(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態に係るモータ装置を示す部分断面図を、
図2は
図1の破線円A部を拡大して示す部分拡大断面図を、
図3は
図1のモータ装置のコネクタ部材を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示すモータ装置10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置(図示せず)の駆動源として用いられ、ウィンドガラスを昇降させるウィンドレギュレータ(図示せず)を駆動するものである。モータ装置10は、小型でありながら大きな出力が可能な減速機構付モータとして形成され、車両のドア内に形成される幅狭のスペース(図示せず)に設置されるようになっている。モータ装置10は、モータ部20とギヤ部40とを備えており、これらのモータ部20およびギヤ部40は、複数の締結ネジ11(図示では2つ)により互いに連結され、ユニット化されている。
【0019】
モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。モータケース21の内壁には、断面が略円弧形状に形成された複数のマグネット22(図示では2つ)が固定され、各マグネット22の内側には、コイル23が巻装されたアーマチュア24が、所定の隙間を介して回転自在に収容されている。そして、モータケース21の開口側(図中左側)にはブラシホルダ25が装着されており、当該ブラシホルダ25によってモータケース21の開口側は閉塞されている。
【0020】
アーマチュア24の回転中心C1には、回転軸としてのアーマチュア軸26が貫通して固定されている。アーマチュア軸26は、モータ部20およびギヤ部40の双方を横切るようにして設けられ、アーマチュア軸26の軸方向一端側(図中右側)はモータケース21の内部に配置され、アーマチュア軸26の軸方向他端側(図中左側)はギヤケース41の内部に配置されている。
【0021】
アーマチュア軸26の軸方向に沿う略中間部分で、かつアーマチュア24に近接する部位には、コンミテータ27が固定されている。このコンミテータ27には、アーマチュア24に巻装されたコイル23の端部が電気的に接続されている。
【0022】
コンミテータ27の外周には、ブラシホルダ25に保持された複数のブラシ28(図示では2つ)が摺接するようになっており、各ブラシ28は、バネ部材29によりそれぞれコンミテータ27に向けて所定圧で弾性接触されている。これにより、図示しないコントローラから各ブラシ28に駆動電流を供給することでアーマチュア24には回転力(電磁力)が発生し、ひいてはアーマチュア軸26が所定の回転数および回転トルクで回転するようになっている。
【0023】
アーマチュア軸26の軸方向に沿う略中間部分で、かつコンミテータ27のアーマチュア24側とは反対側には、センサマグネット30が固定されている。センサマグネット30は、アーマチュア軸26の回転方向に沿って4つの磁極(
図4参照)を交互に並べることにより環状に形成されている。センサマグネット30は、アーマチュア軸26と共に一体回転するようになっており、したがって、アーマチュア軸26の回転に伴い、センサマグネット30の径方向外側に配置された回転センサ70に対する磁束線の状態が変化するようになっている(
図6参照)。
【0024】
アーマチュア軸26のセンサマグネット30よりも軸方向他端側には、ウォームギヤ31が設けられている。ウォームギヤ31は略筒状に形成され、アーマチュア軸26に圧入によって固定されている。ウォームギヤ31には、ギヤケース41内に回転自在に設けられたウォームホイール42の歯部42aが噛み合わされている。これにより、ウォームギヤ31はギヤケース41内でアーマチュア軸26の回転に伴って回転し、その回転がウォームホイール42に伝達されるようになっている。ここで、ウォームギヤ31およびウォームホイール42は減速機構SDを形成している。
【0025】
モータケース21の底部側(図中右側)は段付形状に形成されており、当該部位にはモータケース21の本体部よりも小径となった小径部21aが設けられている。小径部21aには第1ラジアル軸受32と第1スラスト軸受33とが装着されており、これらの軸受32,33は、アーマチュア軸26の軸方向一端側を回転自在に支持している。
