【文献】
LONG, J. et al.,Multiple Distinct Molecular Mechanisms Influence Sensitivity and Resistance to MDM2 Inhibitors in Adult Myelogenous Leukemia,Blood,2010年 7月 8日,Vol. 116, No. 1,pp. 71-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療前に前記患者から得られた前記試料中に検出されたMDM2タンパク質発現CD45dim芽球細胞の相対量が45%又は55%を超える場合に、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む前記医薬が投与されることが決定される、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬が、シタラビンと、又はシタラビンとアントラサイクリンの組み合わせと同時又は逐次的に組み合わせて投与されることが決定される、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
試料が、治療前に患者から得られた血液又は骨髄試料であり、MDM2タンパク質発現CD45dim芽球細胞の相対量がフローサイトメトリーによって検出される、請求項12から14の何れか一項に記載の医薬。
MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬であって、フローサイトメトリーにより検出された、AMLに罹患している患者からの血液又は骨髄試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim芽球細胞の相対量が、同じがんを有する患者からの標準値と比較して、該標準値を上回る場合、該医薬が投与される、請求項12に記載の医薬。
MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬が、シタラビンと、又はシタラビンとアントラサイクリンの組み合わせと同時又は逐次的に組み合わせて投与される、請求項12から16の何れか一項に記載の医薬。
MDM2−p53相互作用の阻害剤を有効成分として含む医薬を投与する前に、がん患者のp53遺伝子変異状態が更に検出される、請求項12から17の何れか一項に記載の医薬。
BAX、RPS27L、EDA2R、XPC、DDB2、FDXR、MDM2、CDKN1A、TRIAP1、BBC3、CCNG1、TNFRSF10B、又はCDKN2Aからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のレベルを検出すること、及び組み合わせスコア(combined score)「S」を得るために、その値を、請求項1に記載のMDM2タンパク質発現細胞の相対量と組み合わせること、及び化合物に対する患者の応答を予測するためのバイオマーカーとしてその組み合わせスコア「S」を使用することを更に含む方法であって、ここで該化合物がMDM2−p53相互作用の阻害剤である、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
血液がんに罹患している患者を治療するための医薬であって、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含み、請求項22又は23の方法に記載の値「S」が検出され、「S」の値が標準値を上回る場合に前記治療が開始又は継続される、医薬。
患者のp53変異状態、年齢又はECOGスコアの群から独立して選択される少なくとも1つの追加の共変量を更に含む、請求項1、22又は23の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な記載
一実施態様において、本発明の方法における使用のためのMDM2−p53相互作用を阻害する化合物(「MDM2阻害剤」又は「MDM2アンタゴニスト」)は、任意のMDM2阻害剤、好ましくは小分子MDM2阻害剤である。別の実施態様において、前記MDM2阻害剤は、米国特許第8,354,444(B2)号、又は国際公開第2007/063013号、国際公開第2010/031713号、国際公開第2011/098398号及び国際公開第2013/135648号に具体的に開示されている化合物である。
【0019】
一実施態様において、本発明による方法に使用されるMDM2−阻害剤は、式Iの化合物
(式中、
Xは、H、F、Cl、Br、I、シアノ、ニトロ、エチニル、シクロプロピル、メチル、エチル、イソプロピル、ビニル及びメトキシからなる群より選択され、
Yは、H、F、Cl、Br、I、CN、OH、ニトロ、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシ、低級アルケニル、シクロアルケニル、低級アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、COOR’、OCOR’、CONR’R”、NR’COR”、NR”SO
2R’、SO
2NR’R”及びNR’R”からなる群より独立して選択される一つ〜四つの基であり、ここで
R’及びR”は、H、低級アルキル、置換低級アルキル、低級シクロアルキル、置換低級シクロアルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、低級シクロアルケニル、置換低級シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、又は置換複素環から独立して選択され、
R
’とR”が独立して結合し、置換若しくは無置換シクロアルキル、置換若しくは無置換シクロアルケニル、置換若しくは無置換ヘテロアリール又は置換若しくは無置換複素環から選択される環状構造を形成する場合、
R
1及びR
2の一方は、低級アルキル、
置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、及び置換シクロアルケニルからなる群より選択され、他方は水素又は低級アルキルであり,
R
3はH又は低級アルキルであり,
R
4及びR
5の一方は、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル,及び置換シクロアルケニルからなる群より選択され、他方は水素であり、
R
6及びR
7は、(CH
2)
n−R’、(CH
2)
n−NR’R”、(CH
2)
n−NR’COR”、(CH
2)
n−NR’SO
2R”、(CH
2)
n−COOH、(CH
2)
n−COOR’、(CH
2)
n−CONR’R”、(CH
2)
n−OR’、(CH
2)
n−SR’、(CH
2)
n−SOR’、(CH
2)
n−SO
2R’、(CH
2)
n−COR’、(CH
2)
n−SO
3H、(CH
2)
n−SONR’R”、(CH
2)
n−SO
2NR’R”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−R’、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−OH、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−OR’、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’R”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’COR”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’SO
2R”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COOH、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COOR’、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−CONR’R”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SO
2R’、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COR’、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SONR’R”、(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SO
2NR’R”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−R’、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−OH、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−OR’、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’R”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’COR”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−NR’SO
2R”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COOH、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COOR’、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−CONR’R”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SO
2R’、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−COR’、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SONR’R”、(CH
2)
p−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2)
n−SO
2NR’R”、−COR’、−SOR’及びSO
2R’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’は上記の通りであり、
m、n及びpは、独立して0から6である)、及び
その薬学的に許容される塩及びエステルである。
【0020】
この実施態様の範囲内において、好ましい式Iの化合物は、式IIに示す立体化学構造を有し得る。
【0021】
一実施態様において、本発明による方法において使用のためのMDM2阻害剤は、式IIaの化合物であり
式中、
R
6は−(CH
2)
n−R’であり、
R’はシクロヘキシルであるか、又は
1又は2の炭素原子がN、S又はOによって置換されてよく、且つ前述のシクロヘキシル又は芳香族炭化水素が、低級アルキル、低級−アルケニル、低級−アルキニル、ジオキソ−低級−アルキレン(例えば、ベンゾジオキシル基を形成する)、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF
3、NH
2、N(H、低級−アルキル)、N(低級−アルキル)
2、アミノカルボニル、カルボキシ、NO
2、低級−アルコキシ、チオ−低級−アルコキシ、低級−アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級−アルキルカルボニル、低級−アルキルカルボニルオキシ、低級−アルコキシカルボニル、低級−アルキル−カルボニル−NH、フルオロ−低級−アルキル、フルオロ−低級−アルコキシ、低級−アルコキシ−カルボニル−低級−アルコキシ、カルボキシ−低級−アルコキシ、カルバモイル−低級−アルコキシ、ヒドロキシ−低級−アルコキシ、NH
