(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608420
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】自動車用内装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20191111BHJP
B32B 21/00 20060101ALI20191111BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20191111BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20191111BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20191111BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20191111BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20191111BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20191111BHJP
B29C 45/13 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B32B21/00
B32B21/08
B32B27/06
B32B27/40
B32B27/18 Z
B29C45/14
B29C45/16
B29C45/13
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-501661(P2017-501661)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公表番号】特表2017-522217(P2017-522217A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】KR2015007285
(87)【国際公開番号】WO2016010334
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0088793
(32)【優先日】2014年7月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンジョ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ムソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォンクック
(72)【発明者】
【氏名】パク,チュンフ
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−264261(JP,A)
【文献】
韓国特許第2010−0913811(KR,B1)
【文献】
特表2009−536234(JP,A)
【文献】
特開平05−131487(JP,A)
【文献】
特開2005−313345(JP,A)
【文献】
特開平04−103635(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0025910(US,A1)
【文献】
特開昭59−41365(JP,A)
【文献】
特開2005−298837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B29C 45/13−45/14
B32B 21/00、27/06、27/18、27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニヤ層の両面にコーティング層を含み、前記ベニヤ層の一面のコーティング層に背面層、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層を含み、
前記コーティング層は、水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液から形成され、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、25重量%〜40重量%の固形分を含み、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、シリカ化合物をさらに含み、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、固形分100重量部に対して前記シリカ化合物を5〜30重量部含む、ことを特徴とする自動車用内装材。
【請求項2】
前記コーティング層の厚さは、5μm〜50μmである、請求項1に記載の自動車用内装材。
【請求項3】
前記ベニヤ層の厚さは、100μm〜600μmである、請求項1に記載の自動車用内装材。
【請求項4】
前記前面層及び背面層は、それぞれアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の自動車用内装材。
【請求項5】
自動車用内装材を製造する方法であって、
前記自動車用内装材は、
ベニヤ層の両面にコーティング層を含み、前記ベニヤ層の一面のコーティング層に背面層、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層を含み、
