(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608423
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】培養および検出装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
C12M1/34 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-504275(P2017-504275)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2017-510303(P2017-510303A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】FR2015050904
(87)【国際公開番号】WO2015155468
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】1453047
(32)【優先日】2014年4月7日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1458040
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512075213
【氏名又は名称】ビオメリュー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バルレット ピエール
(72)【発明者】
【氏名】サラ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ピエルキン ジョゼフ
【審査官】
松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−012398(JP,A)
【文献】
特開平08−285777(JP,A)
【文献】
特表2014−506798(JP,A)
【文献】
特開2005−261260(JP,A)
【文献】
特表2014−507664(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/110734(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0051723(US,A1)
【文献】
特開2012−226184(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02494202(GB,A)
【文献】
特開2010−161978(JP,A)
【文献】
特開2013−101192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験される試料中に存在する微生物の増殖から得られたコロニーの培養および高速検出を行うための装置であって、該装置は蛍光測定を行うようには構成されておらず、該装置が、
-加熱手段(6)と、
-透明なカバーで閉じられた少なくとも1つの容器が固定配置された、コロニーの形態の、膜または寒天タイプの、微生物成長培地が配置された検出面と、
-前記コロニーを可視化できる光学システムを含む検出システム(4)と、を備え、
前記装置が、加えて、前記容器における結露の形成を防止するためのシステムを含み、該システムが、温度を調節するための手段を含み、該手段が、
-前記容器の上部の温度を測定するように前記容器の上方で動作する第1の温度センサ(62)と、
-前記容器の底部の温度を測定するように前記容器の下方で動作する第2の温度センサ(70)と、
-前記容器の上方で作用する前記加熱手段(6)と、
-前記容器の下方で作用する冷却手段(7)と、
-前記センサ手段によって収集された情報の収集および分析と、前記加熱手段(6)および冷却手段(7)の制御とを行うことで、一方で所望の培養温度を生成し、他方で前記容器の表面に永久的に温度勾配を適用することができる、管理手段と、を備える装置。
【請求項2】
