特許第6608509号(P6608509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608509テールコード吊位置調整装置およびテールコード吊位置調整装置の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6608509
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】テールコード吊位置調整装置およびテールコード吊位置調整装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   B66B7/06 P
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-225572(P2018-225572)
(22)【出願日】2018年11月30日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】我妻 桂弥
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−270670(JP,A)
【文献】 特開2004−359393(JP,A)
【文献】 特開2012−051712(JP,A)
【文献】 特開2001−139239(JP,A)
【文献】 特開2004−075235(JP,A)
【文献】 特開2007−314254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00− 7/12
B66B 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に設けられた昇降路内を鉛直方向に移動する乗りかご、に設けられたバランスウェイトと、
前記乗りかごに設けられ、前記乗りかごから吊り下げられたテールコードにおける前記乗りかごに支持された一端部と、前記バランスウェイトと、を水平方向に移動可能であり、かつ前記一端部の移動による前記乗りかごに掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向に前記バランスウェイトを移動させる移動機構と、
を備えたテールコード吊位置調整装置。
【請求項2】
取得部と、
移動制御部と、
を備え、
前記テールコードは、前記一端部と、前記建造物に設置された支持部に支持された他端部と、前記一端部と前記他端部との間で湾曲状に折り返された折返部と、を有し、前記乗りかごおよび前記支持部から吊り下げられ、
前記取得部は、前記折返部における前記一端部側の部分と前記折返部における前記他端部側の部分との間の水平方向の最大間隔と、前記昇降路内の温度と、の少なくとも一方を取得情報として取得し、
前記移動制御部は、前記取得部によって取得された前記取得情報に基づいて、前記一端部と前記他端部との間の水平方向の間隔が前記折返部の前記最大間隔と同じになるように前記一端部が移動し、かつ前記抑制方向に前記バランスウェイトが移動するように、前記移動機構を制御する、請求項1に記載のテールコード吊位置調整装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記一端部の移動距離よりも前記バランスウェイトの移動距離の方が長くなるように、前記一端部および前記バランスウェイトを移動させる、請求項1または2に記載のテールコード吊位置調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のテールコード吊位置調整装置の設置方法であって、
前記乗りかごからは、コンペンセータのコンペンロープが吊り下げられ、
前記乗りかごに掛かる前記テールコード吊位置調整装置によるモーメントが前記乗りかごに掛かる前記コンペンロープによるモーメントの少なくとも一部を打ち消す位置に、前記テールコード吊位置調整装置の設置位置を決定し、
決定された前記設置位置に前記テールコード吊位置調整装置を設置する、
テールコード吊位置調整装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テールコード吊位置調整装置およびテールコード吊位置調整装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗りかごから吊り下げられたテールコードを備えたエレベータが知られている。テールコードは、例えば、気温の変化によって、折返部の径が変化する。このような径の変化によってテールコードが他の物体と接触するのを抑制するために、乗りかごにおけるテールコードの吊り位置を調整する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−53158号公報
【特許文献2】実開平2−149675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗りかごにおけるテールコードの吊位置を変更すると、乗りかごに掛かる重量バランスが崩れて、乗りかごの乗り心地の悪化の要因となる。
【0005】
