特許第6608222号(P6608222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608222
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/02 20060101AFI20191111BHJP
   A45D 24/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   A45D19/02 B
   A45D24/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-164560(P2015-164560)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2017-42190(P2017-42190A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 洋憲
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−051401(JP,U)
【文献】 実開平01−128619(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0169789(US,A1)
【文献】 特開平08−228821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/02
A45D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ部、摘持式の把持部、櫛部、スライス棒の各部材を同一平面上に備える毛髪化粧料塗布具であって、
先端側から後端側へ向かって前記各部材を前記の順で直列に配設し、ブラシ部のブラシ毛を部材直列方向(L方向)の先端側方向(Lf方向)へ向けて植毛し、櫛部の櫛歯をL方向に対する略直角方向(T方向)へ向けて形成し、スライス棒をL方向の後端側方向(Lr方向)へ向けて突出させたことを特徴とする毛髪化粧料塗布具。
【請求項2】
前記毛髪化粧料塗布具が、櫛歯と他部材の位置関係に関して次の(1)及び/又は(2)に該当することを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料塗布具。
(1)前記スライス棒が前記櫛部の櫛歯の頂端とT方向の略同一の高さ位置にある。
(2)前記把持部が前記櫛部の櫛歯の頂端とT方向の略同一の高さ位置を超えない。
【請求項3】
前記ブラシ部がブラシ毛を集束して植毛させた複数ないし多数のブラシ毛束を備え、各ブラシ毛束が短毛部と長毛部により形成される段差構造を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料塗布具。
【請求項4】
前記各部材を一体的に形成し、又は各部材の一部又は全部を別体に形成して組付け式に連結していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の毛髪化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤等の各種毛髪化粧料を頭髪等の毛髪に塗布するための毛髪化粧料塗布具に関する。以下において、毛髪化粧料塗布具を単に「塗布具」とも言う。本発明の塗布具は、毛髪化粧料のユーザーが自宅で自らの毛髪(頭髪)に毛髪化粧料の塗布を行う、いわゆる「セルフ」の使用の際に、特に好ましく利用されるが、このような利用形態に限定されず、例えば美容師等が顧客に施術する場合等にも好ましく使用することができる。
【背景技術】
【0002】
毛髪化粧料が、流動性の比較的低いクリーム状やジェル状等の粘液状の剤型である場合、その商品包装には、毛髪化粧料の各剤を充填したチューブ容器と共に、セルフ用の毛髪化粧料塗布具もしばしば収容される。
【0003】
このような毛髪化粧料塗布具は、通常、ブラシ部、櫛部及び把持部を備え、好ましくは更にスライス棒を備える。ブラシ部は、ブラシ毛に毛髪化粧料を載せて、毛髪に塗布するための部材である。櫛部は、ブラシ部で毛髪に塗布した毛髪化粧料を梳いて毛髪全体に均一に分布させるための部材である。把持部は塗布具を手で持つための部材であり、手で握り持つ握持式の把持部と、手で摘み持つ摘持式の把持部がある。スライス棒は、毛髪を分けて毛髪化粧料を塗布すべき部位を露出させる、いわゆる「ブロッキング」のための部材である。