2−低級−アルコキシ、N(H、低級−アルキル)−低級−アルコキシ、N(低級−アルキル)
2−低級−アルコキシ、低級−アルキル−1−オキシラニル−低級−アルコキシ−低級−アルキル、2−オキソ−ピロリジン−1−イル,(1,1−ジオキソ)−2−イソチアゾリジン、3−低級−アルキル スルフィニル、置換又は無置換複素環式環、置換又は無置換アリール環、置換又は無置換ヘテロアリール環、トリフルオロ−低級−アルキルスルホニルアミノ−アリール、低級−アルキル スルホニルアミノカルボニル、低級−アルキル スルホニルアミノカルボニル−アリール、ヒドロキシカルバモイル−フェニル、ベンジルオキシ−低級−アルコキシ、モノ−又はジ−低級アルキル置換アミノ−スルホニル及びハロゲン、ヒドロキシ、NH
2、N(H、低級アルキル)又はN(低級アルキル)
2で置換されてもよい低級−アルキルから独立に選択される基により一度又は二度置換可能である、5〜10員の単環式又は二環式芳香族炭化水素であり;
nは、0又は1である。
【0022】
この実施態様の範囲内において、
R
6は−(CH
2)
n−R’であり、
R’はそれぞれ無置換であるか、又はハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、ヒドロキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシ C1−6アルコキシ、オキソ及びCNから独立して選択される置換基により一度又は二度置換可能である、フェニル、ピリジニル、ピラジニル又はピリミジニルであり;
nは0である、式IIaの化合物が好ましい。
【0023】
別の実施態様において、本発明による方法において使用のためのMDM2阻害剤は、式IIIの化合物
(式中、
XはH、F、Cl、Br、I、シアノ、ニトロ、エチニル、シクロプロピル、メチル、エチル、イソプロピル、ビニル及びメトキシからなる群より選択され、
Yは、H、F、Cl、Br、I、CN、OH、ニトロ、低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシ、低級アルケニル、シクロアルケニル、低級アルキニルからなる群より独立して選択される一つ〜四つの基であり、
Zは低級アルコキシであり,
R
1は低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、置換低級アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、及び置換シクロアルケニルからなる群より選択され、
R
2は
(式中、WはF、Cl又はBrであり、
VはH又はFである)から選択される置換フェニルであり、
R
3は、水素、低級アルキル又は置換低級アルキルから選択され,
R
4は
から選択され、
R
5は低級アルキル、置換低級アルキル、複素環、置換複素環、シクロアルキル、置換シクロアルキル、天然及び非天然アミノ酸、−(OCH
2CH
2)
n−OH、−(OCH
2CH
2)
n−OCH
3、−(NCH
2CH
2)
n−OH、−(NCH
2CH
2)
n−OCH
3及び
−(OCH
2CH
2)
n−OP(O)(OR
6)
2(式中、
nは3から60、好ましくは3から45であり,
R
6は水素又はベンジルである)からなる群より選択される);又は
その薬学的に許容される塩又はエステルである。
【0024】
この実施態様の範囲内において、
XはH、F又はClから選択され、
YはH、F又はClから選択され、
R
1は低級アルキル又は置換低級アルキルであり、
R
3は水素又は低級アルキルであり、
R
5は、低級アルキル、置換低級アルキル、天然及び非天然アミノ酸、−(OCH
2CH
2)
n−OH、−(OCH
2CH
2)
n−OCH
3、−(NCH
2CH
2)
n−OH、−(NCH
2CH
2)
n−OCH
3、−(OCH
2CH
2)
n−OP(O)(OR
6)
2(式中、nは3から60、好ましくは3から45である)からなる群より選択され、
R
6は水素である式IIIの化合物;又は
その薬学的に許容される塩が好ましい。
【0025】
更に、この実施態様の範囲内において、
XはH、F又はClから選択され;
YはH、F又はClから選択され;
ZはC1−6アルコキシであり;
R
1はC1−6アルキルであり;
R
2は
(式中、
WはF、Cl又はBrであり;
VはH又はFである)
であり、
R
3は水素又はC1−6アルキルであり;
R
4は−C(O)−R
5(式中、
R
5は、−(OCH
2CH
2)
n−OH;−(OCH
2CH
2)
n−OCH
3;及び−(OCH
2CH
2)
n−OP(O)(OR
6)
2(nは3から60であり、R
6は水素である)からなる群より選択される)である式IIIの化合物;又は
その薬学的に許容される塩が好ましい。
【0026】
更に具体的には、nは3から55、更に好ましくはnは3から45である。この実施態様の範囲内において、R
5が−(OCH
2CH
2)
n−OCH
3であり、nが40から60である化合物が特に好ましい。
【0027】
本明細書において記載がある場合は、種々の基は、低級アルキル、低級−アルケニル、低級−アルキニル、ジオキソ−低級−アルキレン(例えば、ベンゾジオキシル基を形成する)、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF
3、NH
2、N(H、低級−アルキル)、N(低級−アルキル)
2、アミノカルボニル、カルボキシ、NO
2、低級−アルコキシ、チオ−低級−アルコキシ、低級−アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級−アルキルカルボニル、低級−アルキルカルボニルオキシ、低級−アルコキシカルボニル、低級−アルキル−カルボニル−NH、フルオロ−低級−アルキル、フルオロ−低級−アルコキシ、低級−アルコキシ−カルボニル−低級−アルコキシ、カルボキシ−低級−アルコキシ、カルバモイル−低級−アルコキシ、ヒドロキシ−低級−アルコキシ、NH
2−低級−アルコキシ、N(H、低級−アルキル)−低級−アルコキシ、N(低級−アルキル)
2−低級−アルコキシ、低級−アルキル−1−オキシラニル−低級−アルコキシ−低級−アルキル、2−オキソ−ピロリジン−1−イル,(1,1−ジオキソ)−2−イソチアゾリジン、3−低級−アルキル スルフィニル、置換又は未置換複素環式環、置換又は未置換アリール環、置換又は未置換ヘテロアリール環、トリフルオロ−低級−アルキルスルホニルアミノ−アリール、低級−アルキル スルホニルアミノカルボニル、低級−アルキル スルホニルアミノカルボニル−アリール、ヒドロキシカルバモイル−フェニル、ベンジルオキシ−低級−アルコキシ、モノ−又はジ−低級アルキル置換アミノ−スルホニル、及びハロゲン、ヒドロキシ、NH
2、N(H、低級アルキル)又はN(低級アルキル)
2で置換可能な低級アルキルからなる群より独立に選択される、1〜5の又は、好ましくは1〜3の、置換基で置換される。シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環式環に好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルコキシ、低級アルキル、ヒドロキシカルボニル、カルボキシ、カルボキシ 低級アルコキシ、オキソ及びCNである。アルキルに好ましい置換基は、アルコキシ及びN(低級アルキル)
2である。
【0028】
用語「アルキル」は、1から約7の炭素原子を有する基を含み、1から約20の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基を指す。特定の実施態様においては、アルキル置換基は低級アルキル置換基であってもよい。用語「低級アルキル」は、1から6の炭素原子を有するアルキル基を指し、特定の実施態様においては1から4の炭素原子を有するアルキル基を指す。アルキル基の例には、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、及びs−ペンチルが含まれる。
【0029】
本明細書で使用される「シクロアルキル」は、炭素原子のみからなり、いずれの環も飽和されている任意の安定な単環系又は多環系を指すことを意図しており、用語「シクロアルケニル」は、炭素原子のみからなり、その少なくとも一つの環が部分的に不飽和である任意の安定な単環系又は多環系を指すことを意図している。シクロアルキルの例には、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、シクロオクチル、[2.2.2]ビシクロオクタン又は[3.3.0]ビシクロオクタンなどのビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナンなどのビシクロノナン、及び[4.4.0]ビシクロデカン(デカリン)などのビシクロデカンを含むビシクロアルキル、又はスピロ化合物が含まれる。シクロアルケニルの例には、限定されないが、シクロペンテニル又はシクロヘキセニルが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、一つの二重結合を含み、2から6の、好ましくは2から4の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。このような「アルケニル基」の例として、ビニルエチニル、アリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル及び5−ヘキセニルが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、一つの三重結合を含み、2から6の、好ましくは2から4の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。このような「アルキニル基」の例として、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル及び5−ヘキシニルが挙げられる。
【0032】
定義において使用される用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくはフッ素及び塩素を意味する。
【0033】
「アリール」は、一価の単環又は二環式芳香族炭素環式炭化水素基、好ましくは6から10員の芳香環系を意味する。好ましいアリール基には、限定されないが、フェニル、ナフチル、トリル、及びキシリルが含まれる。アリール基が二環式である場合、好ましい基は1,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−5−イル基である。
【0034】
「ヘテロアリール」は、2つ以下の環を含有する芳香族複素環系を意味する。好ましいヘテロアリール基には、限定されないが、チエニル、フリル、インドリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、オキサゾリル、チアキソリル(thiaxolyl)、キノリニル、ピリミジニル、イミダゾール、置換又は無置換のトリアゾリル、及び置換又は無置換のテトラゾリルが含まれる。
【0035】
二環式のアリール又はヘテロアリールの場合、一つの環がアリールであり他方の環がヘテロアリールであり、且つ両方の環が置換又は無置換であり得る。
【0036】
「ヘテロ環」又は「複素環」は、1から3の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子により置き換えられている、置換又は無置換の5から8員の単環又は二環式の非芳香族炭化水素を意味する。例には、ピロリジン−2−イル;ピロリジン−3−イル;ピペリジニル;モルホリン−4−イルなどが含まれ、これらは順に置換することができる。「ヘテロ原子」は、N、O及びSから選択される原子を意味する。
