(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記踵部成形材は、前記踵支持面の高くなった前記両側部分及び前記後端部分から上方に連続して設けられた、踵周壁部を備えている請求項1〜3のいずれか1項記載の室内用履物。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば靴業界において、人は、少し踵が上がっていた方が歩き易いとの知見が得られている。また、人は、靴を履いていない時の方が転倒し易いといった研究結果も出されている。さらに、屋外において使用する靴については、そのヒール部分の構造に関して、歩き易さや運動のし易さ等を考慮して、種々の技術が開発されている。
【0003】
一方、人は、屋外においてのみならず、室内においても、歩行する動作や、座った状態から立ち上がる動作等、足の裏を床面等の平坦な歩行面に着底させて、種々の活動を行っている。
【0004】
室内において、人は、室内用の履物として、例えば靴下を履いたまま、或いはスリッパ等を着用して、種々の活動を行うのが一般的である。靴下については、主に足に靴を着用して歩行等する際の利便性等を鑑みて、踵相当部分に改良を加えた靴下や、靴下に装着して用いるインソール部材等が種々開発されている(例えば、特許文献1〜11参照)。
【0005】
ここで、特許文献1の靴下用踵部中敷きは、ゴム等のクッション材で形成されており、靴下に装着されて、靴の着脱に関係なく、身長を高く見せるようにしたものである。特許文献2の足底密着型インソールは、足底に直接密着した状態で装着し、その上から靴下やストッキングをはいて過ごすことにより、保湿や保温、さらには衝撃緩和、防臭効果等が得られるようにしたものである。特許文献3の靴下は、衝撃を緩和すべき部分に粘弾性体からなる衝撃吸収素材体を固定したものである。特許文献4の靴下は、踵部の外側又は内側を中心に片側に傾斜するヒールパットを組み込むことで、歩行時の安定性を図るようにしたものである。
【0006】
また、特許文献5の靴下は、底部の内面に左右方向に傾斜するパッドを設けることで、下肢の形態の異常を矯正し、また内半捻挫を防止できるようにしたものである。特許文献6の靴下は、踵当り部及び中央当り部の内側部から外側端部にかけて、漸次傾斜角度を大きく形成した弾力性を有するひざ痛防止体を装着したものである。特許文献7の靴下用踵持ち上げ具は、つま先部の後方に位置する前部から、土踏まず相当部及び後部の踵相当部へと漸次厚みを増した形状を備えており、靴下の内側底面に装着されることで、靴を脱いだ状態でも高い身長を維持できるようにしたものである。特許文献8の足用衣類は、アキレス腱に圧縮性の刺激を付与するアキレス腱サポート部を設けると共に、例えばスキー靴やハイウエストタイプのスポーツシューズのような、踵受け入れのための凹みが形成された靴の踵部に配置されて、踵の位置を高くすることで、踵受け入れのための凹みと踵とを合致させる踵サポート部を設けたものである。また許文献9のポケット付きのソックスは、ソックスの踵部分に衝撃吸収材を収納するためのポケットを形成したものである。
【0007】
さらに、特許文献10の踵骨保持構造を備えたソックスは、踵骨と他の足根骨グループとの連結を強め、接地時等における踵骨の動揺を抑制できるようにしたものである。特許文献11のくつ下は、かかと覆い部が、くつ下の足指覆い部から離れて形成されてくつ下を履いている状態で足の踵部を入れるための第1かかと挿入部と、第1かかと挿入部に比べて足指覆い部寄りの位置に形成されてくつ下を履いている状態で足の踵部を入れるための第2かかと挿入部とを有していることで、高齢者や身体の不自由な人等の使用者が横になっている時であっても、足のつま先を上げた状態を維持でき、使用者が起き上がって歩き出そうとする時に、うまく踏み出すことができるようにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る室内用履物10は、例えば人の足50の全体を覆って装着される靴下として用いられる。本実施形態の室内用履物(靴下)10は、靴やサンダルやスリッパ等を履くことなく、足50に直接装着したままの状態で室内において歩行等する際に、足50の踵51が、つま先52よりも高い位置に保持されるようにヒールアップさせることで、室内の歩行面に接地するつま先52と、高くなった踵51との間で、いわゆる縦アーチが効率良く形成されるようにして、室内において歩行等の動作をより安定した状態で行なえるようにする機能を備えている。
