特許第6608166号(P6608166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608166
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】発酵飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20191111BHJP
   C12G 3/02 20190101ALI20191111BHJP
   C12C 5/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C12G3/04
   C12G3/02
   C12C5/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-100055(P2015-100055)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-112010(P2016-112010A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-250888(P2014-250888)
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 耕平
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/058490(WO,A1)
【文献】 特開2009−240298(JP,A)
【文献】 特開2014−217347(JP,A)
【文献】 特開2012−228225(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/056746(WO,A1)
【文献】 特開昭53−139798(JP,A)
【文献】 特開2005−034133(JP,A)
【文献】 宮地秀夫,ビール醸造技術,日本,株式会社食品産業新聞社,1999年12月28日,初版,pp.295−296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/00
C12C 1/00−13/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程を有し、
前記発酵工程中の発酵液に、酵母を含まないアルコール類を添加し、
前記アルコール類を添加した後の発酵液を、発酵終了前までの少なくとも一定期間撹拌しながら発酵させることによって発酵ビール様発泡性飲料を製造し、
前記アルコール類添加後、発酵工程終了までに、発酵液の外観エキスが2質量%以上低下することを特徴とする、発酵飲料の製造方法。
【請求項2】
前記アルコール類を、浮遊酵母数が増大している状態の発酵液に添加する、請求項1に記載の発酵飲料の製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程において、発酵液の浮遊酵母数を経時的に測定し、前記浮遊酵母数のピークを確認した後に、発酵液の撹拌を開始する、請求項1又は2に記載の発酵飲料の製造方法。
【請求項4】
発酵液の撹拌を、発酵液にガスをバブリングすることにより行う、請求項1〜のいずれか一項に記載の発酵飲料の製造方法。
【請求項5】
前記ガスが、炭酸ガス又は窒素ガスである、請求項に記載の発酵飲料の製造方法。
【請求項6】
前記発酵工程中の発酵液に添加するアルコール類の量が、製造された発酵飲料のアルコール濃度を1〜4容量%増大させられる量である、請求項1〜のいずれか一項に記載の発酵飲料の製造方法。
【請求項7】
前記アルコール類が、原料用アルコール又は蒸留酒である、請求項1〜のいずれか一項に記載の発酵飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール類を原料として使用する発酵飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒等のビール様発泡性飲料は、消費者の嗜好の多様化にともない、多種多様の商品が上市されている。特に、近年の消費者の健康志向から、低カロリーや低糖質のビール様発泡性飲料に対する需要が高まっている。発酵工程を経て製造される発酵ビール様発泡性飲料の場合には、麦芽等の発酵原料の使用量を抑えることによって、飲料のカロリーや糖質含有量を低減させることができるが、発酵により生成されるアルコール量も少なくなってしまう。
【0003】
一方で、ビール等の発酵ビール様発泡性飲料に、その他のアルコール類を添加することにより、ビール様発泡性飲料を製造する方法も報告されている。例えば、特許文献1には、ビール、発泡酒、雑酒、麦芽発酵飲料等の、原料中の麦芽の使用比率が高い麦芽発酵飲料に、麦焼酎等の少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有蒸留物を、特定の割合で添加することにより、麦芽発酵飲料の飲み応えを損ねることなく、喉越しのキレが付与できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4367790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法のように、発酵原料の使用量を低く抑えて製造された発酵ビール様発泡性飲料に、蒸留酒等のアルコール類を混合することにより、カロリーや糖質含有量をさほど高めることなく、アルコール濃度を高めることができる。しかしながら、発酵ビール様発泡性飲料にアルコール類を混合しただけでは、発酵ビール様発泡性飲料とアルコール類の味が充分に馴染まず、アルコール自体のとがった刺激感が強く、味のバランスが悪くなる場合がある。
