特許第6608127号(P6608127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6608127-干渉抑圧支援装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608127
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】干渉抑圧支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20191111BHJP
   G01S 7/295 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   G01S7/292 210
   G01S7/292 220
   G01S7/295
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-133439(P2014-133439)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-11881(P2016-11881A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月23日
【審判番号】不服-15344(P-15344/J1)
【審判請求日】2018年11月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発における委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 梶田 真也
【審判官】 小林 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−128157(JP,A)
【文献】 特開2014−9947(JP,A)
【文献】 特開2015−227824(JP,A)
【文献】 富木洋一,時枝幸伸,菅原博樹,知識データベースを用いたレーダ干渉除去処理の開発,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年12月 7日,Vol.112,No.360,19−24頁
【文献】 富木洋一,時枝幸伸,菅原博樹,電波環境に適応した船舶用レーダの干渉除去処理の開発,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年12月13日,Vol.113,No.367,13−18頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00-7/42,13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信波をレンジセルの列に変換してレンジセルの全ての列ΣSを監視し、何らかの干渉波と見なし得るレンジセルの列の前記全ての列ΣSに対する比率である干渉占有率Rを求め、前記全ての列ΣSの列に含まれる短パルス干渉波のパルス幅を伸長させて、干渉波の成分と見なし得るレンジセルの列S′の前記全ての列ΣSに対する比率である干渉占有率R′を求め、前記干渉占有率Rに対する前記干渉占有率R′の比である短パルス混在指数γ(=R′/R)を算出する比率評価手段と、
前記干渉波の抑圧のためにパルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式とに個別に適用され得る2通りの濾波処理の内、前記短パルス混在指数γの大小に応じてどちらかの濾波処理を選択する濾波処理選択手段と
を備えたことを特徴とする干渉抑圧支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号に重畳し得る干渉の除去に適用されるべき濾波処理の方式を選択する干渉抑圧支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システム等の需要の増大や通信の高速化に伴い、マイクロ波帯のさらなる有効利用が求められている。
また、このようなマイクロ波帯を利用するレーダ装置は、狭帯域化、固体化、小型化およびメインテナンスフリー化に適したパルス圧縮レーダ方式が適用され、今後も急速に普及することが予想されている。
【0003】
しかし、パルス圧縮レーダ方式では、送信波の先頭電力が小さく抑えられるが、パルス幅が長く設定されるために、近距離に位置する他のレーダ装置に干渉を及ぼす可能性が高い。
電波環境適応レーダ(以下、「適応レーダ」という。)は、このような干渉の軽減に併せて、同一の帯域において同時に稼働可能なレーダ装置の台数の確保が可能であるため、積極的に開発が進められている。
【0004】
適応レーダでは、干渉が生じ得る帯域の電波環境が監視され、その結果に基づいて送信波のパルス幅、照射方向、占有帯域等が適宜最適化されることによって、干渉の抑圧や除去が図られる。
【0005】
図3は、従来の適応レーダ装置の構成例を示す図である。
図において、アンテナ41の給電点は送受信部50のアンテナ端子に接続され、その送受信部50の変調入力および復調出力には信号処理部61の対応する端子が接続される。信号処理部61には指示部62が接続され、これらの信号処理部61および指示部62に併せて、送受信部50の制御端子には制御部63の対応する入出力ポートが接続される。
