特許第6608303号(P6608303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608303ネガティブ型感光性樹脂組成物、前記組成物で形成されるパターンおよび画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608303
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ネガティブ型感光性樹脂組成物、前記組成物で形成されるパターンおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20191111BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20191111BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20191111BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20191111BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20191111BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   G03F7/031
   G03F7/029
   G03F7/033
   C08F2/50
   C08F2/44 C
   C08F265/06
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-27785(P2016-27785)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-170400(P2016-170400A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0033912
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ジ−ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソン−ビン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ハ−ヌ
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209594(JP,A)
【文献】 特開2013−242554(JP,A)
【文献】 特開2011−203562(JP,A)
【文献】 特開2009−229934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合モノマー(B)、光重合開始剤(C)、および溶剤(D)を含み、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)は、下記化学式1の繰り返し単位を含む第1樹脂、および下記化学式2の繰り返し単位を含む第2樹脂を含み、
【化1】
(前記化学式2において、Rは、水素またはメチルである)。
前記光重合開始剤(C)は、イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤を含むことを特徴とするネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
増感剤(E)を追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
光重合開始剤100重量部に対して、前記増感剤10〜30重量部を含むことを特徴とする請求項2に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記増感剤は、ジエチルチオキサントン、ビオラントロン、イソビオラントロン、フルオレセイン、ルブレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラセン、およびレブリン酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項2または3に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1樹脂または第2樹脂は、(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価が20〜200mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、4,000〜30,000であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記イミダゾール系光重合開始剤は、2,2−ビス−2−クロロフェニル−4,5,4,5−テトラフェニル−2−1,2−ビスイミダゾール、2,2−ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、および2,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾールから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記オキシム系光重合開始剤は、o−エトキシカルボニル−α−オキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン−1−(4−フェニルチオ)フェニル−2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン−1−(9−エチル)−6−(2−メチルベンゾイル−3−イル)−1−(o−