(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像ユニットから前記撮像信号変換部までの区間にて伝送される第1の撮像信号の線路あたりの伝送速度が、前記撮像信号変換部による信号変換後の第2の撮像信号の線路あたりの伝送速度と等しい又は低速である、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。説明に用いる方向については、原則として各図中の方向の記載に従うものとする。ただし、筒状、棒状に構成された部材については部材が延在する方向を、また回動する部材については回転軸の方向を「軸方向」と呼称することがある。また、軸を中心として内外に向かう方向を「径方向」、軸を中心として回動する方向を「周方向」と呼称することがある。また、軸方向に直交する断面が矩形形状である部材についても、便宜上「径方向」、「周方向」と呼称することがある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る内視鏡1の全体構成図である。本実施形態では、医療分野において人体の腹部等の手術に用いる内視鏡を例にとり、その構成を例示する。
【0015】
内視鏡1は、主に把持部2と、連結部3と、被観察部位に挿入される挿入部11とを有する。挿入部11は、基端側から、連結部3を介して把持部2と連結された直線パイプ状の湾曲不能な硬性部4と、湾曲可能に構成された屈曲部5と、撮像部として機能する撮像ユニット6aが収納された先端部6とを有する。連結部3の外周部には、硬性部4の延在方向を軸として回動させる回転操作部7が設けられる。
【0016】
内視鏡1を用いて腹腔鏡下の手術を行う場合、挿入部11の先端部6と屈曲部5とがトロッカーやトロッカーチューブを介して手術部位まで案内される。一方、挿入部11の硬性部4の基端側の一部は体外に出た状態となり、施術者等が把持部2を把持して操作をしながら手術が執り行われる。
【0017】
把持部2には、屈曲部5を湾曲させるべく操作を行う第1操作部2aと、先端部6に搭載された撮像ユニット6aによる撮像方向を操作する第2操作部2bとが設けられる。把持部2において、第1操作部2a及び第2操作部2bは、それぞれ操作部の回動軸である第1軸Ax1を中心として回転可能である。
【0018】
施術者等が第1操作部2aを操作すると、屈曲部5はその操作量に応じて所定の方向(例えば図中下方)に向けて湾曲し、先端部6に設けられた撮像ユニット6aの撮像方向が変化、即ち視野が移動する。このとき、操作性を考慮して、第1操作部2aの回転方向と屈曲部5の湾曲方向とが一致するように構成されている。
【0019】
また、施術者等が第2操作部2bを操作すると、先端部6内に枢支された撮像ユニット6aが回動し、撮像ユニット6aの撮像方向が変化、即ち視野が移動する。ここでは、撮像ユニット6aの視野は図中前方と下方との間を移動する。
【0020】
なお、以降の説明において、第1操作部2aの操作によって屈曲部5が湾曲し、これによって視野を移動させる動作を「湾曲動作」、湾曲によって先端部6の先端が向く方向と硬性部4の中心軸方向(第2軸Ax2)とがなす角度を「湾曲角度」、前面視において湾曲によって先端部6の先端が向く方向を「湾曲方向」のように呼称することがある。そして、例えば先端部6の先端が図中下方(上方)に向くように屈曲部5が湾曲することを「下方(上方)に向けて湾曲する」のように表現することがある。
【0021】
また、以降の説明において、第2操作部2bを操作することによって撮像ユニット6aの視野を移動させる動作を「チルト動作」、あるいは単に「チルト」と呼称する。なお、第1操作部2a及び第2操作部2bは、把持部2に設けられたストッパ(図示せず)によって操作範囲(第1軸Ax1を軸とする回動範囲)が規制されている。なお、第1操作部2a、第2操作部2bは、図示するようなレバー式の他、回転グリップ等を用いた構成であってもよい。
【0022】
図1は、内視鏡1の初期状態を示しており、このとき屈曲部5は直線状であり、かつ先端部6における撮像ユニット6aの視野は図中前方を向いている。この状態から、第1操作部2aを操作すると、屈曲部5は図中下方に向けて湾曲し、第2操作部2bを操作すると、撮像ユニット6aは図中下方に向けてチルトする。
【0023】
図2は、屈曲部5の湾曲動作及び先端部6内の撮像ユニット6aのチルト動作を示す説明図である。
図2では、屈曲部5が図中下方に向けて湾曲している状態を示している。
【0024】
