(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
(減速機付モータ)
次に、この発明の第1実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1は、減速機付モータの斜視図である。
図2は、減速機付モータの一部断面側面図である。
図1、
図2に示すように、減速機付モータ1は、例えば、自動車のワイパ駆動用に用いるものであって、電動モータ2と、電動モータ2の有底筒状のヨーク3が取り付けられている減速機構4とを備えている。
【0014】
(電動モータ)
電動モータ2は、ヨーク3と、このヨーク3内に回転自在に設けられたアーマチュア5と、アーマチュア5に電流を供給するためのブラシホルダユニット6とを有している。
ヨーク3は、開口部3aをギヤハウジング7側に向けた状態で配置されている。そして、ヨーク3は、開口部3aの周縁に形成されている外フランジ部3cをギヤハウジング7に当接させた状態で、ギヤハウジング7にボルト24によって締結固定されている。
【0015】
ヨーク3の内周面には、複数の瓦状の永久磁石8が周方向に、磁極が順番となるように配置されている。また、ヨーク3の底部3bには、径方向中央に、軸受部9が軸方向外側に向かって突出するように形成されている。この軸受部9に、アーマチュア5の回転軸10の一端を回転自在に支持するためのすべり軸受11が設けられている。
【0016】
アーマチュア5は、回転軸10に外嵌固定されたアーマチュアコア12と、アーマチュアコア12に巻装されたアーマチュアコイル13と、回転軸10の他端側に配置されたコンミテータ14とを備えている。
アーマチュアコア12は、プレス加工等によって打ち抜かれた磁性材料の板材を軸方向に積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成されたものであって、アーマチュアコイル13が巻装される複数のティース15が放射状に形成されている。
【0017】
コンミテータ14の外周面には、導電材で形成された複数のセグメント16が互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に配置されている。各セグメント16のアーマチュアコア12側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ17が一体成形されている。ライザ17には、アーマチュアコイル13の端末部が掛け回わされ、ヒュージングなどにより固定されている。これにより、セグメント16と、これに対応するアーマチュアコイル13とが導通される。
【0018】
このように構成されたコンミテータ14は、減速機構4のギヤハウジング7に臨まされた状態になっている。ギヤハウジング7は、導電性を有するアルミダイキャスト等により形成されたものであって、ギヤハウジング7の電動モータ2側の側面には、ブラシ収納部18が一体成形されている。このブラシ収納部18に、コンミテータ14が臨まされている。そして、ブラシ収納部18に、ブラシホルダユニット6が収納されている。
【0019】
図3は、ブラシ収納部を電動モータ側からみた斜視図である。
図2、
図3に示すように、ブラシ収納部18は有底筒状に形成されており、開口部18aを電動モータ2側(
図3、
図4における手前側)に向けた状態でギヤハウジング7と一体成形されている。ブラシ収納部18の開口部18aの周縁には、電動モータ2のヨーク3の外フランジ部3cに対応するように、外フランジ部18cが形成されている。外フランジ部18cには、ボルト24(
図1参照)が螺入される雌ネジ部25が刻設されている。
【0020】
また、ブラシ収納部18の底面18bには、すり鉢状に形成された軸受部9が一体成形されており、ここに回転軸10の他端を回転自在に支持するためのすべり軸受20が設けられている。さらに、ブラシ収納部18の底面18bには、ブラシホルダユニット6を載置するためのブロック台座21が複数個所に突設されている。各ブロック台座21には、このブロック台座21上に載置されたブラシホルダユニット6を固定するための雌ネジ部22が刻設されている。この雌ネジ部22には、ブロック台座21上にブラシホルダユニット6を載置した上からボルト27(
図4参照)が螺入されるようになっている。
【0021】