前記検出システムが、前記面のすべてまたは一部を走査するために可動にかつ平らに搭載された線スキャナタイプであり、少なくとも1つの照明と、レンズなどの少なくとも1つの光学素子とを備える光学システムに関連付けられた少なくとも1つのCCDまたはCMOSセンサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、1つ以上の容器、ひいては1つ以上の成長培地、の高さを前記光学システムに対して調整するための手段を含む、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、1つ以上の容器、したがって1つ以上の成長培地、と光学システムとの間の距離を自動的に修正するための手段を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記検出面が、前記装置に摺動可能に装着された引き出し(2)を含み、前記引き出し(2)が、閉じられた1つ以上の容器を受け入れるための開位置から、前記検出システムによって、少なくとも1つの容器、したがって1つ以上の成長培地、の走査が実行可能である閉位置へと移動することが可能であり、前記培地が前記引き出し(2)に直接配置されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
1つ以上の容器が、取り外し可能なトレイ(8)を介して前記引き出し(2)に配置されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記引き出し(2)が閉位置にあるときに、前記装置が内部に含む調節可能な深さ止め具(10)と協働できるように設計されたシム(81)が、前記取り外し可能なトレイ(8)の周縁かつ下側に設けられ、前記トレイ(8)を、したがって前記トレイ(8)が担持する1つ以上の容器を、持ち上げることにより、前記光学システムから正しい距離に配置して保持する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの容器が配置される前記検出面が、前記光学システムに対し前記容器のそれぞれを傾斜させるように構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記光学システムが、洗浄および/または交換の目的のための取り外し可能な要素(9)から構成される較正システムを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記温度測定が熱電対によって行われる、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、成長期の微生物の検出の分野に関する。
本発明は、主に産業および臨床微生物学の分野、例えば、製薬、生物工学、農産食品産業、あるいはまた病院や医学分析研究所で活用されるものである。
【0002】
より具体的には、本発明は、膜または固体または半固体培地の表面で、試料中に存在する微生物から、コロニーの培養とその形成の迅速な検出とを可能にする装置に関する。
試験される試料中の汚染物質、例えばバクテリア、の検出を可能にするために、現在、多くの技術が実用化されている。
【0003】
最も伝統的かつ最も古い方法は、寒天成長培地の表面への析出を含み、寒天成長培地は多かれ少なかれ1つまたはいくつかのタイプの微生物について選択的であってもよい。
培地は、その後、探している微生物の成長にとって適切な温度で培養され、その期間は、最長で数日間になることもある。
【0004】
このような方法には、培地上に形成されたコロニーの肉眼による検出を可能にするために比較的長い培養時間を必要とするという欠点がある。
また、PCRと呼ばれる重合連鎖反応を行い、DNAまたはRNA配列を増幅することにより、試料中のある特定の微生物の存在を判断する方法も従来技術から知られている。
【0005】
これらの方法には、いくつかのDNA鎖、すなわち、いくつかの汚染微生物、一般的に、少なくとも数十の微生物、を必要とするという欠点がある。したがって、このような方法は、多くの場合、成長ベースの方法よりも感度が低い。
【0006】
微生物をマーキングして微生物により発せられる光と成長培地により発せられる光との間のコントラストを強調する技術を使用する可能性も知られている。CFDA(カルボキシジアセテート)のような蛍光生存率マーカーまたはTTC(塩化テトラゾリウム)のような非蛍光生存率マーカー、あるいはまた、例えばATP(アデノシン三リン酸)などによって放出された生物発光を明らかにすることを可能にする酵素の使用は、放出された光の特性、例えば波長や強度、に敏感な光学システムの使用のおかげで、微生物の早期発見を可能にする。
【0007】
具体的には、米国特許出願公開第2003/0155528号明細書は、微生物を検出するための方法を記載することで知られている。ここでは、微生物が適切な蛍光試薬(フルオレセインなど)によってマークされ、微生物量の決定と、生存細胞または死滅細胞であるか否かの判断を可能にしている。
【0008】
しかし、これらの技術を実装するのは面倒であり、多くの場合、高価な試薬の使用と熟練労働力の存在とを必要とすることが分かっている。また、これらの技術は多数の試料の汚染物質を検出するのにあまり適しておらず、マーキング操作を自動化することはしばしば困難である。また、これらの技術は、試料を汚染する危険性を有している。もちろん、試薬の添加は、試薬と検出される微生物との接触を必要とし、一般的に、寒天培地を含む箱を開くことにより行われる。最終的に、試薬を微生物に接触させることは、特に、微生物が成長の初期段階にある場合(一般的に100未満の細胞)は、コロニーを形成する生細胞を破壊する危険性を有している。
