(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
図1と
図2は、第一実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図1と
図2に示されるように、剛性可変アクチュエータシステムは、剛性可変アクチュエータ10と、剛性可変アクチュエータ10の熱量変化を促進する熱量変化促進系30と、剛性可変アクチュエータ10と熱量変化促進系30を制御する制御部20を備えている。
【0015】
剛性可変アクチュエータ10は、可撓性部材に装着され、異なる剛性状態を取り得ることにより、装着された可撓性部材に異なる剛性を提供する機能を有している。剛性可変アクチュエータ10は、第一の相と第二の相の間で相が移り変わり得る形状記憶部材12と、制御部20から電流の供給を受けて熱を発して、形状記憶部材12に第一の相と第二の相の間の相の移り変わりを引き起こさせる誘起体14を備えている。誘起体14は、複数の誘起部材14−1,14−2を備えている。
図1に示された剛性可変アクチュエータ10は、二つの誘起部材を備えているが、これに限定されることなく、さらに多くの誘起部材を備えていてもよい。
【0016】
形状記憶部材12は、少なくとも一つの自由端をもって可撓性部材に配される。形状記憶部材12は、第一の相にあるときは、外力に従って容易に変形し得る低剛性状態を取り、すなわち低い弾性係数を示し、したがって、可撓性部材に比較的低い剛性を提供する。また、形状記憶部材12は、第二の相にあるときは、外力に抗してあらかじめ記憶している記憶形状を取る傾向を示す高剛性状態を取り、すなわち高い弾性係数を示し、したがって、可撓性部材に比較的高い剛性を提供する。記憶形状は、これに限らないが、たとえば直線状であってよい。
【0017】
ここにおいて、外力とは、形状記憶部材12を変形させ得る力を意味しており、重力も外力の一部と考える。
【0018】
誘起部材14−1,14−2は、熱を発する性能を有している。形状記憶部材12は、誘起部材14−1,14−2の加熱に対して、第一の相から第二の相に相が移り変わる性質を有している。
【0019】
形状記憶部材12は、たとえば形状記憶合金から構成されていてよい。形状記憶合金は、これに限らないが、たとえばNiTiを含む合金であってよい。また、形状記憶部材12は、これに限らず、形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、形状記憶セラミックなど、他の材料から構成されていてもよい。
【0020】
形状記憶部材12を構成する形状記憶合金は、たとえば、マルテンサイト相とオーステナイト相の間で相が移り変わるものであってよい。その形状記憶合金は、マルテンサイト相時には、外力に対して比較的容易に塑性変形する。つまり、その形状記憶合金は、マルテンサイト相時には低い弾性係数を示す。一方、その形状記憶合金は、オーステナイト相時には、外力に抵抗して容易には変形しない。さらに大きな外力のために変形しても、その大きな外力がなくなれば、超弾性を示して、記憶している形状に戻る。つまり、その形状記憶合金は、オーステナイト相時には高い弾性係数を示す。
【0021】
誘起部材14−1,14−2は、導電性材料から構成されており、電流の供給に対して熱を発する性質を有している。誘起部材14−1,14−2は、たとえば電熱線、つまり電気抵抗の大きい導電性部材で構成されてよい。
【0022】
形状記憶部材12は、細長い外観形状を有している。各誘起部材14−1,14−2は、ワイヤ状の部材で構成されており、形状記憶部材12の外側周囲に配置されている。複数の誘起部材14−1,14−2は、形状記憶部材12の長手軸に沿って間隔を置いて配置されている。各誘起部材14−1,14−2は、形状記憶部材12から適度なすき間をおいて、形状記憶部材12の長手軸に沿って、形状記憶部材12の周囲を螺旋状に延びている。このような構成のおかげで、誘起部材14−1,14−2によって発せられる熱は、形状記憶部材12に効率良く伝達される。
【0023】
複数の誘起部材14−1,14−2は、同一構造体であってよい。しかし、これに限定されることなく、複数の誘起部材14−1,14−2は、複数の異なる構造体を含んでいてもよい。異なる構造体は、たとえば、異なる長さや異なる太さや異なるピッチを有していてもよく、また、異なる材料で作られていてもよい。つまり、複数の誘起部材14−1,14−2は、すべてまたはいくつかが、同じ特性を有していてもよいし、異なる特性を有していてもよい。
【0024】
形状記憶部材12は、導電性材料から構成されていてよい。たとえば、形状記憶部材12の周囲には絶縁膜16が設けられている。絶縁膜16は、形状記憶部材12と誘起部材14−1,14−2の間の短絡を防止する働きをする。絶縁膜16は、少なくとも誘起部材14−1,14−2に向き合っている部分を覆って設けられている。
図1には、形状記憶部材12の外周面の全体を覆って設けられている形態が描かれているが、これに限らず、形状記憶部材12の外周面を部分的に覆って設けられていてもよく、また、形状記憶部材12の全体を覆って設けられていてもよい。
【0025】
誘起部材14−1,14−2の周囲には絶縁膜18が設けられている。絶縁膜18は、形状記憶部材12と誘起部材14−1,14−2の間の短絡と、誘起部材14−1,14−2の隣接する部分間の短絡を防止する働きをする。
