(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608158
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】複数部品同時冷却構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20191111BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20191111BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20191111BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20191111BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20191111BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20191111BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20191111BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/651
H01M10/6551
H01M10/6566
H05K7/20 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-71608(P2015-71608)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190562(P2016-190562A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083091
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141416
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶
(72)【発明者】
【氏名】今井 正浩
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−185668(JP,A)
【文献】
特開平06−090092(JP,A)
【文献】
特開2008−062780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/651
H01M 10/6551
H01M 10/6566
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリと電気部品との間のスペースであって前記バッテリと前記電気部品の両方が接するスペースに冷却風を流すことで、前記バッテリと前記電気部品の両方を同時に冷却する複数部品同時冷却構造であって、
前記スペースに冷却風を送り込むダクトを有し、
前記ダクトは、前記スペースに連通する内部流路を備えるダクト本体と、該ダクト本体の冷却風流れ方向下流側端部に設けられるスリット板と、を備えており、該スリット板は、板材に複数のスリットが形成されることで作製されており、
前記複数のスリットの各スリットの幅および/または位置は、前記電気部品の発熱量マップに応じて調整されている、複数部品同時冷却構造。
【請求項2】
前記スリット板は、前記ダクト本体と別体に作製されて該ダクト本体に固定される、請求項1記載の複数部品同時冷却構造。
【請求項3】
前記バッテリは、前記電気部品との間に前記スペースを形成するスペース対応部と、該スペース対応部の外部にあり前記ダクトと対向するダクト対応部と、を備えており、
前記ダクト本体の、前記バッテリのダクト対応部に対向する部分に、開口が設定されている、請求項1または請求項2記載の複数部品同時冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリと電気部品の両方を同時に冷却する複数部品同時冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−306726号公報は、
図6に示すように、バッテリ2と電気部品3との間を流れる冷却風で、バッテリ2と電気部品3とを同時に冷やすことができる構造を開示している。
【0003】
しかし、従来構造には、つぎの問題点がある。
電気部品3によっては、発熱量が場所によって異なる発熱量マップが存在する。しかし、従来構造では、電気部品3の発熱量マップについてなんら考慮されていない。そのため、冷却効果を高める点において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−306726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来に比べて冷却効果を高めることができる、複数部品同時冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 車両に搭載されるバッテリと電気部品との間のスペース
であって前記バッテリと前記電気部品の両方が接するスペースに冷却風を流すことで、前記バッテリと前記電気部品の両方を同時に冷却する複数部品同時冷却構造であって、
前記スペースに冷却風を送り込むダクトを有し、
前記ダクトは、前記スペースに連通する内部流路を備えるダクト本体と、該ダクト本体の冷却風流れ方向下流側端部に設けられるスリット板と、を備えており、該スリット板は、板材に複数のスリットが形成されることで作製されており、
前記複数のスリットの各スリットの幅および/または位置は、前記電気部品の発熱量マップに応じて調整されている、複数部品同時冷却構造。
(2) 前記スリット板は、前記ダクト本体と別体に作製されて該ダクト本体に固定される、(1)記載の複数部品同時冷却構造。