また、各ブロック台座21のうち、後述の共通ブラシ30cに対応する位置に配置されているブロック台座21には、支持ピン23が立設されている。この支持ピン23は、ブラシホルダユニット6の位置決めを行う役割を有していると共に、後述のねじりコイルばね34を支持する役割を有している。
【0022】
(ブラシホルダユニット)
図4は、ブラシ収納部にブラシホルダユニットを取り付けた状態の斜視図、
図5は、ブラシホルダユニットの斜視図である。
図4、
図5に示すように、ブラシホルダユニット6は、略円環状に形成されたホルダステー26を有しており、このホルダステー26がブラシ収納部18のブロック台座21上に載置されるようになっている。また、ホルダステー26の外周縁の直径E1は、ブラシ収納部18の内周面の直径よりもやや小さい程度に設定されている。さらに、ホルダステー26の開口部26aの直径E2は、コンミテータ14を挿入可能な大きさに設定されており、開口部26aにコンミテータ14が挿通された状態になっている(
図2参照)。
【0023】
また、ホルダステー26には、ブロック台座21の雌ネジ部22に対応する箇所にボルト27を挿通可能な挿通孔28が形成されている。この挿通孔28にボルト27を挿通し、ブロック台座21の雌ネジ部22にボルト27を螺入することにより、ブラシ収納部18にブラシホルダユニット6が締結固定される。
さらに、ホルダステー26には、端子部31が設けられている。この端子部31は、減速機構4に設けられているターミナル32(
図1参照)を介して不図示の外部電源、例えば、自動車に搭載されているバッテリに電気的に接続されるようになっている。
【0024】
また、ホルダステー26には、周方向3箇所にブラシホルダ29が設けられている。ブラシホルダ29は、真鋳等の金属板によって断面略コの字の箱状に形成されたものであって、径方向に長くなるように配置されている。そして、径方向の両端に開口部29aを有するように設けられている。すなわち、ブラシホルダ29は、ホルダステー26から立ち上がり、径方向に沿って延在する一対の側板29b,29bと、一対の側板29b,29bのホルダステー26とは反対側の上縁を跨る上板29cとを有している。
このように構成されたブラシホルダ29に、ブラシ30が径方向に沿ってスライド自在に、つまり、コンミテータ14側に向かって出没自在に収納されている。
【0025】
図6は、ブラシホルダユニットの要部拡大平面図である。尚、
図6では、ブラシ30の形状を分かり易くするために、ブラシホルダ29の上板29cの図示を省略している。
図4〜
図6に示すように、ブラシ30は、径方向に沿って長い略四角柱状に形成されたものであって、陽極側に接続されている低速用ブラシ30a、および高速用ブラシ30bと、これら低速用ブラシ30aと高速用ブラシ30bとに共通使用され陰極側に接続されている共通ブラシ30cとで構成されている。低速用ブラシ30aは、ワイパを低速駆動する際に用いられるブラシであって、この低速用ブラシ30aと共通ブラシ30cとの間に電圧が印可される。また、高速用ブラシ30bは、ワイパを高速駆動する際に用いられるブラシであって、この高速用ブラシ30bと共通ブラシ30cとの間に電圧が印可される。
【0026】
各ブラシ30の周方向の幅W1は、ブラシホルダ29の一対の側板29b,29b間の幅W2よりも小さく設定されており、これによって、ブラシホルダ29内をブラシ30がスムーズにスライド移動することができるようになっている。
また、各ブラシ30の長手方向両端には、それぞれ傾斜面33a,33bが形成されている。ブラシ30の先端側に形成された傾斜面33aは、コンミテータ14の回転方向C1(
図6における時計回り方向)の前方に向かうに従って漸次コンミテータ14側、つまり、径方向内側に向かって突出するように傾斜している。一方、ブラシ30の基端側に形成された傾斜面33bは、コンミテータ14の回転方向C1の後方に向かうに従って漸次コンミテータ14とは反対側、つまり、径方向外側に向かって突出するように傾斜している。
【0027】
このように形成された各ブラシ30の基端側には、ブラシホルダ29の上板29c側に、ピグテール40を差し込み可能な差込孔41が形成されており、この差込孔41にそれぞれピグテール40の一端が差し込まれて接続されている。
