(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。本明細書において、「モード気孔径」とは、気孔径の頻度分布における出現比率がもっとも大きい気孔径(分布の極大値)をいい、「D30気孔径」とは、最小気孔径を1μmとする体積基準の気孔径の累積分布において小孔径からの積算値が全体の30%に達したときの気孔径をいい、「D70気孔径」とは、最小気孔径を1μmとする体積基準の気孔径の累積分布において小孔径からの積算値が全体の70%に達したときの気孔径をいう。また、「D90粒子径」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の90%に達したときの粒子径をいう。また、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0017】
[排ガス浄化触媒]
本実施形態の排ガス浄化触媒は、内燃機関であるガソリンエンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒100であって、排ガス導入側の端部11aが開口した導入側セル11と、該導入側セル11に隣接し排ガス排出側の端部12aが開口した排出側セル12とが、多孔質の隔壁13により画定されたウォールフロー型基材10と、隔壁13の気孔内に形成された触媒層21と、を有し、気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁13のモード気孔径をXとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径が0.6X以上0.9X以下であり、最小気孔径を1μmとする気孔径分布において、前記ウォールフロー型基材の隔壁のD30気孔径をYとしたときに、前記触媒層が形成された前記隔壁のD30気孔径が0.55〜0.80Yであり、前記ウォールフロー型基材の隔壁のD70気孔径をZとしたときに、前記触媒層が形成された前記隔壁のD70気孔径が0.70〜0.90Zであることを特徴とする。
【0018】
以下、
図1に示す、本実施形態の排ガス浄化触媒を模式的に示す断面図を参照しつつ、各構成について説明する。本実施形態の排ガス浄化触媒はウォールフロー型構造を有する。このような構造を有する排ガス浄化触媒100では、内燃機関から排出される排ガスが、排ガス導入側の端部11a(開口)から導入側セル11内へと流入し、隔壁13の気孔内を通過して隣接する排出側セル12内へ流入し、排ガス排出側の端部12a(開口)から流出する。この過程において、隔壁13の気孔内を通り難い粒子状物質(PM)は、一般に、導入側セル11内の隔壁13上及び/又は隔壁13の気孔内に堆積し、堆積した粒子状物質は、触媒層21の触媒機能によって、或いは所定の温度(例えば500〜700℃程度)で燃焼し、除去される。また、排ガスは、隔壁13の気孔内に形成された触媒層21と接触し、これによって排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)は水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)などへ酸化され、窒素酸化物(NOx)は窒素(N
2)へ還元され、有害成分が浄化(無害化)される。なお、本明細書においては、粒子状物質の除去及び一酸化炭素(CO)等の有害成分の浄化をまとめて「排ガス浄化性能」ともいう。以下、各構成についてより詳細に説明する。
【0019】
(気孔径)
ガソリンエンジンはディーゼルエンジンよりもより高温で稼働するため、排ガスに含まれる粒子状物質の径はディーゼルエンジンよりもより小さくなる傾向にある。粒子状物質は、その径によって捕集モードが異なる。ガソリンエンジンから排出される粒子状物質の粒子径は一般に百nm程度である。このような小径の粒子状物質の捕集モードとしては、粒子の拡散寄与が大きい。つまり、フィルターにおいては粒子状物質が通過する細孔の径を狭小化し、粒子との接触頻度を向上するように設計することで粒子状物質の捕集性能の向上に繋がると考えられる。
【0020】
これを踏まえ、本実施形態の排ガス浄化触媒は、触媒層21の形成により気孔径を小径化することでススが通過しやすい大径の気孔を減少させるとともに、触媒層21の形成による気孔の閉塞を抑制することでスス捕集に適した小径の気孔を維持することにより、スス捕集性能を向上させる。このような観点から、本実施形態においては、触媒層21を形成する前の隔壁13の気孔径分布と、触媒層21が形成された隔壁13の気孔径分布が所定の関係を有することを規定する。具体的には、触媒層21を形成する前の隔壁13のモード気孔径Xに対して、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径の関係を規定することにより、それぞれの気孔径分布の関係を規定する。また、それぞれの気孔径分布の関係をより詳細に規定する好ましい態様においては、触媒層21を形成する前の隔壁13と触媒層21が形成された隔壁13におけるD30気孔径及びD70気孔径が有する関係についてもそれぞれ規定する。
【0021】