【0037】
「アルコキシ、アルコキシル又は低級アルコキシ」は、酸素原子に結合した上記低級アルキル基の何れかを指す。典型的な低級アルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ又はプロポキシ、ブチルオキシなどが含まれる。アルコキシの意味に更に含まれるものとしては、複数のアルコキシ側鎖、例えばエトキシエトキシ、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシなど、及び置換アルコキシ側鎖、例えばジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメトキシ−ホスホリルメトキシなどがある。
【0038】
本明細書において使用される用語「mPEG」はメトキシポリエチレングリコールを意味し、これは市販されている(例えば、Sigma−Aldrich又はID Biochem(Korea))。mPEGの分子量の分布は、製造者及び/又はバッチによって変動し得る。本発明の一実施態様において、mPEGは、約1500Daから約3000Daの平均分子量(MW)を有する。本発明の別の実施態様において、mPEGは、約2000Daから約2200Daの平均MWを有する。平均MWは、MALDI−TOF質量分析によって決定される。
【0039】
薬学的に許容される塩及びエステル、担体、賦形剤などの「薬学的に許容される誘導体」は、特定の化合物が投与される対象にとって薬理学的に受容可能であり、実質的に非毒性であることを意味する。
【0040】
「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の生物学的有効性及び特性を保持しており、かつ好適な非毒性の有機酸若しくは無機酸又は有機塩基若しくは無機塩基から形成される一般的な酸付加塩又は塩基付加塩を指す。酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸から誘導されるもの、並びに有機酸、例えばp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸等から誘導されるものを含む。塩基付加塩の例は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び第四級アンモニウム水酸化物、例えばテトラメチルアンモニウム水酸化物から誘導されるものを含む。薬学的化合物(すなわち薬物)の塩への化学的修飾は、化合物の物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性及び溶解性の向上を得るための、薬剤師にとって周知の技法である。例えば、Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1995)の456〜457頁を参照されたい。
【0041】
「ECOGスケール」又は「ECOGパフォーマンスステータス」という用語は、患者の疾患(がん)がどのように進行しているかを評価するために科学者及び医師によって開発されたパラメーター又は基準を意味する。このスケールは、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)によって開発され、当業者に周知である。詳細は例えば、Oken, M.M. et al, Am. J. Clin. Oncol., 1982, 649-655を参照。
【0042】
一実施態様において、本発明による特定のMDM2阻害剤は、化合物A(RG7112)とも呼ばれる式(A)の化合物である。
この化合物とその製造方法は、例えば国際公開第2007/063013号に開示されている。
【0043】
別の実施態様において、本発明による方法において使用のためのMDM2阻害剤は、式(B)の4−{[(2R,3S,4R,5S)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸である。
この化合物及びその製造方法は、例えば国際公開第2011/098398号に開示されている。
【0044】
本発明による別の特定の化合物は、2−((1−(4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシベンゾイルオキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)酢酸である。
【0045】
本発明による別の特定の化合物は、2−(((4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシベンゾイルオキシ)メトキシ)−カルボニルアミノ)酢酸である。
【0046】
本発明による更なる化合物は、3−オキソ−2,4,7,10,13,16,19−ヘプタオキサイコシル 4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシベンゾアートである。
【0047】
本発明による特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2000)である。
【0048】
本発明による特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2200)である。
【0049】
本発明による特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−メチル エステル(mPEG、平均MW、〜2000)である。
【0050】
本発明による特定の化合物は、3−オキソ−2,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル 4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシベンゾアートである。
【0051】
本発明による特定の化合物は、27−オキソ−2,5,8,11,14,17,20,23,26,28−デカオキサトリアコンタン−29−イル 4−((2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−4−シアノ−5−ネオペンチルピロリジン−2−カルボキサミド)−3−メトキシベンゾアートである。
【0052】
本発明による特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−[(2R,3R,4R,5S)−2−((R)−1,2−ジヒドロキシ−エチル)−4,5−ジヒドロキシ−テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシカルボニルオキシ]−エチル エステルである。
【0053】
本発明による別の特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−(2−{2−[2−(2−ジベンジルオキシホスホリルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシカルボニルオキシ)−エチル エステルである。
【0054】
また、本発明による特定の化合物は、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−(2−{2−[2−(2−ホスホノオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシカルボニルオキシ)−エチル エステルである。
【0055】
また、本発明による特定の化合物は、式(C)の4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2000)である。
平均MW:〜2695
この化合物及びその製造方法は、例えば国際公開第2013/135648号に開示されている。
【0056】
また、本発明による特定の化合物は、式(D)の4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2200)である。
平均MW:〜2900
この化合物及びその製造方法は、例えば国際公開第2013/135648号に開示されている。
【0057】
本発明によれば、がんに罹患した患者の治療に対する応答性を予測する方法が提供され、前記方法は、治療前(ベースライン時)に前記がん患者から得られた試料中の1つ又は複数のMDM2タンパク質発現細胞型の相対量を検出すること、及び医薬による治療に対する前記患者の応答を予測するためのバイオマーカーとして、MDM2タンパク質を発現する細胞の前記相対量又はパーセンテージ(%)を使用することを含み、ここで医薬は、本明細書で定義されるMDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含み、かつ前記MDM2タンパク質発現細胞型又はバイオマーカーは、CD45dim細胞、CD117+(c−kit)及び/又はCD34+幹細胞、又はそれらの組み合わせのサブセットからなる群から選択される。
【0058】
一実施態様において、方法はインビトロの方法である。
【0059】
別の実施態様において、CD45dim細胞、CD117+(c−kit)及びCD34+幹細胞から選択されるMDM2発現細胞型のそれぞれの相対量(%)は、前記MDM2阻害剤による治療に対する前記患者の応答を予測するためのバイオマーカーとして使用することができる。別の実施態様において、前記細胞型の組み合わせサブセットを使用することもできる。この実施態様のうちで、好ましいサブセットは、i)MDM2陽性CD117+(c−kit)及びCD45dim細胞の相対量(%);又はii)MDM2陽性CD34+及びCD45dim細胞の相対量(%);又はiii)MDM2陽性CD34+及びCD117+及びCD45dim細胞の相対量(%);又はiv)MDM2陽性CD45dim細胞の相対量(%)である。
【0060】
従って、別の実施態様において、本発明は、がんに罹患した患者の治療に対する応答性を予測する方法を提供し、前記方法は、治療前(ベースライン時)に前記がん患者から得られた試料中の少なくともCD45dim(芽球)細胞の相対量を検出すること、及び医薬による治療に対する前記患者の応答を予測するためのバイオマーカーとして、MDM2タンパク質を発現するCD45dim(芽球)細胞の前記相対量又はパーセンテージ(%)を使用することを含み、ここで医薬は、本明細書で定義されるMDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む。この実施態様及び上記の実施態様の範囲内で、「量」は、治療前(ベースライン時)に前記がん患者から得られた試料中に検出された同じ型の全ての細胞のうち、所与の型のMDM2発現細胞、例えば、CD45dim、CD34+又はCD117+のパーセント(%)で示される相対量である。細胞の検出は、当業者に公知の任意の手段、好ましくはフローサイトメトリーによって行うことができる。
【0061】
一実施態様において、本方法は連続可変測定である。好ましくは、本方法は、多変量アプローチに基づいており、従って1つ又は複数の組の変数を考慮する。本発明によれば、上のパラグラフ[0059]で定義したMDM2発現細胞のサブセットが好ましい変数である。別の実施態様において、本発明による多変量アプローチは、付加的な変量として患者の年齢及び/又はECOGスコアを更に含む。期待される治療結果を表す群に患者を層別化するための多変量解析の基本原理は、当業者、例えば、臨床腫瘍学者に周知である。本発明の1つの目的は、本明細書で定義される特定のMDM2発現細胞及びサブセット(例えば、パラグラフ[0059]参照)の相対量を単独で又は患者の年齢及び/又はECOGスコアと一緒に、前記分析における変量として定義することである。
【0062】