【0026】
図2に示すように、ブラシホルダ25は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成され、ホルダ本体25aと軸受保持筒25bとを備えている。ホルダ本体25aは、複数のブラシ28を移動自在に保持するとともに、モータケース21の開口部分に装着されるようになっている(
図1参照)。一方、軸受保持筒25bは筒状に形成され、ホルダ本体25aからギヤケース41側(図中左側)に向けて突出されている。
【0027】
軸受保持筒25bの先端部分には、アーマチュア軸26の軸方向に沿う略中間部分を回転自在に支持する第2ラジアル軸受34が装着されている。つまり、軸受保持筒25bの内側には、アーマチュア軸26が貫通するようになっている。また、アーマチュア軸26に固定されたセンサマグネット30は、軸受保持筒25bの内側に配置され、当該軸受保持筒25bの内側でアーマチュア軸26と共に回転するようになっている。
【0028】
ここで、軸受保持筒25bは本発明における仕切壁を構成しており、当該軸受保持筒25bは、センサマグネット30と回転センサ70との間に設けられている。このように、センサマグネット30と回転センサ70との間に仕切壁として機能する軸受保持筒25bを設けることで、センサマグネット30側にある各ブラシ28の摩耗粉が、回転センサ70や当該回転センサ70を実装するセンサ基板60に付着しないようにしている。これにより、回転センサ70の検出性能が低下するのを長期に亘り抑制することができる。
【0029】
図1に示すように、ギヤ部40は、ギヤケース(ハウジング)41およびコネクタ部材50を備えている。なお、ギヤケース41の開口側(図中手前側)は、図示しないギヤカバーによって密閉されている。ギヤ部40を形成するギヤケース41は、樹脂材料により所定形状に形成され、モータケース21の開口側にブラシホルダ25を介して連結されている。
【0030】
ギヤケース41の内部には、アーマチュア軸26の軸方向に沿って延びるウォームギヤ収容部41aと、当該ウォームギヤ収容部41aに近接して配置されたウォームホイール収容部41bとが形成されている。これらの各収容部41a,41bの内部には、ウォームギヤ31と、外周部分にウォームギヤ31と噛み合う歯部42aを有するウォームホイール42とが、それぞれ回転自在に収容されている。ここで、ウォームギヤ31は螺旋状に形成され、歯部42aはウォームホイール42の軸方向に向けて緩やかな傾斜角度で傾斜されている。これにより、ウォームギヤ31からウォームホイール42に対して滑らかな動力伝達が可能となっている。
【0031】
ウォームホイール42の回転中心C2には、出力軸42bが配置されており、当該出力軸42bは、ウィンドレギュレータ(図示せず)に動力伝達可能に接続されるようになっている。つまり、アーマチュア軸26の回転は、減速機構SDにより減速されて高トルク化され、出力軸42bからウィンドレギュレータに出力されるようになっている。
【0032】
ウォームギヤ収容部41aのアーマチュア軸26の軸方向に沿うモータケース21側とは反対側(図中左側)には、第3ラジアル軸受43と第2スラスト軸受44とが設けられている。これらの第3ラジアル軸受43および第2スラスト軸受44は、アーマチュア軸26の軸方向他端側を回転自在に支持している。
【0033】
また、第2スラスト軸受44のアーマチュア軸26側とは反対側には、ゴムブッシュ45が設けられ、当該ゴムブッシュ45は、第2スラスト軸受44をアーマチュア軸26に向けて比較的弱い力で押し付けるようになっている。これにより、アーマチュア軸26の回転抵抗が増加するのを抑制しつつ、アーマチュア軸26が軸方向にがたつくのを抑制している。
【0034】
このように、アーマチュア軸26の軸方向一端側を第1ラジアル軸受32と第1スラスト軸受33とで回転自在に支持し、アーマチュア軸26の軸方向に沿う略中間部分を第2ラジアル軸受34で回転自在に支持し、アーマチュア軸26の軸方向他端側を第3ラジアル軸受43と第2スラスト軸受44とで回転自在に支持している。これにより、アーマチュア軸26はスムーズに回転できるようになっている。
【0035】
