特許第6608064号(P6608064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608064タイヤ構成部材を移載するための移載装置およびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608064
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】タイヤ構成部材を移載するための移載装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   B29D30/30
【請求項の数】37
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-531570(P2018-531570)
(86)(22)【出願日】2018年1月23日
(65)【公表番号】特表2019-512406(P2019-512406A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】NL2018050045
(87)【国際公開番号】WO2018151591
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】2018380
(32)【優先日】2017年2月15日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】595090635
【氏名又は名称】ヴェーエムイー ホーランド ベー. ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】VMI HOLLAND B. V.
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】オッテ ハイツマ
(72)【発明者】
【氏名】ジェロエン ヴァン ティエンホフ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ルター
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506785(JP,A)
【文献】 特開昭58−055235(JP,A)
【文献】 特開昭59−212239(JP,A)
【文献】 特表2003−507211(JP,A)
【文献】 特表2012−511449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材(9)を移載するための移載装置であって、
前記移載装置は、第1の移載面(P1)の両側で第1の移載状態に相対的に移動可能である第1の移載部材(1)および第2の移載部材(2、102)を備え、前記第1の移載部材(1)は、第1の磁気吸引力(F1)で前記タイヤ構成部材(9)を前記第1の移載部材(1)に保持するための第1の磁場アレイ(12、212)を形成する複数の第1の磁場源(11、211)を備え、前記第2の移載部材(2、102)は、第2の磁気吸引力(F2)で前記タイヤ構成部材(9)を前記第2の移載部材(2、102)に保持するための第2の磁場アレイ(22、122、222)を形成する複数の第2の磁場源(21、121、221)を備え、前記第1の移載状態では、前記第1の移載面(P1)での前記第2の磁気吸引力(F2)が、前記タイヤ構成部材(9)を前記第1の移載部材(1)から前記第2の移載部材(2、102)に移載する前記第1の移載面(P1)での前記第1の磁気吸引力(F1)より大きく、前記第1の移載状態では、前記第2の磁場アレイ(22、122、222)が、前記第1の磁場アレイ(12、212)に対して少なくとも部分的にオフセットされる、
移載装置。
【請求項2】
前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)は、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が第1の相互距離(Z1)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する移載前状態から、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が前記第1の相互距離(Z1)より短い第2の相互距離(Z2)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する前記第1の移載状態に、かつ前記第1の移載状態から、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が前記第2の相互距離(Z2)より長い第3の相互距離(Z3)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する移載後状態に相対的に移動可能であり、前記第2の磁場アレイ(22)は、前記移載前状態、前記第1の移載状態、前記移載後状態、およびそれらの間で前記第1の磁場アレイ(12)に対して少なくとも部分的にオフセットされる、
請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記第1の移載状態では、前記第2の磁場アレイ(22、122、222)は、前記第1の移載面(P1)に垂直な第1のオフセット軸(R1)を中心に第1のオフセット角(A1)にわたって前記第1の磁場アレイ(12、212)に対してオフセットされる、
請求項1または2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記第1のオフセット角(A1)は、10〜80度の範囲、20〜70度の範囲、または30〜60度の範囲で選択される、
請求項3に記載の移載装置。
【請求項5】
前記第1の磁場源(11、211)は、第1のパターン方向(D1)に平行な1行または2行以上の前記第1の磁場アレイ(12、212)で配置される、
請求項1〜4のいずれかに記載の移載装置。
【請求項6】
前記第1の磁場源(11、211)は、前記第1のパターン方向(D1)に横断または直角の第2のパターン方向(D2)に平行な1列または2列以上の前記第1の磁場アレイ(12、212)で配置される、
請求項5に記載の移載装置。
【請求項7】
前記第2の磁場源(21、121、221)は、第3のパターン方向(D3)に平行な1行または2行以上の前記第2の磁場アレイ(22、122、222)で配置される、
請求項5または6に記載の移載装置。
【請求項8】
前記第2の磁場源(21、121、221)は、前記第3のパターン方向(D3)に横断または直角の第4のパターン方向(D4)に平行な1列または2列以上の前記第2の磁場アレイ(22、122、222)で配置される、
請求項7に記載の移載装置。
【請求項9】
前記第1のパターン方向(D1)は、前記第3のパターン方向(D3)と異なる、
請求項7に記載の移載装置。
【請求項10】
前記第2のパターン方向(D2)は、前記第4のパターン方向(D4)と異なる、
請求項8に記載の移載装置。
【請求項11】
前記第1の磁場アレイ(12、212)の各行での前記第1の磁場源(11、211)は、第1のピッチ距離(X1)で前記第1のパターン方向(D1)に均一に分布される、
請求項5〜10のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項12】
前記第1の磁場アレイ(12、212)の各列での前記第1の磁場源(11、211)は、第2のピッチ距離(X2)で前記第2のパターン方向(D2)に均一に分布される、