【0004】
次に、一般のユーザーがセルフで用いる塗布具は、美容師が美容院等で用いる塗布具とは異なり、毛髪化粧料の商品包装に収容し易い形状、サイズであることが要求されるという制約がある。そのため塗布具を構成する各部材は全体として平坦な薄い板状に(即ち、同一平面上に)形成されることが多い。また、その板状の塗布具のサイズが余りに長くないことも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−71020
【特許文献2】特開2004−154426
【0006】
上記の特許文献1及び特許文献2は、刷毛部(ブラシ部)、櫛部及び握板部を同一平面上に備えた染毛用櫛又は染毛用具を開示する。握板部は手で握持できる長さを持つ薄板状のハンドル部である。握板部先端の略左右対称の部位には刷毛部と櫛部をそれぞれ形成している。従って、刷毛部のブラシ毛の植毛方向と、櫛部の櫛歯の突出方向とは、互いにほぼ反対方向である。
【0007】
なお、特許文献1及び特許文献2のいずれにも、握板部の後端部にスライス部(スライス棒)を一体的に形成し、あるいは着脱可能に備える任意的な実施形態を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、セルフ用の塗布具では自らの頭髪を操作の対象とするため、視覚上のハンディキャップは鏡を見ることでカバーできるとしても、以下に述べるように塗布具操作上の制約や面倒が多い。従ってセルフ用の塗布具ではこれらの点を十分に配慮して、操作性に優れた構成とすることが求められる。
【0009】
例えば、ヒトの手や腕は身体の前面側ではかなり自由に動作できるが、頭部を含む身体の背面側では可動性が大きく制約される。更に、例えばヒトの手首は二の腕に対して大きな屈曲動作を行えるが、二の腕に対する捩じり回転動作はほとんどできない。そこで、ヒトの手首を捩じり方向へ回転させたい場合、通常は、手首を二の腕ごと、あるいは腕ごと捩じり回転させるが、このような捩じり回転は頭部を含む身体の背面側では大きく制約される。
【0010】
上記特許文献1、2が開示する染毛用櫛(染毛用具)では、手で握持できる長さの握板部を持つので、毛髪化粧料の包装箱に収容するというサイズ上の制約からは、握板部、刷毛部及び櫛部を直列的に形成するという設計の許容度は低い。従って、握板部の先端に刷毛部と櫛部を左右対称に形成し、刷毛部のブラシ毛と櫛部の櫛歯が互いに反対方向に向く構成となっている。
【0011】
そのため、刷毛部を用いて毛髪化粧料を毛髪に塗布する際と、その毛髪を櫛部を用いて梳く際では、毛髪に対して染毛用櫛を握板部まわりに180°反転させる必要がある。前記のように、自らの頭髪に対しする操作において、このような反転を手首の回転動作だけで、又は腕ごと捩じり回転で行うことは簡単ではないから、反転を要する都度、他一方の手も用いて握板部を半回転させ、握り直すという面倒を要求される。
次に、特許文献1、2の染毛用櫛(染毛用具)では、握板部の先端に刷毛部と櫛部とを左右対称に形成しており、しかもセルフの操作中は塗布具が自らの視界外にある。そのため、上記の握り直しを繰返して行う際には鏡で常に視認していないと、塗布具の握り方向を失念したり間違えたりして、毛髪化粧料の塗布操作に支障を来たす恐れがある。
【0012】
以上の点に加え、毛髪化粧料を塗布する際の一般的問題であるが、塗布具の操作中に毛髪化粧料が手に付着する可能性がある。この可能性はセルフによる毛髪化粧料の塗布の際に特に大きい。
【0013】
そこで本発明は、使用者の手首の可動性を有効に利用することで優れた操作性が得られ、操作中に毛髪化粧料が手に付着し難い毛髪化粧料塗布具、特に、セルフ用の毛髪化粧料塗布具を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、ブラシ部、摘持式の把持部、櫛部、スライス棒を同一平面上に備える毛髪化粧料塗布具であって、
先端側から後端側へ向かって前記各部材を前記の順で直列に配設し、ブラシ部のブラシ毛を部材直列方向(L方向)の先端側方向(Lf方向)へ向けて植毛し、櫛部の櫛歯をL方向に対する略直角方向(T方向)へ向けて形成し、スライス棒をL方向の後端側方向(Lr方向)へ向けて突出させた、毛髪化粧料塗布具である。
