(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均で、少なくとも1つの前記式(I)の加水分解性シラン基及び少なくとも1つの前記式(II)の加水分解性シラン基を有する少なくとも1つの成分(B)を含む、請求項1に記載の被覆剤組成物。
リン含有及び窒素含有触媒(D)は、任意に置換された非環式リン酸モノエステルのアミン付加物、任意に置換されたケイ素リン酸モノエステルのアミン付加物、任意に置換された非環式リン酸ジエステルのアミン付加物、任意に置換された環式リン酸ジエステルのアミン付加物、非環式ホスホン酸ジエステルのアミン付加物、環式リン酸ジエステルのアミン付加物、非環式ジホスホン酸ジエステルのアミン付加物及び/又は環式ホスホン酸ジエステルのアミン付加物の群から、好ましくは二環式アミンの及び/又は脂肪族トリアミンの、任意に置換された非環式リン酸モノエステルとの及び/又は任意に置換された環式リン酸モノエステルとの及び/又は任意に置換された非環式リン酸ジエステルとの及び/又は任意に置換された環式リン酸ジエステルとの付加物の群から選択される、請求項1又は2に記載の被覆剤組成物。
前記触媒(Z)は、亜鉛カルボキシレート及びビスマスカルボキシレートの群より選択され、とりわけ分岐状C3〜C24脂肪酸のBi(III)塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
前記反応促進剤(R)は、アルキルホスホン酸、ジアルキルホスフィン酸、ホスホン酸、ジホスホン酸、ホスフィン酸の、任意に置換された非環式ホスホン酸モノエステルの、及び/又は、任意に置換された環式リン酸モノエステルの、及び/又は、任意に置換された非環式リン酸ジエステルの、及び/又は、任意に置換された環式リン酸ジエステルの群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
前記反応促進剤(R)は、任意に置換された非環式リン酸モノエステル及び/又は任意に置換された環式リン酸モノエステル及び/又は任意に置換された非環式リン酸ジエステル及び/又は任意に置換された環式リン酸ジエステルの群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
i.前記リン含有及び窒素含有触媒(D)は、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジメチルドデシルアミン及び/又はトリエチルアミンの、非環式リン酸モノエステル及び/又は環式リン酸モノエステル及び/又は非環式リン酸ジエステル及び/又は環式リン酸ジエステルとの付加物の群より選択され、
ii.前記触媒(Z)は、分枝状C3〜C24脂肪酸のBi(III)塩の群より選択され、
iii.前記反応促進剤(R)は、非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステルの群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
触媒(D)と触媒(Z)と促進剤(R)を足した合計量が、各場合とも前記被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、0.2〜21質量%、好ましくは0.6〜11質量%の間にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
成分(B)中に元々存在する前記イソシアネート基の5〜75mol%、好ましくは10〜60mol%、より好ましくは15〜50mol%が、前記式(I)及び/又は前記(II)のシラン基への、好ましくは前記式(I)及び前記(II)のシラン基への転化を受けている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
成分(B)中に元々存在する前記イソシアネート基の5〜55mol%、好ましくは9.8〜50mol%、とりわけ13.5〜45mol%が、前記式(II)のシラン基への転化を受けている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
前記被覆剤組成物は、少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)を、各場合とも前記被覆剤のバインダー分を基準にして20.0〜80.0質量%、好ましくは30.0〜70.0質量%含み、及び/又は、前記被覆剤組成物は、成分(B)を、各場合とも前記被覆剤組成物のバインダー分を基準にして20.0〜80.0質量%、好ましくは30.0〜70.0質量%含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
任意に事前に被覆された基材に顔料着色ベースコートを適用し、その後に請求項1〜12のいずれか1項に記載の被覆剤組成物の被覆を適用することを含む、多段階被覆方法。
前記顔料着色ベースコートの適用後、適用したベースコート材をまず室温〜80℃の温度で乾燥させ、次いで請求項1〜12のいずれか1項に記載の前記被覆剤組成物を適用し、20〜100℃、とりわけ30〜90℃の間の温度で硬化させる、請求項13に記載の多段階被覆方法。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の被覆剤組成物のクリアコート材料としての使用、又は請求項13もしくは14に記載の方法の自動車OEM仕上げ用の、自動車補修に及び/又は自動車の中又は上に設置する及び/又は業務用車両の部品の仕上げ用の使用。
少なくとも1つの顔料着色ベースコート及びその上に配置された少なくとも1つのクリアコートから構成される多層被覆効果及び/又は着色塗装系であって、前記クリアコートは請求項1〜12のいずれか1項に記載の被覆剤組成物から製造されている、多層被覆効果及び/又は着色塗装系。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の説明
本発明による被覆剤
本発明の目的において、不揮発性画分(nfA、固形分又はバインダー分とも呼ばれる)の測定において、特に明記しない限り、それぞれの場合で一定の条件が選択される。
【0020】
被覆剤の個々の成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)の不揮発性画分を測定するために、それぞれの成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)の試料それぞれ1gを固形分リッド(lid)に適用し、130℃で1時間加熱してから室温に冷却し、再度秤量する(ISO3251に従う)。すると、成分のバインダー分が質量%で、乾燥前のそれぞれの試料の質量で割った130℃での乾燥後のそれぞれの試料の残渣の質量の比に100を乗じたものに対応して得られる。不揮発性画分は、例えば、本発明の被覆剤組成物中に存在する対応するポリマー溶液又は樹脂について測定し、それによって、2つ以上の構成成分の混合物又は被覆組成物全体におけるそれぞれの構成成分の質量分率を調整及び測定できるようにした。市販の成分の場合、この成分のバインダー分はまた、他に示さない限り、記述した固形分と十分な精度で同等であり得る。
【0021】
被覆剤組成物のバインダー分は、各場合とも架橋前の被覆剤組成物の成分(A)と(B)と(C)と(E)のバインダー分を足した合計である。これは当業者に既知の方法で計算され、これら成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)のバインダー画分と、各場合とも被覆剤組成物の100質量部で使用される成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)それぞれの量から計算される。従って、被覆剤組成物の質量部でのバインダー分は、各場合とも被覆剤組成物の中100質量部で使用される成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)それぞれの量の生成物の合計に等しく、各場合とも成分(A)又は(B)又は(C)又は(E)それぞれのバインダー分の質量%を乗じ、各場合とも100で除する。
【0022】
本発明の目的において、ヒドロキシル数又はOH価は、水酸化カリウムのミリグラムでの量を示し、これは問題の構成成分1グラムのアセチル化中に結合した酢酸のモル量に相当する。本発明の目的のために、他に示さない限り、ヒドロキシル数は、DIN53240−2:2007−11(Determination of hydroxyl value −Part2:Method with catalyst)に従った滴定によって、実験的に測定する。
【0023】
本発明の目的において、酸価は、それぞれの構成成分1gを中和するのに必要とされる水酸化カリウムのミリグラムでの量を示す。本発明の目的において、他に示さない限り、酸価は、DIN EN ISO 2114:2006−11に従った滴定によって、実験的に測定する。
【0024】
質量平均(Mw)及び数平均(Mn)分子量は、本発明の目的において、高圧液体クロマトグラフィーポンプ及び屈折率検出器を用いて、35℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定する。使用した溶出液は0.1容量%の酢酸を含有するテトラヒドロフランで、溶出速度は1ml/分であった。較正はポリスチレン標準を用いて実施する。
【0025】