別の実施態様において、本発明は、例えば、MDM2アンタゴニスト療法に応答する可能性が最も高い患者を同定する臨床データ(研究番号NP28679、パート1及び2)に基づいてMDM2タンパク質を発現するCD45dim(芽球)細胞の量によって特徴付けられる閾値(又はカットオフ)又は1組の値、例えば範囲を同定する。この量は、全てのCD45dim芽球細胞のうちのMDM2発現細胞のパーセント(%)で示される相対量である。この量は、好ましくはフローサイトメトリーにより検出され、少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞によって特徴付けられる。それらのレベルを上回るMDM2タンパク質を発現するCD45dim(芽球)細胞を有する患者は、MDM2阻害剤(MDM2アンタゴニスト)による治療に応答する可能性が最も高く、すなわち、有益な臨床的エンドポイントに達する可能性が最も高い。用語「応答」は、本明細書において更に定義される。前記MDM2発現CD45dim芽球細胞の相対量は、治療前のがん患者から得られた試料中で測定され、従って、本明細書で定義されるMDM2阻害剤による前記がん患者の治療の予後及び/又は予測バイオマーカーとして役立つ可能性を有する。別の実施態様において、上記のパラグラフ[0059]のi)〜iv)で定義された細胞の特定のサブセットの閾値は10%;又は15%又は20%である。それらのレベルを上回るMDM2タンパク質発現細胞の相対量を有する患者は、MDM2阻害剤(MDM2アンタゴニスト)による治療に応答する可能性が最も高く、すなわち、有益な臨床的エンドポイントに達する可能性が最も高い。
【0063】
一実施態様において、がん(又は「腫瘍性疾患」)は、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、結腸直腸がん(すなわち、結腸がん及び直腸がんを含む)、膵臓がん、肝臓がん、脳腫瘍、神経内分泌がん、肺がん、腎臓がん、血液悪性腫瘍、メラノーマ並びに肉腫からなる群より選択される。別の実施態様において、がんは、白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫を含む血液悪性腫瘍からなる群から選択される。また別の実施態様において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、又は骨髄異型性症候群(MDS)、又は骨髄増殖性疾患(MPN)である。
【0064】
本明細書で使用する「応答」という用語は、臨床的エンドポイントを満たすことを意味する。好ましくは、例えば、プラセボ又は標準治療と比較した場合、臨床的エンドポイントは患者にとって有益である。一実施態様において、臨床的エンドポイント又は応答は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)又は無再発生存期間(EFS)を意味する。別の実施態様において、応答という用語は、完全寛解(Complete Response、CR)、部分応答(PR)、不完全な血小板回復を伴う完全寛解(CRi)、血液学的改善(HI)、又は(Morphologic Leukemia−Free State、MLFS)を意味する。
【0065】
用語「MDM2発現細胞」又は「MDM2陽性細胞」又は「MDM2タンパク質発現細胞」は、MDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞、CD34+及びCD117+(c−kit)幹細胞からなる群から選択される細胞型を意味する。
【0066】
MDM2タンパク質発現細胞の「相対量」は、上記で定義したのと同じ型の細胞の全ての細胞のうちのMDM2タンパク質発現細胞のパーセント(%)を意味する。一実施態様において、「相対量」という用語は、患者の試料中に検出された同じ型の全ての細胞のうちの、約30%〜約100%、又は約45%〜約100%のMDM2陽性細胞を意味する。別の実施態様において、「相対量」という用語は、約45%〜約90%、又は約55%〜約85%、又は約65%〜約80%、又は約70%〜約75%のMDM2タンパク質発現細胞を意味する。別の実施態様において、「相対量」という用語は、少なくとも約45%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約75%のMDM2タンパク質発現細胞を意味する。別の実施態様において、上記の相対量は、MDM2陽性CD45dim(芽球)細胞の量を指し、MDM2陽性CD45dim(芽球)細胞の量は、試料中の全てのCD45芽球細胞に対するものである。幾つかの型の細胞(サブセット)が分析に使用される場合、用語「相対量」はまた、前記サブセット内の細胞の総数に基づくMDM2発現細胞のパーセンテージを意味し得る。
【0067】
前記MDM2タンパク質発現細胞の相対量は、治療前(ベースライン時)に前記がん患者から得られた任意の適切な試料中で測定することができる。一実施態様において、前記試料は血液試料である。別の実施態様において、前記試料は骨髄試料である。当業者に知られている任意の技術が、前記MDM2タンパク質発現細胞の前記相対量を検出するために適用可能である。一実施態様において、前記MDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の相対量は、フローサイトメトリーによって検出される。
【0068】
一実施態様において、患者は、本明細書で定義されるがんに罹患した人である。別の実施態様において、患者は、例えばAMLのような血液学的障害を患っている。
【0069】
別の実施態様において、本発明は、MDM2阻害剤による治療に対するがん患者の応答を決定するための方法を提供し、以下の工程:
a)患者から試料を採取する工程;
b)試料中のMDM2タンパク質発現細胞の相対量を測定する工程;
c)患者からの前記相対量を標準値、例えば同じがんを有する患者から得られた値と比較する工程;及び
d)MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を投与する工程
を含む。
この実施態様の範囲内において、本方法が治療に対する患者の応答の予測方法として適用される場合、a)の試料は治療開始前に得られ、b)のMDM2タンパク質発現細胞は、CD45dim(芽球)細胞、CD117+(c−kit)及びCD34+からなる群の1つ又は複数から選択される。
【0070】
別の実施態様において、本発明は、MDM2阻害剤を含む療法に応答する可能性が高いがんに罹患している患者を同定するインビトロの方法を提供し、この方法は、
a)治療の前にその患者から得られた試料中のMDM2タンパク質発現細胞の相対量を測定すること;
b)前記相対量を基準レベルと比較すること;及び
d)試料中のMDM2タンパク質発現細胞の相対量が前記基準レベルを上回る場合、前記患者を前記MDM2阻害剤を含む療法に応答する可能性が高いと同定する工程
を含み、ここで、
a)のMDM2タンパク質発現細胞は、CD45dim(芽球)細胞、CD117+(c−kit)及びCD34+からなる群の1つ又は複数から選択される。
【0071】
これらの実施態様の範囲内で、基準レベルを上回るa)で得られた相対量は、MDM2阻害剤による治療に応答する患者の高い可能性を示し、一方、前記レベルを下回る相対量は、前記患者がその治療に反応する可能性が低いことを示す。
【0072】
MDM2アンタゴニスト予測CD45dim(芽球)細胞のシグネチャーのパフォーマンスは、NP28679白血病試験(
図3)由来の検体を用いて臨床的状況で試験される。用量漸増試験の一部として処置された30人のAML患者は、フローサイトメトリーによって分析可能な全血液検体を提供した。臨床応答エンドポイントは、5つのカテゴリーに階層化された:完全寛解(Complete Response、CR)、不完全な血小板回復を伴う完全寛解(CRi)、Morphologic Leukemia−Free State(MLFS)、部分応答(PR)、血液学的改善(HI)、及び進行性疾患(PD)。血液白血病試料をベースラインスクリーニングで収集した。試料をフローサイトメトリーで分析し、CD45dim芽球細胞について特徴付けられ、次いでこれらの細胞のサブセット内で、MDM2タンパク質発現に対して陽性と評価されるCD45dim細胞の%を更に特徴とした。次いで、MDM2のベースライン%細胞陽性を、応答者(CR、CRi、MLFS)と非応答者(PR、HI、PD)との間の有意な関連性について試験した。
【0073】
従って、一実施態様において、本発明は、MDM2阻害剤による治療に対するがん患者の応答を決定するための方法であって、治療前にその患者から得られた試料中に検出されたMDM2陽性CD45dim芽球細胞の%が高いほど、例えば、臨床薬理学の当業者に周知のROC(AUC)値及び分析によって示されるように、前記治療に対する前記患者の応答の可能性が高いことを特徴とする方法を提供する。
【0074】
別の実施態様において、本発明は、MDM2阻害剤による治療に対するがん患者の応答を決定するための方法を提供し、以下の工程:
a)患者から試料を採取する工程;
b)試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞の相対量を測定する工程;
c)患者からの前記相対量を標準値、例えば同じがんを有する患者から得られた値と比較する工程;及び
d)MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を投与する工程
を含む。
本方法を治療に対する患者の応答の予測方法として適用する場合、a)の試料は治療の開始前に得られる。
【0075】
別の実施態様において、本発明は、MDM2阻害剤を含む療法に応答する可能性が高いがんに罹患している患者を同定するインビトロの方法を提供し、この方法は、
a)治療の前にその患者から得られた試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞の相対量を測定する工程;
b)前記相対量を基準レベルと比較する工程;及び
d)試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞の相対量が前記基準レベルを上回る場合、前記患者を前記MDM2阻害剤を含む療法に応答する可能性が高いと同定する工程
を含む。
【0076】
一実施態様において、基準レベルを上回るa)で得られた相対量は、MDM2阻害剤による治療に応答する患者の高い可能性を示し、一方、前記レベルを下回る相対量は、前記患者がその治療に反応する可能性が低いことを示す。
【0077】
一実施態様において、a)で取得される試料は、血液白血病試料、又は骨髄生検試料である。
【0078】
一実施態様において、MDM2−阻害剤は、具体的に米国特許第8354444B2号、又は国際公開第2007/063013号、国際公開第2010/031713号、国際公開第2011/098398号及び国際公開第2013/135648号に開示されている化合物;又は式I、II、IIa又はIIIによる化合物、又はそれらの組み合わせである。別の実施態様において、本発明に従って使用されるMDM2阻害剤は、式(A)、(B)、(C)又は(D)の化合物である。
【0079】
別の実施態様において、MDM2阻害剤は、式(B)の化合物4−{[(2R,3S,4R,5S)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸である。
【0080】
更に別の実施態様において、MDM2阻害剤は、式(C)の化合物4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2000)である。
(平均MW:〜2695).
【0081】
更に別の実施態様において、MDM2阻害剤は、式(D)の化合物4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチル エステル(mPEG、平均MW、〜2200)である。
(平均MW:〜2900).
