特許第6608300号(P6608300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608300
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/355 20060101AFI20191111BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20191111BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20191111BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20191111BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B41J2/355 L
   B41J2/325 A
   B41M5/26
   B05D3/00 D
   B05D5/06 101D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-21734(P2016-21734)
(22)【出願日】2016年2月8日
(65)【公開番号】特開2017-140706(P2017-140706A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将仁
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−015699(JP,A)
【文献】 特開平09−071057(JP,A)
【文献】 特開2011−062845(JP,A)
【文献】 特開2016−210082(JP,A)
【文献】 特開2012−200874(JP,A)
【文献】 特開昭60−024970(JP,A)
【文献】 特開平06−238955(JP,A)
【文献】 特開2001−328363(JP,A)
【文献】 特開2012−143954(JP,A)
【文献】 特開2010−058342(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051185(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101665032(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0111037(US,A1)
【文献】 特開昭63−307989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/355
B05D 3/00
B05D 5/06
B41J 2/325
B41M 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクドットのパターンとして基材上に積層された複数の下地インク層上に機能インク層を積層する画像形成方法であって、
前記機能インク層は、インク媒体に印刷エネルギーを与えることによって前記複数の下地インク層上に積層され、
前記複数の下地インク層のそれぞれにおいて、前記パターンに基づき前記インクドットの集合体が存在する領域と前記インクドットの集合体が存在しない領域との間に生じた段差に応じて、前記インク媒体に与える前記印刷エネルギーが制御されて、前記機能インク層によって、前記インクドットの集合体が存在する領域と前記インクドットの集合体が存在しない領域および前記段差が覆われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記複数の下地インク層に関する印刷履歴を取得する履歴取得工程と、
前記履歴取得工程による取得結果に基づいて、前記複数の下地インク層のそれぞれの層において前記段差が生じた領域を算出する段差領域算出工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記複数の下地インク層はそれぞれ、インク媒体に印刷エネルギーを与えることによって前記基材または他の下地インク層上に印刷されるものであって、
前記印刷履歴は、前記複数の下地インク層の層数と、前記複数の下地インク層の各層における前記インクドットのパターンと、前記複数の下地インク層を形成するために用いられる各インク媒体のインク組成と、前記複数の下地インク層のそれぞれを形成する際に前記各インク媒体の各領域に与えた印刷エネルギーとを含むことを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記段差領域算出工程による算出結果に基づいて、前記機能インク層を形成するための印刷パターンを補正する印刷パターン補正工程を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記印刷パターン補正工程においては、前記基材の平面方向における領域ごとに、前記下地インク層の層数と、積層された前記インクドットの和とを比較し、この比較結果に基づいて、前記機能インク層の形成のための印刷パターンを補正することを特徴とする請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記比較結果が閾値よりも小さい領域については、前記比較結果が閾値以上である領域に対して、前記機能インク層において対応する領域のインクドットの形成のために与える印刷エネルギーを大きくすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記インク媒体は熱溶融性を有するインクが積層された転写シートであり、前記印刷エネルギーは、ヒータへの通電によって発生する熱エネルギーであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインク層を積層する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の熱転写用受像体は、基体上に熱溶融性の色材層を設けてなる感熱転写紙{熱転写リボン}をサーマルヘッドで加熱することにより、プラスチックフィルム等の基材に色材層が選択的に熱転写され、これによりカラー画像が形成される。この熱転写用受像体においては、色材層の転写を受けない背面に接着層が設けられるため、色材層が転写される面の平滑性が確保でき、よって様々な被印刷体の表面にカラー画像を形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−307989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱溶融転写技術のようなデジタルオンデマンド印刷は、通常のスクリーン印刷やグラビア印刷のようにマスタ版を作製する必要がなく、少量多品種の印刷に対して高速かつ低コストで対応できるために、物品に対する多彩な加飾印刷等に使用されるケースが増えてきている。
【0005】
近年は、加飾印刷の対象がスマートフォン、携帯電話その他の小型携帯電子機器にも及び、さらに、加飾印刷による高いデザイン性への要求も高まっていることから、従来のフルカラー印刷に加えて、例えば、メタリック印刷、下地を隠すための隠蔽用印刷等の多彩な印刷を併用した高品質な加飾が求められつつある。このような加飾印刷を熱溶融転写によって行う場合、シアン・マゼンタ・イエローの三原色のためのインクリボンのほかに、メタリック印刷用のインクリボンや、隠蔽用印刷用のインクリボン等の多種類のインクリボンを用いてインク層を何層にも重ねるために、従来にはない厚みとなったインク層の上に、さらにインク層をきれいに重ねていく必要がある。
【0006】
例えばスマートフォンの赤外線送受信窓部の印刷では、赤外線窓部上にはインク層が形成されていないが、赤外線窓部の周辺部には何層ものインク層が熱溶融転写印刷によって積層されている。このように積層されたインク層の上には、赤外線窓部も覆うように、赤外線透過性を有するインク層が熱溶融転写印刷によって形成される。
【0007】
しかしながら、赤外線窓部の周辺部のように複数のインク層を積層すると、各インク層のドットパターン等の相違により各インク層間で、又は、インク層内で段差が生じる。このように積層されたインク層上にさらに赤外線透過性を有するインク層を熱溶融転写によって形成しようとする場合、数μm程度の薄いインクリボンを用いたときには、インクが段差に追従できずに転写が不十分となり、これにより印刷の抜けが発生する。これに対して、段差に追従するようにインクリボンに与える印刷エネルギーを上げると、段差でない領域に与える印刷エネルギーが過剰となることから、インクリボンのインクが余分に溶融してしまうために、インク層の表面がマット状、すなわち、面の粗さの大きな光沢のない状態となり、外観上の質感が低下してしまう。
【0008】
一方、段差に追従しやすくするように厚いインクリボンを用いたときには、インクリボンの転写性が低下し、印刷すべき領域と非印刷領域とが明確に分かれづらくなり、印刷領域のエッジがきれいに出なくなることにより画像の鮮明度等が低下する等の弊害がある。
【0009】
そこで本発明は、複数のインク層を積層することによって段差が生じた場合であっても、積層されたインク層の上に、印刷抜けがなく、高い鮮明度を維持するようにさらなるインク層を形成することのできる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成方法は、インクドットのパターンとして基材上に積層された複数の下地インク層上に機能インク層を積層する画像形成方法であって、機能インク層は、インク媒体に印刷エネルギーを与えることによって複数の下地インク層上に積層され、複数の下地インク層のそれぞれにおいて、パターンに基づきインクドットの集合体が存在する領域とインクドットの集合体が存在しない領域との間に生じた段差に応じて、インク媒体に与える印刷エネルギーが制御されて、機能インク層によって、インクドットの集合体が存在する領域とインクドットの集合体が存在しない領域および段差が覆われることを特徴としている。
