特許第6608405号(P6608405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6608405-電圧変換ユニット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608405
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】電圧変換ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20191111BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20191111BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20191111BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20191111BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H02J1/00 304D
   H02M3/00 H
   H02J7/14 H
   H02J7/14 M
   B60R16/03 S
   H01M10/44 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-139635(P2017-139635)
(22)【出願日】2017年7月19日
(65)【公開番号】特開2019-22356(P2019-22356A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡 和久
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝幸
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−328988(JP,A)
【文献】 特開2017−088086(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0067287(US,A1)
【文献】 特開2007−267509(JP,A)
【文献】 特開2002−320338(JP,A)
【文献】 特開2014−24535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00−1/16
H02J 7/00−7/12
H02J 7/14
H02J 7/34−7/36
H02M 3/00
B60R 16/03
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源システムと第2電源システムとの間で双方向に電力供給可能な電圧変換器と、
前記電圧変換器と並列に設けられたバイパススイッチとを備え、
前記電圧変換器が、
前記第1電源システムと前記第2電源システムとの電圧差を検出する検出部と、
前記第1電源システムと前記第2電源システムとの電圧差と前記バイパススイッチ180のオンオフとを対応付けたテーブル、および前記検出された電圧差に基づいて、前記バイパススイッチの切換えを制御するスイッチ制御部と、
を備え
前記テーブルにおいて、各電圧差は、前記バイパススイッチを接続状態にしたときの前記バイパススイッチにおける消費電力が前記バイパススイッチを切断状態にしたときの前記電圧変換器における消費電力以上になるならば、前記バイパススイッチのオフに対応付けられ、前記バイパススイッチを接続状態にしたときの前記バイパススイッチにおける消費電力が前記バイパススイッチを切断状態にしたときの前記電圧変換器における消費電力より小さくなるならば、前記バイパススイッチのオンに対応付けられていることを特徴とする電圧変換ユニット。
【請求項2】
前記検出部は、前記第1電源システムと前記第2電源システムとの間に流れる電流をさらに検出し、
前記スイッチ制御部は、さらに前記電流に基づいて前記バイパススイッチの切換えを制御することを特徴とする請求項1に記載の電圧変換ユニット。
【請求項3】
前記検出部は、温度をさらに検出し、
前記スイッチ制御部は、さらに前記温度に基づいて前記バイパススイッチの切換えを制
御することを特徴とする請求項1または2に記載の電圧変換ユニット。
【請求項4】
前記テーブルにおいて各電圧差は、前記バイパススイッチを接続状態にしたときの前記バイパススイッチにおける消費電力が前記バイパススイッチを切断状態にしたときの前記電圧変換器における消費電力以上になる場合であっても、当該電圧差で前記電圧変換器を動作させたときに前記電圧変換器の動作が不安定になるならば、前記バイパススイッチのオンに対応付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧変換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換器を含んだ電圧変換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等において、電圧の異なる2系統の電源システムを搭載することが行なわれている。例えば、従来の12Vの電源システムに加えて、48Vの電源システムを搭載する等である。
【0003】
電圧の異なる2系統の電源システムを搭載した際に、相互に電力のやり取りができれば、例えば、一方の電源システムがダウンした場合に、他方の電源システムかその分の電力を補うことが可能となる。また、一方の電源システムのバッテリから他方の電源システムのバッテリに充電することも可能となる。そこで、相互に電力のやり取りを行なえるようにするために、双方向電圧変換器、例えば、双方向DCDCコンバータを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−226199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2は、A系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間に設けられた双方向DCDCコンバータ210を示している。本図に示すように、A系統の電源システム220は、第1負荷221、メインバッテリ(Pb)222、オルタネータ223を備えており、B系統の電源システム230は、サブバッテリ(Lib)231、第2負荷232を備えている。