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)、および1−{9−エチル−6−[2−メチル−4−(2,2’−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メチルオキシ)ベンゾイル]−9H−カルバゾール−3−イル}エタノン1−(O−アセチルオキシム)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記アセトフェノン系光重合開始剤は、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、p−ジメチルアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびp−メトキシアセトフェノンから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤は、1:1〜3:3〜5の重量比率で配合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
感光性樹脂組成物中の固形分に対して、
アルカリ可溶性樹脂(A)30〜85重量%、
光重合モノマー(B)10〜60重量%;および
光重合開始剤(C)0.1〜10重量%;を含み、
感光性樹脂組成物の総重量に対して、
溶剤(D)40〜95重量%を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のネガティブ型感光性樹脂組成物で形成される光硬化パターン。
【請求項14】
請求項13に記載の光硬化パターンを含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、より詳細には、基板に対する密着性、耐化学性および保存安定性に優れたネガティブ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ分野において、感光性樹脂組成物は、フォトレジスト、絶縁膜、保護膜、ブラックマトリックス、カラムスペーサなどの多様な光硬化パターンを形成するために使用される。具体的には、感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィ工程によって選択的に露光および現像して、所望の光硬化パターンを形成するが、この過程で工程上の収率を向上させ、適用対象の物性を向上させるために、高感度を有する感光性樹脂組成物が要求されている。
【0003】
感光性樹脂組成物のパターン形成は、フォトリソグラフィ、すなわち、光反応によって起こる高分子の極性変化および架橋反応による。特に、露光後、アルカリ水溶液などの溶剤に対する溶解性の変化特性を利用する。
【0004】
感光性樹脂組成物によるパターン形成は、感光された部分の現像に対する溶解度によって、ポジティブ型(positive type)とネガティブ型(negative type)に分類される。ポジティブ型フォトレジストは、露光された部分が現像液によって溶解し、ネガティブ型フォトレジストは、露光された部分が現像液に溶けるのではなく、露光されていない部分が溶解してパターンが形成される方式であり、ポジティブ型とネガティブ型は、使用されるバインダー樹脂、架橋剤などにおいて互いに異なる。
【0005】
近年、タッチパネルを備えたタッチスクリーンの使用が爆発的に増加しており、スクリーンなどに用いられる各種基板などの素材として、ガラス、プラスチック、シリコンなどが使用される。また、必要に応じて、基板上に、金属膜、非金属膜、金属酸化膜、非金属酸化膜などが設けられる。これらの基板上に設けられる膜を具体的に例示すると、無定形シリコン膜、窒化シリコン膜、シリコン酸化膜、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、またはクロム(Cr)などである。
【0006】
感光性樹脂組成物をこれらの上に塗布させてパターンを形成するが、この時、感光性樹脂組成物と基板との密着性が良好でなければ、パターンの剥離が起こったり、現像性が低下し、微細パターンの形成が難しいなどの問題が発生することがある。
【0007】
このような問題を解決すべく、特許文献1は、オキシムE系、オキシムA系およびアセトフェノン系光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物について公知であるが、オキシム系開始剤を多量使用する場合、残渣発生の恐れがあり、アウトガス(outgas)の増加可能性があって、より効果的な方法に対する研究が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2014−0071725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためのものであって、基板に対する密着性に優れ、低温硬化が可能であり、形成されたパターンの耐熱性、耐化学性、保存安定性などに優れたネガティブ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記ネガティブ型感光性樹脂組成物を用いて形成された光硬化パターンを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記光硬化パターンを含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合モノマー(B)、光重合開始剤(C)、および溶剤(D)を含み、
前記光重合開始剤(C)は、イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤を含むことを特徴とするネガティブ型感光性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のネガティブ型感光性樹脂組成物は、基板に対する密着性および保存安定性に優れるという利点を提供することができる。