【0015】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明は、前記第1発明に係る毛髪化粧料塗布具が、櫛歯と他部材の位置関に関して次の(1)及び/又は(2)に該当する、毛髪化粧料塗布具である。
(1)前記スライス棒が前記櫛部の櫛歯の頂端と略同一の高さ位置にある。
(2)前記把持部が前記櫛部の櫛歯の頂端と略同一の高さ位置を超えない。
【0016】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明は、前記第1発明又は第2発明に係る毛髪化粧料塗布具において、ブラシ部がブラシ毛を集束して植毛させた複数ないし多数のブラシ毛束を備え、各ブラシ毛束が短毛部と長毛部により形成される段差構造を備える、毛髪化粧料塗布具である。
【0017】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る毛髪化粧料塗布具において、各部材を一体的に形成し、又は各部材の一部又は全部を別体に形成して組付け式に連結している、毛髪化粧料塗布具である。
【発明の効果】
【0018】
(第1発明の効果)
第1発明の塗布具はブラシ部、把持部、櫛部、スライス棒を同一平面上に備える薄い板状の形態を有するので、毛髪化粧料の商品包装にコンパクトに収容できる。又、把持部が手で摘み持つ摘持式であって、手で握り持つための7〜10cm程度の長さを要する握持式の把持部ではないため、各部材を直列に配設しても全体として過剰な長さにはならず、この意味でも毛髪化粧料の商品包装にコンパクトに収容できる。
【0019】
次に、この塗布具ではLf方向にブラシ毛を植毛し、これとは逆方向であるLr方向にスライス棒を突出させ、これらとは略直角のT方向に櫛歯を形成している。そして把持部は摘持式であり、親指とこれに対向する人差し指、中指等を用いて手先で摘み持つ。従って、第1発明の塗布具は、これを摘まむ手先を基点として、同一平面上の互いに略直角な三方向に、ブラシと、櫛と、スライス棒がそれぞれ指向する状態で把持される。
【0020】
そのため、自由度の大きな手首の屈曲動作を主体とし、これに一定限度内の手首の(腕ごとの)捩じり回転等の動作を加味することによりブラシ部、櫛部及びスライス棒に関する塗布具の多様な操作を容易に実行でき、優れた操作性が得られる。即ち第1発明の塗布具では、腕に対して手首を大きく回転動作させるような操作は要求されず、操作中に塗布具を持ち直す必要もなく、更に、塗布具の持ち方に関連して刷毛部と櫛部との使用を混同する恐れもない。
【0021】
(第2発明の効果)
第2発明の塗布具は、(1)の構成に該当する場合、スライス棒が櫛歯の頂端と略同一の高さ位置にあるため、スライス棒でブロッキングを行った毛髪部分を、そのまま連続的に櫛部で梳くことができ、効率的である。従来の毛髪化粧料塗布具では、櫛部とスライス棒が離れた部位に形成される場合が多いので、そもそも、このような効果は着想されない。
【0022】
また、(2)の構成に該当する場合、把持部が櫛部に対して食み出さないので、櫛部によって毛髪を梳く際、把持部が毛髪に当接しない。従って、染料成分やアルカリ剤等を含有し得る毛髪化粧料が把持部に付着し難く、ひいては使用者の手に付着し難い。
【0023】
(第3発明の効果)
第3発明の塗布具は、ブラシ部の各ブラシ毛束が短毛部と長毛部の段差構造を備え、つまり毛束が太い部分と細くなる部分とを備えるので、毛髪の根本にも、毛束が細くなる部分によって毛髪化粧料を確実にたっぷりと塗布することができる。
【0024】
(第4発明の効果)
第4発明の塗布具は、ブラシ部、把持部、櫛部、スライス棒の各部材を一体的に形成し、又は各部材の一部又は全部を別体に形成して組付け式に連結しているので、一体的に形成している場合には製造コスト面で有利であり、別体に形成して組付け式に連結している場合には組付け前の包装箱への収容に有利である。塗布具を繰返し使用する場合にも、非使用時に組付けを解けば、適宜な収納スペースへの収納に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(a)は実施例1に係る塗布具の正面図を示し、図1(b)はそのX−X線断面図を示す。
図2】実施例1に係る塗布具の使用時の右手での摘持状態を示す。
図3】実施例1に係るブラシ部の詳細を示す。