【0016】
そして、本実施形態の室内用履物10は、人の足50の少なくとも踵51(本実施形態では、足50の全体)を覆って装着して用いる靴下であって、人の足に装着された状態を保持する、好ましくは伸縮性を備える布材を用いて形成される装着本体部11と、装着本体部11の踵相当部分に一体として取り付けられた踵部成形材12とを含んで構成される。踵部成形材12は、
図2及び
図3(a)〜(c)に示すように、JISK6253−3(2012年制定)によるゴム硬度がJIS-A硬度で5〜25の弾性成形品となっており、且つ室内の平坦な歩行面に当接させる平坦な当接面領域13を下面側に備えると共に、踵51の下面部分を載置させて支持する踵支持面14を上面側に備えている。当接面領域13は、人の足50の踵骨における踵領域の歩行面への投影面積よりも大きな面積を備えており、踵支持面14は、足50の幅方向の両側部分14a及び足の長さ方向の後端部分14bが高くなった凹状湾曲面を備えると共に、足50の土踏まず53の全体を覆わないように、爪先52側の端縁部14cが、足の長さ方向における土踏まず53の中間部よりも踵相当部分側に配置されるように設けられている。且つ当接面領域13の爪先側の端縁部13aにおける、当該端縁部13aから踵支持面14までの高さh1が、5〜15mmとなっている。
【0017】
また、本実施形態の室内用履物10では、靴下本体である装着本体部11の踵相当部分に、
図1に示すように、好ましくは伸縮性を備える布材からなるポケット形成用の当て布15を、例えば外側から重ねるようにして縫い付けることで、踵部成形材12を装着するためのポケット部15aが形成されている。踵部成形材12は、このポケット部15aに装着されることで、装着本体部11の踵相当部分に着脱可能に一体として取り付けられている。
【0018】
さらに、本実施形態では、踵部成形材12は、
図2及び
図3(a)〜(c)に示すように、上面側が下面側に陥没する凹状湾曲面となっている踵支持面14の高くなった両側部分14a及び後端部分14bから、上方に連続して設けられた、踵周壁部16を備えている。踵周壁部16は、踵支持面14の両側部分14aから各々滑らかに連続して立設する両側の側部周壁面部16aと、後端部分14bから滑らかに連続して立設する後部周壁面部16bとを含んで構成される。これらの側部周壁面部16a及び後部周壁面部16bは、周方向にも連続して設けられていることで、踵周壁部16は、これの内周面を踵支持面14の凹状湾曲面と滑らかに連続させて、踵支持面14と共に踵装着凹部17を形成する。これによって、踵装着凹部17は、踵51の外周面に沿った形状に湾曲する内周面を備えることになると共に、踝に近接する高さ位置まで踵51を装着できるように設けられている。
【0019】
なお、踵支持面14の両側部分14a及び後端部分14bから上方に連続して、踵周壁部16を設けておく必要は必ずしも無いが(
図5参照)、踵周壁部16を設けておくことにより、より安定した状態で、踵51の下面部分を踵支持面14の凹状湾曲面に支持させることが可能になる。
【0020】