本発明の目的において、ガラス転移温度Tgは、DIN51005「Thermal Analysis(TA)−Terms」及びDIN EN ISO 11357-2「Thermal analysis−Dynamic Scanning Calorimetry(DSC)」に従い実験的に測定する。これは、サンプルボートに10mgの試料を量りとり、これをDSC装置に導入することを含む。装置を開始温度まで冷却し、その後50ml/分での不活性ガスフラッシング(N2)下で10K/分の加熱速度で1回目及び2回目の測定を実施するが、測定実施の間に再度開始温度まで冷却する。測定は、予想されるガラス転移温度よりも約50℃低い温度からガラス転移温度よりも約50℃高い温度範囲で慣習的に実施する。本発明の目的のために記録するガラス転移温度は、DIN EN ISO 11357−2の10.1.2節に一致し、比熱容量の変化の半分(0.5デルタcp)に達する第2回目の測定における温度である。この温度は、DSC図(温度に対する流れのプロット)から測定され、測定プロットのあるガラス転移前後の外挿基線間の中心線の交点における温度である。
【0026】
ポリヒドロキシル基含有成分(A)
ポリヒドロキシル基含有成分(A)として、分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、オリゴマー及び/又はポリマーである、当業者に既知の全ての化合物を使用することが可能である。成分(A)として、異なるオリゴマーポリオール及び/又はポリマーポリオールの混合物を使用することも可能である。
【0027】
好ましいオリゴマーポリオール及び/又はポリマーポリオール(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して測定して、数平均分子量がMn≧300g/mol、好ましくはMn=400〜30000g/mol、より好ましくはMn=500〜15000g/molであり、質量平均分子量がMw>500g/mol、好ましくは800〜100000g/mol、とりわけ900〜50000g/molである。
【0028】
成分(A)として好ましいのは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオール、及びまたそれらのコポリマーである(以下、ポリアクリレートポリオール;及びポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、及びこれらポリオールの混合物という)。
【0029】
ポリオール(A)は、好ましくはOH価が30〜400mgKOH/g、とりわけ70〜250mgKOH/gである。ポリ(メタ)アクリレートコポリマーの場合には、OH価はまた、使用するOH官能性モノマーに基づいた計算でも十分な精度で測定できる。
【0030】
ポリオール(A)は、好ましくは酸価が0〜30mgKOH/gである。
【0031】
ポリオールのガラス転移;DIN53765により示差走査熱量測定(DSC)で測定した各場合の温度は、好ましくは−150〜100℃、より好ましくは−40℃〜60℃である。
【0032】
ポリウレタンポリオールは、好ましくはオリゴマーポリオールと、とりわけポリエステルポリオールプレポリマーと、適切なジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応により調製され、例えばEP−A−1273640に記載されている。特に、ポリエステルポリオールと、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートとの反応生成物が使用される。
【0033】
本発明において好ましく使用されるポリウレタンポリオールは、各場合ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して測定して、数平均分子量がMn≧300g/mol、好ましくはMn=700〜2000g/mol、より好ましくはMn=700〜1300g/molであり、及びまた好ましくは、質量平均分子量がMw>500g/mol、好ましくは1500〜3000g/mol、とりわけ1500〜2700g/molである。
【0034】
適切なポリシロキサンポリオールは、例えばWO−A−01/09260に記載されており、そこに列挙されたポリシロキサンポリオールは、好ましくは更なるポリオール、特に比較的高いガラス転移温度を有するポリオールと組み合わせて使用することができる。
【0035】
特に好ましく使用されるポリヒドロキシル基含有成分(A)は、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物、及び非常に好ましくはポリ(メタ)アクリレートポリオールの混合物である。
【0036】
本発明において好ましく使用されるポリエステルポリオール(A)は、各場合ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して測定して、数平均分子量がMn≧300g/mol、好ましくはMn=400〜10000g/mol、より好ましくはMn=500〜5000g/molであり、及びまた好ましくは、質量平均分子量がMw>500g/mol、より好ましくは800〜50000g/mol、とりわけ900〜10000g/molである。
【0037】
本発明において好ましく使用されるポリエステルポリオール(A)は、好ましくはOH価が30〜400mgKOH/g、とりわけ100〜250mgKOH/gである。
【0038】
本発明において好ましく使用されるポリエステルポリオール(A)は、好ましくは酸価が0〜30mgKOH/gである。
【0039】
適切なポリエステルポリオールは、例えばEP−A−0994117及びEP−A−1273640にも記載されている。
【0040】
本発明において好ましく使用されるポリ(メタ)アクリレートポリオール(A)は、一般にコポリマーであり、各場合ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準に対して測定して、好ましくは数平均分子量がMn≧300g/mol、好ましくはMn=500〜15000g/mol、より好ましくはMn=900〜10000g/molであり、及びまた好ましくは、質量平均分子量Mwが500〜20000g/mol、とりわけ1000〜15000g/molである。
【0041】
ポリ(メタ)アクリレートポリオール(A)は、OH価が好ましくは60〜300mgKOH/g、とりわけ70〜250mgKOH/gであり、及びまた酸価が0〜30mgKOH/gである。
【0042】
ヒドロキシル数(OH価)及び酸価は、上述のように測定する(それぞれDIN53240−2及びDIN EN ISO2114)。
【0043】
本発明において好ましく使用されるポリ(メタ)アクリレートポリオール(A)に適切なモノマー単位は同定されており、例えばWO2014/016019の10ページ及び11ページに、及びまたWO2014/016026の11ページ及び12ページに記載されている。
【0044】
本発明において特に使用されるのは、ガラス転移温度が(DIN53765による示差走査熱量測定(DSC)で測定して)−100と<30℃の間にある、好ましくは10℃より低い、とりわけ−60℃〜+5℃、及びより好ましくは−30℃と<0℃の間にある1つ以上のポリ(メタ)アクリレートポリオール(A1)を成分(A)として含む、被覆剤組成物(K)である。更に、被覆剤組成物(K)は、1つ以上の異なるポリ(メタ)アクリレートポリオール(A2)を更に含んでよく、ポリ(メタ)アクリレートポリオール(A2)は好ましくはガラス転移温度が(DIN53765による示差走査熱量測定(DSC)で)10〜50℃である。
【0045】
ガラス転移温度について、当業者は最初に以下のフォックス式(III)を用いて理論的に見積もることもできるが、やはり上記のように実験的に測定されるものである。
【0046】
n=x
1/T
g= Σ W
n/T
gn (III)
n=1
【0047】
式中、
T
g=ポリアクリレート又はポリメタクリレートのガラス転移温度、x=異なる共重合モノマーの数、W
n=n番目のモノマーの質量分率、T
gn=n番目のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度、である。
【0048】
成分(A)は、好ましくは、少なくとも1つの(メタ)アクリレートコポリマーを含むが、これは、
(a)10〜80質量%、好ましくは20〜50質量%のアクリル酸のヒドロキシル含有エステル、又はこれらモノマーの混合物と、
(b)0〜30質量%、好ましくは0〜15質量%のメタクリル酸の(a)ではないヒドロキシル含有エステル、又はそのようなモノマーの混合物と、
(c)5〜90質量%、好ましくは20〜70質量%のアルコール残基中に少なくとも4個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸の(a)ではない及び(b)ではない脂肪族又は脂環式エステル、又はそのようなモノマーの混合物と、
(d)0〜5質量%、好ましくは0.5〜3.5質量%のエチレン性不飽和カルボン酸、又はエチレン性不飽和カルボン酸の混合物と、
(e)0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%のビニル芳香族、又はそのようなモノマーの混合物と、
(f)0〜50質量%、好ましくは0〜35質量%の、(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)以外のエチレン性不飽和モノマー、又はそのようなモノマーの混合物と、
を共重合することにより得られ、