【0026】
制御部20は、誘起部材14−1,14−2をそれぞれ独立に駆動する駆動部22−1,22−2を有している。誘起部材14−1,14−2の両端は、それぞれ、駆動部22−1,22−2に電気的に接続されている。各駆動部22−1,22−2は、一つの電源と一つのスイッチを有している。各駆動部22−1,22−2は、それぞれ、スイッチのオン動作に応じて、誘起部材14−1,14−2に電流を供給し、また、スイッチのオフ動作に応じて、誘起部材14−1,14−2に対する電流の供給を停止する。誘起部材14−1,14−2は、電流の供給に応じて熱を発する。
【0027】
剛性可変アクチュエータ10は、形状記憶部材12が何ら拘束されることなく、可撓性部材に装着される。たとえば、剛性可変アクチュエータ10は、形状記憶部材12の一端または両端が自由端であるように、可撓性部材の限られた空間内に少ないすき間をもって配置される。
【0028】
ここにおいて、限られた空間とは、剛性可変アクチュエータ10をちょうど収容し得る空間を意味している。したがって、剛性可変アクチュエータ10と可撓性部材の一方の変形は、わずかであっても、他方に接触して外力を与え得る。
【0029】
たとえば、可撓性部材は、剛性可変アクチュエータ10の外径よりもわずかに大きい内径をもつチューブであり、このチューブの内部に剛性可変アクチュエータ10が配置されてよい。これに限らず、可撓性部材は、剛性可変アクチュエータ10よりもわずかに大きい空間を有してさえいればよい。可撓性部材は、たとえば、内視鏡の挿入部であってよい。
【0030】
形状記憶部材12が第一の相にあるとき、剛性可変アクチュエータ10は、比較的低い剛性を可撓性部材に提供し、可撓性部材に作用する外力すなわち形状記憶部材12を変形させ得る力に従って容易に変形する。
【0031】
また、形状記憶部材12が第二の相にあるとき、剛性可変アクチュエータ10は、比較的高い剛性を可撓性部材に提供し、可撓性部材に作用する外力すなわち形状記憶部材12を変形させ得る力に抗して記憶形状に戻る傾向を示す。
【0032】
たとえば制御部20によって形状記憶部材12の相が第一の相と第二の相の間で切り換えられることによって、可撓性部材の剛性が切り換えられる。
【0033】
剛性の切り換えに加えて、可撓性部材に重力以外の外力が作用している状況下においては、剛性可変アクチュエータ10は、可撓性部材の形状を切り換える双方向アクチュエータとしても機能する。また、可撓性部材に重力以外の外力が作用しておらず、形状記憶部材12の相が第二の相に切り換えられる前の第一の相において可撓性部材が変形されている状況下においては、可撓性部材の形状を元に戻す単一方向アクチュエータとしても機能する。
【0034】
熱量変化促進系30は、剛性可変アクチュエータ10の近くを延びている流路32と、流路32に流体的に接続された、剛性可変アクチュエータ10との間で熱量の受け渡しをする熱伝達媒体を流路32を通して移送する移送部40を備えている。
【0035】
流路32は、形状記憶部材12に並走して配置されている。これは構成の簡略化と小型化にとって好ましい。流路32は、誘起部材14−1,14−2の近傍に配置されている。あるいは、流路32は、誘起部材14−1,14−2に接触して配置されていてもよい。流路32の一端は、移送部40に機械的に接続されている。移送部40は、必要に応じて、熱伝達媒体を剛性可変アクチュエータ10の近くの所望の位置に滞留させる機能を有している。
【0036】
熱伝達媒体は、少なくとも固体、液体、気体、半固体(ゲル)のいずれかを含んでいる。熱伝達媒体は、液体と固体たとえばビーズ等の混合物を含んでいてもよい。熱伝達媒体は、複数の異なる熱伝達流体38A,38Bを含んでいる。熱伝達流体38A,38Bは、熱伝導率または熱容量の少なくとも一方が異なっている。熱伝達流体38A,38Bは、粘度または密度の少なくとも一方が異なっている。たとえば、熱伝達流体38Aは気体で構成され、熱伝達流体38Bは液体で構成されている。一例では、熱伝達流体38Aは空気で構成され、熱伝達流体38Bは水で構成されている。水の熱伝導率は空気の熱伝導率と比べ約20倍大きい。水の熱容量は空気の熱容量と比べ約3000倍大きい。
【0037】
移送部40は、複数のポンプ42A,42Bを有している。ポンプ42Aは、熱伝達流体38Aたとえば空気を移送するためのものであり、ポンプ42Bは、熱伝達流体38Bたとえば水を移送するためのものである。ポンプ42A,42Bは、それぞれ、吸引口から熱伝達流体38A,38Bを吸引し、吐出口から熱伝達流体38A,38Bを吐出する機能を有している。ポンプ42Aの吸引口は吸気管36Aに接続されており、吸気管36Aは大気中で終端している。ポンプ42Aの吐出口は、接続流路34Aを介して流路32に接続されている。ポンプ42Bの吸引口は吸水管36Bに接続されており、吸水管36Bは、水を溜めておくためのタンク44の中にまで延びている。ポンプ42Bの吐出口は、接続流路34Bを介して流路32に接続されている。
【0038】
制御部20は、ポンプ42A,42Bを独立に