【0006】
ここで、A系統の電源システム220の電圧VaよりもB系統の電源システム230の電圧Vbの方が高いものとする。ただし、電圧Va、電圧Vbは、それぞれのバッテリや負荷等の状況により変動する。
【0007】
A系統の電源システム220からB系統の電源システム230に電力を供給する場合には、双方向DCDCコンバータ210は、電圧Vaを電圧Vb付近に昇圧する動作を行なう。逆に、B系統の電源システム230からA系統の電源システム220に電力を供給する場合には、双方向DCDCコンバータ210は、電圧Vbを電圧Va付近に降圧する動作を行なう。
【0008】
例えば、B系統の電源システム230からA系統の電源システム220に電力供給を行なうときに、B系統の電源システム230の電圧VbとA系統の電源システム220の電圧Vaとで電圧差が小さく、電圧変換が必ずしも必要でない場合がある。
【0009】
このような場合に、双方向DCDCコンバータ210を介して電力を供給すると、双方向DCDCコンバータ210の動作で消費される電力が無駄になる。電力授受を行なう際に、双方向DCDCコンバータ210等の電圧変換器における消費電力を削減することができれば、例えば、車両の燃費向上に貢献することになり好ましい。
【0010】
そこで、本発明は、電源システム間で電力授受を行なう際の電圧変換器における消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一態様である電圧変換ユニットは、第1電源システムと第2電源システムとの間で双方向に電力供給可能な電圧変換器と、前記電圧変換器と並列に設けられたバイパススイッチとを備え、前記電圧変換器が、前記第1電源システムと前記第2電源システムとの電圧差を検出する検出部と、あらかじめ定められた規則にしたがって、前記電圧差に基づいて、前記バイパススイッチの切換えを制御するスイッチ制御部と、を備えたことを特徴とする。
電圧差が規則に定められた条件を満たす場合に、電圧変換器を介さずに電力供給を行なうことができるようになるため、電源システム間で電力授受を行なう際の電圧変換器における消費電力を削減することができる。
【0012】
ここで、前記検出部は、前記第1系統電源システムと前記第2系統電源システムとの間に流れる電流をさらに検出し、前記スイッチ制御部は、さらに前記電流に基づいて前記バイパススイッチの切換えを制御してもよい。
第1系統電源システムと第2系統電源システムとの間に流れる電流により消費電力が変化する場合を考慮したものである。
【0013】
また、前記検出部は、温度をさらに検出し、前記スイッチ制御部は、さらに前記温度に基づいて前記バイパススイッチの切換えを制御してもよい。
温度により消費電力が変化する場合を考慮したものである。
【0014】
また、前記規則は、前記バイパススイッチを接続状態にしたときの前記バイパススイッチにおける消費電力と、前記バイパススイッチを切断状態にしたときの前記電圧変換器における消費電力とを比較して定められていてもよい。
これにより、電圧変換器とバイパススイッチとで消費電力の少ない経路を選択することができるようになる。
【0015】
前記規則は、さらに、前記バイパススイッチを接続状態にしたときの前記電圧変換器の動作安定性と、前記バイパススイッチを切断状態にしたときの前記電圧変換器の動作安定性とを比較して定められていてもよい。
これにより、電圧変換器の動作が不安定になることを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源システム間で電力授受を行なう際の電圧変換器における消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電圧変換ユニットの構成を説明する図である。
図2】A系統の電源システムとB系統の電源システムとの間に設けられた双方向DCDCコンバータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る電圧変換ユニット10の構成を説明する図である。本図に示すように、電圧変換ユニット10は、A系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間に設けられており、A系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間で電力授受を行なう。ここで、A系統の電源システム220と接続している側をA側接続端と称し、B系統の電源システム230と接続している側をB側入接続端と称する。
【0019】
A系統の電源システム220は、第1負荷221、メインバッテリ(Pb)222、オルタネータ223を備えており、B系統の電源システム230は、サブバッテリ(Lib)231、第2負荷232を備えている。A系統の電源システム220の電圧VaよりもB系統の電源システム230の電圧Vbの方が高いものとする。ただし、電圧Va、電圧Vbは、それぞれのバッテリや負荷等の状況により変動する。
【0020】
電圧変換ユニット10は、電圧変換器100とバイパススイッチ180とを備えている。バイパススイッチ180は、例えば、半導体スイッチで構成することができ、電圧変換器100と並列に接続されている。バイパススイッチ180は、オン時にオン抵抗を有している。消費電力削減の観点からはオン抵抗は小さいほど好ましい。
【0021】
図1に示すように、電圧変換器100は、電圧変換部110、検出部120、スイッチ制御部130を備えている。また、スイッチ制御部130は、切換テーブル131を備えている。
【0022】
電圧変換部110は、A側接続端とB側接続端との間において双方向で電圧変換を行なう。電圧変換部110は、例えば、双方向DCDCコンバータで構成することができる。電圧変換部110の電圧変換の方式は問わない。例えば、リニアレギュレータ方式、チョッパ回路方式、スイッチングレギュレータ方式等とすることができる。
【0023】