【0082】
本発明に従って使用するためのMDM2−阻害剤は、当業者に公知である。式II、IIA又は(B)の化合物、それらを製造する方法並びにそれらを含有する薬学的製剤は、例えば、米国特許第8,354,444号又は国際公開第2011/098398号に開示されている。式III又は(C)又は(D)の化合物及びその製剤は、例えば国際公開第2013/135648号に開示されている。前記MDM2阻害剤を患者に投与する目的で、これらの化合物は、薬物送達の当業者に周知の技術に従って薬学的製剤として加工することができる。
【0083】
本発明の1つの実施態様において、化合物(B)は、そのアモルファス形態で分子的に分散している経口剤形として投与される。別の実施態様において、化合物(B)は、核心重量の約80%(重量/重量)に相当するコポビドン(PVP VA 64)と共に化合物(B)を噴霧乾燥して得られた固体分散体を、好ましくはマンニトール、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物又は二酸化ケイ素から選択される賦形剤(核心重量の6.8%から最大10.8%まで);クロスカルメロースナトリウム又はクロスポビドンから選択される1つ又は2つの崩壊剤(4重量%/核心重量);流動促進剤(1重量%/核心重量)、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素;及び潤滑剤(0.2重量%/核心重量)のステアリン酸マグネシウムと、タンブルミキサーを用いて更にブレンドすることを特徴とする、単位用量固形製剤で投与する。化合物(B)の上記剤形並びに他の適用可能な剤形は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/114575号に開示されている。
【0084】
式III、又は(C)又は(D)の化合物の薬学的製剤は、経口、鼻及び/又は非経口又は静脈内投与に適したものを含む。製剤は、便利に単位剤形で提供することができ、薬学の分野において周知の任意の方法により調製することができる。一実施態様において、式(C)又は(D)の化合物は、約0.1mg〜約100mgの化合物(I)、約10mM〜約100mMの緩衝剤、約25mg〜約125mgの凍結乾燥増量剤及び等張性ビルダーを含む静脈内投与のための安定な凍結乾燥製剤で提供される。結果として得られる製剤は、HCl又はNaOHでの調整により約5〜7のpHを有しなければならない。別の実施態様において、式(C)又は(D)の化合物を滅菌水中の0.9%塩化ナトリウムにボルテックスにより溶解し、次いで静脈内投与のためにセプタム密封バイアルにフィルターを通して濾過する。これは静脈内投与のために凍結乾燥製剤として投与することが好ましい。これらの調製物、並びに式III、又は(C)又は(D)の化合物の他の適用可能な調製物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願番号PCT/EP2014/062982号に開示されている。
【0085】
患者に対する本発明のMDM2阻害剤の投与のための用量及び投薬スケジュールは、同様に当業者に知られており、例えば国際公開第2013/139687号又は米国特許出願第14/217929号(US20140200255A1として公開)に開示される。本発明によれば、式IIIの化合物、特に式(C)及び(D)の化合物は、式(B)の化合物のプロドラッグである。従って、式(III)の化合物、特に式(C)及び(D)の化合物は、患者の血漿中の式(B)の化合物の有効量を達成するように投与される。従って、一実施態様において、本発明による医薬は、式(C)又は(D)の化合物を含み、その化合物は、28日の治療サイクルのうち、最大約7日目まで、好ましくは最大約5日目までの投与期間、1〜7日目に、又は好ましくは1〜5日目に、式(B)の化合物を、約50〜約3000mg/日、又は約80〜約2500mg/日、又は約80〜約1600mg/日、又は約200〜約1600mg/日、又は約400〜約1600mg/日、又は約400〜約1200mg/日、又は約400〜約1000mg/日、又は約400〜約800mg/日、又は約400〜約600mg/日の量で送達するように投与され、その後に約21〜約23日、好ましくは約23日までの休止期間が続くことを特徴とする。1日の投与量、すなわちmg/日で表される化合物(B)の量は、単回投与(qd)又は2回投与(BID)として投与することができる。2回の投与量が与えられる場合、それらは好ましくは等量で朝に1回、午後に1回、投与される。別の実施態様において、本発明の医薬は、式(C)又は(D)の化合物を含み、その化合物は、28日の治療サイクルのうち、最大5日間の投与期間、式(B)の化合物を、1〜5日目に約200〜約1200mg/日、又は約400〜約1200mg/日の量で送達するように投与され、その後に23日間の休止期間が続くことを特徴とする。別の実施態様において、式(B)の化合物は、直接的に、すなわち式III又は(C)又は(D)のプロドラッグを介することなく、及び上記の経口剤形を使用して投与することもできる。従って、本発明の別の実施態様において、式(B)の化合物は、28日の治療サイクルのうち、最大5日間の投与期間、式(B)の化合物を非晶質形態で、及び約200〜約1200mg/日、又は約400〜約1200mg/日の量で提供する固体の経口剤形、例えばフィルムコーティング錠剤を使用して投与され、その後に23日間の休止期間が続く。
【0086】
本明細書で定義されるMDM2阻害剤を含む医薬は、所与のタイプのがんについて公知の別の治療と組み合わせて投与することができる。例えば、AMLの治療の場合、MDM2阻害剤は、好ましくは、シタラビンと、又はシタラビン及びアントラサイクリンと組み合わされる。本発明によるシタラビンの治療的有効量(又は「有効量」)は、相乗的、すなわち相加効果以上を達成するのに有効な量を意味する。シタラビンはAMLの骨格療法として長年使用されているので、例えば臨床医などの当業者にとって、ヒトの有効用量及び耐容用量に関する多くの情報が利用可能である。例えば、シタラビンは、AMLの治療において(誘導レジメン)高用量で、例えば1〜6日に12時間毎に2時間にわたり3g/m2(静脈内)までの量で単剤として投与することができることが判明した。白血病の治療におけるシタラビンの使用についての総説は、例えば、“Nicholas D. Reese, Gary J. Schiller; Curr Hematol Malig Rep, 2013, 8:141-148"に記載されている。特定の併用療法(例えば、急性非リンパ球性白血病の誘導療法)では、他の抗がん剤と組み合わせた通常のシタラビン用量は、連続静脈内注入(1〜7日目)により100mg/m2/日又は12時間毎に100mg/m2(1〜7日目)である。(例えば、www.hospira.comを参照)。
【0087】
同様に、臨床腫瘍学者などの当業者は、アントラサイクリンに基づくがん療法の利用可能性及び使用を十分に認識している。そのような治療オプションの広範なレビューは、例えば:G. Minotti et al, Anthracyclines: Molecular Advances and Pharmacologic Developments in Antitumor Activity and Cardiotoxicity, Pharmacological Reviews, 2004, Vol. 56 No. 2, 185-229に提供されている。
【0088】
別の実施態様において、本発明によるMDM2阻害剤、好ましくは式III、又は(B)、又は(C)、又は(D)の化合物は、本明細書で定義されるがんの治療のための化合物コビメチニブと組み合わせて投与される。コビメチニブのための剤形、用量及び投与計画は、例えば、公開されたcoBRIM第III相試験(ClinicalTrials.gov識別子NCT01689519)から入手可能である。コビメチニブのNCT01689519試験で使用される前記剤形、用量及び投与計画は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本明細書で定義されるMDM2陽性細胞、特にMDM2陽性CD45dim(芽球)細胞で得られた情報は、患者の応答/治療結果をより正確に識別するために、p53遺伝子変異状態に関して使用することができる。患者のp53遺伝子変異状態は、改善された感受性及び/又は特異性を有する本発明のMDM2阻害剤による治療に対する前記患者の応答を検出するための追加のマーカーとして役立ち得る。従って、更に別の実施態様において、本発明は、本明細書において前に開示したように、がん患者から得られた試料中において、本明細書で定義されるMDM2発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の%を測定する何れかの方法であって、前記患者の試料中のp53遺伝子変異の状態を検出する工程を更に包含する方法を提供する。この実施態様の範囲では、p53遺伝子の変異状態は、好ましくは野生型である。しかしながら、p53遺伝子変異の検出は、一般に、本明細書中に開示されるMDM2阻害剤に応答するか、又はMDM2阻害剤による治療の恩恵を受ける患者の可能性についての排除基準として理解されるべきではない。従って、更に別の実施態様において、本発明は、有益な臨床的エンドポイントを満たす、すなわち治療に応答する前記患者の可能性のより洗練された予測を提供するために、本明細書で定義されるMDM2発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の%、及びp53変異状態の組み合わせ多変量解析を提供する。
【0090】
治療の方法
更に別の実施態様において、本発明はまた、本明細書で定義されるMDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の相対的な量が、標準レベル、1組の標準レベル又は治療前のレベルに対する感受性について、がんに罹患している患者から得られた試料、好ましくは血液又は骨髄試料から最初に検出され、次いでMDM2阻害剤が投与される治療の方法を含む。好ましくは、前記MDM2−阻害剤は、上記に定義されたように、一般式I、II、IIIの化合物、又はその薬学的に許容される誘導体であり、更に好ましくは、式IIa又はIIIの化合物、又はその薬学的に許容される誘導体である。前記化合物は、当業者には周知のように、薬学的組成物中において投与され得る。恒温動物、とくにヒトへの、鼻腔、頬側、直腸といった投与、又は特に経口投与のための、及び静脈内、筋肉内又は皮下投与といった非経口投与のための組成物が、特に好ましい。より詳細には、静脈内投与のための組成物が好ましい。
【0091】
この実施態様の範囲において、一般式I、II又はIII、好ましくはIIa又はIIIの化合物、又はその薬学的に許容される誘導体を、単独で又は一又は複数の他の治療剤と組み合わせて投与することができる。可能な併用療法は、固定された組み合わせ、又は交互に又は互いに独立して与えられる、本発明の化合物と一又は複数の他の治療剤との投与、又は固定された組み合わせと一又は複数の他の治療剤との併用投与の形態をとることができる。
【0092】
またこの実施態様の範囲において、一般式I、II又はIII、好ましくはIIa又はIIIの化合物、又はその薬学的に許容される誘導体を、特に腫瘍治療のために、化学療法(細胞傷害性療法)、標的療法、内分泌療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、又はこれらの組み合わせと組み合わせて投与することができる。上記のように、他の治療戦略との関連でアジュバント療法と同様に、長期療法が等しく可能である。他の可能な治療は、腫瘍退縮後の患者の状態を維持するための治療、又は例えばリスクのある患者における化学予防療法である。