そこで、本発明の課題に一つは、乗りかごにおけるテールコードの吊り位置の変更による乗りかごの乗り心地の悪化を抑制することができるテールコードの吊位置調整装置およびテールコードの吊位置調整装置の設置方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のテールコード吊位置調整装置は、バランスウェイトと、移動機構と、を備えている。前記バランスウェイトは、建造物に設けられた昇降路内を鉛直方向に移動する乗りかご、に設けられている。前記移動機構は、前記乗りかごに設けられ、前記乗りかごから吊り下げられたテールコードにおける前記乗りかごに支持された一端部と、前記バランスウェイトと、を水平方向に移動可能であり、かつ前記一端部の移動による前記乗りかごに掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向に前記バランスウェイトを移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態のエレベータの構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態のエレベータおけるテールコードおよびテールコード吊位置調整装置を含む部分を模式的に示す模式図である。
図3図3は、実施形態のエレベータにおけるテールコードおよびテールコード吊位置調整装置を含む部分の底面図である。
図4図4は、実施形態のエレベータにおけるテールコード吊位置調整装置を含む部分の正面図である。
図5図5は、実施形態のテールコード吊位置調整装置の斜視図である。
図6図6は、実施形態のエレベータにおけるテールコード吊位置調整装置を含む部分の底面図である。
図7図7は、実施形態の変形例のエレベータにおけるテールコード吊位置調整装置を含む部分の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、本明細書において、序数は、部材(部品)や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0009】
図1は、実施形態のエレベータ1の構成例を示す図である。
【0010】
図1に示す本実施形態のエレベータ1は、建造物100の昇降路R内に設置されて、乗りかご2内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗場に設けられた呼び装置の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客等を建造物の所望の階に運搬する。勿論、昇降路Rは、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。建造物100は、建築物とも称される。
【0011】
エレベータ1は、乗りかご2と、カウンタウェイト4と、メインロープ6と、駆動機構7と、コンペンセータ8と、中継箱11と、テールコード18と、制御装置20と、を備えている。
【0012】
乗りかご2は、昇降路R内に鉛直方向に移動可能に収容されている。具体的には、乗りかご2は、昇降路R内に設置されたガイドレール(不図示)によって鉛直方向に移動可能に支持されている。乗りかご2は、乗客を収容する。乗りかご2内には、エレベータ1の各種の操作を行うための操作装置の各種のボタン等が設けられている。また、乗りかご2の下部には、テールコード吊位置調整装置30(図2)が設けられている。
【0013】
カウンタウェイト4は、昇降路R内に鉛直方向に移動可能に収容されている。具体的には、カウンタウェイト4は、昇降路R内に設置されたガイドレール(不図示)によって鉛直方向に移動可能に支持されている。
【0014】
メインロープ6は、一端部に乗りかご2の上端部が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト4の上端部が固定されている。メインロープ6は、駆動機構7の駆動シーブ12およびそらせシーブ13に掛け渡されて、乗りかご2とカウンタウェイト4とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープ6は、巻き上げ機により移動されることで、乗りかご2とカウンタウェイト4とをつるべ式に昇降させる。
【0015】
駆動機構7は、例えば、昇降路R内に設けられる機器であって、図示しない周知の巻き上げ機と、この巻き上げ機の出力軸に取り付けられた駆動シーブ12と、そらせシーブ13と、を備えている。巻き上げ機は、昇降路R内に取り付けられている。駆動シーブ12およびそらせシーブ13は、上側にメインロープ6のカウンタウェイト4と乗りかご2の間に位置する部分が掛けられている。駆動機構7は、巻き上げ機が駆動シーブ12を回転駆動して、メインロープ6を昇降路R内で移動させて、乗りかご2とカウンタウェイト4を昇降させる。また、駆動機構7の巻き上げ機には、メインロープ6が移動することを規制する(即ち、メインロープ6を移動させない)ブレーキが設けられている。
【0016】
コンペンセータ8は、一端部が乗りかご2の下端部に取り付けられ他端部がカウンタウェイト4の下端部に取り付けられたコンペンロープ16と、このコンペンロープ16に掛けられたコンペンシーブ17と、を備えている。コンペンセータ8は、昇降中の乗りかご2やカウンタウェイト4の振動を抑制するとともに、乗りかご2とカウンタウェイト4が昇降路R内を昇降する際のメインロープ6の重量を相殺する。
