特許第6608593号(P6608593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608593ホットパックおよびホットパック加温システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608593
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】ホットパックおよびホットパック加温システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/08 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   A61F7/08 320Z
   A61F7/08 300
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-24354(P2015-24354)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-146881(P2016-146881A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (展示会名)あいの里在宅介護支援センター (開催日)平成26年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103471
【氏名又は名称】オージー技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康孝
(72)【発明者】
【氏名】中山 皓介
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0010482(US,A1)
【文献】 特開昭54−081995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットパック加温装置で加温されるホットパックであって、
前記ホットパック加温装置は、湯が貯められる加温槽を備え、前記加温槽内の前記湯で前記ホットパックを加温するものであり、前記加温槽内に、前記ホットパックを所定方向スライド可能に収納するホットパック収納手段を具備し、前記ホットパック収納手段は、前記ホットパックに取り付けた係合部に係合する被係合部を備え、
前記ホットパックは前記係合部を着脱可能に備えている、
ことを特徴とするホットパック。
【請求項2】
前記係合部の着脱が可能な係止部を当該ホットパックの側面上部に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載のホットパック。
【請求項3】
前記ホットパックを前記加温槽内から少なくとも取出す際に支持するための支持部を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のホットパック。
【請求項4】
前記支持部を前記係合部と一体に設けている、
ことを特徴とする請求項3に記載のホットパック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のホットパックと、前記ホットパック加温装置と、を備えている、
ことを特徴とするホットパック加温システム。
【請求項6】
記係合部はフック形状を有しており、
前記被係合部は、所定方向に延びるレール状であって当該被係合部上のいずれの箇所にも前記係合部を係合可能であり、
且つ前記被係合部は、当該被係合部上の任意の箇所で係合させた前記係合部を前記ホットパックと共に前記所定方向に沿ってスライド可能にしてある、
ことを特徴とする請求項5に記載のホットパック加温システム
【請求項7】
前記被係合部は、前記加温槽内に着脱可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のホットパック加温システム
【請求項8】
前記ホットパック収納手段は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記ホットパック側の支持部が前記加温槽内の湯面から露出するように、前記ホットパックを前記加温槽に収納する、
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載のホットパック加温システム
【請求項9】
前記被係合部は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記加温槽内の湯面から露出する、