駆動するポンプ駆動部24を有している。ポンプ駆動部24は、ポンプ42A,42Bの一方に信号を供給して、ポンプ42A,42Bの一方を選択的に駆動する機能を有している。ポンプ42A,42Bは、信号の供給に応じて、それぞれ、熱伝達流体38A,38Bを吐出する。その結果、移送部40は、熱伝達媒体である熱伝達流体38A,38Bを流路32の中へ吐出する。これにより、移送部40は、熱伝達流体38A,38Bが流路32に沿って分離された状態を維持しながら、流路32を通して熱伝達流体38A,38Bを移送する。
【0039】
さらに、制御部20は、誘起体14の制御に連動して移送部40を制御する。具体的には、制御部20は、誘起部材14−1,14−2の駆動のオンオフに呼応して、ポンプ42A,42Bの駆動を制御する。
【0040】
図1は、誘起部材14−1,14−2が共に駆動されている状態を示している。この状態では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は奪われないことが好ましい。このため、ポンプ駆動部24は、誘起部材14−1,14−2の制御に連動して、すなわち、駆動部22−1,22−2のオン動作に応じて、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、形状記憶部材12に沿って少なくとも誘起部材14−1が延びている範囲R1と少なくとも誘起部材14−2が延びている範囲R2の両方の流路32の内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって移送される時間である。その結果、範囲R1と範囲R2の両方の流路32の内部空間に熱伝達流体38Aである空気が滞留される。
【0041】
滞留された空気は、流動状態に比べ温められるため、誘起部材14−1,14−2の熱を奪いにくくなる。また、空気は熱伝導率が悪いため、保温効果も期待できる。
【0042】
図2は、
図1の状態から、誘起部材14−2はそのまま駆動されているが、誘起部材14−1は駆動が停止された状態を示している。この状態では、誘起部材14−2に対応する範囲R2では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は奪われないことが好ましい反面、誘起部材14−1に対応する範囲R1では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は早く奪わることが好ましい。
【0043】
このため、ポンプ駆動部24は、駆動部22−1のオフ動作に応じて、ポンプ42Bを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、誘起部材14−1に対応する範囲R1の流路32の内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Bである水がポンプ42Bによって流路32の中に移送される時間である。
【0044】
ここで、流路32は、各接続流路34A,34Bの接続部まで延びているとしている。
【0045】
その後、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。これにより、熱伝達流体38A,38Bは、流路32に沿って分離された状態を維持しながら、流路32の内部空間を移送される。ここでの所定の時間は、流路32の中に先に移送された熱伝達流体38Bである水が誘起部材14−1に対応する範囲R1にまで移送されるために必要な容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって流路32の中に移送される時間である。
【0046】
その結果、範囲R1の流路32の内部空間に熱伝達流体38Bである水が滞留されるとともに、範囲R2の流路32の内部空間に熱伝達流体38Aである空気が滞留される。
【0047】
すなわち、移送部40は、誘起部材14−1によって温められた熱が積極的に吸熱されるべき範囲R1に熱伝達流体38Bたとえば水を滞留させ、誘起部材14−2によって温められた熱が消極的に吸熱されるべき範囲R2に熱伝達流体38Aたとえば空気を滞留させる。
【0048】
前述したように、熱伝達流体38Bである水の熱伝導率は熱伝達流体38Aである空気の熱伝導率よりも大きい。また、熱伝達流体38Bである水の熱容量は熱伝達流体38Aである空気の熱容量よりも大きい。このため、滞留された水は、範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分の熱量を早く奪い取る。言い換えれば、滞留された水は、範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分の放熱を促進する。これにより、発熱が停止された誘起部材14−1に対応する範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分の温度が早く低下する。その結果、第二の相たとえばオーステナイト相の高剛性状態から第一の相たとえばマルテンサイト相の低剛性状態への形状記憶部材12の相の移り変わりの所要時間が、熱量変化促進系30がない場合に比べて短縮される。これにより、範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分の高剛性状態から低剛性状態への移行時間の短縮が達成される。