【0014】
また、前記ネガティブ型感光性樹脂組成物を用いて形成された光硬化パターンは、優れた耐熱性および耐化学性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、
アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合モノマー(B)、光重合開始剤(C)、および溶剤(D)を含むネガティブ型感光性樹脂組成物において、
前記光重合開始剤(C)として、イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤の混合物を使用することにより、ITO基板などの金属、金属酸化物基板に対する密着性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
以下、本発明の構成要素別に詳細に説明する。
【0018】
(A)アルカリ可溶性樹脂
本発明の感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A)は、パターンを形成する時の現像処理工程で用いられるアルカリ現像液に対して可溶性を付与する成分であって、当該分野で通常使用されるアルカリ可溶性樹脂であれば特に制限しない。
【0019】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)は、下記化学式1の繰り返し単位を含む第1樹脂、および下記化学式2の繰り返し単位を含む第2樹脂を含むことがより好ましいことがある。
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式2において、Rは、水素またはメチル(−CH)である。
【0022】
本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)が前記化学式1の繰り返し単位を含む第1樹脂を含むことにより、金属(metal)などの基板上でのエッチャント処理後、密着性が向上する効果を示すことができる。前記基板は、金属膜、金属酸化膜などが設けられた基板であってもよい。これらの基板上に設けられる膜を具体的に例示すると、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、または銅(Cu)などである。
【0023】
また、前記化学式2の繰り返し単位を含む第2樹脂を含むことにより、熱工程段階において、熱による開環(ring opening)反応およびそれによる重合(polymerization)を加速化して、反応性が向上し、工程的には耐化学性、すなわち、エッチャントによる損傷(damage)が少ない効果を示すことができる。
【0024】
前記第1樹脂および第2樹脂は、互いに独立に、化学式1および化学式2の繰り返し単位以外にも、当分野で公知の他の単量体由来の繰り返し単位をさらに含むことができる。前記第1樹脂および第2樹脂に付加可能な繰り返し単位を形成する単量体は特に限定はないが、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;
フマル酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸類およびこれらの無水物;
ビニルトルエン、p−クロロスチレン、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ビニルベンジルメチルエーテル、m−ビニルベンジルメチルエーテル、p−ビニルベンジルメチルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどの芳香族ビニル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;
ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどの両末端にカルボキシ基と水酸基を有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレートなどの脂環族(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート類;
炭素数4〜16のシクロアルカンまたはジシクロアルカン環で置換された(メタ)アクリレート類;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)−4−トリフルオロメチルオキセタンなどの不飽和オキセタン化合物;メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和オキシラン化合物;などから選択された1種または2種以上が挙げられ、より好ましくは、(メタ)アクリル系単量体が使用できる。
【0025】
本発明において、「(メタ)アクリル−」は、「メタクリル−」、「アクリル−」、またはこれら両者を意味する。
【0026】
前記(メタ)アクリル系単量体は、より好ましくは、下記化学式3の単量体であってもよい。
【0027】
【化2】
【0028】
前記化学式3において、Rは、水素またはメチル(−CH)である。
【0029】
本発明のアルカリ可溶性樹脂が前記化学式3の単量体由来の繰り返し単位を含む場合、開始剤によって生成されたラジカルによる重合反応を容易にし、露光段階での光硬化反応を増進させて、耐化学性の向上に寄与することができる。
【0030】
本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、4,000〜30,000であることが好ましく、10,000〜25,000であることがより好ましいことがある。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が前記範囲の場合、本発明の感光性樹脂組成物がより優れたパターン形成性、現像性および保管安定性を示すことができる。