【0009】
従来技術からは、例えば、微生物の自己蛍光を検出することによって、微生物によって自然に放出される光特性を使用する方法が知られている。これにより、堆積された微生物によって放射された自然蛍光と非蛍光媒体との間に存在するコントラストを用いてコロニーの区別を容易にすることができる。
【0010】
この原理を利用した方法は、国際公開第03/022999号に具体的に記載されており、ここでは、自己蛍光などの、コロニーの特定の光学特性が使用されている。
これらの技術は、実際に、自己蛍光コロニーまたは微生物の検出を容易にすることができ、膜または培地とのコントラストを良好にする。しかしながら、自然に発生する蛍光のレベルは小さく、例えば、特定のフルオロフォアでのマーキングに比べて検出回数を速くすることができない。また、培地や環境中に存在する他の粒子、例えば、ほこり、膜繊維、または培地からのプラスチック粒子など、による自然蛍光のスプリアス放射は、偽陽性の結果を引き起こす可能性がある。
【0011】
最終的に、開発の初期段階でコロニーを可視化するために、高倍率の光学システムを用いた技術を使用できる。これは、例えば、顕微鏡の場合である。しかし、これらの装置は、一般に1平方ミリメートルより狭い小さな表面上での検出に限定されている。したがって、膜または寒天培地などの1つ以上の検出媒体の検出のためのこのタイプの技術の実装は、平方センチメートル当たり約数分と長く、かつ、走査システムを使用する必要があるために高価であることがわかっている。
【0012】
従来技術からも既知である国際公開第2013/110734号は、具体的には、膜または寒天培地である成長培地の表面上のコロニーの出現の早期発見のための、自動化可能な装置を提供する。
【0013】
より具体的には、この装置では、例えば、膜または寒天培地などの成長培地、および、線スキャナなどの検出システムを載置した、検出面を見ることができる。このシステムは、光学システムに関連した少なくとも1つのCCDセンサを含む。
【0014】
この装置は、この装置により高価な光学機器や試薬の使用を省略できるため、特に興味深い。また、このような装置は、検出システムが移動可能であり、試料を培養中に移動させる必要がないため、他の微生物または粒子による汚染を回避できる。
【0015】
しかしながら、このような検出器は、それ自体、非常に高性能であるものの、さらにその性能を向上させることができることがわかっている。また、このような検出装置に行われた開発は、例えば、線スキャナを使用しない培養および検出装置の性能を改善することができることがわかった。
【0016】
この目的のため、本発明は、試験される試料中に存在する微生物の増殖から得られたコロニーの培養および蛍光測定を行わない迅速な検出のための装置に関連し、該装置は、
‐加熱手段と、
‐膜または寒天のタイプの、コロニーの形態の微生物の成長培地が配置された、透明カバーで閉じられた少なくとも1つの容器が固定配置された検出面と、
‐前記コロニーを可視化することを可能にする光学システムを含む検出システムと、を含む。
【0017】
前記装置は、前記容器における結露の形成を防止するためのシステムをさらに含み、該システムが、以下を含む温度を調節するための手段を含むことを特徴とする。すなわち、
‐前記容器の上方で動作する第1の温度センサと、
‐前記容器の下方の動作する第2の温度センサと、
‐前記容器の上方で作用する、前記加熱手段と、
‐前記容器の下方で作用する、冷却手段と、
‐前記センサ手段により収集された情報を収集および分析すると共に、前記加熱および冷却手段を制御して、一方で所望の培養温度の生成と他方で前記容器の表面上への温度勾配の永久的適用とを可能にする管理手段と、を含む温度を調節するための手段を含むことを特徴とする。
【0018】
検出システムが、線スキャナタイプであり、前記表面のすべてまたは一部を走査するために平らに搭載され、少なくとも1つの照明と、レンズなどの少なくとも1つの光学素子とを含む光学システムに関連付けられた少なくとも1つのCCDまたはCMOSセンサを備えると有利であるが、これに限定されない。
【0019】
結露の形成を防止するのためのシステムの存在は特に有利である。
実際のところ、容器が閉じられているときに容器の内側の透明カバーの部分の上に結露が形成されることを防止できる。容器の培養の間に、実際、成長培地の側に位置する容器内部のカバーの表面に水滴が形成される可能性があり、成長培地は、例えば、寒天培地に置かれた膜または寒天培地のみから構成されていてもよい。