【0006】
送受信部50は、以下の要素から構成される。
(1) 空中線系41の給電点に接続された第一の開口を有するサーキュレータ51
(2) サーキュレータ51の第二の開口と既述の復調出力との間に配置され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する受信部52
【0007】
(3) 既述の変調入力とサーキュレータ51の第三の開口とに接続され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する送信部53
(4) 出力が受信部52および送信部53の局発入力に接続され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する局部発振器54
【0008】
このような構成の適応レーダでは、局部発振器54は制御部63によって指定された周波数の局発信号を生成する。送信部53は、信号処理部61が制御部63の配下で生成したベースバンド信号と、上記局発信号とに基づいて、所定のインターバル(周期)(=P)で送信波を生成する。
【0009】
その送信波は、サーキュレータ51および空中線系41を介して船舶等の目標が位置し得る覆域に照射される。以下、このようにして送信波が照射される期間を「送信期間」という。
【0010】
この送信波が目標で反射することによって生じ、かつ空中線系41に到来した反射波は、サーキュレータ51を介して受信部52に引き渡される。受信部52は、上記局発信号に基づいてその反射波をヘテロダイン(ホモダイン)検波することによってベースバンド信号を生成する。
【0011】
信号処理部61は、制御部63の配下でこのベースバンド信号に所定のレーダ信号処理を施すことによって、指示画像を生成する。
指示部62は、その指示画像を図示されない指示画面上に表示する。
【0012】
制御部63は、上記指示画面を介して行われるGUI(グラヒック・ユーザ・インタフェース)の下で操作者が与える要求に応じて、送受信部50、信号処理部61および指示部62の各部の動作および連係を統括する。
【0013】
一方、時間軸上において上記インターバルで送信波が送信される個々の期間に先行する所定の間(以下、「干渉評価期間」という。)には、制御部63、局部発振器54および受信部52は、以下の通りに連係する。
【0014】
(1) 制御部63は、既定のインターバルτで局部発振器54の発振周波数をf1〜fn,f1,…とサイクリックに切り替える。
【0015】
(2) 受信部52は、制御部63の配下で、このような発振周波数の局発信号で定まる受信帯域に分布する干渉波のレベルLi1〜Linを計測する。
【0016】
(3) 制御部63は、これらの干渉波のレベルLi1〜Linを所定の記憶領域上にログとして蓄積し、これらの干渉波のレベルLi1〜Linの内、最小であったレベルが観測された状態における局部発振器54の発振周波数fを特定する。
【0017】
(4) 制御部63は、干渉評価期間の後に送信波が送信されるべき時点に対して、局部発振器54の発振周波数が定常値に収束するために要する時間t先行する時点で、局部発振器54の発振周波数を上記値fに設定する。
【0018】
すなわち、送信波の周波数ftは、その送信波が送信される前の干渉評価期間に計測された干渉波のレベルLi1〜Linが最小であった帯域に占有帯域が一致する値に設定され、かつ維持される。
【0019】
また、制御部63は、既述の通りに操作者によって行われる要求、または、上記レーダ信号処理の過程で行われる既定の判別の結果に応じて、送信部53によって送信波が生成されるインターバル(周期)を所定の範囲で変更することによって、スタガ送信を実現する。
さらに、信号処理部61は、このような制御部63の配下で、上記送信波が放射された期間に同期してレーダ信号処理を行う。
【0020】
このようなレーダ信号処理の過程では、信号処理部61は、物標の検知を実現する処理に先行して、受信波に所定の濾波処理を施すことにより、周辺に位置するパルス圧縮レーダから到来した干渉波(以下、「長パルス干渉波」という。)の抑圧をはかる。
【0021】
すなわち、適応レーダは、干渉の程度が低い帯域の無線周波数帯で運用される。
さらに、多数のパルスレーダが位置し、あるいは航行する過密な海域では、これらのパルスレーダによって送信が行われる周波数帯の積極的な使用が制限されるので、高度な干渉除去機能が備えられていないパルスレーダに対する与干渉の低減もはかられる。
【0022】
したがって、受信波に重畳し得る長パルス干渉波の抑圧が図られ、目標の検知が精度よく実現される。
なお、本願に関連性がある先行技術としては、以下に示す特許文献があった。
【0023】