図4】実施例2に係る塗布具の要部の正面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 塗布具
2 ブラシ部
3 把持部
4 櫛部
5 スライス棒
6 植毛台座
7 ブラシ毛束
7a 短毛部
7b 長毛部
8 突条
9 櫛歯
10 フレーム
10a 基底部
10b 先端側の立ち上げ部
10c 後端側の立ち上げ部
11 右手
12 塗布具
13 把持部
14 櫛部
15 櫛歯
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態をその最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は、以下の実施形態によって限定されない。
【0028】
〔毛髪化粧料塗布具〕
本発明の塗布具は、ブラシ部、摘持式の把持部、櫛部、スライス棒を備える。但し、本発明について前記「発明の効果」欄で述べた各種の効果を阻害しない限りにおいて、更に他の任意の部材を備えていてもよい。
【0029】
本発明の塗布具を構成する上記の各部材は、一体的に形成されていても良いし、各部材の一部又は全部を別体に形成して組付け式に連結していても良い。このような組付け式には、組付けた後に当該組付けを解除できる着脱方式と、組付けを解除できない方式とが含まれる。部材の組付けのための連結部の構成は限定されず、例えば一方の部材に設けたネジと他方の部材に設けたネジ孔を螺合する構成、一方の部材から突出させたフックを他方の部材に設けたフック孔に着脱可能に嵌込させる構成、等の各種の連結機構を利用できる。
【0030】
塗布具又はその各部材の構成材料は限定されず、例えばプラスチック製、金属製、木製等のものが可能であるが、コスト、成形性等の点からプラスチック製、特に溶融材料の型成形が容易な種類のプラスチック製が好ましい。ブラシ毛束のブラシ毛は型成形が困難であって、植毛が通常である。ブラシ毛として動/植物性の硬質繊維も使用できるが、コスト、加工性等の点からプラスチック製の繊維が好ましい。
【0031】
次に本発明の塗布具は、ブラシ部、摘持式の把持部、櫛部、スライス棒の各部材を同一平面上に備える。「同一平面上に備える」とは、各部材が完全に同一平面に沿って位置し、あるいは、ほぼ同一平面に沿って位置することをいう。包装箱への収容性を考慮すると、上記の同一平面上において各部材を薄く形成していることが好ましく、具体的には最も厚い部分が20mm以下、特に15mmであることが好ましい。
【0032】
又、本発明の塗布具は、ブラシ部、摘持式の把持部、櫛部、スライス棒の各部材をその順で直列に配設したものである。「各部材を直列に配設する」とは、各部材が部材の直列方向であるL方向の仮想直線上に完全に完全に揃って配列し、あるいはほぼ完全に揃って配列していることをいう。従って、一部の部材がL方向の仮想直線からある程度(例えば10〜15mm程度)のズレを伴う位置に配列していても、「直列に配設」に該当する。
【0033】
更に各部材を直列に配設した本発明の塗布具は、包装箱への収容性の点から、過剰に長いものは好ましくない。実際には包装箱のサイズとの関係もあるが、例えば、25cm程度までのもの、特に22cm程度までのものが好ましい。
【0034】
〔ブラシ部〕
ブラシ部は部材直列方向であるL方向の先端に位置し、かつ、L方向の先端側方向(Lf方向)へ向けてブラシ毛を植毛している。植毛の方向がL方向に対して例えば10°程度の角度までズレていても構わない。ブラシ部は、ブラシ毛を集束して植毛させた複数ないし多数のブラシ毛束を備える。これらのブラシ毛束は、好ましくは2〜6mm程度の太さを持ち、かつ数mm程度の相互間隔を以て規則的に配列することが好ましい。配列の形態として正方配列や、いわゆる千鳥状配列を例示できる。
【0035】
ブラシ毛束は、例えば、8〜30mm程度の範囲内で毛足の長さを揃えたブラシ毛により構成しても良く、8〜30mm程度の範囲内で毛足の長さをランダムにバラ付かせたブラシ毛により構成しても良い。しかし好ましくは、短いブラシ毛を揃えて植毛した短毛部と、毛足の長いブラシ毛を揃えて植毛した長毛部により形成される段差構造を備える。この段差構造を備える場合に、長毛部の毛足の長さは8〜30mm程度の範囲内とし、短毛部の毛足の長さはそれより数mm程度短くする。
【0036】