【0093】
キット及び装置
一態様において、本発明はキット、及び別の態様では、本明細書で定義される一般式I、II、III;又はIIa若しくはIII;又は(A)、(B)、(C)若しくは(D)又は薬学的に許容されるその誘導体の化合物に対して、好ましくは被験者(又は患者)のがんの応答を予測するための装置に関し、前記キットは、特に血液又は骨髄試料の採取のための試料採取のための手段、ツール又は装置と、前記試料中の本明細書で定義されるMDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の相対量を検出する方法の説明書とを含む。
【0094】
キット及び装置はまた、好ましくは、試料中の本明細書で定義されるMDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞のレベルを比較する標準値又は1組の標準値を含むコンパレーターモジュールを含むことができる。
【0095】
別の実施態様において、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬を用いた治療に対する応答を予測するためのキットであって;
a)がん、特に、白血病、特にAMLのような血液学的障害に罹患している患者から試料、好ましくは血液又は骨髄試料を得るための手段;
b)好ましくはフローサイトメトリーを使用すること、及び場合により前記患者のp53遺伝子変異状態、年齢及び/又はECOGスコアから選択される追加の変量を検出することにより、その試料からの本明細書で定義される1つ又は複数のMDM2タンパク質発現細胞型、特にCD45dim(芽球)細胞の相対量を検出する方法の説明書;
c)標準値及びそれらの使用法の説明書を含むコンパレーターモジュール;及び
d)MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬
を提供する。
【0096】
更に別の実施態様において、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物は、本明細書で定義される式I、II、III;又はIIa若しくはIII;又は(A)、(B)、(C)若しくは(D)又は薬学的に許容されるその誘導体の化合物である、上記に記載のキットが提供される。標準値又は1組の標準値は、上記のように決定され得る。
【0097】
更に別の実施態様において、MDM2阻害剤(アンタゴニスト)による治療に対する患者の応答を予測するバイオマーカーとして、本明細書で定義されるMDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の使用が提供される。
予測遺伝子シグネチャーとの組み合わせ
【0098】
別の実施態様において、本方法、すなわち、本明細書中で前に定義した任意の実施態様によるMDM2タンパク質発現細胞の相対量(%)の検出は、別の共変量として、ベースライン時に同じ患者の試料から検出された遺伝子シグネチャの評価と組み合わせることができる。適切な遺伝子シグネチャー及びそれらを得るための方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT/EP2014/064039に開示されている。そのような組み合わせは、本明細書で定義されるMDM2阻害剤による治療から患者の臨床的利益のより正確な予測を提供し得る特定のアルゴリズム(多変量解析)を適用することによって行われる。改善された精度は、すでに強力なバイオマーカー(MDM2発現細胞;又は遺伝子シグネチャー)の何れか単独と比較して、例えば、多変量解析のためのAUCの増加(すなわち、0.93から0.95への)及びp値の10
−3から10
−5への増加によって実証することができる。
【0099】
従って、一実施態様において、本発明は、がんに罹患した患者の治療に対する応答性を予測する方法であって、前記方法は、a)前記患者から1つ又は複数の試料を採取する工程;b)工程a)で得られた前記試料中の少なくとも1つのMDM2タンパク質発現細胞型の相対量(%)を測定する工程;c)工程a)で得られた試料において表1に従って少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出する工程;d)a)及びb)の情報を用いて多変量解析を適用して値(組み合わせスコア「S」)を計算する工程;e)「S」の値を標準値(又は基準値)と比較する工程;及びf)「S」の値が前記標準値を上回る場合に、前記患者を治療に応答する可能性が高いと同定する工程を含み;ここで前記治療は、前記患者に、本明細書で前に定義したMDM2−p53相互作用の阻害剤(MDM2−阻害剤)として作用する化合物を投与することを含む。
【0100】
この実施態様の範囲内において、方法は好ましくはインビトロの方法である。患者はがん患者であり、用語「がん」は本明細書において前に定義されている。工程b)及びc)における測定のための試料は同じであっても異なっていてもよく、前に定義した通りである。好ましくは、同じ又は異なる試料は、治療開始前(ベースライン時)に前記患者から採取された血液及び/又は骨髄試料である。工程b)における「相対量」及び「MDM2発現細胞型」という用語は、本明細書において前に定義した通りである。好ましくは、MDM2タンパク質発現細胞型は、CD45dim細胞、CD117+(c−kit)及びCD34+幹細胞から選択される。本明細書において前に定義したように、1つの単一細胞型又は前記細胞型の組み合せサブセットの相対量を使用することができる。前記細胞型の測定は、好ましくはフローサイトメトリーによって、上記に定義されるように実施される。方法の工程c)における「少なくとも1つの遺伝子」の検出は、表1に記載の13の遺伝子のうち、2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11、又は12の遺伝子を含む1つの単一又は合計レベルの検出、又は全13遺伝子の検出を含む。遺伝子の検出は、好ましくは、PCT/EP2014/064039に開示されており、かつ当業者には周知である例えばRT−PCR(リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)又はアレイ技術によるmRNA発現レベルの検出を意味する。ベースライン時のmRNA発現レベルをRT−PCRによって測定する場合、患者のシグネチャースコアは、ベースライン(すなわち、治療前)で測定された相対的発現レベル(2
delta−CP)の合計に、インビトロで観察された方向を乗じたものから計算される。工程d)で得られた組み合わせスコア「S」は、b)で得られたMDM2フロー測定値から得られた値のc)で得られた遺伝子シグネチャースコアとの乗算又は加算に基づいて解釈される。好ましくは、前記組み合わせスコア「S」は、b)で得られたMDM2フロー測定値の、表2にリストされているアルゴリズムによる3−遺伝子又は4−遺伝子シグネチャースコアとの乗算又は加算に基づいて計算される。
【0101】
表2のアルゴリズムに従って得られる組み合わせスコア「S」は、前記MDM2阻害剤による治療に対する患者の応答と相関する。一実施態様において、標準値(又は基準値)を上回る「S」の値は、前記MDM2阻害剤による治療に応答するか、又はその恩恵を受ける可能性があることを示し、一方前記標準値を下回る相対量は、前記患者がその治療に応答する可能性が低いか、又はその治療の恩恵を受ける可能性が低いことを示す。標準値は、「S」を計算するために使用されるアルゴリズムに依存し得る。例えば、3−遺伝子又は4−遺伝子シグネチャーをSの計算に使用する場合、又はlog2スケールが適用される場合、基準レベルは異なる(
図4を参照)。用語「応答」は、本明細書で前に定義した通りである。同様に、用語「MDM2阻害剤」は、上で定義した通りである。好ましくは、そのようなMDM2阻害剤は、本明細書で前に定義した薬学的製剤の何れかを含む、本明細書で定義される式IIa、又はIII、又は(B)、又は、(C)又は(D)の化合物である。別の実施態様において、前記MDM2阻害剤は、前に本明細書に開示されているように、他の薬学的に活性な化合物と、例えばシタラビン又はコビメチニブと組み合わせることもできる。
【0102】
一実施態様において、3−又は4−遺伝子シグネチャースコアが、上記の方法の工程c)において使用される。3−遺伝子シグネチャーは、XPC、BBC3及びCDKN2A;又はMDM2、XPC及びBBC3のmRNA発現レベルからなり、4−遺伝子シグネチャーは、MDM2、XPC、BBC3及びCDKN2AのmRNA発現レベルからなる。mRNA発現レベルをRT−PCRによって測定する場合、患者のシグネチャースコアは、ベースライン(すなわち、治療前)で測定された相対的発現レベル(2
delta−CP)の合計に、インビトロで観察された方向を乗じたものから計算され、4−遺伝子シグネチャースコアとして定義される:S
4−gene−RT−PCR=G
MDM2+G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2A、ここでG
x=2
delta−CPx及びdelta−CP
MDM2=CP
housekeeper−CP
MDM2、delta−CP
XPC=CP
housekeeper−CP
XPC、delta−CP
BBC3=CP
housekeeper−CP
BBC3、delta−CP
CDKN2A=CP
housekeeper−CP
CDKN2A.用語「ハウスキーパー(housekeeper)」は、任意の適切な制御遺伝子を意味する。本発明の一実施態様において、「ハウスキーパー」は、内在性制御遺伝子としてのTMEM55Bである。
S
MDM2−flowは、選択された細胞型、例えばCD45dim芽球細胞集団における検出可能なMDM2タンパク質発現を有する細胞のパーセンテージを示すものとする。MDM2 S
MDM2−flowのタンパク質発現測定とRT−PCRに基づく4−遺伝子シグネチャースコアS
4−gene−RT−PCRとを組み合わせることにより、組み合わせスコア「S」を以下の3つの方法で算出することができる:
S=S
4−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;又は
S=S
4−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
4−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow).
同様に、スコア計算からG
MDM2を省略した3−遺伝子シグネチャースコアS
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2Aが与えられた場合、組み合わせスコア「S」は同じ方法で計算することができる:
S=S
3−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;又は
S=S
3−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
3−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow).
