートするためのデータが伝送される。そして、第1制御装置(4)によって、第2制御装置のメモリー領域への新たな第2制御ソフトウェアの正しいデータ伝送に対する検査がチェックサム(checksum)を用いて行われる。
【0049】
これらのデータは、第2制御装置(5)のメモリー領域内に保存された後、第2制御装置(5)の作動順序を制御する。この目的で、高電圧制御ユニット(1)または単に高電圧領域(3)のみの自動または手動のリセット(reset)、または再始動(restart)が行われ、リセットまたは再始動過程の後、高電圧制御ユニット(1)の作動は、アップデートされた第1制御ソフトウェア(6a)と第2制御ソフトウェア(7a)とを含むファームウエアによって行われる。
【0050】
図5は、第4ステップとして、第1制御装置(4)に保存されたFW LV−MCU v.2.0バージョンを有する第1制御ソフトウェア(6a)のアップデートが完了し、第2制御装置(5)に保存されたFW HV−MCU v.2.0バージョンを有する第2制御ソフトウェア(7a)のアップデートが完了した作動状態を示す。高電圧制御ユニット(1)の1つまたは複数の構成部品を、リセットするかまたは再始動するための信号または装置の表示は省略した。この場合、先行技術で公知となったソリューションが使える。
【0051】
図6は、本発明の他の実施形態による高電圧制御ユニットの回路を示す図である。
図6では、第1作動状態における高電圧制御ユニットの実施形態を示し、第1作動状態では、低電圧領域(2)が閉じられたスイッチ(10)を通して低電圧電源供給装置(8)に連結され、これによって低電圧領域はスイッチON状態または活性状態である。同時に、高電圧領域(3)は開放されたスイッチ(11)によって高電圧電源供給装置(9)から遮断され、これによって高電圧領域はスイッチOFF状態または非活性状態である。
【0052】
図6に示す回路構成は、基本的に
図2に示す装置に相当するので、高電圧制御ユニット(1)の構成部品の説明は省略する。
図2の装置とは異なり、
図6に示す回路では、第3通信リンク(24)が、第4内部通信線(25)、ガルバニック絶縁装置(19)、及び第3内部通信線(20)を介して形成される。但し、第3通信リンク(24)は
図6に示す作動状態ではまだ形成されていない(図示なし)。
【0053】
以上、高電圧制御装置(1)の制御ソフトウェアをアップデートするために記載された本発明によるソリューションのメリット、すなわち効果は以下の通りである。
【0054】
<1>高電圧制御ユニット(1)の高電圧領域(3)の作動状態に関係なく、制御ソフトウェア(6、7)のアップデートが実施可能
<2>高電圧領域(3)の高電圧による整備担当者の危険が減少
<3>ガルバニック絶縁のような必要な保護措置にともなう、複雑性および費用を増加させる、外部ユニット(12)と高電圧領域(3)との間の通信リンク形成が不要
<4>2つの通信リンク(22、23)に対してただ一つの物理的通信経路が形成されればよいので、高電圧制御ユニット(1)の回路基板の製造時に、複雑性及び費用が減少
<5>高電圧絶縁を有する特殊なフラッシュツールが不要
<6>第1制御装置(4)による第2制御装置(5)のメモリー領域またはメモリー内容(memory content)が、例えば、チェックサム(checksum)を用いて検査可能であるため動作上及び機能上の信頼性が向上。
【符号の説明】
【0055】
1、1’ 高電圧制御ユニット(ECU)
2 低電圧領域
3 高電圧領域
4 第1制御装置(LV−MCU)
5 第2制御装置(HV−MCU)
6、6a 第1制御ソフトウェア(FW LV−MCU)
7、7a 第2制御ソフトウェア(FW HV−MCU)
8 低電圧電源供給装置(LV)
9 高電圧電源供給装置(HV)
10 第1スイッチ
11 第2スイッチ
12 外部ユニット
13 第1通信線
14 第1通信インターフェース(COM)
15、15’ 第1内部通信線
16 第2通信線
17 第2通信インターフェース(COM)
18 第2内部通信線
19 ガルバニック絶縁装置(ISO)
20 第3内部通信線
21 通信手段
22 第1通信リンク
23 第2通信リンク
24 第3通信リンク
25 第4内部通信線