【0006】
本発明は、原料としてアルコール類を使用しているにも関わらず、アルコール自体のとがった刺激感が抑えられており、まろやかな発酵飲料を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、発酵飲料において、発酵工程により得られた発酵物にアルコール類を添加するのではなく、発酵中の発酵液にアルコール類を添加することによって、アルコール自体のとがった刺激感が抑えられており、まろやかな発酵飲料が製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係る発酵飲料の製造方法は、下記[1]〜[]である。
[1] 発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程を有し、
前記発酵工程中の発酵液に、酵母を含まないアルコール類を添加し、
前記アルコール類を添加した後の発酵液を、発酵終了前までの少なくとも一定期間撹拌しながら発酵させることによって発酵ビール様発泡性飲料を製造し、
前記アルコール類添加後、発酵工程終了までに、発酵液の外観エキスが2質量%以上低下することを特徴とする、発酵飲料の製造方法。
[2] 前記アルコール類を、浮遊酵母数が増大している状態の発酵液に添加する、前記[1]の発酵飲料の製造方法。
] 前記発酵工程において、発酵液の浮遊酵母数を経時的に測定し、前記浮遊酵母数のピークを確認した後に、発酵液の撹拌を開始する、前記[1]又は[2]の発酵飲料の製造方法。
] 発酵液の撹拌を、発酵液にガスをバブリングすることにより行う、前記[1]〜[]のいずれかの発酵飲料の製造方法。
] 前記ガスが、炭酸ガス又は窒素ガスである、前記[]の発酵飲料の製造方法。
] 酵母を接種する前の発酵原料液又は前記発酵工程中の発酵液に添加するアルコール類の量が、製造された発酵飲料のアルコール濃度を1〜4容量%増大させられる量である、前記[1]〜[]のいずれかの発酵飲料の製造方法。
] 前記アルコール類が、原料用アルコール又は蒸留酒である、前記[1]〜[]のいずれかの発酵飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発酵飲料の製造方法により、原料としてアルコール類を使用しているにも関わらず、アルコール自体のとがった刺激感が抑えられており、まろやかな発酵飲料が製造できる。特に、本発明に係る発酵飲料の製造方法では、アルコール類を添加した後、少なくとも一定期間撹拌しながら発酵させることにより、アルコール類を添加した後も充分に発酵させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明及び本願明細書においては、「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、ビールらしさを有する発泡性飲料(ビール様発泡性飲料)とは、麦芽及びホップの使用の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有する発泡性飲料である。
【0011】
また、本発明及び本願明細書における発酵飲料とは、発酵原料の種類にかかわらず、発酵原料を酵母により発酵させる発酵工程を経て製造される飲料を意味する。また、発酵ビール様発泡性飲料とは、発酵工程を経て製造される飲料であって、ビールらしさと炭酸ガスによる発泡性を有する飲料を意味する。具体的には、ビール、発泡酒等が挙げられる。
【0012】
本発明に係る発酵飲料の製造方法は、発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程を有し、酵母を接種する前の発酵原料液又は前記発酵工程中の発酵液に、アルコール類を添加することを特徴とする。発酵完了前にアルコール類を添加することにより、発酵後に得られた発酵液にアルコール類を添加して得られる飲料に比べて、アルコールと発酵液との味馴染みがよく、アルコール自体のとがった刺激感が抑えられ、マイルドな味の発酵飲料が得られる。
【0013】
発酵原料液等に添加するアルコール類の量は、目的の製品品質、特に最終製品たる発酵飲料の目的とするアルコール濃度を考慮して適宜調整できる。例えば、発酵原料液等に添加するアルコール類の量としては、添加したアルコール類により、製造される発酵飲料のアルコール濃度が1容量%以上増大させられる量が好ましく、製造される発酵飲料のアルコール濃度が1〜4容量%増大させられる量がより好ましい。
【0014】
発酵原料液等に添加するアルコール類としては、アルコールを含むものであって酵母を含まないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒であってもよい。本発明に係る発酵飲料の製造方法において用いられるアルコール類としては、発酵飲料の呈味性に対してあまり影響を与えることなくアルコール濃度を高められることから、原料用アルコールや、ウオッカ等の特徴的な香味が少ない蒸留酒が好ましく、原料用アルコールがより好ましい。
【0015】
本発明に係る発酵飲料の製造方法において、アルコール類を添加する時期は、発酵完了前であればよいが、添加したアルコール類を充分に発酵液と馴染ませることができるため、発酵工程中の発酵液にアルコール類を添加する場合には、アルコール類を添加した後にも発酵が充分に進行することが好ましい。具体的には、例えば、アルコール類を添加した後の発酵液のアルコール濃度が、発酵完了までの間にアルコール類添加時点(すなわち、アルコール類を添加直後の時点)よりも1容量以上は増大するように、アルコール類を添加することが好ましい。また、発酵の程度は外観エキス(質量%)を指標とすることもできる。そこで、例えば、アルコール類を添加した後(アルコール類の添加により外観エキスが低下した後)から発酵工程終了までに、発酵液の外観エキスが2質量%以上、好ましくは4質量%以上低下するように、アルコール類を添加することが好ましい。