【0049】
ここでは、誘起部材14−1に対応する範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分を選択的に早く冷やす動作例を説明したが、同様の動作を適用することによって、誘起部材14−2に対応する範囲R2の剛性可変アクチュエータ10の部分を選択的に早く冷やすことも可能である。
【0050】
移送部40は、必要に応じて、たとえば、次の剛性の切り換え時に、不要になった熱伝達流体38A,38Bを剛性可変アクチュエータ10が装着されている可撓性部材の外に排出する。可撓性部材が医療用内視鏡の挿入部である場合には、熱伝達流体38A,38Bは、生体に対して無害な物質たとえば生理食塩水で構成されており、生体に悪影響を及ぼさない温度で排出されるようになっている。
【0051】
[第二実施形態]
図3は、第二実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。また、
図4は、
図3に示された剛性可変アクチュエータの周辺部の側面図である。
図3と
図4において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第一実施形態の剛性可変アクチュエータシステムに、剛性可変アクチュエータ10と流路32の間の熱伝達を促進する熱伝達促進体48が追加された構成となっている。熱伝達促進体48は、剛性可変アクチュエータ10と流路32の周囲に設けられている。熱伝達促進体48は、複数の熱伝達部材48−1,48−2を有している。熱伝達部材48−1は、誘起部材14−1に対応する範囲R1において剛性可変アクチュエータ10と流路32を取り囲んでおり、熱伝達部材48−2は、誘起部材14−2に対応する範囲R2において剛性可変アクチュエータ10と流路32を取り囲んでいる。このように、範囲R1と範囲R2に対して別々の熱伝達部材48−1,48−2が配置されていることによって、隣接する別の範囲R1,R2に位置する形状記憶部材12の部分への影響が低減される。
【0053】
熱伝達部材48−1,48−2は、好ましくは、熱伝導率が高い材質で構成されている。熱伝達部材48−1,48−2は、好ましくは、それぞれ、誘起部材14−1,14−2と流路32に隣接して配置されている。
【0054】
図3と
図4では、熱伝達部材48−1,48−2は、単一の筒体として描かれているが、そのような形態に限定されない。熱伝達部材48−1,48−2は、好ましくは、ゲル状のグリスやシート状の金属箔、炭素系シートなどで構成されてよい。さらには、熱伝達部材48−1,48−2は、ゲルとシートを併用して構成されてもよい。たとえば、
図4に示された熱伝達部材48−1の内側の空間内にゲルが充てんされた構成であってもよい。
【0055】
本実施形態では、剛性可変アクチュエータ10と流路32の周囲に熱伝達促進体48すなわち熱伝達部材48−1,48−2が配置されていることによって、第一実施形態に比べて熱伝達の効率が向上されている。これにより、形状記憶部材12と流路32の間の熱伝達の効率が高められ、高剛性状態から低剛性状態への移行が促進される。また、誘起部材14−1,14−2と形状記憶部材12の間の熱伝達の効率が高められ、低剛性状態から高剛性状態への移行が促進される。
【0056】
[第三実施形態]
図5は、第三実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図5において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、熱量変化促進系30は、第一実施形態の流路32に代えて流路32Aを有しており、また、流路32Aから排出される熱伝達流体38Bである水を受けるタンク44Aを有している。
【0058】
流路32Aは、剛性可変アクチュエータ10に沿って往復して延びている。言い換えれば、流路32Aは、剛性可変アクチュエータ10に沿って延びている往路部32Aaと、剛性可変アクチュエータ10に沿って延びている復路部32Acと、往路部32Aaと復路部32Acをつないでいる折り返し部32Abを有している。往路部32Aaと復路部32Acは、剛性可変アクチュエータ10の近傍に配置されている。往路部32Aaと復路部32Acは、誘起体14−1,14−2に隣接して配置されている。あるいは、往路部32Aaと復路部32Acは、誘起体14−1,14−2に接触して配置されていてもよい。
【0059】
本実施形態において、たとえば、誘起部材14−1に対応する範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分を選択的に高剛性状態から低剛性状態にする場合、ポンプ駆動部24は、駆動部22−1のオフ動作に応じて、ポンプ42Bを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、誘起部材14−1に対応する範囲R1の流路32Aの内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Bである水がポンプ42Bによって流路32Aの中に移送される時間である。
【0060】