本実施形態では、室内用履物である靴下10を構成する装着本体部11は、靴下を形成するための布材として知られる、編み物、織物、不織布、圧縮繊維等の、公知の各種の布材を用いて、所望の靴下の形状となるように容易に形成することができる。また、装着本体部11は、好ましくは伸縮性を有する編み物、織物、圧縮繊維、不織布から選ばれる布材を用いて形成することができ、より好ましくは編み物を用いて形成することができる。これによって、足50へのフィット感を向上させることが可能になると共に、踵51を、踵部成形材12の踵支持面14により安定した状態で密着させることが可能になる。このような伸縮性を有する布材を構成する繊維としては、綿、毛、絹、麻等の天然繊維、レーヨン、ナイロン(登録商標)、ポリウレタン、アクリルから選ばれる合成繊維等、及びこれらから選ばれる1種または2種以上の、公知の各種の繊維を用いることができる。なお、靴下10は、装着時に装着者の足指部分に位置する領域は、浮き指を防止し、立位安定や歩行容易性の観点から、布材から構成されていることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態では、上述のように、靴下本体である装着本体部11の踵相当部分には、好ましくは装着本体部11と同様の布材からなる、ポケット形成用の当て布15が重ねて縫い付けられていることで、踵部成形材12を装着するためのポケット部15aが形成されている。すなわち、本実施形態では、当て布15は、
図1に示すように、装着本体部11における足裏相当部分の長さ方向中央部分から、踵相当部分を超えて、足首相当部分に至る領域に沿った形状を備えるように形成されると共に、踵51の後端部に相当する部分には、踵部成形材12をポケット部15aに着脱可能に装着させるための、装着開口15bが設けられている。また、当て布15は、装着本体部11における足裏相当部分のつま先52側の側辺部15cを除いて、これの周縁部分を装着本体部11に縫い付けることによって、装着本体部11に取り付けられている。これらによって、当て布15と装着本体部11との間には、踵部成形材12を装着するためのポケット部15aが形成される。形成されたポケット部15aには、踵部成形材12が、装着開口15bを介して内部に挿入されて、当接面領域13の後端部分を装着開口15bから外側に臨ませた状態で、着脱可能に装着される。
【0022】
なお、踵部成形材12は、靴下本体である装着本体部11の踵相当部分に、着脱可能に一体として取り付けられている必要は必ずしも無く、例えば
図4に示すように、踵部成形材12は、装着本体部11の踵相当部分の外周面や内周面に、直接縫い付けたり貼り付けたりすることによって、一体として取り付けておくこともできる。踵部成形材12が、装着本体部11の踵相当部分に着脱可能に取り付けられていることにより、装着本体部11を洗濯等する際の取り扱いが容易になる。
【0023】
装着本体部11と共に室内用履物10を構成する踵部成形材12は、本実施形態では、好ましくはポリウレタン、発泡スチレン、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等の発泡合成樹脂、発泡ゴムから選ばれる1又は2以上の発泡樹脂又は発泡ゴムの金型成形品、あるいは発泡樹脂又は発泡ゴムをカットした加工品となっており、これらの発泡樹脂あるいは発泡ゴムの混合体でもよいし、多層に形成されていてもよい。なお、踵部成形材12は、JISK6253−3(2012年制定)によるゴム硬度がJIS-A硬度で5〜25の硬さを備えている。踵部成形材12は、
図2及び
図3(a)〜(c)に示すように、上面側に、足50の踵51の下面部分を載置させて支持する踵支持面14を有していると共に、下面側に、室内の平坦な歩行面に当接させる平坦な当接面領域13を有している。
【0024】
ここで、踵部成形材12は、踵の左右の安定性を確保しながら、接地感触を踵皮膚に伝えて、歩行状態を踵から全身にフィードバックさせ易くする観点から、ゴム硬度がJIS-A硬度で5以上の硬さを備えていることが好ましく、10以上の硬さを備えていることがより好ましく、15以上の硬さを備えていることがさらに好ましい。また、踵部成形材12は、足の歩行時の変形に追随させる観点、及び足50の踵51への密着性と良好な履き心地の観点から、ゴム硬度がJIS-A硬度で25以下の硬さを備えていることが好ましく、23以下の硬さを備えていることがより好ましく、22以下の硬さを備えていることがさらに好ましい。また、同様の観点から、踵部成形材12は、ゴム硬度がJIS-A硬度で5〜25であり、より好ましくは10〜25であり、さらに好ましくは15〜25であり、より一層好ましくは15〜23である。