ことを特徴とする請求項5ないしのいずれか一項に記載のホットパック加温システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットパック、および、ホットパックを加温する湯を貯める加温槽を備えたホットパック加温装置ホットパックからなるホットパック加温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホットパックは、一般的に、腰痛症や肩痛症にかかっている人体患部の温熱治療を施す際に使用される。このホットパックは、加温された状態にして、人体患部に接触させて使用される。
【0003】
このようなホットパックは、加温槽内の湯中に、浸漬され、必要な温度にまで加温されると、加温槽内から取り出されて温熱治療に使用される。
【0004】
下記特許文献1に記載の従来例のホットパック加温装置では、そうした加温槽内に複数の仕切り枠を備え、仕切り枠毎にホットパックが収納される。
【0005】
また、この従来例では、ホットパックが必要な温度にまで加温されると、ホットパックは加温槽内から取り出されて温熱治療に使用され、ホットパックの温度が下がると、加温槽内の仕切り枠の空いている場所に戻されて再び加温される。
【0006】
また、この従来例では、加温槽内を清掃する際には、仕切り枠が加温槽内から取り出されて、清掃が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録2577541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のホットパック加温装置では、使用者は、加温槽内において温熱治療に使用後のホットパックを加温槽に戻す箇所を記憶しておき、加温槽内において、それ以外のホットパックの中から温熱治療に適した温度に加温されたホットパックを選択して使用する必要がある。
【0009】
しかしながら、使用者が治療室にある様々な治療器を操作しながら、加温槽内における使用後のホットパックの戻し箇所を記憶しておくことや、加温槽内におけるそれ以外の複数のホットパックの中から、温熱治療に適した温度に加温されたホットパックを選択して使用することは困難で、且つ、非常に面倒なことであるうえ、加温が不十分なホットパックに気付かずに当該ホットパックを温熱治療に使用してしまうこともある。
【0010】
また、仕切り枠に区切られ保管されているホットパックを、棒の先端に引っ掛けて加温槽内から取り出す際に、ホットパックの引掛け部分が水没していて、ホットパックの引掛け部分が見えにくいことがあり、このような場合では、使用者がホットパックの引掛け部分を見ようとしても湯熱で近づくことができないため、ホットパックを加温槽内から取り出しにくく、場合によっては火傷する虞も指摘される。
【0011】
特に、仕切り枠数が多いと、加温槽内に仕切り枠の設置にスペースがとられて加温槽のサイズが大型化し、コンパクトな加温槽を製作し難いうえ、加温槽内の必要水量も増え、効率が悪い。また、ホットパックの収納数が増えると仕切り枠が増加し、これに伴って清掃箇所が増えて、清掃が面倒となる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加温槽内でホットパックの不規則な収納位置を記憶する必要がなく、且つホットパックを加温槽内から安全且つ容易に取り出したり収納したりすることができると共に、コンパクトであり、且つ、ホットパックの収納数が増えても清掃等を容易に行うことができるホットパック加温装置を備えたホットパック加温システム、および、これに使用するホットパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の手段を提供する。
【0014】
(1) 本発明に係るホットパックは、ホットパック加温装置で加温されるホットパックであって、
前記ホットパック加温装置は、湯が貯められる加温槽を備え、前記加温槽内の前記湯で前記ホットパックを加温するものであり、前記加温槽内に、前記ホットパックを所定方向スライド可能に収納するホットパック収納手段を具備し、前記ホットパック収納手段は、前記ホットパックに取り付けた係合部に係合する被係合部を備え、
前記ホットパックは前記係合部を着脱可能に備えている。
【0015】
この構成によれば、係合部が破損しても、その破損した係合部を新規な係合部と取り換えるだけで済むため、ホットパックそれ自体は、係合部の破損の影響を受けずに使用することができる。
【0016】
(2) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記係合部の着脱が可能な係止部を当該ホットパックの側面上部に備えている。
【0017】
この構成によれば、前記(1)の効果を提供できるホットパックが得られる。
【0018】
(3) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記ホットパックを前記加温槽内から少なくとも取出す際に支持するための支持部を備えている。
【0019】
この構成によれば、取出しやすい、また収納しやすいホットパックが得られる。
【0020】
(4) 本発明に係るホットパックにおいて、好ましくは、