【0016】
なお、外観エキスとは、発酵飲料のエキスを、20℃において同じ比重をもったシュークロース水溶液のシュークロース濃度(通常は質量%)として表わしたものをいう。アルコールを含むため、外観エキスは本来の意味でのエキス(可溶性蒸発残渣=真正エキス)とは異なる。
【0017】
例えば、発酵工程中の発酵液にアルコール類を添加する場合に、発酵液へのアルコール類の添加を、発酵開始後、酵母が増殖している時点で行うことにより、アルコール類添加後も酵母による発酵を充分に行うことができる。発酵液の酵母の増殖の程度は、発酵液の浮遊酵母数を指標にして知ることができる。酵母が活発に増殖している時期には発酵液の浮遊酵母数は増大し、酵母の増殖が終了すると、酵母は沈降し、発酵液の浮遊酵母数も低下する。そこで、本発明に係る発酵飲料の製造方法においは、発酵液の浮遊酵母数を経時的に測定し、当該浮遊酵母数が増大している状態の発酵液にアルコール類を添加することが好ましい。
【0018】
発酵開始前にアルコール類を添加する場合、発酵原料液にアルコール類を添加して混合した後に酵母を接種してもよく、発酵原料液に酵母を接種した後にアルコール類を添加して混合し、発酵を開始してもよい。また、発酵原料液を予め、酵母を接種する第1の液汁と、アルコール類を混合する第2の液汁とに分けて調製し、両者を混合して発酵を開始させてもよい。発酵原料を含む第1の液汁と発酵原料とアルコール類を含む第2の液汁とをそれぞれ別個に調製し、第1の液汁に酵母を接種した後、当該第1の液汁とアルコール類を含む第2の液汁とを混合して得られた混合物(酵母を接種した発酵原料液)を発酵させる。
【0019】
前記第1の液汁と前記第2の液汁は、互いに混合しやすいように、比重が実質的に同一なるように調製されることが好ましい。例えば、前記第1の液汁と前記第2の液汁の比重値の差が、0.017以下となるように調製されることが好ましく、0.010以下となるように調製されることがより好ましい。また、前記第1の液汁と前記第2の液汁の比重値は、両方とも1.030〜1.047の範囲内であることも好ましい。
【0020】
なお、本発明及び本願明細書において、液汁や発酵原料液の比重値は、固有振動周期測定方式の密度比重計(例えば、京都電子工業株式会社製「DA-510」)により、液の温度20℃で測定された値である。
【0021】
第1の液汁と第2の液汁は、それぞれ2以上に分けて調製してもよい。第1の液汁を2以上に分けて調製した場合、各液汁にそれぞれ酵母を接種する。第1の液汁と第2の液汁を2以上に分けて調製した場合には、第1の液汁と第2の液汁は、交互に発酵タンクに投入することが好ましい。2以上に分けて調製した第1の液汁と第2の液汁を交互に投入することにより、両者が混合し易くなり、より迅速に均一な発酵原料液となる。
【0022】
酵母を接種する前の発酵原料液や発酵中の発酵液にアルコール類を添加すると、発酵が早く停止してしまい、発酵が不充分となる場合がある。発酵工程において、アルコール類を添加した後の発酵液を、発酵終了前までの少なくとも一定期間撹拌しながら発酵させることにより、発酵原料液や発酵中の発酵液にアルコール類を添加した場合でも、充分に発酵させることができる。発酵液の撹拌は、アルコール類の添加前から行っていてもよく、アルコール類の添加後から行ってもよい。
【0023】
発酵液を撹拌する方法は、発酵液中において酵母を沈殿させず、できるだけ浮遊させた状態を維持できる方法であれば、特に限定されるものではなく、ガスバブリング、撹拌羽による撹拌等により行うことができる。本発明に係る発酵飲料の製造方法においは、より簡便に酵母の沈降を抑制することができる点から、発酵液の撹拌を、発酵液にガスをバブリングすることにより行うことが好ましい。
【0024】
バブリングに用いるガスとしては、ガスであれば特に限定されるものではないが、炭酸ガスや窒素ガスが好ましい。炭酸ガスや窒素ガスを用いてバブリングすることにより、発酵液中の溶存酸素量も低下させられるため、最終的に製造される発酵飲料中の溶存酸素量も低くすることができる。つまり、ガスバブリングにより、アルコール類を添加しても充分な発酵を行うことができる上に、保存安定性が高く、香味劣化が抑制された発酵飲料を製造することができる。
【0025】
バブリングの条件は、バブリングを行う容器の容量や大きさ、内部に含む発酵液の量等を考慮して適宜決定することができるが、流量が所定の時間で均一となる条件で行うことが好ましい。また、過度にバブリングして発酵液が起泡しないような条件で行うことも好ましい。具体的には、例えば、発酵液3000L当たり2〜55L/分の割合、好ましくは2〜20L/分の割合で行うことができる。
【0026】
ガスバブリングにより、発酵液中の溶存酸素が低下するため、ガスバブリングは、発酵液中の酵母の増殖が終了した後に開始することが好ましい。このため、発酵液の浮遊酵母数を経時的に測定し、浮遊酵母数のピークを確認した後に、発酵液へのガスのバブリングを開始することが好ましい。
【0027】
本発明に係る発酵飲料の製造方法により製造する発酵飲料が発酵ビール様発泡性飲料の場合、酵母を接種する前の発酵原料液又は前記発酵工程中の発酵液に、アルコール類を添加する以外は、一般的な発酵ビール様発泡性飲料と同様にして製造できる。一般的な発酵ビール様発泡性飲料は、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
【0028】