気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁13のモード気孔径をXとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径は、0.9X以下であり、好ましくは0.6X以上0.89X以下であり、より好ましくは0.65X以上0.88X以下であり、0.65X以上0.85X以下である。触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径が0.9X以下であることにより、ススの捕集性能がより向上する。また、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径が0.6X以上であることにより、圧力損失の上昇がより抑制される傾向にある。なお、「0.9X」という表記における「0.9」という乗数は、ウォールフロー型基材の隔壁のモード気孔径に対する、触媒層が形成された隔壁のモード気孔径の割合を示し、当該乗数を100%表記で示したものを気孔狭小率ともいう。以下、モード気孔径の気孔狭小率をNR
Mといい、後述するD30気孔径の気孔狭小率をNR
D30といい、D70気孔径の気孔狭小率をNR
D70という。
【0022】
また、触媒層21の形成による気孔の閉塞を抑制し、スス捕集に適した小径の気孔が維持されることをより直接的に規定する観点から、最小気孔径を1μmとする気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁13のD30気孔径をYとしたときの、触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径を規定することが好ましい。触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径は、0.55Y以上0.80Y以下であり、好ましくは0.60Y以上0.80Y以下であり、より好ましくは0.65Y以上0.80Y以下であり、さらに好ましくは0.65Y以上0.75Y以下である。触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径が0.80Y以下であることにより、ススの捕集性能がより向上する傾向にある。また、触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径が0.55Y以上であることにより、圧力損失の上昇がより抑制される傾向にある。
【0023】
さらに、触媒層21の形成により気孔径を小径化し、ススが通過しやすい大径の気孔が減少することをより直接的に規定する観点から、最小気孔径を1μmとする気孔径分布において、ウォールフロー型基材の隔壁のD70気孔径をZとしたときの、触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径を規定することが好ましい。触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径は、0.70Z以上0.90Z以下であり、好ましくは0.75Z以上0.90Z以下であり、より好ましくは0.80Z以上0.90Z以下である。触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径が0.90Z以下であることにより、ススの捕集性能がより向上する傾向にある。また、触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径が0.70Z以上であることにより、圧力損失の上昇がより抑制される傾向にある。
【0024】
また、触媒層21の形成により気孔径を小径化することでススが通過しやすい大径の気孔を減少させるとともに、触媒層21の形成による気孔の閉塞を抑制することでスス捕集に適した小径の気孔を維持するという観点から、モード気孔径の気孔狭小率NR
M、D30気孔径の気孔狭小率NR
D30、D70気孔径の気孔狭小率NR
D70は以下の関係を有することが好ましい。
【0025】
気孔狭小率NR
Mに対する気孔狭小率NR
D30の比率(NR
D30/NR
M)は、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.5〜0.95であり、さらに好ましくは0.6〜0.9である。また、気孔狭小率NR
Mに対する気孔狭小率NR
D70の比率(NR
D70/NR
M)は、好ましくは0.9〜1.3であり、より好ましくは1.01〜1.2であり、さらに好ましくは1.02〜1.1である。このように、ススが通過しやすい大径の気孔を減少させつつ、スス捕集に適した小径の気孔を維持することにより、圧力損失の上昇を抑制しつつススの捕集率が向上する傾向にある。
【0026】
また、排ガス浄化触媒の全気孔容積は、0.4cc/g以上であり、より好ましくは0.4〜0.8cc/gであり、さらに好ましくは0.5〜0.7cc/gである。全気孔容積が0.4cc/g以上であることにより、圧力損失の向上がより抑制される傾向にある。
【0027】
なお、各気孔径及び全気孔容積は、下記実施例に記載の条件において水銀圧入法により算出される値を意味する。
【0028】