屈曲部5は、基端5aから遊端5bにかけて延在しており、基端5aと遊端5bとの間において回動可能に連結された複数の関節ピース30を有して構成される。以降の説明において、複数の関節ピース30の集合体が構成する軸を「屈曲部5の軸」、その方向を「屈曲部5の軸方向」のように呼称することがある。屈曲部5は湾曲可能であることから、「屈曲部5の軸方向」は湾曲方向及び湾曲角度に応じて変化する。
【0025】
関節ピース30は、例えば、ステンレス鋼により構成され、屈曲部5の軸方向から見たときに角丸の矩形状又は円形状をなす部材である。複数の関節ピース30を周方向に交互に90゜ずつずらして連結することによって、屈曲部5の遊端5bが基端5aに対して任意の方向に湾曲可能に構成されている。また、複数の関節ピース30の内側には、制御ワイヤ20(第1制御ワイヤ20a及び第2制御ワイヤ20b)が挿通され、制御ワイヤ20の一方を牽引し、他方を弛緩することによって、屈曲部5が湾曲する。
【0026】
硬性部4は、第2軸Ax2方向に延在する中空部4aを有する筒状かつ直線状の部材であり、例えばステンレス鋼により構成される。硬性部4は、先端側の一端に屈曲部5の基端5aが取り付けられ、基端側の他端は連結部3を介して把持部2に連結されて、把持部2から前方に向けて延伸されている。
【0027】
連結部3は、基端側(図中後方)が把持部2に支持されるとともに、前方において硬性部4に接続されている。また、連結部3と把持部2とはリンク部材10(
図1参照)によって接続されている。第1操作部2aの操作によって発生した操作力は、リンク部材10によって連結部3に伝達される。連結部3から硬性部4、屈曲部5に至る挿入部内部には、制御ワイヤ20が挿通され、挿入部内部を移動可能に設けられる。連結部3では、第1操作部2aの操作力を制御ワイヤ20の牽引力に変換して屈曲部5の先端側の遊端5bまで伝達する。
【0028】
また、把持部2から連結部3を経て、硬性部4、屈曲部5に至る挿入部内部には、スプリングジョイント21が挿通され、回動可能に設けられる。第2操作部2bの操作によって発生した操作力は、把持部2の内部に設けられたギア機構によって第2軸Ax2を軸とするスプリングジョイント21の回転力に変換され、この回転力が挿入部の先端部6まで伝達される。スプリングジョイント21の回転力は、先端部6の内部に設けられた連結機構によって回転運動から直線運動に変換され、図示しない駆動アームが前後方向(挿入部11の長手方向)に移動する。
【0029】
撮像ユニット6aは、先端部6において両側部が回動可能に支持され、駆動アームと接続されており、駆動アームの前後方向の移動に伴って、先端部6内に枢支された支持軸を中心として回動(チルト)し、視野が移動する。
【0030】
図2の例では、屈曲部5の湾曲角度はθ1(例えば0゜〜90゜)、撮像ユニット6aのチルト角度はθ2(例えば0゜〜90゜)となっている。上述した湾曲動作とチルト動作とを組み合わせることにより、撮像ユニット6aの視野方向は角度θ1+θ2だけ変化する。よって、屈曲部5の湾曲角度を大きくせずとも(即ち、湾曲の際に大きな空間を占めることなく)視野の移動範囲を0゜〜180゜まで拡大することが可能となる。本実施形態の内視鏡1は、初期状態として直線状であった屈曲部5が湾曲する湾曲動作と、先端部6内に枢支された撮像部自体が回動するチルト動作との組み合わせによって視野の移動角度が合算される。
【0031】
なお、本実施形態では、
図1に示すように屈曲部5が湾曲していない状態を初期状態としているが、これに限定されない。例えば、屈曲部5が上方に向けて湾曲する状態を初期状態とするなど、任意の状態を初期状態とし、所定の湾曲角度、チルト角度にて湾曲動作及びチルト動作して視野が変位する構成としてもよい。
【0032】
また、屈曲部5を湾曲させる制御ワイヤ20は、湾曲方向に応じて任意の本数を設ければよい。また、湾曲機構は、複数の関節ピース30が連結された屈曲部5と、屈曲部5を牽引、弛緩する制御ワイヤ20とにより湾曲させる構成例を示したが、これに限定されない。また、チルト機構は、撮像ユニット6aそのものが枢支された軸の回りを回動するように構成した例を示したが、これに限定されない。例えば、先端部6において撮像素子を固定するとともに、撮像素子と光学レンズとの間に設けたミラー部材等の光学部材を回動させて被写体光の光路を変化させる構成としてもよい。
【0033】
