【実施例】
【0038】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、もろみの比重値は、密度比重計「DA-510」(京都電子工業株式会社製)により、液の温度20℃で測定した。また、発酵液の浮遊酵母数は、粒子計数分析装置「CDA-1000B」(シスメックス株式会社製)により測定した。
【0039】
[参考例1]
麦芽を原料としない発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0040】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表
1に記載の量添加し、最終容量を表
1に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0041】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0042】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル1−1〜1−3)。
【0043】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表2に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル1−4〜1−6)。
【0044】
各サンプルに対して、アルコール刺激の強さとまろやかさについて、13名の専門パネルによりブラインドでの官能評価を実施した。評価は、3段階評価(○:アルコール刺激が弱い/まろやかである、△:アルコール刺激がやや強い/ややまろやかである、×:アルコール刺激が強い/まろやかではない)にて行った。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表1及び2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
この結果、サンプル1−1と1−4、サンプル1−2と1−5、サンプル1−3と1−6を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0048】
[参考例2]
麦芽を原料とした発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0049】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、仕込槽にて、麦芽粉砕物20kgを100Lの温水に溶解させた後、65℃に保持した。この麦芽粉砕物液に、グルコアミラーゼ(天野エンザイム株式会社製)を10g添加して65℃で30分間保持し、次いで76℃に温度を上昇させることにより、麦汁を調製した。得られた麦汁は、麦汁ろ過槽にて濾過した後、煮沸釜に投入した。
麦汁を投入した煮沸釜に、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400g、及び温水を投入して溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に、90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表3に記載の量添加し、最終容量を表3に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0050】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0051】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル2−1〜2−3)。
【0052】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、仕込槽にて、麦芽粉砕物20kgを、100Lの温水に溶解させた後、65℃に保持した。この麦芽粉砕物液に、グルコアミラーゼ(天野エンザイム株式会社製)を10g添加して65℃で30分間保持し、次いで76℃に温度を上昇させることにより、麦汁を調製した。得られた麦汁は、麦汁濾過槽にて濾過した。濾過した麦汁は、煮沸釜に投入した。
麦汁が投入された煮沸釜に、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400g、及び温水を投入して溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表4に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル2−4〜2−6)。
【0053】
各サンプルに対して、参考例1と同様にして、アルコール刺激の強さとまろやかさについて官能評価を実施した。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表3及び4に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
この結果、サンプル2−1と2−4、サンプル2−2と2−5を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0057】
[参考例3]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを、発酵工程前の発酵原料液に混合した場合と、発酵工程後に混合した場合について、アルコール刺激の強さとまろやかさの官能評価を行った。添加する原料用アルコールは、発酵ビール様発泡性飲料のアルコール濃度が5、6、又は7容量%となるように調整した。
【0058】
発酵工程前の発酵原料液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を表5に記載の量添加し、最終容量を表5に記載の量となるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
【0059】
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。つまり、発酵液の浮遊酵母数のピークは3日目であった。そこで、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した。
【0060】
発酵終了後、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル3−1〜3−3)。
【0061】
発酵完了後の発酵液に原料用アルコールを混合した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを熱交換器で冷却したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定したところ、発酵開始から3日目までは浮遊酵母数は増大したが、4日目から減少し始めた。発酵終了後、得られた発酵液に原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)を、最終製品中のアルコール濃度が表6に記載の濃度となるように混合した後、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル3−4〜3−6)。
【0062】
各サンプルに対して、参考例1と同様にして、アルコール刺激の強さとまろやかさについて官能評価を実施した。評価結果を、最終製品中のアルコール濃度(容量%)と共に表5及び6に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
この結果、サンプル3−1と3−4、サンプル3−2と3−5、サンプル3−3と3−6を比較すると、いずれも最終製品のアルコール濃度は同じであるにもかかわらず、原料用アルコールを発酵後に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が強く、味のバランスが悪かったのに対して、原料用アルコールを発酵前に添加したサンプルでは、アルコールの刺激感が弱く、まろやかであった。