ギヤケース41には、さらに、段付形状のコネクタ部材装着孔41cが設けられている。コネクタ部材装着孔41cは、ブラシホルダ25の近傍で、かつアーマチュア軸26を挟んで、ウォームホイール収容部41b側とは反対側に配置されている。コネクタ部材装着孔41cは、アーマチュア軸26の径方向に向けて延在され、当該コネクタ部材装着孔41cには、ギヤケース41とは別体となったコネクタ部材50が差し込み固定されるようになっている。
【0036】
ここで、コネクタ部材装着孔41cの延在方向についてより詳細に述べると、アーマチュア軸26の軸方向をX軸方向、出力軸42bの軸方向をZ軸方向(図面奥行き方向)とした場合に、コネクタ部材装着孔41cの延在方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方に直角となるY軸方向となっている。なお、X軸方向およびY軸方向はモータ装置10の縦横の幅方向を示し、Z軸方向はモータ装置10の厚み方向を示している。
【0037】
図2に示すように、コネクタ部材装着孔41cの内部には、ブラシホルダ25から突出された一対の駆動用導電部材25c(図示では1つ)が露出されている。各駆動用導電部材25cは、導電性に優れた黄銅等によって棒状に形成され、各駆動用導電部材25cの一端側は、各ブラシ28にそれぞれ電気的に接続されている。また、各駆動用導電部材25cの他端側は、コネクタ部材50に設けられた一対の電源ターミナル53の一端側に電気的に接続されるようになっている。
【0038】
ここで、コネクタ部材50をコネクタ部材装着孔41cに差し込むだけで、各電源ターミナル53の一端側は、各駆動用導電部材25cの他端側に自動的に電気的に接続されるようになっている。
【0039】
ギヤケース41には、
図1に示すように、3つの固定部41dが設けられている。各固定部41dは、出力軸42bを囲うようにしてギヤケース41の周囲にそれぞれ所定間隔(略120度間隔)で配置されている。そして、各固定部41dには、モータ装置10を車両のドア内に固定するための固定ボルト(図示せず)がそれぞれ装着されるようになっている。このように、各固定部41dを、出力軸42bを囲うようにして所定間隔で設けることにより、幅狭のドア内においてモータ装置10をバランス良く支持することができ、ひいてはモータ装置10に高負荷が掛かったとしても、モータ装置10がドア内でふらつくのを効果的に防止することができる。
【0040】
図1および
図3に示すように、コネクタ部材50は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することにより略L字形状に形成され、コネクタ接続部51と差し込み部52とを備えている。コネクタ接続部51には、車両側の外部コネクタCN(
図1参照)が接続されるようになっており、差し込み部52は、ギヤケース41のコネクタ部材装着孔41cに差し込まれるようになっている。ここで、外部コネクタCNは、車両に搭載されるバッテリやコントローラ等(何れも図示せず)に電気的に接続されている。
【0041】
コネクタ接続部51および差し込み部52の内部には、一対の電源ターミナル53と、4本の信号ターミナル54とがインサート(埋設)されている。各電源ターミナル53および各信号ターミナル54は、いずれも導電性に優れた黄銅等により、コネクタ部材50の形状に沿わせて略L字形状に形成されている。また、各電源ターミナル53の方が各信号ターミナル54よりも太くなっており、これは、各電源ターミナル53の方に各信号ターミナル54よりも大電流が流れるためである。
【0042】
各電源ターミナル53の一端側は、差し込み部52からそれぞれ突出して外部に露出されており、この露出された部分には、各駆動用導電部材25c(
図2参照)の他端側が挿入されるスリットSLが形成されている。ここで、
図3においては、一方の電源ターミナル53のスリットSLのみを示している。また、各電源ターミナル53の他端側は、コネクタ接続部51の内部に露出されており、これにより、外部コネクタCN側の各電源ターミナル(図示せず)に電気的に接続されるようになっている。
【0043】
各信号ターミナル54の一端側は、差し込み部52に設けられたセンサ基板60にそれぞれ電気的に接続されている。一方、各信号ターミナル54の他端側は、各電源ターミナル53の他端側と同様に、コネクタ接続部51の内部に露出されている。これにより、各信号ターミナル54の他端側は、外部コネクタCN側の各信号ターミナル(図示せず)に電気的に接続されるようになっている。
【0044】