請求項6〜10のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項13】
前記第2の磁場アレイ(22、122、222)の各行での前記第2の磁場源(21、121、221)は、第3のピッチ距離(X3)で前記第3のパターン方向(D3)に均一に分布される、
請求項7〜10のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項14】
前記第2の磁場アレイ(22、122、222)の各列での前記第2の磁場源(21、121、221)は、第4のピッチ距離(X4)で前記第4のパターン方向(D4)に均一に分布される、
請求項8〜10のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項15】
前記第1の磁場アレイ(12、212)の各行での前記第1の磁場源(11、211)は、第1のピッチ距離(X1)で前記第1のパターン方向(D1)に均一に分布され、前記第1のピッチ距離(X1)および前記第3のピッチ距離(X3)は不等である、
請求項13に記載の移載装置。
【請求項16】
前記第1の磁場アレイ(12、212)の各列での前記第1の磁場源(11、211)は、第2のピッチ距離(X2)で前記第2のパターン方向(D2)に均一に分布され、前記第2のピッチ距離(X2)および前記第4のピッチ距離(X4)は不等である、
請求項14に記載の移載装置。
【請求項17】
前記第1の磁場源は、第1のランダムパターンによって前記第1の磁場アレイで配置される、
請求項1に記載の移載装置。
【請求項18】
前記第2の磁場源は、前記第1のランダムパターンとは異なる第2のランダムパターンによって前記第2の磁場アレイで配置される、
請求項17に記載の移載装置。
【請求項19】
前記複数の前記第1の磁場源(11、211)は、北磁極性(N)で前記第1の移載面(P1)に向いた第1の群の磁石と、南磁極性(S)で前記第1の移載面(P1)に向いた第2の群の磁石とを備える、
請求項1〜18のいずれかに記載の移載装置。
【請求項20】
前記複数の第2の磁場源(21、121、221)は、北磁極性(N)で前記第1の移載面(P1)に向いた第1の群の磁石と、南磁極性(S)で前記第1の移載面(P1)に向いた第2の群の磁石とを備える、
請求項19に記載の移載装置。
【請求項21】
前記第1の群の前記磁石は、前記磁場アレイ(12、22、122、212、222)のそれぞれ1つのうちの前記第2の群の前記磁石と交互になる、
請求項19または20に記載の移載装置。
【請求項22】
前記第1の相互距離(Z1)および前記第3の相互距離(Z3)は、少なくとも5ミリメートル、または少なくとも10ミリメートルである、
請求項2に記載の移載装置。
【請求項23】
前記移載装置は、前記移載前状態と前記第1の移載状態と前記移載後状態との間で前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)の相対移動を駆動するための少なくとも1つの駆動部材(71)を更に備える、
請求項2に記載の移載装置。
【請求項24】
前記移載装置は、前記移載前状態と前記第1の移載状態と前記移載後状態との間で前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)の相対移動を駆動するための前記少なくとも1つの駆動部材(71)を制御するために配置された制御ユニット(8)を更に備える、
請求項23に記載の移載装置。
【請求項25】
前記第1の磁場源(11、211)、前記第2の磁場源(21、121、221)、または両方は永久磁石である、
請求項1〜24のいずれかに記載の移載装置。
【請求項26】
第3の移載部材(3)を更に備え、前記第2の移載部材(2、102)および前記第3の移載部材(3)は、第2の移載面(P2)の両側で第2の移載状態に相対的に移動可能であり、前記第3の移載部材(3)は、第3の磁気吸引力(F3)で前記タイヤ構成部材(9)を前記第3の移載部材(3)に保持するための第3の磁場アレイ(32、232)を形成する複数の第3の磁場源(31、231)を備え、前記第2の移載状態では、前記第2の移載面(P2)での前記第3の磁気吸引力(F3)は、前記タイヤ構成部材(9)を前記第2の移載部材(2、102)から前記第3の移載部材(3)に移載する前記第2の移載面(P2)での前記第2の磁気吸引力(F2)より大きく、前記第2の移載状態では、前記第3の磁場アレイ(32、232)は前記第2の磁場アレイ(22、122、222)に対して少なくとも部分的にオフセットされる、
請求項1〜25のいずれかに記載の移載装置。
【請求項27】
前記第2の移載状態では、前記第3の磁場アレイ(32、232)は、前記第2の移載面(P2)に垂直な第2のオフセット軸(R2)を中心に第2のオフセット角(A2)にわたって前記第2の磁場アレイ(22、122、222)に対してオフセットされる、
請求項26に記載の移載装置。
【請求項28】
前記第2のオフセット角(A2)は、10〜80度の範囲、20〜70度の範囲、または30〜60度の範囲で選択される、
請求項27に記載の移載装置。
【請求項29】
前記移載装置は、前記第1の移載部材(1)、前記第2の移載部材(2、102)、および前記第3の移載部材(3)とともに、前記タイヤ構成部材(9)を連続的に移載するための一連の移載部材をそれぞれの移載面(P1;P2)での前記一連の移載部材のうちの連続的または連続した対の受渡移載部材および受取移載部材(1、2、102;2、102、3;3、4)の間で形成する第4の移載部材(4)または更なる移載部材を更に備え、前記第4の移載部材(4)または更なる移載部材の各1つは、更なる磁気吸引力で前記第4の移載部材(4)または前記更なる移載部材のそれぞれ1つに前記タイヤ構成部材(9)を保持するための更なる磁場アレイを形成する複数の更なる磁石を備え、連続的または連続した対の移載部材(1、2、102;2、102、3;3、4)ごとに、前記受取移載部材の前記磁気吸引力は、前記タイヤ構成部材(9)を前記受渡移載部材から前記受取移載部材に移載する前記それぞれの移載面(P1、P2)で前記受渡移載部材の前記磁気吸引力より大きく、連続的または連続した対の移載部材(1、2、102;2、102、3;3、4)ごとに、前記受取移載部材の前記磁場アレイは前記受渡移載部材の前記磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる、
請求項26〜28のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項30】
対ごとに、各受取移載部材の前記磁場アレイは、前記それぞれの移載面(P1、P2)に垂直なそれぞれのオフセット軸(R1、R2)を中心にオフセット角(A1、A2)にわたって前記受渡部材の前記磁場アレイに対してオフセットされる、
請求項29に記載の移載装置。
【請求項31】
対ごとの前記オフセット角(A1、A2)は、少なくとも10度、または少なくとも15度である、
請求項30に記載の移載装置。
【請求項32】
対ごとの前記オフセット角(A1、A2)は、前記一連の移載部材のうちの移載部材の数で割られた90度に等しい、
請求項30または31に記載の移載装置。
【請求項33】
前記一連の移載部材(1〜4)における最後の移載部材(4)は、同じ一連の移載部材(1〜4)の前記第1の移載部材(1)である、
請求項29〜32のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項34】