【0025】
本実施形態では、踵部成形材12の平坦な当接面領域13は、踵支持面14に踵51の下面部分が載置された際に、踵51の踵骨の直下部分の領域に配置されるように設けられている。当接面領域13は、好ましくは4方の角部が湾曲形状に面取りされていることが好ましい。当接面領域13は、後側縁部(土踏まず側とは反対側の縁部)が踵51の後側縁部の形状に沿った円弧形状となっている平面形状を有しており(
図3(b)参照)、踵骨の踵領域における平坦な歩行面への投影面積よりも、大きな面積を備えている。当接面領域13が、踵骨の踵領域における歩行面への投影面積よりも大きな面積を備えていることにより、踵51の部分において立位時、歩行時、及び立ち上がり動作時の安定性を確保することができる。
【0026】
また、本実施形態では、当接面領域13の踵骨の最下部相当領域Pにおける幅方向の最大幅b1であって、踵骨の幅方向の最大幅の1.3〜2倍となっていることが好ましく、1.4〜1.8倍となっていることがより好ましい。これらによって、踵51の部分において、立位時、歩行時、及び立ち上がり動作時の左右に揺れる横揺れによる不安定性を改善し、しかも動作の邪魔になることを防止することができる。当接面領域13の足の長さ方向の最大幅b2は、足骨の長さ方向の全長に対して20〜35%となっていることが好ましく、21〜33%となっていることがより好ましく、22〜30%となっていることがさらに好ましい。これらによって、足のアーチ構造を理想的な状態に誘導することが可能になり、例えば高齢化によって低下するバランス能力の向上を図ることができるとともに、踵骨を支える圧力が適度となるように保持して、快適な装着感を得ることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、室内用履物10が成人男性用の靴下である場合には、当接面領域13の踵骨の最下部相当領域Pにおける幅方向の最大幅b1は、4〜10cmとなっていることが好ましく、4.5〜7cmとなっていることがより好ましく、5〜6cmとなっていることがさらに好ましい。室内用履物10が成人女性用の靴下である場合には、当接面領域13の踵骨の最下部相当領域Pにおける幅方向の最大幅b1は、4〜9cmとなっていることが好ましく、4〜6.5cmとなっていることがより好ましく、4.5〜5.5cmとなっていることがさらに好ましい。また、室内用履物10が成人男性用の靴下である場合には、当接面領域13の足の長さ方向の最大幅b2は、4〜9cmとなっていることが好ましく、4〜6cmとなっていることがより好ましく、4〜5cmとなっていることがさらに好ましい。室内用履物10が成人女性用の靴下である場合には、当接面領域13の足の長さ方向の最大幅b2は、4〜8cmとなっていることが好ましく、4〜6cmとなっていることがより好ましく、4〜5cmとなっていることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態では、足50の踵(
図11参照)51の下面部分を載置させて支持する踵支持面14は、上述のように、足50の幅方向の両側部分14a及び足の長さ方向の後端部分14bが高くなった凹状湾曲面となっている。すなわち、踵支持面14は、踵51の下面部分の凸状の湾曲形状に沿った形状の、凹状の湾曲形状を有している。また、踵支持面14は、土踏まず(
図11参照)53の全体を覆わないように、爪先52(
図11参照)側の端縁部14cが、足50の長さ方向における土踏まず53の中間部よりも踵相当部分側に配置されるように設けられており、好ましくは踵相当部部分より土踏まず53側に10mm以内の領域に配置されるように設けられており、より好ましくは踵相当部分と土踏まず53との間に配置されるように設けられている。
