(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外筒部を有する固定側ハウジングと、内筒部を有して前記固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、絶縁フィルムに被覆された帯状導体を有して前記外筒部と前記内筒部との間に存する環状空間内に巻回された第1フラットケーブル及び第2フラットケーブルからなる一対のフラットケーブルと、前記一対のフラットケーブルそれぞれの端部が接続されたリードブロックと、を備え、
前記リードブロックが、前記帯状導体に接続される接続端子と、当該接続端子を保持する絶縁性基体と、を有し、前記一対のフラットケーブルにそれぞれ前記帯状導体が幅広に1条だけ担持されている回転コネクタであって、
前記絶縁性基体には、前記第1フラットケーブル又は前記第2フラットケーブルを挿入可能なスリット部が設けられており、前記一対のフラットケーブルの長手方向の端部を幅方向の片側が切除されて残余の幅狭部の先端側に前記帯状導体を露出させた形状となし、前記一対のフラットケーブルの前記帯状導体が、一対の前記接続端子に個別に接続されていると共に、前記一対のフラットケーブル同士がいずれか一方の前記幅狭部を他方の前記切除部に配置させた位置関係で上下に重ね合わせてあり、かつ、前記一対のフラットケーブルのうち、下層側となるフラットケーブルの前記切除部に隣接する箇所に折り返し端部が形成されており、当該折り返し端部が前記絶縁性基体の上側から前記スリット部に挿入され、かつ前記折り返し端部の先端が前記スリット部を抜けて前記絶縁性基体の下側から突出しないものであって、
前記スリット部の対向する一対のスリット壁のうち、前記帯状導体が前記接続端子に接続されている場所に近い方のスリット壁には、前記折り返し端部の先端を誘導する逃がし部が設けられている、ことを特徴とする回転コネクタ。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、外筒部を有する固定側ハウジングと、内筒部を有して固定側ハウジングに回動自在に連結された可動側ハウジングと、これら外筒部と内筒部との間に存する環状空間内に巻き締めおよび巻き戻し可能に収納されたフラットケーブルとによって概略構成されており、フラットケーブルの長手方向の両端部はリードブロックに電気的かつ機械的に接続されている。リードブロックは、インサート成形等を用いて絶縁性基体に接続端子を保持させた部品であり、このようなリードブロックが固定側ハウジングの外筒部と可動側ハウジングの内筒部にそれぞれ組み込まれている。
【0003】
フラットケーブルは帯状導体を絶縁フィルムで被覆してなる長尺な可撓性ケーブルであり、このフラットケーブルの長手方向の一端部は環状空間の最外周部から外方へ導出された後、外筒部に組み込まれた所定のリードブロックに接続されている。また、フラットケーブルの長手方向の他端部は環状空間の最内周部から内方へ導出された後、内筒部に組み込まれた別のリードブロックに接続されている。そして、これら各リードブロックは外部回路と電気的に接続されるため、フラットケーブルの長手方向の両端部が外部回路と電気的に接続されることになる。
【0004】
車両のステアリング装置に装備されている回転コネクタにおいて、固定側ハウジングはステアリングコラム側に固定されており、可動側ハウジングはハンドル(ステアリングホイール)側に連結されて一体的に回転する。そして、可動側ハウジングを固定側ハウジングに対して正逆いずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じてフラットケーブルが環状空間内で巻き締めあるいは巻き戻され、いずれの状態においても両ハウジング間の電気的接続がリードブロックの接続端子とフラットケーブルの帯状導体を介して維持されるようになっている。即ち、ハンドル側の電気回路(エアーバッグシステムやホーン回路等)が回転コネクタを介して車体側の電子機器や電源回路等と電気的に接続されているため、ハンドルを正逆回転させても電気信号の伝送に支障をきたすことがない。
【0005】
ところで、近年、ステアリングヒータのように比較的大きな電流を必要とする電気回路をハンドル側に搭載し、こうした電気回路を車体側の電源回路等と電気的に接続させるために、配線抵抗が小さい幅広な帯状導体を有するフラットケーブルを用いた回転コネクタが実用化されている。この種のフラットケーブルは幅広な帯状導体を1条だけしか担持できず、必然的に2枚1組を1回路用として使用することになるが、従来の一般的な回転コネクタでは、1枚のフラットケーブルの長手方向の端部を1つのリードブロックに接続させているため、2枚のフラットケーブルを追加すると計4つのリードブロックを追加する必要があり、それに伴って回転コネクタが大型化してコストが高騰することになる。
【0006】
そこで、長手方向の端部に露出する帯状導体の露出位置を幅方向に片寄らせたフラットケーブルを2枚用意し、これら一対のフラットケーブルを帯状導体の露出位置が互いに異なるように重ね合わせることにより、1つのリードブロックに設けた一対の接続端子に両フラットケーブルの帯状導体を個別に接続できるようにした回転コネクタが開発されている。
【0007】