【0017】
図2は、実施形態のエレベータ1おけるテールコード18およびテールコード吊位置調整装置30を含む部分を模式的に示す模式図である。
【0018】
図1および図2に示されるように、テールコード18は、昇降路R内に収容されている。テールコード18は、乗りかご2と制御装置20との間に介在して乗りかご2と制御装置20とを電気的に接続した接続路に含まれる。テールコード18は、乗りかご2内の電気系統に電力を供給する給電用の電力線、乗りかご2と制御装置20との間で制御信号を授受するための制御用の制御線、懸架用ワイヤーロープ等を含んで構成されている。
【0019】
図2に示されるように、テールコード18は、乗りかご2と建造物100に設置された中継箱11とに亘って設けられ、乗りかご2および中継箱11から吊り下げられている。テールコード18は、一端部18aと、他端部18bと、折返部18cと、を有している。一端部18aは、乗りかご2の下端部に支持されている。他端部18bは、中継箱11の下端部に支持されている。折返部18cは、一端部18aと他端部18bとの間で湾曲状に折り返されて、略U字状に構成されている。折返部18cは、テールコード18の下端18iを含む。また、折返部18cは、第一湾曲部18gと第二湾曲部18hとを含む。第一湾曲部18gは、折返部18cにおける一端部18a側の部分である。すなわち、第一湾曲部18gは、折返部18cにおける下端18iよりも一端部18a側の部分である。第二湾曲部18hは、折返部18cにおける他端部18b側の部分である。すなわち、第二湾曲部18hは、折返部18cの下端18iよりも他端部18b側の部分である。また、テールコード18は、第一延部18eと、第二延部18fと、を含む。第一延部18eは、テールコード18において乗りかご2から吊り下げられた部分であって折返部18cよりも上方の部分である。第二延部18fは、テールコード18において中継箱11から吊り下げられた部分であって折返部18cよりも上方の部分である。折返部18cは、湾曲部とも称される。中継箱11は、支持部の一例である。一端部18aは、可動端部とも称される。
【0020】
ここで、乗りかご2が昇降路R内の規定の位置(規定の高さ)である第一規定位置に位置したときの折返部18cにおける第一湾曲部18gと第二湾曲部18hとの間の水平方向の最大間隔L1は、自重径と称される。第一規定位置は、例えば鉛直方向に並んだ複数の階のうち鉛直方向の中間階の位置である。上記の最大間隔L1(自重径)は、昇降路R内の温度等によって変化する。なお、第一規定位置は、上記の位置以外であってもよい。
【0021】
図2に示されるテールコード吊位置調整装置30は、テールコード18の一端部18aの水平方向の位置を調整する。テールコード吊位置調整装置30は、移動機構40と、バランスウェイト35と、センサ21と、を有している。バランスウェイト35は、可動ウェイトとも称される。
【0022】
図3は、実施形態のエレベータ1におけるテールコード18およびテールコード吊位置調整装置30を含む部分の底面図である。図4は、実施形態のエレベータ1におけるテールコード吊位置調整装置30を含む部分の正面図である。図5は、実施形態のテールコード吊位置調整装置30の斜視図である。図6は、実施形態のエレベータ1におけるテールコード吊位置調整装置30を含む部分の底面図である。
【0023】
図2図6に示されるように、移動機構40は、乗りかご2に設けられて、乗りかご2と一体に鉛直方向に移動する。具体的には、移動機構40は、乗りかご2の床2aの下側すなわち床下に設けられた床枠2bに設置されている。移動機構40は、テールコード18の一端部18aおよびバランスウェイト35を水平方向に移動可能である。
【0024】
図3図6に示されるように、移動機構40は、枠体31と、テールコード吊元33と、バランスウェイト吊元34と、駆動機構36と、を有している。
【0025】
枠体31は、床枠2bに固定されている。枠体31は、一対のレール31aと、ストッパ31b,31cと、を有している。一対のレール31aは、それぞれ、第一方向D1に延びている。第一方向D1は、鉛直方向に沿った方向であって、テールコード18の他端部18bから一端部18aに向かう方向である。一対のレール31aは、第一方向D1および鉛直方向と直交する方向に互いに間隔を空けて配置されている。ストッパ31bは、一対のレール31aのそれぞれの第一方向D1の反対の第二方向D2の端部間に掛け渡されて、一対のレール31aに固定されている。ストッパ31cは、一対のレール31aのそれぞれの第一方向D1の端部間に掛け渡されて、一対のレール31aに固定されている。枠体31は、ガイド部材やフレームとも称される。
【0026】
テールコード吊元33には、テールコード18の一端部18aが固定されており、テールコード18は、テールコード吊元33から吊り下げられている。テールコード吊元33は、第一方向D1および第二方向D2に移動可能に一対のレール31aに支持されている。すなわち、一対のレール31aは、テールコード吊元33およびテールコード18の一端部18aを第一方向D1および第二方向D2に案内する。テールコード吊元33は、一対のレール31a上を滑動する。
【0027】