(1) 「パルス状の送信波を放射し、目標の反射波を受信する送受信手段と、上記送受信手段の受信信号を処理し、Hit振幅データを出力する目標検出手段と、上記目標検出手段から出力されるHit振幅データに基づき、Hit/Miss論理データを出力するピーク検出手段と、上記ピーク検出手段から出力されるHit/Miss論理データを格納するメモリと、上記メモリから出力されるHit/Miss論理データに対して、ターゲット数及びターゲット周波数ビンを検出するターゲット情報抽出手段と、上記ターゲット情報抽出手段から出力されるターゲット数及びターゲット周波数ビンから少なくとも2個のターゲットの情報を抽出し、当該抽出されたターゲット情報により干渉波を判定する干渉波判定手段と、上記干渉波判定手段の判定結果により上記ピーク検出結果格納メモリ上のHit/Miss論理データに対して干渉波を除去する干渉波ブランキング手段とを備える」ことにより、「ターゲット情報抽出器11より出力される出力されるターゲット数及びターゲット周波数ビンより、少なくとも2個のターゲット周波数情報から干渉波を判定し、干渉波が存在する場合には、ピーク検出器10から出力されるHit/Miss論理データに対して、マスクすることにより、干渉波の除去を行う」点に特徴があるレーダ信号処理装置…特許文献1
【0024】
(2) 「信号を送受信するアレーアンテナと、所定周波数のビーム信号を前記アレーアンテナから送信する送信機と、前記ビーム信号に基づく目標からの反射信号を受信信号として前記アレーアンテナから受信する受信機と、前記受信信号に基づいて前記目標の到来方向を測角するモノパルス測角手段と、前記受信信号に含まれるメインビームを妨害する妨害波または前記メインビームに干渉する干渉波を除去して、前記モノパルス測角手段による測角を可能にするための信号処理部とを備えたレーダ装置において、前記信号処理部は、前記メインビームを保護するメインローブプロテクション手段と、前記受信信号から前記妨害波または前記干渉波を除去するサイドローブ妨害抑圧手段とを備え、前記サイドローブ妨害抑圧手段は、前記メインローブプロテクション手段と協働して、メインローブ成分の過剰抑圧を防ぐためのブロッキングフィルタを含む」ことにより、「メインビームを妨害する妨害波が存在する条件下でも、モノパルス測角による目標測角を可能としつつ、演算量を軽減してコストアップを回避する」点に特徴があるレーダ装置。…特許文献2
【0025】
(3) 「送信アンテナからのマルチキャリア送信波の受信アンテナで受信した反射波により目標を検出するレーダ装置であって、前記送信アンテナから送信させたサブキャリア配置が既知のマルチキャリア送信波の前記受信アンテナで受信した反射波から伝搬路特性を解析した結果により、又は予め設定された基準のサブキャリア配置により、観測対象とする帯域内におけるマルチキャリア送信波のサブキャリア配置を設定する送信波制御手段と、前記送信波制御手段で設定されたサブキャリア配置に従った位置および数だけサブキャリアを配置したマルチキャリア送信波形を生成して前記送信アンテナから送信させる送信波形生成手段と、前記送信波形生成手段で生成され送信された送信波に対する前記受信アンテナで受信した反射波の受信信号を各サブキャリア帯域毎に分波し、さらに前記送信波制御手段での設定に従い前記マルチキャリア送信波形においてサブキャリアを配置していない帯域の信号とサブキャリアを配置した帯域の信号とに弁別する分波・弁別手段と、弁別されたサブキャリアを配置していない帯域の信号に基づいて干渉波の検出を行う干渉検出手段と、前記干渉検出手段において干渉波を検出した場合には、検出結果に従って弁別されたサブキャリアを配置した帯域の信号に対して干渉波の抑圧を行う干渉除去手段と、前記干渉除去手段から得られた信号を用いて目標を検出する目標検出手段とを備える」ことにより、「目標の検出性能および干渉抑圧性能を向上させたレーダ装置を提供することを目的とする。このレーダ装置では、マルチパスをも含めて伝搬路特性の良い帯域にサブキャリアを配置して、そこにエネルギーを集中したマルチキャリア送信波を利用することで、効率良く探知距離の増大を図る。さらに、送信には使用しない帯域を用いることで干渉波の検出・抑圧を行うことを同時に可能にする」点に特徴があるレーダ装置…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2002−122662号公報
【特許文献2】特開2009−162613号公報
【特許文献3】特許第5473386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、上述した従来例では、既述の濾波処理が「長パルス干渉波」のみの抑圧に適した処理であるために、受信波にパルスレーダから到来した干渉波(以下、「短パルス干渉波」という。)が重畳され、あるいはこのような「短パルス干渉波」が「長パルス干渉波」と共に重畳されている場合には、干渉の抑圧が十分には実現されなかった。
【0028】
しかし、特に、パルスレーダからパルス圧縮レーダ(個体化レーダ)への移行期では、このように受信波に重畳する干渉波には、上述した「長パルス干渉波」と「短パルス干渉波」との双方が多様な比率で、しかも、非同期に混在し得る。
【0029】
本発明は、パルスレーダとパルス圧縮レーダとからそれぞれ多様な形態で到来する干渉波の抑圧を柔軟にかつ安定に実現できる濾波処理を選択する干渉抑圧支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