【0031】
また、本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は、20〜200mgKOH/gであることが好ましく、40〜100mgKOH/gであることがより好ましいことがある。酸価が前記範囲にあれば、優れた現像性および経時安定性を有することができる。
【0032】
アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は特に限定はないが、本発明の感光性樹脂組成物の固形分に対して、重量分率で、通常30〜85重量%、より好ましくは35〜70重量%含まれていてもよい。アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量が前記範囲の場合、現像液への溶解性が十分で、現像残渣が発生しにくく、現像性に優れ、優れた機械的物性を有する光硬化パターンを形成することができて望ましい。
【0033】
(B)光重合モノマー
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる光重合モノマー(B)は、後述する光重合開始剤の作用で重合可能なモノマーであって、二重結合を含み、光重合開始剤によって生成されたラジカルと反応する。前記光重合モノマーは、他の光重合モノマーまたはアルカリ可溶性樹脂と結合して架橋結合を形成することができる。
【0034】
前記光重合モノマーは、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、その他の多官能モノマーなどが挙げられる。
【0035】
前記単官能モノマーの具体例としては、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate)、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(2−hydroxy−3−phenoxypropyl acrylate)、ジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(diethyleneglycol methylether methacrylate)、ヒドロキシエチルアクリレート(hydroxyethyl acrylate)、ブチルメタクリレート(butyl methacrylate)、ヒドロキシプロピルアクリレート(hydroxypropyl acrylate)、2−フェノキシエチルアクリレート(2−phenoxyethyl acrylate)、2−フェノキシエチルメタクリレート(2−pheonoxyethyl methacrylate)、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(3,3,5−trimethylcyclohexyl methacrylate)、イソボルニルアクリレート(isobornyl acrylate)、イソボルニルメタクリレート(isobornyl methacrylate)、イソデシルアクリレート(isodecyl acrylate)、イソデシルメタクリレート(isodecyl methacrylate)、イソオクチルアクリレート(isooctyl acrylate)、ラウリルアクリレート(lauryl acrylate)、ステアリルアクリレート(stearyl acrylate)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(tetrahydrofurfuryl acrylate)、またはトリデシルアクリレート(tridecyl acrylate)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上が混合されて使用できる。
【0036】
前記2官能モノマーまたは多官能モノマーの具体例としては、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)、トリメチルプロパントリアクリレート(trimethylpropane triacrylate)、トリメチルプロパントリメタクリレート(trimethylpropane trimethacrylate)、グリセロールトリアクリレート(glycerol triacrylate)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート[tris(2−hydroxyethyl)isocyanurate triacrylate]、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート(Ethoxylated trimethylolpropane triacrylate)、ジ−トリメチルプロパンテトラアクリレート(di−trimethylpropane tetraacrylate)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate)、またはペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上が混合されて使用できる。
【0037】
前記光重合モノマー(B)は、本発明の感光性樹脂組成物の固形分に対して、重量分率で、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲で使用できる。前記範囲に含まれる場合、画素部の強度、工程の進行に伴う残膜率、コンタクトホール特性が良好になる傾向があるので望ましい。光重合モノマーが10重量%未満の場合、微細パターンを形成しにくく、バインダー樹脂との結合力が低くなって、フォトレジストパターンの形態安定性が低下することがある。