次に、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、範囲R1の間の流路32Aすなわち折り返し部32Abの内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって流路32Aの中に移送される時間である。
【0061】
続いて、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Bを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、誘起部材14−1に対応する範囲R1の流路32Aの内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Bである水がポンプ42Bによって流路32Aの中に移送される時間である。
【0062】
その後、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、流路32Aの中に先に移送された熱伝達流体38Bである水が誘起部材14−1に対応する範囲R1にまで移送されるために必要な容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって流路32Aの中に移送される時間である。
【0063】
その結果、剛性可変アクチュエータ10の近傍において、範囲R1の流路32Aの内部空間に熱伝達流体38Bである水が滞留されるとともに、範囲R2の流路32Aの内部空間に熱伝達流体38Aである空気が滞留される。これにより、範囲R1の剛性可変アクチュエータ10の部分の高剛性状態から低剛性状態への移行時間の短縮が達成される。
【0064】
流路32Aに送り込まれた熱伝達流体38Aである空気と熱伝達流体38Bである水は流路32Aの先端から排出される。流路32Aから排出された熱伝達流体38Bである水はタンク44Aに回収される。
【0065】
本実施形態では、剛性可変アクチュエータ10の近傍に流路32Aの往路部32Aaと復路部32Acが配置されていることによって第一実施形態に比べて放熱効率が向上されている。
【0066】
ここでは、範囲R1と範囲R2の流路32Aの内部空間に熱伝達流体38Bである水を滞留させる際に、範囲R1の間の流路32Aすなわち折り返し部32Abの内部空間に熱伝達流体38Aである空気を滞留させているが、範囲R1の間の流路32Aすなわち折り返し部32Abの内部空間にも熱伝達流体38Bである水を滞留させてもよい。
【0067】
図5には、タンク
44とタンク44Aは別個のタンクとして描かれているが、タンク
44とタンク44Aは一つのタンクに置き換えられ、熱伝達流体38Bが循環される構成とされてもよい。
【0068】
[第四実施形態]
図6は、第四実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図6において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第一実施形態の剛性可変アクチュエータシステムに対して、熱伝達流体38A,38Bを吸引するポンプ42Cが追加された構成となっている。つまり、移送部40は、熱伝達流体38A,38Bを流路32の中に吐出する機能に加えて、熱伝達流体38A,38Bを流路32から吸引する機能を有している。
【0070】
ポンプ42Cの吸引口は、接続流路34Cを介して流路32に接続されている。ポンプ42Cの吐出口は排出管36Cに接続されており、排出管36Cは、水を溜めておくためのタンク44Bの中にまで延びている。
【0071】
本実施形態では、流路32に送り込まれた熱伝達流体38Aたとえば空気と熱伝達流体38Bたとえば水は、ポンプ42Cによって吸引され、排出管36Cを通して排出される。熱伝達流体38Bたとえば水はタンク44Bに回収される。
【0072】
[第五実施形態]
図7は、第五実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図7において、
図1と
図2と
図6に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態および第四実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、移送部40は、第一実施形態のポンプ42A,42Bに代えてポンプ42Dを有しており、また、タンク44とタンク44Bに代えてタンク44Cを有している。
【0074】
ポンプ42Dは、熱伝達流体38A,38Bを流路32の中に吐出する機能に加えて、熱伝達流体38A,38Bを流路32から吸引する機能を有している。ポンプ42Dは、第一の吸引口から熱伝達流体38Aを吸引し、吐出吸引口から熱伝達流体38Aを吐出する機能と、第二の吸引口から熱伝達流体38Bを吸引し、吐出吸引口から熱伝達流体38Bを吐出する機能と、吐出吸引口から熱伝達流体38A,38Bを吸引し、排出口から熱伝達流体38A,38Bを排出する機能を有している。
【0075】
ポンプ42Dの第一の吸引口は吸気管36Aに接続されており、吸気管36Aは大気中で終端している。ポンプ42Dの第二の吸引口は吸水管36Bに接続されており、吸水管36Bは、熱伝達流体38Bを溜めておくためのタンク44Cの中にまで延びている。ポンプ42Dの吐出吸引口は、流路32に直接接続されている。ポンプ42Dの排出口は排出管36Dに接続されており、排出管36Dは、タンク44Cの中にまで延びている。