成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の質量分率の合計が常に100質量%となるようにしたものであり、更に、これとは異なる1種以上の(メタ)アクリレートコポリマーを任意に含む。
【0049】
成分(B)
本発明における被覆剤は、平均で少なくとも1つのイソシアネート基を有し、且つ平均で少なくとも1つの加水分解性シラン基を有する成分(B)を含む。本発明における被覆剤は、平均で少なくとも1つの遊離イソシアネート基を有する成分(B)を含むことが好ましい。
【0050】
本発明において好ましく使用される成分(B)の親構造としての役割を果たすジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは、好ましくは慣用の置換又は非置換の芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は複素環式ポリイソシアネート、より好ましくは脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートである。更に、二量化、三量化、ビウレット形成、ウレトジオン形成、アロファネート形成及び/又はイソシアヌレート形成によってこの種の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートから派生するポリイソシアネート親構造が好ましい。
【0051】
本発明において好ましく使用される成分(B)の親構造としての役割を果たすジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは、例えばWO2014/016019の12ページと13ページ及びまた、WO2014/016026の13ページと14ページにも記載されている。
【0052】
本発明において好ましく使用される成分(B)の親構造としての役割を果たす特に好ましいジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート又はこれらイソシアネートの混合物、及び/又は、二量化、三量化、ビウレット形成、ウレトジオン形成、アロファネート形成及び/又はイソシアヌレート形成によってそのようなイソシアネートから派生する1つ以上のポリイソシアネート親構造である。とりわけ、ポリイソシアネート親構造は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートイソシアヌレート、又はこれらポリイソシアネート2種以上の混合物であり、さらに好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートである。
【0053】
本発明の更なる実施形態では、本発明において好ましく使用される成分(B)の親構造としての役割を果たすジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーであり、これは、ポリオールと前述のポリイソシアネートの化学量論的過剰量との反応によって得られる。この種のポリイソシアネートプレポリマーは、例えばUS−A−4598131に記載されている。
【0054】
成分(B)は平均して少なくとも1つのイソシアネート基を含み、及びまた更に、平均で、
少なくとも1つの式(I)の構造単位(I)
−NR−(X−SiR’’
x(OR’)
3−x) (I)、
及び/又は、
少なくとも1つの式(II)の構造単位(II)
−N(X−SiR’’
x(OR’)
3−x)
n(X’−SiR’’
y(OR’)
3−y)
m (II)、
を含み、
式中、
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素、硫黄又はNRa基により中断されていてもよく、ここでRaは、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
R’は、水素、アルキル又はシクロアルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素、硫黄又はNRa基により中断されていてもよく、ここでRaは、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、好ましくはR’はエチル及び/又はメチルであり、
X、X’は、1〜20個の炭素原子を有する線状及び/又は分岐鎖状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり、好ましくはX、X’は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレンラジカルであり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素、硫黄又はNRa基により中断されていてもよく、ここでRaは、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、好ましくはR’’は、アルキルラジカルであり、とりわけ1〜6個のC原子を有し、
Nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、及びx、yは、0〜2である。
【0055】
好ましくは、更に、成分(B)は、平均で少なくとも1つのイソシアネート基を含み、及びまた平均で少なくとも1つの式(I)の構造単位(I)及び平均で少なくとも1つの式(II)の構造単位(II)を含む。
【0056】
それぞれの好ましいアルコキシラジカル(OR’)は、同様であっても異なっていてもよい。しかしながら、ラジカルの構造にとって重要なのは、それらが加水分解性シラン基の反応性にどの程度影響を及ぼすかである。好ましくは、R’はアルキルラジカルであり、とりわけ1〜6個のC原子を有する。特に好ましいラジカルR’は、シラン基の反応性を高めるもの、すなわち良好な脱離基を表すものである。従って、メトキシラジカルはエトキシラジカルよりも好ましく、次にエトキシラジカルはプロポキシラジカルよりも好ましい。従って、R’=エチル及び/又はメチル、とりわけメチルが特に好ましい。
【0057】
有機官能性シランの反応性は、更に、シラン官能基と、変性されるべき構成成分との反応に役立つ有機官能基との間のスペーサーX、X’の長さによってかなり影響されることもある。この代表例は、“アルファ”−シランが挙げられるが、これはWackerから入手可能で、Si原子と官能基との間には、“ガンマ”−シランの場合に存在するプロピレン基よりもむしろメチレン基が存在する。
【0058】
好ましく使用される成分(B)は、一般に異なる化合物の混合物からなり、平均で、少なくとも1つの式(I)の構造単位(I)のみ及び/又は少なくとも1つの式(II)の構造単位(II)、及び平均で少なくとも1つ、好ましくは1つを超えるイソシアネート基を有する。非常に好ましくは、成分(B)は、平均で少なくとも1つの式(I)の構造単位(I)及び少なくとも1つの式(II)の構造単位(II)、並びに平均で1つを超えるイソシアネート基を有する。
【0059】
成分(B)はとりわけ、1つを超えるイソシアネート基を有し且つ構造単位(I)及び(II)を有さない少なくとも1つの化合物(B1)と、少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つの構造単位(I)とを有する少なくとも1つの化合物(B2)と、少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つの構造単位(II)とを有する少なくとも1つの化合物(B3)と、及び/又は、少なくとも1つの構造単位(I)と少なくとも1つの構造単位(II)とを有する少なくとも1つの化合物(B4)と、及び/又は、少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つの構造単位(I)と少なくとも1つの構造単位(II)とを有する少なくとも1つの化合物(B5)と、の混合物からなる。
【0060】
本発明において好ましく使用され、構造単位(I)及び/又は(II)で官能化される成分(B)は特に、好ましくは脂肪族ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート及び/又は、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によりこれらから派生するポリイソシアネートを、式(Ia)の少なくとも1つの化合物と、
H−NR−(X−SiR’’
x(OR’)
3−x) (Ia)、
及び/又は、少なくとも1つの式(IIa)の化合物と、
HN(X−SiR’’
x(OR’)
3−x)
n(X’−SiR’’
y(OR’)
3−y)
m (IIa)
反応させることによって得られ、置換基は上述の定義を有する。
【0061】
本発明において特に好ましく使用され、構造単位(I)及び(II)で官能化される成分(B)は、ポリイソシアネートと少なくとも1つの式(Ia)の化合物及び少なくとも1つの式(IIa)の化合物との反応に対応して得られる。
【0062】
この文脈において、成分(B)の調製では、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量を、少なくとも1つの化合物(Ia)と少なくとも1つの化合物(IIa)との混合物と直接反応させることが可能である。更に、成分(B)を調製するために、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量を、少なくとも1つの化合物(Ia)とまず反応させ、その後で少なくとも1つの化合物(IIa)と反応させることも可能である。