【0020】
結露は、コロニーを検出するためのシステムでは特に問題となり得る。実際、結露は容器の蓋を不透明にし、その結果、微生物増殖の検出を妨げる。
従来技術では、寒天または膜上の結果を読み取ることができるように選択された解決手段は、結露による水滴が位置するカバーを除去することにより容器を開放することである。しかし、そのような解決手段は、環境中の細菌により容器内に配置された培地の汚染をもたらす可能性が高いため、適切と考えることはできない。偽陽性の結果を得る可能性があり、それは特に問題であり、特に臨床応用では、危険にさえなることがわかっている。
【0021】
本発明に係る検出装置は、上述したように、この問題に対処することを可能にする。
また、本発明の装置は、試料の培養および試料中に存在する微生物の検出の機能を組み合わせることを可能にするため、特に有利である。
【0022】
このような組み合わせは、多くの利点を有する。
具体的には、分析された試料は、装置から離れないため、常に、適切な温度に保たれ、微生物の成長を促進する。
【0023】
また、そのような装置は、自動化された従来技術の装置のロボットアームでは常に起こり得る、成長培地を含む容器のハンドリングエラーの回避を可能にする。その結果、本発明の装置では、試料の汚染の危険性が低減され、さらには抑制される。
【0024】
最終的に、試料の培養と微生物の検出とを関連付ける装置は、容器のカバー上の結露を軽減するのに役立つ。
特定の実施形態において、管理手段は、容器の内側と外側との間に少なくとも0.10℃の温度勾配を適用することを可能にする。
【0025】
このような温度勾配は、特に最適な方法で、容器のレベルでの結露の形成を防止する。
温度測定は、熱電対によって行われるのが好ましいことに留意されたい。
本発明の培養および検出装置が、光学システムに対する、1つ以上の容器、したがって1つ以上の成長培地、の位置を調整するための手段を含むことが好ましい。
【0026】
本発明の培養および検出装置は、1つ以上の容器、したがって1つ以上の成長培地、の光学システムとの間の距離を自動修正するための手段も含む。
このような実施形態は、検出システムの光学システムに対し容器を一定かつ正確に配置することを可能にし、具体的には、容器が確実に光学システムの同じ被写界深度領域にあるようにすることによって、成長培地上で発達するコロニーの検出を容易にする。
【0027】
一方、培養および検出装置は、光学システムの軸に対して、複数の容器、したがって1つ以上の成長培地、の向きを補正する手段を含む。
この特徴は、歪んだ画像の形成につながる可能性がある光学収差の現象に対処する特に巧妙な方法を構成する。このような現象は、スキャナの構造に起因する。その結果、成長培地は、楕円形に見え、培地の一部の領域を見ることができない。したがって、検出システムは、いくつかのコロニーを検出しない場合があり、したがって、光学収差の現象のため、偽陰性の結果という重大な危険性がある。
【0028】
偽陽性の結果のように、偽陰性の結果は、患者が臨床微生物学で診断されなければならない場合、または、産業微生物学において薬物などの製品の無菌性を確保する必要がある場合には特に、危険であり得る。
【0029】
したがって、かつ有利なことに、本発明の培養および検出装置においては、検出動作時の容器の位置に応じて容器を傾斜させるまたは容器を光学システムに対して最も有利な向きにすることが可能な楔手段を介して、容器のそれぞれが検出面上に支持される。
【0030】
有利な実施形態では、検出面が、摺動可能に装置に装着され、1つ以上の閉じた容器を受け取るための開位置から、その1つ以上の容器、したがって1つ以上の成長培地、の走査が検出システムによって実施可能な閉位置に移動することができる引き出しから構成され、培地は直接引き出しに配置される。
【0031】
さらに有利なことに、容器は、取り外し可能なトレイを介して引き出しに配置されている。
引き出しが閉位置にあるときに、装置の内部に含まれる調整可能な止め具と協働できるように設計されたシムが、取り外し可能なトレイの周縁かつ下側に設けられると有利である。それによりトレイを、したがって、トレイを載せた容器を、持ち上げることにより光学システムから適切な距離に配置し、保持することができる。
【0032】
トレイが複数の容器を収容することができるこの特定の実施形態では、容器が配置された検出面は、これらの容器に特に専用の凹部を備え、各凹部の底部は、トレイ上でのこれら凹部の位置に応じて、トレイの全体面に対して決められた傾きを有し、その結果、光学システムに対して所望の補正を行うことができる。
【0033】
このような特徴は、特に満足のいく方法で光学収差の現象に対処することを可能にする。
したがって、少なくとも1つの容器が配置された検出面が、光学システムに対して各容器を傾斜させるように構成されていることが好ましい。