バランスウェイト吊元34には、バランスウェイト35の上端部が固定されており、バランスウェイト35は、バランスウェイト吊元34から吊り下げられている。バランスウェイト吊元34は、第一方向D1および第二方向D2に移動可能に一対のレール31aに支持されている。すなわち、一対のレール31aは、バランスウェイト吊元34およびバランスウェイト35を第一方向D1および第二方向D2に案内する。バランスウェイト吊元34は、テールコード吊元33と間隔を空けてテールコード吊元33の第一方向D1に位置している。バランスウェイト吊元34は、一対のレール31a上を滑動する。
【0028】
図5に示されるように、駆動機構36は、ベース32と、モータ36cと、ネジ軸36dと、を有している。ベース32は、テールコード吊元33とバランスウェイト35との間に位置して、一対のレール31aに固定されている。モータ36cは、ベース32に取り付けられている。
【0029】
ネジ軸36dは、第一方向D1に沿って延びており、ベース32を貫通している。ネジ軸36dは、二つのストッパ31b,31cに亘っている。ネジ軸36dは、ベース32およびストッパ31b,31cに回転可能に支持されている。ネジ軸36dは、第一方向D1および第二方向D2への移動が規制されている。ネジ軸36dは、モータ36cの駆動力によって回転する。
【0030】
また、ネジ軸36dには、第一雄ネジ部36daと第二雄ネジ部36dbとが設けられている。第一雄ネジ部36daと第二雄ネジ部36dbとは、互いに逆向きの雄ネジである。
【0031】
第一雄ネジ部36daは、ネジ軸36dにおけるベース32の第二方向D2側の部分に設けられている。第一雄ネジ部36daは、テールコード吊元33に設けられた雌ネジ部と噛み合った状態で、テールコード吊元33を貫通している。第一雄ネジ部36daとテールコード吊元33とは、ネジ軸36d(第一雄ネジ部36da)の回転運動をテールコード吊元33の直線運動に変換する第一ボールネジ36aを構成している。
【0032】
第二雄ネジ部36dbは、ネジ軸36dにおけるベース32の第一方向D1側の部分に設けられている。第二雄ネジ部36dbは、バランスウェイト吊元34に設けられた雌ネジ部と噛み合った状態で、バランスウェイト吊元34を貫通している。第二雄ネジ部36dbとバランスウェイト吊元34とは、ネジ軸36d(第二雄ネジ部36db)の回転運動をバランスウェイト吊元34の直線運動に変換する第二ボールネジ36bを構成している。
【0033】
上記の構成の移動機構40は、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34を互いに反対方向に移動させる。具体的には、モータ36cによってネジ軸36dが第一回転方向に回転された場合には、テールコード吊元33がテールコード18の一端部18aとともに第一方向D1に移動され、バランスウェイト吊元34がバランスウェイト35とともに第二方向D2に移動される。すなわち、テールコード吊元33およびテールコード18の一端部18aと、バランスウェイト吊元34およびバランスウェイト35とが互いに近づく方向に移動する。図2では、上記の動作開始時点のテールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34が実線で示され、上記の動作終了時点のテールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34が二点鎖線で示されている。
【0034】
一方、モータ36cによってネジ軸36dが第一回転方向の反対の第二回転方向に回転された場合には、テールコード吊元33がテールコード18の一端部18aとともに第二方向D2に移動され、バランスウェイト吊元34がバランスウェイト35とともに第一方向D1に移動される。すなわち、テールコード吊元33およびテールコード18の一端部18aと、バランスウェイト吊元34およびバランスウェイト35とが互いに遠ざかる方向に移動する。
【0035】
上記のように、バランスウェイト35がテールコード18の一端部18aに対して反対方向に移動することにより、テールコード18の一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化が抑制される。すなわち、移動機構40は、テールコード18の一端部18aと、バランスウェイト35と、を水平方向に移動可能であり、かつテールコード18の一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向にバランスウェイト35を移動させる。テールコード18の一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向は、テールコード18の一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を補正する方向(補正方向)とも言うことができる。第一方向D1および第二方向D2は、抑制方向の一例である。なお、上記の動作において、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34は、一対のレール31aによって、ネジ軸36d回りの回転が制限される。
【0036】