【0063】
更に、成分(B)の調製のため、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の一部のみを、少なくとも1つの化合物(Ia)と少なくとも1つの化合物(IIa)との混合物とまず反応させ、続いて、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の残りの部分を添加することも可能である。
【0064】
最後に、成分(B)の調製のため、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の一部のみを、少なくとも1つの化合物(Ia)と分けてまず反応させ、成分(B)を調製するのに使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量のまた別の部分を、少なくとも1つの化合物(IIa)と分けて反応させ、及び任意に、続いて成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の残余部分を任意量添加することが可能である。記述した反応において考えられる全ての混成形態が成分(B)の調製のために可能であることは、ここで理解されるであろう。
【0065】
しかしながら、成分(B)は、代わりに、成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量を、少なくとも1つの化合物(Ia)と少なくとも1つの化合物(IIa)との混合物と反応させることによって調整され、
又は、
成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の一部を、化合物(Ia)及び(IIa)で完全にシラン化されてそれ故イソシアネート基を含まない成分と混合することによって調整され、
及び/又は、
成分(B)の調製に使用するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートの全量の一部を、化合物(Ia)で完全にシラン化されてそれ故イソシアネート基を含まない成分(I)、及び化合物(IIa)で完全にシラン化されてそれ故イソシアネート基を含まない成分(II)と混合することによって調製される、
ことが好ましい。
【0066】
本発明において好ましい化合物(IIa)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンが特に好ましい。この種のアミノシランは、例えば商標名DYNASYLAN(登録商標)でEvonik社から、又はSilquest(登録商標)でOSI社から入手可能である。
【0067】
本発明において好ましい化合物(Ia)は、アミノアルキルトリアルコキシシランであり、好ましくは、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン等である。特に好ましい化合物(Ia)は、N−(2−(トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン及び/又はN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンが特に好ましい。この種のアミノシランは、例えば商標名DYNASYLAN(登録商標)でEvonik社から、又はSilquest(登録商標)でOSI社から入手可能である。
【0068】
成分(B)において、元々存在するイソシアネート基の好ましくは5〜75mol%、とりわけ10〜60mol%、好ましくは15〜50mol%が、反応を経て構造単位(I)及び/又は(II)を形成、好ましくは構造単位(I)及び(II)を形成している。
【0069】
成分(B)において、特に、ビスシラン構造単位(II)の全量は、各場合とも構造単位(I)と(II)を足した全体を基準として、5〜100mol%、好ましくは10〜98mol%、より好ましくは20〜90mol%、非常に好ましくは30〜80mol%であり、モノシラン構造単位(I)の全量は、各場合とも構造単位(I)と(II)を足した全体を基準として、95〜0mol%、好ましくは90〜2mol%、より好ましくは、80〜10mol%、より好ましくは70〜20mol%である。
【0070】
成分(B)において、より好ましくは、元々存在するイソシアネート基の5〜55mol%、好ましくは9.8〜50mol%、より好ましくは13.5〜45mol%が、反応を経て式(II)のビスシラン構造単位を形成している。
【0071】
ヒドロキシル基含有成分(C)
任意に、ポリヒドロキシル基含有成分(A)だけでなく、本発明の被覆剤組成物は、成分(A)とは異なる1つ以上の単量体ヒドロキシル基含有成分(C)を含んでよい。これらの成分(C)は、好ましくは、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%の画分を占める。
【0072】
低分子量ポリオール、特にジオールは、ヒドロキシル基含有成分(C)として使用される。適切なポリオール(C)の例は、WO2014/016019の12ページ及びまたWO2014/016026の13ページに記載されている。低分子は、この種のポリオール(C)が好ましくはポリオール成分(A)に対して少量であると認められることを意味する。
【0073】
触媒(D)
本発明において、リン含有及び窒素含有触媒が触媒(D)として使用されることが必須である。2種以上の異なる触媒(D)の混合物も、ここで使用してよい。
【0074】
適切なリン含有及び窒素含有触媒(D)の例は、任意に置換されたホスホン酸ジエステル及び任意に置換されたジホスホン酸ジエステルのアミン付加物であり、好ましくは、任意に置換された非環式ホスホン酸ジエステル又は任意に置換された環式ホスホン酸ジエステルの、任意に置換された非環式ジホスホン酸ジエステルの、及び任意に置換された環式ジホスホン酸ジエステルのアミン付加物からなる群からのアミン付加物である。これらの種の触媒は、例えばドイツ特許出願DE−A−102005045228に記載されている。
【0075】
しかしながら、特に使用されるのは、任意に置換されたリン酸モノエステルのアミン付加物、及び/又は、任意に置換されたホスホン酸ジエステルのアミン付加物、好ましくは非環式リン酸モノエステル及びジエステルの並びに環式リン酸モノエステル及びジエステルのアミン付加物からなる群からのアミン付加物である。
【0076】
触媒(D)としての使用に特に好ましいのは、アミンブロック化エチルヘキシルホスフェート及びアミンブロック化フェニルホスフェート、非常に好ましくはアミンブロック化ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェートである。
【0077】
リン酸エステルをブロックするアミンの例は、特に第三級アミンであり、例えば二環式アミン、例えばジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及び/又は脂肪族トリアミン、とりわけ例えばジメチルドデシルアミン又はトリエチルアミンである。好ましくは、リン酸エステルは、硬化条件下で高い触媒活性を確保する第三級アミンを用いてブロックする。特に90℃を超えない低い硬化温度でリン酸エステルをブロックするために、特に非常に好ましく使用されるのは、、二環式アミン、特にジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)及び/又はトリエチルアミンである。
【0078】
触媒(D)としての使用に特に好ましいのは、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンでブロックしたエチルヘキシルホスフェートである。
【0079】
所定のアミンブロック化リン酸触媒はまた、市販されている(例えば、King Industries社のNacure製品)。
【0080】
触媒(D)(又は、2種以上の触媒(D)の混合物を使用する場合、複数の触媒(D))は、被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、好ましくは0.1〜15質量%の画分で、より好ましくは0.5〜10.0質量%の画分で、非常に好ましくは0.75〜8.0質量%の画分で使用する。触媒において活性が低い部分は、対応して量を多く使用することにより、部分的に補償され得る。
【0081】
触媒(Z)
本発明において、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応のために、被覆剤組成物(K)が、促進剤(R)及び触媒(D)とは異なる少なくとも1種の触媒(Z)を更に含むことが必須である。
【0082】
成分(A)のヒドロキシル基と成分(B)のイソシアネート基との間の反応のための触媒(Z)は、亜鉛カルボキシレート及びビスマスカルボキシレートの群から、及びまた、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及び/又はホウ素キレート及び/又は無機スズ含有触媒、及びそれらの混合物の群から選択される。
【0083】
有機スズ含有触媒(Z)としてとりわけ適切なものは、スズ−炭素結合を含まないが、代わりにヘテロ原子、とりわけ酸素、硫黄又は窒素を介して、好ましくは酸素を介して結合した炭素原子のみを含むスズ化合物である。
【0084】
無機スズ含有触媒(Z)として特に好ましいのは、酸素原子及び/又は窒素原子及び/又は硫黄原子を介して、とりわけ酸素原子を介して独占的に結合したアルキルラジカル及び/又はシクロアルキルラジカル及び/又はアリールラジカル及び/又はアリールアルキルラジカルを有する環状スズ(IV)化合物である。