前記コーティング層は、水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液から形成され、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、25重量%〜40重量%の固形分を含み、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、シリカ化合物をさらに含み、
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、固形分100重量部に対して前記シリカ化合物を5〜30重量部含み、
ベニヤ層を設けるステップ;前記ベニヤ層の両面に水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液を塗布及び乾燥してコーティング層を形成するステップ;前記ベニヤ層の両面にコーティング層が形成されたリアルウッドフィルム層を予備成形するステップ;前記ベニヤ層の一面のコーティング層に一次インサート射出して背面層を形成するステップ;及び、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に二次インサート射出して前面層を形成するステップを含み、
前記コーティング層を形成するステップにおいて、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液にシリカ化合物をさらに添加するステップを含む、ことを特徴とする自動車用内装材の製造方法。
【請求項6】
前記シリカ化合物は、ゾル−ゲル工法により形成される、請求項5に記載の自動車用内装材の製造方法。
【請求項7】
前記予備成形は、100℃〜150℃の温度で20秒〜120秒の時間内に行われる、請求項5に記載の自動車用内装材の製造方法。
【請求項8】
前記予備成形後に、前記リアルウッドフィルム層の不要な部分を切断するステップをさらに含む、請求項5に記載の自動車用内装材の製造方法。
【請求項9】
前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出が同時に行われる、請求項5に記載の自動車用内装材の製造方法。
【請求項10】
前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出は、200℃〜250℃の温度で行われる、請求項5に記載の自動車用内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車用内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の内・外装材として自動車のコンソールボックスや計器盤周辺のパネル等に樹脂成形部品が用いられており、電気炊飯器等のケースやカバー等の家電製品にも樹脂成形品が広く利用されている。
【0003】
特に、自動車内部の運転席及び助手席の周辺に取り付けられるダッシュボード(dash board)及びオーディオデッキ、ギア変速部、エアバッグ、ドアロック及び窓開閉部等には、各種の制御部及び便宜装置が設けられ、各種の制御装置及び便宜装置の外郭と内装材との間の隙間には、内装材仕上げパネルが設けられ、内装材を仕上げ処理するようになり、このような内装材は、車両の室内に対する外観を決定する重要な要素となっている。
【0004】
このように、自動車用内装材は、自動車内部の美感に相当な影響を及ぼすようになるので、自動車が個性化される現在の傾向において、外観上の美的な要求が益々高くなっている実情である。
【0005】
それに伴い、近来は、外観上の洗練美及び高級な質感を得るために、リアルウッド等のリアルウッド製品を素材にした自動車用内装材への要求が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、ベニヤ層にコーティング層を含み、前記コーティング層の両面に背面層または前面層を含む射出成形品である自動車用内装材を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記自動車用内装材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例において、ベニヤ層の両面にコーティング層を含み、前記ベニヤ層の一面のコーティング層に背面層、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層を含む自動車用内装材を提供する。
【0009】
前記コーティング層は、前記コーティング層は、水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液から形成され得る。
【0010】
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、約10重量%〜約40重量%の固形分を含むことができる。
【0011】
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、シリカ化合物をさらに含むことができる。
【0012】
前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、固形分100重量部に対して前記シリカ化合物を5〜30重量部含むことができる。
【0013】
前記コーティング層の厚さは、約5μm〜約50μmであってよい。
【0014】
前記ベニヤ層の厚さは、約100μm〜約600μmであってよい。
【0015】
前記前面層及び背面層は、それぞれアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0016】