請求項1に記載の発明では、比率評価手段は、受信波をレンジセルの列に変換してレンジセルの全ての列ΣSを監視し、何らかの干渉波と見なし得るレンジセルの列の前記全ての列ΣSに対する比率である干渉占有率Rを求め、前記全ての列ΣSの列に含まれる短パルス干渉波のパルス幅を伸長させて、干渉波の成分と見なし得るレンジセルの列S′の前記全ての列ΣSに対する比率である干渉占有率R′を求め、前記干渉占有率Rに対する前記干渉占有率R′の比である短パルス混在指数γ(=R′/R)を算出する。濾波処理選択手段は、前記干渉波の抑圧のために、パルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式とに個別に適用され得る2通りの濾波処理の内、前記短パルス混在指数γの大小に応じてどちらかの濾波処理を選択する。
【0033】
すなわち、レーダ信号に重畳した干渉波は、その干渉波の主要な成分の発信源であるパルスレーダとパルス圧縮レーダとの何れか一方に応じた好適な濾波処理により抑圧される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、干渉波の発信源が位置しない(し得ない)領域から到来した干渉波のパルス幅も濾波処理の選択の基準となる場合に比べて、干渉波の抑圧が精度よく安定に実現される。
【0041】
また、本発明によれば、本発明が適用されたレーダの覆域や運用の形態に適した濾波処理による干渉波の抑圧が実現される。
さらに、本発明が適用されたレーダでは、干渉の抑圧が精度よく安定に実現される。
【0042】
したがって、本発明が適用されたレーダは、干渉源の属性に柔軟に適応し、かつ物標の探知性能が高く安定に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
図3】従来の適応レーダ装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図3に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態と図3に示す従来例との構成の相違点は、制御部63に代えて制御部11が備えられ、信号処理部61に代えて信号処理部12が備えられた点にある。
図2は、本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
【0046】
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、干渉波の抑圧のために予め組み込まれる濾波処理の形態と、これらの濾波処理の内、パルス圧縮処理に先行して適用されるべき濾波処理を決定する処理の手順とにある。
【0047】
本実施形態における制御部11および信号処理部12の機能については、以下に記載される点を除いて、図3に示す従来例と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0048】
信号処理12には、以下の2通りの濾波処理F、Fがディジタル信号処理として予め組み込まれる。
(1) 「長パルス干渉波」の抑圧に適した濾波処理F
(2) 「短パルス干渉波」の抑圧に適した濾波処理F
【0049】
制御部11は、図3に示す制御部63に代わって信号処理部12の振る舞いを統括する。
信号処理部12は、このような統括の下で従来例と同様に、送信波を所定のインターバルPで生成する。その送信波は、送信部53、サーキュレータ51および空中線系41を介して船舶等の目標が位置し得る覆域に照射される。
【0050】
制御部11は、所定の周期や頻度で上述した送信波の信号処理部12による生成を主導的に規制する。
このように送信波の生成が規制されている期間(以下、「干渉評価期間」という。)には、信号処理部12は、以下の処理を行う。
【0051】
(1) 覆域(位置する他のレーダ)からアンテナ41に到来し、かつサーキュレータ51を介して受信部52に引き渡され、さらに、ベースバンド信号に変換された受信波をレンジセルの列(例えば、Bスコープの信号)に変換する(図2ステップS1)。
【0052】
(2) 例えば、スキャン周期に亘って、このようなレンジセルの列ΣSを監視し、何らかの干渉波と見なし得るレンジセルSの列の比率(以下、「干渉占有率R」という。)を求める(図2ステップS2)。ここに、上記「何らかの干渉波と見なし得るレンジセルSの列」には、短パルス干渉波と長パルス干渉波との何れの成分もが、時間軸(スイープ方向)とレンジ方向との長さが変更されることなく反映される。
【0053】
(3) レンジセルΣSの列に含まれる短パルス干渉波のパルス幅を伸長させる処理(以下、「パルス伸長処理」という。)を施すことによって、干渉波(短パルス干渉波と長パルス干渉波との何れであってもよい。)の成分と見なし得るレンジセルS′の列のレンジセルの列ΣSに対する比率(以下、「干渉占有率R′」という。)を求める(図2ステップS3)。ここに、伸長処理は、短パルス干渉波の長さを伸長させることによって、長パルス干渉波に対する長さの格差を圧縮(緩和)する処理である。したがって、上記「干渉波の成分と見なし得るレンジセルS′の列」には、短パルス干渉波と長パルス干渉波との何れの成分も、ほぼ同じ長さの干渉波として反映される。
【0054】
(4) 下式で示されるように、上記ベースバンド信号に含まれる短パルス干渉波が含まれるほど値が大きくなる短パルス混在指数γを算出する(図2ステップS4)。
γ=R′/R
【0055】
(5) 短パルス混在指数γと規定の閾値thとの大小関係を判別する(図2ステップS5)。
(6) 上記大小関係に応じて、下記の通りに2通りの濾波処理F、Fの内、一方の濾波処理Fを選択する。
a) γ<thの場合 濾波処理F図2ステップS6)