触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径を調整する方法としては、特に制限されないが、例えば、隔壁13の気孔内に形成する触媒層の塗工量を調整するとともに、所定の触媒層の塗工量条件下において、触媒層21により閉塞する小径の気孔を減少させる方法が挙げられる。小径の気孔の閉塞を抑制する方法としては、触媒スラリーのpHの調整により、触媒スラリーの粘度を調整することにより、毛細管現象による小径の気孔への触媒スラリーの集中を緩和する方法が挙げられる。なお、触媒層21を形成する前の隔壁13のモード気孔径X、D30気孔径Y、D70気孔径Zは、ウォールフロー型基材の選択によって調整することができる。
【0029】
なお、触媒層が形成された隔壁のD70気孔径、及び、触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径を所定の範囲に調整する方法も上記と同様とすることができる。また、全気孔容積を所定の範囲に調整する方法としては、触媒層の塗工量を調整する方法が挙げられる。
【0030】
(基材)
ウォールフロー型基材10は、排ガス導入側の端部11aが開口した導入側セル11と、該導入側セル11に隣接し排ガス排出側の端部12aが開口した排出側セル12とが、多孔質の隔壁13によって仕切られているウォールフロー型構造を有する。
【0031】
基材10としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の材質及び形体のものが使用可能である。例えば、基材の材質は、内燃機関が高負荷条件で運転された際に生じる高温(例えば400℃以上)の排ガスに曝された場合や、粒子状物質を高温で燃焼除去する場合などにも対応可能なように、耐熱性素材からなるものが好ましい。耐熱性素材としては、例えば、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム、及び炭化ケイ素(SiC)等のセラミック;ステンレス鋼などの合金が挙げられる。また、基材の形体は、排ガス浄化性能及び圧力損失上昇抑制等の観点から適宜調整することが可能である。例えば、基材の外形は、円筒形状、楕円筒形状、又は多角筒形状等とすることができる。また、組み込む先のスペースなどにもよるが、基材の容量(セルの総体積)は、好ましくは0.1〜5Lであり、より好ましくは0.5〜3Lである。また、基材の延伸方向の全長(隔壁13の延伸方向の全長)は、好ましくは10〜500mm、より好ましくは50〜300mmである。
【0032】
導入側セル11と排出側セル12は、筒形状の軸方向に沿って規則的に配列されており、隣り合うセル同士は延伸方向の一の開口端と他の一の開口端とが交互に封止されている。導入側セル11及び排出側セル12は、供給される排ガスの流量や成分を考慮して適当な形状および大きさに設定することができる。例えば、導入側セル11及び排出側セル12の口形状は、三角形;正方形、平行四辺形、長方形、及び台形等の矩形;六角形及び八角形等のその他の多角形;円形とすることができる。また、導入側セル11の断面積と、排出側セル12の断面積とを異ならせたHigh Ash Capacity(HAC)構造を有するものであってもよい。
【0033】
なお、導入側セル11及び排出側セル12の個数は、排ガスの乱流の発生を促進し、かつ、排ガスに含まれる微粒子等による目詰まりを抑制できるように適宜設定することができ、特に限定されないが、好ましくは200cpsi〜400cpsiである。また、隔壁13の厚み(延伸方向に直交する厚さ方向の長さ)は、好ましくは6〜12milであり、より好ましくは6〜10milである。
【0034】
隣り合うセル同士を仕切る隔壁13は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有するものであれば特に制限されず、その構成については、排ガス浄化性能や圧力損失の上昇抑制、基材の機械的強度の向上等の観点から適宜調整することができる。例えば、後述する触媒スラリーを用いて該隔壁13内の気孔表面に触媒層21を形成する場合、モード気孔径Xや気孔容積が大きい場合には、触媒層21による気孔の閉塞が生じにくく、得られる排ガス浄化触媒は圧力損失が上昇しにくいものとなる傾向にあるが、粒子状物質の捕集能力が低下し、また、基材の機械的強度も低下する傾向にある。一方で、気孔径や気孔容積が小さい場合には、圧力損失が上昇しやすいものとなるが、粒子状物質の捕集能力は向上し、基材の機械的強度も向上する傾向にある。
【0035】
このような観点から、隔壁13の気孔率は、好ましくは20〜80%であり、より好ましくは40〜70%であり、さらに好ましくは60〜70%である。気孔率が下限以上であることにより、圧力損失の上昇がより抑制される傾向にある。また、気孔率が上限以下であることにより、基材の強度がより向上する傾向にある。なお、気孔率は、下記実施例に記載の条件において水銀圧入法により算出される値を意味する。
【0036】
また、ウォールフロー型基材の隔壁のモード気孔径Xは、触媒層21を形成する前の隔壁13と触媒層21が形成された隔壁13におけるモード気孔径が上記各関係を有する場合において、ススの捕集性能と圧力損失の上昇抑制をよりバランスよく発揮する観点から、規定することができる。具体的には、気孔径分布において、ウォールフロー型基材の隔壁のモード気孔径Xは、好ましくは10〜30μmであり、より好ましくは12〜28μmであり、さらに好ましくは15〜25μmである。
【0037】