【0034】
最後に、また、有利なことには、本発明の培養および検出装置の光学システムは、洗浄および/または交換の目的のための取り外し可能な要素で構成された較正システムを含む。
【0035】
実際、線スキャナタイプの検出システムは、写真を撮るときに白のレベルを検出および調整するために、検出システムに統合された、較正ストリップと呼ばれる白いストリップに写真を撮る必要がある。
【0036】
この較正ストリップが、その上に堆積したほこりなどによって汚れている場合、スキャナで撮影された垂直の色線を有する画像の品質を劣化し、これらのライン上に位置する微小コロニーの検出を妨げるまたは潜在的に遅らせてしまう。
【0037】
意図される解決策は、白色校正ストリップをきれいにするために、装置全体を解体することにある。しかし、この解決策は、それを行うことが特に面倒で時間がかかるものであるため、満足のいくものではない。別の解決策は単純に装置全体を交換することであるが、高価である上に環境に優しくない。
【0038】
本発明の検出装置における解決策は、上述の問題を解決することができる。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照する、本発明の非限定的な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明による培養および検出装置の斜視図を示す。
【
図2】本発明による培養および検出装置の垂直面に沿った断面図を示す。
【
図3】
図3aは、本発明による培養および検出装置の一部の斜視図を示し、
図3bは、同じ部分の平面図を示し、
図3cは、
図3bのA−A’軸に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本発明による微生物を培養および検出するための装置が示されている。装置は、箱1の形態であり、引き出し2を備え、その前面20だけが見えている。
図2を参照すると、本発明による装置は、箱1の内部に、透明カバーによって閉じられた容器を受容するための検出面3を備えていることがわかる。容器は、一般的にペトリ皿からなり、膜または寒天培地などの微生物のための成長培地が含まれている。
【0041】
検出面3は、トレイ2に関連付けられており、その結果、引き出し2を引き出すことにより検出面3の取り付けと取り外しが可能である。
箱1はまた、線スキャナタイプの検出システム4を含んでおり、検出面3の少なくとも一部、好ましくは面3の全て、を走査することができるように、引き出し2が閉じられたときに検出面3上を移動可能に取り付けられている。
【0042】
容器は、結果の読み取りを可能にするために検出面3上に固定されている。
いくつかの異なる試料中の最終的な汚染物質の同時検出を可能にするように、いくつかの容器が装置1の検出面3上に配置されることが好ましい。
【0043】
したがって、成長培地を含む容器が、検出面3上に固定される一方、検出システム4は成長培地上のコロニー形成の検出を可能にするために移動可能である。これにより、得られる結果がエラーになる可能性がある培地の移動を防止できる。
【0044】
検出システム4は、好ましくは、少なくとも1つのCCD(電荷結合素子)センサやCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサを含む。
CCDまたはCMOSセンサの解像度が、2400dpi(インチあたりのドット数)以上であると有利である。さらに、解像度が4800dpi以上であるとより好ましい。
【0045】
このような解像度は、容器の中に位置する成長培地、寒天、または膜上に存在するコロニーの直径が、100μm以下、50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である場合に、60倍以上の有効倍率により、コロニーの画像化による検出を可能にする。
【0046】
検出システム4が、規則的な時間間隔での画像の撮影を可能にすると有利である。
検出システム4のCCDまたはCMOSセンサは、少なくとも1つの照明と、例えばレンズなどの少なくとも1つの光学素子とを含む光学システムに関連付けられている。光学システムが、少なくとも1つのミラーを含むことが好ましい。
【0047】
本発明による培養および検出装置は、検出面3の上方の、箱1の上部に配置された加熱手段6を含み、加熱手段6は、電気抵抗器61に関連付けられたアルミ板60から構成されているが、これに限定されるものではない。加熱手段6は、箱1内を所望の培養温度に維持するように設計されている。
【0048】
本発明の培養および検出装置は、結露の形成を防止するためのシステムを含む。実際、既に上述したように、結露の形成は、寒天または膜の表面の読み取りを妨害し、満足のいく結果を得られなくする。