b) γ≧thの場合 濾波処理F図2ステップS7)
【0056】
(7) 物標の検知を実現する処理(パルス圧縮処理)に先行して、上述した濾波処理Fを受信波に施すことにより、周辺に位置するパルス圧縮レーダから到来した干渉波の抑圧をはかる(図2ステップS8)。
【0057】
すなわち、本実施形態では、「干渉評価期間」にアンテナ41にスキャン毎に到来した干渉波の主要な成分が自動的に判別され、その主要な成分である「長パルス干渉波」と「短パルス干渉波」との何れか一方の抑圧に適した濾波処理が自動的に適用される。
【0058】
したがって、パルスレーダからパルス圧縮レーダ(個体化レーダ)への移行期のように、「長パルス干渉波」と「短パルス干渉波」とが多様な比率で、しかも、非同期に到来し得る環境であっても、柔軟かつ安定に干渉の抑圧が実現される。
【0059】
なお、本実施形態では、パルス伸張処理は、「長パルス干渉」に比べて「短パルス干渉波」が大きな比率でパルス幅が伸長されるならば、以下に列記する何れによって実現されてもよい。
(1) 低域濾波
(2) ピークホールド処理
(3) 前縁から経過した時間が長いほど小さく重み付けられる重み付き積分
【0060】
また、本実施形態では、信号処理部12によって行われる処理は、その全てまたは一部がレーダ信号処理ではなく、指示部62によって行われる指示画像の生成や編集の過程で行われる画像処理として実現されなくてもよい。
【0061】
さらに、本発明は、適応レーダに組み込まれなくてもよく、例えば、パルスレーダやパルス圧縮レーダと連携するパッケージやアダプタとして構成されてもよい。
【0062】
また、本発明では、適応レーダが送信した送信波に応じて到来した反射波と、干渉波との混同に起因する精度や信頼性の低下が許容(回避)されるならば、信号処理部12によって行われる既述の処理(図2ステップS1〜S7)は、「干渉評価期間」以外の期間に行われてもよい。
【0063】
さらに、本発明は、舶用レーダに限定されず、パルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式との双方または一方が適用された多様なレーダに適用可能である。
【0064】
また、このようなレーダには、近距離用の送信波と遠距離用の送信波とを交互に送信するレーダも含まれる。
さらに、本実施形態では、濾波処理Fの選択の対象は、スキャン毎でなくてもよく、例えば、レンジ方向、スイープ方向、スキャン方向の全てまたは一部によって特定される所望の範囲(毎)であってもよい。
【0065】
また、このような選択の対象となる範囲については、例えば、既知の島、陸地、物標(何れも、地図データベースの参照により特定され、あるいはレーダ信号処理の過程における積分処理や追尾処理の下で識別されるものを含む。)が除外されてもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、短パルス混在指数γと規定の閾値thとの大小関係に基づいて、
2通りの濾波処理F、Fの内、一方が濾波処理Fとして選択されている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、以下の通りに構成されてもよい。
【0067】
(1) 受信波に重畳されている干渉波の内、主要な干渉波の種類が、以下の要件の全てまたは一部に基づいて複数P(≧2)通りにクラス分けされる。
・ パルス幅
・ 干渉波の復調によって得られる伝送情報
・ 適用されている変調方式や多元接続方式
・ 占有帯域(幅)…レンジセル単位に求められてもよい。
・ AIS(Automatic Identification System)等を介して干渉源から無線伝送された情報
【0068】
(2) このようにしてクラス分けされた干渉波の種類にそれぞれ適する複数P通りの濾波処理が上記F、Fに代えて組み込まれる。
【0069】
(3) 上記複数P通りの濾波処理の内、クラス分けされた干渉波の種類に適した特定の濾波処理が濾波処理Fとして選択される。
【0070】
また、上述したパルス幅に基づくクラス分けは、パルス幅の格差の圧縮と、その圧縮の結果に基づいて求められた干渉占有率の比率等に基づいて行われなくてもよく、例えば、パルス幅について予め設定された複数の値域の内、個々の干渉波について実測されたパルス幅が属する値域の識別として実現されてもよい。
【0071】
さらに、本発明に係るレーダ装置と、既述の「長パルス干渉波」の干渉源とは、チャープ方式のパルス圧縮レーダ装置に限定されず、「自己相関特性が急峻である符号系列」による変調により送信波が生成されるパルス圧縮レーダ装置であってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、制御部11および信号処理部12が連携して行う既述の処理は、本実施形態に係るレーダ装置によって送信された送信波に応じて到来する反射波に起因した精度の低下が許容され、あるいはその精度の低下の回避や緩和が図られるならば、「干渉評価期間」以外の期間に行われてもよい。
【0073】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
11,63 制御部
12,61 信号処理部
41 アンテナ
50 送受信部
51 サーキュレータ
52 受信部
53 送信部
54 局部発振器
62 指示部
図1
図2
図3