【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のホットパック加温装置では、使用者は、加温槽内において温熱治療に使用後のホットパックを加温槽に戻す箇所を記憶しておき、加温槽内において、それ以外のホットパックの中から温熱治療に適した温度に加温されたホットパックを選択して使用する必要がある。
【0009】
しかしながら、使用者が治療室にある様々な治療器を操作しながら、加温槽内における使用後のホットパックの戻し箇所を記憶しておくことや、加温槽内におけるそれ以外の複数のホットパックの中から、温熱治療に適した温度に加温されたホットパックを選択して使用することは困難で、且つ、非常に面倒なことであるうえ、加温が不十分なホットパックに気付かずに当該ホットパックを温熱治療に使用してしまうこともある。
【0010】
また、仕切り枠に区切られ保管されているホットパックを、棒の先端に引っ掛けて加温槽内から取り出す際に、ホットパックの引掛け部分が水没していて、ホットパックの引掛け部分が見えにくいことがあり、このような場合では、使用者がホットパックの引掛け部分を見ようとしても湯熱で近づくことができないため、ホットパックを加温槽内から取り出しにくく、場合によっては火傷する虞も指摘される。
【0011】
特に、仕切り枠数が多いと、加温槽内に仕切り枠の設置にスペースがとられて加温槽のサイズが大型化し、コンパクトな加温槽を製作し難いうえ、加温槽内の必要水量も増え、効率が悪い。また、ホットパックの収納数が増えると仕切り枠が増加し、これに伴って清掃箇所が増えて、清掃が面倒となる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加温槽内でホットパックの不規則な収納位置を記憶する必要がなく、且つホットパックを加温槽内から安全且つ容易に取り出したり収納したりすることができると共に、コンパクトであり、且つ、ホットパックの収納数が増えても清掃等を容易に行うことができるホットパック加温装置
を備えたホットパック加温システム、および、これに使用するホットパッ
クを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の手段を提供する。
【0014】
(1) 本発明に係るホットパックは、ホットパック加温装置で加温されるホットパックであって、
前記ホットパック加温装置は、湯が貯められる加温槽を備え、前記加温槽内の前記湯で前記ホットパックを加温するものであり、前記加温槽内に、前記ホットパックを所定方向スライド可能に収納するホットパック収納手段を具備し、前記ホットパック収納手段は、前記ホットパックに取り付けた係合部に係合する被係合部を備え、
前記ホットパックは前記係合部を着脱可能に備えている。
【0015】
この構成によれば、係合部が破損しても、その破損した係合部を新規な係合部と取り換えるだけで済むため、ホットパックそれ自体は、係合部の破損の影響を受けずに使用することができる。
【0016】
(2) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記係合部の着脱が可能な係止部を当該ホットパックの側面上部に備えている。
【0017】
この構成によれば、前記(1)の効果を提供できるホットパックが得られる。
【0018】
(3) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記ホットパックを前記加温槽内から少なくとも取出す際に支持するための支持部を備えている。
【0019】
この構成によれば、取出しやすい、また収納しやすいホットパックが得られる。
【0020】
(4) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記支持部を前記係合部と一体に設けている。
【0021】
この構成によれば、支持部と係合部とを一体化することで、ホットパックの製作コストの低減化が図れる。また、支持部自体を使用者が把持できるようにすることで、ホットパックを被係合部に容易に引掛けることが可能となる。
【0022】
(
5) 本発明に係るホットパック加温システムは、前記(1)ないし(4)のいずれかのホットパックと、前
記ホットパック加温装置とを備え
ていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、前記ホットパック収納手段において、ホットパックを所定方向へスライドさせる側を、加温槽内からホットパックを取り出す取出側とし、前記所定方向とは反対方向の側を、ホットパックを加温槽内に収納する収納側と予め決めておく。
【0024】
そうすると、例えば、使用済みのホットパックを加温槽内に収納する際は、加温槽内に先に収納されているホットパックを前記取出側へスライドさせて、前記収納側に使用済みのホットパックの収納スペースを確保することができる。これによって、その収納スペースに使用済のホットパックを収納することができる。
【0025】
そして、ホットパックは前記収納側から前記取出側へ順次にスライドされて加温槽内に収納されるので、これら収納されているホットパックのうち、前記取出側のホットパックが最も高温に加温されていることになる。そのため、加温槽内からホットパックを取り出して温熱治療に使用する際は、前記取出側のホットパックから順次に取り出して使用すればよい。これにより、使用者は、温熱治療に使用するホットパックを簡単に何等戸惑うことなく加温槽内から取り出して温熱治療に使用することができる。
【0026】
さらに、この構成によれば、加温槽内の底面上にホットパックを落とすことなく、当該ホットパックを前記所定方向へ確実にスライドさせることができる。
【0027】
(
6) 本発明
のホットパック加温
システムにおいて、好ましくは、
前記係合部はフック形状を有しており、
前記被係合部は、所定方向に延びるレール状であって当該被係合部上のいずれの箇所にも前記係合部を係合可能であり、
且つ前記被係合部は、当該被係合部上の任意の箇所で係合させた前記係合部を前記ホットパックと共に前記所定方向に沿ってスライド可能にしてある。
【0028】
この構成によれば、ホットパックをフック形状の係合部に係合させ、この係合部を被係合部に係合させると、ホットパックを、被係合部上で所定方向に沿って容易にスライドさせることができる。ここでフック形状とは、先端が内側に屈曲することでホットパックと係合可能となった形状(例えば鉤状の形状)をいう。
【0029】
(
7) 本発明のホットパック加温
システムにおいて、好ましくは、
前記被係合部が、前記加温槽内に着脱可能に設けられている。
【0030】
この構成によれば、被係合部が破損しても、破損した被係合部を新規の被係合部と取り換えるだけでよい。そのため、被係合部が破損したことよるホットパック加温装置の使用には影響しないで済む。また、被係合部を加温槽内から除去できるため、加温槽内の清掃が容易となる。また、被係合部それ自体の清掃も簡単にできて好ましい。
【0031】
(
8) 本発明のホットパック加温
システムにおいて、好ましくは、
前記ホットパック収納手段は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記ホットパック側の支持部が前記加温槽内の湯面から露出するように、前記ホットパックを前記加温槽に収納する。
【0032】
この構成によれば、ホットパック収納手段がホットパック側の支持部が加温槽内の湯面から露出するようにホットパックを加温槽に収納するので、使用者は、湯面の波による光の屈折などの影響を受けずに容易にホットパック支持部を視認でき、ホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入したりする際に不必要に加温槽内の湯に使用者が近づく必要がない。これにより、火傷の虞なく容易にホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入して収納したりすることができる。
【0033】
(
9) 本発明のホットパック加温
システムにおいて、好ましくは、
前記被係合部は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記加温槽内の湯面から露出する。
【0034】
この構成によれば、ホットパック収納手段が加温槽内の湯面から露出するので、使用者は、湯面の波による光の屈折などの影響を受けずに容易にホットパック収納手段を視認でき、ホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入したりする際に不必要に加温槽内の湯に使用者が近づく必要がない。これにより、火傷の虞なく容易にホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入して収納したりすることができる。