【0029】
踵支持面14における足50の幅方向の両側部分14aが高くなっていることにより、踵51の最下面部と比較して触感に優れる踵51の両側の側部下面部分を、踵支持面14に接触させ易くして、踵部成形材12の存在や形状を把握し易くすることで、使用者に大きな安定感と安心感を与えることが可能になると共に、踵部成形材12によって高くなった踵51と、歩行面に接地したつま先52との間で、いわゆる内側縦アーチや外側縦アーチが、より効果的に形成されるようにすることが可能になる。踵支持面14における足の長さ方向の後端部分14bが高くなっていることにより、踵支持面14に載置された踵51のフット感や安定感を向上させることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、踵支持面14は、当接面領域13の爪先側の端縁部13aよりも、さらに爪先側に張り出した、爪先側張出し部14dを備えている。踵支持面14の爪先側張出し部14dの端縁部14cは、土踏まず53の全体を覆わないように、土踏まず53の中間部に配置される。踵部成形材12における、踵支持面14の爪先側張出し部14dの下面側の部分は、当接面領域13の爪先側の端縁部13aと、爪先側張出し部14dの爪先側の端縁部14cとの間で、テーパ状に斜めに傾斜する傾斜面部13bとなっている。
【0031】
踵支持面14が、当接面領域13の爪先側の端縁部13aよりもさらに爪先側に張り出した、爪先側張出し部14dを備えていることにより、踵部成形材12に対する、土踏まず53を含めた足裏の全体のフット感や安定感を向上させることが可能になる。踵支持面14の爪先52側の端縁部14cが、土踏まず53の全体を覆わないように、足50の長さ方向における土踏まず53の中間部に配置されることにより、歩行時に足裏が屈曲する位置となる、足の先端部分の中足骨と趾骨との関節部分であるMP関節が、歩行面に接触するのを阻害しないようにすることが可能になる。またこれによって、足の中足骨による横アーチが形成されるのを阻害しないようにするが可能になるので、足裏の内側部分に沿って形成される上述の内側縦アーチと、足裏の外側部分に沿って形成される上述の外側縦アーチと、中足骨による横アーチとによって、お椀を逆さにしたようなドーム構造が形成されて、歩行時や立ち上がる際の安定感を、一層向上させることが可能になる。
【0032】
さらに、本実施形態では、当接面領域13の爪先側の端縁部13aにおける、当該端縁部13aから踵支持面14までの高さh1が、5〜15mmとなっている。これによって、内側縦アーチと外側縦アーチとによる足の縦アーチ構造が再構築され易くなって、踵51の側面の圧力感覚が鋭敏になり、足指(足趾)の歩行面への設置を促すことが可能になると共に、継続して使用することにより、転倒やねんざのリスクを減らすことが可能になる。
【0033】
また、当接面領域13の爪先側の端縁部13aから踵支持面14までの高さh1は、足の縦アーチ構造の再構築の観点及び足指の歩行面への設置を促す観点から、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、8mm以上のであることがさらに好ましい。当接面領域13の爪先側の端縁部13aから踵支持面14までの高さh1は、立位時の安定性、歩行時の安定性ならびに履き心地の観点から、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましい。そして、上述した観点から、当接面領域13の爪先側の端縁部13aから踵支持面14までの高さh1は、5〜15mmであることが好ましく、7〜15mmであることがより好ましく、8〜12mmであることがさらに好ましい。
【0034】
そして、上述の構成を備える本実施形態の室内用履物10によれば、室内において、人が歩行する動作や、座った状態から立ち上がる動作を効果的に補助して、これらの動作をスムーズに且つ安定した状態で行えるようにすることが可能になる。
【0035】