撮像ユニット6aは、小型のCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等により構成される撮像素子(図示せず)と、入射された被写体光を撮像素子に結像させる光学レンズ(図示せず)とを有する。なお、このような形状の撮像ユニット6aは、例えばスマートフォンまたはタブレット端末に使用されるカメラモジュールを流用することで実現できる。
【0034】
内視鏡1は、把持部2よりケーブルを介してビデオプロセッサ40、ディスプレイ装置41と接続される。先端部6の撮像ユニット6aによって観察対象(ここでは、人体内部)を撮像して得られた静止画又は動画の画像信号は、ビデオプロセッサ40に伝送され、ビデオプロセッサ40において各種信号処理等が行われる。ビデオプロセッサ40により処理された観察対象の画像はディスプレイ装置41に表示される。一方、内視鏡1は、ビデオプロセッサ40から電力及び各種制御信号を受け取って動作し、撮像ユニット6aにおいて制御信号に基づくタイミングで撮像が行われる。
【0035】
次に、
図3、
図4、
図5を参照して、内視鏡1の内部に設けられるケーブル及び基板の構成について説明する。
図3は挿入部11内に設けられる基板の配置構成を示す図、
図4は先端部6及び屈曲部5における基板の配置構成を示す図、
図5は基板とケーブルの具体的な構成例を示す図である。
【0036】
本実施形態では、内視鏡1の挿入部11の寸法は、例えば、先端部6の撮像ユニット6aから屈曲部5の後端側の部分(硬性部4の先端部分)までの長さL1が約100mm、硬性部4の先端部分から把持部2までの長さL2が約600mm程度としている。以下、上記硬性部4の先端部分を中間部C1、把持部2の部分を基端部C2と称する。また、先端部6、屈曲部5、硬性部4の外径は最大部分で約10mm程度とする。
【0037】
挿入部11の内部には、中間部C1に中継基板71を、基端部C2に画像出力基板72を設け、撮像ユニット6aにより撮像した被写体の撮像信号を中継基板71において中継する構成としている。
【0038】
先端部6の撮像ユニット6aは、被写体像を結像させる光学レンズ61と、CCDまたはCMOS等による撮像素子62と、撮像素子62を搭載する撮像基板63とを有し、撮像基板63が先端部6内に配置される。硬性部4の先端部分における中間部C1には、撮像信号を中継するための信号変換回路を搭載した中継基板71が配置され、撮像基板63と中継基板71とが第1ケーブル81によって接続される。把持部2における基端部C2には、撮像信号をビデオプロセッサ40へ出力するための画像出力回路を搭載した画像出力基板72が配置され、中継基板71と画像出力基板72とが第2ケーブル82によって接続される。
【0039】
撮像基板63は、例えば5mm×6mm程度の大きさであり、一面に撮像素子62が実装され、第1ケーブル81の一端が半田付け等によって接続される。第1ケーブル81は、屈曲部5の中を挿通され、内視鏡先端の先端部6から中間部C1までの長さL1の区間において、撮像ユニット6aから出力される撮像信号、及び撮像ユニット6aに供給する電力及び制御信号を伝送する。第1ケーブル81の中継基板71側の端部には接続基板75が接続され、第1ケーブル81が接続基板75を介して中継基板71と着脱可能に接続される。
【0040】
中継基板71は、硬性部4内に配置される細長の形状で、例えば40mm×7mm程度の大きさであり、撮像信号変換部の一例としての信号変換回路を含む信号変換IC73が実装される。中継基板71には、第1ケーブル81の他端に接続した接続基板75がコネクタ85によって接続されるとともに、第2ケーブル82の一端がコネクタ86によって接続される。第2ケーブル82は、硬性部4の中を挿通され、中間部C1から基端部C2までの長さL2の区間において、信号変換回路による変換後の撮像信号、及び撮像ユニット6a、信号変換IC73に供給する電力及び制御信号を伝送する。第2ケーブル82の他端は、画像出力基板72と接続される。
【0041】
このように、挿入部11の内部に中継基板71を設け、中継基板71に搭載した撮像信号変換部を構成する信号変換回路によって撮像信号を変換し、変換後の撮像信号を画像出力基板72に伝送する構成となっている。
【0042】
画像出力基板72は、把持部2内の空間に配置され、画像出力回路を含む画像出力IC74が実装される。画像出力基板72には、第2ケーブル82の他端がコネクタ87によって接続されるとともに、第3ケーブル83の一端がコネクタ88によって接続される。第3ケーブル83は、内視鏡1の把持部2から延出され、ビデオプロセッサ40と接続される。
【0043】