前記磁場アレイ(12、22、32、122、212、222、232)のうちの1つの前記磁気吸引力(F1〜F3)は調整可能である、
請求項1〜33のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項35】
前記移載部材(1〜4)のうちの1つは、移載体(10)と、前記移載面(P1、P2)から離れた前記移載体(10)に対して前記それぞれの磁場アレイ(12、22、32、122、212、222、232)を移動させるために配置された解除機構(5)とを備える、
請求項1〜34のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項に記載の移載装置を用いて少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材(9)を移載するための方法であって、
前記方法は、
前記第1の磁気吸引力(F1)で前記タイヤ構成部材(9)を前記第1の移載部材(1)に保持するステップと、
前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)を前記第1の移載面(P1)の両側で前記第1の移載状態に相対的に移動させるステップと、
前記第2の磁気吸引力(F2)で前記タイヤ構成部材(9)を前記第2の移載部材(2、102)に保持するステップであって、前記第1の移載状態では、前記第1の移載面(P1)での前記第2の磁気吸引力(F2)が前記第1の移載面(P1)での前記第1の磁気吸引力(F1)より大きい、ステップと、
前記タイヤ構成部材(9)を前記第1の移載部材(1)から前記第2の移載部材(2、102)に移載するステップと、を含み、
前記第1の移載状態では、前記第2の磁場アレイ(22、122、222)が前記第1の磁場アレイ(12、212)に対して少なくとも部分的にオフセットされる、
方法。
【請求項37】
前記方法は、
前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)を、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が第1の相互距離(Z1)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する移載前状態から相対的に移動させるステップと、
前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)を前記移載前状態から、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が前記第1の相互距離(Z1)より短い第2の相互距離(Z2)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する前記第1の移載状態に相対的に移動させるステップと、
前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)を前記第1の移載状態から、前記第1の移載部材(1)および前記第2の移載部材(2、102)が前記第2の相互距離(Z2)より長い第3の相互距離(Z3)で前記第1の移載面(P1)の両側で互いに離間する移載後状態に相対的に移動させるステップと、を更に含み、
前記第2の磁場アレイ(22、122、222)が前記移載前状態、前記第1の移載状態、前記移載後状態、およびそれらの間で前記第1の磁場アレイ(12、212)に対して少なくとも部分的にオフセットされる、
請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構成部材を移載するための移載装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,411,724号明細書は、コードプライ片を接合するための装置を開示している。この装置は、第1のコンベヤの長手方向かつその中で延在する第1の電磁石により構成される第1の保持部材と、第2のコンベヤの長手方向かつその中で延在する第2の電磁石により構成される第2の保持部材とを備えている。第2のコンベヤ内の電磁石は、コードプライ片が第1のコンベヤから第2のコンベヤに移載可能である程度に第1のコンベヤ内の電磁石より磁力が大きい。移載手段は、互いに重ね合わせられる第1および第2の電磁石の部分により構成される。
【0003】
電磁石間の磁力差により、第1のコンベヤから第2のコンベヤへの移載が可能となるが、電磁石自体は互いに強力に磁気吸着されたままである。したがって、コンベヤが互いに分離され、例えば移載されたコードプライ片を装置内の別の位置に移動させる必要があるとき、前記移動は磁力によって打ち消され得る。これは、米国特許第4,411,724号明細書がコードプライ片を移載する複雑かつ高価な電磁石を特徴とする理由であり、その結果、前記電磁石のうちの1つは他の電磁石からの分離を可能にするようにオフに切り換えることができる。
【0004】
本発明の目的は、移載装置の複雑性および/または費用を低減することができる、タイヤ構成部材を移載するための移載装置およびその方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,411,724号明細書
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材を移載するための移載装置を提供し、移載装置は、第1の移載面の両側で第1の移載状態に相対的に移動可能である第1の移載部材および第2の移載部材を含み、第1の移載部材は、第1の磁気吸引力でタイヤ構成部材を第1の移載部材に保持するための第1の磁場アレイを形成する複数の第1の磁場源を含み、第2の移載部材は、第2の磁気吸引力でタイヤ構成部材を第2の移載部材に保持するための第2の磁場アレイを形成する複数の第2の磁場源を含み、第1の移載状態では、第1の移載面での第2の磁気吸引力は、タイヤ構成部材を第1の移載部材から第2の移載部材に移載する第1の移載面で第1の磁気吸引力より大きく、第1の移載状態では、第2の磁場アレイは第1の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。
【0007】
オフセットにより、第1の移載部材と第2の移載部材との間の磁気吸引力を大幅に低減することができ、それにより磁気吸引力の追加の分離手段または制御を必要とせず、移載後の移載部材の容易な分離が可能となる。
【0008】
好ましい実施形態では、第1の移載部材および第2の移載部材は、第1の移載部材および第2の移載部材が第1の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する移載前状態から、第1の移載部材および第2の移載部材が第1の相互距離より短い第2の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する第1の移載状態に、かつ第1の移載状態から、第1の移載部材および第2の移載部材が第2の相互距離より長い第3の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する移載後状態に相対的に移動可能であり、第2の磁場アレイは、移載前状態、第1の移載状態、移載後状態、およびそれらの間で第1の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。したがって、移載前状態から第1の移載状態への移載部材の接近中、ならびに第1の移載状態から移載後状態への移載部材の分離中に、移載部材間の磁気吸引力を大幅に低減することができる。