すなわち、本実施形態の室内用履物10によれば、装着本体部11の踵相当部分に適度な硬さの踵部成形材12が一体として取り付けられており、踵部成形材12は、平坦な当接面領域13を下面側に備えると共に、踵支持面14を上面側に備えており、当接面領域13は、踵骨における踵領域の投影面積よりも大きな面積を備えており、踵支持面14は、両側部分14a及び後端部分14bが高くなった凹状湾曲面を備えると共に、爪先52側の端縁部14cが土踏まず53の中間部よりも踵相当部分側に配置されるように設けられており、且つ当接面領域13の爪先側の端縁部13aにおける踵支持面14までの高さh1が、5〜15mmとなっている。
【0036】
これによって、本実施形態によれば、室内用履物10を使用者が足50に装着して、室内で歩行したり、座った状態から立ち上がったりした際に、足50の踵51が、つま先52よりも高い位置に保持されてヒールアップされることで、歩行面に接地するつま先52と、高くなった踵51との間で、いわゆる内側縦アーチや外側縦アーチが効率良く形成されることになると共に、中足骨による横アーチが容易に形成されることになるので、これらのアーチによるドーム構造によって、使用者が歩行する動作や、座った状態から立ち上がる動作を効果的に補助して、これらの動作をスムーズに且つ安定した状態で行えるようにすることが可能になる。
【0037】
またこれによって、使用者が、例えば扁平足等になりがちな、足腰の機能が低下した高齢者等である場合でも、これらの高齢者が室内において歩行したり立ち上がったりする動作を効果的に補助して、これらの動作をよりスムーズに且つ安定した状態で行えるようにすることによって、高齢者がより安心して健康的に暮らせるようにすることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、踵部成形材は、合成樹脂製の成形品である必要は必ずしも無く、所定の硬さを備える、木製や金属製等の成形品であっても良い。踵部成形材の平坦な当接面領域は、矩形状以外のその他の平面形状を有していても良い。踵部成形材12は、例えば
図5に示すような、踵支持面14の両側部分14a及び後端部分14bから上方に連続する、踵周壁部を備えていないものであっても良く、例えば
図6に示すような、踵部成形材12の当接面領域13の後端部角部分を、湾曲形状に面取りしたものであっても良い。室内用履物の装着本体部は、足の全体を覆って装着される靴下である必要は必ずしも無く、例えば足首部分を露出させた状態で踝部分までを覆ういわゆる踝ソックスや、爪先部分を露出させたソックスや、サポーター形式のもの等であっても良い。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により、本発明の室内用履物をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例の記載によって何ら制限されるものではない。
【0040】
〔実施例1〜3の踵部成形材、及び比較例1、2の踵部成形材〕
発泡プラスチック削り出し型を作り、それより石膏型を作り、市販の時間硬化タイプのウレタン樹脂(JISK6253−3(2012年制定)によるゴム硬度がJIS-A硬度で20)を用いて、実施例1〜3の踵部成形材、及び比較例1、2の踵部成形材を成形した。
図2及び
図3(a)〜(c)に示す上記実施形態と同様の構成を備える踵部成形材を、実施例1の踵部成形材とした。
図5に示す他の形態と同様の構成を備える踵部成形材を、実施例2の踵部成形材とした。
図6に示す他の形態と同様の構成を備える踵部成形材を、実施例3の踵部成形材とした。
【0041】
踵部成形材の当接面領域の後端部角部分に加えて、両側の側部角部分もまた、湾曲形状に面取りすることで、当接面領域が、実施例1〜3及び後述する比較例2よりも小さな面積とすること以外は、
図6に示す他の形態と同様の構成を備える、
図9(a)〜(c)に示す踵部成形材を、比較例1の踵部成形材とした。踵支持面が凹状湾曲面ではなく、平坦な面となっていること、及び踵周壁部が側部周壁面部を備えていないこと以外は、