検出部120は、電圧変換ユニット10内外の物理量を検出する。検出する物理量は、A側接続端に接続されたA系統の電源システム220の電圧Va、B側接続端に接続されたB系統の電源システム230の電圧Vbとすることができる。さらに、電圧変換ユニット10近傍の温度を検出するようにしてもよい。また、電圧変換ユニット10を介してA系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間で流れる電流を検出するようにしてもよい。
【0024】
スイッチ制御部130は、電圧変換ユニット10における電圧変換が不要である場合に、検出部120の検出結果に基づいて、バイパススイッチ180のオンオフを制御する。なお、電圧変換ユニット10における電圧変換の要不要は、例えば、上位装置からの指示に基づいて判断することができる。スイッチ制御部130は、バイパススイッチ180のオンオフを、切換テーブル131を参照して決定する。
【0025】
ここで、切換テーブル131は、電圧Vaと電圧Vbとの電圧差dVと、バイパススイッチ180のオンオフとを対応付けたテーブルである。すなわち、スイッチ制御部130は、電圧Vaと電圧Vbとの電圧差dVが切換テーブル131で規定された範囲内であれば、バイパススイッチ180をオンにし、それ以外の場合はバイパススイッチ180をオフにする。
【0026】
スイッチ制御部130は、例えば、マイクロコンピュータ等の演算装置で構成することができ、切換テーブル131は、例えば、マイクロコンピュータが搭載するメモリ上に格納することができる。
【0027】
バイパススイッチ180をオフにした場合は、電圧変換ユニット10を介したA系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間の電力供給は、電圧変換器100を経由して行なわれる。このとき、電圧変換部110の動作電力が消費電力となる。
【0028】
バイパススイッチ180をオンにした場合は、電圧変換ユニット10を介したA系統の電源システム220とB系統の電源システム230との間の電力供給は、バイパススイッチ180を経由して行なわれる。バイパススイッチ180はオン抵抗を有しているため、バイパススイッチ180を流れる電流と電圧差dVとの積、言い換えれば電圧差dVの2乗をオン抵抗で割った値が消費電力となる。
【0029】
切換テーブル131は、電圧差dVに対応して、消費電力が少なくなるようにバイパススイッチ180のオンオフを規定している。すなわち、切換テーブル131は、電圧変換部110およびバイパススイッチ180のスペック値や実測値等から、電圧差dV毎に、バイパススイッチ180をオフにしたときの消費電力と、オンにしたときの消費電力とを求め、より消費電力が少なくなる経路が選択されるようにあらかじめ作成しておく。
【0030】
例えば、スペック上、3kWの電圧変換部110が、ある電圧差dV1における電圧変換部110の変換効率が97%であったとすると、3kW×(1−0.97)=90Wが電圧変換部110の消費電力となる。一方、バイパススイッチ180のオン抵抗が1mΩであったとすると、(dV1^2/0.001)Wがバイパススイッチ180の消費電力となる。バイパススイッチ180の消費電力の方が少ないものとすると、電圧差dV1では、バイパススイッチをオンにするように切換テーブル131が規定される。
【0031】
このため、切換テーブル131は、例えば、V1<dV<V2、V3<dV<V4であれば、バイパススイッチ180をオンにするというような形式とすることができる。もちろん他の形式で切換テーブル131を規定するようにしてもよい。
【0032】
ところで、電圧差dVが小さい場合等に電圧変換部110を動作させたときに、電圧変換部110の動作が不安定になる場合がある。例えば、昇圧と降圧とを繰り返す昇降圧動作となり、リップル電圧が増加したり電圧変動が発生する等である。
【0033】
そこで、電圧変換部110の動作が不安定となる電圧差dVの範囲では、消費電力の多少にかかわらず、バイパススイッチ180をオンにするように切換テーブル131を定めておくようにしてもよい。これにより、電圧変換部110の動作が不安定になることを防止することができる。この場合、例えば、V5<dV<V6であれば、バイパススイッチ180をオンにするという規則を切換テーブル131に追加することができる。
【0034】
また、電圧変換部110の消費電力やバイパススイッチ180の消費電力は、電圧差dV以外の影響を受ける場合もある。例えば、周辺温度に応じて消費電力が変化する場合には、周辺温度毎に切換テーブル131を用意しておくようにする。
【0035】
この場合、周辺温度を検出部120が検出し、スイッチ制御部130は、検出された周辺温度に対応した切換テーブル131に基づいて、バイパススイッチ180のオンオフを制御する。例えば、5度刻みで切換テーブル131を作成しておき、検出された温度に対応した切換テーブル131を用いるようにする。
【0036】
また、電圧変換部110を流れる電流に応じて消費電力が変化する場合には、電流毎に切換テーブル131を用意しておくようにする。この場合、電圧変換ユニット10のA側接続端とB側接続端との間を流れる電流を検出部120が検出し、スイッチ制御部130は、検出された電流に対応した切換テーブル131に基づいて、バイパススイッチ180のオンオフを制御する。
【0037】
さらには、電源システムのバッテリ、例えば、B系統の電源システム230のサブバッテリ231の種類(鉛、リチウムイオン、キャパシタ等)毎に切換テーブル131を用意してもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の電圧変換ユニット10によれば、検出部120により検出された電源システム間の電圧差に基づいて、スイッチ制御部130がバイパススイッチ180の切換えを制御する。これにより、電圧変換部110を介さずに電力供給を行なうことができるようになるため、電源システム間で電力授受を行なう際の電圧変換器100における消費電力を削減することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 電圧変換ユニット
100 電圧変換器
110 電圧変換部
120 検出部
130 スイッチ制御部
131 切換テーブル
180 バイパススイッチ
220 A系統電源システム
222 メインバッテリ
230 B系統電源システム
231 サブバッテリ
図1
図2