差し込み部52のコネクタ接続部51側には、ゴム等の弾性部材よりなるシール部材55が設けられ、当該シール部材55は差し込み部52の周囲を取り囲むようにして装着されている。シール部材55は、コネクタ部材50をギヤケース41に装着した状態のもとで、差し込み部52とコネクタ部材装着孔41cとの間に配置されるようになっている(
図1参照)。これにより、ギヤケース41の外部からコネクタ部材装着孔41cの内部に向けて、雨水や埃等が進入するのを防止している。
【0045】
差し込み部52には、センサ基板60が一体に設けられている。センサ基板60は略長方形形状に形成され、一対の長辺61と一対の短辺62とを備えている。センサ基板60の一方の短辺62側は、差し込み部52に固定されており、これにより各短辺62がY軸方向に沿って対向し、各長辺61がZ軸方向に沿って対向している。
【0046】
そして、センサ基板60の一方の短辺62側には、4本の信号ターミナル54の一端側が電気的に接続されており、センサ基板60の他方の短辺62側には、回転センサ70が実装されている。つまり、センサ基板60は、
図1および
図2に示すように、コネクタ部材50をギヤケース41に装着した状態のもとで、アーマチュア軸26を中心に、当該アーマチュア軸26の径方向外側に向けて延在されている。
【0047】
ここで、アーマチュア軸26に固定されたセンサマグネット30と、回転センサ70が実装されたセンサ基板60との配置関係について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0048】
図4(a),(b)はセンサマグネットとセンサ基板との配置関係を説明する説明図を示している。
【0049】
図4に示すように、センサ基板60の他方の短辺62側は、センサマグネット30の径方向外側に隙間SPを介して配置されており、この隙間SPには、仕切壁として機能する軸受保持筒25bが配置されている。ここで、隙間SPの寸法は、次の3つの条件を満たす寸法に設定されている。つまり、回転センサ70をセンサマグネット30に可能な限り近付けて十分な検出性能が得られ、センサマグネット30の回転時に当該センサマグネット30が軸受保持筒25bに接触せず、差し込み部52をコネクタ部材装着孔41cに差し込んだ際にセンサ基板60と軸受保持筒25bとが接触しない寸法となっている。
【0050】
図4(a)に示すように、回転センサ70を含むセンサ基板60のアーマチュア軸26の軸方向に沿う厚み寸法t1は、センサマグネット30のアーマチュア軸26の軸方向(X軸方向)に沿う厚み寸法t2以下に設定されている。つまり、回転センサ70を含むセンサ基板60は、センサマグネット30を挟んで反対側にある目視ポイントLPから見た際に、センサマグネット30の軸方向寸法(=t2)の範囲内(図中網掛け範囲内)に収められることが可能になっていて、回転センサ70は、目視ポイントLPから見た際に、センサマグネット30の軸方向寸法(=t2)の範囲内(図中網掛け範囲内)に配置される。
【0051】
これにより、アーマチュア軸26の軸方向(X軸方向)に沿うモータ装置10の寸法、つまりモータ装置10の幅寸法が増大するのを抑制することができ、モータ装置10の小型化を実現している。
【0052】
また、
図4(b)に示すように、回転センサ70を含むセンサ基板60の短辺62が延びる方向に沿う幅寸法w1は、センサマグネット30のアーマチュア軸26の径方向(Y軸方向/Z軸方向)に沿う厚み寸法w2以下に設定されている。つまり、回転センサ70を含むセンサ基板60は、センサマグネット30を挟んで反対側にある目視ポイントLPから見た際に、センサマグネット30の直径寸法(=w2)の範囲内(図中網掛け範囲内)に収められることが可能になっていて、回転センサ70は、目視ポイントLPから見た際に、センサマグネット30の直径寸法(=w2)の範囲内(図中網掛け範囲内)に配置される。
【0053】
これにより、出力軸42b(
図1参照)の軸方向(Z軸方向)に沿うモータ装置10の寸法、つまりモータ装置10の厚み寸法が増大するのを抑制することができ、モータ装置10の薄型化を実現している。
【0054】
次に、回転センサ70の構造および動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0055】
図5は回転センサの内部構造を説明する説明図を、