図2及び
図3(a)〜(c)に示す上記実施形態と同様の構成を備える、
図10(a)、(b)に示す踵部成形材を、比較例2の踵部成形材とした。
【0042】
実施例1〜3、及び比較例2の踵部成形材の当接面領域13は、後述する閉眼片脚立ち試験を行う成人男性被験者の、踵骨の最下部相当領域Pにおける幅方向の最大幅b1が、踵骨の幅方向の最大幅の1.43倍、5cmとし、足の長さ方向の最大幅b2は、6cm(足骨の全長に対して27%)とし、当接面領域13は踵骨における踵領域の歩行面への投影面積よりも大きな面積とした。比較例1の踵部成形材の当接面領域13の踵骨の最下部相当領域Pにおける幅方向の最大幅b1は、成人男性被験者の踵骨の幅方向の最大幅の1.06倍(3.7cm)とし、当接面領域13は踵骨における踵領域の歩行面への投影面積よりやや小さい面積とした。なお、比較例1の最大幅b2は4cm(足骨全長に対して18%)である。
【0043】
上記実施形態と同様の装着本体部の踵相当部分に、実施例1〜3の踵部成形材、及び比較例1、2の踵部成形材を各々取り付けた室内用履物(靴下)を足に装着した状態で、以下のような閉眼片脚立ち試験を行い、軌跡長を測定することによって、立位安定化効果を検証した。
【0044】
〔閉眼片脚立ち試験〕
図7に示すように、3箇所の角部分に垂直荷重センサーが取り付けられた、略三角形の平面形状を有する重心動揺計(商品名「グラビコーダ G−5500、ANIMA社製)に、踵部成形材を取り付けた室内用履物を足に装着した被験者が、目を閉じた状態で、重心動揺計の試験板の中心に片足を配置して10秒間、片足立ちし、その間に動揺する重心の位置の軌跡を、垂直荷重センサーを介して計測する。計測した
図8に示す総軌跡長(cm)やX軌跡長(cm)やY軌跡長(cm)から、立位安定化効果を評価する。試験は、後述する表1、表2、表3の試験項目について各々同じ日に行った。また、試験は、4名の成人男性被験者が順番に室内用履物を足に装着し、1分間の休みをとりながら右足及び左足について各々行い、4名×2(右足と左足)の平均値で立位安定化効果を評価した。
【0045】
〔評価結果〕
踵部の高さをかえたことによる評価結果を表1に示す。踵部の形状をかえたことによる評価結果を表2に示す。踵部の材質をかえたことによる評価結果を表3に示す。踵部の高さに関しては、実施例1の踵部成形材を使用して、高さが1cmと、高さが3cmの2種類について評価した。踵部の形状に関しては、実施例1〜3及び比較例1,2の踵部成形剤を使用して評価した。踵部の材質に関しては、実施例1の踵部成形材を使用して、硬質樹脂(アクリル樹脂)と、A硬度20のウレタン樹脂と、A硬度20のウレタン樹脂について評価した。各々の試験項目について、踵部成形材が取り付けられていない靴下を足に装着した際の立位安定化効果も、比較例0として評価した。形状及び材質についての評価結果では、総軌跡長に加えて、左右方向であるX軌跡長(
図8参照)、及び前後方向であるY軌跡長(
図8参照)についても評価した。なお、表1、表3において、踵部成形材が取り付けられていない靴下を足に装着した際の測定結果を基準とした、相対評価の数値(cm)を表示している。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
高さに関する表1の評価結果によれば、総軌跡長が短い方が安定することから、即ち、靴下のみ(高さ0cm)に対する総軌跡長の差のマイナスの絶対値が大きいほど安定することから、高さが1cmの踵部成形材を用いて踵を上げた状態とすることによって、最も安定することが判明する。形状に関する表1の評価結果によれば、本発明に係る実施例1〜3の踵部成形材を用いることで、立位安定化効果が改善することが判明する。硬さに関する表3の評価結果によれば、ゴム硬度がJIS-A硬度20の硬さのウレタン発泡体の踵部成形材を使用した場合に、10秒間当たりの総軌跡長、X軌跡長、Y軌跡長について最も良好な結果が得られることが判明する。