上記の動作により、鉛直方向の視線において、テールコード18の一端部18aの吊元であるテールコード吊元33の中心と中継箱11におけるテールコード18の他端部18bの吊元である他端部吊元の中心との間の水平方向の間隔Ls(図6)と、テールコード吊元33の中心とベース32の中心との間の水平方向の間隔La(図6)と、バランスウェイト35の中心とベース32の中心との間の水平方向の間隔Lb(図6)とが、変化する。ここで、本実施形態では、上記の間隔Laと間隔Lbとは、互いに同じである。また、テールコード吊元33の移動量とバランスウェイト吊元34の移動量との比が、1:1となるように、第一雄ネジ部36daと第二雄ネジ部36dbとが構成されている。上記構成では、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量とのバランスがとれるバランスウェイト35の重量は、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量と同じでよい。すなわち、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量と、バランスウェイト35の重量との比は、1:1でよい。
【0037】
センサ21は、昇降路R内に設けられ、テールコード18の折返部18c近傍に位置している。センサ21は、テールコード18の折返部18cにおける第一湾曲部18gと第二湾曲部18hとの間の水平方向の最大間隔L1の測定と、昇降路R内の温度の測定とを行なう。換言すると、センサ21は、上記の最大間隔L1を測定する構成(間隔測定装置)と、昇降路R内の温度を測定する構成(温度測定装置)と、を有している。具体的には、センサ21は、乗りかご2が昇降路R内の第一規定位置に位置したときの上記の折返部18cの最大間隔L1および昇降路R内の温度を測定する。センサ21は、公知の種々の方法によって上記の最大間隔L1を算出することができる。センサ21は、測定装置および測定装置の一例である。
【0038】
図1に示される制御装置20は、昇降路R内等に設けられる機器であって、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。制御装置20は、テールコード18等を介して乗りかご2と電気的に接続されている。制御装置20は、乗りかご2の操作装置、各階の乗場の呼び装置、駆動機構7、駆動機構36(モータ36c)およびセンサ21等と電気的に接続され、エレベータ1全体の制御を行なう。制御装置20は、テールコード吊位置調整装置30の一部を構成する。
【0039】
また、制御装置20は、機能的構成として、取得部20aと、移動制御部20bと、を有している。これらの機能的構成は、制御装置20のCPUがROMや記憶装置等の記憶部に記憶されたプログラムを実行した結果として実現される。なお、実施形態では、これらの機能的構成の一部または全部が専用のハードウェア(回路)によって実現されてもよい。
【0040】
次に、取得部20aおよび移動制御部20bについて説明する。以下で行なわれる処理および動作は、例えば、乗りかご2が昇降路R内の第一規定位置に位置したときに行なわれる。
【0041】
取得部20aは、折返部18cにおける第一湾曲部18gと第二湾曲部18hとの間の水平方向の最大間隔L1(図2)と、昇降路R内の温度と、の少なくとも一方を取得情報としてセンサ21から取得(受信)する。取得部20aは、折返部18cの最大間隔L1と昇降路R内の温度とのうち折返部18cの最大間隔L1だけを取得してもよいし、折返部18cの最大間隔L1と昇降路R内の温度とのうち昇降路R内の温度だけを取得してもよいし、折返部18cの最大間隔L1と昇降路R内の温度との両方を取得してもよい。
【0042】
移動制御部20bは、取得部によって取得された取得情報に基づいて、テールコード18の一端部18aと他端部18bとの間の水平方向の間隔L2(図6)が折返部18cの最大間隔L1と同じになるように一端部18aが移動し、かつ乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向にバランスウェイト35が移動するように、移動機構40のモータ36cを制御する。これにより、折返部18cの最大間隔L1に適した位置(応じた位置)に一端部18aが移動する。ここで、テールコード18の一端部18aと他端部18bとの間の水平方向の間隔L2は、テールコード18の第一延部18eと第二延部18fとの間の水平方向の間隔とも言うことができる。
【0043】
一例として、移動制御部20bは、取得部20aによって取得された折返部18cの最大間隔L1に基づいて移動機構40を制御する。また、一例として、移動制御部20bは、取得部20aによって取得された昇降路R内の温度に基づいて移動機構40を制御する。また、一例として、移動制御部20bは、取得部20aによって取得された折返部18cの最大間隔L1と昇降路R内の温度との両方に基づいて、移動機構40を制御する。当該制御における移動制御部20bの一端部18aおよびバランスウェイト35の移動の目標位置は、取得部によって取得された取得情報ごとに予め決められている。すなわち、目標位置は、取得部20aによって取得された折返部18cの最大間隔L1、取得部20aによって取得された昇降路R内の温度、取得部20aによって取得された折返部18cの最大間隔L1と昇降路R内の温度との両方のそれぞれに対して予め決められている。目標位置は、記憶装置等の記憶部に記憶されている。移動制御部20bは、例えば、一端部18aおよびテールコード吊元33の位置を検出する検出センサ(不図示)の検出結果に基づいて、一端部18aおよびバランスウェイト35が目標位置に位置するようにモータ36cを制御する。なお、移動制御部20bは、例えば、モータ36cの回転数(回転角度)を制御することにより、上記検出センサを用いずに、一端部18aおよびバランスウェイト35が目標位置に位置するようにしてもよい。目標位置は、調整位置や位置とも称される。