(触媒層)
次に、隔壁13の気孔内に形成された触媒層21について説明する。触媒層21は、従来のこの種の用途に用いられる種々の態様のものが使用可能である。例えば、触媒層21の態様として、触媒金属粒子と担体粒子とを含む触媒スラリーを焼成してなるものが挙げ有られる。このように各種粒子を含む触媒スラリーを焼成して形成される触媒層21は、焼成により粒子同士が溶着した微多孔構造を有する。
【0038】
触媒層21に含まれる触媒金属としては、特に制限されず、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種を用いることができる。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)等の白金族金属が挙げられる。このなかでも、酸化活性の観点からはパラジウム(Pd)、白金(Pt)が好ましく、還元活性の観点からはロジウム(Rh)が好ましい。本実施形態においては、上記のとおり一種以上の触媒金属を混合された状態で含有する触媒層21を有する。特に二種以上の触媒金属の併用により、異なる触媒活性を有することによる相乗的な効果が期待される。
【0039】
このような触媒金属の組み合わせの態様は、特に制限されず、酸化活性に優れる二種以上の触媒金属の組み合わせ、還元活性に優れる二種以上の触媒金属の組み合わせ、酸化活性に優れる触媒金属と還元活性に優れる触媒金属の組み合わせが挙げられる。このなかでも、相乗効果の一つの態様として、酸化活性に優れる触媒金属と還元活性に優れる触媒金属の組み合わせが好ましく、Rh、Pd及びRh、または、Pt及びRhを少なくとも含む組合せがより好ましい。このような組み合わせとすることにより、排ガス浄化性能がより向上する傾向にある。
【0040】
なお、触媒層21が触媒金属を含有することは、排ガス浄化触媒の隔壁13の断面の走査型電子顕微鏡などにより確認することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡の視野においてエネルギー分散型X線分析を行うことにより確認することができる。
【0041】
触媒層21に含まれ、触媒金属を担持する担体粒子としては、従来この種の排ガス浄化触媒で使用される無機化合物を考慮することができる。例えば、酸化セリウム(セリア:CeO
2)、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵材(OSC材)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO
2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO
2)、酸化チタン(チタニア:TiO
2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物を挙げることができる。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。なお、これら担体粒子は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。ここで、酸素吸蔵材(OSC材)とは、排ガスの空燃比がリーンであるとき(即ち酸素過剰側の雰囲気)には排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチであるとき(即ち燃料過剰側の雰囲気)には吸蔵されている酸素を放出するものをいう。
【0042】
なお、内燃機関、特にガソリンエンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒であって、特に、粒子状物質の捕集用途に用いられるという観点から、排ガス浄化触媒100の触媒層の塗工量(ウォールフロー型基材1Lあたりの触媒金属質量を除く触媒層の塗工量)は、好ましくは20〜110g/Lであり、より好ましくは40〜90g/Lであり、さらに好ましくは50〜70g/Lである。
【0043】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
本実施形態の製造方法は、内燃機関であるガソリンエンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒100の製造方法であって、排ガス導入側の端部11aが開口した導入側セル11と、該導入側セル11に隣接し排ガス排出側の端部12aが開口した排出側セル12とが、多孔質の隔壁13により画定されたウォールフロー型基材10を準備する工程S0と、ウォールフロー型基材10の隔壁13内の気孔表面上の少なくとも一部に、触媒スラリーを塗工して、触媒層21を形成する触媒層形成工程S1と、を有し、該触媒層形成工程S1において、気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁13のモード気孔径をXとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径が0.6X以上0.9X以下であり、最小気孔径を1μmとする気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁13のD30気孔径をYとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径が0.55〜0.80Yであり、ウォールフロー型基材10の隔壁13のD70気孔径をZとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径が0.70〜0.90Zである排ガス浄化触媒100を得ることを特徴とする。