また、このような構造に加えて、一対のフラットケーブルの長手方向の端部同士の接触を防止するために、一対のフラットケーブルのうち、下層側となるフラットケーブルの先端側を切除して、隣接する箇所に折り返し端部を形成すると共に、この折り返し端部を、絶縁性基体に設けたスリット部に挿入する構造とした回転コネクタが特許文献1に提案されている。特許文献1に開示された回転コネクタ900を
図12に示す。
【0008】
回転コネクタ900では、第1フラットケーブル905及び第2フラットケーブル906の長手方向の端部を幅方向片側が切除されて残余の幅狭部905a、906aの先端側に帯状導体919を露出させた形状となし、これらの帯状導体919が、リードブロック922に設けられた一対の接続端子930に個別に接続される。また、第1及び第2フラットケーブル905、906の長手方向の端部近傍どうしは、一方の幅狭部905a(906a)を他方の切除部906b(905b)に配置させた位置関係で重ね合わせてある。該リードブロック922上で下層側となる第1フラットケーブル905は、切除部905bと隣接する長手方向の端部が上層側となる第2フラットケーブル906の幅狭部906aから離れる向きに折り返してある。そして、この折り返し端部905cが絶縁性基体931に設けられたスリット部931hに挿入されている。
【0009】
このような構成によって、幅広な帯状導体を有する2枚のフラットケーブル同士を1つのリードブロックに容易に接続することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
以下、本発明の回転コネクタ100の実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に、
図1及び
図2を参照して、回転コネクタ100の構成について説明する。
図1は、回転コネクタ100の外観を示す斜視図であり、
図2は、回転コネクタ100の内部の構造を示す斜視図である。尚、本明細書では、特に断りの無い限り、各図面のZ1側を上側、Z2側を下側として説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る回転コネクタ100は、固定側ハウジング60と、この固定側ハウジング60に回動自在に連結された可動側ハウジング70と、を有して構成されている。
【0023】
回転コネクタ100は、車両のステアリング装置に組み付けられて使用され、ステアリングコラム(図示せず)に設置される固定側ハウジング60側の電気回路と、ステアリングホイール(図示せず)に設置される可動側ハウジング70側の電気回路と、の間の電気的接続を、
図2に示す第1フラットケーブル11〜第4フラットケーブル14によって行う。固定側ハウジング60の電気回路と車体側の電源回路とは、外部コネクタ(図示せず)を介して電気的に接続されるように構成されている。尚、本発明の回転コネクタ100が組み付けられている車両のステアリングホイールにはステアリングヒータが組み込まれている。
【0024】
固定側ハウジング60は合成樹脂製の外筒部68と底板部材69とによって概略構成されており、略円筒状の外筒部68がスナップ結合によって略円環状の底板部材69の外周縁部に一体化されている。
【0025】
可動側ハウジング70は合成樹脂製の上部ロータ73と下部ロータ75とからなり、上部ロータ73に下部ロータ75がスナップ結合によって一体化されている。上部ロータ73は、固定側ハウジング60の底板部材69に対向する円環状の天板部73aと、この天板部73aの内側から垂下する内筒部73bと、を有しており、内筒部73bの内径はステアリングシャフト(図示せず)を挿通可能な寸法に設定されている。
【0026】
図2に示すように、固定側ハウジング60と可動側ハウジング70との間、即ち、固定側ハウジング60の外筒部68と可動側ハウジング70の内筒部73bとの間に存する環状空間S1内には、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12からなる一対のフラットケーブル10、第3フラットケーブル13及び第4フラットケーブル14と、が巻回されていると共に、それら第1フラットケーブル11〜第4フラットケーブル14の端部がそれぞれ接続されるリードブロック21(第1リードブロック21)、第2リードブロック22、第3リードブロック23、第4リードブロック24、及び第5リードブロック25、が収納されている。更に、環状空間S1内には、回動自在に配置されたホルダ77及び複数のローラ79が設けられている。
【0027】
第1フラットケーブル11〜第4フラットケーブル14は、外筒部68と内筒部73bとの間に存する環状空間S1内に巻き締め及び巻き戻し可能に収納されている。また、ホルダ77は、合成樹脂の成形品であり、ホルダ77内に設けられた複数の支軸(図示せず)それぞれにローラ79が回動可能に支持されており、第1フラットケーブル11〜第4フラットケーブル14を、所定のローラ79に巻き掛けて対向するガイド壁部(図示せず)との間に通過させることによって、第1フラットケーブル11〜第4フラットケーブル14を巻回させると共に、巻回方向を途中で反転させることもできるように構成されている。
【0028】