前記支持部を前記係合部と一体に設けている。
【0021】
この構成によれば、支持部と係合部とを一体化することで、ホットパックの製作コストの低減化が図れる。また、支持部自体を使用者が把持できるようにすることで、ホットパックを被係合部に容易に引掛けることが可能となる。
【0022】
() 本発明に係るホットパック加温システムは、前記(1)ないし(4)のいずれかのホットパックと、前記ホットパック加温装置とを備えていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、前記ホットパック収納手段において、ホットパックを所定方向へスライドさせる側を、加温槽内からホットパックを取り出す取出側とし、前記所定方向とは反対方向の側を、ホットパックを加温槽内に収納する収納側と予め決めておく。
【0024】
そうすると、例えば、使用済みのホットパックを加温槽内に収納する際は、加温槽内に先に収納されているホットパックを前記取出側へスライドさせて、前記収納側に使用済みのホットパックの収納スペースを確保することができる。これによって、その収納スペースに使用済のホットパックを収納することができる。
【0025】
そして、ホットパックは前記収納側から前記取出側へ順次にスライドされて加温槽内に収納されるので、これら収納されているホットパックのうち、前記取出側のホットパックが最も高温に加温されていることになる。そのため、加温槽内からホットパックを取り出して温熱治療に使用する際は、前記取出側のホットパックから順次に取り出して使用すればよい。これにより、使用者は、温熱治療に使用するホットパックを簡単に何等戸惑うことなく加温槽内から取り出して温熱治療に使用することができる。
【0026】
さらに、この構成によれば、加温槽内の底面上にホットパックを落とすことなく、当該ホットパックを前記所定方向へ確実にスライドさせることができる。
【0027】
() 本発明ホットパック加温システムにおいて、好ましくは、
前記係合部はフック形状を有しており、
前記被係合部は、所定方向に延びるレール状であって当該被係合部上のいずれの箇所にも前記係合部を係合可能であり、
且つ前記被係合部は、当該被係合部上の任意の箇所で係合させた前記係合部を前記ホットパックと共に前記所定方向に沿ってスライド可能にしてある。
【0028】
の構成によれば、ホットパックをフック形状の係合部に係合させ、この係合部を被係合部に係合させると、ホットパックを、被係合部上で所定方向に沿って容易にスライドさせることができる。ここでフック形状とは、先端が内側に屈曲することでホットパックと係合可能となった形状(例えば鉤状の形状)をいう。
【0029】
() 本発明のホットパック加温システムにおいて、好ましくは、
前記被係合部が、前記加温槽内に着脱可能に設けられている。
【0030】
この構成によれば、被係合部が破損しても、破損した被係合部を新規の被係合部と取り換えるだけでよい。そのため、被係合部が破損したことよるホットパック加温装置の使用には影響しないで済む。また、被係合部を加温槽内から除去できるため、加温槽内の清掃が容易となる。また、被係合部それ自体の清掃も簡単にできて好ましい。
【0031】
() 本発明のホットパック加温システムにおいて、好ましくは、
前記ホットパック収納手段は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記ホットパック側の支持部が前記加温槽内の湯面から露出するように、前記ホットパックを前記加温槽に収納する。
【0032】
この構成によれば、ホットパック収納手段がホットパック側の支持部が加温槽内の湯面から露出するようにホットパックを加温槽に収納するので、使用者は、湯面の波による光の屈折などの影響を受けずに容易にホットパック支持部を視認でき、ホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入したりする際に不必要に加温槽内の湯に使用者が近づく必要がない。これにより、火傷の虞なく容易にホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入して収納したりすることができる。
【0033】
() 本発明のホットパック加温システムにおいて、好ましくは、
前記被係合部は、前記加温槽内の満水位、または満水位より低い規定水位の湯中に前記ホットパックが浸かっている状態で前記加温槽内の湯面から露出する。
【0034】