【0009】
更なる実施形態では、第1の移載状態では、第2の磁場アレイは、第1の移載面に垂直な第1のオフセット軸を中心に第1のオフセット角にわたって第1の磁場アレイに対してオフセットされる。前記第1のオフセット軸を中心としたオフセットを提供することは、それぞれのアレイで磁場を不整列にする単純だが効果的な手法であり得る。
【0010】
この実施形態では、第1のオフセット角は、10〜80度の範囲、好ましくは20〜70度の範囲、最も好ましくは30〜60度の範囲で選択される。前記範囲では、移載部材間の磁気吸引力を大幅に低減することができる。
【0011】
更なる実施形態では、第1の磁場源は、第1のパターン方向に平行な1行または2行以上の第1の磁場アレイで配置される。
【0012】
この実施形態では、第1の磁場源は、第1のパターン方向に横断または直角の第2のパターン方向に平行な1列または2列以上の第1の磁場アレイで配置される。
【0013】
この更なる実施形態では、第2の磁場源は、第3のパターン方向に平行な1行または2行以上の第2の磁場アレイで配置される。
【0014】
この実施形態では、第2の磁場源は、第3のパターン方向に横断または直角の第4のパターン方向に平行な1列または2列以上の第2の磁場アレイで配置される。
【0015】
したがって、磁場源は、移載部材間の磁気吸引力に対するオフセットおよびその影響のより良好な制御を可能にするように所定のパターンで提供することができる。
【0016】
第1のパターン方向は、第3のパターン方向と異なることが好ましい。したがって、前記第1のパターン方向における第1の磁場源の少なくともいくつかは、第3のパターン方向における第2の磁場源の少なくともいくつかに対してオフセットすることができる。
【0017】
第2のパターン方向は、第4のパターン方向と異なることが好ましい。したがって、前記第2のパターン方向における第1の磁場源の少なくともいくつかは、第4のパターン方向における第2の磁場源の少なくともいくつかに対してオフセットすることができる。
【0018】
第1の磁場アレイの各行での第1の磁場源は、第1のピッチ距離で第1のパターン方向に均一に分布されることが好ましい。
【0019】
第1の磁場アレイの各列での第1の磁場源は、第2のピッチ距離で第2のパターン方向に均一に分布されることが好ましい。
【0020】
第2の磁場アレイの各行での第2の磁場源は、第3のピッチ距離で第3のパターン方向に均一に分布されることが好ましい。
【0021】
第2の磁場アレイの各列での第2の磁場源は、第4のピッチ距離で第4のパターン方向に均一に分布されることが好ましい。
【0022】
所定のピッチで磁場源を提供することによって、移載部材間の磁気吸引力に対するオフセットおよびその影響をより正確に制御することができる。
【0023】
一実施形態では、第1のピッチ距離および第3のピッチ距離は不等である。
【0024】
別の実施形態では、第2のピッチ距離および第4のピッチ距離は不等である。
【0025】
不等なピッチは、第2の磁場源に対して第1の磁場源の少なくともいくつかの間にオフセットを提供することができる。
【0026】
あるいは、第1の磁場源は、第1のランダムパターンによって第1の磁場アレイで配置される。第2の磁場源は、第1のランダムパターンと異なる第2のランダムパターンによって第2の磁場アレイで配置されることが好ましい。異なるランダムパターンもまた、移載部材間の磁気吸引力の大幅な低減をもたらし得ることが見出されている。
【0027】
更なる実施形態では、複数の第1の磁場源は、北磁極性で第1の移載面に向いた第1の群の磁石と、南磁極性で第1の移載面に向いた第2の群の磁石とを含む。異なる極性を提供することによって、第1の磁場源の少なくともいくつかは、同じ極性の第2の磁場源に反発することができる。
【0028】
この実施形態では、複数の第2の磁場源は、北磁極性で第1の移載面に向いた第1の群の磁石と、南磁極性で第1の移載面に向いた第2の群の磁石とを含む。異なる極性を提供することによって、第2の磁場源の少なくともいくつかは、同じ極性の第1の磁場源に反発することができる。
【0029】
この更なる実施形態では、第1の群の磁石は、磁場アレイのそれぞれ1つのうちの第2の群の磁石と交互になる。交互になることは、少なくとも部分的に反発する磁石アレイを提供する。
【0030】
第1の相互距離および第3の相互距離は、少なくとも5ミリメートル、最も好ましくは少なくとも10ミリメートルである。したがって、前記最小相互距離範囲では、オフセットは、それぞれのアレイ間に提供される。
【0031】
一実施形態では、移載装置は、移載前状態と第1の移載状態と移載後状態との間で第1の移載部材および第2の移載部材の相対移動を駆動するための少なくとも1つの駆動部材を更に含む。
【0032】
この実施形態では、移載装置は、移載前状態と第1の移載状態と移載後状態との間で第1の移載部材および第2の移載部材の相対移動を駆動するための少なくとも1つの駆動部材を制御するために配置された制御ユニットを更に含む。
【0033】
第1の磁場源、第2の磁場源、または両方は、永久磁石であることが好ましい。永久磁石は、制御可能な電磁石より安価で複雑性が少ない。
【0034】
一実施形態では、移載装置は、第3の移載部材を更に含み、第2の移載部材および第3の移載部材は、第2の移載面の両側で第2の移載状態に相対的に移動可能であり、第3の移載部材は、第3の磁気吸引力でタイヤ構成部材を第3の移載部材に保持するための第3の磁場アレイを形成する複数の第3の磁場源を含み、第2の移載状態では、第2の移載面での第3の磁気吸引力は、タイヤ構成部材を第2の移載部材から第3の移載部材に移載する第2の移載面での第2の磁気吸引力より大きく、第2の移載状態では、第3の磁場アレイは第2の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。第3の移載部材は、第2の移載部材が第1の移載部材と相互作用するのと略同じように第2の移載部材と相互作用することができ、タイヤ構成部材を更に移載するために使用することができる。この好ましい実施形態では、第2の移載状態では、第3の磁場アレイは、第2の移載面に垂直な第2のオフセット軸を中心に第2のオフセット角にわたって第2の磁場アレイに対してオフセットされる。
【0035】
この更なる好ましい実施形態では、第2のオフセット角は、10〜80度の範囲、好ましくは20〜70度の範囲、最も好ましくは30〜60度の範囲内で選択される。
【0036】
この更なる実施形態では、移載装置は、第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材とともに、タイヤ構成部材を連続的に移載するための一連の移載部材をそれぞれの移載面での一連の移載部材のうちの連続的または連続した対の受渡移載部材および受取移載部材の間で形成する第4の移載部材または更なる移載部材を含み、第4の移載部材または更なる移載部材の各1つは、更なる磁気吸引力でタイヤ構成部材を第4の移載部材または更なる移載部材のうちの1つに保持するための更なる磁石アレイを形成する複数の更なる磁石を含み、連続的または連続した対の移載部材ごとに、受取移載部材の磁気吸引力は、タイヤ構成部材を受渡移載部材から受取移載部材に移載するそれぞれの移載面で受渡移載部材の磁気吸引より大きく、連続的または連続した対ごとに、受取移載部材の磁場アレイは、受渡移載部材の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。第4の移載部材は、第2の移載部材が第1の移載部材と相互作用するのと略同じように第3の移載部材と相互作用することができ、タイヤ構成部材を更に移載するために使用することができる。