これにより、下地インク層に段差が生じている場合であっても、下地インク層の上から機能インク層を積層したときに、印刷抜けや外観上の質感の低下を招くことなく機能インク層を形成することができる。
【0011】
本発明の画像形成方法において、複数の下地インク層に関する印刷履歴を取得する履歴取得工程と、履歴取得工程による取得結果に基づいて、複数の下地インク層のそれぞれの層において段差が生じた領域を算出する段差領域算出工程とを有することが好ましい。複数の下地インク層はそれぞれ、インク媒体に印刷エネルギーを与えることによって基材または他の下地インク層上に印刷されるものであって、印刷履歴は、複数の下地インク層の層数と、複数の下地インク層の各層におけるインクドットのパターンと、複数の下地インク層を形成するために用いられる各インク媒体のインク組成と、複数の下地インク層のそれぞれを形成する際に各インク媒体の各領域に与えた印刷エネルギーとを含むことが好ましい。
下地インク層の印刷履歴に基づいて段差の生じた領域を算出するため、段差の位置、範囲、形状等を正確に推定することが可能となり、これによって、インク媒体に与える印刷エネルギーの制御を精度良く行うことが可能となる。
【0012】
本発明の画像形成方法において、段差領域算出工程による算出結果に基づいて、機能インク層を形成するための印刷パターンを補正する印刷パターン補正工程を有することが好ましい。この印刷パターン補正工程においては、基材の平面方向における領域ごとに、下地インク層の層数と、積層されたインクドットの和とを比較し、この比較結果に基づいて、機能インク層の形成のための印刷パターンを補正することが好ましい。
これにより、簡便な演算処理で、精度の高い補正を行うことができる。
【0013】
本発明の画像形成方法において、比較結果が閾値よりも小さい領域については、比較結果が閾値以上である領域に対して、機能インク層において対応する領域のインクドットの形成のために与える印刷エネルギーを大きくすることが好ましい。
これにより、段差のある領域では段差に追従し、段差を覆うように機能インク層を形成することができ、かつ、段差のない領域では、高い質感を維持した機能インク層を形成することができる。
【0014】
本発明の画像形成方法において、インク媒体は熱溶融性を有するインクが積層された転写シートであり、印刷エネルギーは、ヒータへの通電によって発生する熱エネルギーであることが好ましい。
これにより、熱溶融転写印刷によって、段差の生じた下地インク層の上から、印刷抜けや質感の低下のない機能インク層を積層させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複数の下地インク層を積層することによって段差が生じた場合であっても、積層された下地インク層の上に、印刷抜けがなく、高い鮮明度を維持するようにさらなるインク層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図2】(A)は、図1に示す画像形成装置によって、3層の下地インク層の上からインクを転写する工程を示す断面図、(B)は3層の下地インク層上に機能インク層が形成された画像形成物の構成を示す断面図である。
図3】機能インク層の印刷パターンのデータの補正の手順を示すフローチャートである。
図4】(A)は、本発明の実施形態に係る画像形成方法で作成した画像形成物の断面図の顕微鏡写真、(B)は(A)の4B部分の拡大図、(C)は従来の画像形成方法で作成した画像形成物の断面図の顕微鏡写真、(D)は(C)の4D部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成方法に用いる画像形成装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像形成装置10は、ヒータ11と、駆動部12と、制御部13と、演算部14と、メモリ15とを備える。図2(A)は、画像形成装置10によって、3層の下地インク層31、32、33の上からインクを転写する工程を示す断面図、図2(B)は3層の下地インク層31、32、33上に機能インク層34が形成された画像形成物40の構成を示す断面図である。図2(A)、(B)は、基板22上に、3層の下地インク層31、32、33と機能インク層34を順に積層する方向Lに沿った断面図である。図2(A)、(B)に示す積層方向Lの上側を上方向、下側を下方向と呼ぶことがある。また、基板22の平面方向Pは積層方向Lに直交する方向である。ここで、下地インク層としては、例えば、加飾のためのシアン・マゼンタ・イエローの三原色などのカラーインク層、金属光沢を出すためのメタリックインク層、画像形成物の裏側を視認不可能とするための光非透過性インクや黒色インクからなる隠蔽インク層が挙げられる。機能インク層としては、例えば、特定の波長の光のみを透過させるインク層、下地インク層を保護するための保護インク層などがある。