【0038】
(C)光重合開始剤
本発明に係る光重合開始剤(C)は、一定波長の光によって活性化する化合物であって、光によってラジカル(radical)を発生し、前記光重合モノマー(B)の重合を開始する役割を果たす。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C)は、イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0040】
前記イミダゾール系光重合開始剤は、生成されたアルキルラジカルを活性化して光反応性をより向上させ、光効率を極大化して大幅に改善された感度を有するようにする。このような感度の向上によって、感光性樹脂組成物の硬化時、少ない露光量でも十分な架橋密度を有することができ、露光時間も短縮させることができる。前記イミダゾール系光重合開始剤の具体例としては、2,2−ビス−2−クロロフェニル−4,5,4,5−テトラフェニル−2−1,2−ビスイミダゾール、2,2−ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,3−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4’, 5,5’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾールなどが挙げられるが、これらに限定するものではなく、これらから1種以上を選択して使用できる。
【0041】
前記オキシム系光重合開始剤は、紫外線を吸収して色をほとんど呈することなくラジカル効率が高く、感光性樹脂組成物に含まれる成分との相溶性および安定性に優れるという利点がある。前記オキシム系光重合開始剤の具体例としては、o−エトキシカルボニル−α−オキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン−1−(4−フェニルチオ)フェニル−2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン−1−(9−エチル)−6−(2−メチルベンゾイル−3−イル)−1−(o−アセチルオキシム)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)、1−{9−エチル−6−[2−メチル−4−(2,2’−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メチルオキシ)ベンゾイル]−9H−カルバゾール−3−イル}エタノン1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられ、市販品として、CGI−124(チバガイギー社)、CGI−242(チバガイギー社)、CGI−224(チバガイギー社)、Irgacure OXE−01(BASF社)、Irgacure OXE−02(BASF社)、N−1919(アデカ社)、NCI−831(アデカ社)などが挙げられる。前記オキシム系光重合開始剤は、これらから1種以上を選択して使用できるが、これらに限定するものではない。
【0042】
前記アセトフェノン系光重合開始剤は、生成されたアルキルラジカルを活性化して光反応性をより向上させ、光効率を極大化して大幅に改善された感度を有するようにする。このような感度の向上によって、感光性樹脂組成物の硬化時、少ない露光量でも十分な架橋密度を有することができ、露光時間も短縮させることができる。前記アセトフェノン系光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、p−ジメチルアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノンなどが挙げられるが、これらに限定するものではなく、これらから1種以上を選択して使用できる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤がイミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤を含む場合、開始反応でのラジカルの生成速度を速くし、生成されたラジカルを十分に活性化させることができて、高感度のパターン形成が可能であり、架橋密度に優れた有機膜の形成が可能である。また、感光性樹脂組成物の光硬化密度が高くなって、耐化学性および金属基板に対する密着性に優れた効果がある。
【0044】
前記イミダゾール系、オキシム系およびアセトフェノン系光重合開始剤は、好ましくは1:1〜3:3〜5の重量比率で配合されてもよいし、より好ましくは1:2〜3:3〜5の重量比率であるのが良い。光重合開始剤の配合比率が前記範囲の場合、残渣の発生およびアウトガス(outgas)の発生の恐れを無くすことができ、適切なパターンサイズの形成およびスカム(scum)防止などの面で有利であるという利点がある。
【0045】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)として、前記種類のほか、上述した光重合モノマー(B)を重合させることができるものであればその種類を特に制限することなく追加的に含むことも可能である。例えば、ベンゾフェノン系、ケタール系、ベンゾイン系、トリアジン系、アクリジン類系、クマリン類系およびチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0046】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、前記光重合開始剤(C)と共に、感光性樹脂組成物の感度を向上させるために、光重合開始補助剤をさらに含むことができる。本発明に係る感光性樹脂組成物は、光重合開始補助剤を追加的に含有することにより、感度がさらに高くなり、生産性を向上させることができる。
【0047】