【0085】
無機スズ含有触媒(Z)は、例えばWO2014/048879、4ページ20行目〜10ページ34行目、及び15ページ1行目〜16ページ表1に、並びにまたWO2014/048854、2ページ32行目〜9ページ15行目、及び14ページ1行目〜15ページ表1、並びにEP-B1-2493948、2ページ53行目〜6ページ54行目、及び9ページ、触媒4〜8、及び10ページ、触媒10に記載されている。
【0086】
アルミニウム、ジルコニウム、チタン及び/又はホウ素キレートをベースとする触媒(Z)は既知であり、例えばWO06/042585、10ページ、4〜21行目に記載されている。キレート配位子を形成する化合物は、金属原子または金属イオンに配位可能な少なくとも2つの官能基を有する有機化合物である。これらの官能基は、通常、電子供与体であり、電子受容体としての金属原子又は金属イオンに電子を与える。原則として、被覆剤組成物の架橋を完全に妨げることがないのはもちろん、有害な影響を与えないのであれば、記述した種の有機化合物は全て適切である。触媒として、例えばアルミニウムキレート及びジルコニウムキレート錯体を、例えば米国特許US4772672A、第8欄1行目〜第9欄49行目に記載されているように使用してもよい。アルミニウム及び/又はジルコニウム及び/又はチタンキレートが好ましく、例えばアルミニウムエチルアセトアセテート及び/又はジルコニウムエチルアセトアセテートが好ましい。
【0087】
亜鉛カルボキシレート及びビスマスカルボキシレートをベースとする触媒(Z)も同様に既知である。触媒(Z)として特に使用されるのは、亜鉛(II)ビスカルボキシレート及びビスマス(III)トリスカルボキシレートであって、そのカルボキシレートラジカルが、脂肪族直鎖状及び/又は分岐状の、アルキルラジカル中に1〜24個のC原子を有する任意に置換されたモノカルボン酸の、及び/又は、芳香族の、アリールラジカル中に6〜12個のC原子を有する任意に置換されたモノカルボン酸のカルボキシレートラジカルの群より選択されるものである。カルボキシレートラジカルは、使用される被覆成分における得られた触媒の溶解度を大部分において決定する。適切な触媒(Z)の例としては、酢酸の及びギ酸のZn(II)及びBi(III)塩が挙げられる。
【0088】
触媒(Z)として特に好ましく使用されるのは、分岐脂肪酸のBi(III)塩、及び特に分岐C3〜C24脂肪酸、好ましくは分岐C4〜C20脂肪酸、より好ましくは分岐C6〜C16脂肪酸のBi(III)塩、及び非常に好ましくはオクタン酸、特に2−エチルヘキサン酸の、及びデカン酸、特にネオデカン酸の群からのものである。触媒(Z)として使用するのに特に好ましいのは、分岐C3〜C24脂肪酸のBi(III)塩である。ここで分岐脂肪酸のBi(III)塩は、多核錯体の形態で存在してもよい。
【0089】
分岐脂肪酸の所定のZn(II)及びBi(III)塩はまた、市販されている(例えば、Lanxess Corp.社のBorchi(登録商標)Kat製品及びKing Industries社のK−Kat(登録商標)製品)。特に適切な触媒(Z)として、例えば、C.H.Erbsloeh GmbH&Co.KG社からCoscat(登録商標)83の名称で市販されているビスマストリスネオデカノエートをベースとするもの、Lanxess Corp.社からBorchi(登録商標)Kat24の名称で市販されているビスマスカルボキシレートをベースとするもの、 King Industries社からK−Kat(登録商標)348の名称で市販されているビスマスカルボキシレートをベースとするもの、及びKing Industries社からK−Kat(登録商標)XC−8203の名称で市販されている、同様にビスマスカルボキシレートをベースとするものが挙げられる。
【0090】
触媒(Z)(又は、2種以上の触媒(Z)の混合物を使用する場合、複数の触媒(Z))は、被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、好ましくは0.005〜1.0質量%の画分で、より好ましくは0.02〜0.75質量%の画分で、非常に好ましくは0.05〜0.5質量%の画分で使用する。ここで触媒において活性が低い部分は、対応して量を多く使用することにより、部分的に補償され得る。
【0091】
促進剤(R)
特に、本発明で使用される被覆剤組成物が100℃までの比較的低い温度で硬化する場合、本発明においては、被覆剤組成物が少なくとも1種の促進剤(R)を含むことが必須である。使用する促進剤(R)は、触媒(D)及び触媒(Z)とは異なるあらゆる成分であって、成分(B)のイソシアネート基と、成分(A)及び任意に成分(C)のヒドロキシル基との反応を促進する、及び/又はアルコキシシラン基の反応を促進するものであってよい。促進剤(R)として特に適切なのは、無機酸及び/又は有機酸及び/又は無機酸の部分エステル及び/又は有機酸の部分エステルである。使用する酸は、特に、スルホン酸、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸単量体芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、サリチル酸及び/又はアセチルサリチル酸、例えば特に安息香酸、アルキルホスホン酸、ジアルキルホスフィン酸、ホスホン酸、ジホスホン酸、リン酸、リン酸の部分エステル及び同様のものである。
【0092】
促進剤(R)として使用するのに好ましいものは、リン含有酸及び/又はリン含有酸の部分エステル、例えば、アルキルホスホン酸、ジアルキルホスフィン酸、ホスホン酸、ジホスホン酸、ホスフィン酸、任意に置換された非環式リン酸モノエステル、及び/又は任意に置換された環式リン酸モノエステル及び/又は任意に置換された非環式リン酸ジエステル及び/又は任意に置換された非環式リン酸ジエステルである。
【0093】
使用するのに特に好ましいものは、任意に置換された非環式リン酸モノエステル及び/又は、任意に置換された環式リン酸モノエステル及び/又は、任意に置換された非環式リン酸ジエステル及び/又は、任意に置換された非環式リン酸ジエステル、特に非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステルである。ここではとりわけ、一般式(V)のリン酸の部分エステル(R)を使用する:
R
10−O
\
P(O)OH (V);
/
R
11−O
【0094】
式中、ラジカルR
10及びR
11は、以下からなる群:
−置換又は非置換の、炭素数が1〜20、好ましくは2〜16、とりわけ2〜10のアルキル、炭素数が3〜20、好ましくは3〜16、とりわけ3〜10のシクロアルキル、及び、炭素数が5〜20、好ましくは6〜14、とりわけ6〜10のアリール、
−置換又は非置換の、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール、及びシクロアルキルアリールアルキル、ここで上記に示したアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基はそれぞれ、前述の炭素原子数を有し、及び、
−酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、及びケイ素原子から、とりわけ酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を少なくとも1個、とりわけ1個含む、置換又は非置換の上述の種のラジカル、
より選択され、更に、ラジカルのうちのひとつ、R
10又はR
11は水素でもよい。
【0095】
使用するのに特に好ましいのは、一般式(V)のリン酸の部分エステル(R)であり、これに含まれるラジカルR
10及びR
11は、置換又は非置換の、炭素数が1〜20、好ましくは2〜16、とりわけ2〜10のアルキル、炭素数が3〜20、好ましくは3〜16、とりわけ3〜10のシクロアルキル、及び、炭素数が5〜20、好ましくは6〜14、とりわけ6〜10のアリールからなる群より選択され、特にビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート及び/又はビスフェノールホスフェートである。
【0096】
促進剤(R)(又は、2種以上の促進剤(R)の混合物を使用する場合、複数の促進剤(R))は、被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、好ましくは0.05〜10.0質量%の画分で、より好ましくは0.1〜5.0質量%の画分で、非常に好ましくは0.5〜2.5質量%の画分で使用する。
【0097】
触媒(D)、触媒(Z)及び促進剤(R)は、本発明の被覆剤組成物において、とりわけ触媒(D)と触媒(Z)と促進剤(R)を足した合計量が、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、0.2〜21質量%、好ましくは0.6〜11質量%、より好ましくは1.1〜8.1質量%となる量で使用する。
【0098】
特に好ましい被覆剤組成物において、
i.リン含有及び窒素含有触媒(D)は、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジメチルドデシルアミン及び/又はトリメチルアミンの、非環式リン酸モノエステルとの、環式リン酸モノエステルとの、非環式リン酸ジエステルとの及び/又は環式リン酸ジエステルとの付加物の群より選択され、