本発明の他の具現例において、ベニヤ層を設けるステップ;前記ベニヤ層の両面に水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液を塗布及び乾燥してコーティング層を形成するステップ;前記ベニヤ層の両面にコーティング層が形成されたリアルウッドフィルム層を予備成形するステップ;前記ベニヤ層の一面のコーティング層に一次インサート射出して背面層を形成するステップ;及び、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に二次インサート射出して前面層を形成するステップを含む自動車用内装材の製造方法を提供する。
【0017】
前記コーティング層を形成するステップにおいて、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液にシリカ化合物をさらに添加するステップを含むことができる。
【0018】
前記シリカ化合物は、ゾル−ゲル工法により形成され得る。
【0019】
前記予備成形は、100℃〜150℃の温度で約20秒〜約120秒の時間内に行われ得る。
【0020】
前記自動車用内装材の製造方法は、前記予備成形後に、前記リアルウッドフィルム層の不要な部分を切断するステップをさらに含むことができる。
【0021】
前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出は、同時に行われ得る。
【0022】
前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出は、約200℃〜約250℃の温度で行われ得る。
【発明の効果】
【0023】
前記自動車用内装材は、耐熱性、貼付性及び成形性に優れ、外観上、高級な質感を具現することができる。
【0024】
前記自動車用内装材の製造方法は、高い工程コストと製造工程の複雑性による高い不良率を改善し、製造原価を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一具現例である自動車用内装材の断面を示したものである。
【
図2】本発明の他の具現例である自動車用内装材の製造方法を図式化したものである。
【
図3】実施例において製造された自動車用内装材のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具現例を詳細に説明する。ただし、これは、例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述の請求項の範疇により定義されるだけである。
【0027】
自動車用内装材
本発明の一具現例において、ベニヤ層の両面にコーティング層を含み、前記ベニヤ層の一面のコーティング層に背面層、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層を含む自動車用内装材を提供する。
【0028】
自動車用内装材としてリアルウッドが含まれた製品を用いる場合、自動車の室内デザインを高級化することができ、クラッシュパッド(Crash Pad)またはドアガーニッシュ(Door Garnish)等に用いられていた。しかし、リアルウッドを含む内装材の製造工程が複雑であり、高い製造コストによって自動車市場に拡大されるには困難があった。
【0029】
そこで、前記自動車用内装材は、後述の製造方法により製造されることで、高い工程コストと製造工程の複雑性による高い不良率を改善し、製造原価を下げることができ、ベニヤ層とコーティング層により耐熱性、貼付性及び成形性に優れ、外観上、高級な質感を具現することができる。
【0030】
図1は、本発明の一具現例である自動車用内装材の断面を示したものであり、
図1を参考にすると、前記自動車用内装材100は、ベニヤ層10の両面にコーティング層20を含み、前記ベニヤ層の一面のコーティング層20に背面層40、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層30を含むことができる。
【0031】
前記自動車用内装材は、ベニヤ層10の両面にコーティング層20を含むことにより、耐熱性、貼付性及び成形性を確保するものであって、前記ベニヤ層の両面にコーティング層を含むことでリアルウッドフィルム層を形成することができる。
【0032】
前記コーティング層は、水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液から形成され得、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、それぞれ水分散性アクリルポリウレタン樹脂粒子または水分散性ポリウレタン樹脂粒子が均一に分散されている溶液を称するものである。
【0033】
これにより、前記コーティング層は、水分散性ポリウレタン樹脂または水分散性アクリルポリウレタン樹脂を含むことができ、前記水分散性ポリウレタン樹脂または水分散性アクリルポリウレタン樹脂は、前記コーティング層の耐熱性を向上させ、予備成形ステップにおいて熱的安定性を維持することができ、射出時には、向上した貼付性及び成形性を確保することができ、ベニヤ層に圧着されてベニヤ層の短所を補強することができる。
【0034】
前記水分散性ポリウレタン樹脂は、ポリオール化合物、イソシアネート化合物が合成されることによって形成され、例えば、ポリカーボネートジオール、イソホロンジイソシアネートとジメチロールプロピオン酸が合成されて形成され得る。前記水分散性ポリウレタン樹脂は、親水性基を多く含んでいる前記ベニヤ層の表面と空隙に円滑に浸透し、低い成形性を有する前記ベニヤ層に伸縮性を付与することができ、プレフォーミングと射出成形による前記ベニヤ層の成形を容易に具現することができる。
【0035】