前記光重合開始剤(C)は、本発明の感光性樹脂組成物中の固形分に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%含まれていてもよい。前記範囲を満足する場合、感光性樹脂組成物が高感度化されて露光時間が短縮されるため、生産性が向上し、高い解像度を維持することができ、形成した画素部の強度と画素部の表面での平滑性が良好になり得る点で良い。
【0048】
(D)溶剤
本発明の樹脂組成物に含まれる溶剤(D)は特に制限されず、当該分野で通常使用されるものであれば制限なく使用できる。
【0049】
前記溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート類;ブチルジオールモノアルキルエーテル類;ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート類;ブタンジオールモノアルキルエーテルプロピオネート類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;芳香族炭化水素類;ケトン類;アルコール類;エステル類;環状エーテル類;および環状エステル類などが挙げられる。ここで例示した溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0050】
前記溶剤は、塗布性および乾燥性を考慮した時、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、ブタンジオールアルキルエーテルアセテート類、ブタンジオールモノアルキルエーテル類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類が好ましく使用でき、より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メトキシブチルアセテート、メトキシブタノール、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどが使用できる。
【0051】
前記溶剤(D)は、感光性樹脂組成物の全体重量に対して、40〜95重量%、好ましくは45〜85重量%含まれていてもよい。前記範囲を満足する場合、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター(ダイコーター、カーテンフローコーターとも呼ばれる場合がある)、インクジェットなどの塗布装置で塗布した時、塗布性が良好になるので望ましい。
【0052】
(E)増感剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤(E)を追加的に含むことができる。前記増感剤は、上述した光重合開始剤(C)の活性化エネルギー(activation energy)を低下させることができる。すなわち、前記増感剤(E)が感光性樹脂組成物の光吸収率を増加させることができるため、本発明の感光性樹脂組成物が前記増感剤(E)をさらに含む場合、光重合開始剤の含有量を減少させることができる。これによって、前記光重合開始剤の析出が防止可能になる。また、前記増感剤を用いる場合、前記光重合モノマー(B)および前記溶剤(D)の種類を多様化させることにより、本発明の感光性樹脂組成物のパターンを微細にチューニングすることができ、製造費用を減少させることができる。
【0053】
前記増感剤の具体例としては、ジエチルチオキサントン(diethylthioxanthone、DETX)、ビオラントロン(violanthrone)、イソビオラントロン(isoviollanthrone)、フルオレセイン(fluoresceine)、ルブレン(rubrene)、9,10−ジフェニルアントラセン(9,10−diphenylanthracene)、テトラセン(tetracene)、またはレブリン酸(levulinic acid)などが挙げられるが、これらに限定するものではなく、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0054】
前記増感剤の含有量は、前記光重合開始剤100重量部に対して、好ましくは10〜30重量部、より好ましくは10〜15重量部であってもよい。前記増感剤の含有量が10重量部未満の場合、フォトマージン(photo margin)が向上しにくく、30重量部を超える場合、溶解度が低下することがある。
【0055】
(F)添加剤
本発明の感光性樹脂組成物は、前記成分のほか、必要に応じて、充填剤、光重合開始補助剤、UV安定剤、他の高分子化合物、硬化剤、レベリング剤、連鎖移動剤、密着促進剤、酸化防止剤、および凝集防止剤などの添加剤(F)を追加でさらに含むことができる。
【0056】
前記添加剤(F)は、感光性樹脂組成物中の固形分に対して、重量分率で、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%含まれていてもよい。前記範囲の場合、パターン形成に好適であり得る。
【0057】
以下、前記感光性樹脂組成物で製造される光硬化パターンと前記光硬化パターンを含む画像表示装置を説明する。
【0058】
本発明は、前記感光性樹脂組成物で製造される光硬化パターンを提供する。前記感光性樹脂組成物で製造された光硬化パターンは、耐化学性、保存安定性および密着性などに優れている。これによって、画像表示装置において、各種パターン、例えば、接着剤層、アレイ平坦化膜、保護膜、絶縁膜パターンなどに用いられてよく、フォトレジスト、ブラックマトリックス、カラムスペーサ、ブラックカラムスペーサパターンなどに用いられてもよいが、これに制限されるものではなく、特に、フォトレジストパターンに非常に好適である。
【0059】
このような光硬化パターンを備えるか、製造過程中に前記パターンを用いる画像表示装置としては、液晶表示装置、OLED、フレキシブルディスプレイなどがあり得るが、これに限定されるものではなく、適用が可能な当該分野で知られたすべての画像表示装置を例示することができる。