【0049】
したがって、試料の正確な読み取りを妨害し、結果の精度に影響を与える可能性がある結露の形成の問題を解決することは特に重要である。
この目的のために、結露の形成を防止するためのシステムは、引き出し2の下、したがって、容器を載せた検出面の下に、箱1の下部に配置された冷却手段7を含む。
【0050】
冷却手段7は、好ましくはペルチェ効果熱電モジュールで構成され得ることに留意すべきである。
さらに、結露を防止するためのシステムは、容器の上方に配置された第1の温度センサ62と、検出面3の下方、したがって、容器の下に配置された第2の温度センサ70とを備える。
【0051】
結露を防止するためのシステムは、第1のセンサ62および第2のセンサ70によって収集されたデータまたは情報を収集および分析することができ、かつ、一方で所望の培養温度を生成し、他方で常に容器の表面に温度勾配を適用するための加熱手段6および冷却手段7を制御できる管理手段7により補完される。
【0052】
温度を測定する機能を与えられた手段は、非接触方式で容器の表面温度を測定可能な熱電対を使用することによって得られる。
温度勾配の適用により、特に有利な方法で、容器の透明カバーの内面における水滴の形成を避けることができる。したがって、寒天培地または膜上のコロニーの成長の読み取りが容易になる。
【0053】
ある有利な実施形態では、結露を防止するためのシステムによって適用される温度勾配は、少なくとも0.10℃である。
これは、容器のカバーのレベルで、すなわち容器の上で適用される温度が、容器の底部のレベルで、すなわち容器の下で適用される温度よりも少なくとも0.10°Cだけ高いことを意味する。
【0054】
好ましくは、この勾配は0.10〜1℃の間であり、さらにより好ましくは、この勾配は0.50〜1℃の間である。
このような勾配は、容器のカバーの結露を防止するために特に最適である。
【0055】
図3a、3b、3cを参照すると、図示されていない容器を受容することを目的とした検出面を構成するトレイ8を見ることができる。
このトレイ8は、引き出し2に対して着脱可能に設計されている。このため、トレイ2は、
図2に部分的に見ることができるフレーム21を含み、引き出し2が箱1から引き出された状態にあるときに、トレイ8が、その周縁部80またはその一部においてフレーム21に支持され得る。
【0056】
トレイ8はまた、下側かつ周縁にシム81を備える。シム81は、ケース1が引き出し2の移動空間の下方に有する、例えばネジを備えるタイプの、調整可能な止め具10と協働することを目的としている。
【0057】
動作時には、引き出し2が閉じている間、シム81は調整可能な止め具10に寄り掛かり、培養および検出の間そこに留まる。その後、トレイ8が引き出し2から取り外される。止め具の調整は、引き出し2に関係なく、トレイ8の、したがってトレイ8が担持している容器の検出システム4に対する正確な配置を可能にする。
【0058】
図3a、3bおよび3cでは、トレイ8が、それぞれが図示されない容器を受容することを目的としている凹部82、この場合12個、を含んでいることを確認することができる。
【0059】
これら各凹部82は、容器を押し込むことを可能にする中空の収容部で構成されている。
図3cにより具体的に言及すると、トレイ8上の凹部82の位置に応じて、凹部82の底面83が、トレイ8の平面に対し特定の傾きを持っていることがわかる。したがって、トレイ8に対する検出手段の移動軸XX’に関して中央にある凹部82の底部83がトレイ8の平面に平行である一方で、側方にある凹部82の底部83は、中心線に向かって傾斜している。
【0060】
これらの構成は、コロニーの検出を防止または妨害する可能性が高い光学収差を避けることを可能にする。
最後に、
図1に見られるように、本発明の培養および検出装置のスキャナ等の検出システムは、ケーシング1から引き出し可能な、好ましくは洗浄および/または交換の目的のために取り外し可能な、要素9の特徴を有する較正システムを含むことに注意すべきである。
【0061】
本発明の培養および検出装置は、小型化され、製造が簡素化されている点で、従来技術のものと比較して、利点を有する。
本発明の培養および検出装置は、例えば、トレイ8を調整することにより、様々な数の容器を処理するための寸法にすることができ、また、大きな空間を呈することなく、いくつかの箱1を積層および/または並置することができるため、潜在的なモジュール性という利点も提供する。
【0062】
これらの利点は、基本的に、使用されている検出システムだけでなく、それがどのように実装されるかによるものである。しかし、この検出システムは、様々な上述の特徴の、いずれか、または全てがない場合には、効率がよくないであろう。