同様に、組み合わせスコア「S」を計算するための上記の方法は、スコア計算からG
CDKN2Aを省略した3−遺伝子シグネチャースコアS
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3+G
MDM2にも適用することができる。
【0103】
2標本ウィルコクソン順位和検定を使用して、曲線下面積(AUC)の分類の計算を介して、上記の6つの定義の何れかに基づくシグネチャースコアが応答者と非応答者を有意に区別できるかどうかを試験することによって、組み合わせシグネチャースコア「S」は、NP29679試験(適応症:AML)パート1及び2の臨床応答と相関していた。
従って、一実施態様において、上記の方法の工程b)は、
i)MDM2陽性CD45dim細胞;又は
ii)MDM2陽性CD117+(c−kit)及びCD45dim細胞;又は
iii)MDM2陽性CD34+及びCD45dim細胞;又は
iv)MDM2陽性CD34+及びCD117+及びCD45dim細胞の相対量の検出を含み;i)〜iv)の下で得られた値のそれぞれはS
MDM2−flowと表される;
工程c)は、RT−PCRによる3遺伝子シグネチャーのmRNAレベルの検出を含み、ここで、3−遺伝子シグネチャーは、XPC、BBC3及びCDKN2A、又はMDM2、XPC及びBBC3を含み、S
3−geneと表される;
工程d)における組み合わせスコア「S」は、
S=S
3−gene×S
MDM2−flow;又は
S=S
3−gene×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
3−gene+log2(S
MDM2−flow)
からなる群から選択されるアルゴリズムに従って多変量解析によって計算され;かつ
工程a)、e)及びf)は、上で定義した通りである。
【0104】
別の実施態様において、上記の方法の工程b)は、
i)MDM2陽性CD45dim細胞;又は
ii)MDM2陽性CD117+(c−kit)及びCD45dim細胞;又は
iii)MDM2陽性CD34+及びCD45dim細胞;又は
iv)MDM2陽性CD34+及びCD117+及びCD45dim細胞の相対量の検出を含み;i)〜iv)の下で得られた値のそれぞれはS
MDM2−flowと表される;
工程c)は、RT−PCRによる4遺伝子シグネチャーのmRNAレベルの検出を含み、ここで、4−遺伝子シグネチャーは、MDM2、XPC、BBC3及びCDKN2Aを含み、S
4−geneと表される;
工程d)における組み合わせスコア「S」は、
S=S
4−gene×S
MDM2−flow;又は
S=S
4−gene×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
4−gene+log2(S
MDM2−flow)
からなる群から選択されるアルゴリズムに従って多変量解析によって計算され;
工程a)、e)及びf)は、上で定義した通りである。
【0105】
更に別の実施態様において、がんに罹患した患者の治療に対する応答性を予測するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は以下の工程を含む:
a)ベースライン時に患者から血液及び/又は骨髄生検試料を採取する工程;
b)a)で得られた試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞の相対量(%)(S
MDM2−flow)を測定する工程;
c)RT−PCRによってa)で得られた試料中のMDM2、XPC、BBC3及びCDKN2AのmRNA発現レベルを測定し、次式に従って3−遺伝子シグネチャースコアS
3−gene−RT−PCRを計算する工程:
S
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2A又は
S
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3+G
MDM2
(式中、G
x=2
delta−CPx及びdelta−CP
x=CP
housekeeper−CP
xである);
d)値Sを計算するために、b)及びc)で得られた値を用いて、以下のアルゴリズムの1つに従って多変量解析を適用する工程:
S=S
3−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;又は
S=S
3−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
3−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow);
e)d)で得られた前記「S」の値を標準値、例えば同じがんを有する患者から得られた値と比較する工程;及び
f)d)で得られた「S」の値が前記標準値を上回っている場合、本明細書で定義されるMDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物、好ましくは式IIa、III、(B)、(C)又は(D)の化合物を投与する工程。
この実施態様の範囲内において、「標準値」(又は基準値)は、工程d)で適用されるアルゴリズムに従って異なっていても良い。従って、好ましい実施態様において、S=S
3−gene−RT−PCR×S
MDM2−flowに従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約50、又は約100、又は約150である(
図4b ii)及びv)を参照)。別の好ましい実施態様において、S=S
3−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow)に従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約8、又は約10、又は約12、又は約15である(
図4b i)及びiv)を参照)。別の好ましい実施態様において、S=S
3−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow)に従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約7、又は約8、又は約8.5、又は約9である(
図4b iii)及びiv)を参照)。
【0106】
更に別の実施態様において、がんに罹患した患者の治療に対する応答性を予測するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は以下の工程を含む:
a)ベースライン時に患者から血液及び/又は骨髄生検試料を採取する工程;
b)a)で得られた試料中のMDM2タンパク質発現CD45dim(芽球)細胞の相対量(S
MDM2−flow(%))を測定する工程;
c)RT−PCRによってa)で得られた試料中のMDM2、XPC、BBC3及びCDKN2AのmRNA発現レベルを測定し、次式に従って4−遺伝子シグネチャースコアS
4−gene−RT−PCRを計算する工程:
S
4−gene−RT−PCR=G
MDM2+G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2A
(式中、G
x=2
delta−CPx及びdelta−CP
x=CP
housekeeper−−CP
xである);
d)値Sを計算するために、b)及びc)で得られた値を用いて、以下のアルゴリズムの1つに従って多変量解析を適用する工程:
S=S
4−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;又は
S=S
4−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);又は
S=S
4−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow);
e)d)で得られた前記「S」の値を標準値、例えば同じがんを有する患者から得られた値と比較する工程;及び
f)d)で得られた「S」の値が前記標準値を上回っている場合、本明細書で定義されるMDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物、好ましくは式IIa、III、(B)、(C)又は(D)の化合物を投与する工程。
この実施態様の範囲内において、「標準値」(又は基準値)は、工程d)で適用されるアルゴリズムに従って異なっていても良い。従って、好ましい実施態様において、S=S
4−gene−RT−PCR×S
MDM2−flowに従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約200、又は約300、又は約400、又は約450、又は約500である(
図4a i)及びiv)を参照)。別の好ましい実施態様において、S=S
4−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow)に従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約27、又は約30、又は約33、又は約36、又は約40である(
図4a ii)及びv)を参照)。別の好ましい実施態様において、S=S
4−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow)に従って「S」が計算される場合、工程e)に従った比較のための標準値は、約10、又は約10.5、又は約11、又は約11.5、又は約12である(
図4a iii)及びvi)を参照)。
【0107】
別の実施態様において、上記の実施態様の何れかで定義された組み合わせスコア「S」は、治療中、すなわち、本明細書中で前に定義したMDM2阻害剤によるがん患者の治療のモニタリング中に使用される。この実施態様の範囲内において、上記の方法の何れかによる工程a)の試料は治療中に採取され、d)で得られた組み合わせスコアが対応する標準値を上回る場合に治療が継続される。
【0108】
別の実施態様において、本発明は、本明細書で定義されるMDM2阻害剤による治療に対するがん患者の応答を決定するための方法であって、本明細書で前に定義した何れかのアルゴリズムに従って得られた組み合わせスコア「S」が高いほど、例えば、臨床薬理学の当業者に周知のROC(AUC)値及び分析によって示されるように、前記治療に対する前記患者の応答の可能性が高いことを特徴とする方法を提供する。
【0109】
上記で定義された方法/アルゴリズムの何れかに従って得られた組み合わせスコア「S」は、治療に対する患者の応答/利益を更に正確に識別するために、p53遺伝子変異状態との関連で使用することができる。患者のp53遺伝子変異状態は、改善された感受性及び/又は特異性を有する本明細書に記載のMDM2阻害剤による治療に対する前記患者の応答を検出するための追加のマーカーとして役立ち得る。従って、更に別の実施態様において、本発明は、前記患者の試料中のp53遺伝子変異状態を検出する工程を更に含む、本明細書で定義される組み合せスコア「S」を得るための方法の何れかを提供する。この実施態様の範囲では、p53遺伝子の変異状態は、好ましくは野生型である。しかしながら、p53遺伝子変異の検出は、一般に、本明細書中に開示されるMDM2阻害剤に応答するか、又はMDM2阻害剤による治療の恩恵を受ける患者の可能性についての排除基準として理解されるべきではない。従って、更に別の実施態様において、本発明は、有益な臨床的エンドポイントを満たす、すなわち治療に応答する前記患者の可能性のより洗練された予測を提供するために、上記に定義される遺伝子シグネチャースコア、好ましくは3−及び4−遺伝子シグネチャースコアを有する、本明細書で定義されるMDM2発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の%、及びp53変異状態を組み合わせる組み合わせ多変量解析を提供する。更に別の実施態様において、この多変量解析における更なる共変量は、患者の年齢及び/又はECOGスコアである。