撮像ユニット6aの撮像素子62としては、例えば、Full−HD(Full High Definition、1080pなど)画像を撮像可能な高解像度の撮像素子を用いる。高解像度の撮像素子として、発熱量を抑制するため、主にモバイル機器用途に開発された低消費電力の素子であるMIPI(Mobile Industry Processor Interface)(登録商標、以下同様)規格対応の撮像素子を用いることとする。撮像素子62の消費電力は、例えば、撮像時における消費電力が110mW以下とする。すなわち、本実施形態では、高解像度の撮像信号を出力する低消費電力(低発熱量)の撮像素子として、撮像信号のデータ伝送方式が小振幅差動伝送方式であるMIPI規格対応の撮像素子を搭載する。
【0044】
撮像ユニット6aの撮像基板63からは、例えば、データ伝送量1.6Gbps程度(Full−HD、1080pの解像度で、フレームレート60fps程度のデータ伝送量)の撮像信号をMIPI規格に準拠した方式で信号伝送を考えた場合、0.8Gbpsで2レーンのデジタル信号(MIPI信号)として出力する。なお、1.6Gbpsの1レーンではMIPI規格に準拠した伝送量を確保出来ないためである。この場合、撮像ユニット6aにおける撮像時のデジタル出力信号のスレッショルドレベル(スレッショルド電圧、この場合は差動出力電圧)は、例えば0.2V以下とすることで、データ伝送のための消費電力を抑えることができ、先端部の発熱を低減させることが可能である。しかし、信号電圧と信号伝送距離とはトレードオフの関係にあり、Gbpsオーダーの高速信号伝送を電気信号により行う場合、低電圧で長距離の信号伝送が困難になってくる。内視鏡において、上記のMIPI信号を用いて撮像信号を伝送する場合、挿入部11の先端部6から基端側の把持部2まで約700mmの長さを伝送することは困難である。
【0045】
今回、0.2Vの差動出力電圧でデータ信号を伝送したところ、100mmまでは安定したデータ伝送が可能であることを確認した。また、先端部の発熱も、大掛かりな放熱手段を盛り込まない状態においても、短時間であれば火傷などを生じない温度上昇に抑えることができることを確認できた。
【0046】
そこで、本実施形態では、体内で臓器などと直接触れる可能性が先端部より低い挿入部11の中間部C1に中継基板71を設け、比較的長距離の信号伝送が可能な第2の小振幅差動伝送方式の信号に信号変換して、中継基板71から把持部2の画像出力基板72まで信号伝送する。ここで、中間部C1では、体内で臓器などと直接触れる可能性が低いため、データ信号伝送のための差動出力電圧を高くすることが出来る。加えて、先端部には基板だけでなく、センサやレンズ、チルトさせるための機構などが構成されており、自然放熱させるための空間を確保するのも困難であるが、中間部C1は比較的、空間の制約も緩く、自然放熱させるための部材を構成しやすい。
また、上記理由により、中間部C1からは低消費電力の伝送規格であるMIPIに限ったわけではなく、伝送距離を長くすることができれば、どのような伝送方式でも構わない。
【0047】
中継基板71は、信号変換IC73において、例えば、MIPI信号(0.8Gbps×2レーン)を、第2の小振幅差動伝送方式としてのSLVDS(Serial LVDS(Low Voltage Differential Signaling))規格の1.6Gbps×1レーンのデジタル信号(SLVDS信号)に変換する。信号変換IC73は、信号変換回路としてシリアル変換回路を有し、MIPI信号をシリアル伝送の小振幅差動信号(SLVDS信号)に変換する。この場合、撮像信号変換部を構成する信号変換回路における撮像時のデジタル出力信号のスレッショルドレベル(スレッショルド電圧、この場合は差動出力電圧)は、例えば0.4V以下とする。
【0048】
今回、中間部C1から0.4Vの差動出力電圧でデータ信号を伝送したところ、600mmまでは安定したデータ伝送が可能であることを確認した。また、中間部C1の発熱も、大掛かりな放熱手段を盛り込まない状態においても、短時間であれば火傷などを生じない温度上昇に抑えることができることを確認できた。
【0049】
このため、撮像素子における撮像時のデジタル出力信号のスレッショルドレベルは、信号変換回路におけるスレッショルドレベルと比較して小さく(電圧が低く)なっている。すなわち、L1区間はL2区間に対してスレッショルドレベルを低くすることで、挿入部先端部の小型化を図りつつ、挿入部先端部における発熱を抑制することができる。
【0050】