この構成によれば、ホットパック収納手段が加温槽内の湯面から露出するので、使用者は、湯面の波による光の屈折などの影響を受けずに容易にホットパック収納手段を視認でき、ホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入したりする際に不必要に加温槽内の湯に使用者が近づく必要がない。これにより、火傷の虞なく容易にホットパックを加温槽内から取り出したり、加温槽内に投入して収納したりすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、加温槽内で次の温熱治療に使用するホットパックの不規則な収納位置を記憶する必要がなく、且つホットパックを安全且つ容易に選択して加温槽内から取り出したり収納したりすることができると共に、加温槽内の清掃も容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係るホットパック加温装置の蓋が開いた状態の平面図である。
図2図1におけるA-A矢視方向の断面図である。
図3】収納手段の斜視図である。
図4】ホットパックの正面図である。
図5図4のB-B線に沿う断面図である。
図6図5の破線円で囲む部分の拡大斜視図である。
図7】係合部の拡大斜視図である。
図8】別実施形態の係合部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0038】
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、蓋が開いた状態にあるホットパック加温装置の平面図、図2図1のA-A矢視方向の断面図である。
【0039】
ホットパック加温装置1は、装置本体2を有する。
【0040】
装置本体2は平面視矩形状の筐体構造をなし、上部が開口している。装置本体2内部には、ホットパック3を湯で加温する加温槽4が設置されている。
【0041】
加温槽4は、上部が開口した有底の筐体構造をなし、当該槽内の底部寄りに底板5を備える。加温槽4内において、底板5よりも上部空間側はホットパック3の収納空間となり、底板5よりも下部空間側は平面視略環状のヒータ6の配設空間となっている。底板5には、複数の穴5aが開けられている。
【0042】
加温槽4内に貯められた水は、ヒータ6が作動すると、使用者が設定した温度、例えば、約80℃程度に加温することができるようになっている。ヒータ6は、例えば、銅線等の導電線が、耐熱性・絶縁性・防水性の被覆材で被覆されてなり、抵抗加熱方式で加熱される。
【0043】
装置本体2の上部開口には、加温槽4内の湯の温度低下を軽減させる為の蓋7が開閉自在に設けられている。
【0044】
ホットパック加温装置1は、ホットパック収納手段8を備える。ホットパック収納手段8は、ホットパック3側に着脱可能に取り付けられるフック状係合部9と、このフック状係合部9に係合されるレール状被係合部10とを含む。
【0045】
加温槽4の内壁には、レール状被係合部10よりも上方位置に満水位表示部11が、また、レール状被係合部10よりも下方位置に規定水位表示部12が、それぞれ設けられている。
【0046】
これら表示部11,12は、加温槽4の内壁に所定形状に形成した凹部で構成されており、加温槽4内の水位が満水位を超えているか否か、あるいは規定水位を超えているか否かが使用者に分かるようになっている。規定水位表示部12は実施形態では1つであるが、加温槽4の内壁に各水位に沿って複数箇所に設けてもよい。表示部11,12は前記凹部以外に、例えば、加温槽4の内壁に当該表示箇所に着色したり等で形成してもよく、その形成方法には特に限定されない。
【0047】
満水位は、ホットパック3の上部に設けられた支持部13を残してホットパック3が加温槽5内に水没する水位であり、且つ、ホットパック5を所定温度以上に加温するのに十分な水位である。満水位表示部11を設けることにより使用者は加温槽4内の湯面から支持部13が露出するように加温槽4内に湯を貯めることができる。
【0048】
規定水位は、ホットパック3を所定温度に加温できる水位であり、且つ、加温槽4内においてホットパック収納手段8が水没しないで露出する水位である。規定水位表示部12を設けることによってホットパック収納手段8が湯面から露出するように加温漕4内に湯を貯めることができる。
【0049】
なお、ホットパック収納手段8は、加温槽4内の満水位の湯中にホットパック3が浸かっている状態で加温槽4内の湯面から露出する位置にホットパック収納手段8が配置されるように、ホットパック3を加温槽4に収納してもよい。このような配置を実現するためには、加温槽4における満水位の位置を一定に固定したうえで、固定した満水位の位置より若干上方位置に支持部13が配置されるように、レール状被係合部10の高さ位置を設定すればよい。
【0050】
図3ないし図5を参照して、ホットパック収納手段8およびホットパック3についてさらに詳細に説明する。
【0051】
ホットパック収納手段8は、前記したように、フック状係合部9と、レール状被係合部10とを含む。
【0052】
フック状係合部9は、ホットパック3の側面上部の可撓性筒状係止部14に着脱可能に取り付けられる。可撓性筒状係止部14は、フック状係合部9が入り込める変形可能な可撓性の筒状体となっている。可撓性筒状係止部14は、その両端14a,14aがホットパック3の側部内に延びてホットパック3と一体となっている。