【0019】
図2(A)に示すように、ヒータ11は、基材22に対して、その平面方向Pにおける所定位置に対向するように配置され、ヒータ11と基材22の間には、インク媒体としての転写シート21が配置されている。転写シート21は、PET(ポリエチレンテレフタレート)その他の可撓性材料からなる基材フィルム21a上に熱溶融性を有するインク層21bが積層された構成を備える。ヒータ11は、基材フィルム21aの上面21cの所定位置に接触するように、不図示の付勢部材、例えばばねによって基材22側へ付勢されており、これにより、転写シート21のインク層21bの下面21dが基材22又は基材22上に積層されたインク層の表面に接触する。
【0020】
ヒータ11には所定のパターンで金属配線が形成されており、この配線に通電することによってヒータ11は発熱する。ヒータ11の発熱によって発生した熱エネルギーは、ヒータ11に接触する転写シート21に与えられ、これによって転写シート21のインク層21bのインクが溶融する。溶融したインクは、基板22又は基板22上に積層された下地インク層上に転写される。ヒータ11への通電は制御部13によって制御され、形成するインク層の印刷パターンに対応するように、一部又はすべての配線に通電される。ここで、印刷パターンは、形成しようとするインク層の画像パターンに対応したインクドットを形成するための通電パターンである。これにより、発熱した配線に対応する領域のインクが溶融して転写シート21から、基板22または積層された下地インク層上へ転写され、予め設定されたインクドットのパターンが形成される。
【0021】
駆動部12は、転写シート21と基材22を同期させて移動させる機構であって、制御部13によって、ヒータ11への通電のタイミングに合わせて転写シート21と基材22が移動するように制御される。
【0022】
制御部13は、ヒータ11と駆動部12の動作の制御、演算部14に対する演算の指示などを行うほか、転写シート21に与える印刷エネルギーを制御する。この印刷エネルギーは、ヒータ11の発熱によって発生する熱エネルギーである。
【0023】
上記熱エネルギーの制御としては、基板22上に積層する複数の下地インク層の形成においては、それぞれの下地インク層について予め設定した印刷パターンにしたがってインクドットのパターンが形成されるように、ヒータ11においてインクドットのパターンに対応する位置の配線にそれぞれ通電する。それぞれの下地インク層についての通電パターンはメモリ15に保存されている。
なお、本実施形態では、熱溶融転写印刷によって下地インク層を形成する例を挙げているが、下地インク層の印刷履歴を取得することが可能であれば、熱溶融転写以外の方法、例えば熱昇華印刷、インクジェット印刷によって下地インク層を形成してもよい。
【0024】
一方、すでに形成された複数の下地インク層の上に積層する機能インク層においては、制御部13は、複数の下地インク層のそれぞれにおけるインクドットの段差に応じて、転写シート21に与える印刷エネルギーを制御する。上記段差については、複数の下地インク層に関する印刷履歴に基づいて、演算部14において、基材22の平面方向Pにおいて段差の生じた領域が算出される。ここで、基材22の平面方向Pにおける領域とは、例えば、各インク層におけるインクドット又はインクドットの集合体に対応するように分割された領域である。また、本実施形態において段差が生じた領域としては、例えば、図2(A)に示すように、(1)基板22と最も下側の第1の下地インク層31とが平面方向Pにおいて段差を生じている領域A1、(2)下から2番目の第2の下地インク層32と3番目の第3の下地インク33とが基板22の平面方向Pにおいて段差を生じている領域A2、A3が挙げられる。
【0025】
上記印刷履歴には、複数の下地インク層の層数と、複数の下地インク層の各層における印刷パターンと、転写シート21のインクの組成と、転写シート21の各領域に与えた印刷エネルギーとが含まれ、これらはメモリ15に保存されている。複数の下地インク層の層数と印刷パターンによって、基材22又は基材22に既に積層されたインク層上に積層されたインクドット又はインクドットの集合体の分布を知ることができ、この分布データに基づいて、演算部14は、基材22の平面方向Pにおける領域ごとに、積層されたインクドットの和を算出する。
また、演算部14は、転写シート21のインクの組成と、転写シート21の各領域に与えた印刷エネルギーとによって、基材22又は基材22に既に積層されたインク層上に積層されたインクドットの量又は厚みを、基材22の平面方向Pにおける領域ごとに算出することができる。
【0026】