ii.触媒(Z)は、分岐状C3〜C24脂肪酸のBi(III)塩の群より選択され、
iii.反応促進剤(R)は、非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステルの群より選択される。
【0099】
成分(A)、(B)、任意に(C)、(D)、(Z)、(R)の組み合わせ、及び被覆剤組成物の更なる成分
本発明において特に好ましい2成分(2K)被覆剤組成物について、ポリヒドロキシル基含有成分(A)及び以下に記載する更なる成分を含む膜形成成分は、イソシアネート基結合成分(B)を含む更なる膜形成成分と慣用の方法で混合し、及びまた任意に、以下に記載する更なる成分とも混合するが、この混合は、被覆剤を施与する直前に実施する;ここで一般に、成分(A)を含む膜形成成分は、触媒(D)、触媒(Z)及び促進剤(R)及びまた溶媒の一部を含む。
【0100】
ポリヒドロキシル基含有成分(A)は、適切な溶媒中に存在してもよい。適切な溶媒は、ポリヒドロキシル基含有成分を十分に溶解させるものである。
【0101】
成分(A)、(B)及び任意に(C)の他に更なるバインダー(E)を使用してもよい。このバインダーは、好ましくはポリ(メタ)アクリレート(A)のヒドロキシル基と及び/又は、成分(B)の遊離イソシアネート基と及び/又は、成分(B)のアルコキシシリル基と反応し、ネットワークノードを形成することができるものである。
【0102】
成分(E)として、例えば、アミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂を使用することが可能である。検討されるものは、例えばWO2014/016026の26ページ及び27ページにある慣習的で既知のアミノ樹脂である。
【0103】
一般に、このような成分(E)は、各場合とも本発明の被覆剤組成物のバインダー分を基準にして40質量%まで、好ましくは30質量%まで、より好ましくは25質量%まで、非常に好ましくは0〜15質量%の画分で使用する。
【0104】
本発明において、使用する被覆剤組成物は、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして20.0〜80.0質量%の、好ましくは30.0〜70.0質量%の少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有成分(A)を、とりわけ少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)を含むことが好ましい。
【0105】
本発明において、使用する被覆剤組成物は、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして80.0〜20.0質量%の、好ましくは70.0〜30.0質量%の成分(B)を含むことが好ましい。
【0106】
被覆剤組成物は、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、好ましくは成分(C)を0〜20質量%の、より好ましくは0〜10質量%の、非常に好ましくは1〜5質量%の画分で含む。
【0107】
成分(A)の、任意に使用される成分(C)の、及び成分(B)の質量分率は、ポリヒドロキシル基含有成分(A)のヒドロキシル基と任意に(C)のモル当量比が、成分(B)のイソシアネート基に対して1:0.5〜1:1.5の間に、好ましくは1:0.8〜1:1.2の間に、より好ましくは1:0.9〜1:1.1の間になるよう選択されることが好ましい。
【0108】
ポリヒドロキシル基含有成分(A)、ポリエトキシル成分(C)及び/又はイソシアネート成分(B)は、適切な溶媒中に存在することもある。本発明の被覆剤における適切な溶媒(L)は、特に、被覆剤において成分(A)、(B)及び任意に(C)に対して化学的に不活性であり、且つまた被覆剤の硬化中に(A)、任意に(C)及び(B)と反応しないものである。特にここでは非プロトン性溶媒が挙げられる。そのような非プロトン性溶媒の例は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、又は前述の溶媒の混合物である。非プロトン性溶媒又は溶媒混合物は、好ましくは、溶媒を基準にして1質量%を超えない、より好ましくは0.5質量%を超えない水分を有する。
【0109】
溶媒(又は複数の溶媒)は本発明の被覆剤組成物において、好ましくは、被覆剤組成物のバインダー分が少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%であるような量で使用される。ここで一般論として念頭に置くべきであるのは、固形分量が高くなるにつれて、被覆剤組成物の粘度は上昇し、被覆剤組成物の平滑性が落ち、これに従い硬化した被覆がもたらす全体的な視覚的印象がより貧弱になることである。
【0110】
本発明の被覆剤組成物は、成分(A)、(B)、(D)、(Z)、(R)、任意に(C)、及び任意に(E)とは異なる少なくとも1つの慣習的で既知の被覆添加剤(F)を、有効量で更に含むことが好ましい。すなわち、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、好ましくは20質量%まで、より好ましくは0〜10質量%の量で含む。
【0111】
構成成分
適切な被覆添加剤(F)の例は以下の通りである:
−ラジカル捕捉剤;
−滑剤;
−重合防止剤;
−消泡剤;
−成分(A)及び(C)以外の反応性希釈剤、とりわけ他の成分との及び/又は水との反応によってのみ反応性となる反応性希釈剤、例えばIncozol又はアスパラギン酸エステル;
−シロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びその共重合体、又はポリウレタン等の、成分(A)及び(C)以外の湿潤剤;
−接着促進剤;
−平滑化剤;
−レオロジー助剤、例えば種々のAerosil(登録商標)製品等の慣習的な親水性及び/又は疎水性のヒュームドシリカをベースとするもの、又は慣習的な尿素ベースのレオロジー助剤;
−膜形成助剤、例えばセルロース誘導体等;
−充填剤、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;さらなる詳細については、Roempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1998年、250〜252ページを参照;
−難燃剤。
【0112】
特に好ましい被覆剤組成物は、
被覆剤組成物のバインダー分を基準にして30.0〜70.0質量%の、少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)及び/又は少なくとも1つのポリヒドロキシル基含有ポリエステルポリオール(A)及び/又は1つのポリヒドロキシル基含有ポリウレタン(A)、
被覆剤組成物のバインダー分を基準にして70.0〜30.0質量%の、平均で少なくとも1つのイソシアネート基を有し、及び平均で少なくとも1つの加水分解性シラン基を有する少なくとも1つの成分(B)、
被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0〜10質量%の、少なくとも1つのヒドロキシル基含有成分(C)、
被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0〜15質量%までの、少なくとも1つのアミノ樹脂(E)、
本発明による被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0.5〜10質量%の、少なくとも1つの触媒(D)、
本発明による被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0.02〜0.55質量%の、少なくとも1つの触媒(Z)、
本発明の被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0.1〜5.0質量%の、少なくとも1種の促進剤(R)、及び
被覆剤組成物のバインダー分を基準にして0〜10質量%の、少なくとも1つの慣習的で既知の被覆添加剤(F)、
を含む被覆剤組成物である。
【0113】
とりわけ、本発明で使用される被覆剤は、透明な被覆剤、好ましくはクリアコート材である。従って、本発明で使用される被覆剤は、顔料を含まないか、又は有機透明染料又は透明顔料のみを含む。
【0114】
本発明の更なる実施形態では、本発明で使用される被覆剤組成物は、更なる顔料及び/又は充填剤を含んでもよく、顔料着色したトップコート及び/又は顔料着色したアンダーコート又はプライマーサーフェーサー、とりわけ顔料着色したトップコートの製造に役立つこともある。これらの目的のために使用する顔料及び/又は充填剤は、当業者に既知である。顔料は、各場合とも被覆剤組成物のバインダー分を基準にして、顔料とバインダーの比が0.05:1〜1.5:1の間であるような量で慣用的に使用される。
【0115】
本発明において好ましく使用される透明な被覆剤は、顔料着色したベースコート材に適用してよい。好ましくは、適用したベースコート材を最初に乾燥させるが、これは、蒸発段階でベースコート膜から有機溶剤の及び/又は水の少なくとも一部を除去することを意味する。乾燥は好ましくは室温〜80℃の温度で行う。乾燥後、透明な被覆剤組成物を適用する。続いて、2コートの塗料系を20〜200℃の温度で、1分〜10時間までの時間、好ましくは20〜100℃の間でより低い温度を使用し、好ましくは30〜90℃の間の温度で、対応してより長い硬化時間で、最長60分で、焼成する。