図6は回転センサに対するセンサマグネットの相対位置を模式的に複数示し、各々の位置での回転センサによる磁束成分の検出状態を説明する説明図を、
図7は回転センサによる磁束成分の検出信号と回転センサの出力信号とを説明する説明図をそれぞれ示している。
【0056】
図5に示すように、回転センサ70は、当該回転センサ70と対向するセンサマグネット30の磁極(S極/N極)の変化、つまり磁束線の向きやその変化を捉える磁気センサとなっている。これにより回転センサ70は、アーマチュア軸26(
図4参照)の回転状態、つまりアーマチュア軸26の回転方向や回転速度を検出可能となっている。具体的には、回転センサ70は、センサ素子としての磁気抵抗素子(MR素子)備えており、さらには巨大磁気抵抗効果現象(Giant Magneto Resistance Effect)を応用したGMRセンサとなっている。
【0057】
回転センサ70は、Y軸方向に沿う磁束成分の大きさに応じてその電気抵抗値が変化するY軸方向素子(第1MR素子)71と、Z軸方向に沿う磁束成分の大きさに応じてその電気抵抗値が変化するZ軸方向素子(第2MR素子)72とを備えている。回転センサ70は、さらに波形変換回路73を備えており、当該波形変換回路73には、Y軸方向素子71およびZ軸方向素子72からの正弦波信号(
図7参照)がそれぞれ入力されるようになっている。そして、波形変換回路73は、入力された各正弦波信号(Y軸方向磁束成分/Z軸方向磁束成分)を、それぞれ矩形波信号に変換して出力するようになっている。
【0058】
図6および
図7に示すように、回転センサ70に対してセンサマグネット30が「0°」の基準位置にある場合(
図4(b)に示す位置関係)には、回転センサ70には、略Z軸方向のみに沿って磁束線が通過する。したがって、当該状態においては、Z軸方向磁束成分、つまりZ軸方向に沿う磁界の強さHが最大となり、Z軸方向素子72の出力が最大となる。一方、Y軸方向磁束成分、つまりY軸方向に沿う磁界の強さHは最小となり、Y軸方向素子71の出力は最小となる。ここで、
図6の破線矢印に示す「磁束ベクトル量」を分解すると、それぞれ黒塗り矢印の「Y軸方向磁束成分」および白抜き矢印の「Z軸方向磁束成分」となる。
【0059】
回転センサ70に対してセンサマグネット30が「90°」の位置にある場合には、上記とは逆に、回転センサ70には、略Y軸方向のみに沿って磁束線が通過するようになり、さらには磁束線の向きはセンサマグネット30のS極に向けられる。したがって、当該状態においては、Y軸方向磁束成分、つまりY軸方向に沿う磁界の強さHが負側で最大となり、Y軸方向素子71の出力が負側で最大となる。一方、Z軸方向磁束成分、つまりZ軸方向に沿う磁界の強さHは最小となり、Z軸方向素子72の出力は最小となる。
【0060】
回転センサ70に対してセンサマグネット30が「−90°」の位置にある場合には、回転センサ70には、略Y軸方向のみに沿って磁束線が通過するようになり、さらには磁束線の向きは上記「90°」の場合とは逆になる。したがって、当該状態においては、Y軸方向磁束成分、つまりY軸方向に沿う磁界の強さHが正側で最大となり、Y軸方向素子71の出力が正側で最大となる。一方、Z軸方向磁束成分、つまりZ軸方向に沿う磁界の強さHは最小となり、Z軸方向素子72の出力は最小となる。
【0061】
このように、回転センサ70のY軸方向素子71およびZ軸方向素子72は、
図6の上段に示すように、位相差が90°となった2種類の正弦波信号(実線/一点鎖線)をそれぞれ出力するようになっている。その後、これらの正弦波信号は波形変換回路73に入力されて、波形変換回路73は、
図6の下段に示すように、位相差が90°となった2種類の矩形波信号(OUT1/OUT2)を生成し、生成した2種類の矩形波信号をそれぞれ出力するようになっている。
【0062】
ここで、波形変換回路73は、正側の第1閾値th1と負側の第2閾値th2とを備えており、2種類の正弦波信号と各閾値th1,th2とを比較することにより、各矩形波信号(OUT1/OUT2)の立ち上がりポイントと立ち下がりポイントとを決定している。
【0063】
このように、回転センサ70は、位相差が90°の2種類の矩形波信号を出力し、これらの矩形波信号は、車両に搭載されるコントローラ(図示せず)に入力されるようになっている。そして、コントローラは、各矩形波信号の立ち上がりタイミングや立ち下がりタイミングを監視することにより、センサマグネット30、つまりアーマチュア軸26の回転方向や回転速度を把握し、これに基づいてモータ装置10を回転制御するようになっている。