メモリ15には、機能インク層34の印刷パターンが保存されている。制御部13は、複数の下地インク層31、32、33のそれぞれにおけるインクドットの段差に応じて、機能インク層34の印刷パターンを補正する。すなわち、基材22の平面方向Pにおける領域ごとに積層されたインクドットの和に基づいて、印刷パターンを補正する。印刷パターンの補正は演算部14で行い、この補正としては、例えば、下地インク層の層数と、複数の下地インク層を形成したときに積層されたインクドットの和とを比較することによって行う。この比較においては、まず、基材22の平面方向Pにおける領域ごとに、下地インク層の層数と、積層されたインクドットの和との比を、比較結果として算出する。なお、比較結果としては、下地インク層の層数と、積層されたインクドットの和との差を用いても良い。
【0027】
次に、上記比が閾値未満である領域、すなわち、インクドットが転写されていない下地インク層がある領域については通電量を多くして、転写シート21に与える熱エネルギーを大きくするように印刷パターンを補正し、比が閾値以上である領域、すなわち、すべての下地インク層でインクドットが転写されて、インク層の積層方向にインクが連なっている領域については、補正を行わない。したがって、上記比が閾値よりも小さな領域については、上記比が閾値以上である領域に対して、インクドットの形成のために与える熱エネルギーを大きくしている。
【0028】
ここで、印刷パターンに対する補正は、基材22の平面方向Pにおける通電量の変化がなだらかになるように、通電量を大きくする領域と補正を行わない領域の境界付近における通電量の変化を調整することが好ましい。また、上記比が閾値未満である領域において、インクドットが転写されていない下地インク層の層数や下地インク層の厚みが異なる場合は、層数や厚みに応じて補正量を調整することが好ましい。さらに、転写シートのインクの種類や物性等に応じて補正率を変更することが好ましい。
【0029】
また、印刷パターンの補正においては、下地インク層の段差等に応じて、補正前の印刷パターンではインクドットが形成されない領域にもインクドットを追加するような構成にしても良い。これにより、例えば下地インク層の段差部分の周辺部にインクドットを形成でき、機能インク層34のインクドットが途切れるのを防ぐことができる。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態の画像形成装置10を用いた画像形成方法によって、基材22上にすでに形成した複数の下地インク層31、32、33上に機能インク層34を形成する工程について説明する。図3は、機能インク層34の印刷パターンのデータ(印刷データ)の補正の手順を示すフローチャートである。
【0031】
まず、制御部13は、過去のインク層形成時に取得してメモリ15に保存した段差情報マップをクリアする(ステップS1)。つづいて、制御部13は、本工程で形成する機能インク層34、すなわち段差補正の対象となるレイヤーの印刷データをメモリ15から読み込む(ステップS2)。
【0032】
次に、メモリ15から、印刷履歴として、これまでに形成した下地インク層31、32、33の層数としての「3」と、複数の下地インク層31、32、33の各層における印刷パターンと、転写シート21のインクの組成と、転写シート21の各領域に与えた印刷エネルギーとが読み込まれる(履歴取得工程)。制御部13は、これらの印刷履歴に基づいて、(1)これまでに形成した下地インク層31、32、33において段差の生じた領域、及び、(2)この領域における下地インク層31、32、33の層数と、積層されたインクドットの和との比を演算部14に算出させる(段差領域算出工程)。
【0033】
さらに、制御部13は、算出した比が閾値未満である領域について、機能インク層34の形成のための印刷データを補正する演算を行うように演算部14に指示信号を送出し、これに従って演算部14は、印刷履歴に対応して補正された印刷データを生成する(ステップS3、印刷パターン補正工程)。
【0034】
制御部13は、補正された印刷データにしたがって、すでに形成された下地インク層31、32、33の上に機能インク層34を形成するようにヒータ11及び駆動部12に指示信号を送出する。これにより、補正された印刷データにしたがって、段差の生じた領域では、ヒータ11に対して補正前の条件よりも大きな通電がなされ、段差の生じていない領域では、補正のない条件で通電がなされる。このような工程によって形成された機能インク層34は、図2(B)に示すように、すでに形成された下地インク層31、32、33に対して、段差のない領域B1、B2(図2(B))では、33の上面33aに沿った平坦な層として積層され、段差のある領域A1、A2、A3では、段差を覆うように形成され、これによって、画像形成物40が形成される。
【0035】
つづいて、制御部13は、上記ステップS3で生成した補正印刷データを印刷履歴に追加し、これに基づいて、演算部14に、新たな段差領域を算出させ、この結果を反映した段差情報マップをメモリ15に保存させ、段差情報マップを更新する(ステップS4)。また、制御部13は、上記ステップS3で生成した補正印刷データもメモリ15に保存させる(ステップS5)。
【0036】