【0044】
次に、テールコード吊位置調整装置30の設置方法を図3を参照しながら説明する。乗りかご2に掛かるコンペンセータ8(コンペンロープ16)の重量をWc、テールコード吊位置調整装置30のうち移動機構40およびバランスウェイト35の合計重量をWuとする。鉛直方向からの視線で、乗りかご2におけるコンペンロープ16の吊元であるコンペンロープ吊元50の乗りかご2の中心からの距離をLcとする。鉛直方向からの視線で、乗りかごの中心に対する移動機構40(ネジ軸36d)の中心の距離をLuとする。このとき、上記の各重量によるモーメントの釣り合いの関係から、距離Luは、下記のようすればよい。すなわち、
Wu×Lu=Wc×Lc
Lu=Lc・Wc/Wu
とすればよい。これにより、コンペンセータ8(コンペンロープ16)により損なわれる乗りかご2に掛かる重量のバランスを補正することができる。このようにして決定した距離Luにテールコード吊位置調整装置30の移動機構40およびバランスウェイト35を設置する。
【0045】
すなわち、テールコード吊位置調整装置30の設置方法は、乗りかご2に掛かるテールコード吊位置調整装置30(移動機構40およびバランスウェイト35)によるモーメントが乗りかご2に掛かるコンペンロープ16によるモーメントの少なくとも一部(一部または全部)を打ち消す位置に、テールコード吊位置調整装置30(移動機構40およびバランスウェイト35)の設置位置を決定し、決定された設置位置にテールコード吊位置調整装置30(移動機構40およびバランスウェイト35)を設置するものである。
【0046】
以上のように、本実施形態では、テールコード吊位置調整装置30は、バランスウェイト35と、移動機構40と、を備えている。バランスウェイト35は、建造物100に設けられた昇降路R内を鉛直方向に移動する乗りかご2、に設けられている。移動機構40は、乗りかご2に設けられ、乗りかご2から吊り下げられたテールコード18における乗りかごに支持された一端部18aと、バランスウェイト35と、を水平方向に移動可能であり、かつ一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向(第一方向D1または第二方向D2)にバランスウェイト35を移動させる。
【0047】
このような構成によれば、テールコード18の一端部18aの移動による乗りかご2に掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向(第一方向D1または第二方向D2)にバランスウェイト35が移動するので、乗りかご2におけるテールコードの吊り位置(支持位置)の変更による乗りかご2の乗り心地の悪化を抑制することができる。また、このような構成によれば、乗りかご2に掛かる荷重のバランスを一定に保ちやすい。
【0048】
また、本実施形態では、テールコード吊位置調整装置30は、取得部20aと、移動制御部20bと、を有する。テールコード18は、一端部18aと、建造物100に設置された中継箱11(支持部)に支持された他端部18bと、一端部18aと他端部18bとの間で湾曲状に折り返された折返部18cと、を有し、乗りかご2および中継箱11から吊り下げられている。取得部20aは、折返部18cにおける一端部18a側の第一湾曲部18g(部分)と折返部18cにおける他端部18b側の第二湾曲部18h(部分)との間の水平方向の最大間隔L1と、昇降路内の温度と、の少なくとも一方を取得情報として取得する。移動制御部20bは、取得部20aによって取得された取得情報に基づいて、一端部18aと他端部18bとの間の水平方向の間隔L2が折返部18cの最大間隔L1と同じになるように一端部18aが移動し、かつ抑制方向にバランスウェイト35が移動するように、移動機構40を制御する。
【0049】
このような構成によれば、テールコード18の一端部18aと他端部18bとの間の水平方向の間隔L2が折返部18cの最大間隔L1と同じになるように一端部18aが移動し、かつ抑制方向にバランスウェイト35が移動するので、テールコード18が他の物体と接触するのを抑制することができるとともに、乗りかご2の乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、移動機構40は、一端部18aの移動距離よりもバランスウェイト35の移動距離の方が長くなるように、一端部18aおよびバランスウェイト35を移動させる。
【0051】