【0037】
この実施形態では、連続的または連続した移載部材の対ごとに、各受取移載部材の磁場アレイは、それぞれの移載面に垂直なそれぞれのオフセット軸を中心にオフセット角にわたって受渡部材の磁場アレイに対してオフセットされる。したがって、対ごとに、前記対内での移載部材の容易な分離を可能にするオフセット角を提供することができる。
【0038】
対ごとのオフセット角は少なくとも10度、好ましくは少なくとも15度であることが好ましい。前記最小オフセット角では、移載部材間の磁気吸引力を大幅に低減され得ることが見出されている。
【0039】
対ごとのオフセット角は、一連の移載部材のうちの移載部材の数で割られた90度に等しいことがより好ましい。したがって、10度の最小角では、最大8つの対の移載部材を連続して使用することができる。
【0040】
この更なる実施形態では、一連の移載部材における最後の移載部材は、同じ一連の移載部材の第1の移載部材である。第1の移載部材はそれ故に、移載装置内に複数の機能を有することができる。
【0041】
別の実施形態では、磁場アレイのうちの1つの磁気吸引力は調整可能である。これにより、前記1つの磁石アレイの磁気吸引力を低減することが可能となる。この調整機能は、例えば、それぞれの磁石アレイで1つ以上の電磁石を配置することによって達成することができる。前記電磁石は、最大磁気吸引力からゼロ磁気吸引力までの範囲で制御することができる。1つ以上の電磁石を使用することはまた、それぞれの移載状態に達する前に一方の移載部材からもう一方の移載部材に飛びつくタイヤ構成部材の傾向を低減することができる。
【0042】
この実施形態では、移載部材のうちの1つは、移載体と、移載面から離れた前記移載体に対してそれぞれの磁場アレイを移動させるために配置された解除機構とを含む。前記解除機構は、磁場アレイを機械的に分離することができ、それにより移載面でその磁場の強度を低下させる。
【0043】
第2の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれか一実施形態に記載の移載装置を用いて少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材を移載するための方法を提供し、本方法は、
第1の磁気吸引力でタイヤ構成部材を第1の移載部材に保持するステップと、
第1の移載部材および第2の移載部材を第1の移載面の両側で第1の移載状態に相対的に移動させるステップと、
第2の磁気吸引力でタイヤ構成部材を第2の移載部材に保持するステップであって、第1の移載状態では、第1の移載面での第2の磁気吸引力が第1の移載面での第1の磁気吸引力より大きい、ステップと、
タイヤ構成部材を第1の移載部材から第2の移載部材に移載するステップと、を含み、
第1の移載状態では、第2の磁場アレイが第1の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。
【0044】
この方法は、移載装置の実装に関し、それ故に前述の移載装置およびその実施形態と同じ技術的利点を有する。
【0045】
好ましい実施形態では、本方法は、
第1の移載部材および第2の移載部材を、第1の移載部材および第2の移載部材が第1の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する移載前状態から相対的に移動させるステップと、
第1の移載部材および第2の移載部材を移載前状態から、第1の移載部材および第2の移載部材が第1の相互距離より短い第2の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する第1の移載状態に相対的に移動させるステップと、
第1の移載部材および第2の移載部材を第1の移載状態から、第1の移載部材および第2の移載部材が第2の相互距離より長い第3の相互距離で第1の移載面の両側で互いに離間する移載後状態に相対的に移動させるステップと、を更に含み、
第2の磁場アレイは、移載前状態、第1の移載状態、移載後状態、およびそれらの間で第1の磁場アレイに対して少なくとも部分的にオフセットされる。
【0046】
本明細書に記載および図示する様々な態様および特徴は、可能な限り、個別に適用することができる。これらの個々の態様、特に添付の従属請求項に記載の態様および特徴は、分割出願の対象とすることができる。
【0047】
添付の概略図で図示した例示的実施形態に基づいて本発明を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1の例示的実施形態による、第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材を含む、タイヤ構成部材を移載するための移載装置の等角図を示す。
図2】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での第1の移載部材および第2の移載部材の正面図を示す。
図3】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での第1の移載部材および第2の移載部材の正面図を示す。
図4】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での第1の移載部材および第2の移載部材の正面図を示す。
図5図2の線V−Vに沿った第1の移載部材の底面図を示す。
図6図2の線VI−VIに沿った第2の移載部材の上面図を示す。
図7】本発明の第2の例示的実施形態による代替的な第2の移載部材の上面図を示す。
図8図3の線VIII−VIIIによる第1の移載部材の底面図と第2の移載部材の底面図とのオーバーレイを示す。
図9図5による第1の移載部材の底面図と図7による代替的な第2の移載部材の上面図との代替的オーバーレイを示す。
図10A-C】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での図1による第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材の概略正面図を示す。
図10D-F】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での図1による第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材の概略正面図を示す。
図10G-I】タイヤ構成部材を移載するための方法の例示的ステップの間での図1による第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材の概略正面図を示す。
図11図10A図10Iにおける方法のステップの間での第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材それぞれの考えられる構成を示す。
図12図10A図10Iにおける方法のステップの間での第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材それぞれの考えられる構成を示す。
図13図10A図10Iにおける方法のステップの間での第1の移載部材、第2の移載部材、および第3の移載部材それぞれの考えられる構成を示す。