【0110】
別の実施態様において、本発明は、がん患者を治療するための方法であって、上記で定義された方法の何れか1つに従って組み合わせスコア「S」を得ること、及び「S」の前記値が、本明細書において前に定義した標準値又は基準値を上回る場合、MDM2阻害剤を前記患者に投与することを含む、方法を提供する。一実施態様において、MDM2阻害剤は、本明細書で前に定義した通りである。別の実施態様において、MDM2阻害剤は、上記に定義される式(II)、(IIa)、(B)、(C)又は(D)の化合物である。別の実施態様において、前記がん患者から得られた試料においても検出されるp−53変異状態は、好ましくは野生型である。
【0111】
一態様において、本発明はキット、及び別の態様では、本明細書で定義される一般式I、II、III;又はIIa若しくはIII;又は(A)、(B)、(C)若しくは(D)又は薬学的に許容されるその誘導体の化合物に対して、好ましくは被験者(又は患者)のがんの応答を予測するための装置に関し、前記キットは、特に血液又は骨髄試料の採取のための試料採取のための手段、ツール又は装置と、前記試料中の本明細書で定義されるMDM2タンパク質発現細胞、特にCD45dim(芽球)細胞の相対量及び前記試料中の表1に記載の1つ又は複数の遺伝子、好ましくは3−又は4−遺伝子シグネチャーのmRNAレベルを検出する方法の説明書とを含む。
【0112】
キット及び装置はまた、検出された、MDM2タンパク質発現細胞の相対量及びmRNAレベルから組み合わせスコア「S」を得る方法の説明書を含む。
キット及び装置はまた、好ましくは、患者の試料から得られた「S」の値が比較される
標準値又は1組の標準値を含むコンパレーターモジュールを含むことができる。
【0113】
別の実施態様において、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬を用いた治療に対する応答を予測するためのキットであって;
a)がん、特に、白血病、特にAMLのような血液学的障害に罹患している患者から試料、好ましくは血液又は骨髄試料を得るための手段;
b)i)好ましくはフローサイトメトリーを使用することにより、その試料からの本明細書で定義される1つ又は複数のMDM2タンパク質発現細胞型、特にCD45dim(芽球)細胞の相対量、
ii)好ましくはRT−PCRを使用することにより、XPC、BBC3、CDKN2A及び場合によりMDM2のmRNA発現レベル
を検出し;及び
iii)場合により患者のp53遺伝子変異状態、年齢及び/又はECOGスコアから選択される共変量
を検出する方法の説明書;
c)標準値及びそれらの使用法の説明書を含むコンパレーターモジュール;及び
d)MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物を含む医薬
を含むキットを提供する。
【0114】
更に別の実施態様において、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物は、本明細書で定義される式I、II、III;又はIIa若しくはIII;又は(A)、(B)、(C)若しくは(D)又は薬学的に許容されるその誘導体の化合物である、上記に記載のキットが提供される。標準値又は1組の標準値は、上記のように決定され得る。
【0115】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0116】
実施例1
この実施例は、フローサイトメトリーを使用して試験NP28679(パート1及び2)に参加する患者から得られたMDM2発現CD45dim芽球細胞の相対量の検出を記載する。
【0117】
材料
CD34 PerCP BD(Becton Dichinson)カタログ番号340666
スポンサー付CROにより注文製造されたCD45 AF700
Mdm2 AF647 Santa Cruz Biotech、カタログ番号sc−5304AF647
Perm Buffer III BD カタログ番号558050
BD Lyse/Fix カタログ番号558049
スポンサー付CROのSOPに従って注文製造された1%BSAを含むPBS
【0118】
染色手順
細胞を以下の手順に従って染色した:適切なドナーの100μlの血液を適切に標識したチューブに添加した。続いて、CD34以外の表面マーカーを、抗体蛍光色素コンジュゲートを添加することによって染色し、又はそれぞれのアイソタイプ対照が使用された。次いで、チューブをボルテックスし、室温で暗所で20分間インキュベートした。PBS BSA緩衝液で洗浄した後、チューブを遠心分離し、デカントした。次に、予熱した1×BD Lyse/固定溶液2mlを添加し、チューブをボルテックスし、37℃の水浴中で15分間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを遠心分離し、上清をデカントした。2回の洗浄工程の後、細胞内染色のための適切な抗体又はアイソタイプ対照を、BD Lyse/Fix Perm緩衝液を用いてPBS/BSAにより添加した。CD34又はそれぞれのアイソタイプを添加した。チューブを室温で暗所で30分間インキュベートした。次いで、チューブをPBS/BSAを用いて2回洗浄し、最後にFACSCanto IIフローサイトメーターでの獲得のために500μlに再懸濁した。250,000事象が獲得された。
【0119】
結果出力のための電子ゲーティング
結果の生成のために、WinlistやFlowjoなどのフローサイトメトリー解析ソフトウェアを使用する必要がある。最初に、ゲートが通常のサイズ(前方散乱、FSC)及び粒状の特性(側方散乱、SSC)を有する全ての細胞の周りに描かれる:総有核細胞ゲート(TNC、
図1のR1)。次いで、このTNCサブセット内で、AML芽球集団を、dimCD45発現及び低側方散乱特性を有する細胞の周囲の領域を描くことによって同定する(
図1のR3)。芽球集団は、CD34陽性又は陰性芽球をゲーティングすることによって更に精製することができる(
図1、それぞれR6及びR39)。CD34陽性の閾値は、それぞれのチャンネルにおいてアイソタイプ対照染色を用いることによって同定することができる(図示せず)。
【0120】
次に、
図2に示すように、CD45dim一般芽球集団及びCD34を更に発現するより洗練された芽球集団をドットプロットで表示する。Mdm2染色の代わりに使用されるアイソタイプ対照を使用して、Mdm2陽性の閾値を設定することができる(
図2の上の2つのパネル)Mdm2認識抗体を含む染色条件が
図2の下に示されている。Mdm2陽性と定義される領域に入る細胞集団は、それぞれの芽球親集団内のMdm2発現細胞の割合を計算することによって決定される。
【0121】
式(B)のMDM2阻害剤による治療に対する患者の応答とMDM2発現CD45dim芽球細胞の相対量の相関
試験NP28679(パート1及び2)に参加している患者について、MDM2発現CD45dim芽球細胞の相対量を上記の方法に従って得て、前記量を前記患者の応答に対してプロットした(
図3)。部分応答(PR)が応答者のグループに含まれているかいないかに応じて、治療前のMDM2発現細胞の相対量が、式(B)のMDM2阻害剤による治療に対するその患者の応答を示すことが示される。特に、患者の試料中に検出された全てのCD45芽球細胞のうち、MDM2陽性CD45dim芽球細胞の%が高いほど、例えば、ROC(AUC)値及び分析によって示されるように、その患者について改善された臨床的エンドポイントの利益(「応答」)の可能性が高いことが実証される。
【0122】
実施例2
この実施例は、本明細書で定義される組み合わせスコア「S」の計算、及び試験NP28679(パート1及び2)に参加する患者の応答とのその相関を記載する。MDM2陽性CD45dim細胞の相対量を実施例1に従って検出し、ベースライン時のMDM2、XPC、BBC3及びCDKN2AのmRNA発現レベルをRT−PCRによって測定した。血液又は骨髄の何れかから単離した全RNAをUV吸収によって定量する。各PCR反応について、固定された全RNA入力が使用される。PCRは、Roche Molecular Systemsからの独自のDNAポリメラーゼを用いて行われる。ポリメラーゼは逆転写が可能であるため、RNAからの直接的な増幅及び検出は遺伝子特異的プライマーの単一のセットとの1つの反応で行われる。リアルタイムPCRは、標的核酸及び対照核酸の増幅及び検出のためのプライマー及びTaqMan(登録商標)プローブを用いたTaqMan(登録商標)技術を利用する。3つの反応ウェルを使用して4つの標的遺伝子を検出する。各反応ウェルにおいて、内因性対照が含まれる。cobas(登録商標)z480アナライザーが増幅及び検出に使用される。
【0123】
Cycle−to−threshold値(Cp)は、搭載のLightCycler(登録商標)(LC)480ソフトウェアを使用して各蛍光チャネルについて計算される。TMEM55Bを内在性コントロール遺伝子として発現の正規化が行われ、ここで標的遺伝子(x)の相対的発現レベル(濃度)はGx=2
delta−CPxと定義され(式中delta−Cp
x=Cp(TMEM)−Cp
xであり)、標的遺伝子(x)はMDM2、BBC3、XPC及びCDKN2Aである。
【0124】
次いで、患者のシグネチャースコアを、ベースライン(すなわち治療前)で測定された相対的発現レベル(Gx)の合計に、インビトロで観察された方向を乗じたものから計算され、4−遺伝子シグネチャースコアS
4−gene−RT−PCR=G
MDM2+G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2Aと定義される。同様に、3−遺伝子シグネチャースコアは、S
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2Aと定義される。
【0125】
組み合わせスコア「S」のその後の計算のために、S
MDM2−flowはCD45dim芽球集団における検出可能なMDM2タンパク質発現を有する細胞のパーセンテージを示すものとする。MDM2 S
MDM2−flowのタンパク質発現測定とRT−PCRに基づく4−遺伝子シグネチャースコアS
4−gene−RT−PCRとを組み合わせることにより、組み合わせスコア「S」を以下の3つの方法で算出した:
1.S=S
4−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;
2.S=S
4−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);
3.S=S
4−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow).
【0126】
同様に、スコア計算からG
MDM2を省略した3−遺伝子シグネチャースコアS
3−gene−RT−PCR=G
XPC+G
BBC3−G
CDKN2Aが与えられた場合、「S」は同じ方法で計算された:
1.S=S
3−gene−RT−PCR×S
MDM2−flow;
2.S=S
3−gene−RT−PCR×log2(S
MDM2−flow);
3.S=S
3−gene−RT−PCR+log2(S
MDM2−flow).
【0127】
2標本ウィルコクソン順位和検定を使用して、曲線下面積(AUC)の分類の計算を介して、上記の6つの定義の何れかに基づくシグネチャースコアが応答者と非応答者を有意に区別できるかどうかを試験することによって、結果として組み合わせシグネチャースコア「S」は、AMLに罹患している患者による臨床試験(NP29679試験のパート1及び2)において見られる臨床応答と相関していた。結果を
図4a及び4bに示す。MDM2、BBC3、XPC及びCDKN2A単独のそれぞれのmRNA発現レベルと患者の応答とを相関させる比較データを
図5に示す。