第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12からなる一対のフラットケーブル10の長手方向の一端部は、固定側ハウジング60に取り付けられる第1リードブロック21に電気的かつ機械的に接続されており、一対のフラットケーブル10の長手方向の他端部は可動側ハウジング70に取り付けられる第2リードブロック22に電気的かつ機械的に接続されている。第1リードブロック21は、接続端子39aと、当該接続端子39aを保持する絶縁性基体30と、を有して構成されている。第2リードブロック22も同様の構成を有している。尚、第1リードブロック21の構成については、後に詳細に説明する。
【0029】
一方、第3フラットケーブル13の長手方向の一端部は、固定側ハウジング60に取り付けられる第3リードブロック23に電気的かつ機械的に接続されており、第4フラットケーブル14の長手方向の一端部は、固定側ハウジング60に取り付けられる第4リードブロック24に電気的かつ機械的に接続されている。また、第3フラットケーブル13及び第4フラットケーブル14の長手方向の他端部は可動側ハウジング70に取り付けられる第5リードブロック25に電気的かつ機械的に接続されている。
【0030】
本実施形態例において、第3フラットケーブル13はエアバッグシステムやホーン回路等の電気信号を伝送するためのものであり、第4フラットケーブル14は各種ステアリングスイッチの電気信号を伝送するためのものである。一方、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12は、比較的大きな電流を必要とするステアリングヒータに通電するためのものである。
【0031】
次に、
図3乃至
図7を参照して、第1フラットケーブル11、第2フラットケーブル12、及び第1リードブロック21の構造について説明する。
図3は、第1フラットケーブル11の構造を示す斜視図(
図3(a))及び側面模式図(
図3(b))であり、
図4は,第2フラットケーブル12の構造を示す斜視図(
図4(a))及び側面模式図(
図4(b))である。また、
図5は、絶縁性基体30と接続端子39aとが一体化された構造、即ち一対のフラットケーブル10が取り付けられる前の第1リードブロック21の構造を示す斜視図であり、
図6は、一対のフラットケーブル10が取り付けられた第1リードブロック21の構造を示す斜視図であり、
図7は、第1リードブロック21の構造を示す平面図である。
【0032】
第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12は、長尺な可撓性ケーブルであり、
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、帯状導体19を有しており、帯状導体19は、その厚み方向(Y1−Y2方向)の両側を、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の材料によって形成された絶縁フィルム18によって被覆されている。
【0033】
また、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12は、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、それぞれの長手方向(X1−X2方向)の一端側の端部を、幅方向(Z1−Z2方向)の片側が切除された切除部11b及び切除部12bとすると共に、その残余の部分を幅狭部11a及び幅狭部12aとし、その幅狭部11a及び幅狭部12aの先端側に帯状導体19を露出させた形状としている。また、第2リードブロック22に接続される第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12の他端側も、同様の構造を有している。即ち、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12は、絶縁フィルム18に帯状導体19を担持し、その長手方向の両端部を除いて帯状導体19が絶縁フィルム18に被覆されている。
【0034】
尚、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12は、前述したように、比較的大きな電流を必要とするステアリングヒータに通電するためのものであるため、これら第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12の帯状導体19として、配線抵抗を小さくするために幅広に設けられた幅広帯状導体19aとモニタリング等に使用するための通常幅を有する通常幅帯状導体19bとが担持された構造になっている。一方、第3フラットケーブル13及び第4フラットケーブル14は、複数条の帯状導体19を担持した一般的なフラットケーブルである。
【0035】
第1フラットケーブル11の幅狭部11a及び第2フラットケーブル12の幅狭部12aは、それぞれ長尺な1枚のフラットケーブルを所定の切断ラインによって切断することによって形成されたものである。第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12の帯状導体19(19a及び19b)のそれぞれは、後に説明するように、端子用金属板39に溶接によって接続される。第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12それぞれの第1リードブロック21に接続される部分のうち、幅狭部11a又は幅狭部12aの形成されていない部分は、それぞれ幅狭部11a又は幅狭部12aより幅の広い幅広部11c又は幅広部12cとなる。