【0066】
[参考例4]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを発酵工程において添加せず、かつ発酵中にガスバブリングしなかった場合と、原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングしなかった場合と、原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングした場合とにおいて、発酵効率を調べた。
【0067】
原料用アルコールを発酵工程において添加せず、かつ発酵中にガスバブリングせずに製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、もろみAとは別個に調製した発酵原料を含むもろみBと混合して、得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみAとした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。すなわち、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸して得た液汁を、もろみBとした。もろみBは、熱交換器で冷却した後、発酵タンクに投入した。
もろみAともろみBの両方を発酵タンクに投入した後、発酵を開始した。発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。発酵終了後、得られた発酵液を貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル4−1)。
【0068】
原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングせずに製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵原料を含むもろみAに酵母を接種した後、発酵原料と原料用アルコールを含むもろみBと混合して得られた混合物を発酵させて調製した。
もろみAは、以下のようにして調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg、大豆たんぱく(不二製油株式会社製)600g、及び酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)400gを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加して100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁に90Lになるように湯を入れて調整したものを、もろみA(比重値:1.041)とした。もろみAは、熱交換器で冷却した後、酵母を添加して発酵タンクに投入した。
もろみAとは別に、以下のようにしてもろみBを調製した。まず、液糖(昭和産業株式会社製)13kg及び食物繊維(松谷化学工業株式会社製)5kgを温水に溶解させた後、ホップペレット(アメリカ、ナゲット種)20gを添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸した液汁を熱交換器で冷却した後、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)9.65kg(65.5容量%)を添加し、最終容量が110Lとなるように調整したものを、もろみB(比重値:1.041)とし、発酵タンクに投入した。
発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。発酵終了後、得られた発酵液を貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、珪藻土濾過することにより、発酵ビール様発泡性飲料を得た(サンプル4−2)。なお、もろみBに添加した原料用アルコールにより、最終製品のアルコール濃度は3.5容量%増大した。
【0069】
原料用アルコールを発酵工程前の発酵原料液に混合し、かつ発酵中にガスバブリングして製造した発酵ビール様発泡性飲料は、発酵開始から、浮遊酵母数の減少傾向が確認された4日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した以外は、サンプル4−2と同様にして製造した(サンプル4−3)。
【0070】
各サンプルの発酵液の外観エキス濃度(質量%)と、発酵終了時の真正エキス(質量%)の測定結果を表7及び8に示す。原料用アルコールを添加し、ガスバブリングを実施して発酵させたサンプル4−3は、発酵終了時の真正エキスが、原料用アルコールを添加していないサンプル4−1よりもやや低く、発酵工程においてアルコールを外添しているにもかかわらず、アルコールを外添していない従来の発酵工程と同様に充分に発酵することがわかった。これに対して、原料用アルコールを添加し、ガスバブリングを行わなかったサンプル4−2では、発酵開始から5日目以降には外観エキスの減少が小さく、発酵があまり進まなかった。実際に、サンプル4−2の発酵終了時の真正エキス濃度はサンプル4−1や4−2と比べて明らかに高く、発酵が不充分であった。これらの結果から、発酵中に発酵液にガスをバブリングすることにより、アルコール類を添加した発酵液においても、充分に発酵を進行させられることが明らかとなった。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
[実施例1]
麦芽を原料とせず、糖質濃度が0.5g/100mL以下である発酵ビール様発泡性飲料において、原料用アルコールを発酵開始後の発酵液に添加した後、発酵中にガスバブリングした場合の発酵効率を調べた。
【0074】
具体的には、発酵開始から2日目の発酵液に、原料用アルコール(第一アルコール株式会社製)9.65kg(65.5容量%)を添加し、さらに発酵開始から5日目から48時間、発酵液に炭酸ガスを1NL/分で流してバブリングを実施した以外は、参考例4のサンプル4−1と同様にして発酵ビール様発泡性飲料を製造した(サンプル5−1)。参考例4のサンプル4−2と同様に、サンプル5−1において添加された原料用アルコールにより、最終製品のアルコール濃度は3.5容量%増大した。
【0075】
発酵開始から、発酵液の浮遊酵母数と外観エキス(質量%)を1日ごとに経時的に測定した。サンプル5−1の測定結果を、参考例4のサンプル4−2の測定結果と共に表9に示す。なお、サンプル5−1では、発酵1.5日目に、浮遊酵母数と外観エキスを測定するためのサンプリングを行った後に原料用アルコールを添加し、発酵5日目に、浮遊酵母数と外観エキスを測定するためのサンプリングを行った後にガスバブリングを開始した。
【0076】
【表9】
【0077】
ガスバブリングを行わなかったサンプル4−2では、発酵開始から6日目には浮遊酵母数が5.7×10
6cells/mLであり、発酵液中の酵母は発酵ができない程度にまで沈降してしまっていた。また、最終製品のアルコール濃度が3.5容量%増大させる量の原料用アルコールを添加しているため、充分に発酵が進行した場合には発酵終了時点の外観エキスは−0.1質量%程度にならなければならないが、サンプル4−2の発酵終了時点の発酵液の外観エキスは0.91質量%であり、発酵によるエキスの消費が不充分であった。これに対して、サンプル5−1においては、ガスバブリングを行っている状態でサンプリングした発酵開始から6及び7日目では、浮遊酵母数がガスバブリング開始前である発酵開始から3〜5日目よりも多く、ガスバブリングにより酵母の沈降が抑制されていることが確認できた。また、サンプル5−1では、発酵中の発酵液に原料用アルコールを添加したにも関わらず、外観エキスは−0.3質量%にまで低下しており、発酵終了時の真正エキスは2.86質量%であり、いずれもサンプル4−3とほぼ同程度であった。これらの結果から、アルコール類を添加した後の発酵液に対してガスバブリングを行うことにより、充分に発酵を進行させられることが明らかとなった。