まず、仕込工程(発酵原料液調製工程)として、穀物原料及び糖質原料からなる群より選択される1種以上から発酵原料液を調製する。具体的には、まず、穀物原料と糖質原料の少なくともいずれかと原料水とを含む混合物を調製して加温し、穀物原料等の澱粉質を糖化させる。糖液の原料としては、穀物原料のみを用いてもよく、糖質原料のみを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられる。穀物原料は、穀物シロップ、穀物エキス等として用いることもできるが、粉砕処理して得られる穀物粉砕物として用いることが好ましい。穀物類の粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。本発明においては、用いられる穀物粉砕物は、麦芽粉砕物であることが好ましい。麦芽粉砕物を用いることにより、ビールらしさがよりはっきりとした発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであればよい。また、本発明において用いられる穀物原料としては、1種類の穀物原料であってもよく、複数種類の穀物原料を混合したものであってもよい。例えば、主原料として麦芽粉砕物を、副原料として米やトウモロコシの粉砕物を用いてもよい。糖質原料としては、例えば、液糖等の糖類が挙げられる。
【0029】
当該混合物には、穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、ホップ、食物繊維、酵母エキス、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。
【0030】
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35〜70℃で20〜90分間保持する等、常法により行うことができる。
【0031】
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液に替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
【0032】
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。特にホップは、煮沸処理前又は煮沸処理中に添加することが好ましい。ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)及び煮沸条件は、適宜決定することができる。
【0033】
仕込工程後、発酵工程前に、調製された煮汁から、沈殿により生じたタンパク質等の粕を除去することが好ましい。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50〜80℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
【0034】
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
【0035】
発酵原料液にアルコール類を添加して混合した後に酵母を接種してもよく、酵母を接種した発酵原料液にアルコール類を添加して混合してもよい。また、発酵原料液に酵母を接種して発酵を開始後に、アルコール類を添加してもよい。更に、前述のように、発酵原料液の一部にアルコール類を混合し、残りの発酵原料液に酵母を接種し、両者を混合して発酵を開始させてもよい。
【0036】
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、目的の発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が4〜5μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。
【0037】
本発明に係る発酵飲料の製造方法においては、アルコール類を発酵完了前に添加することにより、発酵原料の使用量が少ない場合であっても、アルコール濃度の高い発酵飲料を製造することができる。つまり、本発明に係る発酵飲料の製造方法を用いることにより、発酵原料の使用量を、最終製品中の糖質濃度が0.5g/100mL以下となるように抑えた場合であっても、アルコール濃度が4〜10容量%と充分に高い発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、もろみの比重値は、密度比重計「DA-510」(京都電子工業株式会社製)により、液の温度20℃で測定した。また、発酵液の浮遊酵母数は、粒子計数分析装置「CDA-1000B」(シスメックス株式会社製)により測定した。
【0039】
[参考例1]
麦芽を原料としない発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0040】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表に記載の量添加し、最終容量を表に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0041】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0042】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル1−1〜1−3)。
【0043】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表2に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル1−4〜1−6)。
【0044】