各ブラシ30のうち、陽極側に接続されている低速用ブラシ30a、および高速用ブラシ30bに一端が接続されているピグテール40の他端は、それぞれチョークコイル42を介して端子部31に接続されている。一方、陰極側に接続されている共通ブラシ30cに一端が接続されているピグテール40の他端は、サーキットブレーカ43、及びアースプレート44を介して端子部31に接続されている。
アースプレート44は、ブラシ収納部18にブラシホルダユニット6を収納した状態で、ブラシ収納部18の内周面18dに接触し、共通ブラシ30cが接地されるようになっている。
【0028】
ここで、ブラシホルダ29の上板29cには、コンミテータ14側の端部からコンミテータ14とは反対側の端部よりもやや手前に至るまで上板スリット45が形成されている。上板スリット45は、ピグテール40が挿通可能なように形成されている。これにより、ブラシホルダ29とピグテール40とが干渉し、ブラシホルダ29に対するブラシ30の移動が阻害されてしまうのを防止できる(詳細は後述する)。
【0029】
また、ブラシホルダ29の一対の側板29b,29bには、各ブラシ30をコンミテータ14側に向かって押圧するねじりコイルばね34に対応する箇所に、側板スリット46が形成されている。より具体的には、側板スリット46は、ブラシホルダ29の側板29bのコンミテータ14とは反対側の端部からコンミテータ14側の端部よりもやや手前に至る間に形成されている。側板スリット46は、ねじりコイルばね34の後述する先端側アーム36が挿通可能なように形成されている。これにより、ブラシホルダ29とねじりコイルばね34とが干渉し、ブラシ30を押圧するねじりコイルばね34の変形が阻害されてしまうのを防止できる(詳細は後述する)。
【0030】
ねじりコイルばね34は、螺旋状に巻回形成されたばね本体35から先端側アーム36と基端側アーム37とが互いに反対方向に向かって延出するように形成されたものであって、先端側アーム36が各ブラシ30の基端をコンミテータ14側に向かって押圧するようになっている。
また、各ねじりコイルばね34は、ギヤハウジング7のブラシ収納部18に突設されている支持ピン23、及びホルダステー26に立設されている支柱ピン38にばね本体35がガタを持った状態で外嵌されるようにして支持されている。
【0031】
より詳述すると、
図3〜
図4に示すように、ホルダステー26には、ブラシ収納部18に突設されている支持ピン23に対応する箇所に、この支持ピン23を挿通可能な挿通孔39が形成されており、ブラシ収納部18のブロック台座21上にホルダステー26を載置した状態で、このホルダステー26から支持ピン23が突出するようになっている。この支持ピン23は、共通ブラシ30cが収納されるブラシホルダ29の近傍に立設されている。すなわち、支持ピン23には、共通ブラシ30cを押圧するねじりコイルばね34が支持されている。
【0032】
また、ホルダステー26には、低速用ブラシ30aと高速用ブラシ30bが収納される各ブラシホルダ29の近傍に、それぞれ支柱ピン38が立設されている。これら支柱ピン38には、それぞれ低速用ブラシ30aを押圧するねじりコイルばね34と、高速用ブラシ30bを押圧するねじりコイルばね34とが支持されている。
【0033】
さらに、ホルダステー26には、各ねじりコイルばね34の基端側アーム37に対応する箇所に、この基端側アーム37の変位を規制するフック47が立設されている。フック47は、ホルダステー26から立ち上がる柱部47aと、柱部47aの先端から径方向外側に向かって延出する爪部47bとが一体成形されたものである。そして、この爪部47bにねじりコイルばね34の基端側アーム37が係合されることにより、この基端側アーム37の変位が規制される一方、先端側アーム36が各ブラシ30の基端を押圧する。
【0034】
ここで、ねじりコイルばね34の先端側アーム36は、この先端側アーム36の長手方向中央よりもやや先端側がブラシ30に向かって屈曲形成されている。そして、さらに先端側には、ブラシ30とは反対側に向かって折り返すように湾曲された湾曲部36aが形成されている。このように形成された湾曲部36aと、各ブラシ30の基端側に形成された傾斜面33bとによって、ブラシホルダ29に収納された各ブラシ30は、ブラシホルダ29の延在方向に対して傾倒した状態になる。
【0035】
より詳しく、
図7、
図8に基づいて説明する。
図7、
図8は、ブラシホルダに対するブラシの姿勢を示す説明図であって、
図7は、コンミテータが回転する前の状態、
図8は、コンミテータが回転した後の状態を示す。