(3) 前記バッテリは、前記電気部品との間に前記スペースを形成するスペース対応部と、該スペース対応部の外部にあり前記ダクトと対向するダクト対応部と、を備えており、
前記ダクト本体の、前記バッテリのダクト対応部に対向する部分に、開口が設定されている、(1)または(2)記載の複数部品同時冷却構造。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の複数部品同時冷却構造によれば、バッテリと電気部品との間のスペースに冷却風を送り込むダクトが、ダクト本体と、ダクト本体の冷却風流れ方向下流側端部に設けられるスリット板と、を備えている。そして、スリット板は、板材に複数のスリットが形成されることで作製されており、複数のスリットの各スリットの幅および/または位置が、電気部品の発熱量マップに応じて調整されている。よって、電気部品の高発熱部位に流れる冷却風の流量を、電気部品の低発熱部位に流れる冷却風の流量に比べて多くすることができ、冷却効果を従来に比べて高めることができる。
【0008】
上記(2)の複数部品同時冷却構造によれば、スリット板が、ダクト本体と別体に形成されてダクト本体に固定されるため、電気部品の発熱量変更にスリット板を変えるだけで対応できる。よってコスト上有利である。
【0009】
上記(3)の複数部品同時冷却構造によれば、ダクト本体の、バッテリのダクト対応部に対向する部分に、開口が設定されている。よって、つぎの効果を得ることができる。
(i)バッテリがダクト対応部を有する場合であっても、ダクト内を流れる冷却風でバッテリのダクト対応部を冷却できる。
(ii)ダクト本体の、バッテリのダクト対応部に対向する部分に、開口が設定されていても、ダクト本体からスリットを通ってバッテリと電気部品との間のスペースに流れる冷却風の流量は変わらないため、電気部品の冷却に与える影響は無視できる程度である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明実施例の複数部品同時冷却構造の平面図である。
【
図4】本発明実施例の複数部品同時冷却構造の、ダクトの分解斜視図である。
【
図5】本発明実施例の複数部品同時冷却構造の、スリット板と電気部品の発熱量マップとの関係を示す模式斜視図である。
【
図6】従来の複数部品同時冷却構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明実施例の複数部品同時冷却構造を、図面を参照して、説明する。
【0012】
本発明実施例の複数部品同時冷却構造(以下、単に冷却構造ともいう)10は、
図3に示すように、車両に搭載されるバッテリ20と電気部品30(DCDCコンバータ)との間のスペース40に冷却風を流すことで、バッテリ20と電気部品30の両方を同時に冷却する複数部品同時冷却構造であり、スペース40に冷却風を送り込むダクト50を有する。
【0013】
バッテリ20は、
図1に示すように、互いに並んで設けられる第1、第2のバッテリ21,22を備える。第1、第2のバッテリ21、22は、冷却風流れ方向が長手方向となるようにして配置されている。第1のバッテリ21と第2のバッテリ22とは、それぞれの長手方向が平行となるようにして、同一平面上に、横(それぞれの長手方向と直交する方向)に並んで配置されている。第1のバッテリ21の長手方向長さは、第2のバッテリ22の長手方向長さよりも大とされている。第1のバッテリ21の冷却風流れ方向上流側端21aは、第2のバッテリ22の冷却風流れ方向上流側端22aよりも上流側にある。第1のバッテリ21の冷却風流れ方向下流側端21bは、第2のバッテリ22の冷却風流れ方向下流側端22bと同じ(略同じを含む)位置にある。
【0014】
電気部品30は、たとえば発熱量が比較的大のDCDCコンバータである。電気部品30は、
図2に示すように、第1、第2のバッテリ21,22の上方に、第1、第2のバッテリ21,22と間隔をおいて配置されている。電気部品30は、下面が第1、第2のバッテリ21,22の上面と対向するようにして配置される。
図1に示すように、電気部品30の冷却風流れ方向上流側端30aは、第1のバッテリ21の冷却風流れ方向上流側端21aよりも下流側にあり、第2のバッテリ22の冷却風流れ方向上流側端22aと同じ(略同じを含む)位置にある。電気部品30の冷却風流れ方向下流側端30bは、第1、第2のバッテリ21,22の冷却風流れ方向下流側端21b,22bより上流側にある。電気部品30の、上下方向と直交し冷却風流れ方向と直交する方向の長さ(幅)は、バッテリ20の同方向長さと同じ(略同じを含む)である。
【0015】
第1、第2のバッテリ21,22は、それぞれ、略全体にわたって均一に発熱する。それに対し、電気部品30は、
図5に示すように、複数個所Pで(疎らに)発熱する。また、複数個所Pのそれぞれの発熱量も異なっており、高発熱部位と低発熱部位とが存在する。すなわち、電気部品30は、発熱量が場所によって異なる発熱量マップMが存在する。
【0016】
スペース40は、
図2に示すように、バッテリ20と電気部品30との間に形成されるスペースである。このスペース40に冷却風を流すことで、バッテリ20(第1、第2のバッテリ21,22)と電気部品30の3部品が同時に冷却される。冷却効果を高めるために、バッテリ20および/または電気部品30にフィン31が形成されていてもよい。なお、図示例では、フィン31は電気部品30のみに設けられる場合を示している。
【0017】
スペース40を流れる冷却風が第1、第2のバッテリ21,22の間の隙間から漏れることを抑制するために、第1、第2のバッテリ21,22の間は、金属製板等からなるシール板41にて覆われている。また、スペース40を流れる冷却風がバッテリ20と電気部品30との間の隙間から漏れることを抑制するために、バッテリ20と電気部品30との間にスポンジ等からなるシール部材42が設けられている。
【0018】
バッテリ20は、