なお、撮像基板63から出力される撮像信号の線路あたりの伝送速度において、2レーンで伝送していたL1の区間は、1レーンで伝送するL2の区間に対して、線路あたりの伝送速度に比べて低速である。すなわち、L1区間はL2区間に対して伝送速度を低速にするか、もしくは同等であることで、挿入部先端部の小型化を図りつつ、挿入部先端部における発熱を抑制することができる。
【0051】
撮像基板63と中継基板71とを接続する第1ケーブル81は、例えば、複数の細線同軸ケーブル(AWG46番線)が平帯状に配置されたものにより構成され、1レーンにつき2本のケーブルによって差動信号のMIPI信号(0.8Gbps×2レーン、第1の撮像信号)を伝送する。また、第1ケーブル81は、MIPI信号による第1の撮像信号とともに、撮像基板63と中継基板71間の制御信号及び電源電力を伝送する。第1ケーブル81は、湾曲操作に応じて所定方向へ屈曲する屈曲部5内の中空部を挿通されるため、屈曲性に優れたケーブル材料を用いる。このとき、第1ケーブル81は、長さL1(約100mm)の距離において撮像基板63と中継基板71の間で信号を伝送する。撮像基板63と中継基板71との距離、すなわち撮像ユニット6aから出力される信号変換前のMIPI信号を第1ケーブル81により伝送する距離は、例えば、200mm以下が好ましい。本実施形態では、上記のように長さL1=約100mmとしている。
【0052】
なお、第1ケーブル81は、単体の同軸ケーブルがばらばらに分離されたもの、単体の同軸ケーブルの端部を一緒に固定してまとめたもの、同軸ケーブルが連結されたフラットケーブル状のものなど、いずれであってもよい。あるいは、第1ケーブル81は、複数の細線同軸ケーブルと複数の単線ケーブル又はFFC(Flexible Flat Cable)との組み合わせによって構成し、撮像信号を細線同軸ケーブルにより伝送し、制御信号及び電源電力を単線ケーブル又はFFCにより伝送してもよい。
【0053】
中継基板71と画像出力基板72とを接続する第2ケーブル82は、例えば、ツインナクスケーブルとFFCとの組み合わせにより構成される。この場合、第2ケーブル82において、2本2組の同軸ケーブルからなるツインナクスケーブルによってSLVDS信号(1.6Gbps×1レーン、第2の撮像信号)を伝送し、FFCによって中継基板71と画像出力基板72間の制御信号及び電源電力を伝送する。第2ケーブル82は、硬性部4内の中空部を挿通されるため、第1ケーブル81のような屈曲性は必要としないが、ある程度の屈曲性を有するケーブル材料を用いる。このとき、第2ケーブル82は、長さL2(約600mm)の距離において中継基板71と画像出力基板72との間で信号を伝送する。
【0054】
画像出力基板72は、画像出力IC74において、例えば、SLVDS信号をUSB(Universal Serial Bus)3.0規格の伝送信号に変換する。画像出力IC74は、画像出力回路として逆シリアル変換回路とUSB信号変換回路とを有し、SLVDS信号を逆シリアル変換して一旦MIPI信号に再変換した後、USB3.0信号に変換して出力する。なお、画像出力基板72において、SLVDS信号からUSB3.0信号に直接変換してもよい。
【0055】
画像出力基板72とビデオプロセッサ40とを接続する第3ケーブル83は、例えば、USB3.0規格対応の信号ケーブルにより構成され、画像出力基板72から出力されるUSB3.0信号の撮像信号をビデオプロセッサ40へ伝送する。また、第3ケーブル83は、USB3.0信号による撮像信号とともに、内視鏡1の把持部2とビデオプロセッサ40間の制御信号及び電源電力を伝送する。このとき、第3ケーブル83は、例えば、約2〜3mの距離において内視鏡1とビデオプロセッサ40との間で信号を伝送する。なお、画像出力基板72において、USB3.0信号の代わりに、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標、以下同様)規格の信号に変換してもよいし、他の規格又は仕様に対応した信号に変換して用いてもよい。
【0056】
次に、
図6を参照して、中継基板71における第1ケーブル81の接続部の詳細構成について説明する。
図6は中継基板71及び接続基板75の具体的な構成例を示す図である。
【0057】
中継基板71は、挿入部11の長手方向(
図6において前後方向)に細長の形状であり、第1ケーブル81が接続基板75を介して接続される。第1ケーブル81は、複数の細線同軸ケーブルにより構成される場合、各同軸ケーブルは中心部の芯線(内部導体)81aと、外側のシールド部(外部導体)81bとを有する。この第1ケーブル81に対応して、接続基板75の一方の面には、ケーブル接続端子となるパッド76と、グランド接続端子となるグランドパターン77とが設けられる。この場合、シールド部81bが接続基板75のグランドパターン77に、芯線81aがパッド76に、それぞれ半田等によって電気的に接続されて取り付けられる。