各サンプルに対して、アルコール刺激の強さとまろやかさについて、13名の専門パネルによりブラインドでの官能評価を実施した。評価は、3段階評価(○:アルコール刺激が弱い/まろやかである、△:アルコール刺激がやや強い/ややまろやかである、×:アルコール刺激が強い/まろやかではない)にて行った。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表1及び2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
この結果、サンプル1−1と1−4、サンプル1−2と1−5、サンプル1−3と1−6を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0048】
[参考例2]
麦芽を原料とした発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0049】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、仕込槽にて、麦芽粉砕物20kgを100Lの温水に溶解させた後、65℃に保持した。この麦芽粉砕物液に、グルコアミラーゼ(天野エンザイム株式会社製)を10g添加して65℃で30分間保持し、次いで76℃に温度を上昇させることにより、麦汁を調製した。得られた麦汁は、麦汁ろ過槽にて濾過した後、煮沸釜に投入した。
麦汁を投入した煮沸釜に、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400g、及び温水を投入して溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に、90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表3に記載の量添加し、最終容量を表3に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0050】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0051】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル2−1〜2−3)。
【0052】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、仕込槽にて、麦芽粉砕物20kgを、100Lの温水に溶解させた後、65℃に保持した。この麦芽粉砕物液に、グルコアミラーゼ(天野エンザイム株式会社製)を10g添加して65℃で30分間保持し、次いで76℃に温度を上昇させることにより、麦汁を調製した。得られた麦汁は、麦汁濾過槽にて濾過した。濾過した麦汁は、煮沸釜に投入した。
麦汁が投入された煮沸釜に、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400g、及び温水を投入して溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表4に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル2−4〜2−6)。
【0053】
各サンプルに対して、参考例1と同様にして、アルコール刺激の強さとまろやかさについて官能評価を実施した。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表3及び4に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
この結果、サンプル2−1と2−4、サンプル2−2と2−5を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0057】
[参考例3]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0058】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表5に記載の量添加し、最終容量を表5に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0059】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0060】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル3−1〜3−3)。
【0061】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを熱交換器で冷却したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表6に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル3−4〜3−6)。
【0062】
各サンプルに対して、参考例1と同様にして、アルコール刺激の強さとまろやかさについて官能評価を実施した。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表5及び6に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
この結果、サンプル3−1と3−4、サンプル3−2と3−5、サンプル3−3と3−6を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0066】