【0116】
よって、本発明は、少なくとも1つの顔料着色ベースコート及びその上に配置された少なくとも1つのクリアコートから構成される多層被覆による着色及び/又は効果のある塗装系も提供する。ここで、このクリアコートは本発明の被覆剤組成物から製造されている。
【0117】
ベースコート材料は当業者に既知である。水で希釈可能なベースコート材料だけでなく、有機溶剤ベースのベースコート材料も使用することができる。これらのベースコート材は慣習的に、1つ以上のバインダー、1つ以上の顔料、任意に1つ以上の架橋剤、1つ以上の有機溶剤、及び慣習的に補助剤及びアジュバントを含み、及びまた水性ベースコート材料の場合、水を更なる溶媒として含んでいる。
【0118】
適切なベースコート材は、例えばEP A0692007及びその中の第3欄の50行目以降に記載された文献に記載されている。
【0119】
本発明の被覆剤から製造された本発明の被覆は、既に硬化した電着塗装、プライマーサーフェーサーコート、ベースコート、又は慣習的及び既知のクリアコートに対する傑出した接着性も示すため、自動車OEM仕上げだけでなく、自動車補修及び/又は自動車の中又は上へ設置するための部品の被覆、及び/又は業務用車両の被覆への使用に傑出して適している。
【0120】
被覆剤組成物の施与及び硬化は、例えばWO2014/016026の29ページ及び33ページに記載されているように、慣習的及び既知の方法に従って行う。
【0121】
被覆剤組成物及び塗料系、特にクリアコート系は、とりわけ自動車OEM仕上げの技術的及び美観的に特に要求の厳しい分野において、及び自動車ボデーの中又は上に設置するための、とりわけ高級車のボデーのためのプラスチック部品の被覆に、例えばルーフ、トランクリッド及び後尾扉、ボンネット、ホイールアーチ、フェンダー、スポイラー、シル、保護ストリップ、サイドトリム及び同様のものを製造するために、及びまた自動車補修に、及び業務用車両に、例えばトラック、チェーン可動式建設用車両、例えばクレーン車、ホイールローダ、コンクリートミキサー等の、例えばバス、軌道車両、船舶、航空機等に、及びまたトラクター及びコンバイン等の農業用機器に、及びこれらの部品に、使用される。
【0122】
プラスチック部品は慣習的に、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートとのブレンド、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、又は耐衝撃性改質ポリメチルメタクリレートからなり、とりわけASAとポリカーボネートとのブレンド、好ましくはポリカーボネートの画分が>40%、より好ましくは>50%のものからなる。
【0123】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の被覆剤組成物は、プラスチック基材の、とりわけ車両の中または上に設置するためのプラスチック部品の被覆のための透明なクリアコート材として使用される。設置するプラスチック部品は、好ましくは、多段階被覆法で同様に被覆されるが、ここで任意に事前に被覆された基材又は後続の被覆がより良好に接着するように前処理された基材(例えば、基材の火炎処理、コロナ又はプラズマ処理)は、まず顔料着色ベースコートで被覆され、その後本発明の被覆剤組成物による被覆で被覆される。
【0124】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に記述する。これらの例における全ての数字は、他に明示的に示されない限り、質量数値である。
【0125】
ポリアクリレートポリオール(A1)の調製
モノマー供給口及び開始剤供給口、温度計、油加熱及び還流冷却器を備えたスチール製反応器に、Solventnaphtha(登録商標)(DHC Solvent Chemic GmbH社から市販されている芳香族溶媒)26.63gを充填し、この初期充填物を40℃に加熱する。その後、Solventnaphtha(登録商標)2.94g及びジ−tert−ブチルペルオキシド1.54gからなる混合物M1を、撹拌しながら滴下する。計量速度は、混合物M1の添加が6.75時間後に終了するように設定する。混合物M1の添加開始の15分後、スチレン8.21g、tert−ブチルアクリレート20.2g、ブタンジオールモノアクリレート12.62g、n−ブチルメタクリレート8.84g、ヒドロキシエチルアクリレート12.64g及びアクリル酸0.63gからなる混合物M2を滴下する。計量速度は、混合物M2の添加が6時間後に終了するように設定する。混合物M1の添加終了時に、混合物を140℃でさらに2時間保持し、次いで100℃未満に冷却する。次いで、この混合物をSolventnaphtha(登録商標)(DHC Solvent Chemic GmbH社から市販されている芳香族溶媒混合物)5.79gで希釈する。得られたポリアクリレートポリオール(A1)の溶液は、固形分65%(1時間、130℃の強制空気オーブン)、粘度18.5dPas(ICIコーン/プレート粘度計23℃)、OH価175mgKOH/g、酸価8〜12mgKOH/gである。
【0126】
硬化剤溶液(B1)の調製
攪拌磁性内部温度計及び滴下漏斗を備えた250mlの三ツ口フラスコに、ヘキサメチル−1,6−ジイソシアネート(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer、Leverkusen)をベースとする三量化イソシアヌレート51.6gと酢酸ブチル20.0gとの混合物を充填する。窒素雰囲気で滴下漏斗を介し、ビス[3−トリメトキシシリルプロピル]アミン(Dynasylan(登録商標)1124、EVONIK、Rheinfelden)26.4gとN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン(Dynasylan(登録商標)1189、EVONIK、Rheinfelden)2.0gの混合物をゆっくりと滴下する。この反応は発熱反応である。添加速度は、内部温度が60℃の最大レベルを超えないように選択する。その後、滴下漏斗を用いて、更に酢酸ブチル4gを添加する。反応混合物を、イソシアネート分の滴定分析(DIN EN ISO 11909による)が固体を基準として8.3〜8.8%NCOの定量となるまで、60℃でさらに4時間保持する。
【0127】
触媒(D)の調製
還流冷却器及び撹拌機を備えた100mlの三ツ口フラスコに、窒素雰囲気下でDABCO(ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)11.78g、プロパノール75.67g、及びイソブタノール56.38gを充填する。約45℃で、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート32.24gをゆっくりと滴下して添加し、その間に温度は最大50℃に保持する。混合物を40℃でさらに3時間撹拌する。これにより、触媒(D)の25%濃度の溶液が得られる。
【0128】
本発明の実施例1と2の被覆剤の及び比較例V1〜V5の被覆剤の及びまた対応する実施例1と2及び比較例V1〜V5の被覆の作製
本発明の実施例のベースワニス(S1)と(S2)及び比較例V1〜V5のベースワニス(VS1)〜(VS5)を調製するため、表1に示す構成成分を、示した順序で秤量し(上から開始)、その順番で適切な容器に入れ、互いに密接に攪拌する。
【0129】
本発明の実施例1と2の被覆剤(K1)と(K2)及びまた比較例の被覆剤(VK1)〜(VK5)を調製するため、記述した量の硬化剤溶液(B1)を表1に示す量のベースワニスに添加し、適切な容器に入れ、これらの成分を互いに密接に攪拌する。
【0131】
表1の凡例:
1)Tinuvin(登録商標)292=HALSをベースとするBASF SE社の市販の光安定剤
2)Tinuvin(登録商標)384=UV吸収剤をベースとするBASF SE社の市販の光安定剤
3)Baysolvex D2EHPA=Lanxess社の市販のビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート
4)Coscat(登録商標)83=ビスマストリスネオデカノエートをベースとするC.H.Erbsloeh GmbH&Co.KG社の市販の触媒
5)K−Kat XK−634=テトラメチルグアニジンと反応する亜鉛カルボキシレートをベースとするKing Industries社の触媒
【0132】
実施例1と2の及び比較例V1〜V5の被覆の製造
市販の硬化電着塗装で被覆したボンダーパネル(bonder panels)を市販の水性ベースコート材料(BASF Coatings GmbH社のColorBrite(登録商標))を用いて黒で、又は熱黄変を試験するために白で被覆し、周囲温度でそれぞれ10分間光照射し、その後80℃で10分間乾燥させた。続いて、実施例1及び2の並びに比較例V1〜V5の被覆剤を重力供給カップガンを用いて適用し、ベースコートと共に80℃で30分間焼成する。クリアコートの膜厚は30〜35μm、ベースコートの膜厚は〜15μmである。
【0133】
NCO転化試験のために、完成した塗料をベースコートなしでStamylanパネルに直接適用し、測定に必要な遊離膜を製造した。
【0134】
イソシアネート転化率の測定
NCO転化率は、表1の試料をATR−IR分光法による測定に供することにより測定する。この目的のために、新たな成分(すなわち、ベースワニスと硬化剤を足したもの)の混合湿潤試料と、適用したサンプルも、オーブンの1時間後及び24時間後にそれぞれ分光した。