図3に示すように、電気部品30に上下方向に対向し電気部品30との間にスペース40を形成するスペース対応部23と、スペース対応部23の外部にありダクト50と上下方向に対向するダクト対応部24と、を備える。
【0019】
ダクト50は、たとえば樹脂製である。ダクト50は、
図4に示すように、スペース40に連通する内部流路51aを備えるダクト本体51と、ダクト本体51の冷却風流れ方向下流側端部に設けられるスリット板52と、を備える。
【0020】
ダクト本体51の冷却風流れ方向上流側端に内部流路51aに冷却風を導入する導入口51bが設けられている。スリット板52は、ダクト本体51と別体に形成されてダクト本体51の冷却風流れ方向下流側端部に固定して取付けられる。スリット板52のダクト本体51への固定は、たとえば溶着、接着等である。スリット板52は、一枚の板材に複数のスリット52aが形成されることで作製される。複数のスリット52aの各スリット52aの幅および/または位置は、電気部品30の発熱量マップMに応じて調整される。具体的には、複数のスリット52aの各スリット52aの幅および/または位置は、電気部品30の高発熱部位を流れる冷却風の流量が比較的大になり、電気部品30の低発熱部位を流れる冷却風の流量が比較的小となるように、調整される。なお、電気部品30の高発熱部位を流れる冷却風の流量を大にするためには、スリット52aの幅を大にする、スリット52aの量を多くすることが考えられ、電気部品30の低発熱部位を流れる冷却風の流量を小にするためには、スリット52aの幅を小にする、スリット52aの量を少なくすることが考えられる。
【0021】
ダクト本体51は、
図3に示すように、バッテリ20のダクト対応部24に上下方向に対向して配設されるバッテリ対向部51cを備える。バッテリ対向部51cに開口51dが設定されている。開口51dにより、ダクト本体51の内部流路51aを流れる冷却風がバッテリ20のダクト対応部24に接触することができる。開口51dの周囲には、冷却風が漏れることを抑制するために、ダクト本体51とダクト対応部24との間の隙間を埋めるシール部材53が設けられている。
【0022】
導入口51bから内部流路51aに導入された冷却風は、その一部が開口51dを介してバッテリ20のダクト対応部24に接触し該ダクト対応部24との間で熱交換が行なわれた後、スリット板52に設けられるスリット52aを通ってスペース40に流入する。そして、スペース40を流れる際にバッテリ20のスペース対応部23、電気部品30の両方との間で熱交換が行なわれ、スペース40の下流側に設けられる出口側ダクト60に流入し、出口側ダクト60の外部に流出される。
【0023】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
本発明実施例では、バッテリ20と電気部品30との間のスペース40に冷却風を送り込むダクト50が、ダクト本体51と、ダクト本体51の冷却風流れ方向下流側端部に設けられるスリット板52と、を備えている。そして、スリット板52は、板材に複数のスリット52aが形成されることで作製されており、複数のスリット52aの各スリット52aの幅および/または位置が、電気部品30の発熱量マップMに応じて調整されている。よって、電気部品30の高発熱部位に流れる冷却風の流量を、電気部品30の低発熱部位に流れる冷却風の流量に比べて多くすることができ、電気部品30の冷却効果を従来に比べて高めることができる。
【0024】
なお、スリット板52をダクト本体51の下流側端部に設けず、ダクト本体51の内部に図示略のリブを設けることによりスペース40を流れる冷却風の流量を調整することも考えられるが、以下の(a)〜(c)の問題点がある。
(a)リブを冷却風流れ方向中間部から下流側端部近傍まで延びて設けなければならない。そのため、電気部品30の発熱量マップMに応じたリブの分配は圧損が高く流量が落ちてしまう。
(b)電気部品30は比較的多くの個所で発熱するため、ダクト50のリブ分配形状検討に工数がかかる。
(c)電気部品30の発熱量変更時にダクト50全体を作製し直す必要があり、ダクト50を成形する型の修正を要し、コストがかかる。
これに対して、本発明では、ダクト本体51の下流側端部に別体のスリット板52を設けるため、つぎの効果が得られる。
上記(a)について
スリット板52をダクト本体51の下流側端部のみに設けるため、リブを設ける場合に比べて圧損を抑えることができ流量を増加させることができる。
上記(b)について
電気部品30は比較的多くの個所で発熱するが、スリット52の幅および/または位置を検討するだけでよいため、リブを設ける場合に比べてダクト作製の工数を削減できる。
上記(c)について
電気部品30の発熱量変更にスリット52の幅を変更するだけでよいため、コスト上有利である。
【0025】
スリット板52が、ダクト本体51と別体に形成されてダクト本体51に固定されるため、電気部品30の発熱量変更にスリット板52を変えるだけで対応できる。よってコスト上有利である。
【0026】
ダクト本体51の、バッテリ20のダクト対応部24に対向する部分51cに、開口51dが設定されている。よって、つぎの効果を得ることができる。
(i)バッテリ20がダクト対応部24を有する場合であっても、ダクト50内を流れる冷却風でバッテリ20のダクト対応部24を冷却できる。
(ii)ダクト本体51の、バッテリ20のダクト対応部24に対向する部分51cに、開口51dが設定されていても、ダクト本体51からスリット52aを通ってバッテリ20と電気部品30との間のスペース40に流れる冷却風の流量は変わらないため、電気部品30の冷却に与える影響は無視できる程度である。
【符号の説明】
【0027】
10 複数部品同時冷却構造
20 バッテリ
21 第1のバッテリ
22 第2のバッテリ
23 スペース対応部
24 ダクト対応部
30 電気部品
40 スペース
50 ダクト
51 ダクト本体
51a 内部流路
51b 導入口
51c バッテリ対向部
51d 開口
52 スリット板
52a スリット
60 出口側ダクト
M 発熱量マップ