ブラシ部における段差構造の形成方向は限定されず、例えばブラシ毛束の中央部を長毛部としてその周囲を短毛部が取り囲む形態でも良く、ブラシ毛束の任意方向の半分の部分を長毛部とし他の半分の部分を短毛部としても良い。
【0037】
〔摘持式の把持部〕
把持部は直列に配設した各部材においてブラシ部と櫛部の間に位置し、摘持式の把持部として構成されるため、握持式の把持部のような7〜10cmに達する長さを要しない。具体的にはL方向に5cm程度の長さがあれば十分である。但し、この把持部をあえて握り持つことで毛髪化粧料の塗布操作を行うことを妨げない。
【0038】
把持部は基本的に薄板状に形成されるが、容易・確実な摘持を行うために、L方向にも、これに対する直角方向にも、3〜5cm程度の広さを持つことが好ましい。また、薄板状の把持部の表・裏面に適宜なパターンで滑り止め用の凹凸形状を形成することも好ましい。把持部を構成する薄板の周縁部に対して内側部分を相対的により薄く形成し、この内側部分に上記の突条を形成することも好ましい。
次に述べる櫛部との関係において、把持部のT方向の広さは、櫛部の櫛歯の頂端よりも高い位置に達しても構わないが、前記「第2発明の効果」の欄で述べた理由により、櫛歯の頂端と略同一の高さ位置に止まり、又はそれよりも低い高さ位置に止まることが好ましい。
【0039】
ここに「略同一の高さ位置」とは、例えば、同一の高さ位置から高低差が数mm程度の範囲内の高さ位置をいう。この高さ位置の範囲は、「第2発明の効果」の欄で前記したように、「毛髪化粧料が把持部又は使用者の手に付着し難い」という効果を得るための構成であり、塗布具の使用者の熟練度や注意度にも関係するものであるから、「正確に同一の高さ位置」に限定すべき理由もないし、「略同一の高さ位置」の範囲を一律に数値限定することも困難である。
【0040】
〔櫛部〕
櫛部は直列に配設した各部材において把持部とスライス棒の間に位置し、L方向に対する略直角方向(T方向)へ向けて突出する複数ないし多数の櫛歯を備えている。
【0041】
ここに「略直角方向」とは、例えば、正確な直角方向から前後15°程度の角度の幅を持つ範囲(即ち、75°〜105°の角度範囲内の方向)をいう。この角度範囲は、「第1発明の効果」の欄で前記したように自由度の大きな手首の屈曲動作との関係で規定され、個人差を伴うものであるから、「正確に直角方向」に限定すべき理由もないし、「略直角方向」の角度範囲を一律に数値限定することも困難である。
櫛部の櫛歯は、一定の相互間隔を以て正方配列やいわゆる千鳥状配列により規則的に配列することが好ましい。
【0042】
櫛部における櫛歯を形成した部分の幅(L方向の長さ)は限定されないが、例えば40〜120mm程度の範囲内とすることが好ましい。この幅が過剰に大きいと、包装箱への収容性に問題が出る恐れがある。この幅が過剰に小さいと、毛髪を梳く作業に支障が出る恐れがある。
櫛歯の高さは限定されないが、例えば10〜20mm程度の範囲内とすることが好ましい。
【0043】
〔スライス棒〕
スライス棒は部材直列方向であるL方向の後端に位置し、上記の櫛部の後端からL方向の後端側方向(Lr方向)へ向けて突出している先細り形状の棒状部材である。スライス棒の長さは限定されないが、例えば30〜60mm程度の範囲内とすることが好ましい。
櫛部の後端からのスライス棒の突出部位は限定されないが、前記「第2発明の効果」の欄で述べた理由により、櫛部の櫛歯の頂端と略同一の高さ位置からLr方向へ向けて突出していることが好ましい。
【0044】
ここに「略同一の高さ位置」とは、例えば、同一の高さ位置から高低差が数mm程度の範囲内の高さ位置をいう。この高さ位置の範囲は、「第2発明の効果」の欄で前記したように、「スライス棒でブロッキングを行った毛髪部分を、そのまま連続的に櫛部で梳くことができる」という効果を得るための構成であり、塗布具の使用者の熟練度にも関係するものであるから、「正確に同一の高さ位置」に限定すべき理由もないし、「略同一の高さ位置」の範囲を一律に数値限定することも困難である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
【0046】
〔実施例1〕
図1(a)に示すように、本実施例の塗布具1はプラスチックの一体成形品であって、図の左側である先端側から図の右側である後端側へ向かって順に、ブラシ部2、把持部3、櫛部4、スライス棒5の各部材を直列の状態で備えている。ブラシ部2の植毛台座6にはブラシ毛束7,7・・・を植毛している。