また、前記水分散性アクリルポリウレタン樹脂は、前記水分散性ポリウレタン樹脂にアクリル単量体化合物を添加して形成され得、例えば、前記アクリル単量体化合物は、メチルメタクリレートを含むことができる。前記水分散性アクリルポリウレタン樹脂は、前記水分散性ポリウレタン樹脂と同様に、親水性基を多く含んでいる前記ベニヤ層の表面と空隙に円滑に浸透し、低い成形性を有する前記ベニヤ層に伸縮性を付与することができ、プレフォーミングと射出成形による前記ベニヤ層の成形を容易に具現することができる。
【0036】
また、前記ベニヤ層に熱安定性を付与し、プレフォーミングと射出工程時、熱により前記ベニヤ層とモールドがくっつく現象を抑制することができ、射出成形により形成される前面層及び背面層と前記リアルウッドフィルム層との貼付性を付与し、自動車用内装材の各層間の密着性を容易に具現することができる。
【0037】
前記水分散性ポリウレタン樹脂分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン樹脂分散液は、約10重量%〜約40重量%の固形分を含むことができる。
【0038】
前記固形分を約10重量%未満で含む場合、前記ベニヤ層の表面及び空隙に十分な樹脂が浸透できず、成形性が低下することがあり、約40重量%を超えて含む場合、前記コーティング層の厚さが厚くなり、成形による形態が維持されずに復元されることがあって、前記範囲の固形分を維持することが前記ベニヤ層の成形性の確保に有利である。
【0039】
前記コーティング層は、シリカ化合物をさらに含むことができる。前記シリカ化合物は、シリカを主成分とする化合物を称するものであり、前記シリカ化合物によって前記コーティング層の耐熱性を向上させることができる。即ち、前記コーティング層の形成のための前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、シリカ化合物をさらに含むことができる。
【0040】
具体的に、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液は、固形分100重量部に対して前記シリカ化合物を約5〜約30重量部含むことができ、例えば、約5〜約20重量部含むことができる。前記シリカ化合物は、前記範囲の含量で含まれることにより、前記コーティング層の耐熱性を向上させることができ、前記ベニヤ層の熱分散と耐熱性を向上させることができて、プレフォーミングと射出成形時、金型から伝達される熱によるベニヤ層の焼け現象を抑制することができる。
【0041】
前記コーティング層の厚さは、約5μm〜約50μmであってよい。前記コーティング層の厚さが約5μm未満である場合、ベニヤ層の成形性が低下することがあり、約50μmを超える場合、成形による形態が維持されずに復元され得る問題点があって、前記範囲を維持して成形による形態を維持することができる。
【0042】
前記ベニヤ(veneer)層は、リアルウッド(real wood)を意味し、通常の突き板合板、プラスチック合板等に比べて外観が華やかで、高級感があり、自動車室内に洗練美及び審美感を付与することができる。
【0043】
前記ベニヤ層の厚さは、約100μm〜約600μm、例えば、150μm〜約250μmであってよい。前記ベニヤ層は、両面にコーティング層を含んでリアルウッドフィルム層を形成し、厚さが薄いにもかかわらず、形態がずれることがない。
【0044】
例えば、前記ベニヤ層であるリアルウッドは、単一の天然ウッド層を含むことができ、前記天然ウッド層は、ヒノキ、くるみの木、アフロルモシア、バーズアイ木等を薄く挽いたベニヤ(veneer)を含むことができる。
【0045】
また、前記ベニヤ層は、基材上に形成された天然ウッド層を含むことができるが、前記基材は、クラフト紙、パルプを原料とする紙等を含むことができ、天然ウッド層の割れ現象及びクラックの発生を最小化することができる。
【0046】
後述の自動車用内装材の製造方法により、簡単な工程で前記ベニヤ層の両面にコーティング層を形成することで、外観上、洗練美を具現するリアルウッドフィルム層を得ることができる。
【0047】
前記ベニヤ層の一面のコーティング層に背面層40、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に前面層30を含むことができる。前記前面層及び背面層は、前記熱可塑性樹脂がコーティング層の一面または裏面に射出されて形成される層であって、自動車用内装材の耐久性と、形状維持のための支持台の役割を果たし、前記前面層は、インテリアの効果もまた具現することができる。
【0048】
前記前面層及び背面層は、それぞれアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の熱可塑性樹脂を含むことができる。また、前記前面層及び背面層の厚さは、それぞれ約1mm〜約3mmであってよい。
【0049】
自動車用内装材の製造方法
本発明の他の具現例は、ベニヤ層を設けるステップ;前記ベニヤ層の両面に水分散性ポリウレタン分散液または水分散性アクリルポリウレタン分散液を塗布及び乾燥してコーティング層を形成するステップ;前記ベニヤ層の両面にコーティング層が形成されたリアルウッドフィルム層を予備成形するステップ;前記ベニヤ層の一面のコーティング層に一次インサート射出して背面層を形成するステップ;及び、前記ベニヤ層の裏面のコーティング層に二次インサート射出して前面層を形成するステップを含む、自動車用内装材の製造方法を提供する。
【0050】
図2は、本発明の他の具現例である自動車用内装材の製造方法を図式化したものであり、
図2を参考にすると、前記自動車用内装材の製造方法は、ベニヤ層の両面にコーティング層を形成するステップ、予備成形するステップ、背面射出及び前面射出するステップを含むことにより、射出成形品である自動車用内装材を製造することができる。