【0060】
光硬化パターンは、上述した本発明の感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、必要に応じて、現像、水洗工程を経て、相対的に低温の100〜150℃の温度で、10〜60分のポストベークを実施する。つまり、本発明のネガティブ型感光性樹脂組成物を100〜150℃の温度で硬化が可能であり、硬化を経て光硬化パターンを形成、機械的強度を向上させることができる。
【0061】
また、本発明は、前記光硬化パターンを含む画像表示装置を提供する。
【0062】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は、下記の実施例によって限定されず、多様に修正および変更可能である。本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲の技術的思想によって定められる。
【0063】
<製造例>
製造例1.アルカリ可溶性樹脂の合成
還流冷却器、滴下漏斗および撹拌機を備えた1Lのフラスコ内に、窒素を0.02L/minで流して窒素雰囲気とし、メチルエチルジエチレングリコール300重量部を入れて、撹拌しながら70℃まで加熱した。次に、ノルボルネン(norbornene)20重量部、スチレン30重量部、メタクリル酸45重量部、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(3−Acryloyloxy−2−hydroxypropyl methacrylate)135重量部を、メチルエチルジエチレングリコール140重量部に溶解して溶液を調製した。
【0064】
調製された溶解液を、滴下漏斗を用いて、4時間かけて、70℃に保温したフラスコ内に滴下した。一方、光重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30重量部を、メチルエチルジエチレングリコール225重量部に溶解した溶液を、別の滴下漏斗を用いて、4時間かけて、フラスコ内に滴下した。光重合開始剤の溶液の滴下が終わった後、4時間、70℃に維持し、その後、室温まで冷却させて、固形分32.4重量%、酸価31mgKOH/g(固形分換算)の共重合体aの溶液を得た。
【0065】
得られた第1樹脂の重量平均分子量Mwは20,000、分子量分布は3.20であった。
【0066】
製造例2.アルカリ可溶性樹脂の合成
還流冷却器、滴下漏斗および撹拌機を備えた1Lのフラスコ内を窒素雰囲気とし、メチルエチルジエチレングリコール300重量部を入れて、撹拌しながら70℃まで加熱した。次に、下記化学式4および化学式5の混合物(モル比は50:50)300重量部、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート((3−ethyloxetan−3−yl)methyl methacrylate)150重量部、およびメタクリル酸50重量部を、メチルエチルジエチレングリコール140重量部に溶解して溶液を調製した。
【0067】
【化3】
【0068】
調製された溶液を、滴下漏斗を用いて、70℃に保温したフラスコ内に、4時間かけて滴下した。一方、光重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30重量部を、メチルエチルジエチレングリコール225重量部に溶解した溶液を、別の滴下漏斗を用いて、4時間かけて、フラスコ内に滴下した。光重合開始剤の溶液の滴下が終わった後、4時間、70℃に維持し、その後、室温まで冷却させて、固形分36.7重量%、酸価59mgKOH/g(固形分換算)の共重合体bの溶液を得た。
【0069】
得られた第2樹脂の重量平均分子量Mwは8,000、分子量分布は1.85であった。
【0070】
製造例3.アルカリ可溶性樹脂の合成
ノルボルネン(norbornene)を添加しなかったことを除き、前記製造例1と同様の方法でアルカリ可溶性樹脂を製造して、固形分35.5重量%、酸価が123.7mgKOH/g(固形分換算)の共重合体cの溶液を得た。
【0071】
この時、樹脂の重量平均分子量は15,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
【0072】
製造例4.アルカリ可溶性樹脂の合成
3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(3−Acryloyloxy−2−hydroxypropyl methacrylate)を添加しなかったことを除き、前記製造例1と同様の方法でアルカリ可溶性樹脂を製造して、固形分35.5重量%、酸価が123.7mgKOH/g(固形分換算)の共重合体dの溶液を得た。
【0073】
この時、樹脂の重量平均分子量は13,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
【0074】
<実施例および比較例>
下記表1に記載された組成および含有量で混合し、3時間撹拌して、ネガティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
注)前記表1において、
a:製造例1の樹脂
b:製造例2の樹脂
c:製造例3の樹脂
d:製造例4の樹脂
B−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
B−2:エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリアクリレート(Ethoxylated trimethylolpropane triacrylate)
C−1:オキシム系光重合開始剤OXE−01(製造会社:BASF)