【0076】
本実施形態では、熱伝達流体38A,38Bは、タンク44Cに回収され、剛性可変アクチュエータ10が装着されている可撓性部材の外に排出されない。熱伝達流体38A,38Bが可撓性部材の外に排出される構成において、さらに可撓性部材が医療用内視鏡の挿入部である場合には、熱伝達流体38A,38Bは、生体に対して無害な物質で構成され、生体に悪影響を及ぼさない温度で排出されることが要求される。これに対して、本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、熱伝達流体38A,38Bが可撓性部材の外に排出されない構成であるので、このような制限事項が熱伝達流体38A,38Bに要求されない。
【0077】
[第六実施形態]
図8は、第六実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図8において、
図1と
図2と
図7に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態および第五実施形態と同様である。
【0078】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第五実施形態の剛性可変アクチュエータシステムに、熱伝達媒体38A,38Bを貯蔵する貯蔵部52が追加された構成となっている。貯蔵部52は、移送部40が接続されている流路32の端部の反対側の端部に設けられている。貯蔵部52は、好ましくは、内部圧力に応じて膨張収縮または伸縮するようになっている。
【0079】
第五実施形態の剛性可変アクチュエータシステムにおいて、ポンプ42Dの反対側の流路32の端部が封止されていない場合、意図せずに熱伝達流体38A,38Bが流路32から可撓性部材の中に漏れ出るおそれがある。また、ポンプ42Dの反対側の流路32の端部が封止されている場合、熱伝達流体38A,38Bが流路32の中に送り込まれたときに、流路32の内部が高圧になり、熱伝達流体38A,38Bの移送に支障が生じるおそれがある。
【0080】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、ポンプ42Dの反対側の流路32の端部に貯蔵部52が設けられているので、意図せずに熱伝達流体38A,38Bが流路32から可撓性部材の中に漏れ出ることが防止される。
【0081】
貯蔵部52は、好ましくは、内部圧力に応じて膨張収縮または伸縮する。流路32の内部の圧力が高くなると貯蔵部52が膨らみ、流路32の内部の圧力が低くなると貯蔵部52が縮む。このため、流路32の内部の圧力がほぼ一定に保たれる。これにより、
高圧熱伝達流体38A,38Bが流路32の中に送り込まれたときに流路32の内部が高圧になることがなく、熱伝達流体38A,38Bの良好な移送が確保される。
【0082】
[第七実施形態]
図9は、第七実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図9において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0083】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、流路32と誘起部材14−1,14−2のレイアウトの点において、第一実施形態の剛性可変アクチュエータシステムと相違している。第一実施形態では、流路32は、剛性可変アクチュエータ10の外側に配置されており、誘起部材14−1,14−2の外側を延びているが、本実施形態では、流路32は、剛性可変アクチュエータ10の形状記憶部材12に隣接して配置されており、誘起部材14−1,14−2の内側を延びている。
【0084】
本実施形態では、流路32が形状記憶部材12に隣接して配置されているため、高剛性状態から低剛性状態に切り換えられる際に、形状記憶部材12の放熱を促進する効果が向上されている。これにより、剛性可変アクチュエータ10の高剛性状態から低剛性状態への移行時間のさらに短縮される。
【0085】
[第八実施形態]
図10は、第八実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図10において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、熱量変化促進系30は、第一実施形態の流路32に代えて流路32Bを有している。
【0087】
流路32Bは、誘起体14−1,14−2を包囲しており、誘起体14−1,14−2の全体の周囲に螺旋状に延びている。流路32Bは、誘起体14−1,14−2に隣接して配置されている。あるいは、流路32Bは、誘起体14−1,14−2に接触して配置されていてもよい。
【0088】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、流路32Bが誘起体14−1,14−2の周囲を螺旋状に延びていることによって、流路32Bと誘起体14−1,14−2の隣接部分または接触部分の総面積が、第一実施形態の剛性可変アクチュエータシステムの流路32と誘起体14−1,14−2の隣接部分または接触部分の総面積よりも遥かに増大されている。