【0036】
一対のフラットケーブル10のうち、第1フラットケーブル11には、
図3(a)に示すように、幅狭部11aと切除部11bとの間に切れ込み11eが入れられ、この切れ込み11eによって折り返し端部11dが形成される。折り返し端部11dは、
図3(b)に示すように、折り曲げ部11fにおいて、所定の角度αを有して折り曲げられている。
【0037】
一対のフラットケーブル10が取り付けられる前の第1リードブロック21は、
図5に示すように、絶縁性基体30と、接続端子39aを有する4本の端子用金属板39と、で構成されている。絶縁性基体30は、合成樹脂等の絶縁性を有する材料で形成されていると共に、絶縁性基体30と端子用金属板39とはインサート成形によって一体化されている。
【0038】
第1リードブロック21を構成する絶縁性基体30は、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12を取り付け可能に形成されている。絶縁性基体30には、
図5に示すように、絶縁性基体30本体の中央の位置に、第1フラットケーブル11と第2フラットケーブル12、及びそれぞれに接続される端子用金属板39を仕切って配置するための仕切り壁31が立設されている。
【0039】
また、絶縁性基体30本体の上面には、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12の取り付け位置を決定し、これらを容易に取り付け可能とするための複数の位置決め突起32が突設されている。更に、絶縁性基体30には、第1フラットケーブル11又は第2フラットケーブル12(本実施形態では第1フラットケーブル11)を挿入可能なスリット部33が設けられている。尚、スリット部33については、後に、詳細に説明する。
【0040】
端子用金属板39は、それぞれ外部回路に接続される接続端子39aと、第1フラットケーブル11又は第2フラットケーブル12が接続される溶接部39bと、接続端子39aと溶接部39bとを繋ぐ延伸部39cと、を有している。接続端子39aと溶接部39bとの間にある延伸部39cは、絶縁性基体30の合成樹脂等の材料内で、接続端子39aから屈曲を繰り返しながら溶接部39bまで延伸して形成されている。複数(4本)の接続端子39aは、絶縁性基体30の下側(Z2側)の面に沿って並設されている。尚、本実施形態では、4本の接続端子39aのうち、X2側に位置する2本の接続端子39aが第1フラットケーブル11に接続され、X1側に位置する2本の接続端子39aが第2フラットケーブル12に接続されるように構成されている。
【0041】
図6及び
図7に示すように、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12からなる一対のフラットケーブル10は、絶縁性基体30に取り付けられる。一対のフラットケーブル10は、複数の位置決め突起32によって絶縁性基体30本体上で位置決めされる。一対のフラットケーブル10のうち、第1フラットケーブル11が先に取り付けられ、次に第2フラットケーブル12の幅広部12cが第1フラットケーブル11の幅広部11cを覆うようにして絶縁性基体30上に取り付けられる。
【0042】
即ち、一対のフラットケーブル10が絶縁性基体30に取り付けられる際に、第1フラットケーブル11が下層側となり、第2フラットケーブル12が上層側となる。下層側となる第1フラットケーブル11には、前述したように、折り返し端部11dが形成されている。
【0043】
第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12が絶縁性基体30に取り付けられた後に、第1フラットケーブル11の幅狭部11a上で露出している2箇所の帯状導体19(19a及び19b)のそれぞれと、4本の接続端子39aのうちのX2側にある2本の接続端子39aに繋がっている2箇所の溶接部39bそれぞれと、がスポット溶接によって接続される。(
図5及び
図6参照)
【0044】
また、同様に、第2フラットケーブル12の幅狭部12a上で露出している2箇所の帯状導体19(19a及び19b)のそれぞれと、4本の接続端子39aのうちの、X1側にある2本の接続端子39aに繋がっている2箇所の溶接部39bそれぞれと、がスポット溶接によって接続される。(
図5及び
図6参照)
【0045】
即ち、一対のフラットケーブル10の帯状導体19(19a及び19b)が、一対の接続端子39aに個別に接続されていると共に、一対のフラットケーブル10同士がいずれか一方(本実施形態では第1フラットケーブル11)の幅狭部11aを他方(本実施形態では第2フラットケーブル12)の切除部12aに配置させた位置関係で上下に重ね合わせてある状態で、一対のフラットケーブル10、即ち第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12が絶縁性基体30に取り付けられる。このことにより、一対のフラットケーブル10が、第1リードブロック21に電気的かつ機械的に接続される。
【0046】