【0044】
以下、各工程について説明する。なお、本明細書においては、触媒層21を形成する前のウォールフロー型基材を「基材10」と表記し、触媒層21を形成した後のウォールフロー型基材を「排ガス浄化触媒100」と表記する。
【0045】
<準備工程>
この準備工程S0では、基材として、上記排ガス浄化触媒100において述べたウォールフロー型基材10を準備する。
【0046】
<触媒層形成工程>
この触媒層形成工程S1では、隔壁13の気孔表面に触媒スラリーを塗工して、乾燥させ、焼成することで、触媒層21を形成する。触媒スラリーの塗工方法は、特に制限されないが、例えば、基材10の一部に触媒スラリーを含浸させて、それを基材10の隔壁13全体に広げる方法が挙げられる。より具体的には、排ガス導入側の端部11a又は排ガス排出側の端部12aに、触媒スラリーを含浸させる含浸工程S1aと、触媒スラリーを含浸させた端部側から基材10内に気体を導入させることにより、基材10に含浸された触媒スラリーを隔壁13に塗工する塗工工程S1bを有する方法が挙げられる。
【0047】
含浸工程S1aにおける触媒スラリーの含浸方法としては、特に制限されないが、例えば、触媒スラリーに基材10の端部を浸漬させる方法が挙げられる。この方法においては、必要に応じて、反対側の端部から気体を排出(吸引)させることにより触媒スラリーを引き上げてもよい。触媒スラリーを含浸させる端部は、排ガス導入側の端部11a又は排ガス排出側の端部12aのどちらでもよいが、排ガス導入側の端部11aに触媒スラリーを含浸させることが好ましい。これにより、排ガスの導入方向と同じ方向で塗工工程S1bにおいて気体を導入することができ、複雑な気孔形状に対して、排ガスの流れに沿った形で触媒スラリーを塗工することができる。そのため、得られる排ガス浄化触媒の圧力損失の上昇抑制が見込まれ、また、排ガス浄化性能の向上も期待できる。
【0048】
また、塗工工程S1bでは、触媒スラリーは、基材10の導入側から奥へ気体Fの流れに沿って移動し、気体Fの排出側の端部へ到達する。その過程において、隔壁13の気孔内部を触媒スラリーが通過することで、気孔内部に触媒スラリーを塗工することができ、隔壁の全体に触媒スラリーが塗工される。
【0049】
乾燥工程S1cでは、塗工した触媒スラリーを乾燥させる。乾燥工程S1cにおける乾燥条件は、触媒スラリーから溶媒が揮発するような条件であれば特に制限されない。例えば、乾燥温度は、好ましくは100〜225℃であり、より好ましくは100〜200℃であり、さらに好ましくは125〜175℃である。また、乾燥時間は、好ましくは0.5〜2時間であり、好ましくは0.5〜1.5時間である。
【0050】
焼成工程S1dでは、触媒スラリーを焼成して、触媒層21を形成する。焼成工程S1dにおける焼成条件は、触媒スラリーから触媒層21が形成できるような条件であれば特に制限されない。例えば、焼成温度は、特に制限されないが、好ましくは400〜650℃であり、より好ましくは450〜600℃であり、さらに好ましくは500〜600℃である。また、焼成時間は、好ましくは0.5〜2時間であり、好ましくは0.5〜1.5時間である。
【0051】
なお、ガソリンエンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒、特に、粒子状物質の捕集用途に用いられるという観点から、焼成工程S1dを経て得られる排ガス浄化触媒100の触媒層の塗工量(ウォールフロー型基材1Lあたりの触媒金属質量を除く触媒層の塗工量)は、好ましくは20〜110g/Lであり、より好ましくは40〜90g/Lであり、さらに好ましくは50〜70g/Lである。
【0052】
(触媒スラリー)
触媒層21を形成するための触媒スラリーについて説明する。触媒スラリーは、触媒粉体と、水などの溶剤とを含む。触媒粉体は、触媒金属粒子と該触媒金属粒子を担持する担体粒子とを含む、複数の触媒粒子の集団であり、後述する焼成工程を経て、触媒層21を形成する。触媒粒子は、特に限定されず、公知の触媒粒子から適宜選択して用いることができる。なお、隔壁13の気孔内への塗工性の観点から、触媒スラリーの固形分率は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは15〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜35質量%である。このような固形分率とすることにより、触媒スラリーを隔壁13内の導入側セル11側に塗工しやすくなる傾向にある。
【0053】
触媒スラリーに含まれる触媒粉体のD90粒子径は、好ましくは1〜7μmであり、より好ましくは1〜5μmであり、さらに好ましくは1〜3μmである。D90粒子径が1μm以上であることにより、触媒粉体をミリング装置で破砕する場合の粉砕時間を短縮することができ、作業効率がより向上する傾向にある。また、D90粒子径が7μm以下であることにより、粗大粒子が隔壁13内の気孔を閉塞することが抑制され、圧力損失の上昇が抑制される傾向にある。なお、本明細書において、D90粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD−3100等)で測定することができる。