【0047】
ブラシ部2の先端からスライス棒5の後端までの全長は約22.5cm、であり、横幅は、最も広いブラシ部2及び把持部3において約4cmである。
【0048】
図1(b)から分かるように、塗布具1の各部材は同一平面上において薄板状に形成され、ブラシ部2以外の各部材の厚さは約4mmであるが、ブラシ部2の植毛台座6は幾分厚くて、約9mmである。植毛台座6を把持部3よりも相対的に厚く形成することにより、ブラシ毛束7,7・・・に載せた毛髪化粧料が塗布具1の把持部3を摘持する指に付着し難くなる。
【0049】
ブラシ部2には、図1(a)及び図1(b)から理解されるように、2列のブラシ毛束7,7・・・が正方配列により植毛されている。ブラシ毛束7は、図示の便宜上、毛束の外形のみで表現しているが、図3に示すように、実際には個々のブラシ毛束7は多数のブラシ毛の集合体であり、かつ、毛足の長さが18mmの長毛部7bと、毛足の長さが14mmの短毛部7aにより形成される段差構造を備える。
【0050】
ブラシ部2と櫛部4の間に位置する把持部3は、摘持式(手の指で摘み持つ方式)として構成されているため、横幅が前記のように約4cm、長さが6cm弱であって、握持式(手で握り持つ方式)の塗布具に要求される長さを備えていない。
薄板状の把持部3においては、その周縁部よりも、内側部分を相対的に更に薄く形成しており、この内側部分において、屈曲したパターン形状を持つ複数の突条8,8・・・(図では太い実線で示す)を形成している。この突条8,8・・・により、把持部3を摘み持つ手指が滑り難くなる。
【0051】
櫛部4において、内側に櫛歯9,9・・・を形成したフレーム10におけるL方向の基底部10aは約8cmの長さを持ち、フレーム10の先端側の立上げ部10bは把持部3の後端側の端部と一体化し、後端側の立上げ部10cからはスライス棒5を突出させている。フレーム10の基底部10aからは多数の櫛歯9,9・・・を、L方向に対する直角方向(図1(a)の上方)へ突出させている。
【0052】
櫛歯9,9・・・は、図1(b)から分かるように千鳥状に配列されており、太さは約2mmであり、フレーム10における基底部10aからの高さは15mmである。フレーム10における前記先端側の立上げ部10b及び後端側の立上げ部10cの基底部10aからの高さも、同じく15mmである。従って、櫛部4の立上げ部10b及び10cと櫛歯9,9・・・の高さは揃っている。
【0053】
上記のようにフレーム10の後端側の立上げ部10cからはスライス棒5を突出させている。スライス棒5の突出方向はL方向と平行であり、突出部位は櫛部4の立上げ部10b及び10cと櫛歯9,9・・・の高さとほぼ同じ高さ位置である。
【0054】
次に、本実施例に係る塗布具1の使用状態を説明する。図2には、使用時において右利きの使用者が右手11の親指と、人指し指及び中指とで塗布具1を摘持した状態の一例を示す。
この状態において塗布具1を摘まむ右手11の手先を基点として、同一平面上の互いに略直角な三方向に、ブラシ2と、櫛4と、スライス棒5がそれぞれ指向する状態で摘持される。
【0055】
そのため、自由度の大きな手首の前後方向への屈曲動作を主体とし、これに一定限度内の手首の(腕ごとの)捩じり回転等の動作を加味することによりブラシ部、櫛部及びスライス棒に関する塗布具の多様な操作を容易に実行することができ、優れた操作性が得られる。手で握持する方式の塗布具では、このように優れた操作性は得られない。又、仮に手で摘持する方式の塗布具があったとしても、本実施例のような構成を備えない場合には、上記の優れた操作性は得られない。
【0056】
〔実施例2〕
図4に示す実施例2の塗布具12は、第2発明の(2)として前記したように、把持部13が櫛部14の櫛歯15の頂端と略同一の高さ位置を超えないという構成が実施例1と異なる。実施例2によれば、把持部13が櫛部14に対して食み出さないので、櫛部14によって毛髪を梳く際、把持部13が毛髪に当接しない。従って、染料成分やアルカリ剤等を含有し得る毛髪化粧料が把持部13に付着し難く、ひいては使用者の手に付着し難い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、使用者の手首の可動性を有効に利用することで優れた操作性が得られ、操作中に毛髪化粧料が手に付着し難いセルフ用の毛髪化粧料塗布具が提供される。
図1
図2
図3
図4