【0089】
このため、高剛性状態から低剛性状態に切り換えられる際に、形状記憶部材12の放熱を促進する効果が向上されている。これにより、剛性可変アクチュエータ10の高剛性状態から低剛性状態への移行時間のさらに短縮される。
【0090】
また、低剛性状態から高剛性状態に切り換えられる際には、熱伝導率または熱容量の低い熱伝達流体38Aが流路32の内部に滞留されるため、剛性可変アクチュエータ10の周辺への断熱効果も期待できる。
【0091】
ここでは、流路32Bは、誘起体14−1,14−2の全体の周囲に螺旋状に延びているが、誘起体14−1,14−2に巻き付くように螺旋状に延びていてもよい。
【0092】
[第九実施形態]
図11は、第九実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図11において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0093】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第一実施形態の形状記憶部材12と流路32に代えて形状記憶部材12Aを有している。形状記憶部材12Aは、円筒形状をしており、熱伝達流体38A,38Bのための流路を兼ねている。形状記憶部材12Aは、誘起部材14−1,14−2の内側を通って延びている。形状記憶部材12Aは、接続流路34Aを介してポンプ42Aに接続されており、また、接続流路34Bを介してポンプ42Bに接続されている。このような構成は、可撓性部材に装着される剛性可変アクチュエータシステムの小型化に貢献する。
【0094】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムでは、熱伝達流体38A,38Bが形状記憶部材12Aに直接接触している。このため、高剛性状態から低剛性状態に切り換えられる際、熱伝導率または熱容量の高い熱伝達流体38Bが形状記憶部材12Aの内部に滞留されるため、形状記憶部材12Aの放熱を促進する効果が向上されている。これにより、剛性可変アクチュエータ10の高剛性状態から低剛性状態への移行時間のさらに短縮される。
【0095】
このように形状記憶部材が円筒形状に成形され流路を兼ねる構成は、他の実施形態に適用されてもよい。たとえば、
図5に示された第三実施形態の流路32Aの往路部32Aaまたは復路部32Acに適用されても、第三実施形態の流路32Aの往路部32Aaと復路部32Acの両方に適用されてもよい。
【0096】
[第十実施形態]
図12は、第十実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図12において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第一実施形態の形状記憶部材12と流路32に代えて形状記憶部材12Bを有している。形状記憶部材12Bは、円筒形状をしており、熱伝達流体38A,38Bのための流路を兼ねている。形状記憶部材12Bは、接続流路34Aを介してポンプ42Aに接続されており、また、接続流路34Bを介してポンプ42Bに接続されている。誘起部材14−1,14−2は、形状記憶部材12Bの空洞中に配置されている。このような構成は、可撓性部材に装着される剛性可変アクチュエータシステムの小型化に貢献する。また、誘起部材14−1,14−2によって発生された熱が剛性可変アクチュエータ10の周辺に伝わりにくくする効果が期待できる。
【0098】
熱伝達流体38A,38Bは、好ましくは、絶縁体で構成されている。これによって、仮に誘起部材14−1,14−2の周囲に設けられた絶縁膜18が損傷した場合であっても、短絡することが防止される。
【0099】
[第十一実施形態]
図13と
図14は、第十一実施形態による剛性可変アクチュエータシステムを示している。
図13と
図14において、
図1と
図2に示された部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略される。以下、相違部分に重点をおいて説明される。つまり、以下の説明で触れられない部分は、第一実施形態と同様である。
【0100】
本実施形態の剛性可変アクチュエータシステムは、第一実施形態の剛性可変アクチュエータシステムに対して、熱伝達流体38A,38Bのいずれとも異なる熱伝達流体38Cを吐出するポンプ42Eが追加された構成となっている。つまり、移送部40は、熱伝達流体38A,38Bを流路32の中に吐出する機能に加えて、熱伝達流体38Cを流路32の中に吐出する機能を有している。
【0101】
また、剛性可変アクチュエータ10は、誘起部材14−1,14−2に加えて、誘起部材14−3を有している。制御部20は、誘起部材14−3を独立に駆動する駆動部22−3を有している。誘起部材14−3の両端は、駆動部22−3に電気的に接続されている。駆動部22−3は、駆動部22−1,22−2と同様に、一つの電源と一つのスイッチを有している。
【0102】
ポンプ42Eは、熱伝達流体38Cを移送するためのものである。ポンプ42Eは、吸引口から熱伝達流体38Cを吸引し、吐出口から熱伝達流体38Cを吐出する機能を有している。ポンプ42Eの吸引口は吸水管36Eに接続されており、吸水管36Eは、温水を溜めておくためのタンク44Dの中にまで延びている。ポンプ42Eの吐出口は、接続流路34Eを介して流路32に接続されている。