図7に示すように、各ブラシ30の基端側の傾斜面33bには、ねじりコイルばね34の先端側アーム36に形成されている湾曲部36aが当接し、この湾曲部36aが各ブラシ30をコンミテータ14側へと押圧している。
【0036】
ここで、各ブラシ30の傾斜面33bは、コンミテータ14の回転方向C1(
図8参照)の後方に向かうに従って漸次径方向外側に向かって突出するように傾斜しているので、ねじりコイルばね34の湾曲部36aによる押圧力の一部のベクトル方向がコンミテータ14の回転方向とは反対側になる。このため、各ブラシ30は、この短手方向側部が、ブラシホルダ29のコンミテータ14の回転方向とは反対側の側板29b(
図7における左側の側板29b)に当接した状態になる。
【0037】
図8に示すように、この状態でコンミテータ14が回転すると、この回転に伴って各ブラシ30の先端が基端を中心にして回転方向C1側に向かって変位する。そして、各ブラシ30は、この先端がブラシホルダ29の延在方向に対してコンミテータ14の回転方向C1側に向かうように傾倒した状態になる。
このとき、各ブラシ30の先端側に形成された傾斜面33aは、コンミテータ14の回転方向C1の前方に向かうに従って漸次径方向内側に向かって突出するように傾斜しているので、各ブラシ30の先端がコンミテータ14に引っ掛かったりせずに、スムーズに変位する。
【0038】
また、ねじりコイルばね34の先端側アーム36における各ブラシ30の傾斜面33bに当接する部位には湾曲部36aが形成されているので、ブラシ30がブラシホルダ29の延在方向に対して傾倒した場合であっても、傾斜面33bと湾曲部36aとの当接状態が殆ど変化しない。換言すれば、湾曲部36aは、ブラシ30の傾倒方向に沿うように湾曲形成されているので、ブラシ30がブラシホルダ29の延在方向に対して傾倒した場合であっても、傾斜面33bと湾曲部36aとの当接状態が殆ど変化しない。
このため、各ブラシ30に対する湾曲部36aの押圧方向も殆ど変化することがない。よって、ねじりコイルばね34によって各ブラシ30にかかる押圧力が安定すると共に、各ブラシ30の基端を、コンミテータ14の回転方向C1とは反対方向に向かって傾倒させ易くすることができる。
【0039】
尚、ブラシホルダ29の延在方向に対してブラシ30が傾倒した状態で収納されるので、各ブラシ30の基端側は、ブラシホルダ29の一対の側板29b,29bのうち、コンミテータ14の回転方向C1とは反対側の側板29bに当接する(
図8におけるポイントP1参照)。一方、各ブラシ30の先端側は、ブラシホルダ29の一対の側板29b,29bのうち、コンミテータ14の回転方向C1側の側板29bに当接する(
図8におけるポイントP2参照)。このため、ブラシホルダ29を形成するにあたって、ブラシ30が当接する角部、つまり、ブラシホルダ29のポイントP1,P2に対応する部分には、バリが発生しないように、角部を潰したり、糸面取り加工を施したりすることが望ましい。
【0040】
このような構成のもと、コンミテータ14が回転し続けると、このコンミテータ14に摺接している各ブラシ30の先端が摩耗する。各ブラシ30の先端が摩耗し、その長手方向の長さが短くなることにより、各ブラシ30の基端の位置がコンミテータ14側にずれていくことになる。このため、ねじりコイルばね34の先端側アーム36がコンミテータ14側に向かって変位すると共に、ピグテール40とブラシ30との接続位置もコンミテータ14側に向かって変位する。
【0041】
ここで、ブラシホルダ29の一対の側板29b,29bには、コンミテータ14とは反対側の端部からコンミテータ14側の端部よりもやや手前に至る間に側板スリット46が形成されているので、ねじりコイルばね34の先端側アーム36がコンミテータ14側に向かって変位した場合であっても、ブラシホルダ29とねじりコイルばね34とが干渉することがない。このため、各ブラシ30には、コンミテータ14側に向かう付勢力が安定して作用する。
【0042】
また、ブラシホルダ29の上板29cには、コンミテータ14側の端部からコンミテータ14とは反対側の端部よりもやや手前に至るまで上板スリット45が形成されているので、ピグテール40とブラシ30との接続位置がコンミテータ14側に向かって変位した場合であっても、ブラシホルダ29とピグテール40とが干渉することがない。このため、ピグテール40とブラシ30との接続位置が最先端、つまり、コンミテータ14と接触する位置に移動するまでブラシ30を使用することができる。