図14】タイヤ構成部材を解除するための代替的方法のステップの間での第1の移載部材および第2の移載部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の例示的実施形態による少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材9を移載するための移載装置を示す。タイヤ構成部材9は一般に、強磁性金属または鋼の補強コードを埋め込んだエラストマー体を含む。
【0050】
移載装置は、第1の移載部材1と、第2の移載部材2と、第3の移載部材3とを含む。第1の移載部材1は、第1の駆動部材71、この例ではロボットマニピュレータまたはロボットアームの端部に取り付けられる。したがって、第1の移載部材1は、ロボットマニピュレータ71の端部でのグリッパと見なすことができる。この例示的実施形態では、第1の移載部材1の形状または輪郭は、タイヤ構成部材9の平行四辺形状に整合または実質的に整合するように適合される。第2の移載部材2は、回転台の軸Tを中心に回転可能であるように第2の駆動部材72に結合される。したがって、第2の移載部材2は、タイヤ構成部材9をひっくり返すか、または反転させるための回転台と見なすことができる。第3の移載部材3は、ベルトコンベヤ33のエンドレスベルトの直下に配置される。したがって、第3の移載部材3は、前記ベルトコンベヤ33の機能部品と見なすことができる。
【0051】
しかし、移載部材1、2、3は少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材9が一方の移載部材から他方の移載部材への移載を必要とする様々な代替的用途に使用され得ることが当業者に明らかであろう。以後の説明は、例示的図面に示すような用途に限定されない一般的移載部材1、2、3の間の少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材9の移載を指す。
【0052】
図1に示すように、第1の移載装置1は、第1の移載体10と、第1の磁気吸引力F1で第1の移載部材1の第1の移載体10にタイヤ構成部材9を保持するための第1の磁場マトリクスまたはアレイ12を形成するように前記第1の移載体10内またはそれに取り付けられた複数の第1の磁場源11とを含む。第2の移載装置2は、第2の移載体20と、第2の磁気吸引力F2で第2の移載部材2の第2の移載体20にタイヤ構成部材9を保持するための第2の磁場マトリクスまたはアレイ22を形成するように前記第2の移載体20内またはそれに取り付けられた複数の第2の磁場源21とを含む。第3の移載装置3は、第3の移載体30と、第3の磁気吸引力F3で第3の移載部材3の第3の移載体30にタイヤ構成部材9を保持するための第3の磁石マトリクスまたはアレイ32を形成するように前記第3の移載体30内またはそれに取り付けられた複数の第3の磁場源31とを含む。第1の磁場源11、第2の磁場源21、および/または第3の磁場源31は、個別の磁石、または個別の磁場を発生させる一体型磁石体であってもよい。
【0053】
図2図4は、第1の移載部材1から第2の移載部材2にタイヤ構成部材9を移載するための方法のステップを示す。
【0054】
図2は、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の移載面P1の両側で互いに離間する移載前状態に、第1の移載部材1および第2の移載部材2が相対的に移動することを示す。前記移載前状態では、第1の移載部材1および第2の移載部材2は、第1の相互距離Z1で離間する。
【0055】
図3は、第1の移載部材1および第2の移載部材2がその後、図2に示すような移載前状態から、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の相互距離Z1より短い第2の相互距離Z2で第1の移載面P1の両側で互いに離間する第1の移載状態に相対的に移動することを示す。具体的には、第2の相互距離Z2は、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の移載面P1の両側でタイヤ構成部材9に当接して配置され得るように、タイヤ構成部材9の厚さに略等しくなるように選択される。したがって、タイヤ構成部材9は、前記タイヤ構成部材9から手を放すことなく第1の移載部材1から第2の移載部材2に移載することができる。この例示的実施形態では、第1の移載部材1および第2の移載部材2は、第1の駆動部材71を用いて第1の移載部材1を第2の移載部材2に向けて移動させることによって相対的に移動する。第1の移載部材1および第2の移載部材2は、第1の移載面P1の垂直および/または直角方向に相対的に移動可能であることが好ましい。
【0056】
図4は、第1の移載部材1および第2の移載部材2がその後、図3に示すような第1の移載状態から、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第2の相互距離Z2より長い第3の相互距離Z3で第1の移載面P1の両側で互いに離間する移載後状態に相対的に移動することを示す。
【0057】
第2の磁気吸引力F2は、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の移載状態から移載後状態に移るとき、タイヤ構成部材9が第1の移載部材1から第2の移載部材2に実際に移載されることを確実にするために第1の磁気吸引力F1より大きい。
【0058】
第1の移載部材1および第2の移載部材2が図3のように、第1の移載面P1の両側に第1の移載状態で位置決めされるとき、第1の移載部材1の第1の磁場アレイ12は、第2の移載部材2の第2の磁場アレイ22に磁気吸着することができる。それぞれの移載部材1と移載部材2との間のこの磁気吸引は、互いに離れた前記移載部材1、2の相対移動に対抗する可能性がある。したがって、第1の移載状態で第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引を低減および/または防止するために、第2の磁場アレイ22は、第1の磁場アレイ12に対して少なくとも部分的にオフセットされる。本発明において、「部分的にオフセットする」は、第1の磁場アレイ12の第1の磁場源11の少なくともいくつかが第2の磁場アレイ22の第2の磁場源21のいくつかに対して、例えば回転、並進またはピッチ距離の変化によって不整列にされるか、かつ/または位置がずれることを意味する。したがって、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の磁気吸引力F1および第2の磁気吸引力F2でそれぞれ、タイヤ構成部材9を個別に磁気吸着することができる間、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引は最小限に保たれ得る。したがって、第1の移載部材1および第2の移載部材2を分離するのにより手間が省ける。
【0059】
第2の磁場アレイ22は、移載前状態、第1の移載状態、移載後状態、およびそれらの間で第1の磁場アレイ12に対して少なくとも部分的にオフセットされることが好ましい。したがって、相互に接近する間、ならびに第1の移載部材1と第2の移載部材2とを分離する間、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引は、最小限に保たれ得る。これにより、磁気吸引が第2の移載部材2に対する第1の移載部材1の位置決めの精度に悪影響を及ぼすことを防止する。
【0060】