ところで、一対のフラットケーブル10が絶縁性基体30に取り付けられる際には、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが、第1リードブロック21に設けられたスリット部33に挿入される。
【0047】
図5、
図6及び
図8を参照して、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが、スリット部33に挿入される構造について説明する。
図8は、回転コネクタ100における第1リードブロック21の、
図7に示したA−A線から見た断面模式図である。
【0048】
図8に示すように、第1フラットケーブル11及び第2フラットケーブル12からなる一対のフラットケーブル10のうち、第1フラットケーブル11は、位置決め突起32によってその取り付け位置が決定された後、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが、絶縁性基体30に設けられたスリット部33に挿入される。尚この時、前述したように、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dは、折り曲げ部11fにおいて、絶縁性基体30の厚さ方向(Y1−Y2方向)に対し角度αを有して折り曲げられている。
【0049】
スリット部33は、
図5及び
図6に示すように、絶縁性基体30のZ2側において、絶縁性基体30のX2側の部分と絶縁性基体30の中央部及び仕切り壁31との間に、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの幅方向(Z1−Z2方向)に沿って形成されている。スリット部33のZ1−Z2方向の長さは、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの幅よりも大きく設定されている。また、スリット部33は、
図8に示すように、絶縁性基体30の仕切り壁31のある側(X1側)の第1スリット壁30aと、絶縁性基体30の、第1フラットケーブル11の幅広部11cの位置を決める位置決め突起32のある側(X2側)の第2スリット壁30bと、の間に形成されている。
【0050】
図8に示すように、絶縁性基体30の第1スリット壁30aのY2側には、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの先端を誘導するための逃がし部35が設けられている。逃がし部35は、スリット部33の一部であり、スリット部33に連続した空間として形成されている。更に、逃がし部35を形成している絶縁性基体30には、挿入された第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが当接する押さえ部37である押さえ面37aが設けられている。押さえ面37aは、絶縁性基体30の厚さ方向(Y1−Y2方向)に対して角度βを有して形成されている。
【0051】
従って、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dは、絶縁性基体30の厚さ方向に対して角度αを有して折り曲げられている状態でスリット部33に挿入された後に、折り返し端部11dの先端がスリット部33に設けられた逃がし部35に誘導され、押さえ面37aに当接した状態でスリット部33内に収まる。その後、第1フラットケーブル11に第2フラットケーブル12が重ねられて取付けられ、固定される。
【0052】
尚、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの折り曲げ部11fは、第1フラットケーブル11に負荷が掛からないように、第2スリット壁30bより所定距離だけX1側に位置している。尚、折り曲げ部11fを第2スリット壁30bよりX1側に位置させる代わりに、当該第2スリット壁30bの折り曲げ部11fに近接する角にカット面を設けるようにしても良い。
【0053】
第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの先端がスリット部33に設けられた逃がし部35に誘導されるため、第1フラットケーブル11が浮き上がることなく、安定して固定される。また、絶縁性基体30の押さえ面37aに折り返し端部11dの面が当接するため、第1フラットケーブル11をより容易に安定させることができる。
【0054】
上述した角度αは、45°以上で80°以下が望ましい。更に、上述した角度βは、角度αとほぼ同一の角度に設定することが望ましい。尚、本実施形態では、第2スリット壁30bが絶縁性基体30の厚さ方向(Y1−Y2方向)に沿って形成されているが、当該第2スリット壁30bが、所定の角度を有して、傾斜して形成されていても良い。
【0055】
また、上述した逃がし部35及び押さえ面37aは、絶縁性基体30の裏面まで連続して形成されている。そのため、逃がし部35及び押さえ面37aを形成するための金型にスライドコアを必要としないので、絶縁性基体30の金型費を抑えることができる。
【0056】
次に、
図9乃至
図11を参照して、本発明の第1変形例の回転コネクタ110、第2変形例の回転コネクタ120、及び第3変形例の回転コネクタ130の構造について説明する。
図9は、第1変形例の回転コネクタ110におけるリードブロック41の断面模式図であり、