【0058】
接続基板75の他方の面には、グランドパターン77と導通する図示しないグランド導体と、パッド76と導通するよう取り付けられたコネクタ85とが設けられる。接続基板75は、コネクタ85によって中継基板71と電気的に接続され、接続基板75と中継基板71との間には、両基板のグランド導体を導通接続する導電部材78が設けられる。導電部材78は、例えば、導電性発泡材などの圧縮変形可能な導電材料により構成され、接続基板75と中継基板71との間に挟み込んでグランド導体を基板間において接続する。
【0059】
このとき、第1ケーブル81のシールド部81bは、接続基板75のグランドパターン77、接続基板75におけるグランド、コネクタ85のグランド端子を介して、中継基板71のグランドに接続される。さらに、導電部材78を介して、接続基板75のグランド導体と中継基板71のグランド導体とが接続される。導電部材78によって、接続基板75と中継基板71との接地を確実にし、第1ケーブル81から中継基板71までのグランドを強化できる。また、コネクタ85によって着脱可能に第1ケーブル81と中継基板71とを接続できるため、組立性を向上できる。
【0060】
上述したように、本実施形態では、撮像ユニット6aから出力される撮像信号を変換する撮像信号変換部を含む中継基板71を挿入部11内に設けている。そして、撮像素子62として、MIPI規格対応の撮像素子など、撮像信号のデータ伝送方式が小振幅差動伝送方式である撮像素子を用い、低消費電力の撮像ユニット6aを構成し、低電圧の差動信号によって撮像ユニット6aから中継基板71まで撮像信号を伝送する。これにより、高解像度の撮像素子を内視鏡の挿入部先端部に実装可能であり、高フレームレートの撮像信号を伝送できるため、高精細で動きが滑らかな映像を撮像できる。このように、本実施形態によれば高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0061】
また、撮像素子62として低消費電力の撮像素子を用いることにより、撮像ユニット6aにおける発熱を低減でき、挿入部先端部の温度上昇を抑制できる。また、撮像ユニット6aから出力される撮像信号は小振幅、低電圧の信号であるため、小型化を図るためにシールド性能に制約を受ける挿入部先端部において、外部への放射ノイズを抑制できる。
【0062】
また、第1ケーブル81を屈曲性に優れたケーブル材料とし、撮像ユニット6aの撮像基板63と中継基板71とを可撓性を有して接続する構成としている。このため、屈曲部5を自在に湾曲させることができ、挿入部先端部の撮像ユニット6aの視野方向、位置などを可動とした撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0063】
また、第1ケーブル81と中継基板71との接続部において、接続基板75を設けてコネクタ85により第1ケーブル81と中継基板71とを接続し、接続基板75と中継基板71との間に両基板のグランド導体を導通接続する導電部材78を設けている。第1ケーブル81により伝送されるMIPI信号等の撮像信号は、小振幅、低電圧の信号であるため、外部から到来するノイズの影響を受けやすいが、導電部材78によって基板間の接地を確実にでき、グランドを強化できる。これにより、外来ノイズの影響を低減でき、安定した撮像信号を出力できる。
【0064】
本発明に係る実施形態の種々の態様として、以下のものが含まれる。
【0065】
本発明の一態様の内視鏡は、挿入部先端部に撮像ユニットを有し、前記撮像ユニットから出力される撮像信号を変換する撮像信号変換部を、前記挿入部内に設けている。
【0066】
これにより、低消費電力の撮像ユニットを構成し、撮像ユニットから出力される撮像信号を撮像信号変換部まで伝送し、撮像信号変換部にて撮像信号を変換した後に、内視鏡の基端側まで信号伝送することが可能となる。このため、例えば挿入部先端部に高解像度かつ低消費電力の撮像素子を搭載可能であり、高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。したがって、本態様の構成によれば、挿入部先端部の小型化を図りつつ、挿入部先端部における発熱を抑制することができる。
【0067】