次に、制御部13は、上記ステップS3で生成した補正印刷データに基づいて形成した機能インク層34が、最終的に形成するインク層(最終印刷プレーン)であるか否かを判断する(ステップS6)。この機能インク層34の上にさらにインク層を積層する場合(ステップS6でNo)は、新たに形成するインク層について上記ステップS2〜S6の工程を再び実行する。これに対して、現在の最上層である機能インク層34が最終印刷プレーンである場合(ステップS6でYes)は、処理を終了する。
【0037】
次に、図4(A)、(B)、(C)、(D)を参照して、本実施形態の画像形成方法で作成した画像形成物について説明する。図4(A)は、本実施形態の画像形成方法で作成した画像形成物の断面図の顕微鏡写真、図4(B)は図4(A)の4B部分の拡大図、図4(C)は従来の画像形成方法で作成した画像形成物の断面図の顕微鏡写真、図4(D)は図4(C)の4D部分の拡大図である。図4(A)〜(D)は走査型電子顕微鏡による写真であり、その倍率は、図4(A)は1000倍、図4(B)は1500倍、図4(C)、(D)は5000倍である。
【0038】
図4(A)、(B)、(C)、(D)に示す例では、基材SとしてのPETの一部の領域に、下地インク層として白インク層Wが形成され、この白インク層Wの上から、基材Sの全体に機能インク層として黒インク層を積層することとしている。図4(A)、(B)、(C)、(D)に示すように、基材S上の領域A11において、白インク層Wと基材Sとの間に段差が生じている。
【0039】
図4(A)、(B)に示す例では、黒インク層の印刷データに対して、白インク層Wの印刷履歴としての印刷データに基づいて補正を行って、印刷データを生成している。すなわち、白インク層Wによる画像の外縁部にあたる段差領域A11では、それ以外の領域に比べて、ヒータ11への通電量を大きくするように印刷データを補正している。これに対して、図4(C)、(D)に示す例では、黒インク層の印刷データを白インク層Wの印刷履歴に基づいて補正することなく、印刷データをそのまま用いている。
【0040】
以上の印刷データに基づいて黒インク層を形成したところ、図4(A)、(B)に示す例では、基材Sと白インク層Wの上に黒インク層C1、C2がそれぞれ形成され、かつ、段差領域A11においては段差を覆うように黒インク層C3が形成され、これらの黒インク層C1、C2、C3は途切れることなく連続的なインク層となっている。さらに、黒インク層C1、C2、C3の表面粗さは一定の範囲内に収まっており、マット状と認められる領域はなかった。
【0041】
これに対して、図4(C)、(D)に示す例では、白インク層Wの上に黒インク層C3が形成され、この黒インク層C3に連なるように段差領域A11上に黒インク層C4が形成されている。この黒インク層C4は、基材Sから離間した状態で黒インク層C3から突出するように形成されている。また、黒インク層C4は黒インク層C3から離れるにつれて表面の粗さが大きくなり、基材Sに接触することなく途切れており、領域A12では転写されていない。
【0042】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)本実施形態の画像形成方法によれば、3層の下地インク層31、32、33のそれぞれにおけるインクドットの段差に応じて、制御部13が転写シート21に与える熱エネルギーを制御するため、3層の下地インク層31、32、33で段差が生じている場合であっても、段差のある領域では段差に追従し、段差を覆うように機能インク層34を形成することができ、かつ、段差のない領域では、高い質感を維持した機能インク層34を形成することができることから、印刷抜けや外観上の質感の低下のない画像形成物40を形成することができる。
【0043】
(2)3層の下地インク層31、32、33に関する印刷履歴に基づいて、基材22の平面方向Pにおいて段差の生じた領域を算出することにより、段差の位置、範囲、形状等を正確に推定することが可能となり、これによって、転写シート21に与える熱エネルギーの制御を精度良く行うことが可能となる。
【0044】
(3)下地インク層の層数、及び、3層の下地インク層31、32、33の各層における印刷パターンに基づいて、基材22の平面方向Pにおける領域ごとに積層されたインクドットの和を算出し、この和に基づいて、機能インク層34の形成のための印刷パターンを補正するため、簡便で負担の少ない演算処理で、精度の高い補正を行うことができる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る画像形成方法は、加飾のために多層のインク層を積層した画像形成物の製造に有用である。
【符号の説明】
【0046】
10 画像形成装置
11 ヒータ
12 駆動部
13 制御部
14 演算部
15 メモリ
21 転写シート(インク媒体)
21a 基材フィルム
21b インク層
22 基材
31、32、33 下地インク層
34 機能インク層
40 画像形成物
図1
図2
図3
図4