【0053】
レール状被係合部10は、上下2本のレール状体101,102の組合せからなり、その両端が一対の高さ同一の支持枠10a,10aで水平に支持されている。支持枠10a,10aそれぞれの上部側には加温槽4に固定のための突起10b,10bが形成されている。一対の支持枠10a,10aの下端は、底板5上に平面視片仮名「コ」の字状で配置された取付枠10cに接続されている。取付枠10cの両端は、下方に突出した固定端10d,10dとなっている。
【0054】
固定端10d,10dは、加温槽4内の底板5に設けた嵌合穴に嵌脱可能に嵌合される(図2参照)。固定端10d,10dが、加温槽4内の底板5の嵌合穴に嵌合されると、レール状被係合部10は、加温槽4の内壁面に沿って水平直線状に取り付けられる。レール状被係合部10は、支持枠10a,10aおよび取付枠10cと一体になって加温槽4から着脱可能に取り付けられる。
【0055】
これにより、レール状被係合部10を支持枠10a,10aおよび取付枠10cと共に加温槽4内から取り出すことで、加温槽4内の清掃や、レール状被係合部10、支持枠10a,10aおよび取付枠10cの清掃を容易に実施することができる。なお、レール状被係合部10は、上記のように加温槽4内から着脱できない構成とし、加温槽4の内壁面に設けた凹凸で構成してもよい。
【0056】
なお、ホットパック3の可撓性筒状係止部14は、該ホットパック3の一方の側部に設けられているが、ホットパック3の両側部に設けてもよい。そうすると、ホットパック3は、レール状被係合部10に対して、係合部9を介して係合させて、加温漕4内に収納するとき、レール状被係合部10に対して、収納の方向性が無くなり、収納作業が便利となる。
【0057】
また、ホットパック3の可撓性筒状係止部14がホットパック3の両側部に設けられている場合、レール状被係合部10は、加温漕4の対向する一対の内壁側のそれぞれに設置してもよい。
【0058】
ホットパック収納手段8の作用を説明する。
【0059】
フック状係合部9は、ホットパック3の可撓性筒状係止部14に装着される。この装着状態で、フック状係合部9がレール状被係合部10に係合されると、ホットパック3は、レール状被係合部10に沿って図3中の矢印a方向(所定方向)にスライドさせることができる。
【0060】
このスライド方向にあるレール状被係合部10の一端側10eをホットパック取出側とする。また、前記スライド方向とは反対方向にあるレール状被係合部10の他端側10fを、使用後のホットパック3を加温槽4内に戻して収納するホットパック収納側とする。
【0061】
使用者は、使用済みのホットパック3を加温槽4内に収納する際は、加温槽4内に先に収納されているホットパック3をホットパック取出側である一端側10eへスライドさせて、ホットパック収納側である他端側10fに使用済みのホットパック3の収納スペースを確保する。
【0062】
これにより、その収納スペースに使用済のホットパック3を収納する。この収納によって、レール状被係合部10の他端側10fからホットパック取出側である一端側10eまでの間に加温槽4内に収納された複数のホットパック3のうち、ホットパック取出側である一端側10eのホットパック3が最も高温に加温されていることになる。そのため、使用者は、ホットパック取出側である一端側10eにあるホットパック3を加温槽4内から取り出して温熱治療に使用することができる。
【0063】
このように、ホットパック収納手段8によれば、使用者は、従来のように加温槽4内におけるホットパック3の不規則な収納箇所や取出箇所を記憶する必要なく、温熱治療に適した温度に加温されたホットパック3を加温槽4内から取り出したり、また、使用後のホットパック3を加温槽4内に収納したりすることができる。そのため、ホットパック3の取り出しや収納を従来よりも簡単に且つ容易に行うことができる。
【0064】
ホットパック3は、一例として、布、または塩化ビニールの包装3aと、この包装3a内に縦横列になって設けた複数の収納部分3bとを備える。収納部分3bには保温材としてベントナイトなど、吸湿性が高い材質のものが内封される。
【0065】
ホットパック3は、前記したように、加温槽4内の湯で、温熱治療に適した温度(約80℃)にまで加温される。ホットパック3は、その可撓性筒状係止部14にフック状係合部9が係止され、フック状係合部9は、レール状被係合部8に引掛けられることによって、加温槽4内に着脱可能に収納される。フック状係合部9が可撓性筒状係止部14に着脱可能であることによって、フック状係合部9が破損しても、破損したフック状係合部9のみを新規のフック状係合部9と交換すればよい。
【0066】
ホットパック3は、その上部に、支持部13が取り付けられている。支持部13は、ホットパック3の加温槽4内からの取り出し時と、加温槽4内への収納時に、例えば、先端が曲がった金属棒にホットパック3を引っ掛けるために使用される。