【0051】
前記ベニヤ層の両面に形成されるコーティング層は、予備成形時に耐熱性を確保し、射出成形時に貼付性を確保するためのものであり、固形分を約10重量%〜約40重量%含む水分散型ポリウレタン分散液または水分散型アクリルポリウレタン分散液をベニヤ層の両面にバーコーター(Mayer Bar coater)で約20μm〜約50μmの厚さで塗布し、約100℃〜約150℃のオーブンで約2分〜約5分間乾燥して形成され得る。
【0052】
前記コーティング層を形成するステップにおいて、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液にシリカ化合物をさらに添加するステップを含むことができる。
【0053】
前記シリカ化合物は、コーティング層の耐熱性を高めるために添加され得、前記水分散性ポリウレタン分散液または前記水分散性アクリルポリウレタン分散液の固形分100重量部に対して約5重量部〜約30重量部添加され得る。
【0054】
前記シリカ化合物は、ゾル−ゲル工法により形成され得る。ゾル−ゲル工法は、加水分解して得られるゾルからゲルを経て化合物を形成する工程であり、前記シリカ化合物は、ゾル−ゲル工法により形成されたシリカゾル(Silica sol)であってよい。
【0055】
ベニヤ層の耐熱性、貼付性及び成形性の確保のために、両面にコーティング層を形成し、その後、両面にコーティング層が形成されたベニヤ層、即ち、リアルウッドフィルム層を予備成形するステップを含むことができる。
【0056】
前記予備成形は、射出成形が進行される前に適した形態を確保するために進行される工程であり、前記予備成形は、約100℃〜約150℃の温度で約20秒〜約120秒の時間内に行われ得る。
【0057】
前記予備成形を通して、前記ベニヤ層の両面に前記コーティング層が形成された前記リアルウッドフィルム層を射出成形に適用される適した形態に形成することができ、前記範囲の温度及び時間内で予備成形を行うことにより、リアルウッドフィルム層の割れと折り畳み現象を最小化することができる。
【0058】
前記自動車用内装材の製造方法は、前記予備成形後に、前記リアルウッドフィルム層の不要な部分を切断するステップをさらに含むことができる。
【0059】
前記予備成形を通して射出成形に適用される形態を前記リアルウッドフィルム層に付与することにより、成形品に含まれない不要な部分が発生し得、このとき、前記不要な部分を切断することができる。前記切断は、レーザ切削、ナイフ切削等、公知になった切断工程を通して進行され得る。
【0060】
前記予備形成されたリアルウッドフィルム層の一面または裏面のコーティング層に一次インサート射出または二次インサート射出を進行することで、最終成形品を確保することができ、前記成形品を自動車用内装材に用いることができる。
【0061】
前記一次インサート射出を通しては背面層を、前記二次インサート射出を通しては前面層を形成することができ、前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出は、それぞれ行われるか、または同時に行われ得る。前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出が同時に行われることで、所要時間を短縮することができ、前記リアルウッドフィルム層に一定の温度条件を提供して前記前面層及び背面層の貼り付けを活発に行うことができる。
【0062】
前記一次インサート射出及び前記二次インサート射出は、約200℃〜約250℃の温度で行われ得る。前記インサート射出が行われる温度は、提供する熱可塑性樹脂によって調節され得るものであり、前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0063】
前記温度が約200℃未満である場合、熱可塑性樹脂の流動性が低下し、前面層及び背面層の形成が円滑でないことがあり、約250℃を超える場合、前記リアルウッドフィルム層にすすが発生するか、または前記フィルム層が金型にくっつくことがある。
【0064】
二次インサート射出により前面層を形成することが通常であるが、ポリウレタンキャスティング成形工程、スプレー工程、パウダーコーティング工程等を通して前面層を形成することができる。
【0065】
以下においては、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0066】
<実施例>
バーズアイ木を利用して150μmの厚さのベニヤ層を設けた。前記ベニヤ層の両面に、固形分に対比して10重量%を含むシリカ粒子と、固形分25重量%を含む水分散性アクリルポリウレタン分散液をバーコーター(Mayer Bar coater)で塗布し、130℃のオーブンで4分間乾燥して、20μmの厚さのコーティング層を形成した。
【0067】
前記ベニヤ層の両面にコーティング層が形成されたリアルウッドフィルム層を130℃の温度で100秒間射出成形に適した形態に予備成形し、完成された形態に不要な部分を切断した。
【0068】
その後、前記リアルウッドフィルム層の一面のコーティング層にポリカーボネート樹脂を200℃〜230℃でインサート射出して背面層を形成し、前記リアルウッドフィルム層の裏面のコーティング層にポリメチルメタクリレート樹脂を200℃〜220℃でインサート射出して前面層を形成することにより、自動車用内装材を製造した。
【0069】
図3は、実施例において製造された自動車用内装材のイメージである。
【符号の説明】
【0070】
10:ベニヤ層
20:コーティング
層
30:前面
層
40:背面層
100:自動車用内装材