【0043】
(効果)
したがって、上述の第1実施形態によれば、陰極側に接続されている共通ブラシ30cをコンミテータ14側に向かって付勢するねじりコイルばね34が、導電性のアルミダイキャスト等で形成されているギヤハウジング7のブラシ収納部18から立設している支持ピン23に支持されているので、共通ブラシ30cをねじりコイルばね34を介して接地させることができる。すなわち、共通ブラシ30cは、ブラシホルダユニット6に設けられているアースプレート44の他に、ねじりコイルばね34を介して接地されることになり、別途部品を追加することなく、従来よりも電磁ノイズの発生を抑えることが可能になる。
【0044】
また、ホルダステー26には、ブラシ収納部18に突設されている支持ピン23に対応する箇所に、この支持ピン23を挿通可能な挿通孔39が形成されており、ブラシ収納部18のブロック台座21上にホルダステー26を載置した状態で、このホルダステー26から支持ピン23が突出するようになっている。このため、支持ピン23をホルダステー26の位置決めを行うための位置決めピンとしても機能させることができる。よって、ブラシホルダユニット6の組み付け性を向上させることができる。
【0045】
さらに、ブラシホルダ29の上板29cに上板スリット45が形成されているので、ブラシ30の製品寿命を延命化させることができると共に、コンミテータ14に対するブラシ30の接触状態を安定させることができ、信頼性の高い電動モータ2を提供することが可能になる。
【0046】
そして、各ブラシ30の基端に傾斜面33bを形成することにより、各ブラシ30の基端がねじりコイルばね34からの押圧力を受けてコンミテータ14の回転方向C1とは反対側に向かって傾倒される。このため、コンミテータ14が回転したときに、各ブラシ30の先端がコンミテータ14の回転方向C1に向かって確実に傾倒する。よって、各ブラシ30の先端がコンミテータ14の回転方向C1とは反対方向に向かって傾倒している場合と比較して、各ブラシ30の振動を小さくすることができる。このため、簡素な構造で安価に電動モータ2の作動音を小さくすることができる。
【0047】
また、ねじりコイルばね34の先端側アーム36に湾曲部36aが形成されているので、ブラシ30がブラシホルダ29の延在方向に対して傾倒した場合であっても、傾斜面33bと湾曲部36aとの当接状態が殆ど変化しない。このため、各ブラシ30に対する湾曲部36aの押圧方向も殆ど変化することがない。よって、ねじりコイルばね34によって各ブラシ30にかかる押圧力が安定すると共に、各ブラシ30の基端を、コンミテータ14の回転方向C1とは反対方向に向かって傾倒させ易くすることができる。
【0048】
尚、上述の第1実施形態では、ホルダステー26の各ねじりコイルばね34の基端側アーム37に対応する箇所に、この基端側アーム37の変位を規制するフック47を立設した場合について説明した。しかしながら、基端側アーム37の変位を規制できればよく、さまざまな形態を採用することができる。以下、その一例について説明する。
【0049】
(第1実施形態の第1変形例)
図9は、第1実施形態の第1変形例におけるブラシ収納部の一部断面斜視図である。尚、以下の説明において、前述の第1実施形態と同一態様については同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
同図に示すように、ギヤハウジング107のブラシ収納部118には、各ねじりコイルばね34の基端側アーム37に対応する箇所に、この基端側アーム37の変位を規制するフック147が設けられている。フック147は、ブラシ収納部118の底面118bから立ち上がる柱部147aと、柱部147aの先端から径方向外側に向かって延出する爪部147bとが一体成形されたものである。
【0051】
ブラシホルダユニット106のホルダステー126には、フック147に対応する箇所に、フック147を挿通可能な平面視略四角形状の挿通孔48が形成されている。この挿通孔48を介してフック147の先端がホルダステー126から突出した状態になっている。そして、フック147の爪部147bにねじりコイルばね34の基端側アーム37が係合されることにより、この基端側アーム37の変位が規制される一方、先端側アーム36が各ブラシ30の基端を押圧する。
【0052】