【0064】
次に、以上のように形成したモータ装置10の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0065】
図8は
図1のモータ装置の組み立て手順を説明する説明図を示している。
【0066】
まず、モータケース21に、アーマチュア24やブラシホルダ25等を組み付けたモータ部20を準備するとともに、ギヤケース41を準備する。そして、図中矢印(1)に示すように、モータ部20を形成するウォームギヤ31を、ギヤケース41のウォームギヤ収容部41aに臨ませて、ウォームギヤ31をウォームギヤ収容部41aの内部に挿入していく。その後、ブラシホルダ25をギヤケース41に突き当てる。次いで、図中矢印(2)に示すように、図示しない締結工具を用いて締結ネジ11をギヤケース41にネジ結合することにで、モータケース21とギヤケース41と連結して一体化させる。
【0067】
その後、図中矢印(3)に示すように、コネクタ部材50の差し込み部52側、つまりセンサ基板60側を、コネクタ部材装着孔41cに臨ませる。そして、差し込み部52をコネクタ部材装着孔41cに差し込んでいき、これにより各電源ターミナル53の一端側のスリットSL(
図3参照)に各駆動用導電部材25cの他端側が差し込まれて、両者が電気的に接続される。このようにして、コネクタ部材50は、アーマチュア軸26の径方向外側からギヤケース41に組み込まれて、コネクタ部材50のギヤケース41への装着が完了する。
【0068】
ここで、シール部材55がコネクタ部材装着孔41cに嵌合されるので、コネクタ部材50とギヤケース41との連結強度は十分であるが、コネクタ部材50とギヤケース41との連結強度をより強固なものとすべく、両者を締結ネジ(図示せず)により固定しても良い。
【0069】
次いで、ギヤケース41の開口側から、ギヤケース41のウォームホイール収容部41bの内部にウォームホイール42を収容し、さらに、ギヤケース41の開口側をギヤカバー(図示せず)によって密閉する。これによりモータ装置10が完成する。ただし、コネクタ部材50をギヤケース41に差し込み固定する前の段階において、ウォームホイール42をウォームホイール収容部41bの内部に収容しても良い。
【0070】
以上詳述したように、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、センサマグネット30の径方向外側に隙間SPを介して配置され、アーマチュア軸26の回転状態を検出する回転センサ70が設けられるセンサ基板60を、アーマチュア軸26を中心に当該アーマチュア軸26の径方向外側に向けて延在するように設けている。したがって、従前のようにアーマチュア軸26を跨ぐようにしてセンサ基板60を設けなくて済む。
【0071】
よって、センサ基板60が延在する方向と交差する方向(Z軸方向)に沿うモータ装置10の厚み寸法を小さくして、モータ装置10をより小型軽量化することが可能となる。
【0072】
また、センサ基板60を従前に比してコンパクトに纏めることができるので、ギヤケース41に対するセンサ基板60の占める割合を減らして、ギヤケース41に対する固定部41dの配置自由度を向上させることができる。したがって、モータ装置10の取り付け対象物へのレイアウト性を向上させることが可能となる。
【0073】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、回転センサとして、センサマグネット30が形成する磁束線に反応する2つのMR素子を有する1つのGMRセンサを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、1つのMR素子を有する安価なMRセンサを2つ採用しても良い。さらには、他の磁気センサ(ホールIC等)を採用することもできる。
【0074】
また、上記実施の形態においては、モータ装置10を、車両に搭載されるパワーウィンド装置の駆動源として用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置等の他の駆動源としても用いることができる。