【0054】
触媒スラリーに含まれる触媒金属としては、特に制限されず、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種を用いることができる。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)等の白金族金属が挙げられる。このなかでも、酸化活性の観点からはパラジウム(Pd)、白金(Pt)が好ましく、還元活性の観点からはロジウム(Rh)が好ましい。
【0055】
触媒金属粒子を担持する担体粒子としては、従来この種の排ガス浄化触媒で使用される無機化合物を考慮することができる。例えば、酸化セリウム(セリア:CeO
2)、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)等の酸素吸蔵材(OSC材)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO
2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO
2)、酸化チタン(チタニア:TiO
2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物を挙げることができる。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。なお、これら担体粒子は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。ここで、酸素吸蔵材(OSC材)とは、排ガスの空燃比がリーンであるとき(即ち酸素過剰側の雰囲気)には排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチであるとき(即ち燃料過剰側の雰囲気)には吸蔵されている酸素を放出するものをいう。なお、排ガス浄化性能の観点から、触媒スラリーに含まれる担体粒子の比表面積は、好ましくは10〜500m
2/g、より好ましくは30〜200m
2/gである。
【0056】
本実施形態においては、上記塗工工程S1bから焼成工程S1dにおいて、ススが通過しやすい大径の気孔を減少させるとともに、スス捕集に適した小径の気孔を減少させないような触媒層を形成することにより、ウォールフロー型基材10の隔壁13のモード気孔径をXとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のモード気孔径が0.6X以上0.9X以下であり、最小気孔径を1μmとする気孔径分布において、ウォールフロー型基材10の隔壁のD30気孔径をYとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のD30気孔径が0.55〜0.80Yであり、ウォールフロー型基材10の隔壁13のD70気孔径をZとしたときに、触媒層21が形成された隔壁13のD70気孔径が0.70〜0.90Zである排ガス浄化触媒100を得る。触媒スラリーは、その粘度や表面張力に応じて、毛細管現象により小径の気孔に浸入した状態で乾燥しやすい性質や、小径の気孔に浸入しにくい性質など種々の性質を取り得る。ここで、小径の気孔に集中して浸入しにくい物性を有する触媒スラリーを用いることにより、大径の気孔においては触媒層21に形成により気孔径を小径化することができ、ススが通過しやすい大径の気孔を減少させるとともに、小径の気孔においては、触媒層21の形成による閉塞を抑制し、気孔閉塞によりスス捕集に適した小径の気孔が減少することを抑制することができる。
【0057】
[用途]
内燃機関(エンジン)には、酸素と燃料ガスとを含む混合気が供給され、この混合気が燃焼されて、燃焼エネルギーが力学的エネルギーに変換される。このときに燃焼された混合気は排ガスとなって排気系に排出される。排気系には、排ガス浄化触媒を備える排ガス浄化装置が設けられており、排ガス浄化触媒により排ガスに含まれる有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx))が浄化されるとともに、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)が捕集され、除去される。特に、本実施形態の排ガス浄化触媒100は、ガソリンエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質を捕集し、除去できるガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)に用いられるものであることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0059】
(実施例1)
アルミナ粉末およびジルコニア粉末およびセリアジルコニア複合酸化物粉末に、硝酸パラジウム水溶液を含浸させ、その後、500℃で1時間焼成して、Pd担持粉末を得た。また、アルミナ粉末およびジルコニア粉末に、硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、その後、500℃で1時間焼成して、Rh担持粉末を得た。