このような構成によれば、バランスウェイト35の重量を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、枠体31は、ストッパ31b,31cを有している。ここで、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34の移動量は予め設定されているため、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34が第一雄ネジ部36daおよび第二雄ネジ部36dbの長さを超えて、すなわち規定量を超えて移動されることはない。しなしながら、何らかの原因でテールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34の移動量が規定量を超えるようにモータ36cが回転した場合には、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34が、それぞれストッパ31b,31cに当接して当該ストッパ31b,31cに止められるため、テールコード吊元33およびバランスウェイト吊元34の規定量を超える移動を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態のテールコード吊位置調整装置の設置方法は、乗りかご2に掛かるテールコード吊位置調整装置30によるモーメントが乗りかご2に掛かるコンペンロープ16によるモーメントの少なくとも一部を打ち消す位置に、テールコード吊位置調整装置30の設置位置を決定し、決定された設置位置にテールコード吊位置調整装置30を設置する。
【0054】
このような方法によれば、乗りかご2に掛かるテールコード吊位置調整装置30によるモーメントが乗りかご2に掛かるコンペンロープ16によるモーメントの少なくとも一部を、テールコード吊位置調整装置30が打ち消すので、乗りかご2の乗り心地の悪化を抑制することができる。
【0055】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図7は、実施形態の変形例のエレベータ1におけるテールコード吊位置調整装置30を含む部分の底面図である。
【0056】
本変形例では、テールコード吊元33の移動量とバランスウェイト吊元34の移動量との比が1:2となるように、第一雄ネジ部36daと第二雄ネジ部36dbとが構成されている。また、鉛直方向の視線において、テールコード吊元33の中心とベース32の中心との間の水平方向の間隔Laと、バランスウェイト35の中心とベース32の中心との間の水平方向の間隔Lbは、1:2である。これにより、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量とのバランスがとれるバランスウェイト35の重量は、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量の1/2でよい。すなわち、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量と、バランスウェイト35の重量との比は、2:1でよい。
【0057】
上記構成では、テールコード18の一端部18aの移動距離よりもバランスウェイト35の移動距離の方が長くなる。すなわち、移動機構40は、一端部18aの移動距離よりもバランスウェイト35の移動距離の方が長くなるように、一端部18aおよびバランスウェイト35を移動させる。このような構成によれば、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量とのバランスがとれるバランスウェイト35の重量は、テールコード吊元33に掛かるテールコード18の重量の1/2でよいので、バランスウェイト35の重量の低減することができ、バランスウェイト35の材料費を削減することができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、支持部として中継箱11が適用された例が示されたが、これに限られない。例えば、支持部は、制御装置20(制御盤)であってもよい。この場合には、例えば、中継箱11を設ける必要がない。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…エレベータ、2…乗りかご、8…コンペンセータ、11…中継箱(支持部)、16…コンペンロープ、17…コンペンシーブ、18…テールコード、18a…一端部、18b…他端部、18c…折返部、18g…第一湾曲部(部分)、18h…第二湾曲部(部分)、20a…取得部、20b…移動制御部、30…テールコード吊位置調整装置、35…バランスウェイト、40…移動機構、100…建造物、R…昇降路、D1…第一方向(抑制方向)、D2…第二方向(抑制方向)。
【要約】
【課題】乗りかごにおけるテールコードの吊り位置の変更による乗りかごの乗りかごの乗り心地の悪化を抑制することができるテールコードの吊位置調整装置を得る。
【解決手段】実施形態のテールコード吊位置調整装置は、バランスウェイトと、移動機構と、を備えている。バランスウェイトは、建造物に設けられた昇降路内を鉛直方向に移動する乗りかご、に設けられている。移動機構は、乗りかごに設けられ、乗りかごから吊り下げられたテールコードにおける乗りかごに支持された一端部と、バランスウェイトと、を水平方向に移動可能であり、かつ一端部の移動による乗りかごに掛かる荷重のバランスの変化を抑制する抑制方向にバランスウェイトを移動させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7