図10は、第2変形例の回転コネクタ120におけるリードブロック46の断面模式図であり、
図11は、第3変形例の回転コネクタ130におけるリードブロック51の断面模式図である。尚、回転コネクタ110、回転コネクタ120、及び回転コネクタ130は、回転コネクタ100に対して、それぞれの第1リードブロックにおける絶縁性基体の形状が異なっているだけである。そのため、絶縁性基体の形状及びその効果以外については、説明を省略する。また、各第1リードブロック及び各絶縁性基体以外には、回転コネクタ100に付与した符号をそのまま使用する。
【0057】
最初に、第1変形例の回転コネクタ110におけるリードブロック41について説明する。スリット部33は、
図9に示すように、絶縁性基体42のX1側の第1スリット壁42aとX2側の第2スリット壁42bとの間に形成されている。また、リードブロック41における逃がし部35は、第1スリット壁42aのY2側の角を、X1−X2方向及びY1−Y2方向に削った階段状の形状となっている。
【0058】
従って、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dをスリット部33に挿入する際に、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの先端が逃がし部35内に誘導され、折り返し端部11dの途中の一部が、押さえ部37である第1スリット壁42aのY2側の押さえ角37bに当接する形態となっている。逃がし部35をこのような形状にすることにより、逃がし部35を容易に形成することができる。
【0059】
次に、第2変形例の回転コネクタ120におけるリードブロック46について説明する。スリット部33は、
図10に示すように、絶縁性基体47のX1側の第1スリット壁47aとX2側の第2スリット壁47bとの間に形成されている。リードブロック46においては、第1スリット壁47aのY2側の角を斜め方向に大きく削って押さえ部37である押さえ面37aの端部を第1フラットケーブル11の折り曲げ部11fと略同一高さとして、逃がし部35の空間を大きく形成させている。
【0060】
従って、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dをスリット部33に挿入する際に、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが逃がし部35内に誘導され、折り返し端部11dの大部分が押さえ面37aに当接する形態となっている。逃がし部35をこのように形成することにより、第1フラットケーブル11をより安定に固定することができる。
【0061】
次に、第3変形例の回転コネクタ130におけるリードブロック51について説明する。スリット部33は、
図11に示すように、絶縁性基体52のX1側の第1スリット壁52aとX2側の第2スリット壁52bとの間に形成されている。リードブロック51における逃がし部35は、X1側にある第1スリット壁52aのY2側を斜め方向に削って押さえ部37である押さえ面37aが形成された形状になっていると共に、逃がし部35及び押さえ面37aのY2側が、絶縁性基体52の裏面にまでは形成されていない。
【0062】
従って、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dをスリット部33に挿入する際に、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dが逃がし部35内に誘導され、Y2側が閉じられた逃がし部35内に留まる形態となっている。逃がし部35をこのような形状にすることにより、第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの先端が、絶縁性基体52の外側に突出することがない。
【0063】
以下、本発明の実施形態としたことによる効果について説明する。
【0064】
本発明の回転コネクタ100は、一対のフラットケーブル10のうち、下層側となる第1フラットケーブル11の折り返し端部11dの先端がスリット部33に設けられた逃がし部35に誘導されるため、当該第1フラットケーブル11が浮き上がることなく、安定して固定される。
【0065】
また、絶縁性基体30、42、47、及び52の押さえ部37(押さえ面37a又は押さえ角37b)に折り返し端部11dの面が当接するため、第1フラットケーブル11をより容易に安定させることができる。
【0066】
また、絶縁性基体30、42、及び47の逃がし部35及び押さえ部37(押さえ面37a又は押さえ角37b)が絶縁性基体30、42、及び47の裏面まで連続して形成されているため、逃がし部35及び押さえ部37(押さえ面37a又は押さえ角37b)を形成するための金型にスライドコアを必要としない。そのため、金型費を抑えることができる。
【0067】
以上説明したように、本発明の回転コネクタは、一対のフラットケーブルのうち、下層側となるフラットケーブルの折り返し端部の先端がスリット部に設けられた逃がし部に誘導されるため、当該フラットケーブルが浮き上がることなく、安定して固定される。
【0068】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。