したがって、上述の第1変形例によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、ねじりコイルばね34の基端側アーム37がフック147を介して接地されるので、共通ブラシ30cが、第1実施形態よりもさらに多く接地されることになる。このため、従来よりもさらに電磁ノイズの発生を抑えることが可能になる。
【0053】
また、上述の第1実施形態では、各ブラシ30の長手方向両端に、それぞれ傾斜面33a,33bが形成されている場合について説明した。とりわけ、各ブラシ30の先端側に形成されている傾斜面33aは、コンミテータ14の回転方向C1(
図6参照)の前方に向かうに従って漸次径方向内側に向かって突出するように傾斜しており、これによって、コンミテータ14が回転する際、各ブラシ30の先端がコンミテータ14に引っ掛かることなく、スムーズにコンミテータ14の回転方向C1に向かって傾倒する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、コンミテータ14にブラシ30の先端が確実に摺接する形状であればよい。以下、その一例について説明する。
【0054】
(第1実施形態の第2変形例)
図10は、第1実施形態の第2変形例におけるブラシの平面図であって、
図6に対応している。
同図に示すように、各ブラシ230の先端には、コンミテータ14の回転方向(
図10における時計回り方向)とは反対側に、切除部49が形成されている。切除部49によって、各ブラシ230の長手方向略中央よりも先端側は、短手方向の幅が前述の第1実施形態のブラシ30の短手方向の幅の略半分になっている。
このように、各ブラシ230を形成することにより、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、コンミテータ14に対するブラシ230の引っ掛かりを確実に防止できる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を
図11〜
図13に基づいて説明する。
図11は、第2実施形態における減速機付モータの斜視図である。
同図に示すように、この第2実施形態において、減速機付モータ301は、例えば、自動車のワイパ駆動用に用いるものであって、電動モータ302と、電動モータ302の有底筒状のヨーク303が取り付けられている減速機構304とを備えている点、減速機構304のギヤハウジング307は、導電性を有するアルミダイキャスト等により形成されたものである点等の基本的構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0056】
ここで、第2実施形態と第1実施形態との相違点は、ギヤハウジング307の電動モータ302側の側面に形成されているブラシ収納部318の形状、及びこのブラシ収納部318に収納されているブラシホルダユニット306の形状が異なる点にある。
【0057】
(ブラシ収納部)
図12は、ブラシ収納部にブラシホルダユニットを取り付けた状態の斜視図、
図13は、
図12の状態からホルダステーを取り外した状態の斜視図である。
図12、
図13に示すように、ブラシ収納部318は、電動モータ302側(
図12、
図13における手前側)に開口部318aを有する箱状に形成されたものである。ブラシ収納部318の周壁319は断面略長円形状に形成されており、平面壁319aと円弧壁319bとにより構成されている。
【0058】
平面壁319aと円弧壁319bとの接合部分近傍に、ブラシホルダユニット306に設けられている共通ブラシ330cが配置されるようになっている。ブラシ収納部318の周壁319には、共通ブラシ330cに対応する箇所に、凸部50が一体形成されている。この凸部50は、後述の圧縮コイルばね51をブラシ収納部318に直接接触させるためのものである。
【0059】
また、ブラシ収納部318の底面318bには、ブラシホルダユニット306を構成するホルダステー326を載置するためのブロック台座321が複数個所に突設されている。各ブロック台座321には、このブロック台座321上に載置されたホルダステー326を固定するための雌ネジ部322が刻設されている。この雌ネジ部322には、ブロック台座321上にブラシホルダユニット306を載置した上から不図示のボルトが螺入されるようになっている。
【0060】
(ブラシホルダユニット)