【0135】
転化率の計算のために、2260cm
−1のイソシアネートバンドの強度を使用し、新たな湿潤試料のバンドに関連するその減少を計算した。スペクトルは、1690cm
−1のイソシアヌレートバンドに標準化されるが、その強度は架橋反応によってほとんど影響を受けない。換算値は表2にまとめる。
【0136】
熱黄変試験
強制空気オーブンでの焼成後約30分の白色ベースコート上の被覆パネルを、色相測定装置としてX−riteマルチアングル分光光度計を用いる測定に供し、L*a*b*色空間(CIELAB系)におけるb*値を測定する。次いで、パネルを強制オーブン中で100℃で7日間保存する。保存終了後約1時間に、パネルを再度測色に供し、db値を測定する。これらの結果を表2に示す。
【0137】
マイクロ浸透硬度試験
クリアコート膜の硬度に対する触媒の効果を、マイクロ浸透硬度測定(micropenetration hardness measurements)(DIN EN ISO 14577−4 DE)によって調査した。結果を表2に示す。
【0138】
DMA調査、膜特性
貯蔵弾性率E’(200)及びE’(最小値)及びまたE’’(最大値)及びtanδ(最大値)の値は、ガラス転移温度Tgの値を反映するが、それぞれ硬化した被覆について、Rheometrics Scientific社のDMTA V装置を用いて2K/分の加熱速度で動的機械的熱分析(DMTA)により、1Hzの周波数及び0.2%の振幅で測定した。DMTA測定は、40μm+/−10μmの層厚を有する遊離膜上で実施する。この目的のために、試験下の被覆剤を基材(Stamylanパネル)に適用する。得られた被覆を80℃のパネル温度で30分間硬化させ、硬化後に25℃で1時間又は3日間保存した後、DMTA測定を実施する。これらの測定値から確認された値を表2に示す。
【0139】
DMA調査、開始/終了
液体被覆剤の架橋開始温度は、本発明の文脈において、動的機械的熱分析(DMTA)を用いて実験的に測定する。この方法は、例えば、DIN EN ISO 6721−1に記載されており、この規格における方法は、プラスチックの動的機械的特性測定の文脈において明らかにされている。DMAは、試料に適用される振動力を使用し、粘弾性特性の周波数依存性及び温度依存性をとらえる(すなわち、測定された試料の貯蔵弾性率E’によって表される剛性、及び測定された試料の損失弾性率(E’’)によって表される振動あたりの消散した仕事量)。材料が硬くなるほど貯蔵弾性率の量は大きくなり、材料がその弾性変形に対してより大きな抵抗を示すことを意味する。本発明の目的において、DMAは温度を連続的に上昇させる一方で試料を一定の振幅及び周波数の正弦波振動に暴露し、貯蔵弾性率を測定するのに使用する。本発明の目的において、貯蔵弾性率が上昇開始する温度は、試料の架橋開始温度という。測定は、Triton Technology社のTriton 2000B装置を使用して実施した。測定用に実施例VB1〜VB4及びB1とB2の各1gを、装置に固定させたガラス繊維メッシュに適用し、貯蔵弾性率E’を、毎分2℃の連続的な温度上昇の間、正弦波試料負荷(一定周波数、線形測定範囲内の一定振幅)で測定する。測定は試料に関連する温度範囲(ここでは2℃〜200℃)で実施する。それから、架橋開始温度を貯蔵弾性率/温度線図よりグラフで測定する。架橋開始温度は、架橋開始前の貯蔵弾性率の外挿基線と、架橋開始後の貯蔵弾性率の準線形の上昇範囲から生じる外挿直線の交点における温度である。このようにして、架橋開始温度は+/−2℃の精度で測定することができる。
【0140】
耐薬品性の測定
被覆試料の耐薬品性は、被覆剤焼成の7日後に実施した。試験はDIN EN ISO 3270に準拠した標準条件下で行った。
【0141】
100mm×570mmの寸法の金属試験板を使用する。試験媒体に応じて、温度暴露前に金属試験パネルの長手方向に45又は23滴、すなわち加熱セグメント当たり1滴を、自動ピペッティングシステム又は手でマイクロピペットを用いて、最大で10分を超えずに適用した。試験は、35℃〜78℃の線形温度勾配でグラジェントオーブン内で、加熱セグメントあたりの許容差+/−1℃で行う。グラジエントオーブン中の試験時間は30分である。試験実施後、金属試験パネルを、最初にぬるま湯で、続いて脱イオン水で洗浄し、次にイソヘキサン及びマイクロファイバー布を用いて洗浄する。
試験媒体として、以下の化学物質2種を使用する。
【0143】
表2は、被覆表面で変化が明白になった温度を列挙する。
【0144】
引掻抵抗の測定
得られた被覆の表面の耐引掻性は、ハンマーを使用したハンマー試験(スチールウール(RAKSO(登録商標)00(ファイン)で前後のさすり50回)及び1kgの加重を用いて実施した。続いて、20°での残留光沢を市販の光沢計で測定する。試験の結果を表2に示す。
【0145】
ケーニッヒ振り子硬度の測定
ケーニッヒ振り子硬度は、DIN En ISO 1522 DEと同様に測定し、その結果を表2に示す。
【0147】
試験結果の考察:
比較例V1(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)のみ)と比較例V2(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)とビスマスカルボキシレート(Z)を足したもの)との比較は、実施例1(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)、ビスマスカルボキシレート(Z)及びリン酸部分エステル(R)の組み合わせ)と比較例V1(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)のみ)及び比較例V3(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)とリン酸部分エステル(R)を足したもの)との比較が示すように、ビスマスカルボキシレート(Z)の添加がイソシアネート転化率を有意に増加させることを示す。リン酸部分エステルをベースとする反応促進剤(R)を添加しない比較例V2ではビスマスカルボキシレート(Z)を添加することにより、本発明の実施例1のようにビスマスカルボキシレート(Z)及びリン酸部分エステルをベースとする反応促進剤(R)を同時添加するものよりも、イソシアネート転化率は実質的に増加する結果となる。
【0148】
しかしながら、比較例V2のイソシアネート転化率と比較して、実施例1におけるこのより低いイソシアネート転化率にも関わらず、実施例1の本発明の被覆は、比較例V1だけでなく比較例V2及び比較例V3に対しても、極めて有意に改善されたマイクロ浸透硬度、極めて有意に改善された平均浸透深さ、及び有意に改善された水酸化ナトリウム溶液に対する耐性を示す。反応促進剤(R)の添加は、比較例V1及びV2と本発明の実施例1との比較によって示されるように、有意に改善されたシラン架橋をもたらす。
【0149】
さらに、実施例1(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)、ビスマスカルボキシレート(Z)及びリン酸部分エステル(R)の組み合わせ)と比較例V1(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)のみ)及び比較例V2(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)とビスマスカルボキシレート(Z)を足したもの)との比較は、ビスマスカルボキシレート(Z)の添加により、更に、架橋開始(すなわち開始温度)が著しくより低い温度で始まり、ビスマスカルボキシレート(Z)を添加しない比較例V1の開始温度66℃、及び比較例V3(DABCOでブロックしたリン酸部分エステル(D)とリン酸部分エステル(R))の開始温度
53℃と比較して、比較例V2では46℃、本発明の実施例1及び2では実際にわずか43℃であったことを示す。
【0150】
一方比較例V3では、反応促進剤(R)を添加した結果、開始温度は53℃で、値が63℃の比較例V1と比較すると、同様にわずかな減少がある。それでも開始温度は、値がわずか43℃の本発明の実施例1及び2よりも有意に高い。しかしながら、同時に、比較例V3のOH/NCO転化率ははるかに低く、実際に比較例V1と比較すると更により低い。これは、比較例V3では、反応促進剤(R)の添加がOH/NCO反応を実際に阻害することを意味する。
【0151】
更に、本発明の実施例1及び2で得られる被覆の0.25時間、1時間、2時間及び6時間後の各場合に測定した振り子硬度は、全ての比較例V1〜V4で得られる被覆のものよりも実質的に高い。
【0152】
最後に、驚くべきことに、本発明の実施例1及び2で得られる被覆の水酸化ナトリウム溶液に関する耐薬品性は、比較例V1〜V4の全てで得られる被覆のものよりも高く、本発明の実施例1及び2で得られる被覆の塩酸に対する耐薬品性は比較例V1及びV3で得られる被覆のものよりも高い。従って、反応促進剤(R)がシラン架橋を向上させるほど、同時にOH/NCO反応が更に抑制される。このことは、種々の触媒(D)及び(Z)及びまた反応促進剤(R)が全て互いに影響していること、及び本発明によってのみ、均衡のとれた混合物が見出され、非常に良好なシラン架橋及び非常に良好なOH/NCO転化率が得られ、それ故被覆が90℃を超えない中等度の温度で硬化された場合でも本発明の被覆の特性を極めて優れたレベルで確保することを明確にしている。
【0153】
熱黄変が許容できないほど高いレベルであったため、比較例5で得られた被覆については、更なる調査は実施しなかった。