【0060】
得られたPd担持粉末480g及びRh担持粉末390gと、セリアジルコニア複合酸化物粉末95gと、イオン交換水とを混合し、得られた混合物をボールミルに投入し、触媒粉体が所定の粒子径分布になるまでミリングし、D90粒子径が3.0μmである触媒スラリーを得た。得られた触媒スラリーに、水酸化バリウム八水和物29gと、60%硝酸とを混合し、pHが6.7の触媒スラリーを得た。
【0061】
次いで、コージェライト製のウォールフロー型ハニカム基材(セル数/ミル厚:300cpsi/8.5mil、直径:118.4mm、全長:127mm、モード気孔径X:20μm、気孔率:65%)を用意した。この基材の排ガス導入側の端部を触媒スラリーに浸漬させ、反対側の端部側から減圧吸引して、基材端部に触媒スラリーを含浸保持させた。排ガス導入側の端部から基材内へ気体を流入させて、隔壁内の気孔表面に触媒スラリーを塗工するとともに、基材の排ガス排出側の端部から過剰分の触媒スラリーを吹き払って、気体の流入を停止した。その後、触媒スラリーを塗工した基材を150℃で乾燥させた後、大気雰囲気下、550℃で焼成して、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり59.1g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0062】
(実施例2)
硝酸パラジウム水溶液をアルミナ粉末に含侵して、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をアルミナ粉末に含浸して、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末およびRh担持粉末にセリアジルコニア複合酸化物粉末と、46%硝酸ランタン水溶液と、イオン交換水とを混合したこと以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.9g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0063】
(実施例3)
得られた触媒スラリーに、炭酸アンモニウム44.9g(pH調整剤)を混合し、pHが5.1の触媒スラリーを得たこと以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.0g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0064】
(実施例4)
硝酸パラジウム水溶液をアルミナ粉末およびセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をアルミナ粉末およびセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末およびRh担持粉末を用いて調製した触媒スラリーに、炭酸アンモニウム33g(pH調整剤)を混合し、pHが5.1の触媒スラリーを得たこと以外は、実施例2と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり62.0g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0065】
(実施例5)
硝酸パラジウム水溶液をアルミナ粉末およびセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵して、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をジルコニア粉末に含侵して、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末及びRh担持粉末と、セリアジルコニア複合酸化物粉末と、46%硝酸ランタン水溶液と、イオン交換水とを混合し、得られた触媒スラリーに、水酸化バリウム八水和物96gと炭酸アンモニウム27g(pH調整剤)を混合し、pHが5.5の触媒スラリーを得たこと以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり61.8g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0066】
(比較例1)
触媒スラリーの調製において、触媒スラリーに、水酸化バリウム八水和物と、60%硝酸とを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.0g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0067】
(比較例2)
触媒スラリーの調製において、触媒スラリーに、水酸化バリウム八水和物と、60%硝酸とを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.9g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0068】
(比較例3)