ブラシホルダユニット306は、ブラシ収納部318に内嵌可能に形成されたホルダ部52と、ホルダ部52の内側に収納されるホルダステー326とを有している。
ホルダ部52は、ブラシ収納部318に対応するように、電動モータ302側(
図12、
図13における手前側)に開口部52aを有する箱状に形成されており、且つ周壁53が平面壁53aと円弧壁53bとにより構成されている。
【0061】
周壁53には、ブラシ収納部318に形成されている凸部50に対応する箇所に、開口部54が形成されている。この開口部54を介して内周面側に凸部50が突出されている。
また、ホルダ部52の底部52bには、中央部にコンミテータ14(
図2参照、第2実施形態では不図示)を挿入可能な開口部56が形成されている。さらに、ホルダ部52の底部52bには、ブラシ収納部318に形成されているブロック台座321に対応する箇所に、開口部55が形成されている。この開口部55を介してブロック台座321が突出しており、ここにホルダステー326が載置される。
【0062】
ホルダステー326は、ホルダ部52の断面形状に対応するように、略長円形状に形成されている。ホルダステー326には、ブロック台座321の雌ネジ部322に対応する箇所に不図示のボルトを挿通可能な挿通孔328が形成されている。この挿通孔328に不図示のボルトを挿通し、ブロック台座321の雌ネジ部322に不図示のボルトを螺入することにより、ブラシ収納部318にホルダステー326が締結固定される。また、ホルダステー326には、ホルダ部52の底部52bに形成されている開口部56に対応するように、開口部57が形成されている。
【0063】
さらに、ホルダステー326には、周方向3箇所にブラシホルダ329が設けられている。より具体的には、ブラシ収納部318の平面壁319aと円弧壁319bとの接合部分近傍に2箇所ブラシホルダ329が設けられ、これらのブラシホルダ329とは開口部57を挟んで反対側であって、且つ円弧壁319bの周方向略中央に、1箇所ブラシホルダ329が設けられている。
そして、ブラシ収納部318に形成されている凸部50に対応する箇所に設けられたブラシホルダ329に、陰極側に接続されている共通ブラシ30cが収納され、その他のブラシホルダ329に、それぞれ陽極側に接続されている低速用ブラシ30aと、高速用ブラシ30bとが収納される。
【0064】
各ブラシ30(低速用ブラシ30a、高速用ブラシ30b、共通ブラシ30c)は、この基端側に配置された圧縮コイルばね51によって、コンミテータ14側、つまり、径方向中央側に向かって付勢されている。ここで、低速用ブラシ30a、及び高速用ブラシ30bに付勢力を付与する圧縮コイルばね51は、それぞれ低速用ブラシ30a、及び高速用ブラシ30bと、ホルダ部52の周壁53との間で圧縮した状態で設けられている。
【0065】
一方、ホルダ部52の周壁53における共通ブラシ30cに対応する箇所は、開口部54を介してブラシ収納部318の凸部50が露出されている。このため、この凸部50と共通ブラシ30cとの間で圧縮コイルばね51が圧縮した状態で設けられ、共通ブラシ30cが径方向中央側に向かって付勢されている。すなわち、共通ブラシ30cは、圧縮コイルばね51を介し、導電性のアルミダイキャスト等で形成されているギヤハウジング307のブラシ収納部318に接地された状態になっている。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1,301は、自動車のワイパ駆動用に用いるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に減速機付モータ1,301を用いることができる。
【0067】
また、上述の第1実施形態では、ねじりコイルばね34によって、各ブラシ30がコンミテータ14側に向かって付勢されている場合について説明した。また、上述の第2実施形態では、圧縮コイルばね51によって、各ブラシ30がコンミテータ14側に向かって付勢されている場合について説明した。しかしながら、各ブラシ30をコンミテータ14側に向かって付勢する弾性部材は、ねじりコイルばね34や圧縮コイルばね51に限られるものではなく、さまざまな弾性部材を適用することが可能である。この場合、各ブラシ30のうち、共通ブラシ30cを付勢する弾性部材が、ブラシ収納部18,318(ギヤハウジング7,307)に直接接触されていればよい。