[参考例4]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを発酵工程において添加せず、かつ発酵中にガスバブリングしなかった場合と、原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングしなかった場合と、原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングした場合とにおいて、発酵効率を調べた。
【0067】
原料用アルコールを発酵工程において添加せず、かつ発酵中にガスバブリングせずに製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。発酵終了後、得られた発酵液を貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル4−1)。
【0068】
原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングせずに製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)9.65kg(65.5容量%)を添加し、最終容量が110Lとなるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。発酵終了後、得られた発酵液を貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル4−2)。なお、もろみBに添加した原料用アルコールにより、最終製品のアルコール濃度は3.5容量%増大した。
【0069】
原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングして製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵開始から、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した以外は、サンプル4−2と同様にして製造した(サンプル4−3)。
【0070】
各サンプルの発酵液の外観エキス濃度(質量%)と、発酵終了時の真正エキス(質量%)の測定結果を表7及び8に示す。原料用アルコールを添加し、ガスバブリングを実施して発酵させたサンプル4−3は、発酵終了時の真正エキスが、原料用アルコールを添加していないサンプル4−1よりもやや低く、発酵工程においてアルコールを外添しているにもかかわらず、アルコールを外添していない従来の発酵工程と同様に充分に発酵することがわかった。これに対して、原料用アルコールを添加し、ガスバブリングを行わなかったサンプル4−2では、発酵開始から5日目以降には外観エキスの減少が小さく、発酵があまり進まなかった。実際に、サンプル4−2の発酵終了時の真正エキス濃度はサンプル4−1や4−2と比べて明らかに高く、発酵が不充分であった。これらの結果から、発酵中に発酵液にガスをバブリングすることにより、アルコール類を添加した発酵液においても、充分に発酵を進行させられることが明らかとなった。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
[実施例1]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを発酵開始後の発酵液に添加した後、発酵中にガスバブリングした場合の発酵効率を調べた。
【0074】
具体的には、発酵開始から2日目の発酵液に、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)9.65kg(65.5容量%)を添加し、さらに発酵開始から5日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した以外は、参考例4のサンプル4−1と同様にして発酵ビール様発泡性飲料を製造した(サンプル5−1)。参考例4のサンプル4−2と同様に、サンプル5−1において添加された原料用アルコールにより、最終製品のアルコール濃度は3.5容量%増大した。
【0075】
発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。サンプル5−1の測定結果を、参考例4のサンプル4−2の測定結果と共に表9に示す。なお、サンプル5−1では、発酵1.5日目に、浮遊酵母数と外観エキスを測定するためのサンプリングを行った後に原料用アルコールを添加し、発酵5日目に、浮遊酵母数と外観エキスを測定するためのサンプリングを行った後にガスバブリングを開始した。
【0076】
【表9】
【0077】
ガスバブリングを行わなかったサンプル4−2では、発酵開始から6日目には浮遊酵母数が5.7×10cells/mLであり、発酵液中の酵母は発酵ができない程度にまで沈降してしまっていた。また、最終製品のアルコール濃度が3.5容量%増大させる量の原料用アルコールを添加しているため、充分に発酵が進行した場合には発酵終了時点の外観エキスは−0.1質量%程度にならなければならないが、サンプル4−2の発酵終了時点の発酵液の外観エキスは0.91質量%であり、発酵によるエキスの消費が不充分であった。これに対して、サンプル5−1においては、ガスバブリングを行っている状態でサンプリングした発酵開始から6及び7日目では、浮遊酵母数がガスバブリング開始前である発酵開始から3〜5日目よりも多く、ガスバブリングにより酵母の沈降が抑制されていることが確認できた。また、サンプル5−1では、発酵中の発酵液に原料用アルコールを添加したにも関わらず、外観エキスは−0.3質量%にまで低下しており、発酵終了時の真正エキスは2.86質量%であり、いずれもサンプル4−3とほぼ同程度であった。これらの結果から、アルコール類を添加した後の発酵液に対してガスバブリングを行うことにより、充分に発酵を進行させられることが明らかとなった。