C−2:イミダゾール系光重合開始剤TCDM(製造会社:保土谷社)
C−3:アセトフェノン系光重合開始剤I−369(製造会社:BASF)
D−1:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(MEDG)
D−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
D−3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
E−1:2,4−ジエチルチオキサントン(2,4−Diethyl thioxanthone、C−DETX)
F−1:SH−8400(製造会社:ダウコーニング)
【0077】
<実験例>
ITO膜を成膜した横縦2インチのガラス基板(イーグル2000;コーニング社製)を、中性洗剤、水、およびアルコールで順次洗浄した後、乾燥した。この基板上に、前記実施例1〜8および比較例1〜6で製造された感光性樹脂組成物をそれぞれスピンコーティングした後、ホットプレート(Hot plate)を用いて、90℃で120秒間プリベークした。前記プリベークした基板を常温に冷却後、石英ガラス製フォトマスクとの間隔を150μmとして、露光器(UX−1100SM;Ushio(株)製)を用いて、60mJ/cmの露光量(365nm基準)で光を照射した。
【0078】
光照射後、非イオン系界面活性剤0.12%とTMAH2.38%を含有する水系現像液に、前記塗膜を25℃で60秒間浸漬して現像し、水洗後、オーブン中にて、90℃で1時間ポストベークを実施した。こうして得られたパターンを、以下のように物性評価を実施し、その結果を下記表2に示した。
【0079】
耐化学性評価
90℃で1時間加熱して硬化段階を経た塗膜を、50℃のetchant(MA−S02、東友ファインケム)溶液(耐酸性評価)、または50℃のstripper(SAM−19、東友ファインケム)(耐剥離液性評価)にそれぞれ10分間浸漬した。前記複数の溶液に放置した時の厚さ変化を観察することにより、耐化学性評価を実施した。厚さ変化率は下記数式1で計算し、厚さ変化率が少ないほど好ましいといえる。評価した結果を下記表2に記載した。
[数式1]
厚さ変化率(%)={(溶液放置前の膜厚さ−溶液放置後の膜厚さ)/(溶液放置前の膜厚さ)}×100(%)
【0080】
前記数式1による厚さ変化率が5%以下であれば「○」、5%超過〜10%以下であれば「△」、10%超過であれば「X」と評価した。
【0081】
密着性評価
90℃で1時間加熱して硬化段階を経た塗膜を、50℃のetchant(MA−S02、東友ファインケム)溶液(耐酸性評価)、または50℃のstripper(SAM−19、東友ファインケム)溶液(耐剥離液性評価)にそれぞれ2分間浸漬した。
【0082】
その後、ASTM D−3359−08の標準試験条件に基づいて、カッターでカッティング(Cutting)した表面を、テープ(Tape)を貼って剥がす方法で密着性を確認した。
【0083】
薬液処理後に、Cutting/Tape試験で塗膜の剥離が発生する程度を、標準試験法に基づいて0B〜5Bに規定して、5Bが最も優れた性能を有すると判断し、評価結果を下記表2に記載した。
<密着性評価基準>
5B:剥離0%
4B:剥離0%超過〜5%未満
3B:剥離5〜15%未満
2B:剥離15〜35%未満
1B:剥離35〜65%未満
0B:65%以上
【0084】
残膜率評価
製造されたレジスト溶液を基板に塗布してそれぞれスピンコーティングした後、ホットプレート(Hot plate)を用いて、90℃で120秒間プリベークした。前記プリベークした基板を常温に冷却後、露光器(UX−1100SM;Ushio(株)製)を用いて、60mJ/cmの露光量(365nm基準)で塗膜の全面に光を照射した。
【0085】
光照射後、非イオン系界面活性剤0.12%とTMAH2.38%を含有する水系現像液に、前記塗膜を25℃で60秒間浸漬して現像し、水洗後、オーブン中にて、90℃で1時間ポストベークを実施した。この時、露光後の膜厚さとポストベーク工程終了後の膜厚さを測定して、下記数式2を用いて現像残膜率を測定した。
【0086】
【数1】
【0087】
<評価基準>
70%超過:適合
【0088】
パターンプロファイル(Pattern profile)評価
上記に記載されているように、リソグラフィ(lithography)工程を通して作製されたパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、表面が滑らかで異常がない場合を「○」、パターンに一部スカム(scum)または残渣が発生した場合に「△」、パターンにスカム(scum)あるいは残渣が多い場合を「X」と判断し、下記表2に記載した。
【0089】
保存安定性評価
実施例1〜8および比較例1〜6で製造された感光性樹脂組成物を、23℃の保管条件で60日間保管して粘度変化を観察し、結果を下記表2に記載した。
<保存安定性評価基準>
粘度変化が2cp以上:X
粘度変化が2cp未満:○
【0090】
透過率評価
前記実施例1〜8および比較例1〜6の感光性樹脂組成物に対して、それぞれUv−vis spectrometer[V−650;日本分光(株)製](石英セル、光路長さ;1cm)を用いて、400nmにおける平均透過率を測定した。結果を下記表2に記載した。
【0091】
【表2】
【0092】
前記表2に記載されているように、本発明のネガティブ型感光性樹脂組成物である実施例1〜8の組成物は、耐化学性、密着性評価においていずれも優れた結果を示しており、残膜率評価も適合していた。パターンプロファイル評価においては残渣およびスカムが発生せず、保存安定性にも優れていた。
【0093】
反面、比較例1〜6の組成物は、耐化学性および密着性評価の結果がいずれも不良であり、パターンプロファイル評価においてもスカムおよび残渣が発生し、適合しない結果を示した。