【0067】
支持部13は、ホットパック3の安定を考慮すれば、ホットパック3の重心鉛直方向上部に設置されるのが望ましいが、重心位置とは関係なく、ホットパック3の複数箇所に設けてもよい。支持部13は、例えば、柔軟性のある素材(例えばナイロン)で構成され、患者に触れても不快感のない素材で構成されている。
【0068】
支持部13が、柔軟性のある素材で構成されていると、支持部13が加温槽4内で屈曲し、ホットパック3を加温槽4内から取り出す際に、当該ホットパック3が他のホットパックなどと干渉し、支持するのが難しい状態となる恐れがある。
【0069】
そのため、これを予防するために、支持部13は、ホットパック3に縫製する際にその両端がホットパック3の表裏別面に縫製されている。これによって、支持部13は屈曲することなく、ホットパック3は加温槽4内で支持しやすい状態で保持される。
【0070】
図6ないし図7を参照して、ホットパック収納手段8のフック状係合部9を説明する。フック状係合部9は、略平行に対向する一対の対向部分9aと、両対向部分9aを連結する連結部分9bとで、片仮名「コ」の字状になっている。フック状係合部9の一方の対向部分9aの下端は、抜け止め部9cを備えている。
【0071】
この抜け止め部9cは、フック状係合部9が可撓性筒状係止部14に装着された後、可撓性筒状係止部14から意図せず抜けないようにするため、他方の対向部分9aへ折れ曲がった形状となっている。
【0072】
フック状係合部9は、工具無く可撓性筒状係止部14に装着できる。そのため、使用者は、自由に、フック状係合部9を可撓性筒状係止部14から着脱して交換することが可能である。
【0073】
フック状係合部9は、可撓性筒状係止部14内で意図せず回転しないように、一方の対向部分9aの両面が外側へ突出した回り止め部9dを備えている。
【0074】
フック状係合部9が、回り止め部9dを備えていることで、フック状係合部9の外面と可撓性筒状係止部14の内面との摩擦が増加する、そのため、フック状係合部9は、その摩擦によって、可撓性筒状係止部14内で回転することが抑制される。
【0075】
これによって、フック状係合部9をレール状被係合部10に係合させる時に、フック状係合部9はレール状被係合部10に対して一定方向に留まり、ホットパック3を、フック状係合部9を介して、レール状被係合部10に装着して収納し易くなる。
【0076】
例えば、ホットパック3をその支持部13で支持した状態で、フック状係合部9をレール状被係合部10に引っ掛けて加温槽4内に収納するときは、フック状係合部9はその回り止め部9dで回り止めされているので、ホットパック3は図3の姿勢状態を維持して収納させやすくなる。
【0077】
上記実施形態では、支持部13とフック状係合部9は、別々に構成されているが、図8に示すように、これらを一体構成にした係合支持部9Aとしてもよい。
【0078】
この係合支持部9Aは、上部が円形の支持部91となり、下部が「コ」の字状のフック状係合部92となる。フック状係合部92は、前記と同様、ホットパック3の可撓性筒状係止部14からの抜け止め部92aと、可撓性筒状係止部14内部での回り止め部92bとを有する。
【0079】
このような構成を有する係合支持部9Aによれば、ホットパック3側に別途に支持部13を設けることが不要となるため、ホットパック3の製作費用を低減できる。また、支持部91自体を使用者が把持できるので、ホットパック3のフック状係合部92をレール状被係合部10に容易に引掛けることが可能となる。
【0080】
以上説明したように、この実施形態では、ホットパック3をレール状被係合部10上の一端側へスライドさせると、レール状被係合部10の他端側に使用済みのホットパックの収納スペースを確保することができるので、その収納スペースに使用済のホットパックを収納することができる。
【0081】
そして、レール状被係合部10の他端側から一端側へ順次に加温槽内に収納された複数のホットパック3のうち、一端側のホットパック3が最も高温に加温されていることになるので、加温槽4内からホットパック3を取り出して温熱治療に使用する際は、ホットパック3をレール状被係合部10の一端側のホットパック3から順次に取り出せばよい。そのため、使用者は、温熱治療に使用するホットパック3を簡単に何等戸惑うことなく加温槽4内から取り出すことができる。
【0082】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0083】
1 ホットパック加温装置
2 装置本体
3 ホットパック
4 加温槽
5 底板
5a 穴
6 ヒータ
7 蓋
8 ホットパック収納手段
9 フック状係合部
10 レール状被係合部
11 満水位表示部
12 規定水位表示部
13 ホットパック3の支持部
14 ホットパック3の可撓性筒状係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8