図2の移載前状態および図4の移載後状態では、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の第1の相互距離Z1および第3の相互距離Z3は、少なくとも5ミリメートル、より好ましくは少なくとも10ミリメートルである。第1の移載部材1および第2の移載部材2を前記範囲の上限に向かって離れて移動させるとき、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引力は軽微である。第1の移載部材1および第2の移載部材2が前記範囲内であるとき、第1の磁場アレイ12および第2の磁場アレイ22を少なくとも部分的に不整列に保つことが好ましい。
【0061】
図5は、第1の磁場アレイ12の考えられる構成の例を示す。前記第1の磁場アレイ12の第1の磁場源11は、第1のパターン方向D1および第2のパターン方向D2それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置される。各行での第1の磁場源11は、第1のピッチ距離X1で第1のパターン方向D1に均一に分布されることが好ましい。各列での第1の磁場源11もまた、第2のピッチ距離X2で第2のパターン方向D2に均一に分布されることが好ましい。本発明において、「ピッチ距離」は、第1の磁場アレイ12のそれぞれの行または列で2つの直接隣接する第1の磁場源11の間の中心間または中心部距離を意味する。この例示的実施形態では、複数の第1の磁場源11は、北磁極性Nで第1の移載面P1に向いた第1の群の磁石と、南磁極性Sで第1の移載面P1に向いた第2の群の磁石とを含む。第1の群の磁石は第2の群の磁石と交互になることが好ましい。
【0062】
図6は、第2の磁場アレイ22の考えられる構成の例を示す。前記第2の磁場アレイ22の第2の磁場源21は、第3のパターン方向D3および第4のパターン方向D4それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置される。各行での第2の磁場源21は、第3のピッチ距離X3で第3のパターン方向D3に均一に分布されることが好ましい。各列での第2の磁場源21もまた、第4のピッチ距離X4で第4のパターン方向D4に均一に分布されることが好ましい。本発明において、「ピッチ距離」は、第2の磁場アレイ22のそれぞれの行または列で2つの直接隣接する第2の磁場源21の間の中心間または中心部距離を意味する。この例示的実施形態では、複数の第2の磁場源21は、北磁極性Nで第1の移載面P1に向いた第1の群の磁石と、南磁極性Sで第1の移載面P1に向いた第2の群の磁石とを含む。第1の群の磁石は第2の群の磁石と交互になることが好ましい。
【0063】
図7は、代替的な第2の移載部材102の第2の磁場アレイ122の考えられる代替的な構成の例を示す。前記第2の磁場アレイ122では、第2の磁場源121は、第3のパターン方向D3および第4のパターン方向D4それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置される。各行での第2の磁場源121は、第1のピッチ距離X1より短い代替的な第3のピッチ距離X3で第3のパターン方向D3に均一に分布される。各列での第2の磁場源121もまた、第2のピッチ距離X2より短い代替的な第4のピッチ距離X4で第4のパターン方向D4に均一に分布される。第3のピッチ距離X3および第4のピッチ距離X4は、第1のピッチ距離X1および第2のピッチ距離X2それぞれよりも、少なくとも2倍短いことが好ましい。
【0064】
図8は、図3の第1の移載位置における図5による第1の移載部材1と図6による第2の移載部材2とのオーバーレイを示す。図8は、第2の磁場アレイ22が第1の移載面P1に垂直かつ/または直角に第1のオフセット軸R1を中心とした第1のオフセット角A1にわたる第1の磁場アレイ12に対する前記第2の磁場アレイ22の回転によって第1の磁場アレイ12に対してオフセットされることを明確に示す。結果として、第3のパターン方向D3は、第1のオフセット角A1にわたって第1のパターン方向D1に対してオフセットされ、第4のパターン方向D4は、第1のオフセット角A1にわたって第2のパターン方向D2に対してオフセットされる。この例では、第1のオフセット角A1は、約45度である。図8に明確に示すように、第1のオフセット角A1は、第1の磁場アレイ12と第2の磁場アレイ22との相対的ずれを生じさせ、その結果、第1の磁場源11の多くが第2の磁場源21と不整列かつ/またはそれによって部分的にのみ重ね合わせられる。これにより、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引を最小限に低減する。
【0065】
第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引の大幅な低減を達成するために10〜80度の範囲での第1のオフセット角A1も可能であることが見出されている。
【0066】
図9は、図3の第1の移載位置における図5による第1の移載部材1と図7による代替的な第2の移載部材102とのオーバーレイを示す。図9は、第2の磁場アレイ122が第1のピッチ距離X1および第2のピッチ距離X2と第3のピッチ距離X3および第4のピッチ距離X4それぞれとの不整合によって第1の磁場アレイ12に対してオフセットされることを明確に示す。具体的には、オーバーレイのかなりの部分では、第1の磁場源11の1つが第2の磁場源121の4つと重なる。前記4つの第2の磁場源121のうち、少なくとも2つが対向位置の第1の磁場源11の極性と等しい極性であり、それにより前記それぞれの第1の磁場源11に少なくとも部分的に反発する。したがって、第1の移載部材1と第2の移載部材2との間の磁気吸引を大幅に低減することができ、ゼロに向けて低減する可能性がある。
【0067】
図10A図10Iは、第1の移載部材1から第2の移載部材2に、第2の移載部材2から第3の移載部材3に、かつ第3の移載部材3から第4の移載部材4に、または第1の移載部材1に戻る、タイヤ構成部材9を移載するためのより複雑な方法のステップを示す。
【0068】
図10A図10Cに示すようなステップは、図2図4に示すような第1の移載部材1と第2の移載部材2との間でタイヤ構成部材9を移載するステップに相当する。図10Dは、第2の駆動部材32が第1の移載部材1をひっくり返し、および/または反転するように作動され、かつタイヤ構成部材9が第3の移載部材3で第1の移載面P1から第2の移載面P2に向かう回転台の軸Tを中心にその駆動部材上で受け取られている状況を示す。ひっくり返す間、第2の移載部材2での第2の磁場アレイ22は、移載部材2が図10Cに示すような配向に対して上下を逆にするときでも、タイヤ構成部材9を第2の移載部材2に保持する。
【0069】
図10Eは、第2の移載部材2が第2の移載面P2に対して第3の移載部材3に対向する位置に完全なひっくり返りを有する状況を示す。これは、第3の移載部材3が第2の移載面P2の両側でそれぞれの位置に相対的に移動する、第2の移載状態と呼ばれる。第3の移載部材3に向かう第2の移載部材2の接近は回転台の軸Tを中心とした回転の結果であるが、その端部位置まで最後の数度の回転および/または最後の5〜10ミリメートルを意味する前記回転の本当に最後の部分は、略直線状の接近と見なすことができることに留意されたい。したがって、第2の移載部材2および第3の移載部材3は、第1の移載部材1および第2の移載部材2が第1の移載状態に対して移動するのと本質的に同じように、移載前状態、第2の移載状態、および移載後状態を通って移動する。
【0070】