硝酸パラジウム水溶液をアルミナ粉末およびセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末およびRh担持粉末と、硫酸バリウム粉末と、イオン交換水とを混合したこと以外は、比較例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.0g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0069】
(比較例4)
硝酸パラジウム水溶液をセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をジルコニア粉末に含侵して、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末およびRh担持粉末を用いて触媒スラリーを調製したこと以外は、比較例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.9g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0070】
(比較例5)
硝酸パラジウム水溶液をセリアジルコニア複合酸化物粉末に含侵させて、Pd担持粉末を得た。また、硝酸ロジウム水溶液をアルミナ粉末に含侵して、Rh担持粉末を得た。得られたPd担持粉末およびRh担持粉末を用いて触媒スラリーを調製した以外は、比較例1と同様にして、排ガス浄化触媒を作製した。なお、焼成後における触媒層の塗工量は、基材1L当たり60.9g(白金族金属の重量を除く)であった。
【0071】
[粒子径分布測定]
触媒スラリーのD90粒子径は、島津製作所社製レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD−3100を用いて、レーザー散乱法により測定した。
【0072】
[水銀圧入法]
実施例及び比較例で作製した排ガス浄化触媒、並びに、触媒スラリーを塗工する前の基材の、排ガス導入側部分、排ガス排出側部分、及び中間部分の各隔壁から、モード気孔径、D30気孔径、D70気孔径、及び気孔容積の測定用サンプル(1cm
3)をそれぞれ採取した。測定用サンプルを乾燥後、水銀ポロシメーター(Thermo Fisher Scientific社製、商品名:PASCAL140及びPASCAL440)を用いて、水銀圧入法により気孔分布を測定した。この際、PASCAL140により低圧領域(0〜400Kpa)を測定し、PASCAL440により高圧領域(0.1Mpa〜400Mpa)を測定した。得られた気孔分布から、モード気孔径、D30気孔径、D70気孔径、を求め、また、気孔径1μm以上の気孔における気孔容積を算出した。なお、気孔径及び気孔容積の値としては、排ガス導入側部分、排ガス排出側部分、及び中間部分それぞれで得られた値の平均値を採用した。
【0073】
次いで、下記式により、実施例及び比較例で作製した排ガス浄化触媒の気孔率を算出した。その結果を、下記表1に示す。また、
図2に、実施例及び比較例の気孔容積分布を示す。
排ガス浄化触媒の気孔率(%)=触媒層が形成された隔壁の気孔容積(cc/g)÷基材の気孔容積(cc/g)×基材の気孔率(%)
基材の気孔率(%)=65%
【0074】
[スス捕集性能の測定]
ガソリンエンジンにおけるPN規制を前提として、スス捕集性能の測定を行った。具体的には、実施例及び比較例で作製した排ガス浄化触媒を、1.5L直噴ターボエンジン搭載車に取り付け、固体粒子数測定装置(堀場製作所製、商品名:MEXA−2100 SPCS)を用いて、WLTCモード走行時のスス排出数量(PN
test)を測定した。なお、ススの捕集率は、排ガス浄化触媒を搭載せずに上記試験を行った際に測定したスス量(PN
blank)からの減少率として、下記式により算出した。その結果を、下記表1に示す。
ススの捕集率(%)=(PN
blank−PN
test)/PN
blank × 100(%)
【0075】
その結果を、実施例及び比較例における、気孔狭小率(ウォールフロー型基材の隔壁のモード気孔径に対する、触媒層が形成された隔壁のモード気孔径の割合)とスス捕集率との関係としてまとめて
図3に示す。
図3に示されるように、気孔狭小率とスス捕集率との間には、相関関係が認められる。
【0076】
[圧力損失の測定]
実施例及び比較例で作製した排ガス浄化触媒、並びに、触媒スラリーを塗布する前の基材を圧力損失測定装置(ツクバリカセイキ株式会社製)にそれぞれ設置し、設置した排ガス浄化触媒に室温の空気を導入させた。排ガス浄化触媒からの空気の排出量が4m
3/minとなったときの空気の導入側と排出側の差圧を測定して得られた値を、排ガス浄化触媒の圧力損失とした。その結果を、下記表1に示す。
【0077】
【表1】
内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化触媒であって、排ガス導入側の端部が開口した導入側セルと、該導入側セルに隣接し排ガス排出側の端部が開口した排出側セルとが、多孔質の隔壁により画定されたウォールフロー型基材と、前記隔壁の気孔内に形成された触媒層と、を有し、気孔径分布において、前記ウォールフロー型基材の前記隔壁のモード気孔径をXとしたときに、前記触媒層が形成された前記隔壁のモード気孔径が0.9X以下である、排ガス浄化触媒。