本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、少なくとも前記撮像ユニットから前記撮像信号変換部までの区間にて伝送される撮像信号のデータ伝送方式が、小振幅差動伝送方式である。
【0068】
この場合、少なくとも撮像ユニットから撮像信号変換部までの信号伝送路において、例えばMIPI規格、LVDS規格などの小振幅差動伝送方式によって小振幅差動信号の撮像信号を伝送するよう撮像信号出力回路を構成できる。この構成によれば、撮像ユニットの撮像素子として、例えば高解像度かつ低消費電力の撮像素子を使用可能であり、低電圧で高フレームレートの撮像信号を伝送できるため、発熱量を抑制した高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0069】
本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記撮像ユニットから前記撮像信号変換部までの区間にて伝送される第1の撮像信号の線路あたりの伝送速度が、前記撮像信号変換部による信号変換後の第2の撮像信号の線路あたりの伝送速度と等しい又は低速である。
【0070】
この場合、例えば撮像ユニットから撮像信号変換部までの区間にて伝送される第1の撮像信号をMIPI信号、撮像信号変換部による信号変換後の第2の撮像信号を、第1の撮像信号の伝送速度より高速又は等しいSLVDS信号とするよう撮像信号出力回路を構成できる。この構成によれば、撮像ユニットから撮像信号変換部までの区間において、比較的低速の伝送速度にて第1の撮像信号を伝送し、第1の撮像信号より伝送速度が高速又は等しい第2の撮像信号に変換した後、内視鏡の基端側まで撮像信号を伝送できる。したがって、例えば挿入部先端部に高解像度かつ低消費電力の撮像素子を搭載可能であり、発熱量を抑制した高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0071】
本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記撮像ユニットに含まれる撮像素子の撮像時における消費電力が、110mW以下である。
【0072】
この構成によれば、挿入部先端部に低消費電力の撮像素子を搭載し、発熱量を抑制した高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0073】
本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記撮像ユニットにおける撮像時のデジタル出力信号のスレッショルドレベルが、0.2V以下であり、前記撮像信号変換部における撮像時のデジタル出力信号のスレッショルドレベルが、0.4V以下である。
【0074】
この場合、例えば撮像ユニットから出力される第1の撮像信号をスレッショルドレベルが0.2V以下のMIPI信号、撮像信号変換部による信号変換後の第2の撮像信号を、スレッショルドレベルが0.4V以下で第1の撮像信号よりも信号レベルが大きいSLVDS信号とするよう撮像信号出力回路を構成できる。この構成によれば、撮像ユニットから撮像信号変換部までの区間として比較的短い距離を低電圧の第1の撮像信号にて伝送し、撮像信号変換部によって第1の撮像信号よりも信号レベルが大きい第2の撮像信号に変換して、比較的長い距離を伝送できる。したがって、例えば挿入部先端部に高解像度かつ低消費電力の撮像素子を搭載可能であり、発熱量を抑制した高解像度の撮像素子先端実装型の内視鏡を実現できる。
【0075】
本発明の一態様の内視鏡は、上記の内視鏡であって、前記撮像信号変換部を含む中継基板と、前記撮像ユニットと前記中継基板との間で前記撮像信号を伝送するケーブルと、前記ケーブルの前記中継基板側の端部に接続された接続基板と、前記接続基板と前記中継基板とを着脱可能に接続するコネクタと、を有し、前記接続基板と前記中継基板とが対向した状態で前記コネクタを介して接続され、前記接続基板と前記中継基板との間に両基板のグランド導体を導通接続する導電部材が設けられる。
【0076】
この構成によれば、導電部材によって、基板間のグランド導体を接続して接地をより確実にでき、ケーブルから中継基板までのグランドを強化できる。これにより、外来ノイズの影響を低減でき、安定した撮像信号を出力できる。また、コネクタによって着脱可能にケーブルと中継基板とを接続できるため、組立性を向上できる。
【0077】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。