【0103】
熱伝達流体38A,38B,38Cは、少なくとも、熱伝導率、熱容量、粘度、密度、温度のいずれかが異なっている。たとえば、熱伝達流体38Aは空気であり、熱伝達流体38Bは常温の水であり、熱伝達流体38Cは温水である。
【0104】
移送部40はまた、タンク44Dに貯められた水を加温するまたは温水を保温するための電熱線56を有している。また、制御部20は、電熱線56に電流を供給する電熱線駆動部58を有している。
【0105】
図13は、誘起部材14−1,14−2は駆動されており、範囲R1,R2は加熱されているが、誘起部材14−3は駆動が停止されており、範囲R3は加熱されていない状態を示している。
図14は、
図13の状態から、誘起部材14−1はそのまま駆動されており、誘起部材14−2は駆動が停止され、反対に、誘起部材14−3は駆動された状態を示している。この状態では、誘起部材14−1に対応する範囲R1では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は奪われないことが好ましい。誘起部材14−2に対応する範囲R2では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は早く奪わることが好ましい。反対に、誘起部材14−3に対応する範囲R3では、剛性可変アクチュエータ10の熱量は早く蓄えられることが好ましい。言い換えれば、範囲R1の形状記憶部材12の部分は保温され、範囲R2の形状記憶部材12の部分は放熱され、範囲R3の形状記憶部材12の部分は加熱されることが好ましい。
【0106】
このため、ポンプ駆動部24は、駆動部22−2,22−3のオンオフの切り換え動作に応じて、ポンプ42Bを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、誘起部材14−2に対応する範囲R2の流路32の内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Bである水がポンプ42Bによって流路32の中に移送される時間である。
【0107】
ここで、流路32は、各接続流路34A,34B,34Eとの接続部まで延びているとしている。
【0108】
次に、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、熱伝達流体38Bである水が接続流路34Eよりもいくらか先に移送されるために必要な容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって流路32の中に移送される時間である。
【0109】
続いて、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Eを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、誘起部材14−3に対応する範囲R3の流路32の内部空間を満たす容積の熱伝達流体38Cである温水がポンプ42Eによって流路32の中に移送される時間である。
【0110】
その結果、熱伝達流体38B,38Cは、熱伝達流体38Aを間に挟んで流路32に沿って分離された状態で、流路32の内部空間に存在することになる。熱伝達流体38B,38Cの間に、熱伝導率の低い熱伝達流体38Aが介在するため、水である熱伝達流体38Bと温水である熱伝達流体38Cの混合が良好に防止されるとともに、熱伝達流体38Bと熱伝達流体38Cの間の熱の移動も良好に防止される。
【0111】
その後、ポンプ駆動部24は、ポンプ42Aを選択的に所定の時間の間だけ駆動した後に停止させる。ここでの所定の時間は、流路32の中に先に移送された熱伝達流体38Bである水と熱伝達流体38Cである温水がそれぞれ誘起部材14−2に対応する範囲R2と誘起部材14−3に対応する範囲R3にまで移送されるために必要な容積の熱伝達流体38Aである空気がポンプ42Aによって流路32の中に移送される時間である。これにより、熱伝達流体38B,38Cは、熱伝達流体38Aを間に挟んで流路32に沿って分離された状態を維持しながら、流路32の内部空間を移送される。
【0112】
その結果、範囲R1の流路32の内部空間には熱伝達流体38Aである空気が滞留され、範囲R2の流路32の内部空間には熱伝達流体38Bである水が滞留され、範囲R3の流路32の内部空間には熱伝達流体38Cである温水が滞留される。
【0113】
これによって、範囲R1の形状記憶部材12の部分は熱量が良好に保たれ、範囲R2の形状記憶部材12の部分は放熱が促進され、範囲R3の形状記憶部材12の部分は加熱が促進される。これにより、範囲R2の剛性可変アクチュエータ10の部分の高剛性状態から低剛性状態への移行時間の短縮が達成されるとともに、範囲R3の剛性可変アクチュエータ10の部分の低剛性状態から高剛性状態への移行時間の短縮が達成される。
【0114】
ここでは、三種類の熱伝達流体38A,38B,38Cが使用される例が説明されたが、これに限定されることなく、さらに多くの種類の熱伝達流体が使用される構成に修正や変更されてもよい。