図10Eでは、第3の磁気吸引力F3は、第2の移載部材2および第3の移載部材3が第2の移載状態から移載後状態に移るとき、タイヤ構成部材9が第2の移載部材2から第3の移載部材3に実際に移載されることを確実にするために第2の磁気吸引力F2より大きい。
【0071】
図10Fは、第2の移載部材2が第2の移載状態から第3の移載部材3から離れた移載後状態を通って移動し、前記第3の移載部材3でのベルトコンベヤ33のエンドレスベルトでタイヤ構成部材9を残す状況を示す。
【0072】
図10Fおよび図10Gは、この例では実際には第1の移載部材1である第4の移載部材4が第3の移載部材3でベルトコンベヤ33のエンドレスベルトから反転したタイヤ構成部材9を持ち上げるために配置される方法を示す。図10G図10Hおよび図10Iは、図10A図10Bおよび図10Cそれぞれに本質的に対応するが、第2の移載面P2では、タイヤ構成部材9の移載が第3の移載部材3と第4の移載部材4との間で生じる。
【0073】
第2の移載状態では、第3の磁場アレイ32は、第2の磁場アレイ22に対して少なくとも部分的にオフセットされる。この例示的実施形態では、第3の磁場アレイ32と第2の磁場アレイ22との間のオフセットは、第2の移載面P2に垂直かつ/または直角に延在する第2のオフセット軸R2を中心に第2のオフセット角A2にわたって第2の磁場アレイ22に対して第3の磁場アレイ32の回転オフセットである。更に、このオフセットは、例えば、回転、並進、またはピッチ距離の変更による第2の磁場源21に対する第3の磁場源31の不整列またはずれであり得る。
【0074】
図11図12、および図13は、第1の磁場アレイ212、第2の磁場アレイ222、および第3の磁場アレイ232に対する3つの考えられる構成を示す。図11に示すように、第1の磁場源211は、第1のパターン方向D1および第2のパターン方向D2それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置される。図12に示すように、第2の磁場源221は、第3のパターン方向D3および第4のパターン方向D4それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置され、第1のオフセット軸R1を中心に第1のオフセット角A1にわたって第1のパターン方向D1および第2のパターン方向D2それぞれに対してオフセットされる。図13に示すように、第3の磁場源231は、第5のパターン方向D5および第6のパターン方向D6それぞれに延在する互いに平行な行と列で配置され、第2のオフセット軸R2を中心に第2のオフセット角A2にわたって第1のパターン方向D1および第2のパターン方向D2それぞれに対してオフセットされる。
【0075】
第1のオフセット角A1および第2のオフセット角A2は等しいことが好ましい。この例示的実施形態では、第1のオフセット角A1および第2のオフセット角A2はともに、約30度である。オフセット角A1、A2は、各磁石アレイ212、222、232が同じ移載装置で使用される他の磁石アレイ212、222、232に対して不整列であるように選択されることが好ましい。したがって、すべての移載部材1、2、3は、異なる磁石アレイ212、222、232を有する。これは、第1の移載部材1もまた、第2の移載部材2の代わりに第3の移載部材3と協働するように、より可撓性をもたらす。オフセット角A1、A2は、移載装置内の移載部材1、2、3の数で割った90度に等しいか、または略等しいように選択されることが好ましい。オフセット角A1、A2は、移載部材1と移載部材2と移載部材3との間の磁気吸引の十分な低下を維持するために10度未満であるべきではない。結果として、各々が他の磁石アレイの各々に対して少なくとも10度の角度にわたってオフセットされる磁石アレイを有する、一連の最大8つの移載部材(図示せず)を提供することが可能である。
【0076】
前記一連の移載部材のうち、連続的または連続した対の移載部材は、それぞれの移載面でタイヤ構成部材9を移載するために配置される。各連続的または連続した対の移載部材は、タイヤ構成部材9を受け取る受取移載部材と、タイヤ構成部材9を受取移載部材に受け渡しする受渡移載部材とを含む。受取移載部材の磁気吸引力は、タイヤ構成部材9を受渡移載部材から受取移載部材に移載するそれぞれの移載面での受渡移載部材の磁気吸引より大きい。
【0077】
前述の磁石11、21、31、121、211、221、231は永久磁石であることが好ましい。移載部材1、2、3、102の構築はそれ故に、比較的単純だが効果的に保たれ得る。しかし、移載部材の少なくとも1つに対するわずかにより複雑な磁石構成が望ましい例外がある。
【0078】
例えば、一連の移載部材における最後の移載部材、図10G図10Hおよび図10Iでは第4の移載部材4はまた、同じ一連の移載部材の第1の移載部材1によって形成することができる。しかし、磁気吸引力F1、F2、F3が各移載で増分的により強くなることにより、第2の磁気吸引力から最後の磁気吸引力F3は、一連の移載部材の第1の移載部材1によって発生した最後の磁気吸引力F1より相当大きい。したがって、第2の移載部材から最後の移載部材3と第1の移載部材1の形態での最後の移載部材4との間でタイヤ構成部材9を移載することが難しい。しかし、例えば、調整可能な電磁石を提供することによって、または磁石とタイヤ構成部材9との間の間隔を機械的に調整することによって、磁気吸引力の1つが調整可能であるとき、磁気吸引力は、タイヤ構成部材9の移載を可能にするレベルに制御可能であることが見出されている。図1に示すような例では、第3の移載部材3は、ベルトコンベヤ33のエンドレスベルトで支持されたタイヤ構成部材9と第3の移載部材3の磁石31との間の間隔を広げるように、図14Aに示すような解除機構5で下げることができ、それにより第3の移載部材3を第1の移載部材1に解除する。あるいは、第1の移載部材1は、図14Bに示すように、第3の磁気吸引力F3を超える第4の磁気吸引力F4を提供するのに十分な容量の1つ以上の電磁石を備えていてもよい。
【0079】
代替的実施形態では、移載部材は、移載部材ごとに異なるランダムパターン(図示せず)で磁石が配置される磁石アレイを備えていてもよい。恐らく前述のような所定のパターンほど効果はないが、ランダムパターンは、それぞれの移載部材間の磁気吸引を少なくとも部分的に低減するのに十分な不整列を提供することができる。
【0080】
上記説明は好ましい実施形態の動作を示すために含まれ、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。上述により、本発明の範囲に更に包含される多くの変更が当業者に明らかである。
【0081】
要約すると、本発明は、少なくとも部分的に強磁性のタイヤ構成部材(9)を移載するための移載装置およびその方法に関し、移載装置は、第1の移載面(P1)の両側で第1の移載状態に移動可能である第1の移載部材(1)および第2の移載部材(2)を含み、第1の移載部材(1)は、第1の磁気吸引力(F1)でタイヤ構成部材(9)を保持するための第1の磁場アレイ(12)を形成する第1の磁場源(11)を含み、第2の移載部材(2)は、第1の移載面(P1)で第1の磁気吸引力(F1)より大きい第2の磁気吸引力(F2)でタイヤ構成部材(9)を保持するための第2の磁場アレイ(22)を形成する第2の磁場源(21)を含み、第1の移載状態では、第2の磁場アレイ(22)は第1の磁場アレイ(12)に対してオフセットされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-C】
図10D-F】
図10G-I】
図11
図12
図13
図14